JP4636017B2 - 感熱記録体 - Google Patents

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Description

本発明は、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した感熱記録体に関する。
無色ないしは淡色のロイコ染料と有機または無機の呈色剤との発色反応を利用し、熱により両発色物質を接触させて記録像を得るようにした感熱記録体は、よく知られている。
かかる感熱記録体は比較的安価であり、また記録機器がコンパクトで、かつその保守も容易なため、ファクシミリや各種計算機の記録媒体を含む、幅広い分野における記録媒体として利用されている。
かかる感熱記録体の重要な品質の一つは、水が触れた時の感熱記録層の脱落を防いだり、水が付着することによる記録部の褪色を抑えたりできる耐水性である。
また、感熱記録体をプリンター等で印字する場合、スティッキングの起こらない、即ち、耐スティッキング性が良好であることも求められている。
併せて、最近とくに、POSラベル用、物流ラベル用などの用途拡大に伴い、印刷適性、例えば、インキ濃度(インキ着肉性)やインキ濃度の均一性(印刷平滑性)などが良好であることも求められている。
感熱記録層に耐水性を付与する技術については、接着剤成分としてカルボキシ基含有水性重合体およびオキサゾリン基含有水性重合体を使用することが知られている(特許文献1を参照)。また感熱記録層のバインダー成分として、ガラス転移温度50℃以下の高分子ラテックスの存在下でガラス転移温度55℃以上である少なくとも1種類の疎水性ビニル系単量体を主体に重合して得られる軟化点150〜260℃の水分散性重合物を特定量使用することが知られている(特許文献2を参照)。また、特定の親水性基団を有する水溶性の変性ポリビニルアセタール樹脂を使用することが知られている(特許文献3を参照)。また、感熱記録体において、接着剤として(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステルおよびエチレン性不飽和カルボン酸を含む単量体を、特定の条件下で乳化重合して得られた重合体エマルジョンを使用することが知られている(特許文献4を参照)。また、感熱記録層中に使用されるバインダーのうち、70%以上をアクリル酸エステル共重合体とすることが知られている(特許文献5を参照)。また、感熱記録層に塩基性窒素をリング内にもつ複素環基を有するビニルモノマーとα,β飽和二重結合を有するエチレン性ビニルモノマーとの共重合体を含有させることも知られている(特許文献6を参照)。また、感熱記録層にアクリルエマルジョンとコロイダルシリカとを含有し、さらに特定粒子径の無機系顔料を含有することも知られている(特許文献7を参照)。
しかし、これらの技術では、十分な耐水性や印刷適性が得られない場合があった。
また、耐水性の改善等を目的として、感熱記録層に、ジオール化合物およびアルデヒド化合物の少なくとも一種の架橋剤を使用することも知られている(特許文献8を参照)。
しかし、架橋剤を使用する場合は、架橋に時間がかかったり、感熱記録体の生産性が低くなったりする等の問題がある。
架橋剤に由来する問題を解決し、同時に耐水性も向上させるために、保護層に特定の共重合樹脂エマルジョンとポリオレフィン共重合樹脂エマルジョンを用いることも知られている(特許文献9及び特許文献10を参照)。しかし、記録感度等の特性の更なる改善が求められていた。
また、耐水性や耐スティッキング性を高めるために、感熱記録層中にコロイダルシリカとアクリル系ポリマーまたはスチレン・アクリル系ポリマーとの複合体および乳化分散されたステアリン酸アミドを含有させることが知られている(特許文献11を参照)。また、感熱記録層に接着剤として平均分子量が500万以上の疎水性アクリル樹脂およびカゼインを含有させることが知られている(特許文献12を参照)。また耐水性や印刷適性を優れたものにするために、接着剤としてケイ素変性ポリビニルアルコール、およびエチレン性不飽和カルボン酸を含有する重合体とシリコンとの水溶性グラフト共重合体を使用することも知られている(特許文献13を参照)。
これらの耐水性や耐スティッキング性、印刷適性は十分満足するものであるが、できれば更に改善することが好ましい。
特開平6−155916号公報 特開平6−206376号公報 特開平6−344668号公報 特開平8−337057号公報 特開2001−277719号公報 特開2003−94806号公報 特開2004−25775号公報 特開2002−29155号公報 特開2004−74531号公報 国際公開2004/016440 特開平9−207435号公報 特開平10−272839号公報 特開平11−227336号公報
本発明の課題は、耐水性、印刷適性、耐スティッキング性、記録感度等に優れ、幅広い分野で好適に使用し得る感熱記録体を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決することを主な目的として鋭意検討した結果、感熱記録層において、特定の性質を有する共重合樹脂エマルジョンを用いることにより、感熱記録体の耐水性等が改善されることを見出し、更に鋭意検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の感熱記録体に関する。
項1:支持体、及び、感熱記録層を備えた感熱記録体において、
感熱記録層は、ロイコ染料、呈色剤及び共重合樹脂エマルジョンを含有しており、
前記共重合体エマルジョンを構成する共重合樹脂は、
(1)(i)(メタ)アクリロニトリル及び(ii)(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体を含み、且つ、
(2)溶解度パラメーターが12.0以上であり、
前記(ii)のビニル単量体は、少なくとも1種のカルボキシル基含有ビニル単量体を含み、
前記カルボキシル基含有ビニル単量体の割合が、前記共重合樹脂の全質量中、1〜10質量%である感熱記録体。
項2:前記共重合樹脂エマルジョンを構成する共重合樹脂のガラス転移温度が、30℃を超えて100℃以下である、項1に記載の感熱記録体。
好ましくは、
支持体、及び、感熱記録層を備えた感熱記録体において、
感熱記録層は、ロイコ染料、呈色剤及び共重合樹脂エマルジョンを含有しており、
前記共重合樹脂エマルジョンを構成する共重合樹脂は、
(1)(i)(メタ)アクリロニトリル及び(ii)(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体を含み、
(2)溶解度パラメーターが12.0以上であり、且つ、
(3)ガラス転移温度が30℃を超えて100℃以下であり、
前記(ii)のビニル単量体は、少なくとも1種のカルボキシル基含有ビニル単量体を含み、
前記カルボキシル基含有ビニル単量体の割合が、前記共重合樹脂の全質量中、1〜10質量%である感熱記録体。
項3:前記共重合樹脂エマルジョンの乾燥後の固形分の量が、感熱記録層全固形分に対して10〜50質量%である項1又は項2に記載の感熱記録体。
項4:前記感熱記録層が、更に、重合度が1000以上であるポリビニルアルコールを含有している、項1〜3のいずれかに記載の感熱記録体。
項5:前記ポリビニルアルコールがケイ素変性ポリビニルアルコールである項4記載の感熱記録体。
項6:前記ポリビニルアルコールの量が、感熱記録層全固形分に対して1〜10質量%である項4または5に記載の感熱記録体。
項7:前記感熱記録層が、更に、ポリオレフィン重合樹脂エマルジョンを、乾燥後の固形分の量で、感熱記録層全固形分に対して0.5〜15質量%含有している、項1〜6のいずれかに記載の感熱記録体。
項8:前記ポリオレフィン重合樹脂エマルジョンを構成するポリオレフィン重合樹脂の融点が70℃以上である項7に記載の感熱記録体。
項9:前記感熱記録層が、架橋剤を含有していない項1〜8のいずれか1項に記載の感熱記録体。
好ましくは、
支持体、及び、感熱記録層を備えた感熱記録体において、
感熱記録層は、ロイコ染料、呈色剤及び共重合樹脂エマルジョンを含有しており、且つ、架橋剤を含有せず、
前記共重合樹脂エマルジョンを構成する共重合樹脂は、
(1)(i)(メタ)アクリロニトリル及び(ii)(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体を含み、且つ、
(2)溶解度パラメーターが12.0以上であり、
前記(ii)のビニル単量体は、少なくとも1種のカルボキシル基含有ビニル単量体を含み、
前記カルボキシル基含有ビニル単量体の割合が、前記共重合樹脂の全質量中、1〜10質量%である項1〜8のいずれかに感熱記録体。
項10:保護層を備えていない、項1〜9のいずれか1項に記載の感熱記録体。
好ましくは、
支持体、及び、感熱記録層を備え、保護層を備えていない感熱記録体において、
感熱記録層は、ロイコ染料、呈色剤及び共重合樹脂エマルジョンを含有しており、
前記共重合樹脂エマルジョンを構成する共重合樹脂は、
(1)(i)(メタ)アクリロニトリル及び(ii)(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体を含み、且つ、
(2)溶解度パラメーターが12.0以上であり、
前記(ii)のビニル単量体は、少なくとも1種のカルボキシル基含有ビニル単量体を含み、
前記カルボキシル基含有ビニル単量体の割合が、前記共重合樹脂の全質量中、1〜10質量%である項1〜9のいずれかに記載の感熱記録体。
本発明によって、優れた耐水性、印刷適性、耐スティッキング性、及び耐擦れ汚れ性を有し、更に生産性が高く、記録感度も優れる感熱記録体を得ることが可能になった。
本発明の感熱記録体は、保護層を有したり、架橋剤を使用したりせずとも、上記優れた性質を有している。即ち、本発明の感熱記録体は、保護層を有したり、架橋剤を使用したりしない場合でも、優れた耐水性、印刷適性、耐スティッキング性、及び、耐擦れ汚れ性を有し、更に優れた記録感度を兼ね備えている。
本発明の感熱記録体は、保護層を有しない場合には、保護層の塗布工程を省くことができ、架橋剤を使用しない場合には、架橋に要する時間やムロ処理も不要とすることができ、高い生産性も備えることができる。
このような利点を有する本発明の感熱記録体は、ファクシミリ、コンピューターの出力機、ラベルプリンターなどの発行機、自動券売機、CD・ATM、ファミリーレストランの注文伝票出力機、科学研究用機器のデータ出力機などにおける各種情報記録材料として広範囲に使用することができ、各種産業分野において好適に利用し得るものである。
以下、本発明について、詳細に説明する。
尚、本明細書及び請求の範囲において、「(メタ)アクリロニトリル」なる表現は、アクリロニトリル及び/又はメタアクリロニトリルを意味する。また、「(メタ)アクリル酸エステル」なる表現は、メチルアクリレート及び/又はメチルメタクリレートなどのアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを指す。
・共重合樹脂エマルジョン
本発明の感熱記録体における感熱記録層は、主な接着剤として、下記特徴を有する共重合樹脂のエマルジョンを使用する:
共重合成分として、(i)(メタ)アクリロニトリル、および(ii)(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体を含む;
溶解度パラメーターが12.0以上である;
前記(ii)の(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体は、少なくとも1種のカルボキシル基含有ビニル単量体を含む;
前記カルボキシル基含有ビニル単量体の割合が、共重合樹脂の全質量中1〜10質量%である。
上記の条件を満足する共重合樹脂エマルジョンを感熱記録層の接着剤として使用することにより、保護層を形成しなくても、感熱記録体として十分な品質が得られる。
特に、耐水性、印刷適性、耐スティッキング性、記録感度等に優れ、オフセット印刷をおこなった場合に水負けすることもない、換言すると、水が付着した所にインキがのらない、いわゆる非画線部が影響を受け、はっきりした画線部の形成ができなくなること等がない感熱記録体を得ることができる。
・共重合樹脂の成分
本発明で使用する共重合樹脂エマルジョンを構成する共重合樹脂は、(i)(メタ)アクリロニトリルおよび(ii)(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体を、共重合成分として、含む。
(i)(メタ)アクリロニトリル
共重合樹脂における(メタ)アクリロニトリルの割合は、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限されないが、好ましくは20〜80質量%程度であり、更に好ましくは30〜70質量%程度である。
(メタ)アクリロニトリルの割合が20質量%以上であれば、十分な耐水性が得られ、耐スティッキング性に支障をきたすこともない。また80質量%以下であれば、エマルジョンの製造(重合)安定性が劣る恐れがなく、共重合樹脂のTgが必要以上に高くならない。また、エマルジョンの成膜性や充填剤等への結着性に支障を来たす恐れもない。
(ii)(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体
(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体の例としては、
(i)カルボキシル基含有ビニル単量体、
(ii)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(N−メチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル類、
(iii)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、
(iv)スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体類、
(v)(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のN−置換不飽和カルボン酸アミド類、
(vi)ビニルピロリドンの如き複素環式ビニル化合物、
(vii)塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン化合物、
(viii)エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、
(ix)ブタジエンの如きジエン類
からなる群から選ばれる一種あるいは二種以上の組合わせが挙げられる。
共重合樹脂における、(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体の割合は、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限されないが、好ましくは80〜20質量%程度であり、更に好ましくは70〜30質量%程度である。
(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体の割合が20質量%以上であれば、エマルジョンの製造(重合)安定性が劣る恐れがなく、共重合樹脂のTgが必要以上に高くならない。また、エマルジョンの成膜性や充填剤等への結着性に支障を来たす恐れもない。また、80質量%以下であれば、十分な耐水性が得られ、耐スティッキング性に支障をきたすこともない。
本発明における(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体は、1個又は2個以上のカルボキシル基を含有するビニル単量体を、少なくとも1種含んでいる。
カルボキシル基含有ビニル単量体の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸の如きエチレン性不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸の如きエチレン性不飽和ジカルボン酸及びそのモノアルキルエステルからなる群から選ばれる一種又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
本発明の共重合樹脂中のカルボキシル基含有ビニル単量体は、共重合樹脂エマルジョンを作成する際の共重合樹脂の重合安定性を確保するため必須となるほか、重合後、塩基により中和することで樹脂粒子表層が水和、軟化し、共重合樹脂エマルジョンの成膜性を高める効果がある。また、必要により添加される各種の充填剤の分散性、結合性を高める機能も有する。更に、カルボキシル基が、必要により併用される架橋剤との反応基としても働く。
カルボキシル基含有ビニル単量体の割合は、共重合樹脂の全質量中、1〜10質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは2〜8質量%である。
含有量が1質量%以上であると、共重合樹脂の重合安定性に欠けることがなく、中和の際も樹脂粒子の軟化が良好で、共重合樹脂エマルジョンの成膜性に優れている。また含有量が10質量%以下であれば、感熱記録層の耐水性が十分となり、更に中和の際に樹脂粒子の溶解が起こってゲル化する恐れもない。
・溶解度パラメーター
本発明においては、共重合樹脂エマルジョンを構成する共重合樹脂の溶解度パラメーターを12.0以上とする。溶解度パラメーターは、例えば、岩波理化学辞典、第4版等に記載されている。
溶解度パラメーターが12.0以上であると、使用時にサーマルヘッドから受ける熱に対する耐熱性(サーマルヘッドに対する粘着性)が改良され、樹脂の内部凝集力を大きくすることができる。
溶解度パラメーターが12.0未満では、樹脂の内部凝集力不足に伴い、感熱記録層の感温性が増すため熱により軟化しやすくなり、サーマルヘッドの走行安定性に欠けてくる。
溶解度パラメーターの上限は特に設けないが、本発明で用いる共重合樹脂の特性や工業的な生産効率を考慮すると、14.0以下の範囲が好ましい。
溶解度パラメーターが14.0以下であると、共重合樹脂の親水性が増して、耐水性が大きく低下する恐れがなく、また共重合樹脂エマルジョンの製造も容易となる。
なお、本発明における溶解度パラメーターは、共重合成分それぞれの分子構造と原子団の蒸発エネルギーの総計、および共重合成分のモル体積比率から算出される値である。
溶解度パラメーターの計算方法は、Journal of Technology Coatings VOL.55、No696、P.100−101の記載に従い、下記式1に基づいて算出できる。
式1
Figure 0004636017
特定の溶解度パラメーターをもった共重合樹脂の作成は、共重合成分となるモノマーの選択と配合割合の設定をおこなうことにより可能である。
・共重合樹脂エマルジョンの他の特性
共重合樹脂エマルジョンの平均一次粒子径(動的光散乱法による数平均粒子径、測定装置:商品名LPA3100、大塚電子社製)は特に制限はないが、好ましくは50〜500nm程度、更に好ましくは70〜300nm程度である。
平均粒子径が50nm以上であると、エマルジョンの粘度が著しく高くなることがない。従って、製造時の樹脂濃度を低くする必要がなく、感熱記録層用塗液の乾燥性も遅くならないため、感熱記録体の生産性に支障をきたすことがない等、経済的な利点がある。また、500nm以下であると、感熱記録層の表面が緻密になり、所望の効果が発現され易くなる。
平均粒子径の調整は、当業者の知識により容易に行うことができ、例えば、共重合樹脂エマルジョンの原料モノマーの組成や界面活性剤の種類を適宜選択することにより、調整することができる。
共重合樹脂エマルジョンを構成する共重合樹脂のガラス転移温度は、30℃を超えて100℃以下程度であることが好ましく、30℃を超えて70℃以下程度であることが更に好ましい。
ガラス転移温度が30℃を超えると、耐熱性に優れ、100℃以下であると、成膜性に劣るという不具合が生じず、結果として、耐水性、印刷適性、耐スティッキング性が良好となる。
本発明においては、接着剤である共重合樹脂エマルジョンに関する溶解度パラメーターを12.0以上に設定しているため、共重合樹脂のガラス転移温度が30℃を超えても、接着性が劣ることもない。
感熱記録層に含まれる共重合樹脂エマルジョンに関して溶解度パラメーターとガラス転移温度を設定することにより、優れた耐熱性と優れた耐水性、印刷適性等の性能を兼ね備えた感熱記録体を得ることができる。
・共重合樹脂エマルジョンの製造方法
上記共重合樹脂エマルジョンは、例えば、国際公開2004/016440に開示されている方法に従って製造することができる。
共重合樹脂エマルジョンを製造する際、エマルジョンの安定性を付与するために、必要に応じて、乳化剤を用いることができる。
乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型等の非イオン界面活性剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
乳化剤の使用量は、特に制限はないが、樹脂の耐水性を考慮すると、必要最小限の量であることが好ましい。
共重合樹脂エマルジョンを製造する際には、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。
重合開始剤としては、過硫酸塩、過酸化水素、有機ハイドロパーオキサイド、アゾビスシアノ吉草酸等の水溶性開始剤、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等の油溶性開始剤、あるいは還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤が使用される。重合開始剤の使用量については特に制限はなく、公知技術に従えばよいが通常、ビニル単量体100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部程度である。
さらに共重合樹脂エマルジョンを製造する際に、必要に応じて分子量調節剤(連鎖移動剤)を用いても良い。分子量調節剤の例としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、低分子ハロゲン化合物等が挙げられる。
共重合樹脂エマルジョンは、塩基により中和して調製される。その際の中和剤は適宜選定し得るが、アンモニア水を用いることが好ましい。アンモニア水であれば、比較的低温で離脱し易いので感熱記録層を形成後、短時間で耐水性を得ることができる。
・共重合樹脂エマルジョンの量
共重合樹脂エマルジョンは、乾燥後の固形分の量で、感熱記録層全固形分に対して10〜50質量%程度、好ましくは10〜30質量%程度含有されることが好ましい。
10質量%以上であると、十分な耐水性、印刷適性を得ることができ、50質量%以下であると、発色成分比率が少なくなって記録感度が低下する恐れもない。
重合度が1000以上のポリビニルアルコール
本発明においては、感熱記録層が、更に、重合度が1000以上のポリビニルアルコールを含有していることが好ましい。
感熱記録層に、重合度が1000以上のポリビニルアルコールを含有させることにより、オフセット印刷の際に、タック強度の強いインクによって感熱記録層が剥がれてブランケットに付着することがなくなり、ブランケット汚れをさらに改善させることができ、印刷適性を向上させることができる。
他の水溶性接着剤を用いても、同様の効果が得られる場合もあるが、ポリビニルアルコールは、印刷適性を改善する効果が大きい。
特にポリビニルアルコールの重合度が1000以上、特に1000〜2500である場合には、感熱記録層の表面強度の改良効果が大きく、また少量でも、ブランケット汚れを大きく改善することができる。また感熱記録層表面の耐水性を低下させる恐れもない。
また、感熱記録層において、重合度が1000以上のポリビニルアルコールを、共重合樹脂エマルジョンと併用して用いることにより、共重合樹脂エマルジョンが他の材料と層分離することを防ぐことができる。
使用されるポリビニルアルコールの種類としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
中でも感熱記録体の耐水性を改善させる効果が高い点で、ケイ素変性ポリビニルアルコールが好ましい。
ケイ素変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭58−79003号公報に記載のもの等を用いることができる。
重合度が1000以上のポリビニルアルコールの好ましい含有量は、感熱記録層全固形分に対して1〜10質量%程度、好ましくは、1〜7質量%程度である。
含有量が1質量%を超えると感熱記録層の表面強度が良好となり、10質量%以下であると耐水性が低下する恐れがない。
なお、本発明の感熱記録層には、発明の効果を阻害しない程度で、他の水溶性接着剤を使用することができる。
他の接着剤としては、例えば、酸化デンプン、エステル化デンプン、エーテル化デンプン等のデンプン類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系樹脂、スチレン・無水マレイン酸共重合体およびそのアルカリ塩、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体、デンプン−酢酸ビニルグラフト共重合体およびそのアルカリ塩、カゼイン、ゼラチン、酢酸ビニル樹脂系ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックス、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル樹脂系ラテックス、上記以外のポリビニルアルコール等があげられる。
ポリオレフィン重合樹脂エマルジョン
本発明においては、感熱記録層が、更にポリオレフィン重合樹脂エマルジョンを、乾燥後の固形分の量で、感熱記録層全固形分に対して0.5〜15質量%、特に1〜10質量%含有していることが好ましい。
印刷工程において、感熱記録層面がロールと接触し擦れ汚れが発生することがあるが、ポリオレフィン重合樹脂エマルジョンを、更に含有することにより、感熱記録層表面の摩擦係数を下げ、結果としてさらなる耐スティッキング性、耐擦れ汚れ性を改良することが可能となる。
含有量が0.5質量%以上であると、耐スティッキング性や耐擦れ汚れ性がより良好となる。また、15質量%以下であると、記録部の白化が目立つこともなく、記録感度の低下の恐れも少ない。
前記ポリオレフィン重合樹脂エマルジョンを構成するポリオレフィン重合樹脂の融点は、70℃以上であることが好ましい。
融点が70℃以上であると、感熱記録体をスーパーカレンダーで表面仕上げする場合などにおいて、エマルジョンを構成する樹脂粒子の形状が変化することによる耐スティッキング性や耐磨耗性の低下の恐れが少ない。
また、融点は、150℃以下、特に130℃以下であることが好ましい。融点が150℃以下であれば、耐擦れ汚れ性が低下する恐れが少ない。
また、ポリオレフィン重合樹脂エマルジョンの平均粒子径(レーザ回折式 粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)による50%値)は、0.1〜10μm程度、特に0.1〜6μm程度が好ましい。
平均粒子径が0.1μm以上であると耐擦れ汚れ性の改良効果が高く、10μm以下であると記録部の画質低下による感度低下の恐れが少ない。
ポリオレフィン重合樹脂エマルジョンを構成するポリオレフィン重合樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィンからなる群から選ばれる1種又は2種以上からなる重合体又は共重合体が挙げられる。
中でもエチレン、プロピレン、1−ブテンを重合成分に含む樹脂が好ましい。
特に低分子量ポリエチレンエマルジョンが好ましい。
ロイコ染料及び呈色剤
本発明の感熱記録層に含有されるロイコ染料及び呈色剤としては、各種公知のものが使用できる。ロイコ染料の具体例としては、例えば3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノ−ベンゾ[a]フルオラン等の青発色性染料、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−7−N−メチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン等の緑発色性染料、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン等の赤発色性染料、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(N−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−ヘキシルアミノ)−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ(N−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−2−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−〔N−(3−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ〕−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−〔N−(3−エトキシプロピル)−N−メチルアミノ〕−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(4−ジメチルアミノ)アリニノ−5,7−ジメチルフルオラン等の黒発色性染料、3,3−ビス[1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−p−(p−クロロアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3、6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等の近赤外領域に吸収波長を有する染料等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、また2種類以上を併用することも可能である。
呈色剤の具体例としては、例えば1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、ハイドロキノン、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−ペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ベンジルオキシジフェニルスルフォン、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール、2,2’−〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル、1,3,3−トリメチル−1−(p−ヒドロキシフェニル)−6−ヒドロキシインダン、4−ヒドロキシ−4’−メトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−3’,4’−トリメチレンジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−3’,4’−テトラメチレンジフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,3−ジ〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸トリル、p−ヒドロキシ−N−(2−フェノキシエチル)ベンゼンスルホンアミド、1,8−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,6−ジオキサ−オクタン、(4−ヒドロキシフェニルチオ)酢酸−2−(4−ヒドロキシフェニルチオ)エチルエステル、ノボラック型フェノール樹脂、フェノール重合体等のフェノール性化合物、N−(p−トリルスルホニル)カルバモイル酸−p−クミルフェニルエステル、4,4’−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルスルホン、N−p−トリルスルホニル−N’−p−ブトキシカルボニルフェニルウレア、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア、N−p−トリルスルホニル−N’−3−(p−トリルスルホニルオキシ)フェニルウレアなどの分子内に−SONH−結合を有するもの、p−クロロ安息香酸亜鉛、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛などの芳香族カルボン酸の亜鉛塩などがあげられる。
勿論、これらに限定されるものではなく、また2種類以上を併用することも可能である。
ロイコ染料と呈色剤との使用比率は、用いるロイコ染料や呈色剤の種類に応じて適宜選択されるものであり、特に限定するものではないが、一般にロイコ染料100質量部に対して100〜1000質量部、好ましくは100〜500質量部程度の呈色剤が使用される。
感熱記録層中におけるロイコ染料の含有率は、一般に5〜50質量%、特に8〜30質量%程度である。
また、感熱記録層中における呈色剤の含有率は、一般に5〜60質量%、特に10〜50質量%程度である。
他の成分
感熱記録層には、記録像の保存安定性を高めるために保存性改良剤、及び記録感度を高めるために増感剤を含有させることもできる。
かかる保存性改良剤の具体例としては、例えば2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’−ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−(2−メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジグリシジル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、また2種類以上を併用することも可能である。
保存性改良剤の使用量は特に限定されないが、一般に感熱記録層全固形分に対して、1〜40質量%、特に2〜30質量%程度である。
増感剤の具体例としては、例えばステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、2−ナフチルベンジルエーテル、m−ターフェニル、p−ベンジルビフェニル、p−トリルビフェニルエーテル、ジ(p−メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−クロロフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−(3−メチルフェノキシ)エタン、p−メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4−ジ(フェニルチオ)ブタン、p−アセトトルイジド、p−アセトフェネチジド、N−アセトアセチル−p−トルイジン、ジ(β−ビフェニルエトキシ)ベンゼン、p−ジ(ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1−イソプロピルフェニル−2−フェニルエタン、シュウ酸ジ−p−クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル等が例示される。勿論、これらに限定されるものではなく、また2種類以上を併用することも可能である。
増感剤の使用量は特に限定されないが、一般に感熱記録層全固形分に対して、3〜40質量%、特に5〜30質量%程度である。
感熱記録層中には、必要により助剤としてカオリン、炭酸カルシウム、無定形シリカ、酸化チタン、水酸化アルミニウム、焼成カオリン、酸化亜鉛などの顔料、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの滑剤、および蛍光染料、紫外線吸収材、界面活性剤などを添加することもできる。
本発明の感熱記録層は、架橋剤を含有していないことが好ましい。
本発明の感熱記録体は、感熱記録層に架橋剤を含有しなくても、耐水性、印刷適性、耐スティッキング性等の性質に優れる。また、架橋剤を使用しない場合には、更に、感熱記録体の経時変色や黄変などの心配がなくなり、感熱記録体の生産工程において架橋に係る時間や長時間のムロ処理が不要となるなど、高い生産性も得られる。
感熱記録層の製造方法
感熱記録層は、一般に水を分散媒体とし、ロイコ染料、呈色剤、必要により増感剤、保存性改良剤等を共に、或いは別々にボールミル、アトライター、サンドミル等の攪拌・粉砕機により平均粒子径が2μm以下となるように、適宜分散剤を用いて微分散した後、前記溶解度パラメーターが12以上の共重合樹脂エマルジョン及び必要に応じて添加される他の接着剤などを添加して調製された感熱記録層用塗液を支持体上に乾燥後の塗布量が1〜15g/m程度、特に、2〜10g/m程度となるように塗布乾燥して形成される。
感熱記録層用塗液の塗布方法は、特に限定されず、例えば、エアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、グラビアコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング等の従来公知の塗布方法がいずれも採用できる。
下塗り層
本発明では、必要に応じ、支持体と感熱記録層との間に、記録感度及び記録走行性をより高めるために、下塗り層を設けることもできる。
下塗り層は、吸油量が70ml/100g以上、特に80〜150ml/100g程度の吸油性顔料、有機中空粒子及び熱膨張性粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに接着剤を主成分とする下塗り層用塗液を支持体上に塗布乾燥して形成される。ここで、上記吸油量はJIS K 5101−1991の方法に従い求められる値である。
上記吸油性顔料としては、各種のものが使用できるが、具体例としては、焼成カオリン、無定形シリカ、軽質炭酸カルシウム、タルク等の無機顔料があげられる。これら吸油性顔料の平均粒子径(レーザ回折式 粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)による50%値)は0.01〜5μm程度、特に0.02〜3μm程度であるのが好ましい。
吸油性顔料の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層全固形分に対して50〜95質量%、特に70〜90質量%程度であるのが好ましい。
また、有機中空粒子としては、従来公知のもの、例えば、膜材がアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等からなる中空率が50〜99%程度の粒子が例示できる。ここで中空率は(d/D)×100で求められる値である。該式中、dは有機中空粒子の内径を示し、Dは有機中空粒子の外径を示す。有機中空粒子の平均粒子径(レーザ回折式 粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)による50%値)は0.5〜10μm程度、特に1〜3μm程度であるのが好ましい。
上記有機中空粒子の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層全固形分に対して20〜90質量%、特に30〜70質量%程度であるのが好ましい。
なお、上記吸油性無機顔料を有機中空粒子と併用する場合、吸油性無機顔料と有機中空粒子とは上記使用量範囲で使用し、且つ吸油性無機顔料と有機中空粒子の合計量が下塗り層全固形分に対して、40〜90質量%、特に50〜80質量%程度であるのが好ましい。
熱膨張性粒子としては、各種のものが使用できるが、具体例としては、低沸点炭化水素をインサイト重合法により、塩化ビニリデン、アクリロニトリルなどの共重合物でマイクロカプセル化した熱膨張性微粒子等があげられる。低沸点炭化水素としては、例えば、エタン、プロパン等が挙げられる。
熱膨張性粒子の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層全固形分に対して1〜80質量%程度、特に10〜70質量%程度であることが好ましい。
接着剤としては、前記感熱記録層に使用される接着剤が適宜使用し得るが、特にデンプン−酢酸ビニルグラフト共重合体、各種ポリビニルアルコール、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスが好ましい。
各種ポリビニルアルコールとしては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
上記接着剤の使用割合は広い範囲で選択できるが、一般には下塗り層全固形分に対して5〜30質量%程度、特に10〜25質量%程度であることが好ましい。
下塗り層の塗布量は、乾燥重量で3〜20g/m程度、好ましくは5〜12g/m程度とするのが好ましい。
下塗り層用塗液の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、エアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、グラビアコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング等の従来公知の塗布方法がいずれも採用できる。
保護層
本発明においては、本発明の効果を阻害しない程度の範囲であれば、感熱記録層上に、成膜性を有する接着剤を主成分とする保護層を設けることができる。
かかる接着剤としては、たとえば酸化デンプン、エステル化デンプン、エーテル化デンプン等のデンプン類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系樹脂、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、スチレン・無水マレイン酸共重合体およびそのアルカリ塩、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体およびそのアルカリ塩、カゼイン、ゼラチン、酢酸ビニル樹脂系ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックス、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル樹脂系ラテックス等が挙げられる。
保護層は、一般に水を媒体とし、上記接着剤、及び必要により添加される顔料や各種助剤を、混合攪拌して得られる保護層用塗液を、感熱記録層上に塗布、乾燥することにより、得ることができる。
顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、無定形シリカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリンなどの無機顔料、ナイロン樹脂フィラー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー、生デンプン粒子などの有機顔料が挙げられる。
顔料の含有量は特に限定されないが、好ましくは、保護層全固形量に対して5〜80質量%程度、更に好ましくは10〜60質量%程度である。
助剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックスなどの滑剤、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、スルホン変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどの界面活性剤、グリオキザール、ホウ酸、ジアルデヒドデンプン、メチロール尿素、エポキシ系化合物、ヒドラジン系化合物などの耐水化剤(架橋剤)、紫外線吸収剤、蛍光染料、着色染料、離型剤、酸化防止剤などが挙げられる。助剤の使用量は、広い範囲から適宜設定することができる。
保護層用塗液の塗布方法は特に限定されず、例えばエヤーナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング等の公知の手段を用いることができる。
保護用塗液の塗布量は、乾燥重量で0.5〜3g/m程度、好ましくは0.8〜2g/m程度である。
感熱記録体
本発明の感熱記録体は、感熱記録層用塗液を支持体の一方の面、または両面に塗布乾燥することにより得られる。所望に応じて、保護層用塗液を順次感熱記録層上に塗付乾燥する等の方法で形成してもよい。
なお、支持体としては紙(中性紙、酸性紙)、プラスチックフィルム、合成紙、不織布、金属蒸着物等のうちから適宜選択して使用される。
下塗り層を備えた感熱記録体を製造する場合は、下塗層用塗液を支持体に塗布乾燥して下塗層を形成し、得られた下塗層上に感熱記録層を順次設ければよい。
本発明の感熱記録体は、優れた耐水性、印刷適性、耐スティキング性、及び、耐擦れ汚れ性を有し、更に優れた記録感度を有している。
特に、本発明の感熱記録体は、保護層を備えていないことが好ましい。
保護層を設けないことにより、生産性が高く、更に記録感度に優れた感熱記録体を得ることができる。
一般に保護層は耐水性、耐スティッキング性、印刷適性、耐擦れ汚れ性の改善等を目的に設けられているが、本発明の感熱記録体は、保護層を備えていなくても、それらの特性に優れている。
なお、本発明には、各種層を形成した後或いは全ての層を形成した後に、スーパーカレンダー掛け等の平滑化処理を施したり、必要に応じて感熱記録体の支持体の裏面側に保護層、印刷用塗被層、磁気記録層、帯電防止層、熱転写記録層、インクジェット記録層等を設けたり、支持体裏面に粘着剤処理を施して粘着ラベルに加工したり、感熱記録体にミシン目を入れたりするなど、感熱記録体製造分野における各種の公知技術が必要に応じて付加し得るものである。更に、感熱記録体における感熱記録層を多色記録が可能な構成とすることもできる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。
なお、例中の部及び%は、特に断らない限りそれぞれ質量部及び質量%を示す。
例中の溶解度パラメーターの算出は、Journal of Technology Coatings VOL.55、No696、P.100−101の記載に従い、下記式に基づいて行った。
式2
Figure 0004636017
また、ガラス転移温度は、乾燥後の厚さが約50μmとなるように、共重合樹脂エマルジョンをアルミ箔上に塗布、乾燥(60℃、5時間乾燥)し、得られた共重合樹脂フィルムのガラス転移温度を、示差熱分析計(セイコー電子工業社製)にて測定して求めた。
実施例1
(1a)A液調製(ロイコ染料の分散液)
3−ジ(N−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20部、メチルセルロースの5%水溶液5部及び水15部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕した。
(1b)B液調製(呈色剤の分散液)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン20部、メチルセルロースの5%水溶液5部及び水15部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が1.0μmになるまで粉砕した。
(1c)感熱記録層用塗液の調製
カオリン(商品名:UW−90、EC社製)の50%分散液60部、A液20部、B液50部、ステアリン酸亜鉛の水分散液(商品名:ハイドリンZ−7−30、固形分31.5%、中京油脂社製)13部、共重合樹脂(共重合成分:(メタ)アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸の割合:共重合樹脂全質量に対して5質量%、溶解度パラメーター:12.8、ガラス転移温度:50℃、平均粒子径:230nm)のエマルジョン(商品名:OT1043Z−1、濃度25%、三井化学社製)80部、完全ケン化ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、重合度1700、クラレ社製)の10%水溶液40部からなる組成物を混合攪拌して感熱記録用塗液を得た。
(1d)感熱記録体の作成
64g/mの上質紙(中性紙)の一方の面に上記(1c)で調製した感熱記録層用塗液を乾燥後の塗布量が5g/mとなるように塗布乾燥して感熱記録層を形成した後、スーパーカレンダー処理を施し感熱記録体を得た。
実施例2
感熱記録層用塗液において、ステアリン酸亜鉛の水分散液の代わりに低分子量ポリエチレンエマルジョン(商品名:ケミパールW400、融点110℃、平均粒子径4μm、濃度40%、三井化学社製)を10部使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
実施例3:
感熱記録層用塗液において、完全ケン化ポリビニルアルコールの代わりにケイ素変性ポリビニルアルコール(商品名:R−1130、重合度1700、クラレ社製)の10%水溶液40部を使用し、ステアリン酸亜鉛の水分散液の代わりに低分子量ポリエチレンエマルジョン(商品名:ケミパールW400、融点110℃、平均粒子径4μm、濃度40%、三井化学社製)を10部使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
実施例4
(4a)下塗り層用塗液の調製
焼成カオリン(商品名:アンシレックス、EC社製、吸油量90ml/100g、平均粒子径:0.6μm)30%分散液60部、完全ケン化ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、重合度1700、クラレ社製)の10%水溶液10部、SBRラテックス(商品名:L−1571、濃度48%、旭化成社製)10部からなる組成物を混合攪拌して下塗り用塗液を得た。
(4b)感熱記録体の作成
前記(4a)の下塗り層用塗液を、支持体と感熱記録層の間に、乾燥後の塗布量が10g/mとなるように塗布、乾燥して下塗り層を設けた以外は、実施例3と同様にして、感熱記録体を得た。
実施例5
感熱記録層用塗液において、低分子量ポリエチレンエマルジョン(商品名:ケミパールW400、前出)の代わりに低分子量ポリエチレンエマルジョン(商品名:SNコート287、融点80℃、平均粒子径0.2μm、濃度40%、サンノプコ社製)を使用した以外は実施例3と同様にして感熱記録体を得た。
実施例6
感熱記録層用塗液において、低分子量ポリエチレンエマルジョン(商品名:ケミパールW400、前出)の代わりに低分子量ポリエチレンエマルジョン(商品名:ハイドリンP―7、融点54℃、平均粒子径0.85μm、濃度30%、中京油脂社製)を使用した以外は実施例3と同様にして感熱記録体を得た。
実施例7
感熱記録層用塗液において、共重合樹脂エマルジョンの量を450部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
実施例8
感熱記録層用塗液において、完全ケン化ポリビニルアルコール10%水溶液の量を5部に変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
実施例9
感熱記録層用塗液において、完全ケン化ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、前出)の代わりに完全ケン化ポリビニルアルコール(商品名:PVA105、重合度500、クラレ社製)の20%水溶液を50部使用した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
実施例10
感熱記録層用塗液において、完全ケン化ポリビニルアルコールを使用しなかった以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
実施例11
感熱記録層用塗液において、架橋剤としてアルデヒド化合物(商品名:グリオキザール、固形分濃度40%)を2部添加した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
比較例1
感熱記録層用塗液において、共重合樹脂エマルジョン(商品名:OT1043Z−1、前出)の代わりにスチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1571、濃度48%、溶解度パラメーター:8.4、旭化成社製)を40部使用した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
比較例2
感熱記録層用塗液において、共重合樹脂エマルジョン(商品名:OT1043Z−1、前出)の代わりに、溶解度パラメーター10.56である共重合樹脂エマルジョン(商品名:AM2250、濃度52%、昭和高分子社製)を38部使用した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
比較例3
感熱記録層用塗液において共重合樹脂エマルジョン(商品名:OT1043Z−1、前出)を使用せず、完全ケン化ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、前出)の水溶液を240部使用した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
比較例4
(4a’)保護層用塗液の調製
カオリン(商品名:UW−90、前出)の50%分散液65部、低分子量ポリエチレンエマルジョン(商品名:ケミパールW400、前出)8部、共重合樹脂のエマルジョン(商品名:OT1043Z−1、前出)260部からなる組成物を混合攪拌して保護層用塗液を得た。
(4b’)感熱記録体の作成
64g/mの上質紙(中性紙)の一方の面に比較例1で得られた感熱記録層用塗液を乾燥後の塗布量が5g/mとなるように塗布乾燥して感熱記録層を形成した後、上記(4a’)の保護層用塗液を乾燥後の塗布量が3g/mとなるように塗布乾燥して保護層を形成した後、スーパーカレンダー処理を施し感熱記録体を得た。
評価
かくして得られた15種の感熱記録体について、下記の物性を測定し、その結果を表1に示した。
1.耐水性
感熱記録体を水に5秒浸け、その後引き上げ、そのまま直ちに、感熱記録層表面を指で10回擦り、表面状態を評価した。
○:全く変化がない
○’:少し表面が変化していたが、実用上問題のないレベルである
×:感熱記録層の脱落が大きい
2.印刷適性
オフセット印刷機(機種名:MVF−18B、ミヤコシ社製)で、4色のインキ(T&K RNCプロセス TOKA社製)を使用して、100m/min.の速度で10分間、印刷をおこなった時の、感熱記録体における転写したインキ濃度(インキ着肉性)と、インキ濃度の均一性(印刷平滑性)とから、印刷適性を評価した。
○:印刷適性が特に優れる
○’:印刷適性が優れる
×:印刷適性が劣る
3.耐擦れ汚れ性
感熱記録体の感熱記録層表面を、さじ(タイトプレートタイプ、SUS410製)で引っかき、発色の程度を評価した。発色は引っかきの熱によって起こるが、引っかき(擦れ)に対する耐性があると熱の発生が少なく発色が起こらない。
○:全く発色しない
○’:少し発色するが、実用上問題のないレベルである
△:発色し、実用上問題となるレベルである
×:発色がはげしい
4.記録濃度
感熱評価機(商品名:TH−PMD、大倉電気社製)を用い、印加電圧25V、印加エネルギー0.24mj/dotにて各感熱記録体の感熱記録層表面に印字し、印字部をマクベス濃度計(RD−914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。
5.耐スティッキング性
感熱評価機(商品名:FR410 TASSHA、サトー社製)を用い、エネルギーレベルA3、4インチ/秒の速度で感熱記録体にテストパターンを記録し、発生したスティッキングの度合いを印字音及び印字面で判定した。
◎:スティッキングによる印字音はほとんどなく、印字面への影響もない
○:スティッキングによる印字音は若干認められるが、印字面への影響はない
△:スティッキングによる印字音は大きく、印字面でも白スジが若干みられる
×:スティッキングによる印字音が激しくかつ、印字面で白スジが多発している
6.黄変
感熱記録体を40℃、50%RHの条件下で1月間放置し、表面の状態を観察した。
○:元の状態を維持している
△:元の状態から少し変化しているが、実用上問題のないレベルである
×:変化が大きい
Figure 0004636017

Claims (9)

  1. 支持体、及び、感熱記録層を備えた感熱記録体において、
    感熱記録層は、ロイコ染料、呈色剤及び共重合樹脂エマルジョンを含有しており、
    前記共重合樹脂エマルジョンを構成する共重合樹脂は、
    (1)(i)(メタ)アクリロニトリル及び(ii)(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体を含み、且つ、
    (2)溶解度パラメーターが12.0以上であり、
    前記(ii)のビニル単量体は、少なくとも1種のカルボキシル基含有ビニル単量体を含み、
    前記カルボキシル基含有ビニル単量体の割合が、前記共重合樹脂の全質量中、1〜10質量%である感熱記録体であって、
    前記共重合樹脂エマルジョンを構成する共重合樹脂のガラス転移温度が、30℃を超えて100℃以下である感熱記録体。
  2. 前記共重合樹脂エマルジョンの乾燥後の固形分の量が、感熱記録層全固形分に対して10〜50質量%である請求項1に記載の感熱記録体。
  3. 前記感熱記録層が、更に、重合度が1000以上であるポリビニルアルコールを含有している請求項1に記載の感熱記録体。
  4. 前記ポリビニルアルコールがケイ素変性ポリビニルアルコールである請求項に記載の感熱記録体。
  5. 前記ポリビニルアルコールの量が、感熱記録層全固形分に対して1〜10質量%である請求項に記載の感熱記録体。
  6. 前記感熱記録層が、更に、ポリオレフィン重合樹脂エマルジョンを、乾燥後の固形分の量で、感熱記録層全固形分に対して0.5〜15質量%含有している請求項1に記載の感熱記録体。
  7. 前記ポリオレフィン重合樹脂エマルジョンを構成するポリオレフィン重合樹脂の融点が70℃以上である請求項に記載の感熱記録体。
  8. 前記感熱記録層が、架橋剤を含有していない請求項1に記載の感熱記録体。
  9. 保護層を備えていない、請求項1に記載の感熱記録体。
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