JP4664503B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、幅広い温度範囲において、有機溶媒をベースにした電解液の気化や分解がなく、優れた電池性能を有する非水電解液電池に関し、更に詳しくは、高温保存特性、短絡時における破裂や発火の危険が少ない電池性能の優れた非水電解液電池に関するものである。
背景技術
近年、非水電解液二次電池は、高電圧、高エネルギー密度という優れた自己放電性を有することから、特にパソコン、VTR等の情報機器やAVのメモリーのバックアップやそれらの駆動電源用電池として注目されている。
しかしながら、非水電解液二次電池は上記のような高性能を示すものの、例えば、負極にリチウム金属そのものを用いるリチウム電池では該電池の負極に用いるアルカリ金属、特にリチウム金属やリチウム合金等は水分に対して高活性であり、電池の封止口が不完全で水分が混入した場合、上記負極材と水とが反応して水素が発生したり発火したりする恐れがある。また、リチウム金属の融点は約170℃と低いため、短絡時等に大電流が急激に流れると電池が異常に発熱し、このため電池が溶融するなど、非常に危険な状況に陥る。更に、電池の発熱につれて有機溶媒をベースとする電解液が気化又は分解してガスが発生したり、使いかたを誤るとこのガスにより電池の破裂や発火が起こる可能性がある。
このような短絡時における破裂、発火の危険性を解決する方法として、例えば、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジエトキシエタン、2−メチルジオキソラン、4−メチルジオキソラン及びジオキソランから選ばれる1種の有機溶媒とスルホランを混合した電解液に溶質としてLiCFSOを溶解した非水電解液を用いる方法(特開平01−14877号公報)、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジエチルアミドの一方の有機溶媒に溶質としてLiCFSOを溶解した電解液を用いる方法(特開平01−14878号公報)、ジメトキシエタン、2−メチルジオキソラン、4−メチルジオキソラン及び4−テトラフランから選ばれる1種の有機溶媒とスルホランを混合した電解液に溶質としてLiPF、LiBFから選ばれる少なくとも1種を溶解させた電解液を用いる方法(特開平01−14879号公報)、温度20℃における誘電率が30以上の高誘電率有機溶媒と引火点30℃以上の低粘度有機溶媒との混合物にLiCFSO、LiPF、LiAsF、LiClOから選ばれたすくなくとも1種を溶解させた電解液を用いる方法(特開平01−14880号公報)、フルオロアルキルスルホン基を有するオリゴアルキレンオキシポリホスファゼンを電解質とする方法(特開平02−165565号公報)、低級リン酸エステルを電解液の溶液あるいは助溶媒として利用する方法(特開平04−184870号公報)、フッ素化合物不活性液体のパーフルオロカーボンやリン化合物等の難燃剤を電解質溶液に含有させる方法(特開平06−283205号公報)等が提案されている。一方、リチウム電池やリチウムイオン二次電池に使用する非水電解液として、炭酸プロピレンや炭酸ジエチル等の炭酸エステル系電解質に、電解質としてLiPFを溶解させたものが比較的導電率も高く、電位的にも安定なことから広く用いられている。これらの非水電解液を用いた電池のうち、リチウムイオン二次電池は、金属リチウムを用いた電池と比較して安全性が高いことが知られている。この炭酸エステル系非水溶媒は、電気化学的に比較的安定であると言われているが、非水電解液電池においては、正極や負極の酸化力、還元力が非常に強いため若干ではあるがこれらの炭酸エステル系非水溶媒が正極活物質と反応する可能性がある。このような反応が起こると、反応生成物や分解生成物が電極表面に皮膜となって成長し、電池のインピーダンスの増加をもたらす。その結果、特に大きな電流で放電した際に電圧の降下が著しく、サイクル特性や負荷特性が悪くなると言う問題があった。
このような非水電解液の分解を抑制する方法としては、例えばテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテルの水素原子の一部をアルキル基で置換して、2−メチルテトラヒドロフラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等として安定化する方法(J.L.Goldman,R.M.Mank,J.H.Young and V.R.Koch:J.Electrochem.Soc.,127,1461(1980))、非水電解液にメチルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィド、チアントレン又は1,8−ジスルフィドナフタレン等のスルフィド化合物を添加する方法(特開平07−320779号公報)等が提案されている。
また、特開平06−13108号公報には、非水電解質二次電池の電解質に、25℃以上の粘度が300cP以下のホスファゼン誘導体にリチウム塩を溶解した溶液を使用することにより、安全で優れた電池性能が付与されることが記載されている。ここで開示されているホスファゼン誘導体は、(NPR)n(式中、Rは一価の有機基、nは3〜15)で表される環状ホスファゼン誘導体又はR(P=N)−PR(式中、mは1〜20、Rは一価の有機基、O、又はCの中から選ばれる。)で表される鎖状型ホスファゼン誘導体である。
しかしながら、上記したような従来の電解液にある種の薬剤を添加するという方法では、電解液の分解の面から見ると、常温時では効果があるものの高温時ではなおも電解液の分解がおこり、サイクル特性が低下すると言う欠点があり、また、電解液の難燃化の面から見ると、難燃性はある程度改善されるものの、その反面電池性能が低下すると言う欠点がある。また、ホスファゼン誘導体に関しても、更に優れた電池特性を付与することができる化合物の出現が望まれていた。
したがって、本発明の目的は、幅広い温度範囲において、有機溶媒をベースにした電解液の気化や分解を抑制し、高温保存特性、短絡時における破裂や発火の危険が少ない優れた電池性能を有する非水電解液電池を提供することにある。
発明の開示
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、非水電解液電池の電解液にスルホニル基を有する特定のホスファゼン誘導体を含有させれば、幅広い温度範囲、特に高温時においても、電解液の気化や分解を抑制し、ひいては、非水電解液に難燃性を付与して、発火、引火の危険性を減じ、かつ優れた電池性能を与えることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、正極と、リチウムイオンを吸蔵又は放出可能な負極と、リチウムイオンを含む非水電解液とからなる非水電解液電池において、前記非水電解液は、下記一般式(1);
(RO)P=N−SO (1)
(式中、Rは同一又は異なって、1価の有機基を示す。)及び
下記一般式(2);
(RO)P=N−SO−N=P(OR (2)
(式中、Rは同一又は異なって、1価の有機基を示す。)から選ばれたホスファゼン誘導体の少なくとも1種以上とリチウム塩を含有する溶液であることを特徴とする非水電解液電池を提供するものである。
発明を実施するための最良の手段
本発明の非水電解液電池の電解液は、前記一般式(1)及び前記一般式(2)から選ばれるホスファゼン誘導体の少なくとも1種以上とリチウム塩を含有する溶液であり、好ましくは、当該ホスファゼン誘導体と非プロトン性有機溶媒を混合した混合溶媒にリチウム塩を溶解した溶液である。
本発明において、前記一般式(1)で表されるホスファゼン誘導体の式中、Rの1価の有機基としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数1〜10のエーテル結合を有する基で置換されたアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基が挙げられる。かかるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、n−デシル基、イソデシル基等が挙げられる。エーテル結合を有する基のエーテル結合は1又は2以上を有していてもよい。また、ハロゲン原子としては特に制限されないが、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。
かかる前記一般式(1)で表されるホスファゼン誘導体の製造方法は、例えば、下記反応式(1)及び反応式(2)による方法が挙げられる。
反応式(1);
Figure 0004664503
(式中、Xはハロゲン原子を示す。)
反応式(2);
Figure 0004664503
(式中、Mはアルカリ金属を示し、X及びRは前記に同じ。)
すなわち、上記反応式(1)において、一般式(3)で表されるハロゲン化ホスファゼン誘導体は、ハロゲン化燐とスルファミン酸を有機溶媒中で反応させることにより容易に得ることができる。この場合、ハロゲン化燐に対するスルファミン酸のモル比は、通常0.4〜1.0、好ましくは0.5〜0.6、反応温度は、通常80〜150℃、好ましくは90〜110℃であり、反応時間は、通常3〜24時間、好ましくは6〜12時間である。反応溶媒としては、ハロゲン化燐及びスルファミン酸が溶解するもので、かつ不活性なものであれば特に制限されないが、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素及び塩化メチレン、クロロホルム等のハロアルカン類等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。ハロゲン原子としては塩素原子が好ましい。反応終了後は乾燥、精製等の常法により目的物を得ればよい。
前記反応式(2)において、前記一般式(1)で表されるホスファゼン誘導体は、前記一般式(3)で表されるハロゲン化ホスファゼン誘導体と前記一般式(4)で表されるアルコラート類を有機溶媒中で反応させることにより容易に得ることができる。ハロゲン化ホスファゼン誘導体に対するアルコラート類のモル比は、通常0.5〜6、好ましくは3.6〜4.4である。反応温度は、通常−50〜50℃、好ましくは−40〜−20℃、反応時間は、通常0.5〜24時間、好ましくは3〜12時間である。反応溶媒としては、ハロゲン化ホスファゼン誘導体とアルコラート類を溶解でき、かつ不活性な溶媒であれば特に限定はなく、例えば炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、ハロアルカン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられ、このうち、1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。反応終了後は抽出、脱水、乾燥等の常法により目的物を得ればよい。 一方、本発明において、前記一般式(2)で表されるホスファゼン誘導体の式中、Rの1価の有機基としては、前記一般式(1)のRと同様のものが挙げられる。前記一般式(2)で表されるホスファゼン誘導体の製造方法は、例えば、下記反応式(3)及び反応式(4)による方法が挙げられる。
反応式(3);
Figure 0004664503
(式中、Xはハロゲン原子を示す。)
反応式(4);
Figure 0004664503
(式中、M及びXは前記に同じ、Rは前記Rと同義である。)
すなわち、上記反応式(3)において、一般式(5)で表されるハロゲン化ホスファゼン誘導体は、ハロゲン化燐とスルファミドを有機溶媒中で反応させることにより容易に得ることができる。この場合、ハロゲン化燐に対するスルファミドのモル比は、通常0.4〜1、好ましくは0.4〜0.6、反応温度は、通常80〜120℃、好ましくは100〜120℃であり、反応時間は、通常1〜6時間、好ましくは2〜4時間である。反応溶媒としては、ハロゲン化燐及びスルファミドが溶解するもので、かつ不活性なものであれば特に限定はないが、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン及び1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロアルカン類等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組合わせて用いることができる。反応終了後は乾燥、精製等の常法により目的物を得る。
前記反応式(4)において、前記一般式(2)で表されるホスファゼン誘導体は、前記一般式(5)で表されるハロゲン化ホスファゼン誘導体と前記一般式(6)で表されるアルコラート類を有機溶媒中で反応させることにより容易に得ることができる。前記一般式(5)で表されるハロゲン化ホスファゼン誘導体に対する前記一般式(6)で表されるアルコラート類のモル比は、通常5〜7、好ましくは5.6〜6.6である。反応温度は、通常−50〜0℃、好ましくは−40〜−20℃、反応時間は、通常2〜24時間、好ましくは3〜12時間である。反応溶媒としては、前記ハロゲン化ホスファゼン誘導体と前記アルコラート類が溶解でき、かつ不活性な溶媒であれば特に限定はなく、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等の1種又は2種以上が挙げられ、このうち、1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。Xのハロゲン原子及び一般式(6)中のアルカリ金属としては、特に制限されない。また、反応終了後は濾過、乾燥等の常法により目的物を得る。
本発明の非水電解液電池の電解液には、前記したホスファゼン誘導体の製造方法で、不可逆的に混入する不純物が含有されていても、電池性能を損なわない範囲であれば差し支えなく、例えばリン酸エステル、炭酸エステル等の難燃性化合物と併用することもできる。
本発明の非水電解液電池の電解液には、前記ホスファゼン誘導体と非プロトン性有機溶媒を混合した混合溶媒を用いることが好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、特に制限されないが、例えば、γ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、スルホラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルアセテート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトン等のエーテル化合物やエステル化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いられる。
前記ホスファゼン誘導体の配合割合は、非水電解液中、体積分率にして、通常0.1〜80v/v%の範囲であり、本発明においてこの配合割合は、目的に応じて任意に設計しうる。即ち、前記一般式(1)及び(2)で表されるホスファゼン誘導体は、塩基性を示すため、高温下の電池のサイクル中、特にリチウムの挿脱の繰り返し過程で、電池構成材料の正極活物質、負極活物質、特に電解質塩等の分解物から生成した遊離酸、フッ酸等のトラップ剤、安定化剤として使用する場合には、前記ホスファゼン誘導体の配合割合は、非水電解液中、通常0.1〜20v/v%、好ましくは0.1〜10v/v%とすることで非水電解液電池のサイクル特性、高温保存性を向上させることが出来る。
また、非水電解液電池に難燃性を付与して、電池の破裂や発火を抑制する場合には、非水電解液中、通常1〜80v/v%、好ましくは10〜40v/v%の範囲とすることが好ましい。1v/v%未満では、電池の破裂や発火を抑制するのに不十分であり、一方、80v/v%を越えると、溶液の粘度が増大し、大電流放電に適するリチウムイオン導電性が得られにくく、かつ氷点以下の低温での使用において電池性能が低下する傾向があり好ましくない。
前記混合溶媒に溶解させるリチウム塩としては、混合溶媒に溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、LiClO、LiCl、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiAsF、LiAlCl、LiB(C、LiSbF、LiB10Cl10、LiSiF、LiN(SOCF、LiC(SOCF、低級脂肪酸カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム及び4フェニルホウ酸リチウム等が挙げられ、これらのリチウム塩は、1種又は2種以上で用いられる。これらのリチウム塩の好ましい添加量は、上記溶媒1kgに対して0.1〜3モル、好ましくは0.5〜2モルである。
本発明の非水電解液電池の電解液には、放電や充電特性を改良する目的で、以下に示す化合物を添加することができる。例えば、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノンとN,N−置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ポリエチレングリコール、ピロール、2−メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、導電性ポリマー電極活物質のモノマー、トリエチレンホスホンアミド、トリアルキルホスフィン、モルフォリン、カルボニル基を持つアリール化合物、ヘキサメチルホスホリックトリアミドと4−アルキルモルフォリン、二環性の三級アミン、オイル、ホスホニウム塩及び三級スルホニウム塩等が挙げられる。
本発明の非水電解液電池の正極は、正極活物質、導電剤及び結着剤等からなる正極合剤を集電体上に塗布、乾燥することにより作成される。正極活物質としては、特に限定はなく公知のものを用いることができ、例えば、V、V13、V13、MnO、MoO等の金属酸化物、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiFeO、リチウムと、Co、Ni、Mn、Fe、V、Mo、Cu及びZn等の遷移金属から選ばれた2種以上のリチウム複合金属酸化物、これらの複合金属酸化物にハロゲン化合物等の添加剤が添加されたもの、TiS、MoS、FeS、NbS等の金属硫化物、ポリピロール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体等の導電性ポリマー、黒鉛等が挙げられ、これらの中、リチウム複合金属酸化物を用いることが好ましい。
本発明の非水電解液電池の負極は、負極活材料と結着剤とを含有する負極合剤を、集電体上に塗布、乾燥することにより作成される。集電体には、例えば銅箔等の金属箔が用いられる。負極材料としては、公知の負極材料を用いることができ、例えば、金属リチウム、リチウムとアルミニウム、インジウム、鉛、又は亜鉛等との合金、AgO、TiO、Fe、MgO、V、NiO、CuO、ZnO、Mo、In、SnO、SnO、SnSiO、InSn等の結晶性の複合酸化物、錫酸化物を主体とした周期律表1族、第2族、第13族、第14族、第15族、遷移金属、ハロゲン元素から選ばれる1種以上を含む非晶質の複合金属酸化物、リチウムをドープ・脱ドープすることが出来る炭素材料等が挙げられる。これらの中、リチウムをドープ・脱ドープすることが出来る炭素材料が好ましく、このような炭素材料としては、例えば、難黒鉛化炭素材料やグラファイト系炭素材料が挙げられる。具体的には、熱分解炭素類、コークス類、黒鉛類、ガラス状炭素繊維、有機高分子材料焼成体、炭素繊維、活性炭等が挙げられる。コークス類としては、例えばピッチコークス、石油コークス、石炭コークス等が挙げられる。なお、ここで有機高分子材料焼成体とは、フェノール樹脂、フラン樹脂等の有機高分子材料を所望の温度で焼成し、炭素化したのである。
正極合剤及び負極合剤の電極合剤には、導電剤、結着剤及びフィラーなどを添加することができる。導電剤としては、構成された電池において、化学変化をおこさない電子伝導性材料であれば特に限定されないが、例えば、天然黒鉛、人工黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維や金属粉、金属繊維あるいはポリフェニレン誘導体等の導電性材料が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物として使用することができる。結着剤としては、特に限定されないが、例えば、デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシドなどの多糖類、熱可塑性樹脂及びゴム弾性を有するポリマーなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物として用いられる。
フィラーとしては、構成された電池において、化学変化をおこさない繊維状材料であれば特に限定はなく、通常、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が挙げられる。
本発明の非水電解液電池において、上記した正極、負極間にセパレーターを介在させることが両極の接触による電流の短絡を防ぐことができるため好ましい。セパレーターとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプリロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製の不織布、薄層フィルム等を挙げることができ、特に厚さ20〜50μm程度のポリプロピレン又はポリエチレンの微孔性フィルムを用いることが、両極の接触を確実に防止することができ、かつ電解液を通すことができる点で好ましい。
本発明の非水電解液電池のその他の構成部材としては、通常使用されている公知のものを用いることができる。また、非水電解液電池の形態としては、特に制限されず、ボタンタイプ、ペーパータイプ、コインタイプ、角型又はスパイラル構造の筒型電池等の種々の形態が挙げられ、これらは、薄型、大型等の種々の大きさにすることができる。
本発明の非水電解液電池は、有機溶媒をベースにした電解液にスルホニル基を有する特定のホスファゼン誘導体を含有し、電解液に対する配合割合を設計することにより、非水電解液電池に優れた性能を付与することが出来る。例えば、非水電解液中、通常0.1〜20v/v%、好ましくは0.1〜10v/v%の少ない添加量では、塩基としての作用でサイクル特性を劣化させることなく電解液の分解を抑制し、特に高温時の保存特性に優れる。更に、非水電解液中、通常1〜80v/v%、好ましくは10〜40v/v%の範囲では、電解液に難燃性を付与して、電池の破裂や発火の危険性を減じることができる。
実施例
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
参考例1(ホスファゼン誘導体Aの調製)
攪拌機を付けた四つ口フラスコに五塩化燐639.5g(3.06モル)、スルファミン酸97.1g(1.54モル)及びクロロベンゼン1Lを仕込み、窒素雰囲気中で12時間、100〜105℃で反応させた。反応終了後、常法により、乾燥、蒸留精製して、トリクロロホスファゾスルホニルクロライド265.7g(収率68.8%)を得た。次いで、攪拌機を付けた四つ口フラスコに上記で得たトリクロロホスファゾスルホニルクロライド185.3g(0.74モル)とTHF700mlを仕込み、ジエチレングルコールモノメチルエーテルのアルコラート溶液1066.5g(2.96モル)を、窒素雰囲気中で、−22〜−20℃で一昼夜攪拌下に反応させた。反応終了後、濃塩酸で中和した。次いで、水洗後、クロロホルムで抽出して得られた有機相を脱水、濃縮して、次式;(CHOCHCHOCHCHO)P=N−SO−O−CHCHOCHCHOCH
で示されるホスファゼン誘導体Aを325.9g(収率75.2%)得た。
(ホスファゼン誘導体Aの同定データ)
分子式:C2044NO14PS(分子量585.59)
元素分析:計算値;H:7.57%,C:41.02%,N:2.39%,S:5.47%
実測値;H:8.46%,C:40.45%,N:2.47%,S:5.63%
H−NMR:3.37ppm(s,12H)、3.53〜3.55ppm(m,8H)、3.64〜3.66ppm(m,8H)3.75〜3.78ppm(m,8H)、4.22〜4.29ppm(m,2H)、4.36〜4.41ppm(m,6H)
MASS:586(M+1)
参考例2(ホスファゼン誘導体Bの調製)
攪拌機を付けた四つ口フラスコに五塩化燐66g(0.317)モル、スルファミド15g(0.156モル)を仕込み、窒素雰囲気中で1時間、120℃で反応させた。反応終了後、過剰の五塩化燐を昇華で除去し、ビス(トリクロロホスファゾ)スルホン57g(収率100%)を得た。次いで、攪拌機を付けた四つ口フラスコに上記で得たビス(トリクロロホスファゾ)スルホン46g(0.126モル)とTHFを仕込み、THF0.4Lにエチレングルコールモノメチルエーテルのアルコラート溶液84g(0.86モル)を溶液させたTHF溶液を、窒素雰囲気下で滴下し、−20〜−15℃で一昼夜攪拌下に反応させた。反応終了後、濾過、乾燥して次式;
(CHOCHCHO)P=N−SO−N=P(OCHCHOCH
で示されるホスファゼン誘導体Bを45g(収率59%)得た。
(ホスファゼン誘導体Bの同定データ)
分子式:C184214S(分子量604.53)
元素分析:計算値;H:7.00%,C:35.76%,N:4.63%,S:5.30%
実測値;H:7.87%,C:35.39%,N:4.58%,S:5.42%
H−NMR:3.38ppm(s,18H)、3.61〜3.65ppm(m,12H)、4.35〜4.41ppm(m,12H)
MASS:605(M+1)
実施例1〜4及び比較例1
LiCoOを正極活物質として用い、LiCoO100部に対して導電助剤としてアセチレンブラックを10部、結着剤としてテフロンバインダーを10部添加して正極材を調製した。負極材として金属リチウムを用い、セパレーターとしてポリプロピレンの多孔質フィルムを用い、電解液として市販の非プロトン性有機溶媒(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物(EC+DEC);富山薬品社製)に、前記で参考例で調製したホスファゼン誘導体A又はBを表1に示した配合割合で添加したものを用いてコイン型非水電解液二次電池を作成した。配合割合は非水電解液中のホスファゼン誘導体の容量割合を示す。なお、本発明のホスファゼン誘導体を電解液に含まないコイン型非水電解液二次電池を作成して比較例1とした。上記で作成した電池について、下記に示す初期の放電容量、20サイクル時の放電容量、放電容量維持率及び外部短絡時の状態を評価した。その結果を表1に示した。
(放電容量及び放電容量維持率)
上限電圧4.2V、下限電圧2.7V、放電電流0.2mA、充電電流0.2mAの条件で充放電を繰り返すサイクル試験を行い、1サイクル目の放電容量(初期の放電容量)(mAh)及び20サイクル時点での放電容量(mAh)を測定する。また、放電容量維持率は次式で求める。
放電容量維持率(%)=20サイクル時の放電容量×100/(初期放電容量)
(外部短絡時の状態)
5サイクルの充放電を行い、3.0Vまで充電した後、正負両極をリード線で結線し外部短絡させる。この時の5本の電池について、電池外観の変化、破裂発火の有無をテェックする。
Figure 0004664503
表1より明らかなように、電解液溶媒として非プロトン性有機溶媒を用いた従来の二次電池は、短絡時に液漏れや発煙を生じた(比較例1)のに対して、スルホニル基を有する特定のホスファゼン誘導体を含有する混合溶媒を用いた実施例1〜4の二次電池は、短絡時にも液漏れや破裂、発火が無く、且つ電池性能も従来の電池と同等以上の結果を示した。
参考例3(ホスファゼン誘導体Cの調製)
攪拌機を付けた四つ口フラスコに五塩化燐639.5g(3.06モル)、スルファミン酸97.1g(1.54モル)及びクロロベンゼン1Lを仕込み、窒素雰囲気中で4時間、100〜105℃で反応させた。反応終了後、常法により、乾燥、蒸留精製して、トリクロロホスファゾスルホニルクロライド265.7g(収率68.8%)を得た。次いで、攪拌機を付けた四つ口フラスコに上記で得たトリクロロホスファゾスルホニルクロライド97.3g(0.39モル)とTHF700mLを仕込み、エチレングルコールモノメチルエーテルのアルコラート溶液867.2g(1.62モル)を、窒素雰囲気中で、−40〜−35℃で一昼夜攪拌下に反応させた。反応終了後、酢酸で中和した。次いで、水洗後クロロホルムで抽出して得られた有機相を脱水、濃縮して、次式;
(CHOCHCHO)P=N−SO−OCHCHOCH
で示されるホスファゼン誘導体Cを129.2g(収率81.3%)得た。
(ホスファゼン誘導体Cの同定データ)
分子式:C1228NO10PS(分子量409.38)
元素分析:計算値;H:6.89%,C:35.20%,N:3.42%,S:7.83%
実測値;H:7.45%,C:34.88%,N:3.51%,S:8.02%
H−NMR:3.20ppm(s,12H)、3.43〜3.49ppm(m,8H)、4.07〜4.10ppm(m,2H)、4.16〜4.22ppm(m,6H)
MASS:410(M+1)
参考例4(ホスファゼン誘導体Dの調製)
攪拌機を付けた四つ口フラスコに五塩化燐66g(0.317)モル、スルファミド15g(0.156モル)を仕込み、窒素雰囲気中で1時間、120℃で反応させた。反応終了後、過剰の五塩化燐を昇華で除去し、ビス(トリクロロホスファゾ)スルホン57g(収率100%)を得た。次いで、攪拌機を付けた四つ口フラスコに上記で得たビス(トリクロロホスファゾ)スルホン56g(0.156モル)とTHFを仕込み、THF0.15Lにナトリウムエトキシド溶解させたTHF溶液437g(0.96モル)を、窒素雰囲気下で滴下し、−25〜−20℃で一昼夜攪拌下に反応させた。反応終了後、濾過、乾燥して次式;
(CHCHO)P=N−SO−N=P(OCHCH
で示されるホスファゼン誘導体Dを38g(収率57%)得た。
(ホスファゼン誘導体Dの同定データ)
分子式:C1230S(分子量424.37)
元素分析:計算値;H:7.13%,C:33.96%,N:6.60%,S:7.56%
実測値;H:7.56%,C:33.51%,N:6.42%,S:7.95%
H−NMR:1.02−1.07ppm(m,18H)、3.93〜4.03ppm(m,12H)
MASS:425(M+1)
実施例5〜8
ホスファゼン誘導体試料C又はホスファゼン誘導体試料D、及びLiPFを電解液に表2に示す配合量で添加した以外は、実施例1〜5と同様な操作により、初期の放電容量、20サイクル時の放電容量、放電容量維持率及び外部短絡時の状態を評価した。ホスファゼン誘導体の配合量は電解液中の容積割合で示す。その結果を表2に示した。
Figure 0004664503
実施例9〜33
<円筒型非水電解液電池の作成>
・負極
出発原料に石油ピッチを用い、不活性ガス気流中1000℃で焼成し、ガラス状炭素に近い性質の難黒鉛化炭素材料を得た。この難黒鉛化炭素材料についてX線回折測定を行ったところ、(002)面の面間隔は3.76オングストロームであり、また、真比重は1.58g/cmであった。次に得られた難黒鉛化炭素材料を粉砕し、平均粒子径10μmの炭素材料粉末とした。この炭素材料粉末90重量部と、結着剤10重量部とを混合して負極合剤を調製した。ここで、結着剤にはポリフッ化ビニリデンを用いた。最後に、負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させスラリー状とした。そして、このスラリーを負極集電体である厚さ10μmの帯状の銅箔の両面に均一に塗布、乾燥して負極活物質層を形成した後、ロールプレス機で圧縮成形し、負極を作成した。
・正極
炭酸リチウム0.5モルと炭酸コバルト1モルとを混合し、空気中900℃で5時間焼成して正極活物質となるLiCoOを得た。次に得られたLiCoO91重量部、導電剤6重量部、結着剤10重量部とを混合して正極合剤を調製した。ここで、導電剤には黒鉛を用い、結着剤にはビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体を用いた。最後に、正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリーとし、そして、このスラリーを正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥して正極活物質層を形成した後、ロールプレス機で圧縮成形し、正極を作成した。
以上のようにして得られた正極と負極とを用いて、図1に示す非水電解液電池を作製した。すなわち、正極2と負極3とを厚さ25μmの微孔性ポリプロピレンからなるセパレータ4を介して密着させ、渦巻型に多数回巻回することにより巻層体を作成した。次に、その内側にニッケルめっきを施した鉄製の電池缶5の底部に絶縁板6を挿入し、さらに前記で得られた巻層体を収納した。そして、負極3の集電をとるために、ニッケル製の負極リード7の一端を負極3に圧着させ、もう一方の端を電池缶5に溶接した。また、正極2の集電をとるためにアルミニウム製の正極リード8の一端を正極2に取り付け、もう一方の端を電流遮断用薄板9を介して電池蓋10と電気的に接続した。この電流遮断用薄板9は、電池内圧に応じて電流を遮断するものである。
次に、この電池缶5の中に非水電解液を注入した。非水電解液の溶媒として、炭酸エチレン50体積%、炭酸ジエチル50体積%からなる混合液を100重量%として、表3に示した各種のホスファゼン誘導体試料を表4に示した配合割合で添加したものを使用した。ホスファゼン誘導体の配合量は、電解液中の容積割合(%)で示す。最後に、アスファルトを塗布した絶縁封口ガスケット11を介して電池缶5をかしめることにより電池蓋10を固定して、直径が約18mm、高さ約65mmの円筒型の非水電解液電池1を調製した。また、非水電解液電池1は、負極リード7及び正極リード8に接続するセンターピン12が設けられていると共に、電池内部の圧力が所定値よりも高くなったときに内部の気体を抜くための安全弁装置13及び電池内部の温度上昇を防止するためのPTC素子14がそれぞれ設けられている。
Figure 0004664503
Figure 0004664503
比較例2
ホスファゼン誘導体を電解液に添加しない以外は、実施例9〜33と同様な操作実施例電解液電池を作成した。
比較例3
ホスファゼン誘導体の代わりに、遊離酸の中和剤として塩基性であるピリジン1重量%を電解液に添加した以外は、実施例9〜33と同様な操作で非水電解液電池を作成した。
比較例4
ホスファゼン誘導体の代わりに、難燃剤であるトリブチルホスフェート3重量%を電解液に添加した以外は、実施例9〜33と同様な操作で非水電解液電池を作成した。
実施例9〜33及び比較例2〜4で調製した非水電解液電池について、初期容量、負荷特性、100サイクル後の放電容量維持率、高温保存特性(自己放電特性)の評価を行い、その結果を表5に示した。なお、各評価方法は、以下のとおりである。
(初期容量)
前記で調製した各非水電解液電池に対して、23℃の条件下で、1Aの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで3時間行い、次に1000mAの定電流放電を終止電圧2.5Vまでおこなって初期容量を求めた。
(負荷特性)
前記初期容量と同一の充電条件で充放電を1サイクル行い、同様な充電を行った後、2000mAの定電流放電を終止電圧2.5Vまで行い、700mAの放電容量を100とした場合の2000mAの放電容量維持率(%)を求めた。
(放電容量維持率)
前記した初期容量と同じ充電条件で放充電を100サイクル行い、初期放電容量に対する100サイクル目の放電容量の割合を求めた。
(高温保存特性)
前記した初期容量と同一の充電条件で充電を行った後、60℃の雰囲気中に放置し、10日後に電池を取り出した。次いで、電池を取り出してから5時間後に23℃中で700mAで放電を行った。そして、60℃の雰囲気下放置する前の放電容量に対する保存後の放電容量維持率を求め、その差を自己放電率として求めた。なお、この値が小さい方が高温保存特性が優れていることを示す。
Figure 0004664503
表5の結果から明らかなように、非水電解液中に本発明のホスファゼン誘導体を添加した電池は、電池の初期容量が大きく、しかも700mAの放電容量に対する2000mAの放電容維持率も高く、特に高温保存特性が非常に優れた結果となった。また、サイクル特性も問題無いレベルであった。
実施例34
非水電解液の溶媒として、炭酸エチレン50体積%、炭酸ジエチル50体積%からなる混合液を100重量%として、ホスファゼン誘導体試料5を電解液中、0.5体積%となる混合溶媒を用い、負極の構成材料として、実施例9〜33で用いた難黒鉛化炭素材料に代えて、グラファイト(ロンザ社製、商品名 KS−75、002面の面間隔=3.358オングストローム)を使用し、他は実施例9〜33と同様な操作で円筒型非水電解液電池を作成した。
実施例35
非水電解液の溶媒として、炭酸エチレン50体積%、炭酸ジエチル50体積%からなる混合液を100重量%として、ホスファゼン誘導体試料13を1.5体積%となる混合溶媒を用い、負極の構成材料として、実施例9〜33で用いた難黒鉛化炭素材料に代えて、グラファイト(ロンザ社製、商品名 KS−75、002面の面間隔=3.358オングストローム)を使用し、他は実施例9〜33と同様な操作で円筒型非水電解液電池を作成した。
比較例5
電解液にホスファゼン誘導体試料を添加しない以外は、実施例34及び35と同様な操作で円筒型非水電解液電池を作成した。
実施例34、35及び比較例5で調製した円筒型非水電解液電池を実施例9〜33と同様に初期容量、負荷特性、100サイクル後の放電容量維持率、高温保存特性(自己放電特性)の評価を行い、その結果を表6に示した。
Figure 0004664503
表6の結果より、負極材料としてグラファイトを使用した場合でも、非水電解液中に本発明のホスファゼン誘導体試料を添加したものは、添加しないものに比べて、電池の初期容量が大きく、しかも700mAの放電容量に対する2000mAの放電容量維持率も高く、非常に優れた結果となった。また、サイクル特性や高温保存特性も良好なものとなった。
産業上の利用可能性
本発明の非水電解液電池によれば、幅広い温度範囲において、有機溶媒をベースとする電解液の気化、分解を抑制し、特に高温保存特性に優れると共に、発火や引火の危険性が少なく、かつ優れた電池性能を有する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の円筒型非水電解液電池の一例を示す概略断面図である。

Claims (5)

  1. 正極と、リチウムイオンを吸蔵又は放出可能な負極と、リチウムイオンを含む非水電解液とからなる非水電解液電池において、前記非水電解液は、下記一般式(1);
    (RO)P=N−SO (1)
    (式中、Rは、同一又は異なって、1価の有機基を示す。)
    及び下記一般式(2);
    (RO)P=N−SO−N=P(OR (2)
    (式中、Rは、同一又は異なって、1価の有機基を示す。)
    から選ばれたホスファゼン誘導体の少なくとも1種以上とリチウム塩を含有する溶液であり、前記ホスファゼン誘導体の含有量が、非水電解液中、体積分率で0.1〜80v/v%の範囲であることを特徴とする非水電解液電池。
  2. 前記R及び前記Rの1価の有機基は、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数1〜10のエーテル結合を有する基で置換されたアルキル基又はハロゲン原子で置換されたアルキル基である請求項1記載の非水電解液電池。
  3. 前記非水電解液は、前記ホスファゼン誘導体と非プロトン性有機溶媒を混合した混合溶媒にリチウム塩を溶解した溶液であることを特徴とする請求項1又は2記載の非水電解液電池。
  4. 正極は、リチウムと遷移金属との複合金属酸化物を活物質とする請求項1〜のいずれか1項に記載の非水電解液電池。
  5. リチウムイオンを吸蔵又は放出可能な負極は、炭素材料である請求項1〜のいずれか1項に記載の非水電解液電池。
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