以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態にかかる除湿機の概略断面図であり、図に示すように、大略直方体に形成した本体1の片側面に吸込口2、吸込口2の上部に排気口3、排気口3の反対側の側面に吹出口4を開口している。本体1の内部には、底部に圧縮機5、その上方に吸熱器6、さらに、その上方に放熱器7を配設して各々を配管接続し密閉回路を形成している。この密閉回路内に作動流体である冷媒8として例えば、HCFC系冷媒(分子中に塩素、水素、フッ素、炭素の各原子を含む)、HFC系冷媒(分子中に水素、炭素、フッ素の各原子を含む)、炭化水素、二酸化炭素等の自然冷媒などの何れかを充填して蒸気圧縮式のヒートポンプ9を形成している。吸熱器6および放熱器7は、ヘアピンチューブに複数枚のフィンを嵌入して空気流通を可能に構成したフィンチューブ型の熱交換器で構成され、吸熱器6と放熱器7を接続する配管中には減圧機構10として、例えば、キャピラリチューブや膨張弁等を介在させている。
また、吸込口2側から見て、放熱器7の後方に第1ファン11、吸熱器6の後方に第2ファン12の各々を配し、隔壁によって風路を形成している。この第1ファン11および第2ファン12には、羽根、ケーシング、モータ等から構成される一般的な送風機が用いられる。第1ファン11は、吸込側が放熱器7を介して吸込口2と連通し、吐出側が吹出口4と連通しているので、第1ファン11を運転すると吸込口2から吸気して放熱器7に供給し吹出口4から排気する送風動作が行われる。また、第2ファン12は、吸込側が吸熱器6を介して吸込口2と連通し、吐出側が吹出口4と連通しているので、第2ファン12を運転すると、吸込口2から吸気して吸熱器6に供給し吹出口4から排気する送風動作が行われる。
ここで圧縮機5を運転すると、放熱器7、減圧機構10、吸熱器6の順に冷媒8が密閉回路内を循環し、圧縮機5で圧縮された高温高圧の冷媒8が放熱器7において第1ファン11により供給される空気に放熱するとともに、減圧機構10で膨張した低温低圧の冷媒8が吸熱器6において第2ファン12により供給される空気から吸熱し、ヒートポンプ9が作動することになる。
また、第1ファン11の吐出側には、第1ファン11の排出先を吹出口4または排気口3の何れかに切り換えるための第1ダンパー13が配設されている。この第1ダンパー13は、風路を閉塞するための遮蔽板と、この遮蔽板を移動させる駆動モータを備えており、本体1の上面に配設された図示しない操作部からの指示により駆動モータが作動して遮蔽板が実線で示す切換位置14もしくは破線で示す切換位置15の何れか一方の位置に切り替わるように構成されている。そして第1ダンパー13を実線で示す切換位置14に設定すると、第1ファン11の吐出側と吹出口4が連通して排気口3への通路は閉塞状態になり、逆に破線で示す切換位置15に設定すると、第1ファン11の吐出側と排気口3が連通して吹出口4への通路が閉塞状態になる。このようにして第1ダンパー13は、第1ファン11の排出先を吹出口4または排気口3の何れか一方へ切り換えるように構成されている。
また、第2ファン12の吸込側には円盤状のデシカントローター16が回動可能に立設されており、このデシカントローター16を周方向に毎時10回転から40回転程度の速度で回転させる駆動手段17をデシカントローター16の外周側に配設している。この駆動手段17は、デシカントローター16の外周に形設されたギアと、このギアと歯合する駆動モータを備えており、駆動モータの作動によってギアに回転力を加え、デシカントローター16を回転させるように動作するものである。また、デシカントローター16は、仕切り板18によって第2ファン12の送風方向に対して二つの領域に仕切られており、その仕切られた一方の領域の風上側にヒーター19が配設され、さらにその風下側に吸熱器6が位置するように風路が形成されている。このデシカントローター16は、軸方向に通風可能なハニカム構造もしくはコルゲート構造の円筒構造体に、シリカゲル、ゼオライトなどの無機質の吸着型吸湿剤、あるいは有機高分子電解質(イオン交換樹脂)などの吸湿剤、もしくは塩化リチウムなどの吸収型吸湿剤を1種類若しくは複数担持して構成されており、周囲の環境に応じて吸湿量が変化する特性を有している。
また、ヒーター19はデシカントローター16に近接して配設されており、このヒーター19の発熱によってヒーター19を通過してデシカントローター16に供給される空気およびデシカントローター16自身が加熱されることになる。このヒーター19は発熱動作を行い得るものであれば良く、例えば、ニクロムヒーター、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター、シーズヒーター、PTCヒーター等を用いることができるが、輻射熱成分を多く放散する形式のものがデシカントローター16を直接高温に加熱して効率良く水分を放出させることが可能となり好ましい。また、ヒーター19のデシカントローター16の反対側には、ヒーター19が放散する輻射熱をデシカントローター16に反射させるための反射板20が配設されている。この反射板20は、ヒーター19が放散する輻射熱を反射できるものであればよく、光沢性のある金属板、例えば、アルミニウム板やステンレス板に曲げ加工などを施して形設することができる。さらに反射板20をヒーター19の固定を兼ねるように形設すれば、ヒーター19の固定具が不要となり構成を簡略化できる。さらに反射板20は、ヒーター19の発熱に伴う発光を吸込口2から漏れるのを遮るための遮光板としての作用も行い得る。
このように第2ファン12の吸込側にデシカントローター16を回転可能に配設して仕切り板18によって第2ファン12の送風方向に対して二つの領域に仕切り、仕切られた一方の領域の風上側にヒーター19を配設するとともに、その風下側に吸熱器6が位置するように風路を形成しているので、第2ファン12を運転すると、吸込口2から吸引された空気が仕切り板18によって仕切られた二つの領域に分流され、ヒーター19が位置する一方の領域側に分流した空気は、ヒーター19の発熱により高温となってデシカントローター16に供給され、他方の領域側に供給された空気は室温を維持したままデシカントローター16に供給される。
このデシカントローター16に担持されている吸湿剤は、相対的に湿度が高く温度の低い空気から吸湿し、相対的に湿度が低く温度の高い空気に水分を放出する特性を有しているので、ヒーター19が配設された一方の領域において加熱された高温空気と接触することにより水分を放出して再生し、他方の領域において室温に近い空気から吸湿することになる。したがってヒーター19が配設された一方の領域が供給空気に対してデシカントローター16が水分を放出して再生する再生領域21となり、他方の室温の空気が供給される領域が供給空気からデシカントローター16が吸湿する吸湿領域22として作用することになる。このデシカントローター16は駆動手段17によって回転しているので、デシカントローター16に担持されている吸湿剤は、吸湿領域22と再生領域21を連続的に移動し、吸湿領域22における吸湿動作と再生領域21における水分放出動作を連続的に行うことになる。
吸湿領域22に供給された空気は、デシカントローター16が水分を吸湿する際に発生する吸着熱やヒーター19の余熱により温度が上昇し高温低湿空気となって第2ファン12に吸込まれる。一方、再生領域21において放出された水分を含んだ空気は、高温高湿状態となり風下側に配設された吸熱器6に供給される。この高温高湿空気はエンタルピーも上昇しているので、吸熱器6内の冷媒8とのエンタルピー差が拡大して高効率な吸熱動作が行われ、供給空気は飽和温度以下まで冷却される。この冷却過程で飽和した水分は結露水として下方に滴下し、図示しないドレンパンで受け止められた後に本体1の下部に配設された排水タンク23に貯留される。そして吸熱器6において水分を冷却除去された低温低湿の空気は、吸湿領域22で吸湿された空気とともに第2ファン12に吸込まれ、吹出口4から本体1外部に排出されることになる。ここでヒーター19は、再生領域21において第2ファン12によりデシカントローター16に供給される空気の風向きに対する風上側からデシカントローター16に輻射熱を照射するように配設されている。したがって第2ファン12の風上側に位置するデシカントローター16の上流部分に輻射熱が照射される。このデシカントローター16の上流部分は吸湿領域22において第2ファン12により供給される空気と始めに接触する部分であり、供給空気からの吸湿量が高く多量の水分を保有している部分である。このデシカントローター16の水分を多く保有している上流部分に対してヒーター19の輻射熱が照射されるので、輻射熱の直接照射によるデシカントローター16からの水分放出量が増加し輻射熱が水分放出に有効に利用されることになる。
さらにヒーター19のデシカントローター16の反対側には反射板20が配設されており、この反射板20によってヒーター19が放散する輻射熱がデシカントローター16側に反射して水分放出に再利用されてデシカントローター16の再生がさらに促進することになる。この反射板20は吸込口2の開口部からみてヒーター19全体を覆蓋するように形設するのが好ましく、このように形設するとヒーター19の輻射熱を漏れなくデシカントローター16側に反射できるとともに、ヒーター19の発光が吸込口2から漏れるのを遮光することができる。
また、第2ファン12の送風経路には、吸込口2から吸引した空気の一部を、ヒーター19を介さずにデシカントローター16の再生領域21に供給する第1バイパス経路24が形成されている。この第1バイパス経路24を流通する空気は、デシカントローター16の回転方向におけるヒーター19の前段および後段に供給される。
ヒーター19の後段に供給された空気は、デシカントローター16に蓄熱されたヒーター19の余熱を除去してデシカントローター16を冷却し、回転方向後段に位置する吸湿領域22での水分吸湿を速める作用を行う。一方、ヒーター19の前段に供給された空気は、ヒーター19が放散する輻射熱により温度を高めてデシカントローター16に供給される。この高温空気がデシカントローター16を予熱することにより、デシカントローター16の顕熱上昇に使用されるヒーター19の直射熱量が減少し、ヒーター19の直射熱がより有効に水分放出に用いられることになる。このように第1バイパス経路24を通してデシカントローター16に空気を供給することにより、吸湿効率と再生効率が高まり高効率な除湿運転が可能となる。
また、第2ファン12の送風経路には、吸込口2から吸引した空気の一部を、ヒーター19およびデシカントローター16の再生領域21を介さずに吸熱器6に供給する第2バイパス経路25が形成されている。この第2バイパス経路25に空気を流通させることにより、デシカントローター16の再生に適した風量と吸熱器6における冷却減湿に適した風量とのアンバランスが解消されて除湿効率が高まることになる。この第2バイパス経路25を通って吸熱器6に直接供給される空気とデシカントローター16の再生領域21を介して吸熱器6に供給される空気との風量比率は適宜設計可能であるが、ヒートポンプ9の吸熱とデシカントローター16の再生を効果的に行うには、吸熱器6に供給する空気全体の10%から70%を再生領域21に供給することが好ましい。
以上より吸熱器6での冷却減湿によって生じる凝縮水にはデシカントローター16が吸湿領域22において吸湿した水分と、吸込口2から直接吸熱器6に供給された空気を冷却して除去した水分の両方が含まれることになり、吸熱器6における凝縮効率の向上を促すことになる。また、吸湿領域22と第2ファン12を接続する送風経路には、空気流通を遮断するための第2ダンパー26が配設されている。この第2ダンパー26は、風路を閉塞するための遮蔽板と、遮蔽板を移動させる駆動モータを備えており、本体1の上面に配設された図示しない操作部からの指示により駆動モータが作動して遮蔽板が実線で示す切換位置27もしくは破線で示す切換位置28の何れか一方の位置に切り替わるように構成されている。そして第2ダンパー26を実線で示す切換位置27に設定すると、吸湿領域22と第2ファン12を結ぶ送風経路が開放状態となって第2ファン12の運転により吸込口2から吸込まれた空気が吸湿領域22に供給されることになり、逆に破線で示す切換位置28に設定すると吸湿領域22と第2ファン12を結ぶ送風経路が閉塞状態となり、第2ファン12を運転しても吸湿領域22への空気供給が遮断されることになる。
さらに吸込口2の開口部には、吸込口2から吸引される空気の温度を検出する室温センサー29と空気の湿度を検出する湿度センサー30が配設されており、吸熱器6および放熱器7の側部配管には、蒸発温センサー31および凝縮温センサー32が各々着設されている。これら室温センサー29、湿度センサー30、蒸発温センサー31、凝縮温センサー32の検出値は図示しない制御手段に出力するように構成されている。
図2は、除湿機の制御ブロック図である。図に示すようにマイクロコンピュータから構成される制御手段33が、室温センサー29、湿度センサー30、蒸発温センサー31、凝縮温センサー32の各々の検出値および操作部34の運転指示を入力して、圧縮機5、第1ファン11、第2ファン12、駆動手段17、ヒーター19、第1ダンパー13および第2ダンパー26の各々の作動指示を出力することにより除湿機の運転を制御するように構成されている。
図3は、操作部34の概略構成を示す図である。図に示すように操作部34には、複数の操作ボタンおよび表示ランプが配列されている。操作ボタン35は、除湿機の主電源の入切スイッチであり、この操作ボタン35を「入」にして除湿機の運転が可能となる。また、操作ボタン36は、運転切換スイッチであり、この操作ボタン36を操作することにより、「除湿乾燥モード」、「自動除湿モード」、「冷風除湿モード」の三種類の除湿モードを選択できる。この除湿モードの選択状態は操作ボタン36の上部にある表示ランプの点灯状況によって確認することができる。また、操作ボタン37は、除湿機のタイマー運転を設定するスイッチであり、操作ボタン37の操作により、2時間後、4時間後、8時間後に除湿機の運転を停止させることができる。この切タイマー選択状態は、操作ボタン37の上部にある表示ランプの点灯状況によって確認することができる。また、操作ボタン38は、本体1内部、特に吸熱器6に結露した水滴を乾燥させるための「内部乾燥モード」の選択スイッチである。この「内部乾燥モード」の実行中は操作ボタン38内の表示ランプが点灯して目視確認ができる。また、表示部39は、本体1が設置されている空間の湿度状態を表示するもので、湿度センサー30の検出値に基づいて、高湿状態、適湿状態、低湿状態の3段階の表示を行うものである。また、表示ランプ40は、排水タンク23が満水もしくは未設置の場合に点灯して報知するためのものであり、表示ランプ41は、異常温度上昇などの異常が検出された場合に点滅して異常報知を行うものである。
図4は、各々の除湿モードにおける制御動作を示す一覧表である。この一覧表に示した制御動作を実行するように制御手段33にプログラミングされている。図に示すように操作ボタン36により「除湿乾燥モード」が選択された場合は、制御手段33が、圧縮機5、第1ファン11、第2ファン12、駆動手段17およびヒーター19を作動させるとともに、第1ダンパー13を切換位置14に、第2ダンパー26を切換位置27に設定する。そして第1ファン11の運転により吸込口2から本体1内に吸引された空気は、放熱器7に供給され冷媒8の放熱により加熱されて温度が上昇し、第1ダンパー13が吹出口4と連通させる切換位置14に設定されているため、吹出口4から本体1外部に排出される。また、第2ファン12の運転により本体1内に吸引された空気は、仕切り板18によりデシカントローター16の吸湿領域22側と再生領域21側に分流する。吸湿領域22側に分流した空気は、デシカントローター16により吸湿され吸着熱により温度が上昇し、高温低湿状態となって第2ファン12に吸込まれる。一方、再生領域21側に分流した空気は、ヒーター19に供給されるメインの経路、ヒーター19を介さずにデシカントローター16に供給される第1バイパス経路24、吸熱器6に直接供給される第2バイパス経路25に各々分かれて供給される。メインの経路に供給された空気は、ヒーター19で二百度以上に加熱された高温空気となってデシカントローター16に供給され、デシカントローター16が吸湿領域22において吸湿した水分の放出を促してデシカントローター16を再生する。デシカントローター16からの放出水分を含んだ高湿の空気はエンタルピーが上昇し下流にある吸熱器6に供給される。この吸熱器6にはメインの経路からの高エンタルピー状態の空気とともに第1バイパス経路24においてデシカントローター16の余熱や冷却に使用された空気や第2バイパス経路25を通った室温の空気が全て供給されて冷媒8の吸熱によって冷却される。この冷却過程で飽和した水分は排水タンク23に回収され、吸熱器で水分を除去された低湿の空気は、デシカントローター16の吸湿領域22に供給された空気とともに第2ファン12に吸込まれ、第1ファン11から吐出された空気とともに吹出口4から本体1外部に排出される。このようにして「除湿乾燥モード」では、デシカントローター16とヒートポンプ9を組み合せた複合除湿運転42を実現しており、この複合除湿運転42は、駆動手段17とヒーター19の作動によりデシカントローター16の吸放湿動作を実行し、デシカントローター16が吸湿した水分をヒーター19の熱で放出させ、この放出した水分を含んだ高エンタルピーの空気をヒートポンプ9の作動によって吸熱器6で冷却して結露水を回収するものであり、後述するヒートポンプ9のみで除湿を行う単独除湿運転43に対して除湿能力が高く排気温度も高温になるので洗濯物等を素早く乾燥することができる。
また、操作ボタン36により「自動除湿モード」が選択された場合は、室温センサー29の検出値Trおよび湿度センサー30の検出値Hrによって場合分けされる。まず、湿度センサー30の検出値Hrが高湿、例えば40%以上で且つ室温センサー29の検出値Trが低温、例えば15℃未満の場合、前述した「除湿乾燥モード」と同じ複合除湿運転42が実行される。このような周囲の環境湿度、即ち湿度センサー30の検出値Hrが高く、周囲の環境温度、即ち室温センサー29の検出値Trが低い場合は、除湿負荷が大きく且つヒートポンプ9のみの除湿では吸熱器6内の冷媒8とのエンタルピー差が小さく除湿能力が確保し難い状況と判断し、ヒートポンプ9の冷却除湿とデシカントローター16の吸放湿作用を組み合せた複合除湿運転42を実行することによって除湿能力を増加し速やかに除湿を行うように制御する。
また、湿度センサー30の検出値Hrが低湿、例えば40%未満の場合、あるいは湿度センサー30の検出値Hrが40%以上の高湿でも室温センサー29の検出値Trが高温、例えば15℃以上の場合は、圧縮機5、第1ファン11、第2ファン12を作動させ、駆動手段17とヒーター19の作動を停止する単独除湿運転43を実行する。これによりデシカントローター16は吸湿再生動作を行わなくなり、ヒートポンプ9のみの除湿運転が行われる。すなわち第1ファン11の運転により吸込口2から本体1内に吸引された空気は、放熱器7に供給され冷媒8の放熱により加熱されて温度が上昇し、第1ダンパー13が吹出口4と連通させる切換位置14に設定されているため、吹出口4から本体1外部に排出される。また、第2ファン12により本体1内に吸引された空気は、仕切り板18によりデシカントローター16の吸湿領域22側と再生領域21側に分流し、吸湿領域22側に分流した空気は、デシカントローター16を通過して第2ファン12に吸込まれ、一方、再生領域21側に分流した空気は、ヒーター19に供給されるメインの経路、第1バイパス経路24および第2バイパス経路25の各々に分流した後、下流にある吸熱器6に供給され冷媒8の吸熱により冷却されて水分を除去された後、デシカントローター16の吸湿領域22に供給された空気とともに第2ファン12に吸込まれて第1ファン11から吐出された空気とともに吹出口4から本体1外部に排出される。このヒートポンプ9の除湿能力は室温条件に大きく依存するものであり、温度が高くなるに従って除湿能力は増加する傾向を示すため、周囲環境湿度、即ち、湿度センサー30の検出値が低い場合、あるいは周囲環境湿度、即ち、湿度センサー30の検出値が高くても周囲の環境温度、即ち室温センサー29の検出値Trが高い場合は、除湿負荷が小さい状況あるいは除湿負荷が大きくてもヒートポンプ9の除湿能力が確保できる状況と判断し、ヒートポンプ9のみの単独除湿運転43を実行することによってヒーター19に投入するエネルギーを削減して効率の良い除湿を行うように制御される。
また、操作ボタン36により「冷風除湿モード」が選択された場合は、圧縮機5、第1ファン11、第2ファン12を作動される単独除湿運転43が実行される。前述した「自動除湿モード」と相違する点は、第1ダンパー13が切換位置15に、第2ダンパー26が切換位置28に設定されることである。これにより第1ファン11の運転により吸込口2から本体1内に吸引された空気は放熱器7に供給されて同様に冷媒8の放熱により加熱されて温度が上昇し、第1ダンパー13が排気口3と連通させる切換位置15に設定されているため、吹出口4の逆面に開口した排気口3から本体1外部に排出される。一方、第2ファン12により本体1内に吸引された空気は、第2ダンパー26がデシカントローター16の吸湿領域22への通風を遮断する切換位置28に設定されているため、全てデシカントローター16の再生領域21側に流れ、ヒーター19に供給されるメインの経路、第1バイパス経路24、第2バイパス経路25に各々分流した後、下流にある吸熱器6に全て供給されて冷媒8の吸熱により冷却されて水分を除去され後、吹出口4から本体1外部に排出される。したがって第1ファン11の排出先である排気口3からは放熱器7で加熱された高温の空気が排出され、第2ファン12の排出先である吹出口4からは吸熱器6で冷却減湿された低温低湿の空気が排出される。この低温の空気により使用者が吹出口4側に位置する場合には冷風感を得ることができ、逆に使用者が排気口3側に位置すれば高温空気による温風感を得ることができる。この吹出口4と排気口3は本体1の異なる面に開口されているので、吹出口4から排出される低温空気と排気口3から排出される高温空気が混ざりにくくなり、吹出口4から冷却された低温空気のみを供給する「冷風除湿モード」において使用者がより冷風感を得ることができる。
また、この「冷風除湿モード」においては環境温度に依らず駆動手段17とヒーター19は停止状態であるため、デシカントローター16による吸熱器6への供給空気のエンタルピー上昇が行われず、環境温度が低温になると吸熱器6への着霜現象が発生し除湿能力が大きく低下することになる。そこで吸熱器6の側部配管に具設した蒸発温センサー31の検出値Teにより着霜状態を判断し、検出値Teが0℃未満となった場合には、圧縮機5を停止させるとともに駆動手段17およびヒーター19を作動して除霜運転を行う。この除霜運転は、圧縮機5の停止により吸熱器6での吸熱動作を停止して吸熱器6の温度を上昇させ、さらに駆動手段17とヒーター19の作動によりデシカントローター16を介してヒーター19の熱を第2ファン12により送風される空気に与えて高温にして吸熱器6に供給することで吸熱器6に付着した霜を速やかに溶解して除去するものである。ここでデシカントローター16の回転が停止したままだとヒーター19の発熱がデシカントローター16の一部に常に供給され続けるため、デシカントローター16の温度が上昇し過ぎて吸湿剤が劣化してしまうため、駆動手段17によりデシカントローター16を回転させて第1バイパス経路24を利用してデシカントローター16を冷却するようにしている。そして吸熱器6の霜が完全に除去されて蒸発温センサー31の検出値Teが所定値、例えば0℃以上に回復したら、再び圧縮機5を動作させるとともに駆動手段17とヒーター19の作動を停止し、「冷風除湿モード」を再開するようにしている。
また、操作ボタン38の操作により、「内部乾燥モード」が設定された場合は、制御手段33が、第2ファン12、駆動手段17、ヒーター19のみ作動させ、第1ダンパー13を切換位置15に、第2ダンパー26を切換位置28に設定する。「内部乾燥モード」は、除湿機を長期間使用せずに収納する場合などに吸熱器6に付着した水滴を乾燥させて黴や臭いの発生を防止するためのものであり、第2ファン12の作動により吸込口2から本体1内に吸引された空気を、第2ダンパー26を切換位置28に設定することによって全てデシカントローター16の再生領域21側に供給し、駆動手段17とヒーター19の作動によりデシカントローター16を介してヒーター19の熱を第2ファン12により送風される空気に与えて高温にして吸熱器6に供給することで吸熱器6に付着した水滴を短時間で乾燥させるものである。ここでデシカントローター16を駆動手段17により回転させるのは、前述したように温度過昇を抑制するためであり、また、第2ダンパー26により吸湿領域22への空気供給を遮断するのは、デシカントローター16の吸放湿動作に伴う吸熱器6への高湿空気供給を抑制して吸熱器6の乾燥をより速やかに行うためである。そして吸熱器6に供給された空気は第2ファン12に吸込まれて排気口3から排出される。第1ダンパー13によって第2ファン12の排出先を排気口3に設定したのは、排気口3が吸込口2と同一面に開口されており、排気された高温空気が吸込口2にショートサーキットすることにより吸熱器6への供給空気温度を上昇させて付着水滴の乾燥をより速やかに実行するためである。
以上のように各々の除湿モードに応じて制御手段33が、圧縮機5、第1ファン11、第2ファン12、駆動手段17、ヒーター19、第1ダンパー13、第2ダンパー26を制御し、複合除湿運転42と単独除湿運転43を適切に切り換えることにより、使用環境や使用者の好みに応じた多様な運転形態を実現している。
図5は、各除湿モードにおける環境温度−除湿能力特性を示すグラフである。図のグラフは除湿機が設置されている環境の相対湿度を60%に設定した場合の環境温度と除湿能力の関係を示しており、点線のデータは「除湿冷風モード」時の除湿能力特性、破線のデータは「乾燥除湿モード」時の除湿能力特性、実線のデータは「自動除湿モード」時の除湿能力特性を示している。「除湿冷風モード」では、ヒートポンプ9の吸熱作用のみで除湿するため除湿能力の温度依存性が高く、特に低温条件では除湿能力が大きく低下する。また、「除湿乾燥モード」では、ヒートポンプ9の吸熱作用に加え、駆動手段17とヒーター19の作動によるデシカントローター16の吸放湿作用が加わり、除湿能力が向上する。特に低温条件では、ヒーター19および再生領域21において加熱加湿された高エンタルピーの空気が吸熱器6に供給されるため吸熱器6への霜の付着が防止されて除湿能力が大幅に改善する。また、「自動除湿モード」では、室温センサー29の検出値Trが15℃未満で駆動手段17とヒーター19を作動させ、検出値Trが15℃以上で駆動手段17とヒーター19を停止させている。したがって環境温度が15℃未満では「除湿乾燥モード」と同一の除湿能力となり、15℃以上では「冷風除湿モード」と同一の除湿能力となる。このように室温センサー29の検出値Trに基づいて制御することにより、温度条件に依らず年間を通じて効率良く安定した除湿運転を行うことができる。
図6は、各環境温度における第1ファン11の設定風量と吸熱器6および放熱器7の温度の関係を示したグラフである。図に示すように第1ファン11の風量は、横軸に記した環境温度に対して三段階に調整するように制御される。この制御方法は、環境温度、即ち、本体1内への吸込温度を室温センサー29で検出し、その検出値Trに基づいて制御手段33が第1ファン11の風量ノッチの設定および切換を行うことにより実現される。第1ファン11はHノッチ、Mノッチ、Lノッチの3段階の風量切換が可能となっており、室温センサー29の検出値Trが30℃以上の場合はHノッチ、検出値Trが10℃以上30℃未満の場合はMノッチ、10℃未満の場合はLノッチに設定される。ヒートポンプ9は環境温度に応じて作動圧力が変化する特性を有しており、環境温度が高温になると放熱器7での放熱能力が減少して作動圧力が上昇し、逆に環境温度が低温になると吸熱器6での吸熱量が減少して作動圧力が低下する。そして高温環境における作動圧力の上昇は圧縮機5の高圧上昇につながり、また、低温環境における作動圧力の低下は吸熱器6への着霜を助長する。したがって上述したように環境温度に応じて第1ファン11の風量を調整することにより、30℃以上の高温環境下では、放熱器7への供給空気量を増加することで放熱能力を確保して圧縮機5の高圧上昇を抑制し、10℃以下の低温環境下では、放熱器7への供給空気量を減らすことで放熱器7の圧力を上昇させて第2ファン12が供給する空気の温度を高め吸熱器6における着霜を抑制することができる。図6のグラフには第1ファン11の風量を制御した場合の放熱器7および吸熱器6の温度を併せて示している。図に示すように第1ファン11の風量を増加するに従い放熱器7および吸熱器6の温度が段階的に低下しており、環境温度に応じて第1ファン11の風量を調整することで放熱器7および吸熱器6の温度を所望の範囲内に制御し、ヒートポンプ9を適正な使用範囲で運転することが可能であることが分かる。
以上、説明した構成および動作により、本実施形態の除湿機は、以下の効果を奏するものである。
本体1内に環状の循環通路や水分回収用の熱交換器を設けずにデシカントローター16が吸湿した水分を吸熱器6で結露水として回収するので装置の簡略化、小型化を図ることができる。
また、第2ファン12の空気供給方向における風上側からデシカントローター16にヒーター19の輻射熱を照射して、再生領域21に位置するデシカントローター16の水分を多く保有している部分を輻射熱で直接加熱して効率良く水分を取り出し、この水分を含み高湿となった空気を吸熱器6に供給して冷媒8とのエンタルピー差を確保することでヒートポンプ9を作動させ除湿効率を高めることができる。
また、ヒーター19が放散する輻射熱を反射板20でデシカントローター16に向けて反射し、デシカントローター16の再生エネルギーに利用して水分抽出効率を高めることができる。
また、デシカントローター16の回転方向におけるヒーター19の前段および後段に位置する再生領域21に第1バイパス経路24を通じて空気を供給し、ヒーター19後段に供給した空気でデシカントローター16を冷却して吸湿領域22での水分吸湿を速めるとともにヒーター19前段に供給した空気でデシカントローター16を予熱して水分を放出しやすくすることで除湿効率を高めることができる。
また、デシカントローター16の再生に適した風量と吸熱器6における冷却減湿に適した風量とのアンバランスを、第2バイパス経路25を設けて解消することで除湿効率を高めることができる。
また、ヒートポンプ9のみで除湿を行う単独除湿運転43と、ヒーター19の加熱によりデシカントローター16から水分を放出させ、この水分を含み高湿となった空気を吸熱器6に供給して冷媒8とのエンタルピー差を確保し、ヒートポンプ9を作動させて除湿効率を高める複合除湿運転42とを選択可能にすることができる。
また、吸込口2から吸気した空気が低温の場合は複合除湿運転42を実行して除湿量を確保し、逆に高温の場合はヒートポンプ9のみの単独除湿運転43を実行して消費電力を抑えることで環境温度に適応した効率の良い除湿運転を行うことができる。
また、吸込口2から吸気した空気が高湿の場合は複合除湿運転42を実行して除湿量を増加し、逆に低湿の場合はヒートポンプ9のみの単独除湿運転43を実行して消費電力を抑えることで除湿負荷に適応した効率の良い除湿運転を行うことができる。
また、第1ファン11により放熱器7に供給されて加熱された高温空気と、第2ファン12により吸湿領域22や吸熱器6に供給されて除湿された低湿空気とを、吹出口4と排気口3とに分離して排出する排気形態と高温空気と低湿空気を共に吹出口4から排出する排気形態を使用目的に応じて選択することができる。
また、第1ファン11の排出先が排気口3に設定された場合に単独除湿運転43を実行し、第2ファン12により送風される空気にデシカントローター16の吸着熱やヒーター19の余熱を与えずに吹出口4から排出することで室温上昇を抑制することができる。
また、第1ファン11の排出先が排気口3に設定された場合にデシカントローター16の吸湿領域22への空気供給を遮断して第2ファン12により送風される空気の大半を吸熱器6で冷却し吹出口4から排出することで冷風を供給可能にすることができる。
また、圧縮機5を停止して吸熱器6での吸熱動作を停止するとともにヒーター19の熱をデシカントローター16を介して吸熱器6に供給することで吸熱器6に付着した霜を除去することができる。
また、供給空気の温度が低い場合は第1ファン11の風量を減らし、逆に供給空気の温度が高い場合は第1ファン11の風量を増やすことでヒートポンプ9の作動圧力を適正に調整し、高圧上昇や着霜を抑制することができる。
また、吹出口4と排気口3を本体1の異なる面に開口したので、吹出口4から排出される空気と排気口3から排出される空気が混ざりにくくなり、吹出口4から冷却された低温空気のみを供給する「冷風除湿モード」において使用者がより冷風感を得ることができる。
また、反射板20を吸込口2側から見てヒーター19を覆うように配設したので、ヒーター19の発光が吸込口2から漏れるのを遮光することができる。
また、圧縮機5を停止してヒートポンプ9の作動を停止し、第2ファン12、駆動手段17、ヒーター19を運転して吸熱器6に温風を供給し、吸熱器6に付着した水滴を乾燥させる「内部乾燥モード」を設けたので、残水による黴や臭いの発生を抑制することができる。
以上説明した内容は、発明を実施するための一形態についてのみ説明したものであり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態では、第1ダンパー13を、第1ファン11の排出先を吹出口4側に設定する切換位置14と、排気口3側に設定する切換位置15の2段階の切換を行うように構成したが、第1ダンパー13の切換パターンは上記2段階にとどまるものではない。例えば、切換位置14と切換位置15の中間位置に設定可能に構成して、第1ファン11の排出先を吹出口4と排気口3の双方に設定するようにしてもよい。そして第1ダンパー13の切換パターンは、切換位置14と中間位置の2段階、中間位置と切換位置15の2段階、切換位置14と中間位置と切換位置15の3段階など様々なパターンに適用することができる。
また、上記実施の形態では、第1ダンパー13により第1ファン11の排出先を吹出口4もしくは排気口3に切換可能に構成したが、第1ダンパー13で第2ファン12の排出先を切り換えるように構成しても同様の効果を奏することができる。例えば、第2ファン12の排出先を排気口3に切り換えた場合は、吹出口4からは放熱器7で加熱された高温空気のみが供給されるので、洗濯物の乾燥等に有効に活用することができる。
また、第1ダンパー13を第1ファン11と第2ファン12の各々の排出先を吹出口4と排気口3の何れかに個別に切換可能に構成しても良い。この場合、吹出口4からは、吸熱器6で冷却された低温の空気あるいは放熱器7で加熱された高温の空気を供給することが可能となり使い勝手をさらに向上できる。
また、上記実施の形態では、第1バイパス経路24によってデシカントローター16の回転方向における再生領域21の前段および後段の双方に吸込口2から空気を供給する構成としたが、再生領域21の前段もしくは後段の何れか一方のみに空気を供給するように第1バイパス経路24を構成しても良い。
また、上記実施の形態では、「自動除湿モード」において室温センサー29の検出値Trが15℃未満でヒーター19および駆動手段17を作動させてデシカントローター16の吸放湿作用を組み合せる複合除湿運転42を行い、検出値Trが15℃以上でヒーター19および駆動手段17を停止させてヒートポンプ9のみで除湿を行う単独除湿運転43を実行する構成としたが、例えば、ヒーター19の出力を大、小の2段階に切換可能に構成し、検出値Trが10℃未満でヒーター19の出力を大に設定して複合除湿運転42を実行し、検出値Trが10℃以上かつ20℃未満でヒーター19の出力を小に設定して複合除湿運転42を実行し、検出値Trが20℃以上でヒーター19を停止して単独除湿運転43を実行するような多段階の運転形態にしてもよい。
また、上記実施の形態では、操作部34で「除湿冷風モード」が選択された場合にヒーター19を停止するように制御したが、ヒーター19の出力を調整可能に構成して「除湿冷風モード」においてヒーター19を低出力で作動させるように制御してもよい。その場合、駆動手段17を作動させて冷風を供給しつつデシカントローター16の吸放湿作用を行わせてもよい。
また、吸込口2の開口面に着脱自在にフィルターを配設して本体1内部への異物流入を抑制する、あるいは排気口3や吹出口4にルーバー機構を設け、排出空気の排気方向を変更可能に構成するなど適宜設計してもよい。
また、排気口3に着脱自在に排気ダクトを設け、排気口3から排出される高温空気を吹出口4から遠方に排出するように構成してもよい。この場合、排気ダクトからの排気を本体1が配置される空間とは別の空間に排出した場合には、本体1が置かれている空間に、吹出口4からの低温空気のみを供給することも可能となり、快適性をさらに向上できる。
また、第1ダンパー13の切り換えを駆動モータにより遮蔽板を移動させて実行する構成としたが、本体1の上面にある操作部34に遮蔽板に連結したレバーを設けて手動で切り換えるように構成してもよい。その場合は、遮蔽板に磁石を設け、何れかの位置、例えば切換位置14側にホール素子などの位置検出器を配設して、第1ダンパー13の設定位置を検出可能に構成することが望ましい。