JP4671105B2 - 紙送りロール製造用組成物、紙送りロールおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
紙送りロールの弾性部材(ウレタンエラストマー)の製造方法において、フリーモノマーによる作業環境の悪化を回避するなどの観点から、プレポリマー法が採用されている。このプレポリマー法においては、イソシアネートと、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)などの長鎖ポリオールとを反応させてNCO基末端ウレタンプレポリマーからなる主剤を調製するとともに、短鎖ジオール(1,4−BD)、短鎖トリオール(TMP)および触媒(TEDA等)を含有する硬化剤を調製する。そして、主剤と硬化剤とを混合して成形型内で硬化処理することにより弾性部材を形成する。
然るに、プレポリマー法では、主剤の粘度が過大となるため取扱性に劣る。また、主剤と硬化剤との混合比率の差が大きいため(例えば、100/3〜100/10)、均一な混合操作が困難となるという問題がある。
また、紙送りロールなどの成形品を形成するための注型用ポリウレタン系エラストマー組成物(セミプレポリマー法による組成物)として、MDI系イソシアネートとPTMGとの反応により得られるNCO基末端ウレタンプレポリマーを含有するA液(主剤)と、1,4−BD、炭素数3〜8の主鎖にアルキル側鎖を有するグリコール、PTMGおよび触媒を含有するB液(硬化剤)とからなり、1,4−BDに対するアルキル側鎖を有するグリコールの割合が5〜100モル%である組成物が開示されている(下記特許文献4参照)。
この組成物によれば、硬化剤を構成する短鎖ジオールとして、1,4−BDとともに、アルキル側鎖を有するグリコールが一定の割合で含有されていることにより、高い硬度を有する透明な成形品を形成することができるとされている。
また、下記特許文献4に開示の組成物においても、硬化剤の構成成分の相溶性が低く、硬化剤の液安定性が低いために、再加熱による融解後の相分離の問題を解決することはできない。
このような問題は、硬化剤を構成する短鎖ジオールに占めるアルキル側鎖を有するグリコールの割合が高くなる(これに伴って、得られる硬化物の結晶性が低くなる)ほど顕著になる。また、成型品の表面のべたつきは、比較的低い硬度(例えば、JIS−A硬度で40〜70)の硬化物を得る場合に顕著な問題となる。
べたつきのある成型品(ロール)は、これを積み重ねて保管するときに相互に接着するなどの問題を招来する。
本発明の第2の目的は、注型粘度が低く、必要な注型時間を十分に確保することができて操作性に優れるとともに、硬化速度が高く、短時間で脱型してもべたつきのない表面を有するロールを得ることができる成型性(ロールの生産性)にも優れた紙送りロール製造用組成物を提供することにある。
本発明の第3の目的は、紙送りロールの弾性部材に要求される機械的特性を備えた硬化物を形成することができる紙送りロール製造用組成物を提供することにある。
本発明の第4の目的は、紙送りロールの弾性部材として好適な表面特性(高い摩擦係数)およびその安定性を備えた硬化物を形成することができる紙送りロール製造用組成物を提供することにある。
本発明の第5の目的は、生産性、弾性部材の機械的特性、表面特性およびその安定性に優れた紙送りロールおよびその製造方法を提供することにある。
(B1)PTMGからなる長鎖ジオール、
(B2)2−メチル−1,3−プロパンジオールを50質量%を超える割合で含有する短鎖ジオール、
(B3)トリメチロールプロパン(TMP)を必須成分とする短鎖トリオール、
(B4)1,2−ジメチルイミダゾール(DMI)からなる触媒、
(B5)1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、DBNの塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)およびDBUの塩から選ばれた少なくとも1種の二環式第3級ジアミン(塩)からなる感温性の触媒を含有する硬化剤〔B〕とからなり;
長鎖ジオール(B1)の含有量と、短鎖ジオール(B2)および短鎖トリオール(B3)の合計含有量との比率[(B1)/〔(B2)+(B3)〕]が80/20〜95/5(質量)であり、
短鎖ジオール(B2)の含有量と、短鎖トリオール(B3)の含有量との比率[(B2)/(B3)]が55/45〜95/5(質量)であることを特徴とする。
また、可塑剤〔C〕を含有するが好ましい。
また、本発明の紙送りロールは、可塑剤を含有する本発明の組成物を成形型内で硬化処理することにより形成される、JIS−A硬度が40〜60の弾性部材を備えてなることを特徴とする。
本発明の製造方法は、可塑剤を含有しない本発明の組成物を成形型内で硬化処理して、JIS−A硬度が60を超え70以下の弾性部材を形成する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の製造方法は、可塑剤を含有する本発明の組成物を成形型内で硬化処理して、JIS−A硬度が40〜60の弾性部材を形成する工程を含むことを特徴とする。
(2)本発明の組成物は、注型粘度が低く、必要な注型時間を十分に確保することができて操作性に優れるとともに、硬化速度が高く、短時間で脱型しても、べたつきのない表面を有するロールを得ることができて成型性(ロールの生産性)にも優れている。
(3)本発明の組成物によれば、紙送りロールの弾性部材に要求される機械的特性を備えた硬化物を形成することができる。
(4)本発明の組成物によれば、紙送りロールの弾性部材として好適な表面特性(高い摩擦係数)およびその安定性を備えた硬化物を形成することができる。
(5)本発明の紙送りロールは、生産性に優れるとともに、これを構成する弾性部材の表面にべたつきはなく、さらに、当該弾性部材の機械的特性、表面特性およびその安定性に優れている。
本発明の組成物は、紙送りロールの弾性部材を形成するために使用する熱硬化性のウレタンエラストマー組成物であって、NCO基末端ウレタンプレポリマーを含有する主剤〔A〕と;長鎖ジオール(B1)、短鎖ジオール(B2)、短鎖トリオール(B3)、DMIからなる触媒(B4)、二環式第3級ジアミン(塩)からなる感温性の触媒(B5)を含有する硬化剤〔B〕とからなる。
主剤〔A〕の必須成分であるNCO基末端ウレタンプレポリマーは、MDI系イソシアネートとPTMGとの反応により得られる。
また、NCO基末端ウレタンプレポリマーを含有する主剤〔A〕の粘度(75℃)としては、通常1,000mm2 /s以下とされ、好ましくは500mm2 /s以下とされる。
ここに、NCO/OH(モル比)は1.5〜30.0であることが好ましく、更に好ましくは2.0〜10.0とされる。
この反応は、窒素置換した反応容器内で行われることが好ましい。
反応温度は60〜100℃であることが好ましく、更に好ましくは70〜90℃とされる。
なお、この反応においては、必要に応じて、有機金属系、アミン系等の公知のウレタン化触媒を使用してもよい。
また、必要に応じて、この反応系に鎖延長剤を併用してもよい。すなわち、MDI系イソシアネートとPTMGと鎖延長剤とを反応させることにより得られるプレポリマーも、主剤〔A〕を構成する「NCO基末端ウレタンプレポリマー」に包含される。
かかる鎖延長剤としては、後述する短鎖ジオール(B2)として使用されるものと同一の化合物を挙げることができる。
このようにして得られた主剤〔A〕を、反応温度にて収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓して冷却する。
硬化剤〔B〕を構成する長鎖ジオール(B1)はPTMGからなり、その平均分子量としては、500〜5,000であることが好ましく、更に好ましくは700〜3,000とされる。
短鎖ジオール(B2)を構成するジオールの分子量としては50〜300であることが好ましく、更に好ましくは60〜250とされる。
2−メチル−1,3−プロパンジオールの割合が50質量%以下である短鎖ジオールは、PTMG(長鎖ジオール)との相溶性が低いため、得られる硬化剤において、再加熱による融解後の相分離の問題を解決することはできない(後述する比較例1参照)。
短鎖トリオール(B3)を構成するトリオールの分子量としては50〜400であることが好ましく、更に好ましくは70〜300とされる。
短鎖トリオール(B3)に占めるTMPの割合としては、50質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは100質量%とされる。
短鎖トリオール(B3)を含有させることにより、得られる硬化物に架橋構造が導入され、当該硬化物は、紙送りロールの弾性部材に要求される機械的特性を備えたものとなる。
この比率が80/20未満(長鎖ジオールが過少)である場合には、構成成分の相溶性がきわめて低いものとなり、均質な硬化剤を調製することができない(後述する比較例3参照)。
一方、この比率が95/5を超える(長鎖ジオールが過剰)場合には、得られる硬化剤を含む組成物によって形成される硬化物の圧縮永久歪が過大となり、当該硬化物は、紙送りロールの弾性部材に要求される圧縮特性を備えたものとならない。また、当該硬化物は、その表面特性(摩擦係数)が変化しやすく、紙送りロールとしての耐久性に劣る(後述する比較例4参照)。
この比率が55/45未満(短鎖ジオールが過少)である場合には、得られる硬化剤を含む組成物から形成される硬化物の引張強度および引裂強度が低過ぎて、紙送りロールの弾性部材に要求される機械的特性を備えたものとならない。また、当該硬化物は、圧縮特性には優れているものの、その表面特性(摩擦係数)が変化しやすく、紙送りロールとしての耐久性に劣る。また、引張強度および引裂強度が低いことに起因して、使用中に亀裂を生じることがある(後述する比較例5参照)。
一方、この比率が95/5を超える(短鎖ジオールが過剰)場合には、得られる硬化剤を室温まで冷却して固化させた後、これを再加熱して融解させると、構成成分が二層に分離してしまう(後述する比較例2参照)。
そして、このような問題については、TEDAに代わる触媒として二環式第3級ジアミン(塩)からなる感温性触媒(B5)を使用することによって解決することができる。
しかし、二環式第3級ジアミン(塩)のみを触媒として含有する組成物(主剤と硬化剤との混合物)が一定温度に到達すると、硬化反応が急激に進むものの、ウレタン化反応と併せて、アロファネート化、ビウレット化、イソシアヌレート化などの副反応が発生し、高分子化が不十分となる傾向があり、このようにして得られる硬化物は、圧縮永久歪が大きいものとなる(後述する比較例7参照)。
そこで、比較的ウレタン化を促進する反応性が緩やかなDMIからなる触媒(B4)に、感温性触媒(B5)を併用することにより、組成物の急激な反応性を緩和し、表面にべたつきを生じさせることなく、しかも、十分に高分子化された硬化物(紙送りロールの弾性部材)の形成を可能にしたものである。
感温性の触媒(B5)は、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5)、DBNの塩、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7)およびDBUの塩から選ばれた少なくとも1種の二環式第3級ジアミン(塩)からなる。
DBNの塩およびDBUの塩としては、これらのギ酸塩、オクチル酸塩などを例示することができる。
可塑剤を含有しない組成物における触媒の使用量(両触媒の総量)は、ポリオール成分100質量部に対して0.01〜1質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.03〜0.8質量部とされ、特に好ましくは0.05〜0.5質量部とされる。
可塑剤を含有する組成物における触媒の使用量は、ポリオール成分100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.03〜3質量部とされ、特に好ましくは0.05〜1質量部とされる。
一方、触媒の使用量(両者の総量)が過剰である場合には、得られる組成物のポットライフが極端に短くなり、注型操作が不可能または困難となる。また、当該組成物によって形成される硬化物の表面に触媒のブリードが生じ、紙を汚染することがある。
一方、触媒(B4)の割合が過小〔触媒(B5)の割合が過大〕である場合には、得られる組成物から形成される硬化物が黄変したり、脆性を示したりすることがある。
ここに、混合時の温度は40〜80℃であることが好ましく、更に好ましくは50〜70℃とされる。
このようにして得られた硬化剤〔B〕を、混合時の温度にて収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓して冷却する。これにより、硬化剤〔B〕は固化する。
本発明の組成物には、さらに可塑剤〔C〕が含有されていることが好ましい。
可塑剤〔C〕の使用により、得られる組成物の粘度を調整し、当該組成物から形成される硬化物の機械的特性(硬度)や表面特性(摩擦係数)を調整することができる。
具体的には、仕様に応じて、硬化物の硬度を40〜60に調整し、硬化物表面における摩擦係数を一定以上として、得られるロールに紙葉分離機能を確実に発現させることができる。
かかる可塑剤〔C〕としては、ジブチルグリコールアジペート、ジブチルカルビトールアジペート等のアジペート系可塑剤;クレジルジフエニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート等のホスフェート系可塑剤;「RS700」(旭電化(株)製)、「RS735」(同社製)として市販されているポリエーテルエステル系可塑剤;「RS705」(同社製)として市販されているポリエーテル系可塑剤;DOP、DINPなどのフタレート系可塑剤;「日石ハイゾール SAS−269」(新日本石油(株)製)、「日石ハイゾール SAS−LH」(同社製)として市販されている芳香族炭化水素系可塑剤などを挙げることができる。
可塑剤〔C〕は、主剤〔A〕および硬化剤〔B〕の少なくとも一方の構成成分として、予め配合することにより使用することができるが、主剤〔A〕中に配合することが好ましい。これにより、主剤〔A〕の粘度が低下し、これと硬化剤〔B〕との混合操作、および混合して得られる本発明の組成物の注型操作を容易に実施することができる。
可塑剤〔C〕の使用量としては、主剤〔A〕を構成するNCO基末端ウレタンプレポリマー、長鎖ジオール(B1)、短鎖ジオール(B2)および短鎖トリオール(B3)からなる樹脂成分100質量部に対して5〜80質量部であることが好ましく、更に好ましくは10〜40質量部とされる。
可塑剤〔C〕の使用量が過少である場合には、可塑剤の配合による効果(例えば、硬化物表面の摩擦係数の低下防止効果)を十分に発揮させることができない。一方、可塑剤〔C〕の使用量が過剰である場合には、硬化物の機械的特性(硬度および強度)が大幅に低下して、ウレタンエラストマー本来の耐摩耗性が損なわれる。また、ロール加工性(特に研磨性)も悪化する傾向がある。
本発明の組成物には、必要に応じて各種の任意成分が含有されていてもよい。
かかる任意成分としては、染料、顔料、充填剤、導電剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、抗菌剤などを例示することができる。
本発明の組成物は、紙送りロールの弾性部材を形成するために使用するための組成物であるが、これと同一組成のものは、紙送りロールの弾性部材以外の用途(特に、高い摩擦係数およびその安定性が要求される用途)にも適用することができる。
本発明の製造方法は、本発明の組成物を成形型内で硬化処理して弾性部材を形成する工程を含む紙送りロールの製造方法である。
本発明の製造方法の一例を示せば、主剤〔A〕および硬化剤〔B〕の各々を、60℃に加温(再加熱)し、同温度で両者を混合し、減圧脱泡処理して本発明の組成物とし、これを、ロール芯金が配されている成形型内に注入して加熱硬化させる。
これにより、ロール芯金の表面が硬化物(弾性部材)により被覆された紙送りロールを得ることができる。
ここに、主剤〔A〕と硬化剤〔B〕との混合比率としては、前者の有するNCO基と、後者の有するOH基とのモル比(NCO/OH)=0.8/1〜1.2/1となる比率であることが好ましく、更に好ましくは0.9/1〜1.1/1となる比率とされる。
なお、成形型の表面には、離型剤が塗布されていることが好ましい。かかる離型剤としては、一般に使用されているフッ素系、シリコーン系、ワックス系などの離型剤を挙げることができる。
本発明の製造方法によれば、短い時間で硬化反応を完了させることができ、短い時間で脱型しても、未反応のNCO基やOH基に起因するべたつきのない表面を有するロールを得ることができる。
本発明の紙送りロールは、下記(1)または(2)に示す紙送りロールである。
(1)可塑剤を含有しない本発明の組成物を成形型内で硬化処理することにより形成される、JIS−A硬度が60を超え70以下の弾性部材を備えてなる紙送りロール(以下、「第1の紙送りロール」ともいう。)。
(2)可塑剤を含有する本発明の組成物を成形型内で硬化処理することにより形成される、JIS−A硬度が40〜60の弾性部材を備えてなる紙送りロール(以下、「第2の紙送りロール」ともいう。)。
本発明の紙送りロールを構成する弾性部材は、優れた機械的特性を有すると共に、好適な表面特性(高い摩擦係数およびその安定性)、良好な外観を有している。
第1の紙送りロールは、複写機やプリンタなどに搭載される紙葉搬送ロール、ATMや自動販売機などに搭載される紙幣搬送ロールなどとして好適に使用することができる。
第2の紙送りロールを構成する弾性部材のJIS−A硬度は40〜60とされる。そして、このように比較的低い硬度であるにも関わらず、当該弾性部材の表面において、べたつきなどは生じない。
第2の紙送りロールは、複写機やプリンタなどの給紙装置に搭載されるピックアップロール、フィードロール、リタードロールなど、紙葉分離機能が要求される給紙ロールなどとして好適に使用することができる。
下記表1に示す処方に従って、窒素置換した反応容器内に、MDI系イソシアネートとPTMGとを仕込み、80℃で4時間反応させることによりNCO基末端ウレタンプレポリマーを得(反応の終了はNCO含量滴定で確認した)、これを収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓して室温まで冷却することにより、主剤〔A〕〔主剤(A−1)〕を得た。
NCO基末端ウレタンプレポリマーからなる主剤(A−1)のNCO含量および粘度(75℃)を下記表1に併せて示す。
下記表1に示す処方に従って、窒素置換した反応容器内に、MDI系イソシアネートとPTMGとを仕込み、80℃で4時間反応させることによりNCO基末端ウレタンプレポリマーを得(反応の終了はNCO含量滴定で確認した)、これに可塑剤を添加して1時間程度攪拌混合した後、これを収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓することにより、主剤〔A〕〔主剤(A−2)〜(A−5)〕の各々を得た。
NCO基末端ウレタンプレポリマーと可塑剤とからなる主剤(A−2)〜(A−5)の各々について、NCO含量および粘度(75℃)を下記表1に併せて示す。
*2)カルボジイミド変性液状MDI:「ミリオネート(登録商標)MTL」(日本ポリウレタン工業(株)製)。
*3)「PTG−850SN」:平均分子量850のPTMG(保土谷化学工業(株)製)。
*4)「PTG−1000SN」:平均分子量1,000のPTMG(保土谷化学工業(株)製)。
*5)「PTG−2000SN」:平均分子量2,000のPTMG(保土谷化学工業(株)製)。
*6)炭化水素系可塑剤:「日石ハイゾール(登録商標)SAS−LH」(新日本石油化学(株)製)。
下記表2に示す配合処方に従って、長鎖ジオール(B1)と、短鎖ジオール(B2)と、短鎖トリオール(B3)と、触媒(B4)と、感温性の触媒(B5)とを60℃の加温下に1時間混合することにより硬化剤〔B〕を調製した。調製直後(液温=60℃)における硬化剤〔B〕の状態を目視により観察したところ、懸濁したり相分離したりすることなく均質な状態を示していた。得られた硬化剤〔B〕を収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓して室温まで冷却した。これにより硬化剤〔B〕は固化した。 その後、硬化剤〔B〕を60℃に加温(再加熱)し、これにより融解した硬化剤〔B〕の状態を目視により観察したところ、相分離することなく均質な状態を示していた。
次いで、60℃に加温された主剤(A−1)と、当該硬化剤〔B〕(液温=60℃)とを混合することにより本発明の組成物を調製し、得られた組成物について、下記の項目(1)〜(8)の測定ないし評価を行った。結果を下記表4に示す。
主剤(A−1)と硬化剤〔B〕とを混合してから2分後における粘度を「注型粘度」として、これを測定した。注型操作性の観点から、注型粘度は4,000mPa・s以下であることが必要であり、2,000mPa・s以下であることが好ましい。
主剤〔A〕と硬化剤〔B〕とを混合してから、混合物(本発明の組成物)の粘度が100,000mPa・s(130℃)に到達するまでの時間を「ポットライフ」として、これを測定した。注型操作性の観点から、ポットライフは5〜15分間程度であることが好ましい。
本発明の組成物を成形型内に注入し、130℃で加熱硬化させたときの脱型可能時間を測定した。ここに、「脱型可能時間」とは、破壊や亀裂が生じることなく、ロール形状を保持した状態で無理なく脱型できる時間をいい、成型性(生産性)の観点から60分以内であることが必要とされ、30分以内であることが好ましい。
本発明の組成物を成形型内に注入し、130℃で60分間の加熱条件で硬化させ、得られた硬化物を室温下に7日間静置した後、その表面を手指で触れてべたつきの有無を確認した。
本発明の組成物を成形型内に注入し、130℃で60分間の加熱条件で硬化させ、得られた硬化物を室温下に7日間静置した後、当該硬化物から試験片を作製し、JIS K 7321に準拠して、機械的特性〔JIS−A硬度,引張強度,伸び,引裂強度,圧縮永久歪(25%圧縮・70℃×22時間)〕を測定した。
本発明の組成物をロール芯金が配されている成形型内に注入し、130℃で60分間の加熱条件で硬化させることにより、ロール芯金の表面が硬化物(弾性部材)により被覆された紙送りロールを製造した。
このようにして得られた紙送りロールの表面(硬化物の表面)における摩擦係数(μ0 )を測定した。紙送りロールに要求される表面の摩擦係数は1.4以上であることが必要である。
上記(6)により得られた紙送りロールを実機(複写機)に搭載し、10万回の紙送りを行わせた後、上記(6)と同様にして、紙送りロールの表面における摩擦係数(μ)を測定し、その変化率〔(μ0 −μ)/μ0 〕を求めた。この変化率は20%以下であることが必要である。
上記(6)により得られた紙送りロールを実機(複写機)に搭載し、10万回の紙送りを行わせた後、ロールの表面を観察して亀裂の発生の有無を調べた。
下記表2および表3に示す配合処方に従って、構成成分の成分比率を変更したこと以外は実施例1と同様にして硬化剤〔B〕を調製した。得られた硬化剤〔B〕の各々について、調製直後(液温=60℃)における状態を目視により観察したところ、何れの硬化剤〔B〕も、懸濁したり、相分離したりすることなく均質な状態を示していた。得られた硬化剤〔B〕の各々を収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓して室温まで冷却した(これにより硬化剤〔B〕の各々は固化した)。
その後、硬化剤〔B〕の各々を60℃に加温(再加熱)し、これにより融解した硬化剤〔B〕の状態を目視により観察したところ、何れの硬化剤〔B〕も、相分離することなく均質な状態を示していた。
次いで、下記表2および表3に示す主剤〔A〕(液温=60℃)と、当該硬化剤〔B〕(液温=60℃)とを混合することにより本発明の組成物を調製し、得られた組成物の各々について、上記の項目(1)〜(8)の測定ないし評価を行った。結果を下記表4および表5に示す。
*7)「2ME1,3PD」:2−メチル−1,3−プロパンジオール
下記表6に示す配合処方に従って、構成成分(長鎖ジオール,短鎖ジオール,短鎖トリオール)を60℃の加温下に1時間混合することにより硬化剤を調製した。調製直後(液温=60℃)における硬化剤の状態を目視により観察したところ、相分離することなく均質な状態を示していた。得られた硬化剤を収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓して室温まで冷却した。これにより硬化剤は固化した。
その後、硬化剤を60℃に加温(再加熱)し、これにより融解した硬化剤の状態を目視により観察したところ、構成成分の相分離が認められた。このため、主剤との混合操作は実施しなかった。
この比較例1は、短鎖ジオールに占める2−メチル−1,3−プロパンジオールの割合が50質量%(50質量%以下)の比較例である。
下記表6に示す配合処方に従って、構成成分(長鎖ジオール,短鎖ジオール,短鎖トリオール)を60℃の加温下に1時間混合することにより硬化剤を調製した。調製直後(液温=60℃)における硬化剤の状態を目視により観察したところ、相分離することなく均質な状態を示していた。得られた硬化剤を収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓して室温まで冷却した。これにより硬化剤は固化した。
その後、硬化剤を60℃に加温(再加熱)し、これにより融解した硬化剤の状態を目視により観察したところ、構成成分の相分離が認められた。このため、主剤との混合操作は実施しなかった。
この比較例2は、短鎖ジオールの含有量と短鎖トリオールの含有量との質量比率が96/4(>95/5)の比較例である。
下記表6に示す配合処方に従って、構成成分(長鎖ジオール,短鎖ジオール,短鎖トリオール)を60℃の加温下に1時間混合することにより硬化剤を調製した。調製直後(液温=60℃)における硬化剤の状態を目視により観察したところ、懸濁状態であり、暫くすると相分離を起こした。得られた硬化剤を収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓して室温まで冷却した。これにより硬化剤は固化した。
その後、硬化剤を60℃に加温(再加熱)し、これにより融解した硬化剤の状態を目視により観察したところ、構成成分の相分離が認められた。このため、主剤との混合操作は実施しなかった。
この比較例3は、長鎖ジオール(B1)の含有量と、短鎖ジオール(B2)および短鎖トリオール(B3)の合計含有量との比率が78/22(<80/20)の比較例である。
下記表6に示す配合処方に従って、構成成分(長鎖ジオール,短鎖ジオール,短鎖トリオール,触媒)を60℃の加温下に1時間混合することにより硬化剤を調製した。調製直後(液温=60℃)における硬化剤の状態を目視により観察したところ、相分離することなく均質な状態を示していた。得られた硬化剤を収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓して室温まで冷却した。これにより硬化剤は固化した。
その後、硬化剤を60℃に加温(再加熱)し、これにより融解した硬化剤の状態を目視により観察したところ、相分離することなく均質な状態を示していた。
次いで、60℃に加温された主剤(A−5)と、当該硬化剤(液温=60℃)とを混合することにより比較用の組成物を調製し、得られた組成物について、上記の項目(1)〜(8)の測定ないし評価を行った。結果を下記表7に示す。
この比較例4は、長鎖ジオール(B1)の含有量と、短鎖ジオール(B2)および短鎖トリオール(B3)の合計含有量との比率が96/4(>95/5)の比較例である。
下記表6に示す配合処方に従って、構成成分(長鎖ジオール,短鎖ジオール,短鎖トリオール,触媒)を60℃の加温下に1時間混合することにより硬化剤を調製した。調製直後(液温=60℃)における硬化剤の状態を目視により観察したところ、相分離することなく均質な状態を示していた。得られた硬化剤を収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓して室温まで冷却した。これにより硬化剤は固化した。
その後、硬化剤を60℃に加温(再加熱)し、これにより融解した硬化剤の状態を目視により観察したところ、相分離することなく均質な状態を示していた。
次いで、60℃に加温された主剤(A−2)と、当該硬化剤(液温=60℃)とを混合することにより比較用の組成物を調製し、得られた組成物について、上記の項目(1)〜(8)の測定ないし評価を行った。結果を下記表7に示す。
この比較例5は、短鎖ジオールの含有量と、短鎖トリオールの含有量との比率が50/50(<55/45)の比較例である。
下記表6に示す配合処方に従って、構成成分(長鎖ジオール,短鎖ジオール,短鎖トリオール,触媒)を60℃の加温下に1時間混合することにより硬化剤を調製した。得られた硬化剤の各々について、調製直後(液温=60℃)における状態を目視により観察したところ、何れの硬化剤も、相分離することなく均質な状態を示していた。得られた硬化剤の各々を収容容器に充填し、当該容器の空隙を窒素置換した後に密栓して室温まで冷却した(これにより硬化剤の各々は固化した)。
その後、硬化剤の各々を60℃に加温(再加熱)し、これにより融解した硬化剤の状態を目視により観察したところ、何れの硬化剤も、相分離することなく均質な状態を示していた。
次いで、60℃に加温された主剤(A−2)と、当該硬化剤(液温=60℃)とを混合することにより比較用の組成物を調製し、得られた組成物の各々について、上記の項目(1)〜(8)の測定ないし評価を行った。結果を下記表7に示す。
ここで、比較例6は、触媒としてDMIを単独で使用した比較例、比較例7は、触媒としてDBUのオクチル酸塩をみ単独で使用した比較例、比較例8は、触媒としてTEDAを単独で使用した比較例である。
*7)「2ME1,3PD」:2−メチル−1,3−プロパンジオール
Claims (7)
- 紙送りロールの弾性部材を形成するために使用する熱硬化性のウレタンエラストマー組成物であって、
MDI系イソシアネートとポリ(オキシテトラメチレン)グリコールとの反応により得られるNCO基末端ウレタンプレポリマーを含有する、NCO含量が5〜15%であり、75℃における粘度が1,000mm2 /s以下である主剤〔A〕と;
(B1)ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールからなる平均分子量500〜5,000の長鎖ジオール、
(B2)2−メチル−1,3−プロパンジオールを50質量%を超える割合で含有する分子量50〜300の短鎖ジオール、
(B3)トリメチロールプロパンを必須成分とする分子量50〜400の短鎖トリオール、
(B4)1,2−ジメチルイミダゾールからなる触媒、
(B5)1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5の塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7の塩から選ばれた少なくとも1種の二環式第3級ジアミン(塩)からなる感温性の触媒を含有する硬化剤〔B〕とからなり;
長鎖ジオール(B1)の含有量と、短鎖ジオール(B2)および短鎖トリオール(B3)の合計含有量との比率が80/20〜95/5(質量)であり、
短鎖ジオール(B2)の含有量と、短鎖トリオール(B3)の含有量との比率が55/45〜95/5(質量)である紙送りロール製造用組成物。 - 長鎖ジオール(B1)、短鎖ジオール(B2)および短鎖トリオール(B3)からなるポリオール成分100質量部に対して、触媒(B4)および触媒(B5)が総量で0.01〜5質量部の割合で含有され、
触媒(B4)と触媒(B5)との含有比率が100/5〜100/50(質量)である請求項1に記載の紙送りロール製造用組成物。 - さらに可塑剤〔C〕を含有する請求項1または請求項2に記載の紙送りロール製造用組成物。
- 請求項1または請求項2に記載の組成物であって、可塑剤を含有しないものを成形型内で硬化処理することにより形成される、JIS−A硬度が60を超え70以下の弾性部材を備えてなる紙送りロール。
- 請求項3に記載の組成物を成形型内で硬化処理することにより形成される、JIS−A硬度が40〜60の弾性部材を備えてなる紙送りロール。
- 請求項1または請求項2に記載の組成物であって、可塑剤を含有しないものを成形型内で硬化処理して、JIS−A硬度が60を超え70以下の弾性部材を形成する工程を含む紙送りロールの製造方法。
- 請求項3に記載の組成物を成形型内で硬化処理することにより形成される、JIS−A硬度が40〜60の弾性部材を形成する工程を含む紙送りロールの製造方法。
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