図1は、本発明の実施形態に係るフォークリフトの全体を示す斜視図である。なお、同フォークリフトの構造を説明するにあたり、同フォークリフトの要部(フォーク近傍部分)を側方から見た図2を適宜参照する。図1に示すフォークリフト100は、前方および左右の荷役を行うことが可能な3方向フォーク10と、作業者が搭乗し前記フォーク10とともに昇降動作する運転台3とを備えていて、荷物(図示省略)やパレット20(図2に図示)を格納するラック(図示省略)間に設けられた通路を走行しながらパレット作業およびピッキング作業を行う際に使用される。
フォークリフト100の車体1は、底部に設けられたタイヤ(図示省略)を床上で転動させることにより、前後方向F、Bへ走行する。車体1の前方(F方向側)には、左右一対のメインマスト2が上下方向U、Dと平行に立設されている。メインマスト2の前方には、作業者が搭乗する運転台3が設けられている。メインマスト2の後側(B方向側)には、油圧シリンダ(図示省略)がメインマスト2に沿うように設けられている。メインマスト2間には、チェーン4等が設けられている。油圧シリンダおよびチェーン4等は、メインリフト機構を構成し、油圧シリンダ等の駆動によって運転台3をメインマスト2に沿って上下方向U、Dへ昇降させる。
運転台3の床面部3aには、作業者がフォークリフト100を動かすために操作するレバーやスイッチ等を備えた操作盤5が設けられている。運転台3の前方には、シフトキャリッジともいわれるサブマスト6が上下方向U、Dと平行に立設されている。詳しくは、サブマスト6は運転台3の床面部3aと天井部3bに架設されている。サブマスト6の前方には、逆L字形のヘッド7が設けられている。ヘッド7の前方には、ローテイト軸8が上下方向U、Dと平行に設けられている。ローテイト軸8には、フィンガバー9等を介して一対のフォーク10が連結されている。フォーク10は、図2に示すようにパレット20の差込口20aに差し込まれて、パレット20を支持する。フォーク10およびフィンガバー9等は、本発明における荷支持手段の一実施形態を構成する。
ヘッド7の前側(F方向側)内部には、図2に示すようにローテイト軸8の上端部やギヤ11や油圧モータ(図示省略)等が設けられている。ヘッド7の前側下部(D方向側)には、ローテイト軸8の下端部をベアリング12を介して回転可能に支持する支持部7aが前方へ突出するように設けられている。ローテイト軸8、ギヤ11、および油圧モータ等は、本発明におけるローテイト機構の一実施形態を構成し、油圧モータ等の駆動によってローテイト軸8を回転させることにより、フォーク10(詳しくは、フォーク10とフィンガバー9等)を図1に矢印Qで示すように鉛直軸J回りに180°旋回させる。ローテイト軸8は、フォーク10の旋回中心として機能している。
サブマスト6の内部には、上下方向U、Dと平行にシャフト(図示省略)が設けられている。シャフトには、運転台3の床面部3aと天井部3bの前側に連結されたラックギヤ13と噛み合うようにピニオンギヤ(図示省略)が連結されている。ヘッド7の後側内部には、シャフトを回転させる油圧モータやギヤ(図示省略)が設けられている。シャフト、ラックギヤ13、ピニオンギヤ、油圧モータ、およびギヤ等はサブリフト6とともに、本発明におけるサイドシフト機構の一実施形態を構成し、油圧モータ等の駆動によってサブリフト6を左右方向L、Rへ移動させることにより、フォーク10、ヘッド7、および上記ローテイト機構を左右方向L、Rへ横行させる。
サブマスト6の前側には、ヘッド7の内部でサブマスト6やヘッド7の内壁に連結された油圧シリンダ14やチェーン15等が設けられている。ヘッド7の後側内部には、図2に示すようにガイドローラ16がサブマスト6に沿って転動するように設けられている。なお、図2では、油圧シリンダ14やチェーン15等は図示を省略している。油圧シリンダ14、チェーン15、およびガイドローラ16等は、サブリフト機構を構成し、油圧シリンダ等の駆動によってフォーク10、ヘッド7、および上記ローテイト機構をサブマスト6に沿って上下方向U、Dへ昇降させる。
図2および図3は、本発明の第1実施形態に係るパレット固定構造をフォークリフト100に適用した状態を示す図である。詳しくは、図2は、同構造をフォークリフト100の右方から見た側面図であり、図3は、同構造の分解状態をフォークリフト100の後方から見た斜視図である。図2(a)に示すように、フィンガバー9の下部には、ロック部材21が設けられている。このロック部材21は、図3に示すような形状をしていて、側面に形成された貫通孔21aと、フィンガバー9の下部に固定されているブロック22に形成された貫通孔22aとに軸23を貫通することによって、フィンガバー9の中央下部に回転可能に連結されている。ロック部材21の先端部21cは、図2(a)に示すようにフォーク10とともにパレット20の差込口20aに差し込まれる。その際、ロック部材21がパレット20の中桁20e(図3に図示)に当接しないように、ロック部材21の先端部21c側には、中桁20eを避けるための逃げ溝21e(図3に図示)が形成されている。ロック部材21は、本発明における固定手段の一実施形態を構成する。
ロック部材21と各ブロック22との間の軸23の周囲には、ねじりばね24が設けられている。このねじりばね24は、図2(a)に示すようにロック部材21をパレット20の上側デッキボード20bおよび下側デッキボード20cから離間する姿勢に保持している。ねじりばね24は、本発明におけるばねの一実施形態を構成する。
ローテイト軸8の下部には、アクチュエータとして油圧シリンダ25が連結されている。このシリンダ25は、フォークリフト100の車体1に内蔵されている制御部(図示省略)によって制御され、自動または手動で駆動して、具備するロッド25aをフォーク10の進退方向(図2ではF、B方向)に伸縮動作させる。例えば、自動の場合は、前述のサブマスト6等に設けられていて、フォーク10がパレット20の荷役(所定の場所からのパレット20の掬い上げまたは所定の場所へのパレット20の載置)を行うときの高さにあることを検出するフォーク位置センサ(図示省略)からの出力に基づいて、シリンダ25を駆動する。また、手動の場合は、前述の操作盤5に設けられていて、作業者によって操作される手動スイッチ(図示省略)からの出力に基づいて、シリンダ25を駆動する。図2(a)は、ロッド25aがシリンダ25の本体内に縮退した状態を示し、図2(b)は、ロッド25aがシリンダ25の本体内から伸長した状態を示している。ロッド25aの先端は、ロック部材21の後端部21dに常時当接している。シリンダ25は、本発明における駆動手段の一実施形態を構成する。
所定の場所に載置されたパレット20をフォーク10で掬い上げるために、フォーク10をパレット20の掬い上げ時の高さに位置させると、当該フォーク10の高さを検出する上述のフォーク位置センサからの出力に基づいて、シリンダ25が図2(a)に示すようにロッド25aを縮退させる。これにより、ロック部材21がねじりばね24によってパレット20の上下のデッキボード20b、20cから離間する姿勢に保持される。この状態では、フォーク10をパレット20の差込口20aに差し込んで行く際に、ロック部材21がパレット20の上下のデッキボード20b、20cに当接することはない。また、上述したようにパレット20の中桁20eが、ロック部材21の逃げ溝21eに入り込むため、ロック部材21がパレット20の上下の中桁20eに当接することもない。つまり、ロック部材21に邪魔されることなく、図2(a)に示すようにパレット20の差込口20aにフォーク10を根元まで差し込める。
差込口20aにフォーク10を根元まで差し込んだ後、所定の場所からパレット20を掬い上げるために、サブマスト6に沿ってフォーク10を上昇させて行く。そして、フォーク10を掬い上げ時の高さよりも高い位置まで上昇させると、フォーク位置センサからの出力に基づいて、シリンダ25がねじりばね24の弾性力に打ち勝つ駆動力を発生して、図2(b)に示すようにロッド25aを伸長させる。または、作業者が上述の手動スイッチを操作すると、当該手動スイッチからの出力に基づいて、シリンダ25が上記駆動力でロッド25aを伸長させる。これにより、ロッド25aがロック部材21の後端部21dを押して、ロック部材21を先端部21cがフォーク10から離れる方向(図2では時計回りの方向)へ回転させる。そして、ロック部材21が先端部21cでフォーク10に支持されたパレット20の下側デッキボード20cを押圧する。この状態では、パレット20の上側デッキボード20bがフォーク10の上面に支持され、下側デッキボード20cがロック部材21の先端部21cに支持されるので、パレット20がフォーク10に固定され、フォーク10上でパレット20が傾くことはない。
パレット20をフォーク10に固定した後、所定の場所にパレット20を載置するために、サブマスト6に沿ってフォーク10を昇降させて行く。そして、フォーク10をパレット20の載置時の高さに位置させると、当該フォーク10の高さを検出するフォーク位置センサからの出力に基づいて、シリンダ25が図2(a)に示したようにロッド25aを縮退させる。または、作業者が手動スイッチを操作すると、シリンダ25がロッド25aを縮退させる。これにより、ロッド25aがロック部材21の後端部21dを押さなくなるので、ロック部材21がねじりばね24の弾性力(復元力)によって、先端部21cがフォーク10に近づく方向(図2では反時計回りの方向)へ回転して、パレット20の上下のデッキボード20b、20cから離間する姿勢に保持される。この状態では、パレット20を所定の場所に載置した後、ロック部材21に邪魔されることなく、パレット20の差込口20aからフォーク10を引き抜ける。
上述した第1実施形態の構造によると、ロック部材21を荷支持手段の一構成部品であるフィンガバー9に連結しているので、フォーク10がローテイト軸8を中心にしてQ方向(図1)に旋回したり、サブマスト6やヘッド7等とともに左右方向L、R(図1)に横行したりしても、ロック部材21がフォーク10の旋回動作と横行動作に追従して、フォーク10の向きとロック部材21の向きとを常に略同じにすることができる。このため、フォーク10が旋回したり横行したりしても、パレット20を固定可能な位置からロック部材21をずれないようにすることが可能となる。
また、シリンダ25をローテイト機構の一構成部品であるローテイト軸8の下部に連結しているので、フォーク10が旋回したり横行したりしても、シリンダ25がフォーク10の旋回動作と横行動作に追従して、シリンダ25とロック部材21との相対位置および相対距離を変化させることなく常に一定にすることができる。このため、フォーク10が旋回したり横行したりしても、シリンダ25のロッド25aを伸長させることで、ロック部材21を先端部21cがフォーク10から離れる方向へ確実に回転させて、先端部21cでフォーク10に支持されたパレット20の下側デッキボード20cを押圧し、パレット20をフォーク10に固定することが可能となる。また、シリンダ25のロッド25aを縮退させることで、ロック部材21を先端部21cがフォーク10に近づく方向へ確実に回転させて、パレット20の上下のデッキボード20b、20cから離間する姿勢で保持し、パレット20のフォーク10への固定を解除することが可能となる。さらに、パレット20の固定時または固定解除時に、フォーク10が旋回したり横行したりしても、ロック部材21のパレット20の下側デッキボード20cを押圧している姿勢またはパレット20の上下のデッキボード20b、20cから離間している姿勢が保持され、パレット20の固定状態または固定解除状態を維持することが可能となる。
図4および図5は、本発明の第2実施形態に係るパレット固定構造をフォークリフト100に適用した状態を示す図である。詳しくは、図4は、同構造をフォークリフト100の右方から見た側面図であり、図5は、同構造の分解状態をフォークリフト100の後方から見た斜視図である。なお、図4および図5では、図1〜図3に示した部分と同一部分には同一符号を付している。図4(a)に示すように、フィンガバー9の下部には、ロック部材31が設けられている。このロック部材31は、図5に示すような形状をしていて、側面の中央に形成された貫通孔31aと、フィンガバー9の下部に固定されているブロック22に形成された貫通孔22aとに軸23を貫通することによって、フィンガバー9の中央下部に回転可能に連結されている。ロック部材31の先端部31cは、図4(a)に示すようにフォーク10とともにパレット20の差込口20aに差し込まれる。ロック部材31の先端部31c側には、パレット20の中桁20eを避けるための逃げ溝31e(図5に図示)が形成されている。ロック部材31は、本発明における固定手段の一実施形態を構成する。
本実施形態では、ローテイト軸8は、ヘッド7に上端部を支持され、下端部を支持されていない状態にある。このローテイト軸8の後方(B方向)側の側面には、アクチュエータとして油圧シリンダ35がトラニオン構造により連結されている。このシリンダ35は、前述したフォーク位置センサまたは手動スイッチからの出力に基づいてフォークリフト100の制御部によって制御され、自動または手動で駆動して、具備するロッド35aをD、U方向へ伸縮動作させる。図4(a)は、ロッド35aがシリンダ35の本体内から伸長した状態を示し、図4(b)は、ロッド35aがシリンダ35の本体内に縮退した状態を示している。ロッド35aの先端は、リンク部材36および軸37、38を介してロック部材31の後端部31dに連結されている。シリンダ35は、本発明における駆動手段の一実施形態を構成する。
所定の場所に載置されたパレット20をフォーク10で掬い上げるために、フォーク10をパレット20の掬い上げ時の高さに位置させると、フォーク位置センサからの出力に基づいて、シリンダ35が図4(a)に示すようにロッド35aを伸長させる。これにより、ロッド35aがリンク部材36および軸37、38を介してロック部材31の後端部31dを下方へ押して、ロック部材31を先端部31cがフォーク10に近づく方向(図4では反時計回りの方向)へ回転させ、パレット20の上下のデッキボード20b、20cから離間する姿勢(図4(a)ではフォーク10と略平行な姿勢)に保持する。この状態では、フォーク10をパレット20の差込口20aに差し込んで行く際に、ロック部材31がパレット20の上下のデッキボード20b、20cに当接することはない。また、上述したようにパレット20の中桁20eが、ロック部材31の逃げ溝31eに入り込むため、ロック部材31がパレット20の上下の中桁20eに当接することもない。つまり、ロック部材31に邪魔されることなく、図4(a)に示すようにパレット20の差込口20aにフォーク10を根元まで差し込める。
差込口20aにフォーク10を根元まで差し込んだ後、所定の場所からパレット20を掬い上げるために、フォーク10を掬い上げ時の高さよりも高い位置まで上昇させると、フォーク位置センサからの出力に基づいて、シリンダ35が図4(b)に示すようにロッド35aを縮退させる。または、作業者が手動スイッチを操作すると、当該手動スイッチからの出力に基づいて、シリンダ35がロッド35aを縮退させる。これにより、ロッド35aがリンク部材36および軸37、38を介してを介してロック部材31の後端部31dを上方へ引っ張って、ロック部材31を先端部31cがフォーク10から離れる方向(図4では時計回りの方向)へ回転させる。そして、ロック部材31が先端部31cでフォーク10に支持されたパレット20の下側デッキボード20cを押圧する。この状態では、パレット20がフォーク10に固定され、フォーク10上でパレット20が傾くことはない。
パレット20をフォーク10に固定した後、所定の場所にパレット20を載置するために、フォーク10をパレット20の載置時の高さに位置させると、フォーク位置センサからの出力に基づいて、シリンダ35が図4(a)に示したようにロッド35aを伸長させる。または、作業者が手動スイッチを操作すると、シリンダ35がロッド35aを伸長させる。これにより、上述したようにロッド35aがロック部材31の後端部31dを下方へ押して、ロック部材31を先端部31cがフォーク10に近づく方向へ回転させ、パレット20の上下のデッキボード20b、20cから離間する姿勢に保持する。この状態では、パレット20を所定の場所に載置した後、ロック部材31に邪魔されることなく、パレット20の差込口20aからフォーク10を引き抜ける。
上述した第2実施形態の構造によると、ロック部材31をフィンガバー9に連結しているので、フォーク10が旋回したり横行したりしても、フォーク10の向きとロック部材31の向きとが常に略同じになり、パレット20を固定可能な位置からロック部材31をずれないようにすることができる。また、シリンダ35をローテイト軸8の側面に連結しているので、フォーク10が旋回したり横行したりしても、シリンダ35とロック部材31との相対位置および相対距離が変化せず、シリンダ35のロッド35aの伸縮動作によって、ロック部材31を確実に回転させて、パレット20をフォーク10に固定しまたは固定を解除することができ、さらに当該固定状態または固定解除状態を維持することができる。
図6および図7は、本発明の第3実施形態に係るパレット固定構造をフォークリフト100に適用した状態を示す図である。詳しくは、図6は、同構造をフォークリフト100の右方から見た側面図であり、図7は、同構造の分解状態をフォークリフト100の後方から見た斜視図である。なお、図6および図7では、図1〜図3に示した部分と同一部分には同一符号を付している。図6(a)に示すように、フィンガバー9の下部には、ロック部材41が設けられている。このロック部材41は、図7に示すような形状をしていて、側面に形成された貫通孔41aと、フィンガバー9の下部に固定されているブロック22に形成された貫通孔22aとに軸23を貫通することによって、フィンガバー9の中央下部に回転可能に連結されている。ロック部材41の先端部41cは、図6(a)に示すようにフォーク10とともにパレット20の差込口20aに差し込まれる。ロック部材41の先端部41c側には、パレット20の中桁20eを避けるための逃げ溝41e(図7に図示)が形成されている。ロック部材41は、本発明における固定手段の一実施形態を構成する。
ロック部材41と各ブロック22との間の軸23の周囲には、ねじりばね44(図7に図示)が設けられている。このねじりばね44は、図6(b)に示すようにロック部材41を先端部41cでパレット20の下側デッキボード20cを押圧する姿勢に保持している。ねじりばね44は、本発明におけるばねの一実施形態を構成する。
ローテイト軸8の内部には、アクチュエータとして油圧シリンダ45が設けられている。シリンダ45が具備するロッド45aは、ローテイト軸8から下方へ突出し、ヘッド7の支持部7aを貫通している。このシリンダ45は、前述したフォーク位置センサまたは手動スイッチからの出力に基づいてフォークリフト100の制御部によって制御され、自動または手動で駆動して、ロッド45aをD、U方向へ伸縮動作させる。図6(a)は、ロッド45aがシリンダ45の本体内から伸長した状態を示し、図6(b)は、ロッド45aがシリンダ45の本体内に縮退した状態を示している。ロッド45aの先端は、ロック部材41の後端部41dに常時当接している。シリンダ45は、本発明における駆動手段の一実施形態を構成する。
所定の場所に載置されたパレット20をフォーク10で掬い上げるために、フォーク10をパレット20の掬い上げ時の高さに位置させると、フォーク位置センサからの出力に基づいて、シリンダ45がねじりばね44の弾性力に打ち勝つ駆動力を発生して、図6(a)に示すようにロッド45aを伸長させる。これにより、ロッド45aがロック部材41の後端部41dを下方へ押して、ロック部材41を先端部41cがフォーク10に近づく方向(図6では反時計回りの方向)へ回転させ、パレット20の上下のデッキボード20b、20cから離間する姿勢に保持する。この状態では、フォーク10をパレット20の差込口20aに差し込んで行く際に、ロック部材41がパレット20の上下のデッキボード20b、20cに当接することはない。また、上述したようにパレット20の中桁20eが、ロック部材41の逃げ溝41eに入り込むため、ロック部材41がパレット20の上下の中桁20eに当接することもない。つまり、ロック部材41に邪魔されることなく、図6(a)に示すようにパレット20の差込口20aにフォーク10を根元まで差し込める。
差込口20aにフォーク10を根元まで差し込んだ後、所定の場所からパレット20を掬い上げるために、フォーク10を掬い上げ時の高さよりも高い位置まで上昇させると、フォーク位置センサからの出力に基づいて、シリンダ45が図6(b)に示すようにロッド45aを縮退させる。または、作業者が手動スイッチを操作すると、当該手動スイッチからの出力に基づいて、シリンダ45がロッド45aを縮退させる。これにより、ロッド45aがロック部材41の後端部41dを押さなくなるので、ロック部材41がねじりばね44の弾性力(復元力)によって、先端部41cがフォーク10から離れる方向(図6では時計回りの方向)へ回転して、先端部41cでフォーク10に支持されたパレット20の下側デッキボード20cを押圧する。この状態では、パレット20がフォーク10に固定され、フォーク10上でパレット20が傾くことはない。
パレット20をフォーク10に固定した後、所定の場所にパレット20を載置するために、フォーク10をパレット20の載置時の高さに位置させると、フォーク位置センサからの出力に基づいて、シリンダ45が図6(a)に示したようにロッド45aを伸長させる。または、作業者が手動スイッチを操作すると、シリンダ45がロッド45aを伸長させる。これにより、上述したようにロッド45aがロック部材41の後端部41dを下方へ押して、ロック部材41を先端部41cがフォーク10に近づく方向へ回転させ、パレット20の上下のデッキボード20b、20cから離間する姿勢に保持する。この状態では、パレット20を所定の場所に載置した後、ロック部材41に邪魔されることなく、パレット20の差込口20aからフォーク10を引き抜ける。
上述した第3実施形態の構造によると、ロック部材41をフィンガバー9に連結しているので、フォーク10が旋回したり横行したりしても、フォーク10の向きとロック部材41の向きとが常に略同じになり、パレット20を固定可能な位置からロック部材41をずれないようにすることができる。また、シリンダ45をローテイト軸8の内部に設けているので、フォーク10が旋回したり横行したりしても、シリンダ45とロック部材41との相対位置および相対距離が変化せず、シリンダ45のロッド45aの伸縮動作によって、ロック部材41を確実に回転させて、パレット20をフォーク10に固定しまたは固定を解除することができ、さらに当該固定状態または固定解除状態を維持することが可能となる。
図8および図9は、本発明の第4実施形態に係るパレット固定構造をフォークリフト100に適用した状態を示す図である。詳しくは、図8は、同構造をフォークリフト100の右方から見た側面図であり、図9は、同構造の分解状態をフォークリフト100の後方から見た斜視図である。なお、図8および図9では、図1〜図3に示した部分と同一部分には同一符号を付している。図8(a)に示すように、フィンガバー9の下部には、ロック部材51が設けられている。ロック部材51は、図9に示すように2つ設けられ、それぞれ上ロックバー52と下ロックバー53とねじりばね54とから構成されている。上ロックバー52には、貫通孔52aと、下ロックバー53を嵌合するための嵌合溝52bとが形成されている。下ロックバー53には、貫通孔53aが形成されている。ねじりばね54は、下ロックバー53の貫通孔53aに内挿されている。各ロック部材51は、上ロックバー52と下ロックバー53とを嵌合させて、各ロックバー52、53の貫通孔52a、53aと、ねじりばね54と、フィンガバー9の下部に固定されているブロック55に形成された貫通孔55aとに軸56を貫通することにより組立てられて、フィンガバー9の下部に回転可能に連結されている。各ロック部材51のロックバー52、53の先端部52c、53cは、図8(a)に示すようにフォーク10とともにパレット20の差込口20aに差し込まれる。ロック部材51は、本発明における固定手段の一実施形態を構成する。
ロック部材51のフィンガバー9への連結状態では、ねじりばね54の下側に突出する端部が下ロックバー53の下面に引っ掛けられ、上側に突出する端部が上ロックバー52の上面に引っ掛けられている。このため、ねじりばね54は、図8(a)に示すように上下のロックバー52、53を引き付けてフォーク10と略平行な姿勢、つまりロック部材51をパレット20の上下のデッキボード20b、20cから離間する姿勢に保持している。ねじりばね54は、本発明におけるばねの一実施形態を構成する。
ローテイト軸8の後方側の側面には、アクチュエータとして電動式のワイヤリール57が連結されている。ワイヤリール57は、図9に示すように2つ設けられ、駆動源であるモータ58と所定長さのワイヤ59とを具備している。各ワイヤ59は、図8に示すようにヘッド7の支持部7aの側方を通って、各ロック部材51の下ロックバー53の後端部53dに接続されている。なお、図8では、右側(図9のR方向側)のワイヤリール57等を図示し、左側(図9のL方向側)のワイヤリール57等の図示を省略している。前述したフォーク位置センサまたは手動スイッチからの出力に基づいて、フォークリフト100の制御部がモータ58の駆動を制御することにより、ワイヤリール57は、自動または手動で回転して、ワイヤ59を巻き込んで引っ張ったり送り出したりする。ワイヤ59にかかる張力は、モータ58の負荷電流の大きさに基づいて検出する。ワイヤリール57、モータ58、およびワイヤ59は、本発明における駆動手段の一実施形態を構成する。
所定の場所に載置されたパレット20をフォーク10で掬い上げるために、フォーク10をパレット20の掬い上げ時の高さに位置させると、フォーク位置センサからの出力に基づいてモータ58が駆動し、ワイヤリール57が図8(a)に示すようにワイヤ59を送り出して弛ませる。なお、ワイヤ59が弛んだことは、ワイヤ59の張力が所定の下限値まで低下したことにより判断する。また、ワイヤ59を弛ませた後に、フォーク10およびフィンガバー9が鉛直軸Jを中心に旋回することにより、ワイヤ59が弛まなくなった時、即ちワイヤ59の張力が下限値以上に上昇した時は、ワイヤリール57がワイヤ59を送り出して弛ませる。
上記のようにワイヤ59を弛ませることで、ねじりばね54の弾性力によってロック部材51の上下のロックバー52、53が引き付けられて、パレット20の上下のデッキボード20b、20cから離間する姿勢に保持される。この状態では、フォーク10をパレット20の差込口20aに差し込んで行く際に、上下のロックバー52、53がパレット20の上下のデッキボード20b、20cに当接することはない。つまり、ロック部材51に邪魔されることなく、図8(a)に示すようにパレット20の差込口20aにフォーク10を根元まで差し込める。
差込口20aにフォーク10を根元まで差し込んだ後、所定の場所からパレット20を掬い上げるために、フォーク10を掬い上げ時の高さよりも高い位置まで上昇させると、フォーク位置センサからの出力に基づいてモータ58が駆動し、ワイヤリール57がねじりばね54の弾性力に打ち勝つ力で、図8(b)に示すようにワイヤ59を巻き込んで弛まないように引っ張る。または、作業者が手動スイッチを操作すると、当該手動スイッチからの出力に基づいてモータ58が駆動し、ワイヤリール57がワイヤ59を巻き込んで弛まないように引っ張る。なお、ワイヤ59が弛みなく張っていることは、ワイヤ59の張力が上述の下限値よりも大きい所定の基準値(ある程度上下に幅のある値)まで上昇したことにより判断する。また、ワイヤ59を弛みなく張った後に、フォーク10およびフィンガバー9が旋回することにより、ワイヤ59が弛るんだ時、即ちワイヤ59の張力が下限値まで低下した時は、ワイヤリール57がワイヤ59を巻き込んで弛まないように引っ張る。さらに、ワイヤ59を弛みなく張った後に、フォーク10およびフィンガバー9が旋回することにより、ワイヤ59の張力が上述の基準値よりも高い上限値まで上昇した時は、ワイヤ59の張力が基準値まで低下するように、ワイヤリール57がワイヤ59を送り出す。これにより、ワイヤ59の切れが回避される。
上記のようにワイヤ59を弛み無く張ることで、ワイヤ59が下ロックバー53の後端部53dを引っ張り上げて、下ロックバー53を先端部53cがフォーク10から離れる方向(図8では時計回りの方向)へ回転させる。そして、下ロックバー53が先端部53cでフォーク10に支持されたパレット20の下側デッキボード20cを押圧する。この状態では、フォーク10がパレット20の上側デッキボード20bを支持し、上ロックバー52がパレット20の上側デッキボード20bに当接し、下ロックバー53がパレット20の下側デッキボード20cを支持するので、パレット20がフォーク10に固定され、フォーク10上でパレット20が傾くことはない。
パレット20をフォーク10に固定した後、所定の場所にパレット20を載置するために、フォーク10をパレット20の載置時の高さに位置させると、フォーク位置センサからの出力に基づいてモータ58が駆動し、ワイヤリール57が図8(a)に示したようにワイヤ59を送り出して弛ませる。または、作業者が手動スイッチを操作すると、ワイヤリール57がワイヤ59を送り出して弛ませる。これにより、ワイヤ59が下ロックバー53の後端部53dを引っ張らなくなるので、下ロックバー53がねじりばね54の弾性力(復元力)によって、先端部53cがフォーク10に近づく方向(図8では反時計回りの方向)へ回転して、上ロックバー52に引き付けられ、上下のロックバー52、53がパレット20の上下のデッキボード20b、20cから離間する姿勢に保持される。この状態では、パレット20を所定の場所に載置した後、ロック部材51に邪魔されることなく、パレット20の差込口20aからフォーク10を引き抜ける。
上述した第4実施形態の構造によると、ロック部材51をフィンガバー9に連結しているので、フォーク10が旋回したり横行したりしても、フォーク10の向きとロック部材51の向きとが常に略同じになり、パレット20を固定可能な位置からロック部材51をずれないようにすることができる。また、ワイヤリール57をローテイト軸8の側面に連結しているので、フォーク10が旋回したり横行したりしても、ワイヤリール57とロック部材51の下ロックバー53との相対位置および相対距離が殆ど変化せず、ワイヤリール57でワイヤ59を引っ張るまたは送出することによって、下ロックバー53を確実に回転させて、パレット20をフォーク10に固定しまたは固定を解除することができ、さらに当該固定状態または固定解除状態を維持することができる。
以上述べた第1〜第4の実施形態のパレット固定構造によれば、フォーク10の向きが車体1に対して複雑に変化し、かつ運転台3が昇降してピッキング作業を行うことが可能なフォークリフト100において、駆動手段25、35、45、57〜59によってロック部材21、31、41、51を作動させることにより、フォーク10で支持したパレット20をフォーク10に固定しまたは固定を解除することが可能となる。そしてその結果、当該フォークリフト100において上述したようにパレット20をフォーク10に固定することで、例えば、フォーク10で支持したパレット20の端に荷物が偏って載置されていたり、支持したパレット20と当該パレット20に載置された荷物の搬送中(当該フォークリフト100の走行中)に振動や衝撃等の外力が加わったりしても、フォーク10上でパレット20および荷物が傾くことなく安定し、荷物の荷崩れを防止することが可能となる。また、例えば、ピッキング作業中に作業者がパレット20の端に荷物を偏って載置したり、パレット20に脚をかけたりしても、フォーク10上でパレット20および荷物が傾くことなく安定し、荷物や作業者の床への落下を防止することが可能となる。
本発明は、以上の実施形態以外にも種々の形態を採用することができる。例えば、以上の実施形態では、固定手段の一実施形態を構成するロック部材21、31、41、51を、荷支持手段の一構成部品であるフィンガバー9にブロック22、55を介して設けた例を挙げているが、本発明はこれらのみに限定するものではない。これ以外に、例えばロック部材21、31、41、51を、フィンガバー9に直接連結して設けたり、フォーク10に直接または間接的に連結して設けたりしてもよい。また、固定手段を、フォークやフィンガバーに連結しなくても、例えば一対のフォーク間に突出するようにローテイト軸に連結することにより、フォークおよびフィンガバーと常に一定の間隔をおいて設ける、即ち各フォークおよびフィンガバーとの距離が常に一定になるようにこれらの近傍に設けるようにしてもよい。つまり、固定手段は、フォークとともにローテイト機構により旋回しかつサイドシフト機構により横行するように荷支持手段に設ければよい。
また、以上の実施形態では、油圧シリンダ25、35、45、または電動式のワイヤリール57を、駆動手段として用いた例を挙げているが、本発明はこれらのみに限定するものではない。これら以外に、例えばエアーシリンダ、リニアソレノイド、ロータリーソレノイド、電動モータ、油圧モータ等といったアクチュエータを駆動手段として用いるようにしてもよい。また、アクチュエータ以外に、マストに沿った荷支持手段の昇降動作に追従して駆動することにより固定手段を作動させるような機構を駆動手段として用いるようにしてもよい。つまり、駆動手段は、固定手段を作動させて、パレットの固定または固定解除を行えるものであればよい。
さらに、以上の実施形態では、昇降可能な運転台3と、当該運転台3とは独立して昇降可能かつ前方および左右の荷役を行うことが可能な3方向フォーク10とを備えたフォークリフト100に本発明を適用しているが、本発明は、昇降可能な運転台を備えておらず、3方向フォークのみを備えた3方向スタッキングトラックのようなフォークリフトにも適用することが可能である。