JP4671214B2 - ゴムの表面改質方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムの表面改質方法に関し、更に詳しくは、フルオロアルキル基を含有する基を両末端に有するフッ素系化合物に由来の構造を、ゴム基材の表面に確実かつ効率的に結合させることのできるゴムの表面改質方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フルオロアルキル基を両末端に有し、中間鎖に官能基が結合されてなるフッ素系化合物(オリゴマー)により樹脂の表面を改質する方法が知られている。樹脂の表面改質に適用される当該フッ素系化合物は、分子両末端におけるフルオロアルキル基が共有結合を介して中間鎖に結合されているので、長期にわたり所期の改質効果を発現することができる。
そこで、このようなフッ素系化合物を使用して、ゴムの表面を改質することができれば望ましい。
【0003】
かかるフッ素系化合物による樹脂の改質方法として、下記(1)乃至(2)の処理法が紹介されている。
(1)当該フッ素系化合物を樹脂とともに有機溶剤に溶解し、一定時間放置した後に溶剤を除去する方法(特開平11−246573号公報参照)。
(2)当該フッ素系化合物を光重合性モノマーに溶解して光硬化性の樹脂組成物を調製し、当該樹脂組成物を樹脂(プラスチック)の表面に塗布し、形成された塗膜を光硬化させる方法(特開平10−245419号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)乃至(2)の方法は、樹脂の表面改質方法としては適しているものの、これらの方法に従ってゴムを処理しても、当該ゴムの表面を改質することができない。そこで、本発明者らは、さらに下記(3)〜(5)の方法を試みた。
【0005】
(3)当該フッ素系化合物を未架橋のゴム中に配合して混練した後、一定時間放置し、当該フッ素系化合物を表面に析出させる方法。
(4)当該フッ素系化合物の溶液中に架橋ゴムからなるゴム基材を浸漬し、乾燥後、当該ゴム基材を加熱処理する方法。
(5)当該フッ素系化合物の溶液中に未架橋ゴムからなるゴム基材を浸漬し、乾燥後、当該ゴム基材を加熱処理(架橋処理)する方法。
【0006】
しかしながら、上記(3)乃至(5)の何れの方法によっても、当該フッ素系化合物によってゴム(架橋ゴム)の表面を十分に改質することができなかった。
すなわち、上記(3)の方法においては、長時間放置してもゴム基材の表面にフッ素系化合物が析出しなかった。この場合において、フッ素系化合物の配合量を増加させることも考えられるが、フッ素系化合物の大部分が表面改質剤として機能しないことになるばかりか、当該フッ素系化合物(オリゴマー)の過剰量の配合は、ゴム基材の物性の低下を招くおそれがある。
【0007】
また、上記(4)および(5)の方法においては、形成される改質層(被膜)と基材表面との密着力が小さく、また、当該被膜を構成するフッ素系化合物が種々の溶剤に溶解されてしまい、十分な耐薬品性・耐油性をゴムに付与することができない。
【0008】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものであって、本発明の目的は、フルオロアルキル基を含有する基を両末端に有し、中間鎖に官能基が結合されてなるフッ素系化合物に由来の構造を、ゴム基材のポリマー主鎖に確実かつ効率的に結合させることができ、当該フッ素系化合物による表面改質効果を安定的に発現させることのできるゴムの表面改質方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のゴムの表面改質方法は、下記式(1)で示されるフッ素系化合物(以下、「特定のフッ素系化合物」という。)と、下記(3)で示されるシランカップリング剤とを、未架橋のゴム基材の表面近傍に存在させる工程と、当該ゴム基材を加熱処理する工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
【化3】
【0011】
(式(1)中、RF はフルオロアルキル基を含有する基、R1 はトリアルコキシシリル基、R2 は水素原子またはアルキル基、R3 は、水素原子または1価の有機基を表す。xは1〜100の整数であり、yは0〜100の整数である。
式(3)中、R 4 はアルキル基またはアルコキシアルキル基、R 5 はアルキル基、R 6 は、ゴムのポリマー主鎖との反応性を有する有機官能基を表す。mは1〜3の整数であり、nは0〜5の整数である。)
【0012】
本発明のゴムの表面改質方法においては、下記の形態が好ましい。
〔1〕特定のフッ素系化合物を示す上記式(1)において、R1 で表される官能基がトリメトキシシリル基であること。
〔2〕特定のフッ素系化合物を示す上記式(1)において、RF で表されるフルオロアルキル基を含有する基が、−CF3 、−C2 F5 、−C3 F7 、−C6 F13、−C7 F15または−CF(CF3 )[OCF2 CF(CF3 )]p OC3 F7 (式中、pは0,1もしくは2である)で表されること。
〔3〕特定のフッ素系化合物が、下記式(2)で示される化合物であること。
〔4〕シランカップリング剤を示す上記式(3)のR 6 で表される反応性有機官能基がメルカプト基またはビニル基であること。
〔5〕シランカップリング剤の溶液中に未架橋のゴム基材を浸漬することにより、当該シランカップリング剤を当該ゴム基材の表面近傍に存在(付着)させるとともに、当該ゴム基材をフッ素系化合物の溶液中に浸漬することにより、当該フッ素系化合物を当該ゴム基材の表面近傍に存在(付着)させること。
〔6〕シランカップリング剤をゴムに配合して混練することにより、当該シランカップリング剤を未架橋のゴム基材の表面近傍に存在させるとともに、当該ゴム基材をフッ素系化合物の溶液中に浸漬することにより、当該フッ素系化合物を当該ゴム基材の表面近傍に存在(付着)させること。
【0013】
【化4】
【0014】
〔式中、RF は、−CF(CF3 )OC3 F7 で示される基を示す。x’は2〜3である。〕
【0015】
【作用】
特定のフッ素系化合物と、シランカップリング剤とが表面近傍に存在しているゴム基材を加熱処理することにより、当該ゴム基材を構成するゴムが架橋するとともに、当該ゴムのポリマー主鎖に、シランカップリング剤を介して、特定のフッ素系化合物に由来の構造を結合させることができる。
すなわち、加熱処理されるゴム基材の表面近傍においては、(a)ゴムの架橋反応、(b)特定のフッ素系化合物の有する官能基(R1 )と、シランカップリング剤の有する加水分解性基との反応、(c)シランカップリング剤の有する反応性有機官能基と、ゴムのポリマー主鎖との反応が起こる。
このように、特定のフッ素系化合物に由来の構造とシランカップリング剤との間、および、シランカップリング剤とゴムのポリマー主鎖との間に化学的な結合が形成されるため、特定のフッ素系化合物に由来の構造(改質層)は、ゴム基材の表面に対して強固に密着することになる。
さらに、特定のフッ素系化合物の有する官能基と、シランカップリング剤の有する加水分解性基との反応により形成されるハイブリッドは、熱安定性に優れ、特定のフッ素系化合物に対して良溶媒である種々の溶剤に対しても不溶性または難溶性となるため、ゴムの耐薬品性(耐油性・耐溶剤性)を格段に向上させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する
本発明の改質方法は、特定のフッ素系化合物と、シランカップリング剤とを、未架橋のゴム基材の表面近傍に存在させる工程と、当該ゴム基材を加熱処理する工程とを含む点に特徴を有する。
ここに、「ゴム基材の表面近傍に存在」とは、ゴム基材の表面に付着している態様のほか、表面近傍における基材内部に含有されているような態様が含まれる。なお、特定のフッ素系化合物またはシランカップリング剤の全量をゴム基材の表面近傍に存在(偏在)させる必要はないことは勿論である。
【0017】
<ゴム基材>
本発明の改質方法により表面処理されるゴム基材(原料ゴム)としては、特に限定されるものではなく、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、アクリルゴム(ACM,ANM)、エピクロロヒドリンゴム(CO,ECO)、シリコーンゴム(VMQ,FVMQ)、ウレタンゴム(AU,EU)、フッ素ゴム(FKM,FEPM)などを例示することができる。
ゴム基材を構成するゴム組成物中には、架橋剤、架橋促進剤、老化防止剤、充填剤、可塑剤など、従来公知の種々のゴム用配合剤が含有されていてもよい。
【0018】
<特定のフッ素系化合物>
本発明の改質方法に使用される特定のフッ素系化合物は、フルオロアルキル基を含有する基(RF )を分子両末端に有し、加水分解性基との反応性を有する官能基(R1 )を中間鎖に有する、分子量が500〜50,000程度のフッ素系のオリゴマーである。
【0019】
特定のフッ素系化合物を構成するフルオロアルキル基を含有する基(RF )の具体例としては、−CF3 、−C2 F5 、−C3 F7 、−C6 F13および−C7 F15など−Cq F2q+1(q=1〜10)で表されるフルオロアルキル基;−CF(CF3 )OC3 F7 、−CF(CF3 )[OCF2 CF(CF3 )]OC3 F7 、および−CF(CF3 )[OCF2 CF(CF3 )]2 OC3 F7 で表される基(オキシフルオロアルキレン基およびフルオロアルキル基を含有する基)を例示することができ、これらのうち、−CF(CF3 )OC3 F7 で表される基が特に好ましい。
【0020】
特定のフッ素系化合物を構成する官能基(R1 )は、加水分解性基との反応性を有するものであり、これにより、シランカップリング剤との結合が担保される。かかる官能基(R1 )としては、トリメトキシシリル基などのアルコキシシリル基を挙げることができる。
特定のフッ素系化合物を構成する基(R2 )は、水素原子またはメチル基などのアルキル基である。
【0021】
特定のフッ素系化合物を構成する基(R3 )は、水素原子または1価の有機基であり、ゴムの表面に付与すべき機能などに応じて適宜の基を選択することができる。かかる基(R3 )としては、下記に示すような基を挙げることができる。
【0022】
【化5】
【0023】
特定のフッ素系化合物を示す上記式(1)において、xは1〜100の整数とされ、好ましくは1〜50とされる。
また、yは0〜100の整数とされ、好ましくは0〜50とされる。
特定のフッ素系化合物として好適な化合物としては、上記式(2)で表される化合物を挙げることができる。
【0024】
上記式(1)で示されるフッ素系化合物は、下記式(1A)で示される含フッ素過酸化物の存在下に、下記式(1B)で示される単量体と、下記式(1C)で示される単量体とを重合させることにより得ることができる。
【0025】
【化6】
【0026】
特定のフッ素系化合物を未架橋のゴム基材の表面近傍に存在させる方法としては、当該フッ素系化合物を適宜の溶剤に溶解してなる溶液中に、当該ゴム基材を浸漬する方法を挙げることができる。
ここに、特定のフッ素系化合物の溶剤としては、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ベンゼン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、アセトンなどを挙げることができる。
【0027】
<シランカップリング剤>
本発明の改質方法に使用されるシランカップリング剤は、特定のフッ素系化合物およびゴムのポリマー主鎖のそれぞれと反応して、両者の間に強固な結合を形成する。かかるシランカップリング剤としては、下記式(3)で示されるものを挙げることができる。
【0028】
【化7】
【0029】
シランカップリング剤を示す上記式(3)において、R4 は、アルキル基またはアルコキシアルキル基を示し、R5 はアルキル基を示す。また、mは1〜3の整数、好ましくは3であり、nは0〜5の整数、好ましくは0〜3の整数である。
【0030】
シランカップリング剤の有する加水分解性基〔Si(OR4 )m R5 3-m −〕と、特定のフッ素系化合物の有する官能基(R1 )とが反応することにより、熱安定性に優れたハイブリッドが形成される。
かかる加水分解性基としては、トリメトキシシリル基などのアルコキシシリル基を挙げることができる。
【0031】
シランカップリング剤を示す上記式(3)において、R6 は、ゴムのポリマー主鎖との反応性を有する有機官能基を示す。
ここに、反応性有機官能基(R6 )としては、不飽和結合を有するゴムのポリマー主鎖に対して反応性を有するメルカプト基、不飽和結合を有しないゴムのポリマー主鎖に対して反応性を有するビニル基を好適なものとして挙げることができる。
このように、ゴムの種類(ポリマー主鎖中の不飽和結合の有無)に応じて、反応性有機官能基(R6 )を選択することによれば、特定のフッ素系化合物として同一種類の化合物を種々のゴムに対して使用することが可能となる。
【0032】
シランカップリング剤を未架橋のゴム基材の表面近傍に存在させる方法としては、(i)当該シランカップリング剤をゴム中に配合して混練する方法、(ii)当該シランカップリング剤を適宜の溶剤に溶解してなる溶液中に、当該ゴム基材を浸漬する方法を挙げることができる。
上記(i)の方法において、シランカップリング剤の配合量としては、当該ゴム組成物中に配合される充填剤の量などによっても異なるが、例えば、原料ゴム100質量部あたり0.5〜2質量部とされる。
上記(ii)の方法において、シランカップリング剤の溶剤としては、メタノール、エタノールなどの有機溶剤を例示することができる。
【0033】
<ハイブリッド化>
特定のフッ素系化合物と、シランカップリング剤とが表面近傍に存在しているゴム基材を加熱処理することにより、特定のフッ素系化合物(官能基R1 )と、シランカップリング剤(加水分解性基)とが反応してハイブリッドが形成される。また、当該シランカップリング剤(反応性有機官能基R6 )と、ゴムのポリマー主鎖とが反応して、前記特定のフッ素系化合物に由来の構造を含む当該ハイブリッドが当該ポリマー主鎖に結合する。
下記式(4)は、上記式(2)で示される特定のフッ素系化合物の加水分解物と、上記式(3)で示されるシランカップリング剤の加水分解物との縮合反応により形成される、シロキサン結合を有するハイブリッド構造の一例を示している。
【0034】
【化8】
【0035】
ゴム基材の加熱処理条件としては、(a)ゴムの架橋反応、(b)特定のフッ素系化合物とシランカップリング剤との縮合反応、(c)シランカップリング剤とゴムのポリマー主鎖との反応を十分に進行させる観点から規定される。具体的には、140〜180℃で5〜30分間とされる。加熱処理方法としては、プレスによる加熱が好ましい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。なお、以下において「部」は「質量部」を意味するものとする。
【0037】
〔調製例1(未架橋ゴム組成物の調製)〕
ニトリルゴム「Nipol DN202H」(日本ゼオン(株)製)100部と、硫黄1部と、酸化亜鉛5部と、ステアリン酸「アデカ脂肪酸SA−300」1部と、架橋促進剤「ノクセラーZTC」(大内新興化学(株)製)1部と、架橋促進剤「ノクセラーTOT−N」(大内新興化学(株)製)4部と、架橋促進剤「ノクセラーDM」(大内新興化学(株)製)2部とを8インチロールにより混練してニトリルゴム組成物を得た。
【0038】
〔調製例2(未架橋ゴム組成物の調製)〕
下記式(5)で示されるシランカップリング剤「A−189」〔日本ユニカー(株)製〕1部を配合して混練したこと以外は調製例1と同様にしてニトリルゴム組成物を得た。
【0039】
【化9】
【0040】
〔調製例3(フッ素系化合物を含有する処理液の調製)〕
エタノール95体積%と水5体積%からなる混合溶剤に、酢酸2滴を添加した後、当該混合溶剤に、上記式(2)で示される特定のフッ素系化合物を添加し、当該フッ素系化合物の濃度が1質量%の処理液を調製した。
【0041】
<実施例1>
調製例1により得られたニトリルゴム組成物からなる未架橋ゴムシートを、シランカップリング剤「A−189」のエタノール溶液(濃度1質量%)中に30分間浸漬し、当該未架橋ゴムシートを室温にて乾燥して溶剤(エタノール)を除去した。
次いで、当該未架橋ゴムシートを、調製例3で得られた処理液中に30分間浸漬し、当該未架橋ゴムシートを室温にて乾燥して混合溶剤を除去した。
上記のようにして、特定のフッ素系化合物と、シランカップリング剤とを表面に存在させた未架橋ゴムシートを150℃で10分間プレスによって加熱処理(架橋処理)することにより、特定のフッ素系化合物によって表面処理された架橋ゴムシートを得た。これを処理シート(1A)とする。
【0042】
<実施例2>
調製例2により得られたニトリルゴム組成物からなる未架橋ゴムシートを、調製例3で得られた処理液中に30分間浸漬し、当該未架橋ゴムシートを室温にて乾燥して混合溶剤を除去した。
上記のようにして、特定のフッ素系化合物と、シランカップリング剤とを表面に存在させた未架橋ゴムシートを150℃で10分間プレスによって加熱処理(架橋処理)することにより、特定のフッ素系化合物によって表面処理された架橋ゴムシートを得た。これを処理シート(2A)とする。
【0043】
<比較例1>
調製例1により得られたニトリルゴム組成物からなる未架橋ゴムシートを150℃で10分間プレスによって加熱処理することにより、架橋ゴムシートを得た。これを比較用シート(1B)とする。
【0044】
<比較例2>
調製例2により得られたニトリルゴム組成物からなる未架橋ゴムシートを150℃で10分間プレスによって加熱処理することにより、架橋ゴムシートを得た。これを比較用シート(2B)とする。
【0045】
<比較例3>
調製例1により得られたニトリルゴム組成物からなる未架橋ゴムシートを、調製例3で得られた処理液中に30分間浸漬し、当該シートを室温にて乾燥して混合溶剤を除去した。
上記のようにして、特定のフッ素系化合物を表面に存在させた未架橋ゴムシートを150℃で10分間プレスによって加熱処理(プレス架橋)することにより、表面処理された比較用の架橋ゴムシートを得た。これを比較用シート(3B)とする。
【0046】
<比較例4>
調製例1により得られたニトリルゴム組成物からなる未架橋ゴムシートを150℃で10分間プレスによって加熱処理することにより、架橋ゴムシートを得た。この架橋ゴムシートを、シランカップリング剤「A−189」のエタノール溶液(濃度1質量%)中に30分間浸漬し、当該架橋ゴムシートを室温にて乾燥して溶剤(エタノール)を除去した。
次いで、当該架橋ゴムシートを、調製例3で得られた処理液中に30分間浸漬し、当該架橋ゴムシートを室温にて乾燥して混合溶剤を除去した。
上記のようにして、特定のフッ素系化合物と、シランカップリング剤とを表面に存在させた架橋ゴムシートを150℃で10分間加熱処理することにより、表面処理された比較用の架橋ゴムシートを得た。これを比較用シート(4B)とする。
【0047】
<シートの評価>
実施例1〜2で得られた処理シート(1A)〜(2A)、および比較例1〜4で得られた比較用シート(1B)〜(4B)の各々について、JIS K 6258に準拠して浸漬試験を実施して耐薬品性(耐油性)を評価した。結果を下記表1に示す。試験条件は、下記のとおりである。
【0048】
・試験片の寸法:50mm×20mm×2mm
・試験片の数 :3個/シート
・浸漬用液体 :イソオクタン
・浸漬温度/時間:25℃×24時間
【0049】
【表1】
【0050】
上記表1に示す結果から理解されるように、特定のフッ素系化合物と、シランカップリング剤とを表面に存在させた未架橋ゴムシートを加熱処理(架橋処理)して作製した処理シート(1A)および(2A)は、それぞれ、表面処理を施していない比較用シート(1B)および(2B)と比較して、体積変化率が小さく、表面処理による耐薬品性(耐油性)の向上効果が認められる。
これに対して、カップリング剤を使用しないで作製した比較用シート(3B)、架橋ゴムシートに対して表面処理(浸漬処理)を施した比較用シート(4B)の体積変化率は、何れも、比較用シート(1B)および(2B)の体積変化率と同等であり、これらの処理によっては耐薬品性(耐油性)の向上効果は認められない。
【0051】
【発明の効果】
本発明の表面改質方法によれば、下記の効果が奏される。
(1)特定のフッ素系化合物に由来の構造を、ゴム基材のポリマー主鎖に確実かつ効率的に結合させることができ、当該フッ素系化合物による改質効果を安定的に発現させることができる。
(2)処理されるゴムの種類に応じて、シランカップリング剤の反応性有機官能基を選択することにより、特定のフッ素系化合物として、同一種類の化合物を種々のゴムに対して使用することが可能となる。
Claims (7)
- 下記式(1)で示されるフッ素系化合物と、下記(3)で示されるシランカップリング剤とを、未架橋のゴム基材の表面近傍に存在させる工程と、当該ゴム基材を加熱処理する工程とを含むことを特徴とするゴムの表面改質方法。
式(3)中、R 4 はアルキル基またはアルコキシアルキル基、R 5 はアルキル基、R 6 は、ゴムのポリマー主鎖との反応性を有する有機官能基を表す。mは1〜3の整数であり、nは0〜5の整数である。) - 前記フッ素系化合物を示す上記式(1)において、R1 で表される官能基がトリメトキシシリル基であることを特徴とする請求項1に記載のゴムの表面改質方法。
- 前記フッ素系化合物を示す上記式(1)において、RF で表されるフルオロアルキル基を含有する基が、−CF3 、−C2 F5 、−C3 F7 、−C6 F13、−C7 F15または−CF(CF3 )[OCF2 CF(CF3 )]p OC3 F7 (式中、pは0,1もしくは2である)で表されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴムの表面改質方法。
- 前記シランカップリング剤を示す上記式(3)のR 6 で表される反応性有機官能基がメルカプト基またはビニル基であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のゴムの表面改質方法。
- シランカップリング剤の溶液中に未架橋のゴム基材を浸漬することにより、当該シランカップリング剤を当該ゴム基材の表面近傍に存在させるとともに、当該ゴム基材をフッ素系化合物の溶液中に浸漬することにより、当該フッ素系化合物を当該ゴム基材の表面近傍に存在させることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のゴムの表面改質方法。
- シランカップリング剤をゴムに配合して混練することにより、当該シランカップリング剤を未架橋のゴム基材の表面近傍に存在させるとともに、当該ゴム基材をフッ素系化合物の溶液中に浸漬することにより、当該フッ素系化合物を当該ゴム基材の表面近傍に存在させることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のゴムの表面改質方法。
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