JP5089254B2 - 自動車用調湿空調システム - Google Patents

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Description

本発明は、自動車内の快適な空気状態を維持しながら、高効率に車内空気の除湿あるいは加湿を可能とする自動車用調湿空調システムに関する。
近年、地球温暖化の傾向が顕著となり、その対策として主たる温室効果ガスである二酸化炭素や代替フロンの排出量を削減すべく、化石燃料の高効率使用(省エネルギー活動)及び代替フロン類(いわゆる3ガス)の排出抑制技術の導入が進められている。
特に自動車においては、車内の冷房や除湿を行うためにカーエアコンを稼働すると、自動車燃費が約20%程度悪化することが指摘されている。このため、カーエアコンの効率改善による自動車燃費の向上は、化石燃料の使用量削減という観点から喫緊の課題である。
一方、近年、省エネルギー化を推進するために、室内の除湿に水分を吸脱着する吸着材を内蔵したデシカント除湿装置などが使用されるようになってきている。このデシカント除湿装置は、下記特許文献1、2に示されるように、例えば給気路と排気路とに跨るように配設された吸着材を内蔵したデシカントロータにより、除湿された外気が室内に供給されるとともに、排気される室内空気によって吸着材の再生が行われるようにしたものである。
特開2007−32912号公報 特開2007−85680号公報
しかしながら、従来のデシカント除湿装置は、吸着材による湿分の吸脱着作用により除湿又は加湿が行われていたため、装置が大型となり、自動車への搭載には不向きであった。
また、従来の吸着材の多くは、吸着材の再生(吸着した湿分の脱着)に当たって、電気加熱器やガス加熱器などにより80℃以上に高温化された空気(相対湿度の低い空気)を用いる必要があったため、この加熱のためのエネルギーが余分に必要となり、装置全体としてはエネルギー効率が向上しないことが指摘され、自動車向けとしては実用化に至っていない。
一方、従来のカーエアコンは、除湿運転時に、空気を露点以下の温度まで冷却して結露により凝縮水を分離した後、適温まで加熱して相対湿度の低い乾燥した空気とし、この乾燥空気を車内へ供給するという非効率な運転を行っている。
このような非効率な除湿運転は、特に冬季において、乗員から放出される水蒸気によって窓ガラスが曇り、運転に支障を生ずるため、この窓ガラスの曇りを除去する目的でエアコンを稼働させていることが多い。かかる冬季におけるカーエアコンの稼働は、安全性の確保という観点からは止むを得ないことであるが、自動車燃費の向上の点、地球温暖化防止の点からは問題である。
上述の通り、カーエアコンの除湿負荷は、車内空調負荷の大部分を占めており、この除湿負荷が低減できれば自動車燃費の改善に有効であると言える。
ところで、カーエアコンによる除湿運転の結果、車内に放出される乾燥した空気は、運転中に乗員の緊張やまばたきの減少などにより涙の分泌量が低下して目が乾く現象(いわゆるドライアイ)を悪化させる要因となっている。このドライアイになると、目に不快な症状を感じ、注意力が散漫となり、安全性に支障を来すばかりでなく、ドライアイを回避するためにカーエアコンを停止しなければならない場合もあり、車内の快適性を確保し得ない事態となる。このため、近年ではドライアイを予防するため、車内に加湿装置を設置する試みもなされており、対症療法的技術の悪循環が更に燃費を悪化させる傾向にもなっている。
そこで、本発明の第1の課題は、カーエアコンの除湿負荷を軽減できる小型化された自動車用調湿空調システムを提供することにある。
第2の課題は、上記課題に加えてドライアイを防止できる自動車用調湿空調システムを提供することにある。
前記第1課題を解決するために請求項1に係る本発明として、エンジン冷却水を循環させるヒーター部と、冷媒を蒸発させる冷媒蒸発器を備えるカーエアコンと、吸着材を内蔵し流通空気の除湿を行う吸着領域と流通空気の加湿を行う再生領域とからなるデシカントロータとを組み合わせ、外気及び/又は車内空気を調湿した後、供給空気として車内へ供給するための自動車用調湿空調システムであって、
前記カーエアコンの圧縮機が稼働状態の場合に、前記エンジン冷却水を循環させるヒーター部、前記デシカントロータの再生領域、前記冷媒蒸発器、前記デシカントロータの吸着領域を順に巡る流路が構成され
カーエアコンの圧縮機が停止状態の場合に、前記外気及び/又は車内空気が前記デシカントロータの吸着領域を経て車内へ至る第1の流路と、前記外気及び/又は車内空気が前記エンジン冷却水を循環させるヒーター部、前記デシカントロータの再生領域を順に巡り車外へ至る第2の流路とが構成されることを特徴とする自動車用調湿空調システムが提供される。
上記請求項1記載の本発明は、夏季などの外気温度が高く、かつ相対湿度が高い季節であって、冷房を伴う除湿が行われる時季の運転状態の場合(カーエアコンの圧縮機が稼働状態の場合)、外気及び/又は車内空気が、前記ヒーター部で加熱され、デシカントロータの再生領域で吸着材から水分を脱着することによって加湿される。その後、冷媒蒸発器で冷却され、湿分が結露することにより第1段目の除湿がなされるとともに、相対湿度が100%となる。その後、この空気は、デシカントロータの吸着領域で内蔵する吸着材に湿分が吸着されることにより、第2段目の除湿がなされた後、車内へ供給される。このように、本発明では、冷媒蒸発器での結露による除湿と、吸着材の湿分吸着による除湿とで2段階の除湿が効率よく行われるため、カーエアコンの除湿負荷が軽減でき、燃費の向上及び地球温暖化防止に貢献できる。さらに、従来のようにデシカントロータを大型にする必要が無く、システムを小型化することが可能となる。
また、梅雨時など外気温度が比較的低く、除湿負荷が相対的に大きい季節や、冬季など除湿負荷がウインドウの曇り防止程度であるような季節の運転状態の場合(カーエアコンの圧縮機が停止状態)、外気及び/又は車内空気が前記デシカントロータの吸着領域を経て車内へ至る第1の流路と、外気及び/又は車内空気が前記エンジン冷却装置の冷却水を循環させるヒーター部、前記デシカントロータの再生領域を順に巡り車外へ至る第2の流路とを構成する。この季節では、カーエアコンの圧縮機を停止したまま除湿運転が行われる点で省エネルギーに繋がる。
前記第2課題を解決するために、請求項に係る本発明として、前記デシカントロータの再生領域を通過し、加湿された空気の一部を、直接車内に向けて放出するためのドライアイ防止ダクトが設けられる請求項1記載の自動車用調湿空調システムが提供される。
上記請求項記載の本発明は、乗員のドライアイを防止するためのものであり、デシカントロータの再生領域を通過後の加湿された空気の一部を、好ましくは乗員の顔付近に向けて放出することにより、一定の快適な湿度に保たれた車内においても、ドライアイを防止できるようになる。なお、車内への供給空気は、前記ヒーター部において高温化されるものの、再生領域を通過して吸着材を再生する際に熱を奪われるので、低温化されており、ドライアイ防止ダクトからの供給空気で乗員が不快を感じることはない。
請求項に係る本発明として、前記デシカントロータは、前記流路を形成するためのケーシング内部に前記吸着材を内蔵する第1調湿部が設けられ、前記流路を形成するためのケーシング内部に吸着材を内蔵する第2調湿部が設けられ、前記第1調湿部と第2調湿部とが直接的または連結部材を介して一体的とされ、前記第1調湿部と第2調湿部は、これらの中心部に流路方向に沿って設けられた回転軸によって回転自在に支持され、前記回転軸を180°づつ正方向又は逆方向に回転させることにより、前記第1調湿部と第2調湿部とが入れ替わるようにしてある請求項1、2いずれかに記載の自動車用調湿空調システムが提供される。
上記請求項記載の本発明では、前記第1調湿部及び第2調湿部は夫々ケーシングに収容された構造とし、吸着材の湿分の吸着、脱着の切り換えは、前記回転軸を中心として回転し入れ換えることにより行うようにしたため、複雑な流路構成が無くなり、コンパクト且つ簡易なシステムを実現することができる。
請求項に係る本発明として、前記吸着材は、流通空気の相対湿度が100%又はその近傍における吸着材の単位重量当たりの吸着水分重量の割合である吸湿率が、流通空気の相対湿度が50%又はその近傍における吸着材の単位重量当たりの吸着水分重量の割合である吸湿率の2倍以上である高分子収着材またはイモゴライトを使用する請求項1〜いずれかに記載の自動車用調湿空調システムが提供される。
上記請求項記載の本発明では、吸着材として、流通空気の相対湿度が100%又はその近傍における吸着材の単位重量当たりの吸着水分重量の割合である吸湿率が、流通空気の相対湿度が50%又はその近傍における吸着材の単位重量当たりの吸着水分重量の割合である吸湿率の2倍以上である性質を有するものを使用しているため、冷媒蒸発器で冷却されることにより相対湿度が100%又はその近傍となった空気に対して、前記吸着材による湿分吸着が効率よく行われるようになる。加えて、前述の通り吸着領域での湿分吸着が効率よく行われるため、再生領域での再生による湿分の脱着量が増加し、再生領域通過後の空気は、相対湿度が100%近傍まで上昇するようになる。このため、冷媒蒸発器での冷却に伴う結露の発生が速やかに行われ、冷媒蒸発器における除湿量が増加する。これにより、本自動車用調湿空調システムは、省エネルギー性に優れ、高度の除湿が可能となる。
請求項に係る本発明として、前記吸着材は、流路に沿って通気可能な開孔が形成されたハニカム構造又はコルゲート構造からなる定着材の表面に定着されている請求項1〜いずれかに記載の自動車用調湿空調システムが提供される。
上記請求項記載の本発明では、前記吸着材を、流路に沿って通気可能な開孔が形成されたハニカム構造又はコルゲート構造からなる定着材の表面に定着させて、デシカントロータに内蔵させることにより、効率よく湿分の吸脱着が行われるようになり、デシカントロータを小型化することが可能となる。
以上詳説のとおり本発明によれば、カーエアコンの除湿負荷を軽減できる小型化された自動車用調湿空調システムが提供できるようになる。また、加湿された空気を車内に供給するドライアイ防止ダクトによって、ドライアイを防止することも可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明に係る自動車用調湿空調システム(以下「本調湿システム」という。)の夏季運転時のシステム構成図、図2は梅雨時又は冬季運転時のシステム構成図である。
本調湿システムは、エンジン冷却装置13の冷却水を循環させるヒーター部5と、冷媒を蒸発させる冷媒蒸発器7を備えるカーエアコン14と、吸着材を内蔵し流通空気の除湿を行う吸着領域8と流通空気の加湿を行う再生領域6とからなるデシカントロータとを組み合わせ、外気及び/又は室内空気を調湿した後、供給空気として車内へ供給するための調湿空調システムである。以下、さらに具体的に詳述する。
本調湿空調システムでは、図1、図2に示されるように、供給空気源となる外気1又は車内空気2を選択的に切り換える切換装置3が備えられるとともに、該切換装置3で選択した空気を、ファン4によって車内10へ供給する流路が形成されている。なお、前記切換装置3では、外気1及び車内空気2を所定の割合で混合するようにしてもよい。そして、前記流路には、前記エンジン冷却装置13の冷却水を循環させるヒーター部5と、必要に応じて前記カーエアコン14の冷媒蒸発器7と、前記デシカントロータの再生領域6と吸着領域8とが備えられている。
前記エンジン冷却装置13は、自動車エンジンのシリンダ壁に冷却水を流通して、該シリンダ壁の温度を一定に保つための一般的な水冷式冷却装置であり、エンジン内部に設けられ、冷却水を圧送するためのウォータポンプと、前記冷却水が流通する複数のチューブが設けられ、前記チューブの外面に起立して該チューブ内を流通する冷却水の熱を放熱させるための複数のフィンが設けられたラジエータとから主に構成されている。そして、本発明では、前記シリンダ壁を通過して高温化された冷却水が、本調湿システムの流路に設けられたヒーター部5に導かれ、該ヒーター部5を循環した後、前記ラジエータに導かれるようになっている。
前記カーエアコン14は、一般的な冷凍サイクルからなるものであり、冷媒を蒸発させて周囲の熱を奪う冷媒蒸発器7と、前記冷媒を吸入圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された前記冷媒を凝縮させて周囲に熱を放出する冷媒凝縮器と、該冷媒凝縮器からの前記冷媒を減圧する膨張弁とから構成されるものである。
前記吸着材は、流通空気の相対湿度が100%又はその近傍における吸着材の単位重量当たりの吸着水分重量の割合である吸湿率が、流通空気の相対湿度が50%又はその近傍における吸着材の単位重量当たりの吸着水分重量の割合である吸湿率の2倍以上である性質を有するものを使用する。このような性質を有する吸着材としては、高分子収着材またはイモゴライトなどを挙げることができる。
図3(日本エクスラン工業(株)の製品カタログより抜粋)は、前記高分子収着材(従来の吸着材と区分する意味で、本発明では特に「収着材」と表記する。)とその他の吸着材(シリカゲルA型、B型及びActive carbon)の相対湿度(%RH)と吸湿率(%重量)との関係を示した吸着等温曲線である。同図から明らかなように、高分子収着材は、その他の吸着材と比較して吸湿率が優れるとともに、流通空気の相対湿度が100%RH近傍における吸湿率が120%重量以上と、飛び抜けて高く、その上、相対湿度50%RH近傍における吸湿率約50%重量の2倍以上となる性質を有している。かかる性質を有する高分子収着材の構造としては、例えば特開平11-262621号公報に記載されるように、アニオン交換性基およびカチオン交換性基を有する両性イオン交換体である有機高分子からなり、かつ架橋構造を有する高吸放湿性高分子収着材を好適に用いることができる。
また、前記高分子収着材と同等若しくは同等以上の吸湿率を有する吸着材として、イモゴライトを挙げることができる。前記イモゴライトは、ナノチューブ状をした低結晶性アルミニウムケイ酸塩(SiO2・Al2O3・2H2O)であり(外径約2nm、内径約1nm、長さは数十nm〜数μm)、その特異な形態により高い比表面積を有するだけでなく水との親和性にも非常に優れている。そのため、工場の排熱や太陽熱などの低温排熱を利用したヒートポンプシステムの熱交換剤、生活環境の湿度を自律的に制御する湿度調節剤や結露防止剤など、さまざまな工業的応用が期待されているものである。図4に示されるイモゴライトの相対湿度(%RH)と吸湿率(wt%)曲線から明らかなように、相対湿度が100%又はその近傍における吸着材の単位重量当たりの吸着水分重量の割合である吸湿率が、流通空気の相対湿度が50%又はその近傍における吸着材の単位重量当たりの吸着水分重量の割合である吸湿率の2倍以上となる性質を有している。
図5は、前記高分子収着材の除湿性能を検討した実験結果の一例である。本実験結果は、φ150mm、長さ240mmの筒状部材の表面に前記高分子収着材を定着した吸着材ユニットを製作し、この吸着材ユニットの一方側から、流量38〜41m3/hで各種温度条件の高湿度空気を流通させ、他方側で除湿後の低湿度空気を回収する実験を行い、このときの流通空気の温度をパラメータとし、前記高湿空気と低湿空気との相対湿度差と、除湿水分量を流通空気量で除した単位除湿量との関係をグラフ化したものである。この結果、相対湿度差が大きくなれば単位除湿量が大きくなり、その傾向は流通空気の温度を高くした方が顕著となることが明らかとなった。
前記デシカントロータは、図6〜図8に示されるように、ヒーター部5を通過した流通空気が流入する第1のダクト20、20’及び流出した流通空気がメインダクト9を通って車内10へ供給される第2のダクト21、21’の内の一方に、流路を構成するケーシング22内部に、好ましくは前記高分子収着材またはイモゴライトなどの吸着材を内蔵する第1調湿部23が設けられ、他方に流路を構成するケーシング24内部に好ましくは前記高分子収着材またはイモゴライトなどの吸着材を内蔵する第2調湿部25が設けられ、前記第1調湿部23と第2調湿部25とが直接的または連結部材26を介して一体的とされ、前記第1調湿部23及び第2調湿部25は、これらの中心部にダクト方向に沿って設けられた回転軸27によって回転自在に支持され、前記回転軸27を180度づつ正方向又は逆方向に回転させることにより、前記第1調湿部23と第2調湿部25とが入れ替わり、前記第1のダクト20、20’に設けられる調湿部を再生領域6として、前記第2のダクト21、21’に設けられる調湿部を吸着領域8として作用させ、内蔵する前記吸着材の吸湿と再生とが交互になされるようになっている。
そして、モータ28によって前記回転軸27を180度づつ正方向又は逆方向に回転させることにより、前記第1調湿部23と第2調湿部25とが入れ替わる流路構成となっている。すなわち、前記第2のダクト21、21’において、前記吸着材が空気中の水分を吸着している間、前記第1のダクト20、20’においては、前記吸着材が空気中に水分を放出する再生が行われ、前記第1調湿部23と第2調湿部25とを入れ換える運転パターンを繰り返し、内蔵する前記吸着材の吸湿と再生とが交互になされるようになっている。
このように、本調湿システムでは、前記第1調湿部23及び第2調湿部25が夫々ケーシング22、24に収容された構造とし、前記吸着材の吸湿、再生の切り換えは前記回転軸27を中心として回転し入れ換えることにより行われるようにしたため、複雑な流路構成が無くなり、システムを自動車に搭載できる程度にまで小型化できるようになる。
また、上記形態例では、第1調湿部23と第2調湿部25とを夫々独立のケーシング22、24によって構成したが、図8に示されるように、従来より公知の単一ケーシングによるデシカント装置によって代用することも可能である。すなわち、単一ケーシング内の中心に設けられた仕切り材によって画成された各空間内に夫々前記吸着材を充填し、このデシカント装置を第1のダクト20、20’と第2のダクト21、21’とに跨るように配置するとともに、ダクト方向に沿って設けられた回転軸によって回転可能とし、所定時間経過時に回転軸を正方向又は逆方向に180°回転させることにより流路の入れ替えを行うようにしてもよい。
前述の通り、前記吸着材は、前記第1調湿部23及び第2調湿部25に内蔵されている。このとき、前記吸着材は、第1調湿部23及び第2調湿部25内に充填されるようにしてもよいが、次のようにして内蔵することが好ましい。すなわち、前記吸着材は、流路に沿って通気可能な開孔が形成されたハニカム構造又はコルゲート構造からなる定着材(例えばハニカムペーパ、コルゲートペーパなど)の表面に定着されるようにする。前記吸着材を定着させたハニカムペーパは、相対湿度差が存在すれば、30℃程度の温度領域においても十分な吸脱着性能を示すことが確認されている(図5の実験結果参照)。このように、前記吸着材が定着したハニカムペーパなどを内蔵させることにより、効率よく湿分の吸脱着が行われるようになり、デシカントロータを小型化することが可能となる。
〔圧縮機が稼働状態の場合の運転状態〕
次に、カーエアコン14の圧縮機が稼働状態の場合の運転状態について、詳述する。カーエアコン14の圧縮機が稼働状態の場合とは、冷媒蒸発器7で冷気を発生させ、車内の冷房及び除湿を行いたい夏季運転時の運転状態のことである。
この場合、図1に示されるように、ファン4によって圧送される外気及び/又は車内空気は、ダクトを通って、エンジン冷却装置13の冷却水を循環させるヒーター部5、デシカントロータの再生領域6、カーエアコン14の冷媒蒸発器7、デシカントロータの吸着領域8の順に巡り、メインダクト9を通って車内10に供給されるようになっている。
この夏季運転時の運転状態における流通空気の状態変化について、図9に示される湿り空気線図の具体例を用いて詳述すると、まず、外気1と車内空気2とが切換装置3で選択的な切り換え若しくは混合が行われた空気の状態は点aで示される(ここでは、外気1が選択されたとする)。
この点aの状態の流通空気は、ヒーター部5に送られ、ヒーター部5の放熱作用によって加熱されるとともに、それに伴って相対湿度が低下し、点bの状態となる。
点bの状態の流通空気は、デシカントロータの再生領域6に送られ、内蔵する吸着材から水分を受け取り加湿され、同時に温度が低下して点cの状態となる。
次に点cの状態の流通空気は、カーエアコン14の冷媒蒸発器7に送られ、該冷媒蒸発器7の吸熱作用によって露点以下まで冷却され、点dの状態となる。ここで、冷媒蒸発器7の表面には、流通空気の湿分が結露して水滴となって付着し、流通空気からの第1段目の除湿が行われる。この点dの状態では、相対湿度が約100%となる。
その後、この点dの状態の流通空気は、デシカントロータの吸着領域8に送られ、内蔵する吸着材により、第2段目の除湿が行われる。このとき、点dの状態の流通空気は相対湿度が約100%であるため、吸着材の吸湿率が最大となる状態で効率よく除湿が行われる(図3参照)。除湿後の状態は点eで表され、この点eの状態の流通空気がメインダクト9を通って車内10へ供給される。
ところで、本調湿空調システムの理論COPについて考察すると、図9に示されるように、本調湿空調システムでは、点cから点dへ冷却する際の除熱量はエンタルピー差hとなり、理論COPは、点cと点dの温度Tc、Tdにて規定され、COP=Td/(Tc−Td)となる。
一方、従来の空調システムでは、点aから点fを経て点eにかけて除湿冷却され、除熱量はエンタルピー差Hとなり(実際には、更に別途加熱が必要)、本調湿空調システムのエンタルピー差hに比べて大きな値となることは明白である。
また、従来の空調システムでは、理論COPは、点aと点fの温度Ta、Tfにて規定され、COP=Tf/(Ta−Tf)となる。したがって、本調湿空調システムでは、従来の空調システムの理論COPと比較して、冷凍サイクルの温度幅(凝縮温度と蒸発温度の差)を小さくすることができ、冷凍効率及び省エネルギー性に優れた空調システムとすることができる。
なお、本調湿システムのエネルギー消費の主体は、カーエアコン14の圧縮機動力である。また、前記ヒーター部5を循環する冷却水(温水)は、排熱を利用したものであるため、エネルギー消費は極小さい。
〔圧縮機が停止状態の場合の運転状態〕
一方、カーエアコン14の圧縮機が停止状態の場合とは、上記夏季以外の時季における運転状態のことであり、つまり冬季や秋季、春季、梅雨時などに、空気の冷却は不要だが、除湿又は暖房を中心とした車内空調を施したい時季における運転状態のことである。
従来は、冬季や梅雨時などにおいても、カーエアコンの冷却減湿の作用により除湿を行い、この低温化した空気をヒーター部5により加熱した後、車内へ供給する再熱運転が行われていた。このため、除湿運転においても、エンジン負荷が大きく、燃費低下の原因となっていた。これに対し、本調湿システムは、カーエアコンを使用せずに除湿を行うため、このような問題を生じない。以下、具体的に説明する。
この場合、図2に示されるように、ファン11によって圧送される流通空気が前記デシカントロータの吸着領域8を経て車内10へ至る第1の流路15と、ファン4によって圧送される流通空気がエンジン冷却装置13の冷却水を循環させるヒーター部5、デシカントロータの再生領域6を順に巡り車外へ至る第2の流路16とが形成される。
この梅雨時の運転状態における供給空気の状態変化について、図10に示される湿り空気線図の具体例を用いて詳述すると、まず、外気1と車内空気2とが切換装置3で選択的な切り換え若しくは混合が行われた流通空気の状態は点a’で示される(ここでは、外気1が選択されたとする)。
この点a’の状態の流通空気は、一部がファン11によって第1の流路15に導かれ、残りの一部がファン4によって第2の流路16に導かれる。前記第1の流路15では、デシカントロータの吸着領域8を通過した流通空気は、点g’の状態に除湿され、メインダクト9を通じて車内10へ供給される。除湿の際、若干の温度上昇があるが、元々温度が低い時季であり、かつ相対湿度が低下した状態なので、不快感が生じることはない。
一方、前記第2の流路16では、ヒーター部5で加熱された流通空気は、点b’の状態となってデシカントロータの再生領域6に送られ、湿分を受け取って絶対湿度が上昇するとともに温度が低下して、点c’の状態となり、その後車外へ排出される。
かかる除湿運転による車内の快適性について検討すると、1kgの空気から湿分1gを吸着した場合の上昇温度は、理論的には約2.5℃であるから、例えば1kgの外気1又は車内空気2から2〜4gの水分を除去したとすれば、流通空気の温度は、5〜10℃上昇する。しかしながら、温度上昇が発生しても、絶対湿度が低下しているので相対湿度は低下し、快適な車内環境が確保できる。同時に、カーエアコン14の圧縮機を稼働せずに除湿ができるので、エンジン負荷が低下でき、燃費の大幅な改善が可能となる。
〔ドライアイ防止装置について〕
本調湿システムでは、図1、図2に示されるように、前記デシカントロータの再生領域6を通過し、加湿された流通空気の一部を、直接車内の乗員周辺に向けて放出されるドライアイ防止ダクト12が設けられるようにすることが好ましい。前記再生領域6を通過後の流通空気(点c、点c’)は比較的高湿度の空気であるため、カーエアコン14の冷房や除湿により乾燥した車内でも、適度に乗員の目の乾きが防止できるようになる。かかる構成は、ドライアイ防止のための熱源などを別途設けることが一切不要であるため、エンジン負荷を増加させることなく省エネルギーとなる。
カーエアコンの圧縮機が稼働状態の場合の本調湿システムのシステム構成図である。 カーエアコンの圧縮機が停止状態の場合の本調湿システムのシステム構成図である。 高分子収着材と、その他の吸着材(シリカゲルA型、B型及びActive carbon)との吸着等温曲線である。 イモゴライトの相対湿度(%RH)と吸湿率(%重量)との関係を示した吸着等温曲線である。 相対湿度差と単位除湿量の関係を示すグラフである。 デシカントロータの側面図である。 図6のVII−VII線矢視図である。 デシカントロータの斜視図である。 カーエアコンの圧縮機が稼働状態の場合の湿り空気線図である。 カーエアコンの圧縮機が停止状態の場合の湿り空気線図である。
1…外気、2…車内空気、3…切換装置、4・11…ファン、5…ヒーター部、6…再生領域、7…冷媒蒸発器、8…吸着領域、9…メインダクト、10…車内、12…ドライアイ防止ダクト、13…エンジン冷却装置、14…カーエアコン、15…第1の流路、16…第2の流路

Claims (5)

  1. エンジン冷却水を循環させるヒーター部と、冷媒を蒸発させる冷媒蒸発器を備えるカーエアコンと、吸着材を内蔵し流通空気の除湿を行う吸着領域と流通空気の加湿を行う再生領域とからなるデシカントロータとを組み合わせ、外気及び/又は車内空気を調湿した後、供給空気として車内へ供給するための自動車用調湿空調システムであって、
    前記カーエアコンの圧縮機が稼働状態の場合に、前記エンジン冷却水を循環させるヒーター部、前記デシカントロータの再生領域、前記冷媒蒸発器、前記デシカントロータの吸着領域を順に巡る流路が構成され
    カーエアコンの圧縮機が停止状態の場合に、前記外気及び/又は車内空気が前記デシカントロータの吸着領域を経て車内へ至る第1の流路と、前記外気及び/又は車内空気が前記エンジン冷却水を循環させるヒーター部、前記デシカントロータの再生領域を順に巡り車外へ至る第2の流路とが構成されることを特徴とする自動車用調湿空調システム。
  2. 前記デシカントロータの再生領域を通過し、加湿された空気の一部を、直接車内に向けて放出するためのドライアイ防止ダクトが設けられる請求項1記載の自動車用調湿空調システム。
  3. 前記デシカントロータは、前記流路を形成するためのケーシング内部に前記吸着材を内蔵する第1調湿部が設けられ、前記流路を形成するためのケーシング内部に吸着材を内蔵する第2調湿部が設けられ、前記第1調湿部と第2調湿部とが直接的または連結部材を介して一体的とされ、前記第1調湿部と第2調湿部は、これらの中心部に流路方向に沿って設けられた回転軸によって回転自在に支持され、前記回転軸を180°づつ正方向又は逆方向に回転させることにより、前記第1調湿部と第2調湿部とが入れ替わるようにしてある請求項1、2いずれかに記載の自動車用調湿空調システム。
  4. 前記吸着材は、流通空気の相対湿度が100%又はその近傍における吸着材の単位重量当たりの吸着水分重量の割合である吸湿率が、流通空気の相対湿度が50%又はその近傍における吸着材の単位重量当たりの吸着水分重量の割合である吸湿率の2倍以上である高分子収着材またはイモゴライトを使用する請求項1〜いずれかに記載の自動車用調湿空調システム。
  5. 前記吸着材は、流路に沿って通気可能な開孔が形成されたハニカム構造又はコルゲート構造からなる定着材の表面に定着されている請求項1〜いずれかに記載の自動車用調湿空調システム。
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