JP4984812B2 - イージーオープン蓋 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂被覆金属板から成るイージーオープン蓋に関するものであり、より詳細には、内面トップコート層の形成が不要で、生産性、経済性に優れたイージーオープン蓋に関する。
従来より、格別の器具を用いることなく手で容易に開封できる容器蓋として、所謂イージーオープン蓋が広く使用されている。この容器蓋は、加工性の点から金属素材としてぶりき、TFS等の表面処理鋼板やアルミニウム合金等にポリエステルフィルム等の樹脂被覆を施した樹脂被覆金属板を用い、この金属板から成る容器蓋に、金属板の厚み方向の途中に達するようにスコアを設けて、開口用部分を区画し、この開口用部分に蓋板自体でリベットを形成させ、このリベットでプルタブを固定したものであり、缶胴部材等のフランジとの間に二重巻締されて使用されている。
このようなイージーオープン蓋は、金属板に接着プライマーを介してポリエステルフィルムが被覆された樹脂被覆金属板から成っているが(特許文献1)、かかるポリエステルフィルムには、フィルム製膜の際に巻取りによりシワが発生することを防止するために滑剤が添加されており(例えば特許文献2)、この滑剤がリベット成形工程において成形工具に堆積し、フィルムに傷をつけてしまうことから、樹脂被覆金属板の内表面には、かかる滑剤の成形工具への付着を防止するためにトップコート層が形成されている。
特開昭62−52045号公報 特開2002−302558号公報
しかしながら、ポリエステル樹脂等で被覆されている樹脂被覆金属板を用いてイージーオープン蓋を成形する場合、フィルム中に含有される滑剤による上述した問題が生じなければ、本来トップコート層は不要であり、トップコート層を省略できれば、生産性、経済性を向上することが可能となる。
その一方、従来はトップコート層を形成するための加熱を行う際に、接着プライマー層の加熱も同時に行われていたため、トップコート層の形成が省略された場合には、従来用いられていた接着プライマー層では加熱が不十分になるという問題が生じる。
従って本発明の目的は、トップコート層を形成しなくても、成形工具への滑剤の付着堆積によるフィルムの傷つきや成形工具の損傷がなく、樹脂被覆が金属板に接着性よく被覆されている生産性、経済性に優れたイージーオープン蓋を提供することである。
本発明によれば、金属基体上にプライマーを介して滑剤含有二軸延伸フィルムが被覆された樹脂被覆金属板から成るイージーオープン蓋において、前記滑剤が、平均粒径が0.5乃至2.5μm及び平均粒径比(長径/短径)が1.0乃至1.2の範囲の球状であり、且つ二軸延伸フィルム中に0.05乃至0.5重量%の割合で配合されていると共に、前記プライマーが、数平均分子量が3000乃至8000の範囲にある片末端変性エポキシ樹脂とアルカリレゾール型フェノール樹脂を95:5乃至50:50の割合(重量比)で配合して成り、前記二軸延伸フィルム上にはトップコート層が形成されていないことを特徴とするイージーオープン蓋が提供される。
本発明のイージーオープン蓋においては、
1.二軸延伸フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートのブレンド物の何れかであること、
.プライマーの厚みが0.3乃至3μmであること、
.二軸延伸フィルムの厚みが10乃至40μmであること、
が好適である。
本発明によれば、樹脂被覆金属板の内面側ポリエステルフィルム上に形成する必要があったトップコート層を形成しなくても、ポリエステルフィルムに含有されている滑剤が成形工具に付着堆積することがないため、樹脂被覆の損傷が防止され、耐食性に優れたイージーオープン蓋を提供できる。
また本発明のイージーオープン蓋は、トップコート層を形成する必要がないため、トップコート層形成のための工程が短縮できると共に、成形工具の損傷も防止されるため、生産性に優れているという利点がある。
更に特定のプライマーを用いることにより、優れた耐フェザリング性と共に、低分子量成分の溶出が抑制され、優れたフレーバー性、衛生性をも得ることが可能となる。
本発明のイージーオープン蓋においては、金属基体上にプライマーを介して被覆される二軸延伸フィルムに配合される滑剤として、平均粒径が0.5乃至2.5μm及び平均粒径比(長径/短径)が1.0乃至1.2の範囲の球状であるものを選択し、且つ二軸延伸フィルム中に0.05乃至0.5重量%の割合で含有させることが重要な特徴であり、これにより該二軸延伸フィルム上にトップコート層を形成しなくても、従来樹脂被覆の傷つきの原因となっていた滑剤の成形工具への付着堆積を有効に防止することが可能となるのである。
本発明においては、滑剤の平均粒径及び平均粒径比(長径/短径)、並びに配合量のすべてが上記範囲内にあることが重要であり、これらが一つでも上記範囲にない場合には、上述した本発明の作用効果を得ることができないのである。
すなわち後述する実施例からも明らかなように、平均粒径比及び配合量が上記範囲内にある場合であっても、平均粒径が上記範囲よりも小さい場合には、成形工具に微小傷が発生するとともにフィルムの付着堆積という新たな問題が生じてしまい(比較例1)、一方上記範囲よりも平均粒径が大きい場合には、成形工具の傷つきとともに成形時にフィルムを損傷させ金属露出が発生してしまう(比較例5)。
また平均粒径及び配合量が上記範囲内にある場合であっても、平均粒径比(長径/短径)が上記範囲を外れる場合には、やはり成形工具に微小傷が発生するとともにフィルムの付着堆積が生じる(比較例6)。更に平均粒径及び平均粒径比が上記範囲内にある場合であっても、配合量が上記範囲よりも少ない場合には、フィルムが成形工具に付着してしまい(比較例2,4)、また上記範囲よりも多い場合には、成形工具に微小傷が発生してしまうのである(比較例3)。
また凝集状の滑剤の場合、平均粒径及び配合量が上記範囲内にある場合であっても成形工具に滑剤の付着堆積が生じフィルムを損傷させ金属露出が発生してしまうのである(比較例7)。
本発明においては、上述した滑剤を配合した二軸延伸フィルムを用いることにより、成形工具への滑剤粒子の付着堆積によるフィルムの傷つきという問題を解決することが可能であるが、かかる滑剤を配合した二軸延伸フィルムを金属板に接着するための接着プライマーとして、数平均分子量が3000乃至8000の範囲にある片末端変性エポキシ樹脂とアルカリレゾール型フェノール樹脂を95:5乃至50:50の割合(重量比)で配合して成るものを用いることが好ましい。
これによりトップコート層を形成する際の加熱を利用しなくても、滑剤含有二軸延伸フィルムを金属板に密着性よく被覆することが可能となり、フィルムの密着性に優れ、耐食性に優れたイージーオープン蓋を提供することが可能となるのである。
またこのプライマーから成る硬化塗膜においては、耐フェザリング性に優れていると共に、内容物に容易に抽出され得る、分解等により生成する低分子量成分が減少でき、衛生性・フレーバー性に優れているという利点がある(実施例1〜5、7〜11、比較例1〜10)。
(滑剤含有二軸延伸フィルム)
本発明のイージーオープン蓋に用いられる樹脂被覆金属板における被覆樹脂である二軸延伸フィルムは、従来樹脂被覆金属板に用いられていた熱可塑性樹脂、特にポリエステル樹脂から成るフィルムを用いることができる。
ポリエステル樹脂としては、ホモポリエチレンテレフタレートであってもよいが、テレフタル酸以外の酸成分を酸成分基準で30モル%以下の量で、またエチレングリコール以外のアルコール成分をアルコール成分基準で30モル%以下の量で含有する共重合ポリエステル単体またはそれらのブレンド物であってもよい。
テレフタル酸以外の酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。
またエチレングリコール以外のアルコール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのグリコール成分を挙げることができる。
ポリエステルは、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔η〕が0.5dL/g以上、特に0.52乃至0.70dL/gの範囲にあることが腐食成分に対するバリヤー性や機械的性質の点でよい。
好適にはポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートのブレンド物の何れかであることが好ましい。これらの樹脂はプライマーとの密着性が特に好ましく、スコア部を破断する際の剪断性に優れているため、耐フェザリング性を向上することができる。
前述した通り、本発明においては、かかる二軸延伸フィルム中に、平均粒径が0.5乃至2.5μm、及び平均粒径比(長径/短径)が1.0乃至1.2の範囲にある球状の滑剤が、二軸延伸フィルム中に0.05乃至0.5重量%の割合で配合されていることが重要である。
滑剤の平均粒径が上記範囲よりも大きいと製蓋加工時に、例えばスコア加工時やリベット加工時に粗大滑剤粒子が起点となりピンホールによる金属露出が発生する。一方、平均粒径が上記範囲よりも小さいと、フィルムの滑り性が不足し、フィルムの円滑な製膜が難しくなり、フィルムにシワが発生し、ラミネートの際にも支障を来たすとともに成形工具へのフィルムの付着堆積が発生する。
滑剤としては、上記粒径を満たす限り種々のものを使用することができ、例えばシリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機系滑剤、或いは架橋シリコン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂等の有機系滑剤を挙げることができるが、特に真球状シリカ、真球状シリコン、真球状炭酸カルシウム等を好適に使用することができる。
また二軸延伸フィルムには、上記滑剤の他、それ自体公知のフィルム用配合剤、アンチブロッキング剤、顔料、各種帯電防止剤、酸化防止剤等を公知の処方によって配合することができる。
滑剤含有二軸延伸フィルムの延伸倍率は、一般に横方向に3乃至5倍、縦方向に3乃至5倍の範囲にあることが好ましく、また滑剤含有二軸延伸フィルムの厚みは、一般に10乃至40μmの範囲にあることが好ましい。
上記範囲よりもフィルムの厚みが厚いと、スコア部を破断する際にフィルムが切れずに伸びるおそれがあり、耐フェザリング性が低下するおそれがあると共に経済性の点で好ましくない。一方上記範囲よりもフィルムの厚みが薄いと蓋成形の際に金属露出を生じるおそれがある。
本発明においては、上記滑剤含有二軸延伸フィルムがイージーオープン蓋の内面側の表層として位置すればよく、金属板側に下層が形成された二層構成にすることもできる。
下層としては上述したポリエステル樹脂の何れをも用いることができるが、特にエチレンテレフタレート単位を主体とし、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の少なくとも一種を1乃至30モル%の量で含有し、上層となる二軸延伸フィルムにおける上記酸成分の配合量よりもその量が多いポリエステル樹脂から成ることが、加工密着性、耐デント性等の点から好適である。
二層構成で用いる場合、下層の厚みは5乃至32μmの範囲にあることが好ましく、上層及び下層の厚み比は、1:1乃至1:4の範囲にあることが加工性、耐食性などの点から好ましい。
(プライマー)
本発明において、上記滑剤含有二軸延伸フィルムを金属板に接着するためのプライマーとしては、金属板とポリエステルフィルムの両方に優れた接着性を示すと共に、短時間で硬化し得るものであることが、従来のトップコート層を省略する上で重要であり、本発明においては、特に数平均分子量が3000乃至8000の範囲にある片末端変性エポキシ樹脂と、アルカリレゾール型フェノール樹脂を95:5乃至50:50、特に80:20乃至65:35の割合(重量比)で配合して成るものを好適に用いることができる。
このプライマーは、短時間での硬化が可能であると共に、ビスフェノールA等の低分子量成分の溶出量が顕著に抑制されているため、特に内容品が食品或いは飲料等の缶に用いるイージーオープン蓋に好適に用いることができる。
エポキシ樹脂としては特に制限はなく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂等はいずれも使用することができるが、通常はビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用する。
変性剤としては、例えばフェノール、p−アルキルフェノール、p−ターシャリーブチルフェノール等のフェノール類やビスフェノール及び有機酸類を使用することができ、好ましい変性剤としては、フェノール、p−クレゾール、p−ターシャリーブチルフェノール等が挙げられる。
本発明に用いるプライマーを構成する片末端変性エポキシ樹脂は、一方の末端のエポキシ基を変性してエポキシ樹脂を得るので、硬化塗膜中から缶の内容物に容易に抽出され得る分解等による低分子量成分を減少でき、衛生性・フレーバー性に優れる硬化塗膜を得ることができる。尚、両末端変性物は硬化剤に使用するフェノール類との反応点が少なくなるため、塗膜の硬化時に架橋反応にも組み込まれない可能性が高く、衛生性・フレーバー性を損なう一因と成り易いので好ましくなく、末端未変性エポキシ樹脂では低分子量の分解物が多くなるため、フレーバー性を損なうおそれがある。
また片末端変性エポキシ樹脂は、上述したように数平均分子量が3000乃至8000の範囲にあるものが特に好ましく、上記範囲よりも数平均分子量が大きい場合には、金属との密着性が低下し、耐フェザリング性が低下するおそれがあり、一方上記範囲よりも数平均分子量が小さい場合には、プライマーが脆くなるため、開口時プライマー自体が凝集破壊するおそれがあり、耐フェザリング性が低下するおそれがある。
一方、アルカリレゾール型フェノール樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類とを触媒の存在下に反応として得られたものを用いることができる。フェノール類としては、o−クレゾール、p−クレゾール、p−フェニルフェノール、p−ノニルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
本発明に用いるプライマーは、上記片末端変性エポキシ樹脂とアルカリレゾール型フェノール樹脂を、上述した量比で混合し、予備縮合及び必要に応じて触媒を加えることにより得ることができる。
片末端変性エポキシ樹脂とアルカリレゾール型フェノールの量比は、上述したように、95:5乃至50:50、特に80:20乃至65:35の割合(重量比)の範囲にあることが好ましく、上記範囲よりもエポキシ樹脂の量が多いとプライマー硬化不十分であり、金属との密着性が低下し、耐フェザリング性が低下するおそれがある。一方上記範囲よりもエポキシ樹脂の量が少ないとフェノールの自己縮合が起こるおそれがあり、プライマーが脆くなる場合がある。
触媒としては、リン酸、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、シュウ酸、酢酸等が挙げられる。
プライマー層は、一般に0.3乃至3μmの厚みに設けるのがよく、予め金属素材上に設けてもよいし、或いは二軸延伸フィルム又は下層フィルムに設けてもよい。上記範囲よりもプライマーの厚みが厚い場合には、成形部のプライマーが凝集破壊を生じてフィルム下での剥離や成形不良を生じするおそれがあり、一方上記範囲よりもプライマー層の厚みが薄い場合には、密着性に劣るおそれがあり、耐フェザリング性が低下するおそれがある。
(金属板)
本発明に用いる金属板としては、各種表面処理鋼板やアルミニウム合金等の軽金属板が使用される。表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍した後二次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の一種または二種以上行ったものを用いることができる。またアルミニウムメッキ、アルミニウム圧延等を施したアルミニウム被覆鋼板が用いられる。また軽金属板としては、いわゆる純アルミニウム板の他にアルミニウム合金板が使用される。アルミニウム合金板としては、具体的には、アルミニウム、アルミニウム−銅合金、アルミニウム−マンガン合金、アルミニウム−珪素合金、アルミニウム−マグネシウム合金、アルミニウム−マグネシウム−珪素合金、アルミニウム−亜鉛合金、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム合金、アルミニウム合金から成る芯材及びアルミ純度が99.5%以上の純アルミニウム層から成るクラッド材等を挙げることができる。またアルミニウム材の表面にリン酸クロメート処理、リン酸ジルコニウム処理、リン酸処理等の無機系表面処理や、ポリアクリル酸処理、フェノール樹脂やタンニン酸等の有機系表面処理、及びそれらを組み合わせた有機無機複合表面処理等の表面処理膜を形成させることが望ましい。
金属板の元板厚は、金属の種類、容器の用途或いはサイズによっても相違するが、一般に0.10乃至0.50mmの厚みを有するのがよく、この中でも表面処理鋼板の場合には0.10乃至0.30mmの厚み、軽金属板の場合は0.15乃至0.40mmの厚みを有するのがよい。
(樹脂被覆金属板)
図1は、本発明のイージーオープン蓋に用いる樹脂被覆金属板の一例の断面構造を示す図である。全体を1で示す本発明の樹脂被覆金属板は、金属板2、イージーオープン蓋の内面となる側の金属板2の表面にはプライマー層3を介して滑剤含有二軸延伸フィルム4とが形成されている。またイージーオープン蓋の外面となる側の金属板2の表面に、保護塗膜6が形成されている。
図2は、図1の樹脂被覆金属板において、滑剤含有二軸延伸フィルム4が上層4−1及びプライマー層3側の下層4−2から形成されている二層構成である例である。
本発明に用いる樹脂被覆金属板は、上述した滑剤含有二軸延伸フィルムを予め従来公知の方法により作成し、これをプライマーが塗布された金属板に積層するか、或いは滑剤含有二軸延伸フィルムにプライマーを塗布して金属板に積層する。
(イージーオープン蓋)
本発明のイージーオープン蓋は、上述した樹脂被覆金属板の滑剤含有二軸延伸フィルムが形成された面を蓋の内面側となるようにして成形する以外は従来公知の形状をとることができ、フルオープン方式又はパーシャル方式の何れであってもよい。
イージーオープン蓋の成形は、先ずプレス成形工程で、樹脂被覆金属板を円板の形に打抜くと共に、所望の蓋形状に成形する。次いで、スコア刻印工程で、スコアダイスを用いて、蓋の外面側からスコアが金属素材の厚み方向の途中に達するようにスコアの刻印を行う。リベット形成工程において、リベット形成ダイスを用いてスコアで区画された開口用部に外面に突出したリベットを形成させ、タブ取付工程で、リベットに開口用タブを嵌合させ、リベットの突出部を鋲出してタブを固定させることにより、イージーオープン蓋が成形される。
図3及び図4に、本発明のイージーオープン蓋の一例であるパーシャルタイプのイージーオープン蓋を示す。図3は上面図、図4は図2のA−A線における断面図を表すものである。
全体を10で示す本発明のイージーオープン蓋は、中央パネル部11、強化環状溝12及び最外周の巻締部13から成っている。中央パネル部11には、スコア14で囲まれた開口予定部15があり、また開口用タブ16がリベット17を介して固着されている。開口用タブ16は把持用リング18と押込用先端19と、リベット固定用舌片20を備えており、押込用先端19が開口予定部15と重なるように取り付けてある。強化環状溝12は、中央パネル部11から中央パネルラジアス部21を介して、内壁部22、ラジアス部23及び外壁部(チャックウォール)24からなっており、この外壁部24はシーミングパネル部25及びカール部26に接続されている。シーミングパネル部25及びカール部26の裏側は溝27になっており、この溝27には、密封用組成物(図示せず)がライニングされ、缶胴フランジ(図示せず)との間に二重巻締による密封が行なわれることになる。
(アルミニウム合金板の洗浄)
市販のアルミニウム−マンガン合金板(JIS5021 板厚:0.25mm
)を、市販の強アルカリ系脱脂剤「ファインクリーナー4377」(商標、株式会社日本パーカライジング社製)を用いて、薬剤濃度:20g/L、処理温度60℃、処理時間7秒の条件でスプレー処理した。その後、表面に残存しているアルカリ分を水道水により洗浄した。
(アルミニウム合金板への処理)
得られたアルミニウム合金板に、日本パーカライジング社製「アルクロムK702」の表面処理液を用いスプレーにて温度50℃〜60℃、処理時間1秒〜5秒にて表面処理した後、未反応物を水道水により洗浄後、更に3000,000Ω以上の脱イオン水にて洗浄し、その後80℃で乾燥し、表面処理アルミニウム板を得た。
(プライマーの作製)
ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂エピコート1010(分子量5500、エポキシ当量4000)500重量部、p−ターシャリーブチルフェノール20重量部を反応器に投入し、かき混ぜながら60℃まで加熱した後に、10重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を0.4重量部加え、140℃まで徐々にあげ重合を開始し、更に170℃まで上げ内容物の粘度が一定になったところで内容物を取り出し、室温まで冷却することにより片末端をp−ターシャリーブチルフェノールで変性したエポキシ樹脂を得た(分子量5700、エポキシ当量7300)。
p−クレゾール500重量部とホルマリン250重量部を水酸化マグネシウム触媒の存在下に反応させ、精製させ、溶媒に溶解させてレゾール型フェノールホルムアルデヒド樹脂溶液を製造した。
上記片末端変性エポキシ樹脂と上記レゾール型フェノールホルムアルデヒド樹脂を固形分重量比で70:30の量比で混合し、予備縮合させ、リン酸を固形分に対して0.2重量部の割合で配合してプライマーを調整した(実施例1〜5、比較例1〜10)。
同様に固形分重量比で40:60〜98:2の量比で混合し、予備縮合させ、リン酸を固形分に対して0.2重量部の割合で配合してプライマーを調整した(実施例6〜12)。
また、ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂エピコート1010(分子量5500、エポキシ当量4000)500重量部、p−ターシャリーブチルフェノール50重量部を反応器に投入し、かき混ぜながら60℃まで加熱した後に、10重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を0.4重量部加え、140℃まで徐々にあげ重合を開始し、更に170℃まで上げ内容物の粘度が一定になったところで内容物を取り出し、室温まで冷却することにより両末端をp−ターシャリーブチルフェノールで変性したエポキシ樹脂を得た(分子量5800、エポキシ当量14000)。
この、両末端変性エポキシ樹脂と上記レゾール型フェノールホルムアルデヒド樹脂を固形分重量比で70:30の量比で混合し、予備縮合させ、リン酸を固形分に対して0.2重量部の割合で配合してプライマーを調整した(実施例13)。
さらに、ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂エピコート1010と上記レゾール型フェノールホルムアルデヒド樹脂を固形分重量比で70:30の量比で混合し、予備縮合させ、リン酸を固形分に対して0.2重量部の割合で配合してプライマーを調整した(実施例14)。
(フィルムの作製)
平均粒径1.5μm、平均粒径比1.1の真球状シリカ滑剤を0.1重量%含有するイソフタル酸11モル%共重合ポリエチレンテレフタレートを、260〜290℃にて溶融押出し、回転ドラム上にて急冷固化して未延伸フィルムを得、ついでこの未延伸フィルムを80〜110℃にて縦方向に3〜5倍延伸し、次いで90〜130℃にて横方向に3〜4倍延伸し、その後、フィルムを160〜195℃で熱固定することにより製造した。このフィルムの延伸後の膜厚は、30μmであった(実施例2、6〜14)。
同様にして、滑剤の平均粒径、平均粒径比、配合量の違うフィルムを作製した(実施例1、3〜5、比較例1〜10)。
尚、滑剤の平均粒径及び平均粒径比は、使用する滑剤を電子顕微鏡で観察して粒径及び粒径比(長径/短径)を測定し、n=50個の平均値をとった。
(プライマーのフィルムへの塗布)
上記フィルムの片面に前記プライマーを乾燥後の厚み1μmとなるように塗布し、100℃のオーブンで乾燥した。
(ラミネート板の作製)
上記表面処理アルミニウム板を230℃に加熱し、上記作製したプライマーを塗布したイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを、プライマー塗布面がアルミニウム板側になる様に、ラミネートロール温度150℃、通板速度150m/分で熱ラミネートし直ちに水冷することにより片面ラミネートしたアルミニウム合金板を作製した。
(外面塗料塗布)
上記片面ラミネートアルミニウム合金板のラミネートしていない面にエポキシユリア塗料を塗布し(乾燥後の膜厚3μm)、185℃10分焼付けてアルミニウム合金缶蓋用素材を得た。
(缶蓋の作製)
作製した樹脂被覆アルミニウム合金缶蓋用素材を、上記ラミネート面が蓋の内面側に存在する方向で直径68.7mmに打ち抜き、カール部の内面側となるべき部分にシーリングコンパウンドを塗布し、乾燥させ、次いで蓋の外面側にパーシャル開口型のスコア加工(スコア残厚110μm、スコア幅20μm)、リベット加工並びに開口用タブの取り付けを行い、イージーオープン蓋の作製を行った。表1に各実施例及び比較例のプライマーの組成、及び滑剤の平均粒径、形状、平均粒径比、配合量を示した。
Figure 0004984812
(評価方法)
下記評価を行い、結果を表2に示した。
1.製膜時フィルム巻き取り性
滑剤の平均粒径及び配合量によってフィルムの滑り性が不足しフィルムにシワが発生することからフィルムのシワの有無を評価した。
○:シワなし
×:シワ発生
2.リベット成形工具の状態評価
リベット形成工程において、リベット形成ダイスを用いてスコアで区画された開口用部に外面側に突出したリベットを形成させ、タブ取付工程でリベットに開口用タブを嵌合させ、リベットの突出部を鋲打しタブを固定させる際にリベット内部に接触する成形工具の約10万枚成形後の状態を評価した。
3.蓋の金属露出評価
イージーオープン蓋と嵌合する口径で電極を付したアクリル樹脂製容器に電解液として1%食塩水を注入し、イージーオープン蓋を液が漏れない様に装着した。次いで6.3Vの電圧を与えて、通電量Aにより金属露出程度を評価した(尚、実用適性は0.5mA以下である)。各n=200枚で実施した。
○:0≦A≦0.5mA
△:0.5<A≦2.0mA
×:2.0mA<A
4.フレーバー評価
一般食罐用TFS製ツーピース缶胴に蒸留水を充填し常法に従いイージーオープン蓋を巻締め、レトルト殺菌処理(125℃で30分間)し、フレーバーを評価した
○:樹脂臭を感じない
×:樹脂臭を感じる
5.フェザリング評価
イージーオープン蓋について、レトルト殺菌処理(115℃で60分間)前後で実際に蓋を開口し、開口部分のフェザリングLの発生を評価した(尚、実用適性は, 1.5mm以下である)。各n=270枚で実施した。
○:0≦L≦1.0mm
△:1.0<L≦1.5mm
×:1.5mm<L
Figure 0004984812
本発明のイージーオープン蓋に用いる樹脂被覆金属板の断面構造の一例を示す図である。 本発明のイージーオープン蓋に用いる樹脂被覆金属板の断面構造の他の一例を示す図である。 本発明のイージーオ-プン蓋の一例の上面図である。 図3の線A−Aにおける拡大断面図である。

Claims (4)

  1. 金属基体上にプライマーを介して滑剤含有二軸延伸フィルムが被覆された樹脂被覆金属板から成るイージーオープン蓋において、
    前記滑剤が、平均粒径が0.5乃至2.5μm及び平均粒径比(長径/短径)が1.0乃至1.2の範囲の球状であり、且つ二軸延伸フィルム中に0.05乃至0.5重量%の割合で配合されていると共に、前記プライマーが、数平均分子量が3000乃至8000の範囲にある片末端変性エポキシ樹脂とアルカリレゾール型フェノール樹脂を95:5乃至50:50の割合(重量比)で配合して成り、前記二軸延伸フィルム上にはトップコート層が形成されていないことを特徴とするイージーオープン蓋。
  2. 前記二軸延伸フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートのブレンド物の何れかである請求項1記載のイージーオープン蓋。
  3. 前記プライマーの厚みが0.3乃至3μmである請求項1又は2記載のイージーオープン蓋。
  4. 前記二軸延伸フィルムの厚みが10乃至40μmである請求項1乃至の何れかに記載のイージーオープン蓋。
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