JP4633880B2 - セラミックグリーンシート製造用工程フィルム及びその製造方法 - Google Patents

セラミックグリーンシート製造用工程フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックグリーンシート製造用工程フィルム及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、セラミックコンデンサや積層インダクタ素子などに用いられるセラミックグリーンシートを製造する際に使用され、基材フィルムとの密着性が良好なシリコーン樹脂組成物の硬化層が形成され、セラミックスラリー塗工性及びセラミックグリーンシート剥離性に優れると共に、従来にない高平坦性を有する工程フィルム、及びこのものを効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に電子機器においては、最近の小型化、軽量化に対する市場の要請に伴い、それを構成する部品の薄膜化や軽量化が必要となってきている。
例えば、これまでリード付き部品であったコンデンサやインダクタ素子などの電子部品は、所定のパターン形状を有するセラミックス層と導電層とからなる積層体を同時に焼成して内部導体を備えたモノリシック構造を形成させる技術が実用化されたことにより、小型化することが可能になってきたが、現在、一層の小型化が要求されてきている。
セラミックコンデンサを製造するには、一般にまず、チタン酸バリウムのようなペロブスカイト型結晶構造をもつ化合物などの高誘導率セラミックス粉体と、バインダーや有機溶剤とを混合してスラリーを調製し、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの工程フィルム上に塗布、乾燥してセラミックグリーンシートを作製する。次いで、このグリーンシートに導体ペーストを用いて、スクリーン印刷などにより電極パターンを形成したのち、該セラミックグリーンシートを工程フィルムから剥離する。次に、この印刷されたセラミックグリーンシートを、所定の順序で多数積層し、加熱圧着後、裁断して所望のチップ形状とした後、焼成処理して、焼結を行う方法が用いられる。
【0003】
一方、積層インダクタ素子の製造においては、一般にまず、フェライトなどの磁性セラミックス粉体を用い、前記と同様にして工程フィルム上にセラミックグリーンシートを作製する。次いで、このグリーンシートに、導体ペーストを用いて、スクリーン印刷などによりコイルパターンを形成したのち、該セラミックグリーンシートを工程フィルムから剥離する。次に、前記と同様にしてチップ形状の積層インダクタ素子を作製する方法が用いられる。
このようなチップ形状のセラミックコンデンサや積層インダクタ素子は、前述のように、小型化ニーズの対応により、一段と小型のものが要求され、これに伴い、上記セラミックグリーンシートの厚さも、現在は5〜20μmであるが、さらに薄いものが要求されている。
【0004】
グリーンシートの厚さが、このように薄くなると、工程フィルムも従来のものでは対応することができず、さらに高性能のフィルム、すなわち、セラミックスラリー塗工性及びセラミックグリーンシート剥離性に優れると共に、熱収縮しわなどのない極めて高い平坦性を有する工程フィルムが必要となる。
従来、工程フィルムとしては、一般に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)に、熱硬化付加反応型シリコーン樹脂剥離剤により、剥離処理を施したものが用いられている。しかしながら、該熱硬化付加反応型シリコーン樹脂剥離剤は、安定な硬化膜を得るためには、通常140℃以上の高温で架橋しなければならず、その結果、剥離処理工程において、PETフィルムに熱による収縮が生じるのを免れない。PETフィルムに熱収縮しわがあると、セラミックスラリーの成膜時に、均質な薄膜シート化ができないという問題が生じる。
【0005】
そこで、熱収縮しわの発生をできるだけ抑制するために、熱硬化付加反応型シリコーン樹脂剥離剤による加工処理を、低温(110〜130℃)条件で加工速度を遅くして行うことが試みられている。しかしながら、この場合、生産性が悪いのみならず、硬化が不充分であって、シリコーン樹脂のPETフィルムに対する密着安定性やセラミックスラリーの塗工性などに問題が生じる。
また、低温硬化可能なシリコーン樹脂剥離剤として、エポキシ基、アクリル基、メルカプト基などの官能基をもつ単独紫外線硬化型シリコーン樹脂剥離剤が知られているが、これでは、均質なシリコーン樹脂塗工面が得にくい上に、セラミックグリーンシートの剥離性が悪く、かつ不安定である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、セラミックコンデンサや積層インダクタ素子などに用いられるセラミックグリーンシートを製造する際に使用され、基材フィルムとの密着性が良好なシリコーン樹脂組成物の硬化層が形成され、セラミックスラリー塗工性及びセラミックグリーンシート剥離性に優れると共に、従来にない高平坦性を有するセラミックグリーンシート製造用工程フィルムを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の優れた機能を有するセラミックグリーンシート製造用工程フィルムを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、剥離剤として光増感剤を含む付加反応型シリコーン樹脂組成物を用い、基材フィルム上に特定の厚さに塗工し、所定の温度で加熱処理後、インラインで紫外線照射して硬化させることにより、基材フィルムとの密着性に優れるシリコーン樹脂組成物の硬化層が形成され、この硬化層を有するフィルムは、工程フィルムとしてその目的に適合しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)ポリエチレンテレフタレートの基材フィルムと、その上に設けられた光増感剤を含む付加反応型シリコーン樹脂組成物の硬化層とを有する工程フィルムであって、上記硬化層が、光増感剤を含有し、かつ付加反応型シリコーン樹脂としてヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンを含有する固形分換算塗工量0.05〜0.12g/m 2 付加反応型シリコーン樹脂組成物層を40〜120℃の温度で加熱処理後、紫外線照射処理してなるものであることを特徴とするセラミックグリーンシート製造用工程フィルム、
(2)付加反応型シリコーン樹脂として、ヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンと、ビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンとの混合物を含有することを特徴とする上記(1)のセラミックグリーンシート製造用工程フィルム、
(3)付加反応型シリコーン樹脂組成物が、触媒として白金系化合物を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)のセラミックグリーンシート製造用工程フィルム、
(4)ポリエチレンテレフタレートの基材フィルム上に、光増感剤を含有し、かつ付加反応型シリコーン樹脂としてヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンを含有する固形分換算塗工量0.05〜0.12g/m 2 の付加反応型シリコーン樹脂組成物層を設けた後、40〜120℃の温度で加熱処理し、次いで該シリコーン樹脂組成物層に紫外線を照射して硬化させることを特徴とするセラミックグリーンシート製造用工程フィルムの製造方法
(5)付加反応型シリコーン樹脂として、ヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンと、ビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンとの混合物を含有することを特徴とする上記(4)のセラミックグリーンシート製造用工程フィルムの製造方法、及び
(6)付加反応型シリコーン樹脂組成物が、触媒として白金系化合物を含有することを特徴とする上記(4)又は(5)のセラミックグリーンシート製造用工程フィルムの製造方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミックグリーンシート製造用工程フィルム(以下、単に「本発明の工程フィルム」と称することがある。)は、基材フィルムと、その上に設けられたシリコーン樹脂組成物の硬化層を有するものであって、該基材フィルムとしては、特に制限はなく、セラミックグリーンシート製造用工程フィルムに、基材フィルムとして使用しうる従来公知のものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような基材フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリメチルペンテンなどのポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルムなどを挙げることができるが、これらの中でポリエステルフィルムが好ましく、特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。この基材フィルムとしては、通常12〜125μmの厚みを有するものが用いられる。
【0009】
本発明の工程フィルムにおいて、前記基材フィルム上に設けられるシリコーン樹脂組成物の硬化層は、光増感剤を含む付加反応型シリコーン樹脂組成物層を、加熱処理と紫外線照射処理を併用して硬化させたものである。
従来の熱硬化付加反応型シリコーン樹脂剥離剤においては、安定な硬化膜を得るためには高温処理が必要であり、低温処理を行うと、硬化が不充分となって、良好な性能が得られない。その対策としては、触媒添加量を増やすことや、加工速度を落とすことなどが挙げられるが、触媒添加量の増加はポットライフに影響を与えるし、加工速度を落とすことは、生産性の低下につながる。
これに対し、本発明は、従来の熱硬化付加反応型シリコーン樹脂剥離剤に光増感剤を加え、熱硬化と紫外線硬化とを併用することにより、基材フィルムとの密着性の良好なシリコーン樹脂組成物の硬化層が形成され、かつ熱収縮しわなどのない極めて高い平坦性を有すると共に、優れたセラミックスラリー塗工性と安定でかつ良好なセラミックグリーンシート剥離性を有する工程フィルムが得られる。
【0010】
本発明で使用される光増感剤を含む付加反応型シリコーン樹脂組成物は、付加反応型シリコーン樹脂(例えば官能基を有するポリジメチルシロキサン等)と架橋剤(例えばポリメチルハイドロジェンシロキサン等のシリコーン樹脂等からなる架橋剤)からなる主剤に、触媒(例えば白金系触媒)と光増感剤を加えたものであり、更に所望により、付加反応抑制剤、シリコーンガムやシリコーンワニス等の剥離調整剤、密着向上剤などを加えてもよい。
付加反応型シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えば従来の熱硬化付加反応型シリコーン樹脂剥離剤として慣用されているものを用いることができる。この付加反応型シリコーン樹脂としては、例えば分子中に、官能基としてアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの中から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。上記の分子中に官能基としてアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの好ましいものとしては、ビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサン、ヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサン及びこれらの混合物などが挙げられるが、これらの中で、特にヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンが、硬化性に優れると共に、安定でかつ良好なグリーンシート剥離性が得られる点から好適である。
【0011】
また架橋剤としては、例えば一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)などが挙げられる。架橋剤の使用量は、付加反応型シリコーン樹脂100重量部に対し、0.1〜100重量部、好ましくは0.3〜50重量部の範囲で選定される。
硬化膜の剥離特性を調節する作用を有するシリコーン樹脂としては、例えば分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基及び水素原子を有しないポリオルガノシロキサン、具体的には、トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサン、ジメチルフェニルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0012】
また、触媒としては、通常白金系化合物が用いられる。この白金系化合物の例としては、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム触媒などが挙げられる。触媒の使用量は、付加反応型シリコーン樹脂と架橋剤の合計量に対し、白金系金属として1〜1000ppm程度である。
【0013】
一方、付加反応型シリコーン樹脂組成物において用いられる光増感剤としては特に制限はなく、従来紫外線硬化型樹脂に慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。この光増感剤としては、例えばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、α−ジケトン類、α−ジケトンジアルキルアセタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、その他化合物などが挙げられる。
ここで、ベンゾイン類の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ポリジメチルシロキサンの両末端にベンゾインがエーテル結合した化合物などが、ベンゾフェノン類の例としては、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、トリメチルシリル化ベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノンなどが、アセトフェノン類の例としては、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、プロピオフェノンなどが、α−ヒドロキシケトン類の例としては、2−ヒドロキシ−1−(4−イソプロピル)フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが、α−アミノケトン類の例としては、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オンなどが、α−ジケトン類の例としてはベンジル、ジアセチルなどが、α−ジケトンジアルキルアセタール類の例としてはベンジルジメチルアセタール、ベンジルジエチルアセタールなどが、アントラキノン類の例としては、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノンなどが、チオキサントン類の例としては、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。また、その他化合物としては、例えばトリフェニルアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エステルなどの第三級アミン類や、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などがある。
【0014】
これらの光増感剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、主剤として用いられる前記付加反応型シリコーン樹脂と架橋剤の合計量100重量部に対し、通常0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部の範囲で選定される。
さらに、付加反応抑制剤は、該組成物に室温における保存安定性を付与するために用いられる成分であり、具体例としては、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、テトラビニルシロキサン環状体、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0015】
本発明は、適当な有機溶剤中に、前記の光増感剤を含む付加反応型シリコーン樹脂組成物に、所望により用いられる各種添加成分を、それぞれ所定の割合で加え、塗工可能な粘度を有する塗工液を調製する。この際、有機溶剤としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えばトルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素化合物を始め、酢酸エチル、メチルエチルケトン及びこれらの混合物などが用いられる。本発明においては、このようにして調製した塗工液を、前記の基材フィルムの片面又は両面に、例えばグラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法などにより塗工し、固形分換算塗工量が0.01〜0.2g/m2の範囲にある光増感剤を含む付加反応型樹脂組成物層を設ける。この塗工量が0.01g/m2未満ではセラミックグリーンシートの剥離性が悪く、一方0.2g/m2を超えるとセラミックスラリー塗工時にハジキが発生するなど、セラミックスラリーの塗工性が低下する。セラミックグリーンシートの剥離性及びセラミックスラリーの塗工性などを考慮すると、この塗工量は、0.05〜0.12g/m2の範囲が好ましく、特に0.07〜0.1g/m2の範囲が好適である。
【0016】
本発明においては、この付加反応型シリコーン樹脂組成物層が設けられた基材フィルムを、まず40〜120℃の範囲の温度で加熱処理して、該シリコーン樹脂組成物層を予備硬化させる。この加熱処理温度が40℃未満では乾燥や予備硬化が不充分となるおそれがあり、一方120℃を超えると熱収縮しわが生じ、本発明の目的が達せられない。乾燥や予備硬化及び熱収縮しわの発生などを考慮すると、この加熱処理温度は、50〜100℃の範囲が好ましい。
本発明においては、このようにして加熱処理された該シリコーン樹脂組成物の予備硬化層に、インラインで紫外線照射を行い、完全に硬化させる。この際、紫外線ランプとして、従来公知のもの、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、無電極紫外線ランプなどを用いることができるが、紫外線発光効率、赤外線照射量などから、基材フィルムに対する熱損傷が少なく、かつシリコーン樹脂組成物層の硬化性が良いことなどから、無電極紫外線ランプが好ましい。この無電極紫外線ランプには、フュージョン社製のDバルブ、Hバルブ、H+バルブ、Vバルブなどがあるが、特にHバルブ及びH+バルブが好適である。なお、ここで紫外線照射出力としては、適宜選定すればよいが、通常は30W/cm〜600W/cm、好ましくは50W/cm〜360W/cmである。
【0017】
紫外線照射処理時の温度については特に制限はなく、インラインにおいて紫外線照射処理を行うのであれば、加熱処理直後の加熱された状態や、室温状態などのいずれであってもよい。
このようにして、基材フィルムの片面又は両面に、付加反応型シリコーン樹脂組成物の硬化層が、基材フィルムとの密着性良く形成され、熱収縮しわなどがなく、極めて高い平坦性を有すると共に、セラミックスラリーの塗工性及びセラミックグリーンシートの剥離性に優れる本発明の工程フィルムが得られる。
本発明の工程フィルムは、セラミックグリーンシート製造用として用いられ、グリーンシートの厚みが好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは6μm以下のセラミックグリーンシート製造用として好適である。
【0018】
本発明の工程フィルムが適用されるセラミックグリーンシートとしては、例えばチップ形状のセラミックコンデンサに用いられる高誘電率のセラミックグリーンシートや、チップ形状の積層インダクタ素子に用いられる磁性セラミックグリーンシートなどが挙げられるが、特に、小型携帯機器向けのチップサイズが1005形状の極小サイズのセラミックコンデンサに用いられるグリーンシート製造用に、本発明の工程フィルムを適用するのが望ましい。
セラミックコンデンサに用いられるセラミックグリーンシートにおける高誘電率のセラミックとしては、ペロブスカイト型結晶構造をもつ化合物、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3 )を始め、PbTiO3 ,KNbO3 ,Pb(Ni1/3 Nb2/3 )O3 など、さらにはCd2 Nb2 7 ,PbNb2 6 ,PbTa2 6 などが挙げられる。
【0019】
一方、積層インダクタ素子に用いられるセラミックグリーンシートにおける磁性セラミックとしては、例えばZn系フェライト、Ni系フェライト、Mn系フェライト、Mg系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Mg−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn系フェライト、Mn−Mg−Zn系フェライトなどのスピネル型フェライト、あるいは六方晶型フェライトなどが挙げられる。
セラミックグリーンシートを作製するには、例えばセラミック粉体と適当な溶剤とポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ブチラール系バインダー、アクリル系バインダーなどのバインダーとを混合して、スラリーを調製し、これをドクターブレードなどを用いて、本発明の工程フィルム上に塗工し、乾燥処理して、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは6μm以下の厚みのセラミックグリーンシートを形成させる。
【0020】
セラミックコンデンサに用いられるグリーンシートの場合、セラミック粉体として前記の高誘電率のセラミック粉体を用い、形成されたグリーンシートに、金属導電体を含む印刷導体ペーストを用い、スクリーン印刷などにより、所望の電極パターン(内部電極パターン)を形成させる。このセラミックグリーンシートを工程フィルムから剥離し、通常100枚以上積層し、加熱圧着後、裁断して所望のチップ形状としたのち、焼成を行い、焼結することにより、内部電極を備えたモノリシック構造のチップ状セラミックコンデンサが得られる。
積層インダクタ素子の場合は、セラミック粉体として前記の磁性セラミック粉体を用い、上記のセラミックコンデンサの場合と同様にして、セラミックグリーンシートに所望のコイルパターン(内部導体パターン)を形成させたのち、同様の操作を行うことにより、内部導体を備えたモノリシック構造のチップ状積層インダクタ素子が得られる。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
なお、実施例及び比較例で得られた工程フィルムの諸特性を、以下に示す要領に従い評価した。
(1)硬化性
工程フィルムにおける硬化被膜表面を指で強く10回擦り、曇り(スミアー)や脱落(ラブオフ)を観察し、下記の判定基準で評価した。
◎:曇りや脱落が全くない。
○:曇りが僅かにみられる(実用上問題なし)。
△:曇り及び脱落が少しみられる(実用上問題となる場合がある)。
×:曇りが多くみられ、脱落もかなり多く起こる(実用上問題がある)。
××:脱落が多く発生し、硬化不充分である。
【0022】
(2)シリコーン樹脂非移行性
工程フィルムにおける硬化被膜上にPETフィルムを貼り合わせ、1.97N/mm2 の荷重をかけ、24時間放置したのち、PETフィルムを剥がし、その貼り合わせ面にマジックインキで描画し、ハジキ具合により、シリコーン樹脂の有無を確認し、シリコーン樹脂非移行性を下記の判定基準に従い評価した。
◎:全く移行していない。
○:僅かに移行がみられる(実用上問題なし)。
△:若干移行がみられる(実用上問題となる場合がある)。
×:かなり移行がみられる(実用上問題あり)。
××:非常に多くの移行がみられる。
【0023】
(3)平坦性〔熱収縮しわ〕
工程フィルムにおけるしわを目視で観察すると共に、硬化被膜上に厚みが6μmとなるようにセラミックスラリーを塗工し、均一塗工が可能かどうかを調べ、下記の判定基準に従い、平坦性を評価した。
◎:極めて良好。
○:良好(実用上問題なし)。
△:やや劣る(実用上問題となる場合がある)。
×:劣る(実用上問題あり)。
××:非常に劣る
(4)硬化被膜の密着性(70日後)
シリコーン処理後70日間経過した工程フィルムにおける硬化被膜表面を、指で強く10回擦り、PETフィルムからの硬化被膜の脱落の有無を観察し、硬化被膜の密着性を下記の判定基準に従い評価した。
◎:脱落が全くみられない。
○:脱落が僅かにみられる(実用上問題なし)。
△:脱落が少しみられる(実用上問題となる場合がある)。
×:脱落がかなり多くみられる(実用上問題がある)。
××:脱落が多くみられる。
【0024】
(5)BaTiO3 スラリー塗工性、フェライトスラリー塗工性
チタン酸バリウム(BaTiO3 )粉体又はNi−Cu−Zn系フェライト粉体100重量部、ポリビニルブチラール10重量部、ジブチルフタレート10重量部に、トルエンとエタノールとの混合液を加え、ボールミルにて混合、分散させて、BaTiO3 スラリー及びフェライトスラリーをそれぞれ調製した。各セラミックスラリーを、工程フィルム上に乾燥後の厚みが6μmとなるように均一に塗工し、乾燥処理してそれぞれグリーンシートを作製した。この際、スラリー塗工時の濡れ性(ハジキ、塗工ムラ)を目視観察し、下記の判定基準に従い、BaTiO3 スラリー塗工性及びフェライトスラリー塗工性を評価した。
◎:極めて良好。
○:良好(実用上問題なし)。
△:やや劣る(実用上問題となる場合がある)。
×:劣る(実用上問題あり)。
××:非常に劣る。
【0025】
(6)BaTiO3 グリーンシート剥離性、フェライトグリーンシート剥離性
上記(6)と同様にして、それぞれグリーンシートを作製し、各グリーンシート上に粘着テープ(日東電工社製、商品名:31Bテープ)を貼り合わせる。各試料を23℃、65%RH条件下に24時間放置後、20mm幅に切断し、引張り試験機を用いて180°の角度で100m/分の速度で工程フィルム側を剥がし、剥離するに要する力(剥離力)をそれぞれ測定した。また、各グリーンシートを塗工機により作製し、剥離フィルムからの剥離性を下記の判定基準に従って評価した。
◎:極めて良好。
○:良好(実用上問題なし)。
△:やや劣る(実用上問題となる場合がある)。
×:劣る(実用上問題あり)。
××:非常に劣る。
【0026】
実施例1
ヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンと架橋剤(ポリメチルハイドロジェンシロキサン)からなる主剤を主成分とした付加反応型シリコーン樹脂剥離剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、商品名:LTC−760A)100重量部に、白金系触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、商品名:SRX−212)を2重量部加えた付加反応型シリコーン樹脂組成物の、該主剤100重量部当たり、光増感剤のアセトフェノン1重量部を添加し、トルエンを主成分とする有機溶剤で希釈して、固形分濃度1重量%の塗工液を調製した。
この塗工液を、厚み38μmの二軸延伸PETフィルム上に、乾燥後の厚みが0.1μm(固形分塗工量0.1g/m2 )になるようにグラビアコート法により均一に塗工した。次いで、50℃の熱風循環式乾燥機にて20秒間加熱処理したのち、直ちにフュージョンHバルブ240W/cm1灯取付のコンベア式紫外線照射機(熱線カットフィルターはハンディフュージョンタイプを使用)により、コンベアスピード40m/分の条件で紫外線照射し、シリコーン樹脂組成物を硬化させ、工程フィルムを作製した。
この工程フィルムの諸特性を第1表に示す。
【0027】
実施例2
実施例1において、熱風循環式乾燥機の温度を90℃に変えた以外は、実施例1と同様にして工程フィルムを作製した。
得られた工程フィルムの性能は実施例1と同様であった。このフィルムの諸特性を第1表に示す。
【0028】
参考例1
ビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンと架橋剤(ポリメチルハイドロジェンシロキサン)からなる主剤を主成分とした付加反応型シリコーン樹脂剥離剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、商品名:SRX−211)100重量部に、白金系触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、商品名:SRX−212)を2重量部加えた付加反応型シリコーン樹脂組成物の、該主剤100重量部当たり、光増感剤のアセトフェノン1重量部を添加し、トルエンを主成分とする有機溶剤で希釈して、固形分濃度1重量%の塗工液を調製した。この塗工液を用い、実施例2と同様にして工程フィルムを作製した。この工程フィルムの諸特性を第1表に示す。
【0029】
実施例
参考例1で用いたビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンを含む付加反応型シリコーン樹脂組成物と実施例1で用いたヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンを含む付加反応型シリコーン樹脂組成物との重量比1:1の混合物からなる付加反応型シリコーン樹脂組成物の、該主剤100重量部当たり、光増感剤のアセトフェノン1重量部を添加し、トルエンを主成分とする有機溶剤で希釈して、固形分濃度1重量%の塗工液を調製した。この塗工液を用い、実施例2と同様にして工程フィルムを作製した。この工程フィルムの諸特性を第1表に示す。
【0030】
比較例1
参考例1で用いた付加反応型シリコーン樹脂組成物を、トルエンを主成分とする有機溶剤で希釈して、固形分濃度1重量%の塗工液を調製した。この塗工液を、実施例1と同様にして二軸延伸PETフィルム上に塗工し、110℃の熱風循環式乾燥機にて30秒間加熱処理し、工程フィルムを作成した。この工程フィルムの諸特性を第1表に示す。
【0031】
比較例2
比較例1において、熱風循環式乾燥機の温度を150℃に変えた以外は、比較例1と同様にして工程フィルムを作製した。
この工程フィルムの諸特性を第1表に示す。
比較例3
エポキシ基を官能基とするポリジメチルシロキサンを主成分とした既存の紫外線硬化型エポキシ開環重合型シリコーン樹脂剥離剤(東芝シリコーン社製、商品名:UV9300)を、二軸延伸PETフィルム上に塗工したのち、加熱処理は行わないで、実施例1と同じ条件で紫外線照射を行い、シリコーン樹脂剥離剤を硬化させ、工程フィルムを作製した。 この工程フィルムの諸特性を第1表に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0004633880
【0033】
【表2】
Figure 0004633880
【0034】
実施例
実施例2において、固形分塗工量が0.04g/m2 になるように塗工した以外は、実施例2と同様にして工程フィルムを作製した。これらの結果を第2表に示す。
実施例
実施例2において、固形分塗工量が0.06g/m2 になるように塗工した以外は、実施例2と同様にして工程フィルムを作製した。これらの結果を第2表に示す。
実施例
実施例2において、固形分塗工量が0.12g/m2 になるように塗工した以外は、実施例2と同様にして工程フィルムを作製した。これらの結果を第2表に示す。
実施例
実施例2において、固形分塗工量が0.20g/m2 になるように塗工した以外は、実施例2と同様にして工程フィルムを作製した。これらの結果を第2表に示す。
【0035】
【表3】
Figure 0004633880
【0036】
参考例2
参考例1において、熱風循環式乾燥機の温度を50℃に変えた以外は、参考例1と同様にして工程フィルムを作製した。これらの結果を第3表に示す。
参考例3
参考例1において、熱風循環式乾燥機の温度を100℃に変えた以外は、参考例1と同様にして工程フィルムを作製した。これらの結果を第3表に示す。
参考例4
参考例1において、熱風循環式乾燥機の温度を120℃に変えた以外は、参考例1と同様にして工程フィルムを作製した。これらの結果を第3表に示す。
【0037】
【表4】
Figure 0004633880
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、基材フィルム上に、加熱処理と紫外線照射処理を併用してシリコーン樹脂組成物の硬化層を設けることにより、セラミックコンデンサや積層インダクタ素子などに用いられるセラミックグリーンシートを製造する際に使用され、基材フィルムとの密着性が良好なシリコーン樹脂組成物の硬化層が形成され、セラミックスラリー塗工性及びセラミックグリーンシート剥離性に優れると共に、従来にない高平坦性を有するセラミックグリーンシート製造用工程フィルムを容易に得ることができる。

Claims (6)

  1. ポリエチレンテレフタレートの基材フィルムと、その上に設けられた光増感剤を含む付加反応型シリコーン樹脂組成物の硬化層とを有する工程フィルムであって、上記硬化層が、光増感剤を含有し、かつ付加反応型シリコーン樹脂としてヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンを含有する固形分換算塗工量0.05〜0.12g/m 2 付加反応型シリコーン樹脂組成物層を40〜120℃の温度で加熱処理後、紫外線照射処理してなるものであることを特徴とするセラミックグリーンシート製造用工程フィルム。
  2. 付加反応型シリコーン樹脂として、ヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンと、ビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンとの混合物を含有することを特徴とする請求項1記載のセラミックグリーンシート製造用工程フィルム。
  3. 付加反応型シリコーン樹脂組成物が、触媒として白金系化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のセラミックグリーンシート製造用工程フィルム。
  4. ポリエチレンテレフタレートの基材フィルム上に、光増感剤を含有し、かつ付加反応型シリコーン樹脂としてヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンを含有する固形分換算塗工量0.05〜0.12g/m 2 付加反応型シリコーン樹脂組成物層を設けた後、40〜120℃の温度で加熱処理し、次いで該シリコーン樹脂組成物層に紫外線を照射して硬化させることを特徴とするセラミックグリーンシート製造用工程フィルムの製造方法。
  5. 付加反応型シリコーン樹脂として、ヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンと、ビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンとの混合物を含有することを特徴とする請求項4記載のセラミックグリーンシート製造用工程フィルムの製造方法。
  6. 付加反応型シリコーン樹脂組成物が、触媒として白金系化合物を含有することを特徴とする請求項4又は5記載のセラミックグリーンシート製造用工程フィルムの製造方法。
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