このような従来の除湿機は、デシカントローターに吸湿させる空気の相対湿度を上昇させる手段を有していないために、デシカントローターでの吸湿効率を上昇させることができず、除湿効率を良化できないという課題があった。
また、吸熱器に供給する空気のエンタルピーを増加させる手段を有していないため、冬場などの低温時には吸熱器と供給空気とのエンタルピー差が縮小してヒートポンプでの除湿量が大幅に低下し、デシカントローターのみの除湿運転となるため、エネルギー効率が低下するという課題があった。
また、冬場などの低温時にヒートポンプを動作させた場合、吸熱器に着霜現象が起こる可能性があり、その霜を除霜するためにヒートポンプに2方弁などの除霜手段を設ける必要があり、装置構造が複雑化しコストが上昇するという課題があった。
また、もとの室内空気に比べ、温度が上昇した空気が除湿機から供給されるので、夏場などの高温時には不快感があるという課題があった。
また、デシカントローターが吸湿した水分を回収するための顕熱交換器が必要であり、また、ヒーターとデシカントローターの再生領域と顕熱交換器の一方の通路を環状に接続した循環通路を形成する必要があるため、装置構成が複雑になり大型化するという課題があった。
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、小型で簡略な構成でヒートポンプとデシカントローターを複合させ、デシカントローターに吸湿させる空気の相対湿度を上昇させることにより除湿効率を良化させ、低温時でもヒートポンプを利用して効率良く除湿でき、除霜用に特別な部材を設けることなく除霜運転を行うことができ、室内空気に対し温度が低い空気を吹出すことができる除湿機を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために本発明が講じた第1の課題解決手段は、吸込口(2)と吹出
口(3)を開口した本体(1)内に、冷媒(8)を圧縮する圧縮機(5)と前記冷媒(8
)が供給空気に放熱する放熱器(7)と前記冷媒(8)を膨張させて減圧する減圧機構(
10)と前記冷媒(8)が供給空気から吸熱する吸熱器(6)とを配管接続した蒸気圧縮
式のヒートポンプ(9)と、駆動手段(19)によって回転し、吸湿領域(24)では供給空気から吸湿するとともに再生領域(23)では加熱されて水分を放出するデシカント
ローター(18)と、前記再生領域(23)を加熱するヒーター(21)と、前記吸込口
(2)から空気を吸引し、前記放熱器(7)に供給して前記吹出口(3)から排出する第
1風路(13)と、前記吸込口(2)から空気を吸引して前記再生領域(23)に供給し
、前記再生領域(23)に供給された空気を前記吸熱器(6)に供給し、更に前記吸湿領
域(24)に供給して前記吹出口(3)から排出する第2風路(14)と、を備え、第2風路(14)において、吸熱器(6)に供給される空気の一部に吸込口(2)から吸引された空気を直接供給する第1バイパス経路(42)を形成したものである。
そして、上記第1の課題解決手段による作用は、本体(1)内に環状の循環通路や水分回収用の熱交換器を設けずにデシカントローター(18)が吸湿した水分を吸熱器(6)で結露水として回収する構成にして装置の簡略化、小型化を図るものであり、また、吸熱器(6)で冷却され相対湿度を低下させられた空気を更に吸湿領域(24)に供給することで、デシカントローター(18)の吸湿領域(24)と再生領域(23)を通過する空気の相対湿度差を大きくすることができ、デシカントローター(18)の吸放湿効率を高めるものであるとともに、吸熱器(6)に直接吸込口(2)から吸引された空気を供給することにより、再生領域(23)および吸熱器(6)のそれぞれに最適な空気流量を確保することができ、デシカントローター(18)の再生効率と吸熱器(6)の吸熱効率を高めるものである。
また、第2の課題解決手段は、第2風路(14)において、吸込口(2)から吸引された空気の一部をヒーター(21)を介さずにデシカントローター(18)の再生領域(23)に供給する第1パージ経路(41)を形成したものである。
そして、第2の課題解決手段による作用は、デシカントローター(18)の回転方向におけるヒーター(21)の前段および後段に位置する再生領域(23)に第1パージ経路(41)を通じて空気を供給し、ヒーター(21)後段に供給した空気でデシカントローター(18)を冷却して吸湿領域(24)での水分吸湿を速めるとともにヒーター(21)前段に供給した空気でデシカントローター(18)を予熱して水分を放出しやすくするものである。
また、第3の課題解決手段は、第1風路(13)において、吸込口(2)から吸引された空気の一部を、デシカントローター(18)の吸湿領域(24)に供給する第2パージ経路(43)を形成したものである。
そして、第3の課題解決手段による作用は、吸湿領域(24)に直接吸込口(2)から吸引された空気を供給することにより、その空気から水分を吸着させることができ、デシカントローター(18)の吸湿量および放湿量を増加するものである。
また、第4の課題解決手段は、第1風路(13)の放熱器(7)に供給される空気のすくなくとも一部に第2風路(14)の吸湿領域(24)を通過した空気の少なくとも一部を供給する構成としたものである。
そして、第4の課題解決手段による作用は、吸熱器(6)により冷却された後、吸湿領域(24)にて吸湿により吸着熱を与えられた空気で、室内空気より温度が低い状態となっている第2風路(14)の吸湿領域(24)を通過後の空気を、第1風路(13)の放熱器(7)に供給することにより、室内空気を直接供給するより放熱器(7)における放熱量を増加させることができ、その結果、吸熱器(6)における吸熱量を増加させ、吸熱器(6)での結露を促進させるものである。
また、第5の課題解決手段は、第1風路(13)に送風する第1ファン(11)と第2風路(14)に送風する第2ファン(12)を備え、前記第1ファン(11)、前記第2ファン(12)および圧縮機(5)を動作させる単独除湿運転(40)と前記第1ファン(11)、前記第2ファン(12)、前記圧縮機(5)、駆動手段(19)およびヒーター(21)を動作させる複合除湿運転(39)を切換可能に構成したものである。
そして、第5の課題解決手段による作用は、低温時は複合除湿運転(39)を実行して再生領域(23)においてデシカントローター(18)が放出した水分を含み高湿となった空気を吸熱器(6)に供給し、冷媒(8)とのエンタルピー差を確保することでヒートポンプ(9)を作動させて除湿効率を高めるものである。
また、第6の課題解決手段は、単独除湿運転(40)と複合除湿運転(39)の切り換えを吸込口(2)から吸気する空気の温度に基づいて実行する構成としたものである。
そして、第6の課題解決手段による作用は、吸込口(2)から吸気した空気が低温の場合は複合除湿運転(39)を実行して除湿量を確保し、それ以外はヒートポンプ(9)のみの単独除湿運転(40)を実行して消費電力を抑えることで環境温度に適応した効率の良い除湿運転を行うものである。
また、第7の課題解決手段は、単独除湿運転(40)と複合除湿運転(39)の切り換えを吸込口(2)から吸気する空気の湿度に基づいて実行する構成としたものである。
そして、第7の課題解決手段による作用は、吸込口(2)から吸気した空気が高湿の場合は複合除湿運転(39)を実行して除湿量を増加し、それ以外はヒートポンプ(9)のみの単独除湿運転(40)を実行して消費電力を抑えることで除湿負荷に適応した効率の良い除湿運転を行うものである。
また、第8の課題解決手段は、本体(1)の吹出口(3)開口面と異なる面に排気口(4)を開口し、第1ファン(11)の排出先を前記吹出口(3)または前記排気口(4)の何れかに切換可能に構成したものである。
そして、第8の課題解決手段による作用は、第1ファン(11)により放熱器(7)に供給されて加熱された高温空気と、第2ファン(12)により吸湿領域(24)や吸熱器(6)に供給されて除湿された低湿空気とを、吹出口(3)と排気口(4)とに分離して排出する排気形態と高温空気と低湿空気を共に吹出口(3)から排出する排気形態を使用目的に応じて選択可能にするものである。
また、第9の課題解決手段は、第1ファン(11)の排出先が排気口(4)に設定された場合に単独除湿運転(40)を実行する構成としたものである。
そして、第9の課題解決手段による作用は、第1ファン(11)の排出先が排気口(4)に設定された場合は、単独除湿運転(40)を実行し、第2ファン(12)により送風される空気にデシカントローター(18)の吸着熱やヒーター(21)の余熱を与えずに吹出口(3)から排出することで室温上昇を抑制するものである。
また、第10の課題解決手段は、吸熱器(6)の温度が所定値未満となった場合に、ヒーター(21)と駆動手段(19)を動作させる除霜運転モードを実行する構成としたものである。
そして、第10の課題解決手段による作用は、吸熱器(6)に着霜し吸熱器(6)の温度が所定値未満となった場合に、除霜運転モードを実行して吸熱器(6)にヒーター(21)の熱を供給することにより除霜用に特別な部材を設けることなく付着した霜を取り除くことで、再び除湿機が除湿できる状態にするものである。
また、第11の課題解決手段は、除霜運転モードにおいて、圧縮機(5)を停止させる構成としたものである。
そして、第11の課題解決手段による作用は、除霜運転モードにおいて、圧縮機(5)を停止させることにより、吸熱器(6)における吸熱作用を停止させ、吸熱器(6)の除霜をより効果的に行い、除霜運転モードの時間を短縮するものである。
また、第12の課題解決手段は、第1ファン(11)の風量を前記吸込口(2)から吸引される空気の温度に基づいて調整する構成としたものである。
そして、第12の課題解決手段による作用は、供給空気の温度が低い場合は第1ファン(11)の風量を減らし、逆に供給空気の温度が高い場合は第1ファン(11)の風量を増やすことで放熱器(7)における放熱量を調整し、ヒートポンプ(9)の作動圧力を適正に調整するものである。
また、第13の課題解決手段は、第1ファン(11)の風量を前記吸込口(2)から吸引される空気の湿度に基づいて調整する構成としたものである。
そして、第13の課題解決手段による作用は、供給空気の湿度が低い場合は第1ファン(11)の風量を減らし、逆に供給空気の湿度が高い場合は第1ファン(11)の風量を増やすことでヒートポンプ(9)の作動圧力を適正に調整するものである。
また、第14の課題解決手段は、第1ファン(11)の風量を前記吸熱器(6)の温度に基づいて調整する構成としたものである。
そして、第14の課題解決手段による作用は、吸熱器(6)の温度が低い場合は第1ファン(11)の風量を減らし、逆に吸熱器(6)の温度が高い場合は第1ファン(11)の風量を増やすことでヒートポンプ(9)の作動圧力を適正に調整するものである。
本発明の請求項1記載の除湿機は、本体(1)内に環状の循環通路や水分回収用の熱交換器を設けずにデシカントローター(18)が吸湿した水分を吸熱器(6)で結露水として回収する構成にして装置の簡略化、小型化を図るとともに、吸熱器(6)で冷却され相対湿度を低下させられた空気を更に吸湿領域(24)に供給することで、デシカントローター(18)の吸湿領域(24)と再生領域(23)を通過する空気の相対湿度差を大きくすることができ、デシカントローター(18)の吸放湿効率を高め、除湿効率を高めるという効果を奏するとともに、吸熱器(6)に直接吸込口(2)から吸引された空気を供給することにより、再生領域(23)および吸熱器(6)のそれぞれに最適な空気流量を確保することができ、デシカントローター(18)の再生効率と吸熱器(6)の吸熱効率を高め、除湿効率を高めるという効果を奏する。
また、本発明の請求項2記載の除湿機は、デシカントローター(18)の回転方向におけるヒーター(21)の前段および後段に位置する再生領域(23)に第1パージ経路(41)を通じて空気を供給し、ヒーター(21)後段に供給した空気でデシカントローター(18)を冷却して吸湿領域(24)での水分吸湿を速めるとともにヒーター(21)前段に供給した空気でデシカントローター(18)を予熱して水分を放出しやすくすることで除湿効率を高めるという効果を奏する。
また、本発明の請求項3記載の除湿機は、吸湿領域(24)に直接吸込口(2)から吸引された空気を供給することにより、その空気から水分を吸着させることができ、デシカントローター(18)の吸湿量および放湿量を増加し、除湿効率を高めるという効果を奏する。
また、本発明の請求項4記載の除湿機は、吸熱器(6)により冷却された後、吸湿領域(24)にて吸湿により吸着熱を与えられた空気で、室内空気より温度が低い状態となっている第2風路(14)の吸湿領域(24)を通過後の空気を、第1風路(13)の放熱器(7)に供給することにより、室内空気を直接供給するより放熱器(7)における放熱量を増加させることができ、その結果、吸熱器(6)における吸熱量を増加させ、吸熱器(6)での結露を促進させ、除湿効率を高めるという効果を奏する。
また、本発明の請求項5記載の除湿機は、低温時は複合除湿運転(39)を実行して再生領域(23)においてデシカントローター(18)が放出した水分を含み高湿となった空気を吸熱器(6)に供給し、冷媒(8)とのエンタルピー差を確保することでヒートポンプ(9)を作動させて除湿効率を高めるという効果を奏する。
また、本発明の請求項6記載の除湿機は、吸込口(2)から吸気した空気が低温の場合は複合除湿運転(39)を実行して除湿量を確保し、それ以外はヒートポンプ(9)のみの単独除湿運転(40)を実行して消費電力を抑えることで環境温度に適応した効率の良い除湿運転を行うという効果を奏する。
また、本発明の請求項7記載の除湿機は、吸込口(2)から吸気した空気が高湿の場合は複合除湿運転(39)を実行して除湿量を増加し、それ以外はヒートポンプ(9)のみの単独除湿運転(40)を実行して消費電力を抑えることで除湿負荷に適応した効率の良い除湿運転を行うという効果を奏する。
また、本発明の請求項8記載の除湿機は、第1ファン(11)により放熱器(7)に供給されて加熱された高温空気と、第2ファン(12)により吸湿領域(24)や吸熱器(6)に供給されて除湿された低湿空気とを、吹出口(3)と排気口(4)とに分離して排出する排気形態と高温空気と低湿空気を共に吹出口(3)から排出する排気形態を使用目的に応じて選択できるという効果を奏する。
また、本発明の請求項9記載の除湿機は、第1ファン(11)の排出先が排気口(4)に設定された場合は、単独除湿運転(40)を実行し、第2ファン(12)により送風される空気にデシカントローター(18)の吸着熱やヒーター(21)の余熱を与えずに吹出口(3)から排出することで室温上昇を抑制するという効果を奏する。
また、本発明の請求項10記載の除湿機は、吸熱器(6)に着霜し吸熱器(6)の温度が所定値未満となった場合に、除霜運転モードを実行して吸熱器(6)にヒーター(21)の熱を供給することにより除霜用に特別な部材を設けることなく付着した霜を取り除くことで、再び除湿できる状態にすることができ、効率良く除湿するという効果を奏する。
また、本発明の請求項11記載の除湿機は、除霜運転モードにおいて、圧縮機(5)を停止させることにより、吸熱器(6)における吸熱作用を停止させ、吸熱器(6)の除霜をより効果的に行い、除霜運転モードの時間を短縮するという効果を奏する。
また、本発明の請求項12記載の除湿機は、供給空気の温度が低い場合は第1ファン(11)の風量を減らし、逆に供給空気の温度が高い場合は第1ファン(11)の風量を増やすことで放熱器(7)における放熱量を調整し、ヒートポンプ(9)の作動圧力を適正に調整し、圧縮機(5)の信頼性を確保するという効果を奏する。
また、本発明の請求項13記載の除湿機は、供給空気の湿度が低い場合は第1ファン(11)の風量を減らし、逆に供給空気の湿度が高い場合は第1ファン(11)の風量を増やすことでヒートポンプ(9)の作動圧力を適正に調整するという効果を奏する。
また、本発明の請求項14記載の除湿機は、吸熱器(6)の温度が低い場合は第1ファン(11)の風量を減らし、逆に吸熱器(6)の温度が高い場合は第1ファン(11)の風量を増やすことでヒートポンプ(9)の作動圧力を適正に調整するという効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を図1〜7に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる除湿機の概略断面図であり、図に示すように、大略直方体に形成した本体1の片側面に吸込口2、本体1の上面に吹出口3、吸込口2の反対側の側面に排気口4を開口している。本体1の内部には、底部に圧縮機5、その上方に吸熱器6、さらに、その上方に放熱器7を配設して各々を配管接続し密閉回路を形成している。この密閉回路内に作動流体である冷媒8として例えば、HCFC系冷媒(分子中に塩素、水素、フッ素、炭素の各原子を含む)、HFC系冷媒(分子中に水素、炭素、フッ素の各原子を含む)、炭化水素、二酸化炭素等の自然冷媒などの何れかを充填して蒸気圧縮式のヒートポンプ9を形成している。吸熱器6および放熱器7は、ヘアピンチューブに複数枚のフィンを嵌入して空気流通を可能に構成したフィンチューブ型の熱交換器で構成され、吸熱器6と放熱器7を接続する配管中には減圧機構10として、例えば、キャピラリチューブや膨張弁等を介在させている。また、吸込口2から吸込んだ室内空気を放熱器7に送風できる位置に第1ファン11を、吸込口2から吸込んだ室内空気を吸熱器6に送風できる位置に第2ファン12を各々配し、隔壁によって風路を形成している。なお、第1ファン11および第2ファン12の設置位置は、上記風路を確保できる位置であれば良く、本実施例の位置に限定するものではない。この第1ファン11および第2ファン12には、羽根、ケーシング、モータ等から構成される一般的な送風機が用いられ、その送風量はモータの複数の出力ノッチにより変更可能となっている。第1ファン11は、吸込側が放熱器7を介して吸込口2と連通し、吐出側が吹出口3と連通し、第1風路13を形成し、第1ファン11を運転すると吸込口2から吸気して放熱器7に供給し吹出口3から排気する送風動作が行われる。第2ファン12は吸込み側が吸熱器6を介して、吐出側が吹出口3と連通し第2風路14を形成し、第2ファン12を運転すると吸込口2から吸気して吸熱器6に供給し吹出口3から排気する送風動作が行われる。ここで圧縮機5を運転すると、放熱器7、減圧機構10、吸熱器6の順に冷媒8が密閉回路内を循環し、圧縮機5で圧縮された高温高圧の冷媒8が放熱器7において第1ファン11により供給される空気に放熱するとともに、減圧機構10で膨張した低温低圧の冷媒8が吸熱器6において第2ファン12により供給される空気から吸熱し、ヒートポンプ9が作動することになる。また、第1ファン11の吐出側には、第1ファン11の排出先を吹出口3または排気口4の何れかに切り換えるためのダンパー15が配設されている。このダンパー15は、風路を閉塞するための遮蔽板と、この遮蔽板を移動させる駆動モータを備えており、本体1の上面に配設された図示しない操作部からの指示により駆動モータが作動して遮蔽板が実線で示す切換位置16もしくは破線で示す切換位置17の何れか一方の位置に切り替わるように構成されている。そしてダンパー15を実線で示す切換位置16に設定すると、第1ファン11の吐出側と吹出口3が連通して排気口4への通路は閉塞状態になり、逆に破線で示す切換位置17に設定すると、第1ファン11の吐出側と排気口4が連通して吹出口3への通路が閉塞状態になる。このようにしてダンパー15は、第1ファン11の排出先を吹出口3または排気口4の何れか一方へ切り換えるように構成されている。また、第2ファン12の吸込側には円盤状のデシカントローター18が回動可能に立設されており、このデシカントローター18を周方向に毎時10回転から40回転程度の速度で回転させる駆動手段19をデシカントローター18の外周側に配設している。この駆動手段19は、デシカントローター18の外周に形設されたギアと、このギアと歯合する駆動モータを備えており、駆動モータの作動によってギアに回転力を加え、デシカントローター18を回転させるように動作するものである。また、デシカントローター18は、仕切り板20によって第2ファン12の送風方向に対して二つの領域に仕切られており、その仕切られた一方の領域の風上側にヒーター21が配設され、さらにその風下側に吸熱器6が位置するように風路が形成されている。このデシカントローター18は、軸方向に通風可能なハニカム構造もしくはコルゲート構造の円筒構造体に、シリカゲル、ゼオライトなどの無機質の吸着型吸湿剤、あるいは有機高分子電解質(イオン交換樹脂)などの吸湿剤、もしくは塩化リチウムなどの吸収型吸湿剤を1種類若しくは複数担持して構成されており、周囲の環境に応じて吸湿量が変化する特性を有している。また、ヒーター21はデシカントローター18に近接して配設されており、このヒーター21の発熱によってヒーター21を通過してデシカントローター18に供給される空気およびデシカントローター18自身が加熱されることになる。このヒーター21は発熱動作を行い得るものであれば良く、例えば、ニクロムヒーター、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター、シーズヒーター、PTCヒーター等を用いることができるが、輻射熱成分を多く放散する形式のものがデシカントローター18を直接高温に加熱して効率良く水分を放出させることが可能となり好ましい。また、ヒーター21のデシカントローター18の反対側には、ヒーター21が放散する輻射熱をデシカントローター18に反射させるための反射板22が配設されている。この反射板22は、ヒーター21が放散する輻射熱を反射できるものであればよく、光沢性のある金属板、例えば、アルミニウム板やステンレス板に曲げ加工などを施して形設することができる。さらに反射板22をヒーター21の固定を兼ねるように形設すれば、ヒーター21の固定具が不要となり構成を簡略化できる。さらに反射板22は、ヒーター21の発熱に伴う発光を吸込口2から漏れるのを遮るための遮光板としての作用も行い得る。そして、第2ファン12の吸込側にデシカントローター18を回転可能に配設して仕切り板20によって第2ファン12の送風方向に対して二つの領域に仕切り、仕切られた一方の領域の風上側にヒーター21を配設するとともに、その風下側に吸熱器6が位置するように風路を形成し、さらにその風下側にデシカントローター18の他方の領域が位置するように第2風路14を形成しているので、第2ファン12を運転すると、吸込口2から吸引された空気は、仕切り板20によって仕切られた二つの領域のうちヒーター21が位置する一方の領域側に流入し、ヒーター21の発熱により高温となってデシカントローター18に供給され、その後、吸熱器6を通過し冷却され、デシカントローター18の他方の領域側に供給される。このデシカントローター18に担持されている吸湿剤は、相対的に湿度が高く温度の低い空気から吸湿し、相対的に湿度が低く温度の高い空気に水分を放出する特性を有しているので、ヒーター21が配設された一方の領域において加熱された高温空気と接触することにより水分を放出して再生し、他方の領域において吸熱器6により冷却された空気から吸湿することになる。したがってヒーター21が配設された一方の領域が供給空気に対してデシカントローター18が水分を放出して再生する再生領域23となり、他方の吸熱器6通過後の空気が供給される領域が供給空気からデシカントローター18が吸湿する吸湿領域24として作用することになる。このデシカントローター18は駆動手段19によって回転しているので、デシカントローター18に担持されている吸湿剤は、吸湿領域24と再生領域23を連続的に移動し、吸湿領域24における吸湿動作と再生領域23における水分放出動作を連続的に行うことになる。再生領域23において放出された水分を含んだ空気は、高温高湿状態となり風下側に配設された吸熱器6に供給される。この高温高湿空気はエンタルピーも上昇しているので、吸熱器6内の冷媒8とのエンタルピー差が拡大して高効率な吸熱動作が行われ、供給空気は飽和温度以下まで冷却される。この冷却過程で飽和した水分は結露水として下方に滴下し、図示しないドレンパンで受け止められた後に本体1の下部に配設された排水タンク25に貯留される。一方、吸湿領域24には、吸熱器6によりその飽和温度以下まで冷却され、相対湿度が高い状態(ほぼ飽和状態)となった空気が供給される。上述したようにデシカントローター18に担持されている吸湿剤は、相対的に湿度が高く温度の低い空気から吸湿し、相対的に湿度が低く温度の高い空気に水分を放出する特性を有しているので、再生領域23を通過する空気と吸湿領域24を通過する空気の相対湿度差を拡大させることができ、高効率な吸放湿動作を行うことができる。さらにヒーター21のデシカントローター18の反対側には反射板22が配設されており、この反射板22によってヒーター21が放散する輻射熱がデシカントローター18側に反射して水分放出に再利用されてデシカントローター18の再生がさらに促進することになる。この反射板22は吸込口2の開口部からみてヒーター21全体を覆蓋するように形設するのが好ましく、このように形設するとヒーター21の輻射熱を漏れなくデシカントローター18側に反射できるとともに、ヒーター21の発光が吸込口2から漏れるのを遮光することができる。また、吸込口2の開口部には、吸込口2から吸引される空気の温度を検出する室温センサー26と空気の湿度を検出する湿度センサー27が配設されており、吸熱器6および放熱器7の側部配管には、蒸発温センサー28および凝縮温センサー29が各々着設されている。これら室温センサー26、湿度センサー27、蒸発温センサー28、凝縮温センサー29の検出値は図示しない制御手段に出力するように構成されている。
図2は、除湿機の制御ブロック図である。図に示すようにマイクロコンピュータから構成される制御手段30が、室温センサー26、湿度センサー27、蒸発温センサー28、凝縮温センサー29の各々の検出値および操作部31の運転指示を入力して、圧縮機5、第1ファン11、第2ファン12、駆動手段19、ヒーター21およびダンパー15の各々の作動指示を出力することにより除湿機の運転を制御するように構成されている。
図3は、操作部31の概略構成を示す図である。図に示すように操作部31には、複数の操作ボタンおよび表示ランプが配列されている。操作ボタン32は、除湿機の主電源の入切スイッチであり、この操作ボタン32を「入」にして除湿機の運転が可能となる。また、操作ボタン33は、運転切換スイッチであり、この操作ボタン33を操作することにより、「除湿乾燥モード」、「自動除湿モード」、「冷風除湿モード」の三種類の除湿モードを選択できる。この除湿モードの選択状態は操作ボタン33の上部にある表示ランプの点灯状況によって確認することができる。また、操作ボタン34は、除湿機のタイマー運転を設定するスイッチであり、操作ボタン34の操作により、2時間後、4時間後、8時間後に除湿機の運転を停止させることができる。この切タイマー選択状態は、操作ボタン34の上部にある表示ランプの点灯状況によって確認することができる。また、操作ボタン35は、本体1内部、特に吸熱器6に結露した水滴を乾燥させるための「内部乾燥モード」の選択スイッチである。この「内部乾燥モード」の実行中は操作ボタン35内の表示ランプが点灯して目視確認ができる。また、表示部36は、本体1が設置されている空間の湿度状態を表示するもので、湿度センサー27の検出値に基づいて、高湿状態、適湿状態、低湿状態の3段階の表示を行うものである。また、表示ランプ37は、排水タンク25が満水もしくは未設置の場合に点灯して報知するためのものであり、表示ランプ38は、異常温度上昇などの異常が検出された場合に点滅して異常報知を行うものである。
図4は、各々の除湿モードにおける制御動作を示す一覧表である。この一覧表に示した制御動作を実行するように制御手段30にプログラミングされている。図に示すように操作ボタン33により「除湿乾燥モード」が選択された場合は、制御手段30が、圧縮機5、第1ファン11、第2ファン12、駆動手段19およびヒーター21を作動させるとともに、ダンパー15を切換位置16に設定する。そして第1ファン11の運転により室内空気は第1風路13を流れ、吸込口2から本体1内に吸引された空気は、放熱器7に供給され冷媒8の放熱により加熱されて温度が上昇し、ダンパー15が吹出口3と連通させる切換位置16に設定されているため、吹出口3から本体1外部に排出される。また、第2ファン12の運転により室内空気は第2風路14を流れ、本体1内に吸引された空気は、仕切り板20により分割されたデシカントローター18の再生領域23に流入する。再生領域23に流入した空気は、ヒーター21で二百度以上に加熱された高温空気となってデシカントローター18に供給され、デシカントローター18が吸湿領域24において吸湿した水分の放出を促してデシカントローター18を再生する。デシカントローター18からの放出水分を含んだ高湿の空気はエンタルピーが上昇し下流にある吸熱器6に供給される。この吸熱器6では高エンタルピー状態の空気が冷媒8の吸熱によって冷却され、冷却過程で飽和した水分は排水タンク25に回収される。吸熱器6で冷却され低温で相対湿度が高くなった空気は、デシカントローター18の吸湿領域24に供給され水分の吸着がなされる。そして第2ファン12に吸込まれ、第1ファン11から吐出された空気とともに吹出口3から本体1外部に排出される。このようにして「除湿乾燥モード」では、デシカントローター18とヒートポンプ9を組み合せた複合除湿運転39を実現しており、この複合除湿運転39は、駆動手段19とヒーター21の作動によりデシカントローター18の吸放湿動作を実行し、デシカントローター18が吸湿した水分をヒーター21の熱で放出させ、この放出した水分を含んだ高エンタルピーの空気をヒートポンプ9の作動によって吸熱器6で冷却して結露水を回収するものであり、後述するヒートポンプ9のみで除湿を行う単独除湿運転40に対して除湿能力が高く排気温度も高温になるので洗濯物等を素早く乾燥することができる。
また、操作ボタン33により「自動除湿モード」が選択された場合は、室温センサー26の検出値Trおよび湿度センサー27の検出値Hrによって場合分けされる。まず、湿度センサー27の検出値Hrが高湿、例えば40%以上で且つ室温センサー26の検出値Trが低温、例えば15℃未満の場合、前述した「除湿乾燥モード」と同じ複合除湿運転39が実行される。このような周囲の環境湿度、即ち湿度センサー27の検出値Hrが高く、周囲の環境温度、即ち室温センサー26の検出値Trが低い場合は、除湿負荷が大きく且つヒートポンプ9のみの除湿では吸熱器6内の冷媒8とのエンタルピー差が小さく除湿能力が確保し難い状況と判断し、ヒートポンプ9の冷却除湿とデシカントローター18の吸放湿作用を組み合せた複合除湿運転39を実行することによって除湿能力を増加し速やかに除湿を行うように制御する。
また、湿度センサー27の検出値Hrが低湿、例えば40%未満の場合、あるいは湿度センサー27の検出値Hrが40%以上の高湿でも室温センサー26の検出値Trが高温、例えば15℃以上の場合は、圧縮機5、第1ファン11、第2ファン12を作動させ、駆動手段19とヒーター21の作動を停止する単独除湿運転40を実行する。これによりデシカントローター18は吸湿再生動作を行わなくなり、ヒートポンプ9のみの除湿運転が行われる。すなわち第1ファン11の運転により吸込口2から本体1内に吸引された空気は、放熱器7に供給され冷媒8の放熱により加熱されて温度が上昇し、ダンパー15が吹出口3と連通させる切換位置16に設定されているため、吹出口3から本体1外部に排出される。また、第2ファン12により本体1内に吸引された空気は、仕切り板20により分割されたデシカントローター18の再生領域23に流入する。このときデシカントローター18は駆動していないので水分の放湿は行われず温度の変化もない。そして下流にある吸熱器6に供給され冷媒8の吸熱により冷却されて水分を除去された後、デシカントローター18の吸湿領域24に供給される。このときもデシカントローター18は駆動していないので水分の吸着は行われず温度の変化もない。吸湿領域24を通過後、第2ファン12に吸込まれて第1ファン11から吐出された空気とともに吹出口3から本体1外部に排出される。このヒートポンプ9の除湿能力は室温条件に大きく依存するものであり、温度が高くなるに従って除湿能力は増加する傾向を示すため、周囲環境湿度、即ち、湿度センサー27の検出値が低い場合、あるいは周囲環境湿度、即ち、湿度センサー27の検出値が高くても周囲の環境温度、即ち室温センサー26の検出値Trが高い場合は、除湿負荷が小さい状況あるいは除湿負荷が大きくてもヒートポンプ9の除湿能力が確保できる状況と判断し、ヒートポンプ9のみの単独除湿運転40を実行することによってヒーター21に投入するエネルギーを削減して効率の良い除湿を行うように制御される。
また、操作ボタン33により「冷風除湿モード」が選択された場合は、圧縮機5、第1ファン11、第2ファン12を作動される単独除湿運転40が実行される。前述した「自動除湿モード」と相違する点は、ダンパー15が切換位置17に設定されることである。これにより第1ファン11の運転により吸込口2から本体1内に吸引された空気は放熱器7に供給されて同様に冷媒8の放熱により加熱されて温度が上昇し、ダンパー15が排気口4と連通させる切換位置17に設定されているため、吹出口3の逆面に開口した排気口4から本体1外部に排出される。一方、第2ファン12により本体1内に吸引された空気は、仕切り板20により分割されたデシカントローター18の再生領域23に流入する。このときデシカントローター18は駆動していないので水分の放湿は行われず温度の変化もない。そして下流にある吸熱器6に供給され冷媒8の吸熱により冷却されて水分を除去された後、デシカントローター18の吸湿領域24に供給される。このときデシカントローター18は駆動していないので水分の吸着は行われず温度の変化もない。吸湿領域24を通過後、第2ファン12に吸込まれて吹出口3から本体1外部に排出される。したがって第1ファン11の排出先である排気口4からは放熱器7で加熱された高温の空気が排出され、第2ファン12の排出先である吹出口3からは吸熱器6で冷却減湿された低温低湿の空気が排出される。この低温の空気により使用者が吹出口3側に位置する場合には冷風感を得ることができ、逆に使用者が排気口4側に位置すれば高温空気による温風感を得ることができる。この吹出口3と排気口4は本体1の異なる面に開口されているので、吹出口3から排出される低温空気と排気口4から排出される高温空気が混ざりにくくなり、吹出口3から冷却された低温空気のみを供給する「冷風除湿モード」において使用者がより冷風感を得ることができる。
また、使用環境温度によっては、たとえば環境温度が低温であったり低湿であったりする場合、吸熱器6に供給される空気のエンタルピーが減少し吸熱器6での着霜現象が発生し除湿能力が大きく低下することになる。そこで吸熱器6の側部配管に具設した蒸発温センサー28の検出値Teにより着霜状態を判断し、検出値Teが0℃未満となった場合には、圧縮機5を停止させるとともに駆動手段19およびヒーター21を作動して除霜運転を行う。この除霜運転は、圧縮機5の停止により吸熱器6での吸熱動作を停止して吸熱器6の温度を上昇させ、さらに駆動手段19とヒーター21の作動によりデシカントローター18を介してヒーター21の熱を第2ファン12により送風される空気に与えて高温にして吸熱器6に供給することで吸熱器6に付着した霜を速やかに溶解して除去するものである。ここでデシカントローター18の回転が停止したままだとヒーター21の発熱がデシカントローター18の一部に常に供給され続けるため、デシカントローター18の温度が上昇し過ぎて吸湿剤が劣化してしまうため、駆動手段19によりデシカントローター18を回転させて吸湿領域24を利用してデシカントローター18を冷却するようにしている。そして吸熱器6の霜が完全に除去されて蒸発温センサー28の検出値Teが所定値、例えば0℃以上に回復したら、再び圧縮機5を動作させ、所定の運転モードで運転を再開するようにしている。
また、操作ボタン35の操作により、「内部乾燥モード」が設定された場合は、制御手段30が、第2ファン12、駆動手段19、ヒーター21のみ作動させ、ダンパー15を切換位置17に設定する。「内部乾燥モード」は、除湿機を長期間使用せずに収納する場合などに吸熱器6に付着した水滴を乾燥させてカビや臭いの発生を防止するためのものであり、第2ファン12の作動により吸込口2から本体1内に吸引された空気をデシカントローター18の再生領域23側に供給し、駆動手段19とヒーター21の作動によりデシカントローター18を介してヒーター21の熱を第2ファン12により送風される空気に与えて高温にして吸熱器6に供給することで吸熱器6に付着した水滴を短時間で乾燥させるものである。ここでデシカントローター18を駆動手段19により回転させるのは、前述したように温度過昇を抑制するためである。そして吸熱器6に供給された空気はデシカントローター18の吸湿領域24を通過し、第2ファン12に吸込まれて吹出口3から排出される。ダンパー15を切換位置17に設定する第2ファン12により吹出された空気が第1ファン11および放熱器7に逆流するのを防止するためである。
以上のように各々の除湿モードに応じて制御手段30が、圧縮機5、第1ファン11、第2ファン12、駆動手段19、ヒーター21、ダンパー15を制御し、複合除湿運転39と単独除湿運転40を適切に切り換えることにより、使用環境や使用者の好みに応じた多様な運転形態を実現している。
図5は、各除湿モードにおける環境温度−除湿能力特性を示すグラフである。図のグラフは除湿機が設置されている環境の相対湿度を60%に設定した場合の環境温度と除湿能力の関係を示しており、点線のデータは「除湿冷風モード」時の除湿能力特性、破線のデータは「乾燥除湿モード」時の除湿能力特性、実線のデータは「自動除湿モード」時の除湿能力特性を示している。「除湿冷風モード」では、ヒートポンプ9の吸熱作用のみで除湿するため除湿能力の温度依存性が高く、特に低温条件では除湿能力が大きく低下する。また、「除湿乾燥モード」では、ヒートポンプ9の吸熱作用に加え、駆動手段19とヒーター21の作動によるデシカントローター18の吸放湿作用が加わり、除湿能力が向上する。特に低温条件では、ヒーター21および再生領域23において加熱加湿された高エンタルピーの空気が吸熱器6に供給されるため吸熱器6への霜の付着が防止されて除湿能力が大幅に改善する。また、「自動除湿モード」では、室温センサー26の検出値Trが15℃未満で駆動手段19とヒーター21を作動させ、検出値Trが15℃以上で駆動手段19とヒーター21を停止させている。したがって環境温度が15℃未満では「除湿乾燥モード」と同一の除湿能力となり、15℃以上では「冷風除湿モード」と同一の除湿能力となる。このように室温センサー26の検出値Trに基づいて制御することにより、温度条件に依らず年間を通じて効率良く安定した除湿運転を行うことができる。
図6は、各環境温度における第1ファン11の設定風量と吸熱器6および放熱器7の温度の関係を示したグラフである。図に示すように第1ファン11の風量は、横軸に記した環境温度に対して三段階に調整するように制御される。この制御方法は、環境温度、即ち、本体1内への吸込温度を室温センサー26で検出し、その検出値Trに基づいて制御手段30が第1ファン11の風量ノッチの設定および切換を行うことにより実現される。第1ファン11はHノッチ、Mノッチ、Lノッチの3段階の風量切換が可能となっており、室温センサー26の検出値Trが30℃以上の場合はHノッチ、検出値Trが10℃以上30℃未満の場合はMノッチ、10℃未満の場合はLノッチに設定される。ヒートポンプ9は環境温度に応じて作動圧力が変化する特性を有しており、環境温度が高温になると放熱器7での放熱能力が減少して作動圧力が上昇し、逆に環境温度が低温になると吸熱器6での吸熱量が減少して作動圧力が低下する。そして高温環境における作動圧力の上昇は圧縮機5の高圧上昇につながり、また、低温環境における作動圧力の低下は吸熱器6への着霜を助長する。したがって上述したように環境温度に応じて第1ファン11の風量を調整することにより、30℃以上の高温環境下では、放熱器7への供給空気量を増加することで放熱能力を確保して圧縮機5の高圧上昇を抑制し、10℃以下の低温環境下では、放熱器7への供給空気量を減らすことで放熱器7の圧力を上昇させて第2ファン12が供給する空気の温度を高め吸熱器6における着霜を抑制することができる。図6のグラフには第1ファン11の風量を制御した場合の放熱器7および吸熱器6の温度を併せて示している。図に示すように第1ファン11の風量を増加するに従い放熱器7および吸熱器6の温度が段階的に低下しており、環境温度に応じて第1ファン11の風量を調整することで放熱器7および吸熱器6の温度を所望の範囲内に制御し、ヒートポンプ9を適正な使用範囲で運転することが可能であることが分かる。
また、図示していないが、各環境の相対湿度により第1ファン11の設定風量を調整する構成としても良い。この制御方法は、環境相対湿度、即ち、本体1内への吸込相対湿度を湿度センサー27で検出し、その検出値Hrに基づいて制御手段30が第1ファン11の風量ノッチの設定および切換を行うことにより実現される。湿度センサー27の検出値Hrが任意の設定値以上(例えば60%)の場合はHノッチ、検出値Hrが任意の設定値状態(例えば40%以上60%未満)の場合はMノッチ、検出値Hrが任意の設定値未満(例えば40%未満)の場合はLノッチに設定される。環境相対湿度に応じてヒートポンプ9は冷媒の作動圧力が変化する特性を有しており、また、環境相対湿度はデシカントローター18の吸放湿に影響を及ぼす。環境相対湿度が高湿になると放熱器7での放熱能力が減少して作動圧力が上昇し、逆に環境相対湿度が低湿になると吸熱器6での吸熱量が減少して作動圧力が低下する。加えて環境相対湿度が高湿になるとデシカントローター18からの放湿が増加し、逆に低湿になると放湿は低下する。そしてこのデシカントローター18の放湿水分量が吸熱器6に流入する空気の状態に大きく影響しヒートポンプ9の冷媒作動圧力の増減を顕著なものにする。そして高湿環境における作動圧力の上昇は圧縮機5の高圧上昇につながり、また、低湿環境における作動圧力の低下は吸熱器6への着霜を助長する。したがって上述したように環境相対湿度に応じて第1ファン11の風量を調整することにより、高湿環境下では、放熱器7への供給空気量を増加することで放熱能力を確保して圧縮機5の高圧上昇を抑制し、低湿環境下では、放熱器7への供給空気量を減らすことで放熱器7の圧力を上昇させて第2ファン12が供給する空気の温度を高め吸熱器6における着霜を抑制することができる。このように環境相対湿度に応じて第1ファン11の風量を調整することで放熱器7および吸熱器6の温度を所望の範囲内に制御し、ヒートポンプ9を適正な使用範囲で運転することが可能である。
また、図示していないが、吸熱器6の冷媒蒸発温度により第1ファン11の設定風量を調整する構成としても良い。この制御方法は、吸熱器6の冷媒蒸発温度を吸熱器6に設置されている蒸発温センサー28で検出し、その検出値Teに基づいて制御手段30が第1ファン11の風量ノッチの設定および切換を行うことにより実現される。蒸発温センサー28の検出値Teが任意の設定値以上(例えば5℃)の場合はHノッチ、検出値Teが任意の設定値状態(例えば0℃以上5℃未満)の場合はLノッチ、検出値Teが任意の設定値未満(例えば0℃未満)の場合はファンの運転を停止するように設定される。冷媒の作動圧力の上昇は圧縮機5の高圧上昇につながり、また、冷媒の作動圧力の低下は吸熱器6への着霜を助長する。したがって上述したように吸熱器の冷媒蒸発温度に応じて第1ファン11の風量を調整することにより、冷媒蒸発温度が高温の状況では、放熱器7への供給空気量を増加することで放熱能力を確保して圧縮機5の高圧上昇を抑制し、冷媒蒸発温度が低温の状況では、放熱器7への供給空気量を減らすことで放熱器7の圧力を上昇させて第2ファン12が供給する空気の温度を高め吸熱器6における着霜を抑制することができる。このように冷媒蒸発温度に応じて第1ファン11の風量を調整することで放熱器7および吸熱器6の温度を所望の範囲内に制御し、ヒートポンプ9を適正な使用範囲で運転することが可能である。
図7は、除湿機の除湿効率を向上させるために、種々のバイパス経路、パージ経路を配置した構成を示した図である。上述してきた構成要素、作用、効果と重複する部分の説明は省略する。第2ファン12が送風する第2風路14には、吸込口2から吸引した空気の一部を、ヒーター21を介さずにデシカントローター18の再生領域23に供給する第1パージ経路41が形成されている。この第1パージ経路41を流通する空気は、デシカントローター18の回転方向におけるヒーター21の前段および後段に供給される。ヒーター21の後段に供給された空気は、デシカントローター18に蓄熱されたヒーター21の余熱を除去してデシカントローター18を冷却し、回転方向後段に位置する吸湿領域24での水分吸湿を速める作用を行う。一方、ヒーター21の前段に供給された空気は、ヒーター21が放散する輻射熱により温度を高めてデシカントローター18に供給される。この高温空気がデシカントローター18を予熱することにより、デシカントローター18の顕熱上昇に使用されるヒーター21の直射熱量が減少し、ヒーター21の直射熱がより有効に水分放出に用いられることになる。このように第1パージ経路41を通してデシカントローター18に空気を供給することにより、吸湿効率と再生効率が高まり高効率な除湿運転が可能となる。また、第2ファン12が送風する第2風路14には、吸込口2から吸引した空気の一部を、ヒーター21およびデシカントローター18の再生領域23を介さずに吸熱器6に供給する第1バイパス経路42が形成されている。この第1バイパス経路42に空気を流通させることにより、デシカントローター18の再生に適した風量と吸熱器6における冷却減湿に適した風量とのアンバランスが解消されて除湿効率が高まることになる。この第1バイパス経路42を通って吸熱器6に直接供給される空気とデシカントローター18の再生領域23を介して吸熱器6に供給される空気との風量比率は適宜設計可能であるが、ヒートポンプ9の吸熱とデシカントローター18の再生を効果的に行うには、吸熱器6に供給する空気全体の10%から70%を再生領域23に供給することが好ましい。以上より吸熱器6での冷却減湿によって生じる凝縮水にはデシカントローター18が吸湿領域24において吸湿した水分と、吸込口2から直接吸熱器6に供給された空気を冷却して除去した水分の両方が含まれることになり、吸熱器6における凝縮効率の向上を促すことになる。また、第1ファン11が送風する第1風路13には、吸込口2から吸引した空気をデシカントローター18の吸湿領域24の一部に通過させ、放熱器7に供給する第2パージ経路43が形成されている。この第2パージ経路43を流通する空気は、デシカントローター18の回転方向における再生領域の前段および後段に供給される。再生領域23の後段に供給された空気は、再生領域23で投入されデシカントローター18に蓄熱された余熱を除去してデシカントローター18を冷却し、回転方向後段に位置する吸湿領域24での水分吸湿を速める作用を行う。そして環境温湿度によっては、この第2パージ風路43においてもデシカントローター18への水分吸湿がなされる。一方、再生領域23の前段に供給された空気は、吸熱器6で冷却された空気により冷却されているデシカントローター18を予熱する作用を有する。すなわち室内空気でデシカントローター18を予熱することになり、デシカントローター18の顕熱上昇に使用されるヒーター21の直射熱量が減少し、ヒーター21の直射熱がより有効に水分放出に用いられることになる。このように第2パージ経路43を通してデシカントローター18に空気を供給することにより、吸湿効率と再生効率が高まり高効率な除湿運転が可能となる。また、第1ファン11が送風する第1風路13には、第2風路14におけるデシカントローター18の吸湿領域24を通過した後の空気の一部を放熱器7に供給させる第2バイパス経路44が形成されている。この第2バイパス経路44を流通する空気は、第2ファン12によりデシカントローター18の再生領域23、吸熱器6、デシカントローター18の吸湿領域24を通過してきた空気であり、室内空気より温度が低い空気となっている。放熱器7にこの室内空気より温度の低い空気を導入することにより、放熱器7を室内空気で冷却するよりも効率よく冷却することがでる。このように第2バイパス経路44により第2風路14の空気の一部を放熱器7に供給することにより、ヒートポンプ9を効率よく動作させることができ、効率よく除湿運転がなされることになる。
以上、説明した構成および動作により、本実施形態の除湿機は、以下の効果を奏するものである。
本体1内に環状の循環通路や水分回収用の熱交換器を設けずにデシカントローター18が吸湿した水分を吸熱器6で結露水として回収する構成にして装置の簡略化、小型化を図るとともに、吸熱器6で冷却され相対湿度を低下させられた空気を更に吸湿領域24に供給することで、デシカントローター18の吸湿領域24と再生領域23を通過する空気の相対湿度差を大きくすることができ、デシカントローター18の吸放湿効率を高め、除湿効率を高めることができる。
また、吸熱器6に第1バイパス経路42より直接吸込口2から吸引された空気を供給することにより、再生領域23および吸熱器6のそれぞれに最適な空気流量を確保することができ、デシカントローター18の再生効率と吸熱器6の吸熱効率を高め、除湿効率を高めることができる。
また、デシカントローター18の回転方向におけるヒーター21の前段および後段に位置する再生領域23に第1パージ経路41を通じて空気を供給し、ヒーター21後段に供給した空気でデシカントローター18を冷却して吸湿領域24での水分吸湿を速めるとともにヒーター21前段に供給した空気でデシカントローター18を予熱して水分を放出しやすくすることで除湿効率を高めることができる。
また、吸湿領域24に直接吸込口2から吸引された空気を供給することにより、その空気から水分を吸着させることができ、デシカントローター18の吸湿量および放湿量を増加し、除湿効率を高めることができる。
また、吸熱器6により冷却された後、吸湿領域24にて吸湿により吸着熱を与えられた空気で、室内空気より温度が低い状態となっている第2風路14の吸湿領域24を通過後の空気を、第1風路13の放熱器7に供給することにより、室内空気を直接供給するより放熱器7における放熱量を増加させることができ、その結果、吸熱器6における吸熱量を増加させ、吸熱器6での結露を促進させ、除湿効率を高めることができる。
また、低温時は複合除湿運転39を実行して再生領域23においてデシカントローター18が放出した水分を含み高湿となった空気を吸熱器6に供給し、冷媒8とのエンタルピー差を確保することでヒートポンプ9を作動させて除湿効率を高めることができる。
また、吸込口2から吸気した空気が低温の場合は複合除湿運転39を実行して除湿量を確保し、それ以外はヒートポンプ9のみの単独除湿運転40を実行して消費電力を抑えることで環境温度に適応した効率の良い除湿運転を行うことができる。
また、吸込口2から吸気した空気が高湿の場合は複合除湿運転39を実行して除湿量を増加し、それ以外はヒートポンプ9のみの単独除湿運転40を実行して消費電力を抑えることで除湿負荷に適応した効率の良い除湿運転を行うことができる。
また、第1ファン11により放熱器7供給されて加熱された高温空気と、第2ファン12により吸湿領域24や吸熱器6に供給されて除湿された低湿空気とを、吹出口3と排気口4とに分離して排出する排気形態と高温空気と低湿空気を共に吹出口3から排出する排気形態を使用目的に応じて選択できる。
また、第1ファン11の排出先が排気口4に設定された場合は、単独除湿運転40を実行し、第2ファン12により送風される空気にデシカントローター18の吸着熱やヒーター21の余熱を与えずに吹出口3から排出することで室温上昇を抑制することができる。
また、吸熱器6に着霜し、吸熱器6の温度が所定値未満となった場合に、除霜運転モードを実行して吸熱器6にヒーター21の熱を供給することにより除霜用に特別な部材を設けることなく付着した霜を取り除くことで、再び除湿できる状態にすることができ、効率良く除湿することができる。
また、除霜運転モードにおいて、圧縮機5を停止させることにより、吸熱器6における吸熱作用を停止させ、吸熱器6の除霜をより効果的に行い、除霜運転モードの時間を短縮することができる。
また、供給空気の温度が低い場合は第1ファン11の風量を減らし、逆に供給空気の温度が高い場合は第1ファン11の風量を増やすことで放熱器7における放熱量を調整し、ヒートポンプ9の作動圧力を適正に調整し、圧縮機5の信頼性を確保することができる。
また、供給空気の湿度が低い場合は第1ファン11の風量を減らし、逆に供給空気の湿度が高い場合は第1ファン11の風量を増やすことでヒートポンプ9の作動圧力を適正に調整することができる。
また、吸熱器6の温度が低い場合は第1ファン11の風量を減らし、逆に吸熱器6の温度が高い場合は第1ファン11の風量を増やすことでヒートポンプ9の作動圧力を適正に調整することができる。
以上説明した内容は、発明を実施するための一形態についてのみ説明したものであり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態では、本体1の片側面に吸込口2、本体1の上面に吹出口3、吸込口2の反対側の側面に排気口4を開口しているが、商品構成上任意の位置に設けてよく上記位置に限定するものではない。
また、上記実施の形態では、ダンパー15を、第1ファン11の排出先を吹出口3側に設定する切換位置16と、排気口4側に設定する切換位置17の2段階の切換を行うように構成したが、ダンパー15の切換パターンは上記2段階にとどまるものではない。例えば、切換位置16と切換位置17の中間位置に設定可能に構成して、第1ファン11の排出先を吹出口3と排気口4の双方に設定するようにしてもよい。そしてダンパー15の切換パターンは、切換位置16と中間位置の2段階、中間位置と切換位置17の2段階、切換位置16と中間位置と切換位置17の3段階など様々なパターンに適用することができる。
また、上記実施の形態では、第1パージ経路41によってデシカントローター18の回転方向におけるヒーター21の前段および後段の双方に吸込口2から空気を供給する構成としたが、ヒーター21の前段もしくは後段の何れか一方のみに空気を供給するように第1パージ経路41を構成しても良い。
また、上記実施の形態では、第2パージ経路43によってデシカントローター18の回転方向における再生領域23の前段および後段の双方に吸込口2から空気を供給する構成としたが、再生領域23の前段もしくは後段の何れか一方のみに空気を供給するように第2パージ経路43を構成しても良い。
また、上記実施の形態では、「自動除湿モード」において室温センサー26の検出値Trが15℃未満でヒーター21および駆動手段19を作動させてデシカントローター18の吸放湿作用を組み合せる複合除湿運転39を行い、検出値Trが15℃以上でヒーター21および駆動手段19を停止させてヒートポンプ9のみで除湿を行う単独除湿運転40を実行する構成としたが、例えば、ヒーター21の出力を大、小の2段階に切換可能に構成し、検出値Trが10℃未満でヒーター21の出力を大に設定して複合除湿運転39を実行し、検出値Trが10℃以上かつ20℃未満でヒーター21の出力を小に設定して複合除湿運転39を実行し、検出値Trが20℃以上でヒーター21を停止して単独除湿運転40を実行するような多段階の運転形態にしてもよい。
また、上記実施の形態では、操作部31で「除湿冷風モード」が選択された場合にヒーター21を停止するように制御したが、ヒーター21の出力を調整可能に構成して「除湿冷風モード」においてヒーター21を低出力で作動させるように制御してもよい。その場合、駆動手段19を作動させて冷風を供給しつつデシカントローター18の吸放湿作用を行わせてもよい。
また、吸込口2の開口面に着脱自在にフィルターを配設して本体1内部への異物流入を抑制する、あるいは排気口4や吹出口3にルーバー機構を設け、排出空気の排気方向を変更可能に構成するなど適宜設計してもよい。
また、排気口4に着脱自在に排気ダクトを設け、排気口4から排出される高温空気を吹出口3から遠方に排出するように構成してもよい。この場合、排気ダクトからの排気を本体1が配置される空間とは別の空間に排出した場合には、本体1が置かれている空間に、吹出口3からの低温空気のみを供給することも可能となり、快適性をさらに向上できる。
また、ダンパー15の切り換えを駆動モータにより遮蔽板を移動させて実行する構成としたが、本体1の上面にある操作部31に遮蔽板に連結したレバーを設けて手動で切り換えるように構成してもよい。その場合は、遮蔽板に磁石を設け、何れかの位置、例えば切換位置16側にホール素子などの位置検出器を配設して、ダンパー15の設定位置を検出可能に構成することが望ましい。