JP4688324B2 - 保護膜付フォトマスクの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板やプラズマディスプレイ(PDP)などを作製する際に使用されるフォトマスクの露光用パターンを保護するためのフォトマスク用保護液に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、プリント配線板は、基板材料の表面にドライフィルムなどのフォトレジストを積層し、このフォトレジストの表面にフォトマスクの露光用パターンが形成された面を密着し、フォトマスクを介してフォトレジストを露光した後、フォトマスクを剥離し、フォトレジストを現像し、エッチング処理が施されることにより製造される。この際に剥離されたフォトマスクは、次のプリント配線板の作製へと繰り返し使用される。
【0003】
このようなフォトマスクとしては、基材上に露光用パターンが形成された乳剤層を有するものが使用されており、フォトレジストの付着を防止するため、乳剤層上に数μmの厚みの透明保護フィルムを貼り合わせることが多い。
【0004】
しかし、上記のように乳剤層上に透明保護フィルムを貼り合わせた場合、紫外線透過率が減少することなどを原因として露光時間の増加を招き、その結果生産効率が減少し、また、精度の高い画線を再現できなくなるという問題があった。
【0005】
この問題を解決するものとして、乳剤層上に、熱硬化性樹脂からなるフォトマスク用保護液を塗布、乾燥し、保護膜を形成する手段が考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
熱硬化性樹脂からなるフォトマスク用保護液としては、特開平11−305420号公報のように、主剤と硬化剤(イソシアネート)とからなる二液硬化系のものが使用されている。しかし、硬化反応が常温でも進行することから、調整したフォトマスク用保護液の粘度が経時的に変化し、安定した塗布結果が得られにくく、フォトマスク用保護液の寿命が短いという問題があった。さらに、一旦乳剤層上にフォトマスク用保護液を塗布すると、加熱硬化させなくても一定時間が経過すると硬化反応の進行によって保護膜の除去が困難となってしまうことから、塗布を失敗した場合にフォトマスクごと捨てなければならないという問題もあった。
【0007】
この問題を解決するものとして、光硬化性樹脂からなるフォトマスク用保護液を使用することが考えられる。
【0008】
しかし、光硬化性樹脂からなるフォトマスク用保護液を使用する場合、上記問題は解消するものの、イソシアネートを含む上記手段に比べ保護膜と乳剤層との接着が不十分で、保護膜の耐久性に劣るという問題があった。さらに、光硬化性樹脂を硬化させるための設備も必要となる。
【0009】
そこで本発明は、上記課題を解決するフォトマスク用保護液、即ち、フォトマスク用保護液の取り扱い性や保護膜と乳剤層との接着などに優れるフォトマスク用保護液を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の保護膜付フォトマスクの製造方法は、基材上に露光用パターンが形成された乳剤層を有するフォトマスクの前記乳剤層上に、ポリオール、ブロックポリイソシアネートおよび溶剤からなるフォトマスク用保護液を塗布した後、前記ブロックポリイソシアネートのマスク剤が解離しないように溶剤を揮発させて保護膜を形成し、前記ブロックポリイソシアネートのマスク剤が解離する温度以上で加熱して保護膜の硬化反応を進行させることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のフォトマスク用保護液は、基材上に露光用パターンが形成された乳剤層を有するフォトマスクの前記乳剤層上に保護膜を形成するためのものであって、ポリオール、ブロックポリイソシアネートおよび溶剤からなることを特徴とするものである。以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0014】
保護膜が形成されるフォトマスクは、基材上に露光用パターンが形成された乳剤層を有するものである。フォトマスクの基材は紫外線透過率が良好なものが使用される。例えば、ガラスやプラスチックフィルムが好適に使用される。
【0015】
フォトマスク用保護液(以下、単に「保護液」という場合もある。)は、フォトマスクの乳剤層上に塗布、乾燥、硬化することにより保護膜を形成し、フォトマスクの露光用パターンを保護する役割を有するものであり、主としてポリオール、ブロックポリイソシアネートおよび溶剤から構成されるものである。
【0016】
ポリオールはいわゆる主剤としての役割を果たすものであり、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどのアルキレンポリオール、さらにアルキッドポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどのポリエステルポリオール、またポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール、水酸基を持つビニルモノマーと他のビニルモノマーの共重合によって得られるアクリルポリオールなどがあげられる。この中でも、良好な耐光性および紫外線透過率を有するアクリルポリオールが好適に使用される。
【0017】
ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートをマスク剤でマスクしたものであり、常温では全く反応せず硬化反応を進行させることはないが、マスク剤が解離する温度以上に加熱すると、活性なイソシアネート基が再生され、上記したポリオールとの架橋反応(ウレタン結合の形成)が起こり、硬化剤としての役割を果たすようになるものである。また、イソシアネート成分を含むことからフォトマスクの乳剤層との接着が良好となり、保護膜の耐久性を向上させる役割も果たすものである。
【0018】
ポリイソシアネートは、イソシアネートモノマーを重合若しくは共重合させたものであり、特に制限されることなく使用することができる。イソシアネートモノマーとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、m−もしくはp−テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネートなどがあげられる。
【0019】
マスク剤は特に制限されることなく使用することができ、例えば、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、ラクタム系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ヒドラジン系化合物などがあげられる。具体的には、フェノール、クレゾール、2−ヒドロキシピリジン、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、エタノール、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、ブチルメルカプタン、アセトアニリド、酢酸アミド、コハク酸イミド、ε−カプロラクタム、イミダゾール、尿素、チオ尿素、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、エチレンイミン、ジメチルヒドラジンなどがあげられる。
【0020】
マスク剤の解離温度は100℃以上であることが好ましい。100℃以上とすることにより、保護液中の溶剤を高温で揮発させてもマスク剤の解離が起こることなく、作業性を向上させることができる。但し、フォトマスクの基材がプラスチックフィルムである場合には、マスク剤の解離温度は120℃以下であることが好ましい。120℃以下とすることにより、プラスチックフィルムの寸法変化によってフォトマスクの精密性が低下することを防止することができる。
【0021】
ポリオールとブロックポリイソシアネートは、OH基/NCO基が0.65〜1.05となるように混合することが好ましい。このような範囲とすることにより、乳剤層と保護膜との接着を良好にすることができ、また、未反応のNCO基とOH基を少なくすることができ、さらに、副反応の発生も防止することができる。
【0022】
溶剤は上述したポリオールおよびブロックポリイソシアネートを溶解できるものであれば特に制限されることなく使用することができる。例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトンなどがあげられる。
【0023】
なお、上述した性能を害さない範囲で、フォトマスク用保護液中に、メラミン樹脂などの他の硬化性樹脂、その他レベリング剤、帯電防止剤などの添加剤を添加することは何ら差し支えない。
【0024】
保護膜を形成する方法としては、例えば、上述したフォトマスク用保護液を、ロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法、ディップコーティング法などの公知の方法により、フォトマスクの乳剤層上に塗布、乾燥、硬化させる方法があげられる。
【0025】
保護膜の厚みは、0.2〜8.0μmであることが好ましい。0.2μm以上とすることにより、フォトマスクに耐水性、耐溶剤性、耐擦傷性を付与することができ、8.0μm以下とすることにより、フォトマスクの紫外線透過率の低下や露光精度の低下を防止することができる。
【0026】
以上のような本発明のフォトマスク用保護液によれば、ブロックポリイソシアネートを使用することにより硬化反応が常温で進行することがないものであるから、保護液の取り扱い性に優れるとともに、保護液の塗布に失敗した場合でも保護膜を除去することができ、高価なフォトマスクを捨てる必要がないものである。また、イソシアネート成分を含有することから乳剤層との接着も良好であり、形成された保護膜の耐久性に優れるものである。
【0027】
次に、本発明の保護膜付フォトマスクの製造方法について説明する。
【0028】
まず、基材上に露光用パターンが形成された乳剤層を有するフォトマスクの前記乳剤層上に、ポリオール、ブロックポリイソシアネートおよび溶剤からなるフォトマスク用保護液を塗布する。塗布方法としては、ロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法、ディップコーティング法などがあげられる。
【0029】
次に、前記ブロックポリイソシアネートのマスク剤が解離しないように溶剤を揮発させて保護膜を形成する。マスク剤が解離しないように溶剤を揮発させる方法としては、マスク剤が解離する温度未満で加熱する方法、マスク剤が解離する温度以上で瞬間的に加熱する方法、室温で長時間放置する方法などがあげられる。
【0030】
次に、前記ブロックポリイソシアネートのマスク剤が解離する温度以上で加熱して保護膜の硬化反応を進行させる。
【0031】
以上のような本発明の保護膜付フォトマスクの製造方法によれば、保護液の寿命を気にする必要がなく、作業性が極めて良好なものとなる。また、作業性に優れるのみならず、保護膜の耐久性に優れた保護膜付フォトマスクを製造することができるものである。
【0032】
さらに、溶剤を揮発させたのみの未硬化状態の保護膜を形成するステップを経るものであることから、塗布段階では確認できない保護膜の形成状態を確認しつつ、状態が悪い場合には溶剤で拭き取ることにより保護膜を除去することができる。これにより、保護膜の形成に失敗した場合でも高価なフォトマスクを捨てる必要をなくすことができる。かかる効果はブロックポリイソシアネートの通常の用いられ方では得ることができない。即ち、ブロックポリイソシアネートは、自動車の塗装時などに使用されているが、通常一気に乾燥させる方法が採用されており、溶剤を揮発させたのみの未硬化状態をとらないからである。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0034】
実施例1〜3および比較例1、2のフォトマスク用保護液として、以下の保護液を調整した。
【0035】
[実施例1]
・ブロックポリイソシアネート硬化剤 0.74部
(D−550:大日本インキ化学工業社、マスク剤の解離温度:130℃)
・アクリルポリオール樹脂 3.19部
(アクリディックA-807:大日本インキ化学工業社)
・メチルエチルケトン 3.05部
・酢酸エチル 3.05部
【0036】
[実施例2]
・ブロックポリイソシアネート硬化剤 1.94部
(D−550:大日本インキ化学工業社、マスク剤の解離温度:130℃)
・ウレタンポリオール樹脂 1.24部
(タケラックU-25:武田薬品工業社)
・メチルエチルケトン 3.41部
・酢酸エチル 3.41部
【0037】
[実施例3]
・ブロックポリイソシアネート硬化剤 2.07部
(D−550:大日本インキ化学工業社、マスク剤の解離温度:130℃)
・アルキッドポリオール樹脂 1.23部
(D−150−70:大日本インキ化学工業社)
・メチルエチルケトン 3.35部
・酢酸エチル 3.35部
【0038】
[比較例1]
・ポリイソシアネート硬化剤 0.54部
(D−110N:武田薬品工業社)
・アクリルポリオール樹脂 3.30部
(アクリディックA-807:大日本インキ化学工業社)
・メチルエチルケトン 3.08部
・酢酸エチル 3.08部
【0039】
[比較例2]
・ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂 2.50部
(ユニディック17-806:大日本インキ化学工業社)
・ヒドロキシケトン系ラジカル重合開始剤 0.06部
(イルガキュア184:チバスペシャルティケミカルズ社)
・メチルエチルケトン 3.72部
・酢酸エチル 3.72部
【0040】
実施例1〜3および比較例1、2のフォトマスク用保護液を、ガラスを基材とするフォトマスクの乳剤層上にバーコーティング法により塗布し、120℃で3分間加熱し、溶剤を揮発させて保護膜を形成した後、以下の項目の評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
(1)保護膜の除去性
メチルエチルケトン浴に3分間浸漬した後、浴中でフォトマスクを2分間揺動させて保護膜の除去を試みた結果、保護膜の残滓がなかったものを「○」、保護膜の残滓があったものあるいは保護膜を除去できなかったものを「×」とした。
【0042】
次いで、実施例1〜3の塗布液から形成された保護膜については140℃で180分間加熱して硬化反応を進行させた後に、比較例1の塗布液から形成された保護膜についてはそのままで、比較例2の塗布液から形成された保護膜については高圧水銀灯により紫外線を1〜2秒照射して硬化反応を進行させた後に、それぞれ以下の項目について評価を行った。結果を表1に示す。なお、この段階において実施例1〜3および比較例1、2で形成された保護膜の厚みを測定したところ、いずれも5μmであった。
【0043】
(2)保護膜の接着
JIS−K5400に規定される碁盤目テープ法に基づいて、フォトマスクの乳剤層に対する保護膜の接着を10段階の点数で評価した。
(3)耐光性
UVテスター(アイ スーパUVテスターSUV−F1:岩崎電機社)を用いて積算露光量4300J/cm2の紫外線暴露を行った。前記紫外線暴露の前後で各試料の波長350nmにおける光線透過率を、分光光度計(UV−3101:島津製作所社)を使用して測定し、暴露前の光線透過率に対する暴露後の光線透過率の維持率で耐光性を評価した。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例1〜3のものは、保護液がポリオール、ブロックポリイソシアネートおよび溶剤からなるものである。従って、保護膜の除去性および接着に優れるものであった。また、実施例1〜3の保護膜付フォトマスクの製造方法によれば、前記性能を有するフォトマスクを容易に製造することができた。なお、実施例1のものは、ポリオールがアクリルポリオールであることから、実施例2、3のものに比べ耐光性が良好なものであった。
【0046】
比較例1のものは、保護液が、ポリオール、ポリイソシアネートおよび溶剤からなるものである。従って、保護膜の接着は満足するものの、常温で硬化反応が進行してしまい保護膜の除去性を満足しないものであった。
【0047】
比較例2のものは、保護液が、紫外線硬化性樹脂、開始剤および溶剤からなるものである。従って、保護膜の除去性には優れるものの、接着に劣るものであった。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明の保護膜付フォトマスクの製造方法は、保護液の寿命を気にする必要がなく、作業性に極めて優れるものである。さらに、作業性に優れるのみならず、保護膜と乳剤層との接着に優れた保護膜付フォトマスクを製造することができるものである。さらに、溶剤を揮発させたのみの未硬化状態の保護膜を形成するステップを経るものであることから、塗布段階では確認できない保護膜の形成状態を確認しつつ、状態が悪い場合には溶剤で拭き取ることにより保護膜を除去することができる。これにより、保護膜の形成に失敗した場合でも高価なフォトマスクを捨てる必要をなくすことができる。
Claims (1)
- 基材上に露光用パターンが形成された乳剤層を有するフォトマスクの前記乳剤層上に、ポリオール、ブロックポリイソシアネート及び溶剤からなるフォトマスク用保護液を塗布した後、前記ブロックポリイソシアネートのマスク剤が解離しないように溶剤を揮発させて保護膜を形成し、前記ブロックポリイソシアネートのマスク剤が解離する温度以上で加熱して保護膜の硬化反応を進行させることを特徴とする保護膜付フォトマスクの製造方法。
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