以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、従来の例と同一の構成要素については同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。
(参考の形態1)
図1は、本発明の参考形態1にかかる除湿装置の概略構成を示した図である。図1に示すように、除湿装置の本体101内に、圧縮機102、放熱器103、膨張機構104、吸熱器105を配管接続した冷媒回路106と、供給空気から吸湿する吸湿部120および供給空気に対して放湿する放湿部121を有する吸放湿手段119と、供給空気を加熱する加熱手段1としてのヒーター2を設け、冷媒回路106内に冷媒117を充填した構成としている。また、本体101には吸込口112と吹出口113を開口し、ファン3の運転によって、除湿対象空気116を吸込口112から本体101内に吸引し、この除湿対象空気116を放熱器103およびヒーター2に各々供給した後、放湿部121、吸熱器105、吸湿部120の順に供給して吹出口113から本体101外部に吹出すように風路を形成している。そして、圧縮機102により冷媒117を圧縮することによって、冷媒117が、放熱器103、膨張機構104、吸熱器105の順に冷媒回路106内を循環し、放熱器103に供給される除湿対象空気116に対して放熱するとともに吸熱器105に供給される除湿対象空気116から吸熱することによってヒートポンプ118を作動させる構成となっている。
図2は、吸放湿手段119の詳細構成を示した図である。吸放湿手段119は、吸着剤107が担持された軸方向に通風可能な円筒状のハニカムローター108を備えており、このハニカムローター108を回動自在に回転軸4で支持している。そして、ハニカムローター108の外周にギア5を形成し、このギア5と回転駆動する駆動モーター6の歯車部7にベルト8を巻装している。また、ハニカムローター108を、吸湿部120と放湿部121に区分して各々に供給される空気の相互流通を抑制するように風路を仕切っている。そして、ファン3を運転すると、吸湿部120に吸熱器105を通過した除湿対象空気116(a)が供給され、放湿部121には放熱器103を通過した除湿対象空気116(b)とヒーター2を通過した除湿対象空気116(c)が各々供給される。ここで、駆動モーター6を駆動するとベルト8を介してギア5に駆動力が伝達してハニカムローター108が回転し、この回転によって吸着剤107が、吸熱器105を通過した除湿対象空気116(a)、放熱器103を通過した除湿対象空気116(b)、ヒーター2を通過した除湿対象空気116(c)の順に接触を繰り返すことになる。この吸着剤107は、晒される空気の相対湿度が高ければ多くの水分を保持でき、相対湿度が低くなると保持可能な水分量が減少する特性を有しているので、相対湿度の異なる複数の空気との接触を繰り返せば、各々の相対湿度における吸着剤107の保持可能な水分量の差に応じて水分の吸脱着が行われることになる。ここで、吸湿部120で吸着剤107と接触する除湿対象空気116(a)は、吸熱器105において冷媒117の吸熱により冷却された低温かつ高い相対湿度の空気であり、放湿部121において吸着剤107と接触する除湿対象空気116(b)および116(c)は、放熱器103において冷媒117の放熱により加熱された高温かつ低い相対湿度の空気、あるいはヒーター2で加熱された高温かつ低い相対湿度の空気であるので、この各々の空気の相対湿度の差によって、吸着剤107の吸脱着作用が為されて吸放湿手段119が作動することになる。また、除湿対象空気116(a)との接触時に水分を吸着した吸着剤107が、放熱器103で加熱された除湿対象空気116(b)と接触した後、ヒーター2で加熱された除湿対象空気116(c)と接触するので、多量の水分を保持している吸着剤107と先に接触する除湿対象空気116(b)が、吸着剤107の水分脱着をより促し易くなる。次に除湿装置の動作を説明する。
図3は、図1に示した除湿装置の冷媒117の状態変化を示すモリエル線図(圧力−エンタルピ線図)である。図3に示した点A、点B、点C、点Dを矢符で結んだサイクルは、冷媒回路106内を循環する冷媒117の状態変化を示しており、冷媒117は圧縮機102において圧縮されることにより圧力とエンタルピが上昇して点Aから点Bの状態変化を行い、放熱器103において供給される除湿対象空気116に対して放熱することによりエンタルピが減少して点Bから点Cの状態となる。次に膨張機構104において膨張して減圧することにより圧力が低下して点Cから点Dの状態変化を行い、吸熱器105において供給される除湿対象空気116から吸熱することによりエンタルピが増加して点Dから点Aの状態に戻る。このような冷媒117の状態変化により、吸熱器105において吸熱し、放熱器103において放熱するヒートポンプ118が動作し、この時、点Bと点Cのエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が放熱器103における放熱量、点Aと点D(点C)のエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が吸熱器105における吸熱量となり、放熱量と吸熱量の差、即ち点Bと点Aのエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が圧縮機102の圧縮仕事量になる。
図4は、図1に示した除湿装置における除湿対象空気116の状態変化を示す湿り空気線図である。図4に示した湿り空気線図において、まず、点aの状態の除湿対象空気116が放熱器103およびヒーター2に供給され、放熱器103に供給された除湿対象空気116(b)は、冷媒117の放熱により加熱されて点bの状態となる。点bの状態となった除湿対象空気116(b)は、次に放湿部121に供給されてハニカムローター108に担持された吸着剤107が保有している水分を脱着することにより加湿されて、湿度が上昇するとともに温度が低下して点cの状態となる。一方、ヒーター2に供給された除湿対象空気116(c)は、ヒーター2によって放熱器103で加熱された点bの温度以上に加熱されて点dの状態となる。点dの状態となった除湿対象空気116(c)は、次に放湿部121に供給されてハニカムローター108に担持された吸着剤107が保有している水分を脱着することにより加湿されて、湿度が上昇するとともに温度が低下して点eの状態となる。放湿部121において加湿された点cおよび点eの状態の除湿対象空気116は次に吸熱器105に供給され、冷媒117の吸熱により露点温度以下まで冷却されて点fの飽和状態となる。この時に飽和した水分は凝縮水としてタンク122に回収される。点fの飽和状態となった除湿対象空気116(c)は、次に吸湿部120に供給され、吸着剤107に水分を吸着されることによって除湿されて湿度が低下するとともに温度が上昇し、点gの状態の乾燥空気となる。点gの状態となった除湿対象空気116は、ファン3に吸引されて装置外部に排出される。以上の除湿対象空気116の状態変化において、吸熱器105において回収される凝縮水の量は、点cと点fの絶対湿度差に放熱器103に供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値と、点eと点fの絶対湿度差にヒーター2に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値との加算値となり、放湿部121における放湿量は、点bと点cの絶対湿度差に放熱器103に供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値と、点dと点eの絶対湿度差にヒーター2に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値との加算値となる。また、吸湿部120における吸湿量は、点fと点gの絶対湿度差に吸湿部120に供給される除湿対象空気116(a)の重量換算風量を乗じた値となる。
以上の動作において、理想状態では、放湿部121の出口空気状態を示す点cおよび点eは、吸湿部120の入口空気状態を示す点fと同一の相対湿度である点c’および点e’に近づき、吸湿部120の出口空気状態を示す点gは、放湿部121の入口空気状態を示す点bと点dの空気の混合した点hと同一の相対湿度である点g’に近づく。したがって点fの相対湿度を上昇させ、点bおよび点dの相対湿度を低下させること、即ち、点fで示した吸湿部120への供給空気と点bおよび点dで示した放湿部121への供給空気との相対湿度差を拡大することが吸放湿量を高めることになり、結果的に除湿効率が向上することになるのである。また、点aと点bのエンタルピ差に放熱器103に供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値が放熱器103における放熱量、点cと点fのエンタルピ差に放熱器103に供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値と、点eと点fのエンタルピ差にヒーター2に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値との加算値が吸熱器105における吸熱量となり、この放熱器103における放熱量および吸熱器105における吸熱量は、図3の冷媒117の状態変化から得られる放熱量および吸熱量と等しくなる。従って、ヒートポンプ118の放熱のみでは不足する放熱量をヒーター2の発熱により補うことによって、吸熱器105における吸熱量とのバランスを調整することが可能となる。
以上、説明した構成および動作により、本参考形態の除湿装置は以下の効果を奏するものである。
除湿対象空気116を、放熱器103と加熱手段1の双方において、ヒートポンプ118と加熱手段1の双方の放熱により加熱し、次に放湿部121において吸放湿手段119の放湿により加湿し、次に吸熱器105においてヒートポンプ118の吸熱により冷却し、次に吸湿部120において吸放湿手段119の吸湿により除湿することによって、吸湿部120に供給される除湿対象空気116と放湿部121に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を拡大し、循環経路111を設けない単純な構成で吸放湿手段119の吸放湿量を増加して効率の良い除湿を行うことができる。
また、加熱手段1を、放熱器103で加熱する温度以上に除湿対象空気116を加熱する構成とすることによって、放湿部に供給される除湿対象空気116の相対湿度を更に下げて、吸湿部120に供給される除湿対象空気116と放湿部121に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を更に拡大することができる。これにより吸放湿手段119の吸放湿量を増加して更に効率の良い除湿を行うことができる。
また、加熱手段1を、放熱器103において加熱されていない除湿対象空気を加熱する構成とすることによって、放熱器103において加熱する除湿対象空気116の量を減少し、放熱器103の放熱量を削減することができる。これにより放熱器103を小型化することができる。
また、吸放湿手段119を、ハニカムローター108に担持された吸着剤107が、吸湿部120において除湿対象空気116から水分を吸着するとともに放湿部121において除湿対象空気116へ水分を脱着するようにハニカムローター108を配し、ハニカムローター108の回転により、吸湿部120における水分吸着と放湿部121における水分脱着を繰り返すように構成することによって、ハニカムローター108の回転という簡単な操作で、吸湿部120における吸着剤107の水分吸着と、放湿部121における吸着剤107の水分脱着を容易に繰り返すことができ、除湿装置を安価に構成することができる。
また、ハニカムローター108の回転によって、吸着剤107が、吸熱器105で冷却された除湿対象空気116、放熱器103で加熱された除湿対象空気116、加熱手段1で加熱された除湿対象空気116の順に接触を繰り返すように構成することによって、吸熱器105で冷却された低温高湿状態の除湿対象空気116から水分を吸着した吸着剤107が、先に放熱器103で加熱された高温低湿状態の除湿対象空気116と接触した後、加熱手段1で加熱された高温低湿状態の除湿対象空気116と接触するので、多量の水分を含んだ吸着剤107と先に接触する放熱器103で加熱された除湿対象空気116への吸着剤107からの水分脱着を容易に促すことができる。
また、加熱手段1としてヒーター2を用いる構成とすることによって、ヒーター2の放熱によって除湿対象空気116を加熱して、除湿対象空気116を放熱器103で加熱する温度以上に容易に加熱することができる。これにより加熱手段1を簡略化して安価に構成することができる。
なお、本参考形態のハニカムローター108に担持する吸着剤107としては、吸湿性があってハニカムローター108に担持でき、さらに水分脱着のためにある程度の耐熱性がある物質であれば良く、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機質の吸着型吸湿剤、有機高分子電解質(イオン交換樹脂)などの吸湿剤、塩化リチウムなどの吸収型吸湿剤等を用いることができる。さらに吸着剤107は1種類に限るものではなく、上述した吸着剤107の2種類以上を組み合わせて用いても良い。
また、本参考形態の冷媒回路106に充填する冷媒117としては、HCFC系冷媒(分子中に塩素、水素、フッ素、炭素の各原子を含む)、HFC系冷媒(分子中に水素、炭素、フッ素の各原子を含む)、炭化水素、二酸化炭素等を用いることができる。
また、本参考形態では、加熱手段1としてヒーター2を用いる構成としたが、加熱手段1はヒーター2に限るものではなく、供給空気の加熱が可能なものであれば良い。また、本参考形態に使用可能なヒーター2の種類としては、ニクロムヒーター、PTCヒーター、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター等が挙げられる。
(参考の形態2)
図5は、本発明の参考形態2にかかる除湿装置の概略構成を示した図である。図5に示すように、除湿装置の本体101内に、圧縮機102、放熱器103、膨張機構104、吸熱器105を配管接続した冷媒回路106と、供給空気から吸湿する吸湿部120および供給空気に対して放湿する放湿部121を有する吸放湿手段119と、供給空気を加熱する加熱手段1としてのヒーター2を設け、冷媒回路106内に冷媒117を充填した構成としている。また、本体101には吸込口112と吹出口113を開口し、ファン3の運転によって、除湿対象空気116を吸込口112から本体101内に吸引し、この除湿対象空気116を放熱器103およびヒーター2に各々供給した後、放湿部121、吸熱器105、吸湿部120の順に供給して吹出口113から本体101外部に吹出すように風路を形成している。そして、圧縮機102により冷媒117を圧縮することによって、冷媒117が、放熱器103、膨張機構104、吸熱器105の順に冷媒回路106内を循環し、放熱器103に供給される除湿対象空気116に対して放熱するとともに吸熱器105に供給される除湿対象空気116から吸熱することによってヒートポンプ118を作動させる構成となっている。
図6は、吸放湿手段119の詳細構成を示した図である。吸放湿手段119は、吸着剤107が担持された軸方向に通風可能な円筒状のハニカムローター108を備えており、このハニカムローター108を回動自在に回転軸4で支持している。そして、ハニカムローター108の外周にギア5を形成し、このギア5と回転駆動する駆動モーター6の歯車部7にベルト8を巻装している。また、ハニカムローター108を、吸湿部120と放湿部121に区分して各々に供給される空気の相互流通を抑制するように風路を仕切っている。そして、ファン3を運転すると、吸湿部120に吸熱器105を通過した除湿対象空気116(a)が供給され、放湿部121にはヒーター2を通過した除湿対象空気116(b)と放熱器103を通過した除湿対象空気116(c)が各々供給される。ここで、駆動モーター6を駆動するとベルト8を介してギア5に駆動力が伝達してハニカムローター108が回転し、この回転によって吸着剤107が、吸熱器105を通過した除湿対象空気116(a)、ヒーター2を通過した除湿対象空気116(b)、放熱器103を通過した除湿対象空気116(c)の順に接触を繰り返すことになる。この吸着剤107は、晒される空気の相対湿度が高ければ多くの水分を保持でき、相対湿度が低くなると保持可能な水分量が減少する特性を有しているので、相対湿度の異なる複数の空気との接触を繰り返せば、各々の相対湿度における吸着剤107の保持可能な水分量の差に応じて水分の吸脱着が行われることになる。ここで、吸湿部120で吸着剤107と接触する除湿対象空気116(a)は、吸熱器105において冷媒117の吸熱により冷却された低温かつ高い相対湿度の空気であり、放湿部121において吸着剤107と接触する除湿対象空気116(b)および116(c)は、ヒーター2で加熱された高温かつ低い相対湿度の空気、あるいは放熱器103において冷媒117の放熱により加熱された高温かつ低い相対湿度の空気であるので、この各々の空気の相対湿度の差によって、吸着剤107の吸脱着作用が為されて吸放湿手段119が作動することになる。また、除湿対象空気116(a)との接触時に水分を吸着した吸着剤107が、ヒーター2で加熱された除湿対象空気116(b)と接触した後、放熱器103で加熱された除湿対象空気116(c)と接触するので、多量の水分を保持している吸着剤107と先に接触する除湿対象空気116(b)が、吸着剤107の水分脱着をより促し易くなる。次に除湿装置の動作を説明する。
図7は、図5に示した除湿装置の冷媒117の状態変化を示すモリエル線図(圧力−エンタルピ線図)である。図7に示した点A、点B、点C、点Dを矢符で結んだサイクルは、冷媒回路106内を循環する冷媒117の状態変化を示しており、冷媒117は圧縮機102において圧縮されることにより圧力とエンタルピが上昇して点Aから点Bの状態変化を行い、放熱器103において供給される除湿対象空気116に対して放熱することによりエンタルピが減少して点Bから点Cの状態となる。次に膨張機構104において膨張して減圧することにより圧力が低下して点Cから点Dの状態変化を行い、吸熱器105において供給される除湿対象空気116から吸熱することによりエンタルピが増加して点Dから点Aの状態に戻る。このような冷媒117の状態変化により、吸熱器105において吸熱し、放熱器103において放熱するヒートポンプ118が動作し、この時、点Bと点Cのエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が放熱器103における放熱量、点Aと点D(点C)のエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が吸熱器105における吸熱量となり、放熱量と吸熱量の差、即ち点Bと点Aのエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が圧縮機102の圧縮仕事量になる。
図8は、図5に示した除湿装置における除湿対象空気116の状態変化を示す湿り空気線図である。図8に示した湿り空気線図において、まず、点aの状態の除湿対象空気116が放熱器103およびヒーター2に供給され、放熱器103に供給された除湿対象空気116(c)は、冷媒117の放熱により加熱されて点bの状態となる。点bの状態となった除湿対象空気116(c)は、次に放湿部121に供給されてハニカムローター108に担持された吸着剤107が保有している水分を脱着することにより加湿されて、湿度が上昇するとともに温度が低下して点cの状態となる。一方、ヒーター2に供給された除湿対象空気116(b)は、ヒーター2によって放熱器103で加熱される点bの温度以上に加熱されて点dの状態となる。点dの状態となった除湿対象空気116(b)は、次に放湿部121に供給されてハニカムローター108に担持された吸着剤107が保有している水分を脱着することにより加湿されて、湿度が上昇するとともに温度が低下して点eの状態となる。放湿部121において加湿された点cおよび点eの状態の除湿対象空気116は次に吸熱器105に供給され、冷媒117の吸熱により露点温度以下まで冷却されて点fの飽和状態となる。この時に飽和した水分は凝縮水としてタンク122に回収される。点fの飽和状態となった除湿対象空気116(a)は次に吸湿部120に供給され、吸着剤107に水分を吸着されることによって除湿されて湿度が低下するとともに温度が上昇し、点gの状態の乾燥空気となる。点gの状態となった除湿対象空気116は、ファン3に吸引されて装置外部に排出される。以上の除湿対象空気116の状態変化において、吸熱器105において回収される凝縮水の量は、点cと点fの絶対湿度差に放熱器103に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値と、点eと点fの絶対湿度差にヒーター2に供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値との加算値となり、放湿部121における放湿量は、点bと点cの絶対湿度差に放熱器103に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値と、点dと点eの絶対湿度差にヒーター2に供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値との加算値となる。また、吸湿部120における吸湿量は、点fと点gの絶対湿度差に吸湿部120に供給される除湿対象空気116(a)の重量換算風量を乗じた値となる。
以上の動作において、理想状態では、放湿部121の出口空気状態を示す点cおよび点eは、吸湿部120の入口空気状態を示す点fと同一の相対湿度である点c’および点e’に近づき、吸湿部120の出口空気状態を示す点gは、放湿部121の入口空気状態を示す点bと点dの空気の混合した点hと同一の相対湿度である点g’に近づく。したがって点fの相対湿度を上昇させ、点bおよび点dの相対湿度を低下させること、即ち、点fで示した吸湿部120への供給空気と点bおよび点dで示した放湿部121への供給空気との相対湿度差を拡大することが吸放湿量を高めることになり、結果的に除湿効率が向上することになるのである。また、点aと点bのエンタルピ差に放熱器103に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値が放熱器103における放熱量、点cと点fのエンタルピ差に放熱器103に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値と、点eと点fのエンタルピ差にヒーター2に供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値との加算値が吸熱器105における吸熱量となり、この放熱器103における放熱量および吸熱器105における吸熱量は、図7の冷媒117の状態変化から得られる放熱量および吸熱量と等しくなる。従って、ヒートポンプ118の放熱のみでは不足する放熱量をヒーター2の加熱により補うことによって、吸熱器105における吸熱量とのバランスを調整することが可能となる。
以上、説明した構成および動作により、本参考形態の除湿装置は以下の効果を奏するものである。
除湿対象空気116を、放熱器103と加熱手段1の双方において、ヒートポンプ118と加熱手段1の双方の放熱により加熱し、次に放湿部121において吸放湿手段119の放湿により加湿し、次に吸熱器105においてヒートポンプ118の吸熱により冷却し、次に吸湿部120において吸放湿手段119の吸湿により除湿することによって、吸湿部120に供給される除湿対象空気116と放湿部121に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を拡大し、循環経路111を設けない単純な構成で吸放湿手段119の吸放湿量を増加して効率の良い除湿を行うことができる。
また、加熱手段1を、放熱器103で加熱する温度以上に除湿対象空気116を加熱する構成とすることによって、放湿部に供給される除湿対象空気116の相対湿度を更に下げて、吸湿部120に供給される除湿対象空気116と放湿部121に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を更に拡大することができる。これにより吸放湿手段119の吸放湿量を増加して更に効率の良い除湿を行うことができる。
また、加熱手段1を、放熱器103において加熱されていない除湿対象空気を加熱する構成とすることによって、放熱器103において加熱する除湿対象空気116量を減少し、放熱器103の放熱量を削減することができる。これにより放熱器103を小型化することができる。
また、吸放湿手段119を、ハニカムローター108に担持された吸着剤107が、吸湿部120において除湿対象空気116から水分を吸着するとともに放湿部121において除湿対象空気116へ水分を脱着するようにハニカムローター108を配し、ハニカムローター108の回転により、吸湿部120における水分吸着と放湿部121における水分脱着を繰り返すように構成することによって、ハニカムローター108の回転という簡単な操作で、吸湿部120における吸着剤107の水分吸着と、放湿部121における吸着剤107の水分脱着を容易に繰り返すことができ、除湿装置を安価に構成することができる。
また、ハニカムローター108の回転によって、吸着剤107が、吸熱器105で冷却された除湿対象空気116、加熱手段1で加熱された除湿対象空気116、放熱器103で加熱された除湿対象空気116の順に接触を繰り返すように構成することによって、吸熱器105で冷却された低温高湿状態の除湿対象空気116から水分を吸着した吸着剤107が、先に加熱手段1で加熱された高温低湿状態の除湿対象空気116と接触した後、放熱器103で加熱された高温低湿状態の除湿対象空気116と接触するので、多量の水分を含んだ吸着剤107と先に接触する加熱手段1で加熱された除湿対象空気116への吸着剤107からの水分脱着を容易に促すことができる。
また、加熱手段1としてヒーター2を用いる構成とすることによって、ヒーター2の放熱によって除湿対象空気116を加熱して、除湿対象空気116を放熱器103で加熱する温度以上に容易に加熱することができる。これにより加熱手段1を簡略化して安価に構成することができる。
なお、本参考形態のハニカムローター108に担持する吸着剤107としては、吸湿性があってハニカムローター108に担持でき、さらに水分脱着のためにある程度の耐熱性がある物質であれば良く、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機質の吸着型吸湿剤、有機高分子電解質(イオン交換樹脂)などの吸湿剤、塩化リチウムなどの吸収型吸湿剤等を用いることができる。さらに吸着剤107は1種類に限るものではなく、上述した吸着剤107の2種類以上を組み合わせて用いても良い。
また、本参考形態の冷媒回路106に充填する冷媒117としては、HCFC系冷媒(分子中に塩素、水素、フッ素、炭素の各原子を含む)、HFC系冷媒(分子中に水素、炭素、フッ素の各原子を含む)、炭化水素、二酸化炭素等を用いることができる。
また、本参考形態では、加熱手段1としてヒーター2を用いる構成としたが、加熱手段1はヒーター2に限るものではなく、供給空気の加熱が可能なものであれば良い。また、本参考形態に使用可能なヒーター2の種類としては、ニクロムヒーター、PTCヒーター、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター等が挙げられる。
(参考の形態3)
図9は、本発明の参考形態3にかかる除湿装置の概略構成を示した図である。図9に示すように、除湿装置の本体101内に、圧縮機102、放熱器103、膨張機構104、吸熱器105を配管接続した冷媒回路106と、供給空気から吸湿する吸湿部120および供給空気に対して放湿する放湿部121を有する吸放湿手段119と、供給空気を加熱する加熱手段1としてのヒーター2を設け、冷媒回路106内に冷媒117を充填した構成としている。また、本体101には吸込口112と吹出口113を開口し、ファン3の運転によって、除湿対象空気116を吸込口112から本体101内に吸引し、放熱器103に供給した後、一部はヒーター2を介して放湿部121に供給し、残りはヒーター2を介さずに放湿部121に供給するように風路を形成し、さらに放湿部121に供給した後の除湿対象空気116を、吸熱器105、吸湿部120の順に供給した後、吹出口113から本体101外部に吹出すように風路を形成している。そして、圧縮機102により冷媒117を圧縮することによって、冷媒117が、放熱器103、膨張機構104、吸熱器105の順に冷媒回路106内を循環し、放熱器103に供給される除湿対象空気116に対して放熱するとともに吸熱器105に供給される除湿対象空気116から吸熱することによってヒートポンプ118を作動させる構成となっている。
図10は、吸放湿手段119の詳細構成を示した図である。吸放湿手段119は、吸着剤107が担持された軸方向に通風可能な円筒状のハニカムローター108を備えており、このハニカムローター108を回動自在に回転軸4で支持している。そして、ハニカムローター108の外周にギア5を形成し、このギア5と回転駆動する駆動モーター6の歯車部7にベルト8を巻装している。また、ハニカムローター108を、吸湿部120と放湿部121に区分して各々に供給される空気の相互流通を抑制するように風路を仕切っている。そして、ファン3を運転すると、吸湿部120に吸熱器105を通過した除湿対象空気116(a)が供給され、放湿部121には放熱器103を通過した除湿対象空気116(b)と放熱器103を通過した後にヒーター2を通過した除湿対象空気116(c)が各々供給される。ここで、駆動モーター6を駆動するとベルト8を介してギア5に駆動力が伝達してハニカムローター108が回転し、この回転によって吸着剤107が、吸熱器105を通過した除湿対象空気116(a)、放熱器103を通過した除湿対象空気116(b)、放熱器103を通過した後にヒーター2を通過した除湿対象空気116(c)の順に接触を繰り返すことになる。この吸着剤107は、晒される空気の相対湿度が高ければ多くの水分を保持でき、相対湿度が低くなると保持可能な水分量が減少する特性を有しているので、相対湿度の異なる複数の空気との接触を繰り返せば、各々の相対湿度における吸着剤107の保持可能な水分量の差に応じて水分の吸脱着が行われることになる。ここで、吸湿部120で吸着剤107と接触する除湿対象空気116(a)は、吸熱器105において冷媒117の吸熱により冷却された低温かつ高い相対湿度の空気であり、放湿部121において吸着剤107と接触する除湿対象空気116(b)および116(c)は、放熱器103において冷媒117の放熱により加熱された高温かつ低い相対湿度の空気、あるいは放熱器103における冷媒117の放熱とヒーター2の発熱によって加熱された高温かつ低い相対湿度の空気であるので、この各々の空気の相対湿度の差によって、吸着剤107の吸脱着作用が為されて吸放湿手段119が作動することになる。また、除湿対象空気116(a)との接触時に水分を吸着した吸着剤107が、放熱器103で加熱された除湿対象空気116(b)と接触した後、放熱器103で加熱された後にヒーター2で加熱された除湿対象空気116(c)と接触するので、多量の水分を保持している吸着剤107と先に接触する除湿対象空気116(b)が、吸着剤107の水分脱着をより促し易くなる。次に除湿装置の動作を説明する。
図11は、図9に示した除湿装置の冷媒117の状態変化を示すモリエル線図(圧力−エンタルピ線図)である。図11に示した点A、点B、点C、点Dを矢符で結んだサイクルは、冷媒回路106内を循環する冷媒117の状態変化を示しており、冷媒117は圧縮機102において圧縮されることにより圧力とエンタルピが上昇して点Aから点Bの状態変化を行い、放熱器103において供給される除湿対象空気116に対して放熱することによりエンタルピが減少して点Bから点Cの状態となる。次に膨張機構104において膨張して減圧することにより圧力が低下して点Cから点Dの状態変化を行い、吸熱器105において供給される除湿対象空気116から吸熱することによりエンタルピが増加して点Dから点Aの状態に戻る。このような冷媒117の状態変化により、吸熱器105において吸熱し、放熱器103において放熱するヒートポンプ118が動作し、この時、点Bと点Cのエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が放熱器103における放熱量、点Aと点D(点C)のエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が吸熱器105における吸熱量となり、放熱量と吸熱量の差、即ち点Bと点Aのエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が圧縮機102の圧縮仕事量になる。
図12は、図9に示した除湿装置における除湿対象空気116の状態変化を示す湿り空気線図である。図12に示した湿り空気線図において、まず、点aの状態の除湿対象空気116が放熱器103に供給され、冷媒117の放熱により加熱されて点bの状態となる。点bの状態のとなった除湿対象空気116の一部116(b)は、次に放湿部121に供給されてハニカムローター108に担持された吸着剤107が保有している水分を脱着することにより加湿されて、湿度が上昇するとともに温度が低下して点cの状態となる。一方、放熱器103に供給された後の除湿対象空気116の残り116(c)は、次にヒーター2に供給されて更に高温に加熱されて点dの状態となる。点dの状態となった除湿対象空気116(c)は、次に放湿部121に供給されてハニカムローター108に担持された吸着剤107が保有している水分を脱着することにより加湿されて、湿度が上昇するとともに温度が低下して、点eの状態となる。放湿部121において加湿された点cおよび点eの状態の除湿対象空気116は次に吸熱器105に供給され、冷媒117の吸熱により露点温度以下まで冷却されて点fの飽和状態となる。この時に飽和した水分は凝縮水としてタンク122に回収される。点fの飽和状態となった除湿対象空気116(a)は次に吸湿部120に供給され、吸着剤107に水分を吸着されることによって除湿されて湿度が低下するとともに温度が上昇し、点gの状態の乾燥空気となる。点gの状態となった除湿対象空気116は、ファン3に吸引されて装置外部に排出される。以上の除湿対象空気116の状態変化において、吸熱器105において回収される凝縮水の量は、点cと点fの絶対湿度差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値と、点eと点fの絶対湿度差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値との加算値となり、放湿部121における放湿量は、点bと点cの絶対湿度差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値と、点dと点eの絶対湿度差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値との加算値となる。また、吸湿部120における吸湿量は、点fと点gの絶対湿度差に吸湿部120に供給される除湿対象空気116(a)の重量換算風量を乗じた値となる。
以上の動作において、理想状態では、放湿部121の出口空気状態を示す点cおよび点eは、吸湿部120の入口空気状態を示す点fと同一の相対湿度である点c’および点e’に近づき、吸湿部120の出口空気状態を示す点gは、放湿部121の入口空気状態を示す点bと点dの空気の混合した点hと同一の相対湿度である点g’に近づく。したがって点fの相対湿度を上昇させ、点bおよび点dの相対湿度を低下させること、即ち、点fで示した吸湿部120への供給空気と点bおよび点dで示した放湿部121への供給空気との相対湿度差を拡大することが吸放湿量を高めることになり、結果的に除湿効率が向上することになるのである。また、点aと点bのエンタルピ差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値と、点aと点bのエンタルピ差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値との加算値が放熱器103における放熱量、点cと点fのエンタルピ差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値と、点eと点fのエンタルピ差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値との加算値が吸熱器105における吸熱量となり、この放熱器103における放熱量および吸熱器105における吸熱量は、図11の冷媒117の状態変化から得られる放熱量および吸熱量と等しくなる。従って、ヒートポンプ118の放熱のみでは不足する放熱量をヒーター2の加熱により補うことによって、吸熱器105における吸熱量とのバランスを調整することが可能となる。
以上、説明した構成および動作により、本参考形態の除湿装置は以下の効果を奏するものである。
除湿対象空気116を、放熱器103と加熱手段1の双方において、ヒートポンプ118と加熱手段1の双方の放熱により加熱し、次に放湿部121において吸放湿手段119の放湿により加湿し、次に吸熱器105においてヒートポンプ118の吸熱により冷却し、次に吸湿部120において吸放湿手段119の吸湿により除湿することによって、吸湿部120に供給される除湿対象空気116と放湿部121に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を拡大し、循環経路111を設けない単純な構成で吸放湿手段119の吸放湿量を増加して効率の良い除湿を行うことができる。
また、加熱手段1を、放熱器103で加熱する温度以上に除湿対象空気116を加熱する構成とすることによって、放湿部に供給される除湿対象空気116の相対湿度を更に下げて、吸湿部120に供給される除湿対象空気116と放湿部121に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を更に拡大することができる。これにより吸放湿手段119の吸放湿量を増加して更に効率の良い除湿を行うことができる。
また、加熱手段1を、放熱器103において加熱された除湿対象空気116の少なくとも一部を更に加熱する構成とすることによって、加熱手段1における除湿対象空気116の昇温幅を縮小し、加熱手段1の加熱量を削減することができる。これにより加熱手段1消費電力が減少して除湿効率を高めることができる。
また、吸放湿手段119を、ハニカムローター108に担持された吸着剤107が、吸湿部120において除湿対象空気116から水分を吸着するとともに放湿部121において除湿対象空気116へ水分を脱着するようにハニカムローター108を配し、ハニカムローター108の回転により、吸湿部120における水分吸着と放湿部121における水分脱着を繰り返すように構成することによって、ハニカムローター108の回転という簡単な操作で、吸湿部120における吸着剤107の水分吸着と、放湿部121における吸着剤107の水分脱着を容易に繰り返すことができ、除湿装置を安価に構成することができる。
また、ハニカムローター108の回転によって、吸着剤107が、吸熱器105で冷却された除湿対象空気116、放熱器103で加熱された除湿対象空気116、放熱器103で加熱された後に加熱手段1で加熱された除湿対象空気116の順に接触を繰り返すように構成することによって、吸熱器105で冷却された低温高湿状態の除湿対象空気116から水分を吸着した吸着剤107が、先に放熱器103で加熱された高温低湿状態の除湿対象空気116と接触した後、放熱器103で加熱された後に加熱手段1で加熱された高温低湿状態の除湿対象空気116と接触するので、多量の水分を含んだ吸着剤107と先に接触する放熱器103で加熱された除湿対象空気116への吸着剤107からの水分脱着を容易に促すことができる。
また、加熱手段1としてヒーター2を用いる構成とすることによって、ヒーター2の放熱によって除湿対象空気116を加熱して、除湿対象空気116を放熱器103で加熱する温度以上に容易に加熱することができる。これにより加熱手段1を簡略化して安価に構成することができる。
なお、本参考形態のハニカムローター108に担持する吸着剤107としては、吸湿性があってハニカムローター108に担持でき、さらに水分脱着のためにある程度の耐熱性がある物質であれば良く、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機質の吸着型吸湿剤、有機高分子電解質(イオン交換樹脂)などの吸湿剤、塩化リチウムなどの吸収型吸湿剤等を用いることができる。さらに吸着剤107は1種類に限るものではなく、上述した吸着剤107の2種類以上を組み合わせて用いても良い。
また、本参考形態の冷媒回路106に充填する冷媒117としては、HCFC系冷媒(分子中に塩素、水素、フッ素、炭素の各原子を含む)、HFC系冷媒(分子中に水素、炭素、フッ素の各原子を含む)、炭化水素、二酸化炭素等を用いることができる。
また、本参考形態では、加熱手段1としてヒーター2を用いる構成としたが、加熱手段1はヒーター2に限るものではなく、供給空気の加熱が可能なものであれば良い。また、本参考形態に使用可能なヒーター2の種類としては、ニクロムヒーター、PTCヒーター、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター等が挙げられる。
(実施の形態1)
図13は、本発明の実施形態1にかかる除湿装置の概略構成を示した図である。図13に示すように、除湿装置の本体101内に、圧縮機102、放熱器103、膨張機構104、吸熱器105を配管接続した冷媒回路106と、供給空気から吸湿する吸湿部120および供給空気に対して放湿する放湿部121を有する吸放湿手段119と、供給空気を加熱する加熱手段1としてのヒーター2を設け、冷媒回路106内に冷媒117を充填した構成としている。また、本体101には吸込口112と吹出口113を開口し、ファン3の運転によって、除湿対象空気116を吸込口112から本体101内に吸引し、放熱器103に供給した後、一部はヒーター2を介して放湿部121に供給し、残りはヒーター2を介さずに放湿部121に供給するように風路を形成し、さらに放湿部121に供給した後の除湿対象空気116を、吸熱器105、吸湿部120の順に供給した後、吹出口113から本体101外部に吹出すように風路を形成している。そして、圧縮機102により冷媒117を圧縮することによって、冷媒117が、放熱器103、膨張機構104、吸熱器105の順に冷媒回路106内を循環し、放熱器103に供給される除湿対象空気116に対して放熱するとともに吸熱器105に供給される除湿対象空気116から吸熱することによってヒートポンプ118を作動させる構成となっている。
図14は、吸放湿手段119の詳細構成を示した図である。吸放湿手段119は、吸着剤107が担持された軸方向に通風可能な円筒状のハニカムローター108を備えており、このハニカムローター108を回動自在に回転軸4で支持している。そして、ハニカムローター108の外周にギア5を形成し、このギア5と回転駆動する駆動モーター6の歯車部7にベルト8を巻装している。また、ハニカムローター108を、吸湿部120と放湿部121に区分して各々に供給される空気の相互流通を抑制するように風路を仕切っている。そして、ファン3を運転すると、吸湿部120に吸熱器105を通過した除湿対象空気116(a)が供給され、放湿部121には放熱器103を通過した後にヒーター2を通過した除湿対象空気116(b)と放熱器103を通過した除湿対象空気116(c)が各々供給される。ここで、駆動モーター6を駆動するとベルト8を介してギア5に駆動力が伝達してハニカムローター108が回転し、この回転によって吸着剤107が、吸熱器105を通過した除湿対象空気116(a)、放熱器103を通過した後にヒーター2を通過した除湿対象空気116(b)、放熱器103を通過した除湿対象空気116(c)の順に接触を繰り返すことになる。この吸着剤107は、晒される空気の相対湿度が高ければ多くの水分を保持でき、相対湿度が低くなると保持可能な水分量が減少する特性を有しているので、相対湿度の異なる複数の空気との接触を繰り返せば、各々の相対湿度における吸着剤107の保持可能な水分量の差に応じて水分の吸脱着が行われることになる。ここで、吸湿部120で吸着剤107と接触する除湿対象空気116(a)は、吸熱器105において冷媒117の吸熱により冷却された低温かつ高い相対湿度の空気であり、放湿部121において吸着剤107と接触する除湿対象空気116(b)および116(c)は、放熱器103における冷媒117の放熱とヒーター2の発熱によって加熱された高温かつ低い相対湿度の空気、あるいは放熱器103において冷媒117の放熱により加熱された高温かつ低い相対湿度の空気であるので、この各々の空気の相対湿度の差によって、吸着剤107の吸脱着作用が為されて吸放湿手段119が作動することになる。また、除湿対象空気116(a)との接触時に水分を吸着した吸着剤107が、放熱器103で加熱された後にヒーター2で加熱された除湿対象空気116(b)と接触した後、放熱器103で加熱された除湿対象空気116(c)と接触するので、多量の水分を保持している吸着剤107と先に接触する除湿対象空気116(b)が、吸着剤107の水分脱着をより促し易くなる。次に除湿装置の動作を説明する。
図15は、図13に示した除湿装置の冷媒117の状態変化を示すモリエル線図(圧力−エンタルピ線図)である。図15に示した点A、点B、点C、点Dを矢符で結んだサイクルは、冷媒回路106内を循環する冷媒117の状態変化を示しており、冷媒117は圧縮機102において圧縮されることにより圧力とエンタルピが上昇して点Aから点Bの状態変化を行い、放熱器103において供給される除湿対象空気116に対して放熱することによりエンタルピが減少して点Bから点Cの状態となる。次に膨張機構104において膨張して減圧することにより圧力が低下して点Cから点Dの状態変化を行い、吸熱器105において供給される除湿対象空気116から吸熱することによりエンタルピが増加して点Dから点Aの状態に戻る。このような冷媒117の状態変化により、吸熱器105において吸熱し、放熱器103において放熱するヒートポンプ118が動作し、この時、点Bと点Cのエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が放熱器103における放熱量、点Aと点D(点C)のエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が吸熱器105における吸熱量となり、放熱量と吸熱量の差、即ち点Bと点Aのエンタルピ差に冷媒117の循環量を乗じた値が圧縮機102の圧縮仕事量になる。
図16は、図13に示した除湿装置における除湿対象空気116の状態変化を示す湿り空気線図である。図16に示した湿り空気線図において、まず、点aの状態の除湿対象空気116が放熱器103に供給され、冷媒117の放熱により加熱されて点bの状態となる。点bの状態のとなった除湿対象空気116の一部116(c)は、次に放湿部121に供給されてハニカムローター108に担持された吸着剤107が保有している水分を脱着することにより加湿されて、湿度が上昇するとともに温度が低下して点cの状態となる。一方、放熱器103に供給された後の除湿対象空気116の残り116(b)は、次にヒーター2に供給されて更に高温に加熱されて点dの状態となる。点dの状態となった除湿対象空気116(b)は、次に放湿部121に供給されてハニカムローター108に担持された吸着剤107が保有している水分を脱着することにより加湿されて、湿度が上昇するとともに温度が低下して、点eの状態となる。放湿部121において加湿された点cおよび点eの状態の除湿対象空気116は次に吸熱器105に供給され、冷媒117の吸熱により露点温度以下まで冷却されて点fの飽和状態となる。この時に飽和した水分は凝縮水としてタンク122に回収される。点fの飽和状態となった除湿対象空気116(a)は次に吸湿部120に供給され、吸着剤107に水分を吸着されることによって除湿されて湿度が低下するとともに温度が上昇し、点gの状態の乾燥空気となる。点gの状態となった除湿対象空気116は、ファン3に吸引されて装置外部に排出される。以上の除湿対象空気116の状態変化において、吸熱器105において回収される凝縮水の量は、点cと点fの絶対湿度差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値と、点eと点fの絶対湿度差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値との加算値となり、放湿部121における放湿量は、点bと点cの絶対湿度差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値と、点dと点eの絶対湿度差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値との加算値となる。また、吸湿部120における吸湿量は、点fと点gの絶対湿度差に吸湿部120に供給される除湿対象空気116(a)の重量換算風量を乗じた値となる。
以上の動作において、理想状態では、放湿部121の出口空気状態を示す点cおよび点eは、吸湿部120の入口空気状態を示す点fと同一の相対湿度である点c’および点e’に近づき、吸湿部120の出口空気状態を示す点gは、放湿部121の入口空気状態を示す点bと点dの空気の混合した点hと同一の相対湿度である点g’に近づく。したがって点fの相対湿度を上昇させ、点bおよび点dの相対湿度を低下させること、即ち、点fで示した吸湿部120への供給空気と点bおよび点dで示した放湿部121への供給空気との相対湿度差を拡大することが吸放湿量を高めることになり、結果的に除湿効率が向上することになるのである。また、点aと点bのエンタルピ差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値と、点aと点bのエンタルピ差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値との加算値が放熱器103における放熱量、点cと点fのエンタルピ差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値と、点eと点fのエンタルピ差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(b)の重量換算風量を乗じた値との加算値が吸熱器105における吸熱量となり、この放熱器103における放熱量および吸熱器105における吸熱量は、図15の冷媒117の状態変化から得られる放熱量および吸熱量と等しくなる。従って、ヒートポンプ118の放熱のみでは不足する放熱量をヒーター2の加熱により補うことによって、吸熱器105における吸熱量量とのバランスを調整することが可能となる。
以上、説明した構成および動作により、本実施形態の除湿装置は以下の効果を奏するものである。
除湿対象空気116を、放熱器103と加熱手段1の双方において、ヒートポンプ118と加熱手段1の双方の放熱により加熱し、次に放湿部121において吸放湿手段119の放湿により加湿し、次に吸熱器105においてヒートポンプ118の吸熱により冷却し、次に吸湿部120において吸放湿手段119の吸湿により除湿することによって、吸湿部120に供給される除湿対象空気116と放湿部121に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を拡大し、循環経路111を設けない単純な構成で吸放湿手段119の吸放湿量を増加して効率の良い除湿を行うことができる。
また、加熱手段1を、放熱器103で加熱する温度以上に除湿対象空気116を加熱する構成とすることによって、放湿部に供給される除湿対象空気116の相対湿度を更に下げて、吸湿部120に供給される除湿対象空気116と放湿部121に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を更に拡大することができる。これにより吸放湿手段119の吸放湿量を増加して更に効率の良い除湿を行うことができる。
また、加熱手段1を、放熱器103において加熱された除湿対象空気116の少なくとも一部を更に加熱する構成とすることによって、加熱手段1における除湿対象空気116の昇温幅を縮小し、加熱手段1の加熱量を削減することができる。これにより加熱手段1消費電力が減少して除湿効率を高めることができる。
また、吸放湿手段119を、ハニカムローター108に担持された吸着剤107が、吸湿部120において除湿対象空気116から水分を吸着するとともに放湿部121において除湿対象空気116へ水分を脱着するようにハニカムローター108を配し、ハニカムローター108の回転により、吸湿部120における水分吸着と放湿部121における水分脱着を繰り返すように構成することによって、ハニカムローター108の回転という簡単な操作で、吸湿部120における吸着剤107の水分吸着と、放湿部121における吸着剤107の水分脱着を容易に繰り返すことができ、除湿装置を安価に構成することができる。
また、ハニカムローター108の回転によって、吸着剤107が、吸熱器105で冷却された除湿対象空気116、放熱器103で加熱された後に加熱手段1で加熱された除湿対象空気116、放熱器103で加熱された除湿対象空気116の順に接触を繰り返すように構成することによって、吸熱器105で冷却された低温高湿状態の除湿対象空気116から水分を吸着した吸着剤107が、先に放熱器103で加熱された後に加熱手段1で加熱された高温低湿状態の除湿対象空気116と接触した後、放熱器103で加熱された高温低湿状態の除湿対象空気116と接触するので、多量の水分を含んだ吸着剤107と先に接触する放熱器103で加熱された後に加熱手段1で加熱された除湿対象空気116への吸着剤107からの水分脱着を容易に促すことができる。
また、加熱手段1としてヒーター2を用いる構成とすることによって、ヒーター2の放熱によって除湿対象空気116を加熱して、除湿対象空気116を放熱器103で加熱する温度以上に容易に加熱することができる。これにより加熱手段1を簡略化して安価に構成することができる。
なお、本実施形態のハニカムローター108に担持する吸着剤107としては、吸湿性があってハニカムローター108に担持でき、さらに水分脱着のためにある程度の耐熱性がある物質であれば良く、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機質の吸着型吸湿剤、有機高分子電解質(イオン交換樹脂)などの吸湿剤、塩化リチウムなどの吸収型吸湿剤等を用いることができる。さらに吸着剤107は1種類に限るものではなく、上述した吸着剤107の2種類以上を組み合わせて用いても良い。
また、本実施形態の冷媒回路106に充填する冷媒117としては、HCFC系冷媒(分子中に塩素、水素、フッ素、炭素の各原子を含む)、HFC系冷媒(分子中に水素、炭素、フッ素の各原子を含む)、炭化水素、二酸化炭素等を用いることができる。
また、本実施形態では、加熱手段1としてヒーター2を用いる構成としたが、加熱手段1はヒーター2に限るものではなく、供給空気の加熱が可能なものであれば良い。また、本実施形態に使用可能なヒーター2の種類としては、ニクロムヒーター、PTCヒーター、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター等が挙げられる。
(実施の形態2)
図17は、本発明の実施形態2にかかる除湿装置の概略構成を示した図である。図17に示すように、除湿装置の本体101内に、圧縮機102、放熱器103、膨張機構104、吸熱器105を配管接続した冷媒回路106と、供給空気から吸湿する吸湿部120および供給空気に対して放湿する放湿部121を有する吸放湿手段119と、供給空気を加熱する加熱手段1としてのヒーター2を設け、冷媒回路106内に冷媒117として二酸化炭素を充填した構成としている。また、本体101には吸込口112と吹出口113を開口し、ファン3の運転によって、除湿対象空気116を吸込口112から本体101内に吸引し、放熱器103に供給した後、一部はヒーター2を介して放湿部121に供給し、残りはヒーター2を介さずに放湿部121に供給するように風路を形成し、さらに放湿部121に供給した後の除湿対象空気116を、吸熱器105、吸湿部120の順に供給した後、吹出口113から本体101外部に吹出すように風路を形成している。そして、圧縮機102により冷媒117を圧縮することによって、冷媒117が、放熱器103、膨張機構104、吸熱器105の順に冷媒回路106内を循環し、放熱器103に供給される除湿対象空気116に対して放熱するとともに吸熱器105に供給される除湿対象空気116から吸熱することによってヒートポンプ118を作動させる構成となっている。
図18は、吸放湿手段119の詳細構成を示した図である。吸放湿手段119は、吸着剤107が担持された軸方向に通風可能な円筒状のハニカムローター108を備えており、このハニカムローター108を回動自在に回転軸4で支持している。そして、ハニカムローター108の外周にギア5を形成し、このギア5と回転駆動する駆動モーター6の歯車部7にベルト8を巻装している。また、ハニカムローター108を、吸湿部120と放湿部121に区分して各々に供給される空気の相互流通を抑制するように風路を仕切っている。そして、ファン3を運転すると、吸湿部120に吸熱器105を通過した除湿対象空気116(a)が供給され、放湿部121には放熱器103を通過した除湿対象空気116(b)、116(d)と放熱器103を通過した後にヒーター2を通過した除湿対象空気116(c)が各々供給される。ここで、駆動モーター6を駆動するとベルト8を介してギア5に駆動力が伝達してハニカムローター108が回転し、この回転によって吸着剤107が、吸熱器105を通過した除湿対象空気116(a)、放熱器103を通過した除湿対象空気116(b)、放熱器103を通過した後にヒーター2を通過した除湿対象空気116(c)、放熱器103を通過した除湿対象空気116(b)の順に接触を繰り返すことになる。この吸着剤107は、晒される空気の相対湿度が高ければ多くの水分を保持でき、相対湿度が低くなると保持可能な水分量が減少する特性を有しているので、相対湿度の異なる複数の空気との接触を繰り返せば、各々の相対湿度における吸着剤107の保持可能な水分量の差に応じて水分の吸脱着が行われることになる。ここで、吸湿部120で吸着剤107と接触する除湿対象空気116(a)は、吸熱器105において冷媒117の吸熱により冷却された低温かつ高い相対湿度の空気であり、放湿部121において吸着剤107と接触する除湿対象空気116(b)、116(d)および116(c)は、放熱器103において冷媒117の放熱により加熱された高温かつ低い相対湿度の空気、あるいは放熱器103における冷媒117の放熱とヒーター2の発熱によって加熱された高温かつ低い相対湿度の空気であるので、この各々の空気の相対湿度の差によって、吸着剤107の吸脱着作用が為されて吸放湿手段119が作動することになる。また、吸熱器105で冷却された低温の除湿対象空気116(a)とヒーター2で加熱された高温の除湿対象空気116(b)は、放熱器103で加熱された除湿対象空気116(b)、116(d)を介して吸着剤107と接触するため、除湿対象空気116(a)に与えられた吸熱器105の冷熱と除湿対象空気116(c)に与えられた除湿対象空気116(c)の温熱の直接的な移行がなくなり、ヒーター2の熱が吸着剤107からの水分脱着に有効に使われることになる。次に除湿装置の動作を説明する。
図19は、図17に示した除湿装置の冷媒117の状態変化を示すモリエル線図(圧力−エンタルピ線図)である。図19に示した点A、点B、点C、点Dを矢符で結んだサイクルは、冷媒回路106内を循環する冷媒117としての二酸化炭素の状態変化を示している。二酸化炭素冷媒は、圧縮機102において臨界圧力よりも高い超臨界圧力まで圧縮されて点Aから点Bの状態変化を行い、次に、放熱器103において供給される除湿対象空気116に対して放熱するが、超臨界状態であるため放熱しても凝縮せずに温度が下がって点Bから点Cの状態となる。そして膨張機構104において膨張して減圧することにより圧力が低下して点Cから点Dの状態変化を行い、吸熱器105において供給される除湿対象空気116から吸熱することによりエンタルピが増加して点Dから点Aの状態に戻る。二酸化炭素に例示される超臨界圧力で放熱する冷媒をヒートポンプ118の作動流体として用いた場合は、圧縮後の放熱器103における温度が高温となるのが特徴である。このため、放熱器103において加熱される除湿対象空気116の温度も高くなり、より低い相対湿度の状態で放湿部121に供給されるので、吸湿部120に供給される除湿対象空気116との相対湿度の差が拡大することになる。この相対湿度の差の拡大によって吸放湿手段119の吸放湿量が増加し、除湿効率が更に向上することになるのである。
図20は、図17に示した除湿装置における除湿対象空気116の状態変化を示す湿り空気線図である。図20に示した湿り空気線図において、まず、点aの状態の除湿対象空気116が放熱器103に供給され、冷媒117の放熱により加熱されて点bの状態となる。点bの状態のとなった除湿対象空気116の一部116(b)および116(d)は、次に放湿部121に供給されてハニカムローター108に担持された吸着剤107が保有している水分を脱着することにより加湿されて、湿度が上昇するとともに温度が低下して点cの状態となる。一方、放熱器103に供給された後の除湿対象空気116の残り116(c)は、次にヒーター2に供給され、更に高温に加熱されて点dの状態となる。点dの状態となった除湿対象空気116(c)は、次に放湿部121に供給されてハニカムローター108に担持された吸着剤107が保有している水分を脱着することにより加湿されて、湿度が上昇するとともに温度が低下して、点eの状態となる。放湿部121において加湿された点cおよび点eの状態の除湿対象空気116は次に吸熱器105に供給され、冷媒117の吸熱により露点温度以下まで冷却されて点fの飽和状態となる。この時に飽和した水分は凝縮水としてタンク122に回収される。点fの飽和状態となった除湿対象空気116(a)は次に吸湿部120に供給され、吸着剤107に水分を吸着されることによって除湿されて湿度が低下するとともに温度が上昇し、点gの状態の乾燥空気となる。点gの状態となった除湿対象空気116は、ファン3に吸引されて装置外部に排出される。以上の除湿対象空気116の状態変化において、吸熱器105において回収される凝縮水の量は、点cと点fの絶対湿度差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(b)および116(d)の合計重量換算風量を乗じた値と、点eと点fの絶対湿度差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値との加算値となり、放湿部121における放湿量は、点bと点cの絶対湿度差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(b)および116(d)の重量換算風量を乗じた値と、点dと点eの絶対湿度差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値との加算値となる。また、吸湿部120における吸湿量は、点fと点gの絶対湿度差に吸湿部120に供給される除湿対象空気116(a)の重量換算風量を乗じた値となる。
以上の動作において、理想状態では、放湿部121の出口空気状態を示す点cおよび点eは、吸湿部120の入口空気状態を示す点fと同一の相対湿度である点c’および点e’に近づき、吸湿部120の出口空気状態を示す点gは、放湿部121の入口空気状態を示す点bと点dの空気の混合した点hと同一の相対湿度である点g’に近づく。したがって点fの相対湿度を上昇させ、点bおよび点dの相対湿度を低下させること、即ち、点fで示した吸湿部120への供給空気と点bおよび点dで示した放湿部121への供給空気との相対湿度差を拡大することが吸放湿量を高めることになり、結果的に除湿効率が向上することになるのである。また、点aと点bのエンタルピ差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(b)および116(d)の合計重量換算風量を乗じた値と、点aと点bのエンタルピ差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値との加算値が放熱器103における放熱量、点cと点fのエンタルピ差に放熱器103にのみ供給される除湿対象空気116(b)および116(d)の合計重量換算風量を乗じた値と、点eと点fのエンタルピ差に放熱器103に供給された後にヒーター2に供給される除湿対象空気116(c)の重量換算風量を乗じた値との加算値が吸熱器105における吸熱量となり、この放熱器103における放熱量および吸熱器105における吸熱量は、図19の冷媒117の状態変化から得られる放熱量および吸熱量と等しくなる。従って、ヒートポンプ118の放熱のみでは不足する放湿量をヒーター2の加熱により補うことによって、吸熱器105における吸熱量とのバランスを調整することが可能となる。
以上、説明した構成および動作により、本実施形態の除湿装置は以下の効果を奏するものである。
除湿対象空気116を、放熱器103と加熱手段1の双方において、ヒートポンプ118と加熱手段1の双方の放熱により加熱し、次に放湿部121において吸放湿手段119の放湿により加湿し、次に吸熱器105においてヒートポンプ118の吸熱により冷却し、次に吸湿部120において吸放湿手段119の吸湿により除湿することによって、吸湿部120に供給される除湿対象空気116と放湿部121に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を拡大し、循環経路111を設けない単純な構成で吸放湿手段119の吸放湿量を増加して効率の良い除湿を行うことができる。
また、加熱手段1を、放熱器103で加熱する温度以上に除湿対象空気116を加熱する構成とすることによって、放湿部に供給される除湿対象空気116の相対湿度を更に下げて、吸湿部120に供給される除湿対象空気116と放湿部121に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を更に拡大することができる。これにより吸放湿手段119の吸放湿量を増加して更に効率の良い除湿を行うことができる。
また、加熱手段1を、放熱器103において加熱された除湿対象空気116の少なくとも一部を更に加熱する構成とすることによって、加熱手段1における除湿対象空気116の昇温幅を縮小し、加熱手段1の加熱量を削減することができる。これにより加熱手段1消費電力が減少して除湿効率を高めることができる。
また、吸放湿手段119を、ハニカムローター108に担持された吸着剤107が、吸湿部120において除湿対象空気116から水分を吸着するとともに放湿部121において除湿対象空気116へ水分を脱着するようにハニカムローター108を配し、ハニカムローター108の回転により、吸湿部120における水分吸着と放湿部121における水分脱着を繰り返すように構成することによって、ハニカムローター108の回転という簡単な操作で、吸湿部120における吸着剤107の水分吸着と、放湿部121における吸着剤107の水分脱着を容易に繰り返すことができ、除湿装置を安価に構成することができる。
また、ハニカムローター108の回転によって、吸着剤107が、吸熱器105で冷却された除湿対象空気116、放熱器103で加熱された除湿対象空気116、放熱器103で加熱された後に加熱手段1で加熱された除湿対象空気116、放熱器103で加熱された除湿対象空気116の順に接触を繰り返すように構成することによって、加熱手段1で加熱された除湿対象空気116と吸熱器105で冷却された除湿対象空気116との移行量を減少して加熱手段1の熱を吸着剤107からの水分脱着に有効に使うことができ、効率の良い除湿を行うことができる。
また、冷媒117が放熱器103において超臨界圧力にて放熱を行う構成とすることによって、放熱器103において除湿対象空気116を更に高温に加熱し、放湿部121に供給される除湿対象空気116と吸湿部120に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を拡大することができる。これにより吸放湿手段119の吸放湿量を増加して更に効率の良い除湿を行うことができる。
また、冷媒117として二酸化炭素を用いる構成とすることによって、放熱器103において除湿対象空気116を更に高温に加熱し、放湿部121に供給される除湿対象空気116と吸湿部120に供給される除湿対象空気116との相対湿度差を拡大することができる。これにより吸放湿手段119の吸放湿量を増加して更に効率の良い除湿を行うことができる。
また、加熱手段1としてヒーター2を用いる構成とすることによって、ヒーター2の放熱によって除湿対象空気116を加熱して、除湿対象空気116を放熱器103で加熱する温度以上に容易に加熱することができる。これにより加熱手段1を簡略化して安価に構成することができる。
なお、本実施形態のハニカムローター108に担持する吸着剤107としては、吸湿性があってハニカムローター108に担持でき、さらに水分脱着のためにある程度の耐熱性がある物質であれば良く、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機質の吸着型吸湿剤、有機高分子電解質(イオン交換樹脂)などの吸湿剤、塩化リチウムなどの吸収型吸湿剤等を用いることができる。さらに吸着剤107は1種類に限るものではなく、上述した吸着剤107の2種類以上を組み合わせて用いても良い。
また、本実施形態では、加熱手段1としてヒーター2を用いる構成としたが、加熱手段1はヒーター2に限るものではなく、供給空気の加熱が可能なものであれば良い。また、本実施形態に使用可能なヒーター2の種類としては、ニクロムヒーター、PTCヒーター、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター等が挙げられる。