JP4131563B2 - 釣竿 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の竿体を順次竿元側に位置する竿体内に収納可能なように振出形式に連結した釣竿に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、釣竿は複数の竿体を連結して一本の長い釣竿となっている。これらの竿体の連結方式の1つとして振出形式を採用し、複数の竿体を連結したものも多い。
この振出形式で竿体が連結されている釣竿は、例えば、最も太径の元竿と、元竿の穂先側に連結される元上竿,中竿,穂先竿などから構成される。元竿と元上竿において説明すれば、元竿の穂先側端部内周面は嵌合雌部となっており、元上竿の竿元側端部外周面は嵌合雄部となる。そして、元竿内に元上竿が収納され若しくは穂先側に引き出されて相互に連結固定される。その余の竿体も同様に連結されている。このような釣竿は、使用時には長い一本の釣竿となり、収納時には短くコンパクトな状態となるのである。
【0003】
従来のこの種の釣竿では、繰り返し竿体同士を嵌着させていると、相互に嵌着部分が摩耗して嵌着力が低下するといった問題点が指摘されてきた。そこで、竿体相互の嵌着力を長期にわたって維持するために、竿体相互の嵌着部分にポリエステル繊維などに合成樹脂を含浸させた素材を積層させたものなども提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−314142号公報(図2)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような振出形式の釣竿における更に別の問題点として、1つの竿体の竿元側端部内周面と他の竿体の穂先側端部外周面とが接触して相互に破損乃至剥離するといった問題もある。特に、比較的軸方向長さの短い竿体を多数連結するような釣竿において生じる問題である。
【0006】
図5に示すように、この釣竿は、各竿体を引き出して連結した際にはより穂先側に位置するべき竿体101と、竿元側に位置するべき竿体102と、元竿103とを少なくとも有している。このような釣竿において、各竿体を竿元側の竿体内に収納し若しくは竿元側の竿体内から引き出す際に、竿体の軸方向長さの関係から竿体102が竿体101より竿元側に位置してしまう場合がある。このような情況で、さらに竿体102を元竿103内に収納し若しくは竿体103を竿体102側(穂先側)へと引き出してゆくと、竿体102の竿元側端部が竿体101の穂先側端部に接触してしまう(X部分参照)恐れがあるのである(特に、このような情況では、竿体101が自重等によって軸心より偏心して位置していることも多いためでもある)。
【0007】
竿体同士の軸方向長さを調整し、穂先側に位置する竿体ほど軸方向長さを長く設定することによっても、このような現象をある程度回避することはできる。しかし、設計の自由度が低下し、良好な竿体の調子を演出できなくなる恐れもある。
本発明の課題は、竿体同士を傷付けることなく出し入れできる振出形式の釣竿を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明1の釣竿は、複数の釣竿を振出形式に連結して構成されている釣竿であって、第1竿体と、引き出し連結時において第1竿体の穂先側に位置する第2竿体と、引き出し連結時において第2竿体の穂先側に位置する第3竿体とを少なくとも備えている。そして、この第2竿体が竿元側端部内周面に配置された保護部材を有する。
また、第2竿体は炭素繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させてなるプリプレグ素材を積層して形成されており、保護部材はプリプレグ素材の内周にさらに積層された不織布に合成樹脂を含浸させてなる不織布プリプレグからなり、前記第3竿体は、前記穂先側端部の外周面に配置されたゴム系弾性塗料を有することを特徴とする。
この釣竿では、第1竿体内の穂先側に第2竿体を引き出して連結している際に、第3竿体が未だ第1竿体内に位置している(即ち、第2竿体より竿元側に位置している)場合が生じる。このような場合に、第2竿体をなお第1竿体内へ向けて収納し、若しくは、第3竿体を第2竿体の穂先側に位置するように引き出そうとして、第2竿体の竿元側端部と第3竿体の穂先側端部が接触しても、第2竿体の保護部材が第2竿体と第3竿体との相互の接触による破損乃至剥離を防止する。
この釣竿では、第2竿体の不織布プリプレグが第2竿体と第3竿体との相互の接触による破損乃至剥離を抑えている。
【0011】
ここで、不織布プリプレグとは、綿,絹,毛等の繊維を方向性を持たせない状態で配向して、ここにエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸させてなる素材である。
【0012】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明の第1実施形態を採用する釣竿は、図1に示すように、複数の竿体を振出形式に連結してなるものである。具体的には、元竿1から順次穂先側に向けて、元上竿2,各中竿3〜8,穂先竿9の合計9本の竿体からなる。
【0013】
各竿体は、炭素繊維若しくはガラス繊維などの強化繊維にエポキシ系の合成樹脂を含浸させたプリプレグ素材をシート状若しくはテープ状に加工したものを積層し焼成して形成されている。各竿体は穂先側ほど小径化する先細り筒状体であり、穂先側の竿体より順次竿元側の竿体に収納可能である。各竿体の穂先側端部内周面及び竿元側端部外周面の必要箇所において、それぞれ嵌合雌部と嵌合雄部とが形成されている。
【0014】
元竿1の竿元側の周面にはリールを脱着自在に装着可能なリールシート10が装着されており、竿元側端部には尻栓が装着されている。また、各竿体の穂先側の外周面にはリールからの釣糸を案内するための釣糸ガイド(Uガイドと呼ばれるもの)が装着されており、穂先竿9の穂先側端部にはトップガイドが装着される。釣りを行う際には、各竿体をそれぞれ穂先側に引き出して竿体同士を相互に嵌着固定し、リールシート10に取り付けたリールからの釣糸を各Uガイドを挿通させて、トップガイドへと導くことになる。
【0015】
このような各竿体の中で、一部の竿体は以下のような構造を有している。複数の中竿の中の1つである中竿4においてこれを説明する。
図2に示すように、中竿3〜5は、各竿体を穂先側に引き出して相互に連結する際にあって、中竿3の穂先側に中竿4が、中竿4の穂先側に中竿5が嵌着して連結される関係にある。また、更に、中竿5の穂先側には中竿6等が連結される。上述のように、各竿体は先細り筒状体であり、竿元側端部外周面が嵌合雄部、穂先側端部内周面が嵌合雌部になっている。
【0016】
このような中竿4の竿元側端部内周面には、周方向全体にわたってゴム系弾性塗料11が塗布されている。例えば、中竿4の竿元側端部内周面を一部切り欠いて、この切り欠き部分に流動状のゴム系塗料をディッピングする等の手法で、ゴム系弾性塗料11を中竿4に塗布することができる。ゴム系弾性塗料としては、例えば、セノソフト(商品名)などを例示できる。特に、このように塗布する塗料はその一部が中竿4の竿元側端部より竿元側に向かって突出して盛り上がるように塗布するのがよい。
【0017】
なお、ここでは、ゴム系弾性塗料11を塗布する場合を示しているが、リング状に加工したゴムリングを中竿4の竿元側端部にはめ込んで固定する手法も可能である。
このような釣竿では、釣りを行わない収納時にあっては、各竿体が竿元側の竿体内へ収納され、短くコンパクトな状態となっている。そして、釣りを行う際に、それぞれの竿体を引き出して連結し一本の釣竿とするのである。このような各竿体を引き出して連結した使用状態と収納状態との状態変更の際に、以下のような情況が起こり得る(図2参照)。即ち、中竿3の穂先側に中竿4を引き出して相互に嵌着させ連結している状態で、中竿5が中竿4とは分離されており、中竿5が中竿3内に入り込んでしまっている情況である。このような情況は、収納状態から使用状態に向けて、若しくは、使用状態から収納状態に向けての何れの過程でも生じ得る。
【0018】
このような情況においては、小径の中竿5は自重により軸心より偏心している場合も多く、中竿5をそのまま穂先側に引き出し、若しくは中竿4をそのまま竿元側に収納すると、中竿5の穂先側端部と中竿4の竿元側端部とが接触する場合がある。このような場合でも、ゴム系弾性塗料11が竿体相互の繊維強化樹脂部分同士の直接の接触を回避している。そして、強化繊維同士の接触による破損や剥離などを防止する。
【0019】
なお、ここでは、中竿3〜中竿5において説明しているが、他の竿体との関係においてもこのような情況は起こり得る。例えば、元竿1の穂先側に元上竿2を引き出して相互に嵌着させて連結しているような情況で、中竿4が元竿1内に留まっている場合等もあり得る。このため、中竿4のみではなく、ゴム系弾性塗料11を別の竿体の竿元側端部にも同様に配置する。例えば、この釣竿にあっては、中竿4のみではなく、中竿3,中竿5,中竿6にも同様のゴム系弾性塗料11を配置している。
【0020】
[第2実施形態]
第2実施形態として、上記第1実施形態の変形例を示す。
図3に示すように、中竿3〜5は、各竿体を穂先側に引き出して相互に連結する際にあって、中竿3の穂先側に中竿4が、中竿4の穂先側に中竿5が嵌着して連結される関係にある。また、更に、中竿5の穂先側には中竿6等が連結される。
【0021】
このような中竿4の竿元側端部内周面には、竿元側端部から軸方向に5〜15mm程度の範囲において周方向全体にわたって不織布プリプレグ層12が積層されている。中竿4は炭素繊維強化樹脂等を芯材に巻回して積層し焼成して形成されるものである。このような中竿4の製造時において、竿元側端部の最内層として不織布プリプレグを部分的に積層しておき、焼成し、中竿4を製造する。この不織布プリプレグ層12を形成する不織布プリプレグとは、綿・絹・毛等の繊維を方向性を持たせない状態で配向して、ここにエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸させたものをシート状に加工したものである。
【0022】
なお、この第2実施形態においても、中竿4において説明しているが、第1実施形態と同様に、他の竿体においても同様の不織布プリプレグ層12を形成する。
このような釣竿においても、第1実施形態と同様に、不織布プリプレグ層12が、竿体相互の接触による破損剥離などを防止する。
【0023】
[他の実施形態]
(a)図4に示すように、中竿4と中竿5との関係において、中竿5の穂先側端部外周面にゴム系弾性塗料13を塗布することも可能である。中竿4の竿元側端部と中竿5の穂先側端部との繊維強化樹脂同士の直接の接触を、ゴム系弾性塗料13が抑えて相互の破損剥離を防止する。
【0024】
また、中竿4の竿元側端部と中竿5の穂先側端部との相互にゴム系塗料や不織布プリプレグを配置することも可能である。
(b)保護部材を配置する竿体は、釣竿全体として連結される竿体の本数に応じて設定する。例えば、上記第1実施形態と異なり、釣竿全体を8本の竿体を連結して構成するような場合には、竿元側から3番目の中竿〜5番目の中竿の竿元側端部に保護部材を配置する。
【0025】
【発明の効果】
本発明に係る釣竿では、竿体の振出操作時における竿体相互の接触による破損剥離が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を採用した釣竿の全体図。
【図2】図1の釣竿の中竿3〜中竿5の関係を示した図。
【図3】第2実施形態を採用した釣竿の図2に相当する図。
【図4】他の実施形態を採用した釣竿の図2に相当する図。
【図5】従来の釣竿の中竿の関係を示した図。
【符号の説明】
1 元竿
2 元上竿
3〜8 中竿
9 穂先竿
11 ゴム系弾性塗料
12 不織布プリプレグ層
Claims (1)
- 複数の釣竿を振出形式に連結して構成されている釣竿であって、
第1竿体と、引き出し連結時において前記第1竿体の穂先側に位置する第2竿体と、引き出し連結時において前記第2竿体の穂先側に位置する第3竿体とを少なくとも備え、
前記第2竿体が竿元側端部内周面に配置された保護部材を有し、
前記第2竿体は炭素繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させてなるプリプレグ素材を積層して形成されており、
前記保護部材は前記プリプレグ素材の内周にさらに積層された不織布に合成樹脂を含浸させてなる不織布プリプレグからなり、
前記第3竿体は、前記穂先側端部の外周面に配置されたゴム系弾性塗料を有する
ことを特徴とする釣竿。
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