JP4631111B2 - アルミニウム製缶材料、缶及び缶蓋 - Google Patents

アルミニウム製缶材料、缶及び缶蓋 Download PDF

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、アルミニウム基材の上に、無機物を主体とする表面処理層/水性フェノールを主体とする有機物表面処理層/ポリエステル樹脂被覆層の多層構造を有する事を特徴とする製缶材料、ツーピースシームレス缶およびイージーオープン缶蓋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム等の金属素材を熱可塑性ポリエステルフィルムで被覆した樹脂被覆金属板は、製缶用素材として古くから知られており、この積層体を絞り加工或いは絞り・しごき加工に付して、飲料等を充填するためのシームレス缶とし、或いはこれをプレス成形してイージイオープンエンド等の缶蓋とすることもよく知られている。
【0003】
このような樹脂被覆金属板において、アルミニウム基体とポリエステル樹脂層との密着性が不十分であり、またアルミニウム基体の耐腐食性が不十分であるため、アルミニウム基体の表面を無機或いは有機の表面処理剤で処理を行ったり、或いはアルミニウム基体とポリエステル樹脂層との間に樹脂のプライマー層を介在させることも広く知られている。
【0004】
無機表面処理剤の例として、例えば特開平4-231120号公報には、ポリエステル皮膜とアルミニウム合金との間に10nm〜200nmのりん酸または硫酸を媒質とした陽極酸化処理層をもうけた積層体からの壁しごき缶が記載されている。
また、特開平11-91034号公報には、熱可塑性樹脂皮膜とアルミニウム合金との間に10nm〜150nmの硫酸を媒質とした陽極酸化処理層をもうけた積層板から缶蓋を作成した実施例が記載されている。
更に、特開平8-246193号公報には、3〜200mg/mの金属クロムとクロムとして3〜50mg/mのクロム水和酸化物皮膜を形成させた表面処理アルミニウム材にポリエステル樹脂を被覆した積層体から乾式絞りしごきにより製缶した場合の実施例が記載されている。
【0005】
プライマー樹脂層を介在させる例として、例えば特開昭62-52045号公報には、0.3〜3μmのエポキシフェノール樹脂接着プライマー層を介してアルミニウム基材と2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層が接着されている積層アルミ材から成るイージーオープン蓋が記載されている。
【0006】
また、有機の表面処理剤を施す例として、特開平10-46101号公報には、金属材料の表面にフィルムラミネート用下地被膜を形成させた被覆金属材料であって、被膜が特定構造単位よりなるフェノール、ナフトールもしくはビスフェノール−ホルムアルデヒド樹脂からなり、被膜厚みが5〜500nmであり、被膜の全付着量が炭素として5〜500mg/mであり、且つ該被膜が金属材料表面の90%以上を被覆している被覆金属材料が記載されている。
【0007】
更に、表面処理剤として無機表面処理剤及び有機表面処理剤の組合せを用いる例として、例えば、特開平11-115098号公報には、板厚0.16〜0.30mmのアルミニウム板の両面に、リン酸イオンと、縮合リン酸イオンと、特定のフェノール系水溶性重合体とよりなる組成物を用いて表面処理被膜を設け、更にその両面に厚さ8〜30μm、融点190〜252℃の熱可塑性樹脂を被覆することにより形成された複合材料を用いて、薄肉化絞り加工または絞りしごき加工した缶を、加熱後、冷却して密着性及び耐食性に優れたツーピース缶が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、無機表面処理層に陽極酸化処理層を用いて、アルミニウムとポリエステル樹脂との接合用媒質とした場合、処理設備にコストがかかる上、処理に大電力を使用するためコスト高となる問題がある。
また、無機物表面処理層を介してポリエステル樹脂被覆されている材料から作成した缶および缶蓋では、樹脂被覆層にピンホール等が存在しても、耐食性は比較的優れているが、レトルト等の熱水処理時に缶ではネック部、蓋ではリベット部などの高加工部分の密着性が低下しやすいという問題がある。
【0009】
一方、樹脂接着プライマー層と有機表面処理層との間には、従来明白な区別がされていなかったが、樹脂接着プライマーは塗料を用いるものであるのに対して、有機表面処理は有機表面処理剤を用いるものであり、また用いる剤形においても、前者が一般に有機溶剤系であるのに対して、後者は水性系であり、更に形成される膜厚においても前者が300nm以上であるのに対して、後者は300nm未満である点で相違しており、両者は明確に区別されるべきものと信じられる。
【0010】
ところで、樹脂接着プライマー層を介在させたアルミニウム−ポリエステル積層体は、加工性、耐腐食性、密着性、作業性等の点で未だ改善すべき余地がある。
即ち、製缶材料の成形工程においては、ツーピース缶では、絞りしごき加工やストレッチドロー加工、同時絞りしごき加工など、また、イージーオープン缶蓋では、コイニング加工やスコア加工などの厳しい加工が行われるが、サブミクロン〜数ミクロンの厚みを有するプライマー層が上記のような厳しい加工を受けると、加工中に微細な剥離やマイクロクラック等が発生し、内容品保存時に塗膜下腐食(UFC)が発生したり、プライマー自身の凝集力が低下し、結果的に密着性が低下する傾向が認められる。
このため、加工性、防食性に優れた接着プライマー組成が厳しく吟味されて選定されており、膜厚についても厳正な管理が必要とされる。
また、接着プライマーは、一般に、まず2軸延伸フィルム上にコートし、乾燥させた後にアルミニウム基材にラミネートしている。この為、常法による未延伸フィルムをラミネートする場合に、プライマーの塗布乾燥時に未延伸フィルムが収縮し易いため、適用が困難であるという問題がある。
一方、アルミニウム素材に薄いプライマー層を設けることは、均一塗布性の点で困難であり、ポリエステル樹脂をアルミニウム板上に直接押出しコートして製缶用材料を製造する場合、プライマーは事実上利用できないという問題があった。
【0011】
一方、有機表面処理層を介して、アルミニウム基体にポリエステル樹脂被覆を形成した場合には、樹脂被覆層にピンホール等が生じた場合の耐食性が不充分であり、腐食性の強い内容品には適用できないという問題がある。
【0012】
更に、無機表面処理剤と有機表面処理剤とを混合物の状態で使用する場合には、レトルト等の熱水処理時に缶ではネック部、蓋ではリベット部などの高加工部分の密着性が低下し、耐食性も未だ不十分であるという問題があった。
【0013】
本発明は、従来技術の持つこれらの問題点を解決するためのものであり、具体的には、食品および飲料の保存容器として用いられる、アルミニウム製缶材料、即ち、ポリエステル樹脂を被覆した耐食性および密着性に優れた製缶材料、ツーピースシームレス缶およびイージーオープン缶蓋を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記、従来技術の抱える問題点について様々な角度から検討した。その結果、特定のアルミニウム素材を用い、この素材の表面に特定の無機物を主体とする表面処理層、特定の有機物を主体とする表面処理層、さらに、特定のポリエステル樹脂被覆層からなる多層構造を形成することにより、加工性、密着性および耐食性に優れた製缶材料が提供され、この製缶材料を用いて、ツーピースシームレス缶およびイージーオープン缶蓋を形成することにより、高度の加工部分においても、加熱殺菌後に優れた耐食性と被覆密着性とが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、アルミニウム基体の少なくとも容器内面側となる側の表面に、リン酸クロメート、リン酸ジルコニウム及びリン酸チタンから成る群より選択された1種から成る無機物を主体とする無機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの無機物を主体とする表面処理層を形成し、該無機表面処理に引き続いて、下記式(I)
Figure 0004631111
式中、φはベンゼン環を表し、Xは水素原子または下記式(II)
Figure 0004631111
ここでR 及びR の各々は炭素数10以下のアルキル基または炭素数10以下のヒドロキシアルキルである、で表される基Zを表し、基Zの導入率はベンゼン環1個当たり0.2〜1.0であるものとする、
で表される反復単位から成る水性フェノール樹脂を主体とする有機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの有機表面処理層を形成した後、無配向のポリエステル系樹脂被覆を施すことによって製造される多層構造を有することを特徴とするツーピースシームレス缶用アルミニウム製缶材料が提供される。
本発明によればまた、上記アルミニウム製缶材料から形成されていることを特徴とするツーピースシームレス缶が提供される。
本発明のツーピースシームレス缶においては、缶内面側の缶高さの1/2の高さの位置において、無機物を主体とする表面処理層のクラックの内部にも有機物を主体とする表面処理層が存在すること、が好ましい。
本発明によれば更に、アルミニウム基体の少なくとも容器内面側となる側の表面に、リン酸クロメート、リン酸ジルコニウム及びリン酸チタンから成る群より選択された1種から成る無機物を主体とする無機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの無機物を主体とする表面処理層を形成し、該無機表面処理に引き続いて、下記式(I)

Figure 0004631111
式中、φはベンゼン環を表し、Xは水素原子または下記式(II)
Figure 0004631111
ここでR 及びR の各々は炭素数10以下のアルキル基または炭素数10以下のヒドロキシアルキルである、で表される基Zを表し、基Zの導入率はベンゼン環1個当たり0.2〜1.0であるものとする、
で表される反復単位から成る水性フェノール樹脂を主体とする有機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至300nm未満の有機表面処理層を形成した後、無配向のポリエステル系樹脂被覆を施すことによって製造される多層構造を有することを特徴とするイージーオープン缶蓋用アルミニウム製缶材料が提供される。
本発明によればまた、上記イージーオープン缶蓋用アルミニウム製缶材料から形成されていることを特徴とするイージーオープン缶蓋が提供される。
本発明によれば更にまた、アルミニウム基体の少なくとも容器内面側となる側の表面に、リン酸クロメート、リン酸ジルコニウム及びリン酸チタンから成る群より選択された1種から成る無機物を主体とする無機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの無機物を主体とする表面処理層を形成し、該無機表面処理に引き続いて、下記式(I)
Figure 0004631111
式中、φはベンゼン環を表し、Xは水素原子または下記式(II)
Figure 0004631111
ここでR 及びR の各々は炭素数10以下のアルキル基または炭素数10以下のヒドロキシアルキルである、で表される基Zを表し、基Zの導入率はベンゼン環1個当たり0.2〜1.0であるものとする、
で表される反復単位から成る水性フェノール樹脂を主体とする有機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの有機表面処理層を形成した後、無配向のポリエステル系樹脂被覆を施すことを特徴とするツーピースシームレス缶用アルミニウム製缶材料の製造方法が提供される。
本発明によれば更に、アルミニウム基体の少なくとも容器内面側となる側の表面に、リン酸クロメート、リン酸ジルコニウム及びリン酸チタンから成る群より選択された1種から成る無機物を主体とする無機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの無機物を主体とする表面処理層を形成し、該無機表面処理に引き続いて、下記式(I)
Figure 0004631111
式中、φはベンゼン環を表し、Xは水素原子または下記式(II)
Figure 0004631111
ここでR 及びR の各々は炭素数10以下のアルキル基または炭素数10以下のヒドロキシアルキルである、で表される基Zを表し、基Zの導入率はベンゼン環1個当たり0.2〜1.0であるものとする、
で表される反復単位から成る水性フェノール樹脂を主体とする有機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至300nm未満の有機表面処理層を形成した後、無配向のポリエステル系樹脂被覆を施すことを特徴とするイージーオープン缶蓋用アルミニウム製缶材料の製造方法が提供される。
【0015】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明のアルミニウム製缶材料は、少なくともアルミニウム基体の容器内面側の表面に無機物を主体とする表面処理層、その上に水性フェノール樹脂を主体とする有機表面処理層、及び更にその上にポリエステル系樹脂被覆層の多層構造を有することが特徴である。
【0016】
本発明の製缶材料において、無機表面処理は主としてアルミニウム基体の耐食性に寄与するものであり、一方、有機表面処理剤は主としてポリエステルとの密着性に寄与するものであるが、これらは上記順序での複層化により後述する格別の利点が奏される。
【0017】
アルミニウム−ポリエステル製缶材料における性能低下は、アルミ基材中のMgの表面拡散によるマグネシウム酸化物の生成によるところが大きいと考えられる。特に、表面処理にクラックが生じている缶上部などの高加工部では、レトルト等の熱水処理を受けると、クラック内の基材表面とポリエステル樹脂との界面に酸化マグネシウムが生成し、クラック部面積分の密着力が低下すると考えられる。
【0018】
また、前述した高加工部では、無機表面処理層と有機表面処理層とでは、生成するクラックの大きさに差があり、有機表面処理層の方が遥かに細かい。したがって、有機表面処理層があると、無機表面処理層単独の場合よりクラック面積が小さいので、酸化マグネシウムの表面拡散も抑えられるため、密着低下も小さいと考えられる。
したがって、密着性の点に関しては、有機表面処理単独の場合でも有効である。
【0019】
しかしながら、有機表面処理層単独では、防食性に乏しい。即ち、腐食の進展を抑える力がないため、無機表面処理層が必要である。この意味で、本発明の意図する理想的な形とは、アルミ基材表面側に無機表面処理100%、ポリエステル側に有機表面処理100%で、両者の間で連続的に組成が変化する傾斜組成表面処理のような形が望ましい。しかしながら、無機表面処理が防食性を、有機表面処理が防食性を発揮するためには、少なくとも5nm程度の均質な厚みが必要と考えられる。したがって、無機表面処理と有機表面処理とを混合しただけでは、耐食性及び密着性のどちらも不十分なものとなってしまう。
【0020】
表面処理膜厚の測定方法としては、無機表面処理層に関しては蛍光X線により、主構成金属元素の強度を測定し、重量換算膜厚として表す方法が一般によく用いられている。
一方、有機表面処理膜厚の測定方法としては、市販の表面炭素分析装置による重量換算膜厚などにより求められる。
また、アルミニウム基材の溶解後、透過形電子顕微鏡附属のエネルギー分散型X線分析装置により主構成金属または炭素のピーク強度から重量換算膜厚を求められる。
【0021】
より直接的には、アルミニウム基材を溶解または研磨により薄膜化した後、樹脂に包埋し、ウルトラミクロトームを用いてガラスナイフおよびダイヤモンドナイフで断面の超薄切片を切り出し、100KV程度の透過電子顕微鏡で観察することにより直接的に膜厚を求める事ができる。
但し、超薄切片の切り出しの際、有機表面処理層が変形し見掛け上厚膜化しないように、液体窒素により試料、雰囲気、ナイフ等を冷却して切り出すことが好ましい。
切削後の試料は、電子線の透過率の違いを利用して、像のコントラストから無機表面処理層と有機表面処理層を簡単に区別することができる。
【0022】
表面処理層のクラックの観察方法についても、同様に透過形電子顕微鏡を用いて次のように行うことができる。
(1) 缶または缶蓋の加工部から、測定部位を打ち抜く。
(2) 非測定面の被覆樹脂及び表面処理層をカッター等で削り取り、アルミ金属面を出す。
(3) 市販の沸騰した過酸化水素水中に1分間浸漬し、水洗後ポリエステル被覆層を端からピンセットで剥離する。
(4) 剥離できない場合には、更に30秒間沸騰過酸化水素水中浸漬し、再度剥離を試みる。
(5) ポリエステル被覆層が剥離するまで(4)の操作を繰り返す。
(6) 測定面にカーボン等で蒸着処理をし、表面処理層を補強する。
(7) 測定面にナイフ等で傷を入れ、3mm角程度の碁盤目状とする。
(8) 測定面を覆うようパラフィンでカバーガラスに固定し、アルミ金属面に回り込んだパラフィンは除去する。
(9) 市販の特級メタノールと特級ヨウ素を500ml:25gの割合で混合する。
(10) 上記ヨウ素メタノール液中に、サンプルを入れてアルミ基材が溶解するまで待つ。
(11) パラフィンをアセトンで溶解し、約3mm角となった試料をアルコール洗浄後、銅メッシュですくって電子顕微鏡試料とする。
(12) 無機表面処理層のクラックは、加速電圧50KV〜200KV、5万倍程度の倍率で簡単に観察できる。有機表面処理層が観察できない場合には、加速電圧を50KV〜75KVとし、10万倍程度で無機表面処理層のクラック部分を重点的に観察することにより、確認できる。
【0023】
本発明の製缶材料における表面処理層の厚みは上記のとおり測定されるが、その好適な範囲は、ツーピースシームレス缶でも、イージーオープン缶蓋でも基本的には同じ範囲であるが、イージーオープン缶蓋では有機表面処理層の許容範囲が広い。
【0024】
本発明のツーピースシームレス缶においては、缶底中心部において、無機物を主体とする表面処理層が5乃至40nmの平均膜厚で且つ有機表面処理層が5乃至40nmの平均膜厚で存在することが望ましい。
【0025】
一方、表面処理層におけるクラックの存在は、前記測定法で確認されるが、ツーピースシームレス缶の場合、缶内面側の缶高さの1/2の高さの位置において、無機物を主体とする表面処理層のクラックの内部にも有機物を主体とする表面処理層が存在することが密着性の点で望ましい。
【0026】
一方、本発明のイージーオープン缶蓋においては、缶蓋内面側のセンタパネル部平坦部の加工を受けていない部分において、無機物を主体とする表面処理層が5乃至40nmの平均膜厚で且つ有機表面処理層が5nm以上で300nm未満の平均膜厚で存在することが望ましい。
また、缶蓋のリベット加工中心付近において、無機物を主体とする表面処理層のクラックの内部にも有機物を主体とする表面処理層が存在することがやはり密着性の点で望ましい。
【0027】
[アルミニウム基材]
本発明は、アルミニウム製缶材料、更にはこの材料から形成されたツーピースシームレス缶およびイージーオプン缶蓋に関するものであり、該製缶材料はアルミニウム材/無機物表面処理層/有機物表面処理層/ポリエステル樹脂被覆層からなる多層構造を有することを特徴とするものである。
用いるアルミニウム素材は、純アルミやアルミと他の合金用金属、特にマグネシウム、マンガン等の少量を含むアルミ合金が使用される。
【0028】
しかしながら、耐食性や強度、更には加工性の点では、重量基準で、Mg 0.2〜:5.5%、Si 0.05〜1%、Fe 0.05〜1%、Cu 0〜0.35%、Mn 0〜2.0%、Cr 0〜0.4%を含有するアルミニウム合金板であることが好ましい。
Mgが5.5重量%以上では材料の加工性が低下し、0.2重量%以下では強度が不足するので好ましくない。
Siが1.0重量%以上であると加工性が低下し、耐食性も劣るので好ましくない。
Feが1.0重量%以上であると加工性が低下し、耐食性も劣るので好ましくない。
Cuが0.35重量%以上では、耐食性が劣化するので好ましくない。
Crが0.4重量%以上では加工性が低下するので好ましくない。
Mnが2.0重量%以上では金属間化合物が粗大化し、加工性が低下するので好ましくない。
アルミニウム素材の板厚としては、用途により異なるが、一般に0.20〜0.40mmの厚みを有するのが望ましい。
【0029】
[表面処理層]
次いで、無機物を主成分とする表面処理層について説明する。
この表面処理層は、無機物を主成分として、耐食性の付与を主な目的としている。無機物を主成分とする表面処理層の好ましい例としては、リン酸クロメート、リン酸ジルコニウム、リン酸チタンが挙げられる。その平均膜厚は5〜40nm、金属重量換算膜厚として5〜30mg/mの範囲が好ましい。
5nm未満では耐食性が不十分である。40nmをこえると無機物表面処理層の凝集力低下による密着性の低下を招くので、上記範囲が好ましい。
【0030】
有機物を主成分とする表面処理層は、密着性の付与を主な目的としており、水溶性フェノール樹脂からなるものが使用される。用いる水溶性フェノール樹脂は下記式(I)で示される構造単位よりなる重合体からなることが好ましい。
Figure 0004631111
式中、φはベンゼン環を表し、
Xは水素原子または下記式(II)
Figure 0004631111
ここでR及びRの各々は炭素数10以下のアルキル基または炭素数10以下のヒドロキシアルキルであり、
で表される基Zを表し、基Zの導入率はベンゼン環1個当たり0.2〜1.0であるものとする。
(I)式中、Xはそれぞれの構造単位において独立に、水素原子または式(II)のZである。(II)式中、R1およびR2は、互いに独立に、炭素数10以下のアルキル基または、炭素数10以下のヒドロキシアルキル基を表す。
【0031】
ここで、基R及びRの各々のアルキル基やヒドロキシアルキル基の炭素数が11以上では、樹脂がバルキーとなって、立体障害を引き起こし、緻密な耐食性、密着性に優れた被膜にならない。
一方、基Zの導入率はベンゼン環1個あたり0.2〜1.0であって、この導入率が0.2未満では密着性が十分でない。
【0032】
有機表面処理層の最適な平均膜厚は、加工されて製造される製品の加工度によるが、一般に、ツーピースシームレス缶として利用する場合には、加工前の原板で5〜40nm、炭素重量換算膜厚として5〜50mg/m、より好ましくは、膜厚として5〜20nm、炭素重量換算膜厚として5〜25mg/mの範囲であることが好ましい。
【0033】
この膜厚が5nm未満では密着性が不十分である。膜厚が必要以上に大きくなり、特に40nm以上となると密着性が劣るので上記範囲が好ましい。
一方、イージーオプン缶蓋として利用する場合には、加工前の原板で膜厚5nm以上で〜300nm未満、炭素重量換算膜厚として5〜450mg/mの範囲にあることが好ましい。5nm未満では密着性が不十分である。膜厚が必要以上に大きくなり、300nm以上となると密着性が劣るので上記範囲が好ましい。
【0034】
本発明において、アルミニウム基体表面への無機表面処理層の形成は、それ自体公知の手段により行うことができる。
一方、有機表面処理層とプライマー層との違いは、既に指摘したとおりであるが、この違いに関して更に補足説明すると次の通りである。
【0035】
いわゆるプライマーは、溶剤系であり、水性であっても数%の溶剤分を含んでいるのに対し、有機表面処理では、溶剤分は%オーダー以下(樹脂に対して1%位即ちトータルで数十ppmオーダー)である。
もちろん、塗れ性を良くするためにわざと有機表面処理にアルコール等を加えることはできるが、無機表面処理に引き続いて行う(即ち水に対する濡れ性が良好な表面状態にある)ため、通常は添加する必要がない。
【0036】
この有機表面処理は、ロールコートを用いる場合に関して説明すると、
脱脂→水洗→無機表面処理→水洗→純水洗→ロールコーター塗布→乾燥
という工程が有効であり、
脱脂→水洗→無機表面処理→水洗→純水洗→乾燥→ロールコーター塗布→乾燥
という工程をとると、僅かではあるが、性能低下する。
勿論、本発明においては、浸漬塗布−絞りやスプレー塗布等の手段で有機表面処理を行うこともできる。
【0037】
[ポリエステル被覆層]
ポリエステル樹脂としては、エチレングリコールやブチレングリコールを主体とするアルコール成分と、芳香族二塩基酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の酸成分とから誘導される熱可塑性ポリエステルが挙げられる。
【0038】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートそのものも勿論使用可能であるが、フィルムの到達し得る最高結晶化度を下げることが耐衝撃性や加工性の点で望ましく、この目的のためにポリエステル中にエチレンテレフタレート以外の共重合エステル単位を導入するのがよい。エチレンテレフタレート単位或いはブチレンテレフタレート単位を主体とし、他のエステル単位の少量を含む融点が210乃至252℃の共重合ポリエステルを用いることが特に好ましい。尚、ホモポリエチレンテレフタレートの融点は一般に255〜265℃である。
【0039】
一般に共重合ポリエステル中の二塩基酸成分の70モル%以上、特に75モル%以上がテレフタル酸成分から成り、ジオール成分の70モル%以上、特に75モル%以上がエチレングリコールまたはブチレングリコールから成り、二塩基酸成分の1乃至30モル%、特に5乃至25モル%がテレフタル酸以外の二塩基酸成分から成ることが好ましい。
【0040】
テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸:シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸:コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸:の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコールまたはブチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。勿論、これらのコモノマーの組合せは、共重合ポリエステルの融点を前記範囲とするのが好ましい。
【0041】
また、このポリエステルは、成形時の溶融流動特性を改善するために、三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールから成る群より選択された少なくとも1種の分岐乃至架橋成分を含有することができる。これらの分岐乃至架橋成分は、3.0モル%以下、好適には0.05乃至3.0モル%の範囲にあるのがよい。
【0042】
三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールとしては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘミメリット酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸等の多塩基酸や、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコールが挙げられる。
【0043】
本発明の製缶用素材に特に好適なポリエステル樹脂として、イソフタール酸成分を5乃至25モル%含有するポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、シクロヘキサンジメタノール成分を1乃至10モル%含有するポリエチレン/シクロへキシレンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0044】
ホモポリエステル或いは共重合ポリエステルは、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔η〕は0.5乃至1.5、特に0.6乃至1.5の範囲にあるのがよい。
【0045】
本発明に用いるポリエステル樹脂層は、上述したポリエステル或いはコポリエステル単独から形成されていても、或いはポリエステル或いはコポリエステルの2種以上のブレンド物、或いはポリエステル或いはコポリエステルと他の熱可塑性樹脂とのブレンド物から形成されていてもよい。
ポリエステル或いはコポリエステルの2種以上のブレンド物としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレン/シクロへキシレンジメチレンテレフタレートの2種以上の組合せなどが挙げられるが、勿論この例に限定されない。
【0046】
ポリエステル中に配合できる他の熱可塑性樹脂としては、エチレン系重合体、熱可塑性エラストマー、ポリアリレート、ポリカーボネート等を挙げることができる。これらの改質樹脂成分の少なくとも1種を更に含有させ、耐高温湿熱性や耐衝撃性を更に向上させることができる。この改質樹脂成分は、一般にポリエステル100重量部当たり50重量部迄の量、特に好適には5乃至35重量部の量で用いるのが望ましい。
【0047】
エチレン系重合体として、例えば低−、中−或いは高−密度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
これらの内でも、アイオノマーが好適なものであり、アイオノマーのベースポリマーとしては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、イオン種としては、Na、K、Zn等のものが使用される。
熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が使用される。
【0048】
ポリアリレートとしては、二価フェノールと二塩基酸とから誘導されたポリエステルとして定義され、二価フェノールとしては、ビスフェノール類としては、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、4−ヒドロキシフェニルエーテル、p−(4−ヒドロキシ)フェノール等が使用されるが、ビスフェノールA及びビスフェノールBが好適である。二塩基酸としては、テレフタール酸、イソフタール酸、2, 2−(4−カルボキシフェニル)プロパン、4, 4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4, 4’−ジカルボキシベンゾフェノン等が使用される。
ポリアリレートは、上記単量体成分から誘導されたホモ重合体でもよく、また共重合体でもよい。また、その本質を損なわない範囲で、脂肪族グリコールと二塩基酸とから誘導されたエステル単位との共重合体であってもよい。これらのポリアリレートは、ユニチカ社のUポリマーのUシリーズ或いはAXシリーズ、UCC社のArdelDー100、Bayer社のAPE、Hoechst社のDurel、DuPont社のArylon、鐘淵化学社のNAP樹脂等として入手できる。
【0049】
ポリカーボネートは、二環二価フェノール類とホスゲンとか誘導される炭酸エステル樹脂であり、高いガラス転移点と耐熱性とを有することが特徴である。ポリカーボネートとしては、ビスフェノール類、例えば、
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、
1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1, 2−ビス(4ーヒドロキシフェニル)エタン等から誘導されたポリカーボネートが好適である。
【0050】
本発明に用いるポリエステル樹脂層は、また単層の樹脂層であってもよく、また同時押出などによる多層の樹脂層であってもよい。
多層のポリエステル樹脂層を用いると、下地層、即ちアルミニウム基体側に基体に対する接着性に優れた組成のポリエステル樹脂を選択し、表層に耐内容物性、即ち耐抽出性やフレーバー成分の非吸着性に優れた組成のポリエステル樹脂を選択できるので有利である。
【0051】
多層ポリエステル樹脂層の例を示すと、表層/下層として表示して、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン・シクロへキシレンジメチレン・テレフタレート、イソフタレート含有量の少ないポリエチレンテレフタレート・イソフタレート/イソフタレート含有量の多いポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート/[ポリエチレンテレフタレート・イソフタレートとポリブチレンテレフタレート・アジペートとのブレンド物]等であるが、勿論上記の例に限定されない。
表層:下層の厚み比は、5:95乃至95:5の範囲にあるのが望ましい。
【0052】
上記ポリエステル樹脂層には、それ自体公知の樹脂用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアンチブロッキング剤、無機フィラー、各種帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を公知の処方に従って配合することができる。
【0053】
また、ポリエステル樹脂層の厚みは、一般に3乃至50μm、特に5乃至40μmの範囲にあることが望ましい。即ち、厚みが上記範囲を下回ると、耐腐食性が不十分となり、厚みが上記範囲を上回ると加工性の点で問題を生じやすい。
【0054】
[アルミニウム製缶材料及びその製造]
本発明に用いるアルミニウム製缶材料の一例を示す図1の断面図において、このアルミニウム製缶材料1は、容器としたときの内面側(図において右側)で見て、アルミニウム基体2、基体表面に設けられた無機物を主体とする表面処理層3、その上に設けられた水性フェノール樹脂を主体とする有機表面処理層4、及び更にその上に設けられたポリエステル系樹脂被覆層5の多層構造を有している。
図1の例では、容器としたときの外面側(図において左側)において、前記表面処理層3、4を介して外面樹脂保護層6を備えているが、外面樹脂保護層6は、前記ポリエステル系樹脂被覆層5と同一のポリエステル樹脂であっても、或いはこれと異なるポリエステル樹脂からなっていてもよく、また異なる樹脂からなっていてもよい。
【0055】
本発明のアルミニウム製缶材料の他の例を示す図2において、この製缶材料1は、基体2の容器蓋内面となる側に施されたポリエステル樹脂層5及び外面となる側に施された外面樹脂保護層6を備えている点では、図1のものと同様であるが、ポリエステル樹脂層5がポリエステル樹脂表層5aとポリエステル樹脂下層5bとの積層構造となっている。ポリエステル樹脂下層5bとしては金属基体との接着性に優れたものが使用され、一方ポリエステル樹脂表層5aとしては耐内容物性に優れたものが使用されることは既に述べたとおりである。
【0056】
本発明に用いるアルミニウム製缶材料は、表面処理されたアルミニウム板の上にポリエステル樹脂を溶融状態で押出コートして、熱接着させることにより製造することができる。
即ち、ポリエステル樹脂を押出機で溶融混練した後、T−ダイから薄膜状に押し出し、押し出された溶融樹脂膜を表面処理アルミニウムと共に一対のラミネートロール間に通して冷却下に押圧一体化させ、次いで急冷する。
多層のポリエステル樹脂層を押出コートする場合には、表層樹脂用の押出機及び下層樹脂用の押出機を使用し、各押出機からの樹脂流を多重多層ダイ内で合流させ、以後は単層樹脂の場合と同様に押出コートを行えばよい。
また、一対のラミネートロール間に垂直に表面処理アルミニウムを通し、その両側に溶融樹脂ウエッブを供給することにより、前記基体両面にポリエステル樹脂の被覆層を形成させることができる。
【0057】
アルミニウム製缶材料の押出コート法による製造は具体的には次のように行われる。表面処理アルミニウム(以下単に金属板とも呼ぶことがある)を必要により加熱装置により予備加熱し、一対のラミネートロール間のニップ位置に供給する。一方、ポリエステル樹脂は、押出機のダイヘッドを通して薄膜の形に押し出し、ラミネートロールと金属板との間に供給され、ラミネートロールにより金属板に圧着される。ラミネートロールは、一定の温度に保持されており、金属板にポリエステル等の熱可塑性樹脂から成る薄膜を圧着して両者を熱接着させると共に両側から冷却して積層体を得る。一般に、形成される積層体を更に冷却用水槽等に導いて、熱結晶化を防止するため、急冷を行う。
【0058】
この押出コート法では、樹脂組成の選択とロールや冷却槽による急冷とにより、ポリエステル樹脂層は、結晶化度が低いレベル、非晶密度との差が0.05g/cm以下に抑制されているため、ついで行う製缶加工や蓋加工等に対する十分な加工性が保証される。勿論、急冷操作は上記例に限定されるものではなく、形成されるラミネート板に冷却水を噴霧して、ラミネート板を急冷することもできる。
【0059】
金属板に対するポリエステル樹脂の熱接着は、溶融樹脂層が有する熱量と、金属板が有する熱量とにより行われる。金属板の加熱温度(T)は、一般に90℃乃至290℃、特に100℃乃至280℃の温度が適当であり、一方ラミネートロールの温度は10℃乃至150℃の範囲が適当である。
【0060】
また、本発明に用いるアルミニウム製缶材料は、予め製膜された未延伸のポリエステル樹脂フィルムを金属板に熱接着させることによっても製造することができる。この場合、ポリエステル樹脂をT−ダイ法でフィルムに成形し、過冷却された未配向のキャストフィルムとする。この未配向のフィルムを用いて、前記と同様に熱接着させて、ラミネートを製造することができる。
【0061】
[ツーピースシームレス缶及びその製造方法]
本発明の金属缶は、前述したアルミニウム製缶材料から形成されている限り、任意の製缶法によるものでよい。この金属缶は、側面継ぎ目を有するスリーピース缶であることもできるが、一般にシームレス缶(ツーピース缶)であることが好ましい。このシームレス缶は、絞り加工、絞り・深絞り加工、絞り・しごき加工等の手段で製造される。
【0062】
本発明によるツーピースシームレス缶の一例を示す図3において、このシームレス缶10は、前述したアルミニウム製缶材料の絞り・しごき成形で形成されており、底部12と胴部13とを備えている。底部12と胴部13とは継ぎ目なしに接続されている。
胴部13の少なくとも一部は元板厚の30%〜70%まで薄肉化加工されている。
一方、底部12は、その中心部において、用いたアルミニウム製缶材料と実質上同一の厚み構成を有しており、無機物を主体とする表面処理層が5乃至40nmの平均膜厚で且つ有機表面処理層が5乃至40nmの平均膜厚で存在する。
また、胴部13においては、缶内面側の缶高さの1/2の高さの位置において、無機物を主体とする表面処理層のクラックの内部にも有機物を主体とする表面処理層が存在しており、この微細構造が密着性の向上及び耐食性の向上に役立っている。
胴部13の上部には、一段或いは多段のネック部14を介して、缶蓋との巻締用のフランジ部15が形成されている。
【0063】
このツーピースシームレス缶の製造は、既に述べたとおり、絞り加工としごき加工とにより行われるが、この方法としては、絞り加工としごき加工とは、ワンストロークで同時に行ってもよいし、また別のストロークで別に行ってもよい。
【0064】
例えば、ツーピースシームレス缶の好適な製造法では、アルミニウム製缶材料を円形にせん断し、これを絞りダイスと絞りポンチの組み合わせを用いて、絞り加工により浅絞りカップを作り、ついで同一金型中で絞りながらしごきを行う同時絞りしごき加工を複数回繰り返して径が小さくハイトの大きいカップに成形する。
この成形法では、薄肉化のための変形を、缶軸方向(高さ方向)の荷重による変形(曲げ伸ばし)と缶厚み方向の荷重による変形(しごき)との組み合わせでしかもこの順序に行われ、これにより、缶軸方向への分子配向が有効に付与されるという利点がある。
その後、ドーミング成形、被覆樹脂の加工歪みをとるための熱処理、続いて開口端端部のトリミング加工、曲面印刷、ネックイン加工、フランジ加工を行って缶を作成する。
【0065】
勿論、本発明のツーピースシームレス缶の製造には、公知の製缶法を適用することができ、例えば特開平4−231120号公報(CMB)に記載された絞り・しごき成形法や、特開平9−253772号公報(TSK)に記載された同時絞り・しごき成形法を適用することができる。
【0066】
[イージーオープン缶蓋及びその製造法]
本発明のアルミニウム製缶材料は、イージーオープン缶蓋等の缶蓋の製造にも適用することができる。
【0067】
本発明のイージーオープン缶蓋の上面を示す図4及び断面を拡大して示す図5において、この蓋20は、前述したアルミニウム製缶材料から形成されており、缶胴側面内面に嵌合されるべき環状リム部(カウンターシンク)21を介して外周側に密封用溝22を備えており、この環状リム部21の内側には開口すべき部分23を区画するスコア24が設けられている。この開口すべき部分23の外部には、これに近接して、蓋材を缶蓋外面側に突出させて形成したリベット25が形成され、開口用タブ26がこのリベット25のリベット打ちにより以下に示すように固定されている。即ち、開口用タブ26は、一端に押し裂きによる開口用先端27及び他端に保持用リング28を有し、開口用先端27に近接してリベット25で固定される支点部分29が存在する。開口すべき部分23はおおむねスコア24によって囲まれているが、一部は蓋材にスコア24を経ることなく蓋20に結合されている。
前述した密封用溝22には、図示していないが、密封用ゴム組成物のコンパウンド(シーラント)がライニングされていて、缶胴フランジとの間に密封が行われる。
【0068】
このイージーオープン缶蓋20のセンタの平坦部の加工を受けていない部分では、その厚み構成は用いたアルミニウム製缶材料のそれと実質上同一であり、無機物を主体とする表面処理層が5乃至40nmの平均膜厚で且つ有機表面処理層が5nm以上で300nm未満の平均膜厚で存在する。
また、リベット25の中心付近において、無機物を主体とする表面処理層のクラックの内部にも有機物を主体とする表面処理層が存在し、これがポリエステル被覆層との密着性向上及び耐食性向上に役立っている。
【0069】
開口に際しては、開口用タブ26のリング28を保持して、これを上方に持上げる。これにより開口用タブ26の開口用先端27が下方に押込まれ、スコア24の一部が剪断開始される。次いで、リング28を保持してこれを上方に引張ることにより、スコア24の残留部が破断されて開口が容易に行われる。このタイプの蓋20では、タブ26が開口部分23と共に蓋から離脱することなく、蓋に残ることになる。
【0070】
上記具体例の蓋は、いわゆるステイ・オン・タブであるが、勿論フルオープンのイージイオープン蓋にも適用可能である。
【0071】
イージーオープン缶蓋の好適な製造方法では、アルミニウム製缶材料をプレス成形工程で円形に打抜くと共に蓋の形にし、スコア刻設工程で蓋の外面側から金属素材の途中に達するようにスコアの刻設を行い、ついでリベット形成、リベットにタブを取付け後、リベットを鋲打することによるタブ取付け、密封用溝へのコンパウンドのライニング及び乾燥によるライニング工程を経てイージーオープン缶蓋を作成する。
イージーオープン缶蓋の適当な例は、例えば特開昭62−5205号公報(TSK)に記載されている。
【0072】
【実施例】
次に実施例と比較例とを示して本発明を具体的に説明し、効果を明らかにするが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0073】
・脱脂薬剤の例/FC4498SK(日本パーカライジング社製)
・有機表面処理用薬剤の例/
▲1▼化学式(I)において、
化学式(II)の基Zの導入率が0.3で
化学式(II)におけるR;-CHCHOH、R;-CHCHOH
▲2▼化学式(I)において、
化学式(II)の基Zの導入率が0.8で
化学式(II)におけるR;−CH、R;−CHCHCHOH
・無機表面処理用薬剤の例/
リン酸クロメート;AM702、
リン酸ジルコニウム;AL-N405、
リン酸チタン;CT−K3795
(何れも日本パーカライジング社製)
【0074】
・表面処理方法/
アルミ合金板を脱脂水洗後、スプレーによる無機表面処理、水洗、純水洗後有機表面処理液中にディップした後ロール絞りし、180℃で加熱乾燥した。
【0075】
・樹脂被覆方法/
表面処理したアルミ合金板の両面にポリエチレンイソフタレート12モル%、ポリエチレンテレフタレート88モル%からなるポリエステル樹脂をTダイから溶融押出しを行い、コーティングした。
【0076】
・缶の製造方法/
アルミ合金板を板厚0.25mmのJIS A3004P H19材とし、樹脂被覆した板材にパラフィンワックスを塗布後直径154mmの円形に打抜き、常法に従い、浅絞りカップを作成した。
この絞り工程における絞り比は1.62であった。ついでこの絞りカップを第一次、第二次の同時絞りしごき成形をおこなった。第一次絞り比1.18、第二次絞り比1.21であった。
この様にして得られたカップの諸特性は以下の通りであった。
カップ径 66mm、
カップ高さ 128mm、
缶胴最小板厚部厚み変化率 −57%(樹脂被覆板元厚に対して)
このカップはドーミング成形後、樹脂フィルムの歪みをとるために220℃で60秒間熱処理を行い、続いて開口端端部のトリミング加工、曲面印刷、206径へネックイン加工、フランジ加工、リフランジ加工を行って、350gツーピース缶を作成した。
【0077】
・蓋の製造方法/
常法により206径のイージーオープン蓋とし、蓋中央部、即ちリベット部などの高加工部周辺をひずみ取りの為に、高周波誘導加熱により230℃で1秒間加熱した。
【0078】
・表面処理膜厚測定/
表面処理後のアルミニウム板を、樹脂包埋後ウルトラミクロトームでガラスナイフ及びダイヤモンドナイフを用いて断面を切出し、透過形電子顕微鏡により測定した。
【0079】
・缶の熱水密着性評価/
リフランジ加工後の缶の開口端より5mm下部に缶内面側の全周に亘って素地に達する傷を入れ、空缶の状態で125℃の熱水蒸気中に30分間保持し、缶内面側傷周辺部の被覆樹脂の剥離程度を観察した。
【0080】
・缶の耐食性評価/
25℃での缶内圧が3.5kg/cmとなる様にクエン酸0.05%、クエン酸ナトリウム0.05%、食塩0.1%を加えた炭酸水をパックした缶を37℃で1週間貯蔵後、缶温を5℃に下げた後、缶を正立の状態から、水平方向に対し15゜傾斜した厚さ10mmの鋼板上に、50cmの高さから落下させボトムラジアス部を変形させた。その後、37℃で1年間保存後ボトムラジアス変形部周辺の腐食状態を観察した。
【0081】
・蓋の耐食性評価/
内溶液を5%食塩+5%クエン酸の水溶液として、ぶりき缶胴に巻締め、蓋側を下にして50℃で1週間保存し、コイニング部およびスコア部周辺の腐食状態を観察した。
【0082】
なお、実施例または比較例中、アルミ合金としてA5182P H19材を用いた場合は、缶胴成形性不良であった為、蓋のみの評価とした。
【0083】
実施例1
アルミ合金として金属厚み0.25mmのJIS A3004P H19材を用いた。脱脂水洗後、スプレーによる無機表面処理、水洗、純水洗を行った後、有機表面処理液中に浸漬後ロール絞りし、180℃で加熱乾燥した。ここで、無機表面処理としてリン酸クロメートを用い26nmの膜厚を得、有機表面処理により8nmの膜厚を得た。
次いで、表面処理したアルミ合金板の両面にポリエチレンイソフタレート12モル%、ポリエチレンテレフタレート88モル%からなるポリエステル樹脂を容器内面側に相当する面が15μm、容器外面側に相当する面が8μmとなるよう、Tダイから溶融押出しを行い、コーティング後急冷した。
【0084】
実施例2
無機表面処理としてリン酸クロメートを用い26nmの膜厚を得、有機表面処理により12nmの膜厚を得た以外は実施例1と同様に行った。
【0085】
実施例3
無機表面処理としてリン酸ジルコニウムを用い14nmの膜厚を得、有機表面処理により13nmの膜厚を得た以外は実施例1と同様に行った。
【0086】
実施例4
無機表面処理としてリン酸チタンを用い21nmの膜厚を得、有機表面処理により12nmの膜厚を得た以外は実施例1と同様に行った。
【0087】
実施例5
アルミ合金として金属厚み0.26mmのJIS A5182P H19材を用い、無機表面処理としてリン酸クロメートを用い26nmの膜厚を得、有機表面処理により210nmの膜厚を得た以外は実施例1と同様に行った。
【0088】
実施例6
アルミ合金として金属厚み0.26mmのJIS A5182P H19材を用い、無機表面処理としてリン酸ジルコニウムを用い14nmの膜厚を得、有機表面処理により210nmの膜厚を得た以外は実施例1と同様に行った。
【0089】
実施例7
アルミ合金として金属厚み0.26mmのJIS A5182P H19材を用い、無機表面処理としてリン酸チタンを用い21nmの膜厚を得、有機表面処理により210nmの膜厚を得た以外は実施例1と同様に行った。
【0090】
比較例1
無機表面処理としてリン酸クロメートを用い26nmの膜厚を得、有機表面処理を行わなかった以外は実施例1と同様に行った。
【0091】
比較例2
無機表面処理としてリン酸ジルコニウムを用い14nmの膜厚を得、有機表面処理を行わなかった以外は実施例1と同様に行った。
【0092】
比較例3
無機表面処理としてリン酸チタンを用い21nmの膜厚を得、有機表面処理は行わなかった以外は実施例1と同様に行った。
【0093】
比較例4
無機表面処理は行わず、有機表面処理により22nmの膜厚を得た以外は実施例1と同様に行った。
【0094】
比較例5
無機表面処理は行わず、有機表面処理薬剤にジルコニウムの錯フッ化物イオンを加え、13nmの膜厚を得た以外は実施例1と同様に行った。
【0095】
比較例6
無機表面処理としてリン酸クロメートを用い26nmの膜厚を得、有機表面処理により14nmの膜厚を得た。その後、缶用塗料として一般的に用いられているエポキシフェノール系塗料を80mg/dm2となる様に塗装焼付けし、ポリエステル樹脂被覆を行わなかった以外は実施例1と同様に行った。
【0096】
比較例7
アルミ合金として金属厚み0.26mmのJIS A5182P H19材を用い、無機表面処理としてリン酸クロメートを用い26nmの膜厚を得、有機表面処理を行わなかった以外は実施例1と同様に行った。
【0097】
比較例8
アルミ合金として金属厚み0.26mmのJIS A5182P H19材を用い、無機表面処理としてリン酸ジルコニウムを用い14nmの膜厚を得、有機表面処理を行わなかった以外は実施例1と同様に行った。
【0098】
比較例9
アルミ合金として金属厚み0.26mmのJIS A5182P H19材を用い、無機表面処理としてリン酸チタンを用い21nmの膜厚を得、有機表面処理を行わなかった以外は実施例1と同様に行った。
【0099】
比較例10
アルミ合金として金属厚み0.25mmのJIS A5182P H19材を用い、無機表面処理は行わず、有機表面処理により22nmの膜厚を得た以外は実施例1と同様に行った。
【0100】
比較例11
アルミ合金として金属厚み0.26mmのJIS A5182P H19材を用いた。無機表面処理としてリン酸クロメートを用い26nmの膜厚を得、有機表面処理により14nmの膜厚を得た。その後、缶蓋用塗料として一般的に用いられているエポキシフェノール系塗料を80mg/dmとなる様に塗装焼付けし、ポリエステル樹脂被覆を行わなかった以外は実施例1と同様に行った。
【0101】
上記実施例1〜7および比較例1〜11の評価結果を表1にまとめて示す。
表中、缶の熱水密着性評価は20缶中一部でも剥離した缶が全くない時を○、中一部でも剥離した缶が1〜3缶の場合を△、4缶以上の場合を×とした。
缶の耐食性評価は、ボトムラジアスの変形部周辺を実体顕微鏡観察し、腐食が認められない場合を○、ややアルミ基材の腐食が認められる場合を△とした。
蓋の耐食性評価は、リベット部またはスコア加工部において、腐食が認められない場合を○、リベット部がやや腐食している場合を△、リベット部が激しく腐食しているかあるいはスコア部に腐食が存在する場合を×とした。
尚、表中のPET/IAはイソフタル酸共重合PETを指す。
【0102】
【表1】
Figure 0004631111
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、特定のアルミニウム素材を用い、この素材の表面に特定の無機物を主体とする表面処理層、特定の有機物を主体とする表面処理層、さらに、特定のポリエステル樹脂被覆層からなる多層構造を形成することにより、加工性、密着性および耐食性に優れた製缶材料が提供される。この製缶材料から、ツーピースシームレス缶およびイージーオープン缶蓋を形成することにより、高度の加工部分においても、加熱殺菌後に優れた耐食性と被覆密着性とが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルミニウム製缶材料の断面構造の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のアルミニウム製缶材料の断面構造の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明のツーピースシームレス缶の一例を示す一部断面側面図である。
【図4】本発明のイージーオープン缶蓋の一例を示す上面図である。
【図5】図4の缶蓋の拡大断面図である。

Claims (7)

  1. アルミニウム基体の少なくとも容器内面側となる側の表面に、リン酸クロメート、リン酸ジルコニウム及びリン酸チタンから成る群より選択された1種から成る無機物を主体とする無機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの無機物を主体とする表面処理層を形成し、該無機表面処理に引き続いて、下記式(I)
    Figure 0004631111
    式中、φはベンゼン環を表し、Xは水素原子または下記式(II)
    Figure 0004631111
    ここでR 及びR の各々は炭素数10以下のアルキル基または炭素数10以下のヒドロキシアルキルである、で表される基Zを表し、基Zの導入率はベンゼン環1個当たり0.2〜1.0であるものとする、
    で表される反復単位から成る水性フェノール樹脂を主体とする有機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの有機表面処理層を形成した後、無配向のポリエステル系樹脂被覆を施すことによって製造される多層構造を有することを特徴とするツーピースシームレス缶用アルミニウム製缶材料。
  2. 請求項1記載のアルミニウム製缶材料から形成されていることを特徴とするツーピースシームレス缶。
  3. 請求項2記載のツーピースシームレス缶内面側の缶高さの1/2の高さの位置において、無機物を主体とする表面処理層のクラックの内部にも有機物を主体とする表面処理層が存在することを特徴とするツーピースシームレス缶。
  4. アルミニウム基体の少なくとも容器内面側となる側の表面に、リン酸クロメート、リン酸ジルコニウム及びリン酸チタンから成る群より選択された1種から成る無機物を主体とする無機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの無機物を主体とする表面処理層を形成し、該無機表面処理に引き続いて、下記式(I)
    Figure 0004631111
    式中、φはベンゼン環を表し、Xは水素原子または下記式(II)
    Figure 0004631111
    ここでR 及びR の各々は炭素数10以下のアルキル基または炭素数10以下のヒドロキシアルキルである、で表される基Zを表し、基Zの導入率はベンゼン環1個当たり0.2〜1.0であるものとする、
    で表される反復単位から成る水性フェノール樹脂を主体とする有機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至300nm未満の有機表面処理層を形成した後、無配向のポリエステル系樹脂被覆を施すことによって製造される多層構造を有することを特徴とするイージーオープン缶蓋用アルミニウム製缶材料。
  5. 請求項4記載のアルミニウム製缶材料から形成されていることを特徴とするイージオープン缶蓋。
  6. アルミニウム基体の少なくとも容器内面側となる側の表面に、リン酸クロメート、リン酸ジルコニウム及びリン酸チタンから成る群より選択された1種から成る無機物を主体とする無機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの無機物を主体とする表面処理層を形成し、該無機表面処理に引き続いて、下記式(I)
    Figure 0004631111
    式中、φはベンゼン環を表し、Xは水素原子または下記式(II)
    Figure 0004631111
    ここでR 及びR の各々は炭素数10以下のアルキル基または炭素数10以下のヒドロキシアルキルである、で表される基Zを表し、基Zの導入率はベンゼン環1個当たり0.2〜1.0であるものとする、
    で表される反復単位から成る水性フェノール樹脂を主体とする有機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの有機表面処理層を形成した後、無配向のポリエステル系樹脂被覆を施すことを特徴とするツーピースシームレス缶用アルミニウム製缶材料の製造方法。
  7. アルミニウム基体の少なくとも容器内面側となる側の表面に、リン酸クロメート、リン酸ジルコニウム及びリン酸チタンから成る群より選択された1種から成る無機物を主体とする無機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至40nmの無機物を主体とする表面処理層を形成し、該無機表面処理に引き続いて、下記式(I)
    Figure 0004631111
    式中、φはベンゼン環を表し、Xは水素原子または下記式(II)
    Figure 0004631111
    ここでR 及びR の各々は炭素数10以下のアルキル基または炭素数10以下のヒドロキシアルキルである、で表される基Zを表し、基Zの導入率はベンゼン環1個当たり0.2〜1.0であるものとする、
    で表される反復単位から成る水性フェノール樹脂を主体とする有機表面処理を行い、平均膜厚が5乃至300nm未満の有機表面処理層を形成した後、無配向のポリエステル系樹脂被覆を施すことを特徴とするイージーオープン缶蓋用アルミニウム製缶材料の製造方法。
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