JP4672851B2 - ポリカーボネート系樹脂組成物および該組成物からなる自動車外装部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂組成物に関し、更に詳しくは、成形流動性、耐衝撃性、耐熱性、成形加工性、耐薬品性に優れたポリカーボネート系樹脂組成物、および、それを用いて成形された自動車外装用部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート系樹脂は、エンジニアリングプラスチックの中でも最高の耐衝撃性を有し、耐熱変形性も良好な樹脂として知られており、これらの特徴を生かし種々の分野に利用されているが、耐薬品性、流動性、成形加工性、衝撃強度の厚み依存性の欠点を有している。一方、ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、耐薬品性、流動性、成形加工性に優れているが、耐衝撃性、寸法安定性に劣る等の欠点を有している。
【0003】
それぞれの特徴を生かしながら互いの欠点を補うことを目的として、種々の樹脂組成物が開示されている。例えば、特公昭36−14035号、特公昭39−20434号、特公昭55−94350号、特公昭58−13588号、特公平5−87540号、特開昭59−176345号、特開昭62−48760号、特開昭62−48761号、特開平3−140359号、特開平4−85360号、特開平8−34904号等が例示されている。これらの技術によって優れた機械的強度と耐薬品性を有し、自動車外装用部品に適したポリカーボネート系樹脂/ポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物が実現されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年における自動車外装用部品は、強いコストダウン要請により、部品点数が削減され成形品が一体化に伴う大物化や成形品重量削減のために薄肉化、無塗装化が進んできている。それによって、流動性、良外観性、耐薬品性、耐衝撃性、成形加工性がさらに要求されるようになってきた。
【0005】
これらの要求に対して、特公昭36−14035号、特開昭39−20434号、特公昭55−9435号、特公平5−87540号、特開平3−140359号、特開平4−85360号においては、ポリカーボネートとポリエステル、さらにポリオレフィン、ゴム成分を加えた樹脂組成物が提案されているが、それらの技術だけでは、流動性を必要とする大物自動車外装品として使用できるレベルではなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、以上のような問題点を解決するため鋭意検討を行なった結果、(A1)ポリカーボネート樹脂と、(A2)ポリエチレンテレフタレート系樹脂との特定の比率からなる(A)樹脂組成物100重量部に対して、(B)低分子量ポリエステル系化合物1〜10重量部、(C)コアシェル型グラフト共重合体2〜10重量部、(D)ポリオレフィン系樹脂2〜10重量部添加することにより、流動性、耐衝撃性、耐薬品性、良外観性に優れた新規なポリカーボネート系樹脂組成物、および、それを用い成形することにより、優れた自動車外装用部品が得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明の第1は、(A)成分として(A1)ポリカーボネート樹脂および(A2)ポリエチレンテレフタレート樹脂からなり、(A2)に対する(A1)の重量比(A1)/(A2)が80/20〜50/50である樹脂組成物100重量物に対して、(B)低分子量ポリエステル系化合物を1〜10重量部、(C)コアシェル型グラフト共重合体を2〜10重量部、(D)ポリオレフィン系樹脂を2〜10重量部配合してなることを特徴とするポリカーボネート系樹脂組成物に関する。
【0008】
好ましい実施態様としては、(A1)成分が粘度平均分子量が19,000〜28,000の範囲であるポリカーボネート樹脂であり、かつ(A2)成分がエチレンテレフタレート繰り返し単位を主要構成成分とし、かつフェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中、25℃で測定したときの固有粘度(IV)が0.55〜0.95dl/gである、ポリエチレンテレフタレート樹脂である前記記載のポリカーボネート系樹脂組成物に関する。
【0009】
好ましい実施態様としては、(A1)成分のポリカーボネート樹脂が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)およびホスゲンより得られたものである前記いずれか記載のポリカーボネート系樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明の第2は、前記いずれか記載の樹脂組成物を成形してなる自動車外装用部品に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる(A)成分中の(A1)ポリカーボネート樹脂とは、具体的には、1種以上のビスフェノール化合物とホスゲンまたはジフェニルカーボネートのような炭酸エステルを反応させて得られるものである。
【0012】
ビスフェノール化合物の具体例としては、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシフェニル、1,1−ビス(4’−ヒドロシキフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4’―ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどが挙げられ、これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。特に本発明では耐衝撃性の向上の点からビスフェニール化合物は、広く市販されている2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。従って、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)およびホスゲンより得られるポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0013】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は19,000〜28,000であることが好ましく、20,000〜27,000であることが特に好ましい。粘度平均分子量が19000未満であると、得られた成形品の機械的強度、衝撃性が低下し、また28000を超えると、成形加工性や流動性が低下する傾向にある。
【0014】
本発明で用いる(A)成分中の(A2)ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、酸成分としてテレフタル酸またはそのエステル形成能を有する誘導体を用い、グリコール成分としてエチレングリコールまたはそのエステル形成能を有する誘導体を用いて得られるエチレンテレフタレート繰り返し単位を主たる構成成分とするものであり、かつフェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中、25℃で固有粘度(IV)が0.55〜0.95dl/gであるポリエチレンテレフタレート系樹脂であることが好ましい。
【0015】
エチレンテレフタレート繰り返し単位は80モル%以上が好ましい。80モル未満では機械的強度、耐衝撃性、耐薬品性が低下する傾向にある。また、固有粘度が0.95dl/gを超えると流動性が低下し、0.55dl/g未満であると機械的特性が低下する傾向がある。成形加工性において、成形品の外観を考慮すれば、(IV)は0.60〜0.85dl/gであることが好ましい。
【0016】
(A2)ポリエチレンテレフタレート樹脂に対する(A1)ポリカーボネート樹脂の重量比(A1)/(A2)は80/20〜50/50である。(A2)に対する(A1)の割合が80/20未満から50/50の範囲外では、流動性、衝撃性、耐薬品性のバランスが崩れ効果が充分でなくなる。
【0017】
本発明に用いる(B)低分子量ポリエステル系共重合体としては、炭素数2〜25の2価アルコール、カルボキシル基が3個以上の芳香族多塩基酸もしくは、炭素数4〜14の脂肪族二塩基酸および/または炭素数8〜18の芳香族二塩基酸、炭素数4〜18の1価アルコールを構成成分として、通常のエステル化方法で製造された末端封止タイプのもので、固有粘度からMark−Houwinkの式を用いて求められた平均分子量が2,000〜5,800のものが好適に使用できる。末端が未封止のものを使用すると、ポリエステル樹脂との間でエステル交換反応が起こり、機械的強度が低下する傾向にあるので好ましくない。また、平均分子量が2000より小さい場合、機械的強度が低下する傾向にあり、逆に5800より大きくなると、可塑化特性も悪化する傾向にあるため好ましくない。
【0018】
(B)低分子ポリエステル系化合物を構成する炭素数2〜25の2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロバンジオール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびビ2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0019】
カルボキシル基が3個以上の芳香族多塩基酸もしくは、炭素数4〜14の脂肪族二塩基酸および/または炭素数8〜18の芳香族二塩基酸としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0020】
炭素数4〜18の1価アルコールとしては、例えば、ブタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ヘキサデカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、および2−ヒドロキシエチルベンジルエーテル等が挙げられる。
【0021】
(B)低分子量ポリエステル系化合物として、これらの各構成成分から、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。特に、2価アルコールとしてエチレングリコールまたはブタンジオール、二塩基酸としてテレフタル酸、および1価アルコールとして2−エチルヘキサノールを組み合わせて用いることが、流動性改良と機械強度のバランスの点から好ましい。
【0022】
低分子量ポリエステル系化合物の配合量は、(A)樹脂組成物100重量部に対して1〜10重量部、好ましくは1〜8重量部である。配合量が1重量部未満では、流動性が十分向上せず、10重量部を越えると、流動性向上は図れるものの、機械的強度や衝撃強度の低下に繋がる。
【0023】
本発明に用いる(C)コアシェル型グラフト共重合体は、ブタジエン単位が60重量%以上であるブタジエン系共重合体10〜90重量部に対し、シアン化ビニル化合物、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群から選択されるモノマーの少なくとも1種を90〜10重量部グラフト重合してなるものである。
【0024】
(C)コアシェル型グラフト共重合体の製造に用いるブタジエン系共重合体としては、低温時の衝撃性を考慮するとガラス転移点が0℃以下が好ましく、−40℃以下のものが更に好ましい。
【0025】
前記ブタジエン系共重合体の具体例としては、例えば、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリル酸エステル共重合体、ブタジエン−メタアクリル酸エステル共重合体等のジエン系ゴム等が挙げられ、これらは単独または2種以上で組み合わせて用いられる。ブタジエン−アクリル酸エステル共重合体、ブタジエン−メタアクリル酸エステル共重合体中のブタジエン量は、60重量%以上が必要であり、60重量%未満では、耐衝撃性、特に低温衝撃性が低下する。
(C)コアシェル型グラフト共重合体の製造に用いるモノマーとしては、シアン化ビニル化合物、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上が使用される。
【0026】
前記シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリルが、アクリル酸エステルとしてはアクリル酸ブチル、およびメタクリル酸エステルとしてはメタクリル酸メチル等が好ましく使用される。
【0027】
前記ブタジエン系共重合体とモノマーの割合は、重量比で10/90〜90/10、さらには、30/70〜80/20が好ましい。ブタジエン系共重合体の割合が10/90未満または、90/10を超えると耐衝撃性の効果が充分でなくなる。
【0028】
(C)コアシェル型グラフト共重合体の配合量は、(A)樹脂組成物100重量部に対し2〜10重量部、さらに好ましくは2〜5重量部である。2重量部未満では、耐衝撃性の効果が得られず、10重量部を超えると剛性、耐熱性等が低下する。
【0029】
本発明に用いられる(D)オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好適に使用できる。ポリエチレンは低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が任意に使用できる。また、ポリエチレンやポリプロピレンはホモポリマーのほかコポリマーを用いることができる。ポリオレフィン系樹脂はメルトインデックス(MI)が4g/10分以下、好ましくは2g/10分以下のものが適している。
【0030】
(D)ポリオレフィン系樹脂の配合量は、(A)樹脂組成物100重量部に対して、2〜10重量部、さらに好ましくは2〜8重量部である。2重量部未満では、耐薬品性、耐衝撃性の効果が得られず、10重量部を超えると外観不良、剛性、耐熱性等が低下する。
【0031】
上記記載の樹脂組成物を成形してなる自動車外装用部品とは、例えば、サイドガーニッシュ、ルーフモール、フェンダー、ドアパネル等が挙げられる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明にはこれらに限定されるものではない。なお、以下では特にことわりがない限り、「部」は重量部を、「%」は重量%を意味する。
【0033】
なお、実施例などで使用する主要原料の略号およびその内容を以下にまとめて示す。
実施例1〜11
粘度平均分子量が21,600で充分に乾燥したビスフェノールAのポリカーボネート樹脂(出光石油化学株式会社製タフロンA2200、以下A2200と略す)60重量部と25℃でかつフェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中で測定したときの固有粘度が0.75dl/gで充分に乾燥したポリエチレンテレフタレート樹脂(鐘紡株式会社製ベルペットEFG−70、以下EFG−70と略す)40重量部、低分子ポリエステル系化合物(ポリブチレンテレフタレート−2エチルヘキシルエステルで平均分子量5,800)3重量部、コアシェル型グラフト共重合体(呉羽化学株式会社製パラロイドEXL−2602:ゴム弾性体中のブタジエン含有量=80重量%、以下EXL2602と略す)3重量部、ポリオレフィン系樹脂(出光石油化学株式会社製モアテック0168N)2重量部を加え予備混合した後、それぞれ280℃で2軸押出し機(TEX−44)にて溶融混練し、ペレット化した。
【0034】
得られたペレットを用い、耐薬品性、成形加工性、流動性、衝撃強度を下記の評価方法で評価した。結果を表1に示す。
(耐薬品性)
得られたペレットを120℃にて5時間乾燥後、75t射出成形機を用い、シリンダー温度280℃、金型温度70℃にてASTM1号ダンベル(3.2mm厚)試験片を作製し、得られた試験片について、所定の歪み(0.5%、1.0%)を与えた後、下記の方法により耐薬品性を評価した。
【0035】
ワックスリムーバーST−7(ユシロ化学株式会社製)を塗布し、それを熱風乾燥機にて80℃×24時間処理を実施した後、成形品の外観変化を目視にて評価した(ワックスリムーバーが実際に使用される温度は、約80℃である)。
○:外観変化なし
×:クラック発生あり
ガソリン(JIS K2202 2号)、ディーゼル軽油(JIS K22042号)を塗布し、23℃×24時間後、成形品の外観を目視にて評価した。
○:外観変化なし
×:クラック発生あり
(衝撃性評価)
得られたペレットを120℃にて5時間乾燥後、75t射出成形機を用い、シリンダー温度280℃、射出圧力98MPa、金型温度70℃にて成形を行ない1/8インチ厚みバー(幅12.7mm、長さ127mm)試験片を作製し、得られた試験片について、ASTM D−256に従い、アイゾット衝撃強度を評価した。
(流動性評価)
得られたペレットを120℃にて5時間乾燥後、メルトインデックス(MI)にて、流動性を測定した。試験条件は、280℃、2.16Kgである。
【0036】
結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
実施例1〜11で用いた原材料の配合比率を変更した比較例1〜7を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、流動性、耐衝撃性、耐薬品性、成形加工性のいずれにおいても好適な組成物が得られ、工業的にも非常に有用である。
Claims (4)
- (A)成分として(A1)ポリカーボネート樹脂および(A2)ポリエチレンテレフタレート樹脂からなり、(A2)に対する(A1)の重量比(A1)/(A2)が80/20〜50/50である樹脂組成物100重量物に対して、(B)固有粘度からMark−Houwinkの式を用いて求められた平均分子量が2,000〜5,800である低分子量ポリエステル系化合物を1〜10重量部、(C)コアシェル型グラフト共重合体を2〜10重量部、(D)ポリオレフィン系樹脂を2〜10重量部配合してなることを特徴とするポリカーボネート系樹脂組成物。
- (A1)成分が粘度平均分子量が19,000〜28,000の範囲であるポリカーボネート樹脂であり、かつ(A2)成分がエチレンテレフタレート繰り返し単位を主要構成成分とし、かつフェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中、25℃で測定したときの固有粘度(IV)が0.55〜0.95dl/gである、ポリエチレンテレフタレート樹脂である請求項1記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- (A1)成分のポリカーボネート樹脂が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)およびホスゲンより得られたものである請求項1または2記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 請求項1、2、または3記載の樹脂組成物を成形してなる自動車外装用部品。
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