JP4649536B1 - 酸化ガリウム粉末 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】嵩密度(AD)が0.40〜0.70g/cm3であることを特徴とする酸化ガリウム粉末を提案する。かかる酸化ガリウム粉末は、酸化インジウム粉末との嵩密度の差が小さいため、酸化インジウム粉末などと混合した際に均一に混合させることができ、均質な混合焼結体、例えばスパッタリングターゲットを作製することができる。
【選択図】なし
Description
IGZO焼結体は、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化インジウムなどの原料粉末を混合し、得られた混合粉末を加圧成形し、焼結して製造するのが一般的である。
さらに、単に嵩密度が低いだけではなく、圧縮度は逆に高いという特徴を有していれば、IGZO焼結体の焼結性を向上させることができるという効果も享受することができる。
本実施形態に係る酸化ガリウム粉末(以下、「本酸化ガリウム粉末」という)の嵩密度(AD)は、0.40〜0.70g/cm3であることが重要である。本酸化ガリウム粉末の嵩密度が0.40〜0.70g/cm3の範囲内であれば、前記プレミックス粉体における酸化ガリウム粉末の均一混合性を高めることができる。嵩密度が高過ぎると、個々の粒子が強く凝集し過ぎて個々の粒子の分散性が不十分になるばかりか、混合する他の金属粉との嵩密度の違いが大きくなるため、局所的に酸化ガリウムが偏って存在するようになりマクロなムラが発生してしまう。逆に、嵩密度が酸化インジウムと比べて極端に低い場合も、マクロなムラが生じてしまう。
かかる観点から、本酸化ガリウム粉末の嵩密度は0.45g/cm3以上、或いは0.65g/cm3以下であるのがさらに好ましい。
ここで、「嵩密度」とは、自然落下により粉末を一定容器に充填される単位体積当たり質量であり、JIS K 5101に準拠して測定することができる。
ただし、本酸化ガリウム粉末の場合には、強く凝集した乾燥体を焼成すると、焼成によって凝集がさらに強くなり、この状態で強引に解砕すると、粒子の破壊が進行してしまうばかりか、解砕機の摩耗により、FeやNiといった金属不純物が混入してしまう。そのため、本酸化ガリウム粉末の場合には、焼成する前の段階で、上記の如く適度に解砕すると共に、十分に解砕できなかった粒子を除外することで、粒子を破壊することなく十分に凝集を解された酸化ガリウム粉末を回収することができ、その結果、均一で、且つ一次粒子の形状を維持することができ、且つ微粉の発生しない乾燥体を得ることができるため、酸化ガリウム粉末の均一混合性を高めることができる。
混合する相手方の酸化インジウム粉末との嵩密度の差(絶対値)が0.15g/cm3以下であれば、酸化インジウム粉末との均一混合性がより一層優れたものとなり、当該酸化インジウム粉末と均一に混合することができる。下限値は特に制限するものではないが、酸化インジウム粉末との均一混合性の観点を考慮すると、混合する相手方の酸化インジウム粉末との嵩密度の差(絶対値)は0.10g/cm3以下であるのがさらに好ましい。
本酸化ガリウム粉末のタップ密度が0.80〜1.50g/cm3であれば、IGZO焼結体などのように酸化インジウム粉末などの他の粉末と混合して焼結させる焼結体の焼結密度を高めることができる。かかる観点から、本酸化ガリウム粉末のタップ密度は0.90g/cm3以上、或いは、1.40g/cm3以下であるのがさらに好ましい。
ここで、「タップ密度」とは、自然落下により粉末を一定容器に充填した後、容器にタップによる衝撃を加え、試料の体積変化がなくなったときの単位体積当たり質量であり、JIS K 5101に準拠して測定することができる。
よって、本酸化ガリウム粉末の場合には、焼成する前の段階で、前述のように適度に解砕すると共に、十分に解砕できなかった凝集粒子を除外するのが好ましい。
かかる圧縮度が40%以上であれば、IGZO焼結体の焼結密度をさらに高めることができる。かかる観点から、本酸化ガリウム粉末の圧縮度は42%以上、中でも45%以上であるのがさらに好ましい。但し、現実的には60%程度が上限であると考えることができる。
本酸化ガリウム粉末の圧縮度を調整する手段としては、焼成する前の段階で、前述のように適度に解砕すると共に、十分に解砕できなかった凝集粒子を除外することにより、調整すればよい。
本酸化ガリウム粉末の嵩密度を前記の如く規定することで、他のIGZO焼結体原料に対するマクロな分散性を高めることができる。すなわち、IGZO焼結体原料粉末全体に対して均一に分散させることができるようになる。そしてさらに、D50を規定することで、ミクロな分散性、すなわち各粒子の周囲における局所的な分散性を高めることができる。つまりD50が3.00μmより粗粒過ぎると、ミクロな分散性が悪くなり混合性が低下することになり、0.50μmより微粒過ぎると、嵩密度が小さくなり過ぎてしまうようになる。かかる観点から、本酸化ガリウム粉末のD50は、0.80μm以上であるのがより一層好ましく、中でも1.00μm以上、或いは、2.50μm以下であるのがさらに好ましい。
なお、D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準累積度数50%の粒子径の意味である。
本酸化ガリウム粉末のAD/D50は、一次粒子レベルでの分散性を示す指標である。すなわち、AD/D50が高いということは、微粒子であるのに重く、マクロな分散性には優れていても、凝集しているために一次粒子レベルでの分散性には劣るという傾向があるため、0.60g/μm・cm3以下であるのが好ましく、特に0.55g/μm・cm3以下、中でも0.40g/μm・cm3以下であるのがより一層好ましい。
他方、本酸化ガリウム粉末のAD/D50の最小値は0.20g/μm・cm3程度であると考えられ、最も一次粒子レベルでの分散性に優れている。
かかる観点から、本酸化ガリウム粉末のFe及びNiそれぞれの含有量は、10ppm未満であるのが好ましく、特に5ppm未満であるのがさらに好ましい。
次に、本酸化ガリウム粉末の製造方法の一例について説明する。但し、あくまで一例であって、本酸化ガリウム粉末の製造方法が以下に説明する製造方法に限定されるものではない。
焼成前に乾燥体(ケーキ)を解す(ほぐす)ことにより、焼成後の酸化ガリウム粉末の嵩密度を低くすることができ、かつ、タップ密度を高めることができる。これは、焼成前段階で粉体を解す(ほぐす)ことで、焼成時に発生する水蒸気が滞留することなく系外に放出され、同時に、粒子間に空隙を保有した状態で焼結が進行し、その結果、嵩密度が低くなるものと考えられる。また、空隙を保有した状態で焼結が進行するが、焼成前に粉体を解す(ほぐす)ことにより、粒子同士の空隙はタッピングなどの応力で容易に破壊され、タップ密度が高い粉体を得ることができる。
なお、この粉体を解す(ほぐす)作用の程度、すなわち粉砕強度が弱過ぎると、十分に解れず、粒子間に空隙を十分に与えることができず、嵩密度が高いままである。その一方、粉砕強度が強過ぎても、嵩密度が高くなってしまうため、最適な範囲に制御する必要がある。
この際、中和時のガリウム濃度やアンモニアの液温が粒径に影響するため、適宜調整するのが好ましい。
なお、中和にはアンモニア水以外にも、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、尿素などの他のアルカリを用いることもできる。
また、上記の水熱熟成において、熟成温度及び時間は、粒子の形状や形成度合に影響するため、70℃以上で4時間以上熟成することが好ましい。
この際、乾燥は水分を蒸発させることができればよいから、乾燥温度は100℃より若干高い程度で十分である。
水酸化ガリウムから酸化ガリウムに変化する温度領域は500℃程度であるため、500℃以上であればよいが、工業的な生産を考慮した場合、炉内の温度ムラなどの影響を考慮すると、700℃以上で行うのが好ましい。
また、焼成時間については、水酸化ガリウムから酸化ガリウムへ均一に転移させるために1時間以上とするのが好ましい。他方、長すぎても均一焼成の効果は変わらないので不経済であるため、長くとも10時間程度とするのが好ましい。
本酸化ガリウム粉末は、ターゲット材料、特にIGZOなどのように酸化インジウム粉末などと混合する用途に用いることができる。例えば、本酸化ガリウム粉末と、酸化インジウム粉末及び酸化亜鉛粉末とを混合して混合粉末(「プレミックス粉体」ともいう)を得、このプレミックス粉体を加圧成型した後、焼結してIGZO焼結体を製造することができる。
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくYより小さい」の意を包含する。
酸化ガリウム粉末を少量ビーカーに取り、3%トリトンX溶液(関東化学製)を2、3滴添加し、粉末になじませてから、0.1%SNディスパーサント41溶液(サンノプコ製)50mLを添加し、その後、超音波分散器TIPφ20(日本精機製作所製、OUTPUT:8、TUNING:5)を用いて2分間分散処理して測定用サンプルを調製した。この測定用サンプルを、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300(日機装製)を用いて、体積累積基準D50を測定した。
嵩密度は、JIS K 5101に準拠して、蔵持科学器械製作所製カサ比重測定器を使用して測定した。その際、いずれの粉末も粉砕してから3時間以内に測定を開始した。
タップ密度は、JIS K 5101に準拠して、試料200gを用いてパウダーテスターPT−E型(ホソカワミクロン製)により測定した。
上記のようにして測定された酸化ガリウム粉末の嵩密度(AD)及びタップ密度(TD)に基づき、次式により圧縮度(%)を算出した。
圧縮度={(タップ密度−嵩密度)/(タップ密度)}×100
不純物量の測定は、試料5gを王水で溶解し、ICP発光分析装置にてFe及びNiを定量し、ppmオーダーで検出した。
実施例及び比較例で得られた酸化ガリウム粉末20gと、酸化インジウム粉末(D50:2.71μm、嵩密度0.60g/cm3)180gとを、筒井理化学器械社製透視式混合器「S−3」を用いて30分間混合し、任意に10箇所の粉末を各3gサンプリングし、それぞれ酸化ガリウムの割合を分析し、次の基準で酸化インジウム粉末に対する均一混合性を評価した。
なお、酸化ガリウムの含有量は、王水で溶解し、ICP発光分析装置にて定量した。
○:分析値の最大値と最小値の差が0.3%以上0.6%未満
△:分析値の最大値と最小値の差が0.6%以上1.0%未満
×:分析値の最大値と最小値の差が1.0%以上
所定のGa濃度(表1参照)の硝酸ガリウム塩水溶液を、アンモニア水に加えてpH8に調整した後、攪拌しながら80℃にて8時間熟成させた。
反応終了後、純水によるデカンテーションを繰り返し、洗浄したのち、濾過により固液分離を行い、105℃にて、24時間乾燥させ、ガリウム含水水酸化物の乾燥体(ケーキ)を得た。
このようにして得られたガリウム含水水酸化物の乾燥体(ケーキ)を、ヘンシェルミキサーを用いて、回転数800rpm、供給速度100g/min、スクリーンメッシュ目開き1mmにて解砕処理を行い、150meshの篩で分級し、篩上を回収した。
そして、得られたガリウム含水水酸化物の解砕物を、セラミック製の焼成容器(焼成匣鉢)に入れ、大気雰囲気、800℃にて3時間焼成を行い、酸化ガリウム粉末を得た。
実施例1において、ガリウム含水水酸化物の乾燥体(ケーキ)を、ヘンシェルミキサーを用いて解砕する代わりに、手で軽く解砕した。それ以外は実施例1と同様にして酸化ガリウム粉末を得た。
実施例1と同様にして得られたガリウム含水水酸化物の乾燥体(ケーキ)を、セラミック製の焼成容器(焼成匣鉢)に入れ、大気雰囲気、800℃にて3時間焼成を行い、酸化ガリウム塊を得た。
このようにして得られた酸化ガリウム塊を、ヘンシェルミキサーを用いて、回転数800rpm、供給速度100g/min、スクリーンメッシュ目開き1mmにて解砕処理を行い、150meshの篩で分級し、篩上で酸化ガリウム粉末を得た。
実施例1と同様にして得られたガリウム含水水酸化物の乾燥体(ケーキ)を、セラミック製の焼成容器(焼成匣鉢)に入れ、大気雰囲気、800℃にて3時間焼成を行い、酸化ガリウム塊を得た。このようにして得られた酸化ガリウム塊を手で軽く解して酸化ガリウム粉末を得た。
実施例及び比較例の嵩密度(AD)と均一混合性の評価とを対比すると、酸化ガリウム粉末の嵩密度(AD)が、0.40〜0.70g/cm3程度であれば、酸化インジウム粉末と均一に混合することができると考えられる。特に0.45g/cm3以上、或いは0.65g/cm3以下であるのが好ましいと考えることができる。
また、実施例及び比較例のAD/D50と均一混合性の評価とを対比すると、0.60g/μm・cm3以下であるのが好ましく、特に0.55g/μm・cm3以下、中でも0.40g/μm・cm3以下であるのがより一層好ましいと考えることができる。
さらに、実施例及び比較例の圧縮度を対比すると、40%以上であるのが好ましく、特に42%以上、中でも45%以上であるのがさらに好ましいと考えることができる。
Claims (6)
- 嵩密度(AD)が0.40〜0.70g/cm3であることを特徴とする酸化ガリウム粉末。
- レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50に対する嵩密度の比率(AD/D50)が0.20〜0.60g/μm・cm3であることを特徴とする請求項1記載の酸化ガリウム粉末。
- {(タップ密度−嵩密度)/タップ密度}×100で示される圧縮度が40〜60%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化ガリウム粉末。
- タップ密度(TD)が0.80〜1.50g/cm3であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の酸化ガリウム粉末。
- レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50が0.50μm〜3.00μmである請求項1〜4の何れかに記載の酸化ガリウム粉末。
- 請求項1〜5の何れかに記載の酸化ガリウム粉末を原料としてなるスパッタリングターゲット。
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