JP4487651B2 - 表面処理金属材料及びその表面処理方法、並びに樹脂被覆金属材料、金属缶、金属蓋 - Google Patents
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Description
これらの処理を利用した金属材料は、家電製品や建材、車両、航空機、容器などの用途に広く利用されており、中でも、クロメート処理はその優れた耐食性と密着性から最も広く利用されてきた。
クロメート処理を処理方法から大別すると、化成型(反応型・塗布型)と電解型に分類でき、形成被膜から大別すると、自己修復効果をより大きく利用するために最終製品中に微量の6価クロムが残存するタイプと最終製品中に6価クロムが残存しないタイプに分類できる。
また、陽極酸化処理を利用した方法では、一次密着性は良好であるが、内容物充填後のレトルト殺菌処理により密着性が低下するという傾向にある他、処理設備にもコストがかかる上、処理に大電力を必要とするためコスト高となる問題があった。
更に、アルミニウム箔のような基材自身の厚みが薄い場合には、陽極酸化処理時の基材の溶解や加工性の乏しい陽極酸化膜の占める割合が高くなり、箔の柔軟性を低下させるという問題があった。
また上記特許文献6のように、陰極電解によりチタン酸化物被膜を生成する場合には、従来の化成処理等に比して被膜形成の高速処理が可能であるが、陰極近傍で濃度分極を生じてしまい、その結果析出が阻害され、効率的にチタン酸化物被膜を形成することが困難である。
一方、金属材料の表面にTiO2やZrO2などをPVDやCVDなどによって、形成することも公知であるが、真空を要するために、設備にコストがかかる上、高速処理は困難であり、結果的に更にコスト高となる。また、金属材料基体と処理膜との密着性や加工後の耐食性を確保することが難しい。
また本発明の他の目的は、水溶液からの高速処理により製造が容易で低コストの表面処理方法を提供することである。
本発明の更に他の目的は、上記表面処理金属材料に有機樹脂、中でも特にポリエステル樹脂を被覆して成る樹脂被覆金属材料から成る耐食性、耐デント性、耐傷性、耐磨耗性等に優れた金属缶及び開口性に優れた缶蓋等の金属蓋を提供することである。
本発明によればまた、金属板表面に無機成分を主体とする表面処理層、及び該表面処理層の少なくとも片面上に有機樹脂被覆が形成されている樹脂被覆表面処理金属板であって、前記無機表面処理層が、陰極電解を断続的に実施して形成され、Fと水酸基を含むTi或いはTi及びZrの酸化物からなり、前記無機表面処理層の最表面に含有される、PとM(但しMは、Ti或いはTi及びZr)の原子比が0≦P/M<0.6であり、O
とTiの原子比が、1<O/Ti<5であり、FとM(但しMは、Ti或いはTi及びZr)の原子比が、0.1<F/M<2.5であり、Tiの重量膜厚が5〜300mg/m 2 であることを特徴とする缶又は缶蓋用樹脂被覆表面処理金属板が提供される。
1.無機表面処理層がZrを含有し、最表面に含有されるOとM (但しMは、Ti及びZr)の原子比が、1<O/M<5であり、Ti及びZrの重量膜厚で、5〜300mg/m 2 であること、
2.無機表面処理層が、Si量で20〜80mg/m 2 のSiO 2 粒子を含有すること、
3.無機表面処理層の上に、30mg/m 2 以下のSi量であるシランカップリング剤処理層が形成されていること、
4.無機表面処理層の上に、フェノール系水溶性有機化合物を主体とする有機表面処理
層が形成されていること、
5.無機表面処理層が、炭素原子換算で6〜30mg/m 2 の範囲の含有量であるフェノール系水溶性有機化合物を主体とする有機表面処理層の上に形成されていること、
6.有機樹脂被覆が、熱可塑性ポリエステル樹脂から成ること、
が好適である。
この表面処理方法においては、
1.水溶液がZrを含有すること、
2.浴濃度が、M(但しMは、Ti或いはTi及びZr)として0.010〜0.050モル/リットル、Fとして0.03〜0.35モル/リットルの範囲にあること、
3.水溶液が、粒径として4〜80nmの水分散性シリカを含有すること、
4.無機被膜を形成した後に、フェノール系水溶性有機化合物又はシランカップリング
剤を塗布乾燥させて有機被膜を形成させること、
5.炭素原子換算で6〜30mg/m 2 の範囲の含有量であるフェノール系水溶性有機化合物を主体とする層を形成した後に電解により前記無機被膜を形成させること、
が好適である。
本発明の表面処理金属材料及び樹脂被覆金属材料においては、特に金属缶及び缶蓋等の金属蓋に有効に使用できるが、これ以外にも自動車、家電製品、建材等の用途にも有効に使用することができる。
従来の金属材料の表面処理方法である、化成処理や陽極酸化処理では、被膜形成機構上、硫酸イオンやリン酸イオンが膜中に含まれやすく、化成処理では構成成分となっている。これら膜中のアニオン、特にリン酸イオンのように、イオン半径の大きいアニオンは、レトルト殺菌処理などの高温多湿下で溶出しやすいことがわかっており、処理被膜からこのようなアニオンが溶出すると、表面処理金属材料上に設けられた樹脂被膜の密着性や接着性が低下することになる。
本発明においては、無機表面処理層のアニオン量、特にリン酸イオンまたはP/Tiを制御することにより、レトルト殺菌や高温多湿条件下での経時保管などに付された場合にも、処理被膜中からのアニオンの溶出が有効に抑制されているため、樹脂被膜の密着性又は接着性が低下することが有効に防止されているのである。
すなわち、無機表面処理層が、Ti,Oを主構成成分とし、Fを含まない場合には、処理膜の構造は、TiOX(OH)Yのような構造になっていると予想される。
しかし、水酸基は、高温多湿環境下において、水和して処理層の構造変化を誘起し諸特性に悪影響を及ぼす可能性がある。適量のFを含むことによって、水酸基の少なくとも一部をFで置換して、TiOX(OH)Y−ZFZのような安定化構造をとることにより、高温多湿環境下での処理層の構造変化を抑制し、より一層安定な表面を保持することが可能となるのである。
上述した無機表面処理層が主として金属材料の耐食性に寄与するものであるのに対し、有機表面処理層は、主としてポリエステル樹脂等の有機被覆との密着性に寄与するものであるが、これらはこの順序で積層されることにより、金属缶におけるネック加工、缶蓋におけるリベット加工のように厳しい加工に付された場合にも、有機樹脂被覆との優れた加工密着性及び耐食性をも発現することが可能となるのである。
更に本発明の表面処理金属材料においては、フェノール系水溶性有機化合物を主体とする有機表面処理層の上に前記無機表面処理層が形成されていても良い。
この場合、最表面は無機表面処理層となるが、金属基材に近い表面処理層の内側部は、有機表面処理層の被膜欠陥部または被膜厚みの薄いところに電解析出した無機処理層も存在しており、有機と無機が混在した部分が形成されていると考えられる。したがって、無機表面処理は有機表面処理層の欠陥部をカバーする事で、金属材料の耐食性に寄与し、最表面の無機表面処理層が加工により割れた際には、下にある有機表面処理層がポリエステル樹脂等の有機被覆との密着性に寄与することで、金属缶におけるネック加工、缶蓋におけるリベット加工のように厳しい加工に付された場合にも、有機樹脂被覆との優れた加工密着性と無機処理層の優れた耐食性を発現することが可能となるのである。
金属材料表面に形成されたシランカップリング剤層やフェノール系有機表面処理層の上にポリエステル被膜を形成した樹脂被覆金属材料を成形して容器とする事による、最も顕著な効果は、成形後のヒートセット工程において、シランカップリング剤層やフェノール系有機表面処理層が改めてポリエステルと相溶することによる再接着効果が得られる事である。すなわち、成形加工によってポリエステル−金属界面の密着力が低下するが、ヒートセット工程において、ポリエステルの融点以上にまで加熱することなく、シランカップリング剤層やフェノール系有機表面処理層がポリエステルと相溶することで、密着力の回復が起こる。
もし、無機表面処理層が存在しなければ、レトルト時の金属基材表面変化を抑制するのが困難であり、耐食性の面からも好ましくない。一方、上記のような機構で密着力の回復が起こることから、無機表面処理層は、必ずしも、有機表面処理層の下である必要はない。すなわち、有機表面処理層の上に無機表面処理層がある場合、成形加工で無機表面処理層のクラックを生じた部分から有機表面処理層が現れ、ヒートセット時に同様の効果を示すと考えられる。但し、有機表面処理層の上に無機表面処理層を形成する場合には、湿潤下での密着性に優れた無機表面処理層を電解により形成する必要がある事から、下地となる有機表面処理層の導電性が重要な課題となる。この点において、フェノール系有機表面処理層は、リン酸やフッ化水素酸を用いた化成処理剤から処理する事で、薄膜形成による導電性の確保が容易であるが、シランカップリング剤層は、膜厚のコントロールが難しく、また、薄膜では十分に性能を発揮することが困難であるに発揮できない。したがって、無機表面処理層が上に形成される際の有機表面処理層としては、フェノール系水溶性有機化合物を主体とする有機被膜を好適に用いることができるのである。
陰極電解処理によれば、従来の化成処理被膜と比較して、単位時間あたりのTi重量膜厚の制御範囲を大幅に広げることができ、用途に応じた被膜生成が可能となるのである。
一方、従来の化成処理においては、処理液組成による化学反応に依存していることから被膜形成速度が限定されており、このため高速処理では膜厚が制限されるのに対して、陰極電解処理では、電解反応を利用するため、被膜形成の高速処理が可能になるのである。また化成処理や陽極酸化処理では、被膜形成機構上、硫酸イオンやリン酸イオンが膜中に含まれやすく、化成処理では構成成分になってしまうため、上述したようなアニオン量の制御が困難である。これに対して、陰極電解処理によれば、フッ化物の水溶液を用いるため、硫酸イオンやリン酸イオンのような大きなイオン半径を持つアニオンの量が制御された被膜を形成することが可能になるのである。
更に、本発明の金属材料の表面処理方法においては、陰極電解処理を断続的に実施することが好ましい。すなわち、電解を連続的に行うのではなく、電解途中に停止時間を設けることにより、表面処理層のO/Ti比をコントロールし、かつ、連続電解時より析出効率を高めることができ、結果として高品質で高速な処理が可能となるのである。
以下、Tiのみを含有する場合、或いはTiのみならずZrをも含有する場合を含めて、これらをMと表記して説明することがある。
〈無機表面処理層〉
本発明の表面処理金属材料においては、上述した通り、表面処理金属材料の無機表面処理層が、リン酸を含有していないことが一つの重要な特徴であり、後述する実施例の結果から明らかなように、本発明の表面処理金属材料においては、X線電子分光装置による無機表面処理層にはリン酸に由来するP2pのピークが認められていない(実施例1〜7、10〜13、15、16)。
また本発明の表面処理金属材料の無機表面処理層はTi、O、Fを主構成成分として含有し、特にその最表面層は、O/M(但し、MはTi又はTi及びZr)の値が原子比で1〜10の範囲、特に1〜5の範囲にあることが望ましい。O/Mが上記範囲よりも小さい場合には、被膜作成が困難であり、一方O/Mが上記範囲よりも大きい場合には、十分な密着性が得られないからである。
更に、本発明の表面処理金属材料においては、表面処理金属材料の無機表面処理層の最表面に含有されるF/M(但し、MはTi又はTi及びZr)の値が原子比で0.1〜2.5の範囲、特に0.5〜2.0の範囲にあることが望ましい。F/Mが上記範囲より小さい場合には、前述したTiOX(OH)Y−ZFZ及びZrOX(OH)Y−ZFZのような安定化構造をとれずに、高温多湿環境下での密着性が低下しやすく、一方F/Mが上記範囲よりも大きい場合にも、イオン半径が小さいとはいえ、Mに対するアニオン量が過多となり、やはり密着性が低下する。
無機表面処理層にSiO2粒子を含有させる場合、表面処理金属材料の無機表面処理層の最表面に含有されるSiの表面被覆率は、原子比で10〜30%、特に15〜30%の範囲にあることが望ましい。Siの表面被覆率が上記範囲よりも小さい場合には被膜作成が困難であり、一方Siの原子濃度が上記範囲よりも大きい場合には、水分散性シリカを配合することによる安定な被膜形成効果を十分に得ることができないからである。
なお、Siの表面被覆率は、上述の原子比の測定と同じくXPSにより、構成成分となる主要な元素を測定し、全体を100%とした時のSi2pの原子濃度を表面被覆率と定義した。但し、原子比の測定と同じく、Cが原子濃度で10%以下となるまでArスパッタリングにより汚染層を軽く除去した時点での濃度を求める必要がある。
測定に用いる表面処理金属材料の状態としては、清浄な状態であれば、そのまま表面を解析する。有機樹脂が接着や融着された後であれば煮沸した過酸化水素水などに数分間浸漬してまず有機樹脂層を除去する必要がある。
清浄でないサンプルや前述の有機樹脂被覆層を除去後のサンプルは、有機物由来によるC層をC,O,F,M(但し、MはTi、或いはTi及びZr)基材金属元素などの主要元素の和を100%とした時に対して、Cが原子濃度で10%以下となるまでArスパッタリングにより汚染層を軽く除去した時点でのP/M,O/M,F/M比を求めることができる。また、定法により、P,O,FおよびM(但し、MはTi、或いはTi及びZr)の各元素についてバックグランド除去後のピーク面積を求めてから、測定装置の相対感度係数を用いて各元素の原子濃度を求め、P/M,O/M,F/Mを計算により求めてもよい。
M(但し、MはTi、或いはTi及びZr)膜厚の測定方法としては、市販の蛍光X線分析装置により定量する。まず、Ti重量膜厚既知の複数のサンプルからTi膜厚とTiのX線強度の関係を示す検量線を作成し、ついで、未知試料を用いて測定したTiのX線強度を、検量線に基づき重量膜厚に換算する。なお、Tiと共にZrを含有している場合でも同様にZrの検量線を作成して重量膜厚を換算し、Tiの重量膜厚と合算することにより求めることができる。
本発明の表面処理金属材料においては、前記無機表面処理層の上にSi量が30mg/m2以下であるシランカップリング剤処理層が更に形成されていることが特に好適である。
シランカップリング剤処理層を形成するシランカップリング剤は、熱可塑性ポリエステル樹脂と化学結合する反応基と無機表面処理層と化学結合する反応基を有するものであり、アミノ基、エポキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基等の反応基と、メトキシ基、エトキシ基等の加水分解性アルコキシ基を含むオルガノシランから成るものや、メチル基、フェニル基、エポキシ基、メルカプト基等の有機置換基と加水分解性アルコキシ基を含有するシランを使用することができる。
本発明において、好適に用いることができるシランカップリング剤の具体例としては、γ-APS(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)、γ−GPS(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、BTSPA(ビストリメトキシシリルプロピルアミノシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
シランカップリング剤処理層は、Si量が30mg/m2以下、特に15mg/m2以下となるように形成されていることが好ましい。上記よりもSi量が多いと、未反応のシランカップリング剤が自己縮合するため満足し得る加工密着性、耐食性を得ることができない。
なお、Siの表面被覆率は、上述の原子比の測定と同じくXPSにより、構成成分となる主要な元素を測定し、全体を100%とした時のSi2pの原子濃度を表面被覆率と定義した。但し、原子比の測定と同じく、Cが原子濃度で10%以下となるまでArスパッタリングにより汚染層を軽く除去した時点での濃度を求める必要がある。
本発明の表面処理金属材料においては、前記無機表面処理層とフェノール系水溶性有機化合物を主体とする層が存在していることが特に好適であり、無機表面処理層は、フェノール系水溶性有機化合物層を主体とする有機又は有機無機表面処理層の上にあっても、下にあっても良い。
ここで、フェノール系水溶性有機化合物層の上に無機表面処理層が存在する場合とは、フェノール系水溶性有機化合物を主体とする層を形成した後に、無機表面処理層を形成した場合を指している。この場合、最表面は無機表面処理層となるが、金属基材に近い表面処理層の内側部は、有機表面処理層の被膜欠陥部または被膜厚みの薄いところに電解析出した無機処理層も存在しており、有機と無機が混在した部分が形成されていると考えられる。
フェノール系水溶性有機化合物としては、下記式(1)
OH
|
− φ −CH2− ・・・(1)
|
X
式中、φはベンゼン環を表し、Xは水素原子又は下記式(2)
Z= −CH2−N−R1 ・・・(2)
|
R2
式中、R1及びR2の各々は炭素数10以下のアルキル基又は炭素数10以下のアルキル基又は炭素数10以下のヒドロキシアルキル基である、で表されるZを表し、基Zの導入率はベンゼン環1個当たり0.2〜1.0であるものとする、
で表される反復単位から成るフェノール樹脂であることが好適である。
またフェノール系水溶性有機化合物の他の例としては、タンニンを挙げることができる。タンニンは、タンニン酸ともいい、フェノール性ヒドロキシル基を有する複雑な構造の芳香族化合物の総称である。
タンニンとしては、ハマメリタンニン、カキタンニン、チャタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランタンニン、ジビジビタンニン、アルガロビラタンニン、バロニアタンニン、カテキンタンニン等を挙げることができる。タンニンは、数平均分子量が200以上であることが好ましい。
上記フェノール系水溶性有機化合物を主体とする有機表面処理層においては、かかる有機表面処理層中に炭素原子換算で3〜75mg/m2、特に6〜30mg/m2の範囲の含有量でフェノール系水溶性有機化合物を含有していることが望ましい。上記範囲よりも少ない場合には、有機表面処理被膜の密着性に劣り、一方上記範囲よりも多い場合には有機表面処理被膜の膜厚が必要以上に大きくなり密着性及び耐食性が低下する。
また、上記フェノール系水溶性有機化合物を主体とする有機表面処理層は、カーボンを主成分とする有機化合物と、リン化合物とジルコニウムあるいはチタン化合物を含む表面処理剤を用いて形成された有機-無機複合層であっても良い。
図3に示す表面処理金属材料1は、Ti,O,Fを主構成成分とする無機表面処理層3を有している点は図1と同じであるが、金属材料基体2が金属材料2aと金属メッキ層2bにより構成されている。基体2の大部分を占める金属材料2aに被覆される金属メッキ層2bは、後述するように、金属材料2aの耐食性を高める役割を持つものが使用される。
本発明に用いる金属材料基体としては、各種表面処理鋼板やアルミニウム等の軽金属材料などが使用される。表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍した後二次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、アルミニウムメッキ等の表面処理の一種または二種以上行ったものを用いることができ、他にアルミニウムクラッド鋼板なども用いることができる。金属材料基体の表面側にメッキまたはクラッドなどにより形成される金属は、中心側に位置する金属の耐食性や耐摩耗性、通電性などの様々な性質を改善する目的で付けられているが、一般的には、耐食性を改善する目的で付与されている場合がほとんどである。また、軽金属材料としては、いわゆる純アルミニウムの他にアルミニウム合金が使用される。金属材料の元厚は、特に限定はなく、金属の種類、容器の用途或いはサイズによっても相違するが、金属板としては一般に0.10乃至0.50mmの厚みを有するのがよく、この中でも表面処理鋼板の場合には0.10乃至0.30mmの厚み、軽金属板の場合は0.15乃至0.40mmの厚みを有するのがよい。
本発明の金属材料の表面処理方法においては、Ti(必要によりZrも含む)とFを含有しリン酸イオン濃度が、PO4として0.003モル/リットル未満、より好ましくはリン酸を含有しない水溶液中で陰極電解処理することが重要な特徴である。
前述した通り、陰極電解処理によれば、従来の化成処理被膜と比較して、単位時間あたりのTi重量膜厚の制御範囲を大幅に広げることができ、用途に応じた被膜生成が可能となる。
これは、連続的に電解していると陰極近傍で濃度分極を生じ、析出が阻害されるのに対し、断続的に電解することにより、電解停止の間に攪拌効果により、陰極近傍へTi,O,OH,Fなどのイオンが供給されると共に、陰極に生成したルーズな膜、すなわち、O/Ti比の大きい膜を取り去り、結果としてTi重量膜厚の形成速度が速く、かつ、より高品質な膜を提供することになる。
通電と停止のサイクルは、これに限定されるものではないが、通電時間が0.1乃至0.8秒、停止時間が0.3乃至1.5秒の範囲で、2乃至10サイクル行うことが好ましい。
また、ZrをTiと共に使用する場合、Zr薬剤としてはフッ化ジルコニウムカリウムKZrF6やフッ化ジルコニウムアンモニウム(NH4)2ZrF6、炭酸ジルコニウムアンモニウム溶液(NH4)2ZrO(CO3)2などを用いることができる。
また、チタンイオンやジルコニウムイオンとフッ素イオンを別々の薬剤より供給することもでき、Ti薬剤としてシュウ酸チタンカリウム2水和物K2TiO(C2O4)2・2H2O、塩化チタン(III)溶液TiCl3、塩化チタン(IV)溶液TiCl4など、Zr薬剤としてオキシ硝酸ジルコニウムZrO(NO3)2、オキシ酢酸ジルコニウムZrO(CH3COO)2など、F薬剤としてフッ化ナトリウムNaF、フッ化カリウムKF、フッ化アンモニウムNH4Fなどを用いることができる。
浴中のFイオンの浴濃度としては、Fとして、0.03モル/リットル〜0.35モル/リットルの範囲にあることが好ましい。上記範囲よりもフッ素イオン濃度が低いと、陰極である金属表面上にゲル状物質が生成し、連続生産時のハンドリング性を阻害するとともに、特性面でも高温多湿環境下で経時的に不安定な表面となるので好ましくなく、上記範囲よりも浴濃度が高いと析出効率を阻害する傾向があるとともに、浴中に沈殿物を生じやすいので好ましくない。
硝酸イオンは、長期にわたって電解する際に、析出状態の安定性を保つ効果があり、硝酸、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムなどをイオン源として用いることができる。過酸化物は、水溶液中で酸素を発生し、陰極表面近傍の濃度分極を抑制する効果があり、浴の攪拌が乏しい時に特に有用である。過酸化物としては、例えば、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソホウ酸ナトリウム、ペルオキソ炭酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウムなどを用いる事ができる。さらに、錯化剤は、浴中に沈殿物が生成するのを抑える働きがあり、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリシンなどを用いることができる。硝酸イオン、過酸化物、および錯化剤の添加濃度は、高濃度すぎると析出効率を阻害する傾向があり、硝酸イオン、過酸化物、錯化剤のそれぞれの濃度は0.2モル/リットル以下であることが好ましい。
陽極側に相当する対極板には、酸化イリジウム被覆したチタン板が好適に用いられる。対極板の条件としては、電解中に対極材料が処理液中に溶解せず、酸素過電圧の小さい不溶性陽極であることが望ましい。
有機被膜を無機表面処理層上に形成するには、上述したフェノール系水溶性有機化合物又はシランカップリング剤溶液を無機表面処理層上に塗布、若しくはフェノール系水溶性有機化合物又はシランカップリング剤溶液中に無機表面処理層を形成した表面処理金属材料を浸漬し、その後絞りロールで過剰な溶液を除去した後、80〜180℃の温度条件下で加熱乾燥することによりすることにより形成することができる。
本発明の樹脂被覆金属材料は、上記表面処理金属材料の少なくとも片面に有機樹脂、中でも特にポリエステル樹脂から成る層を被覆して成るものであり、上述した表面処理金属材料を用いることから、樹脂被覆の密着性及び接着性に優れており、このため優れた耐食性、耐デント性を有している。
本発明の樹脂被覆金属材料の一例の断面図を示す図5において、この樹脂被覆金属材料1は、容器としたときの内面側(図において右側)で見て、金属材料基体2、基体表面に設けられた、Ti,O,Fを主構成成分とする無機表面処理層3、無機表面処理層3の上に設けられた有機表面処理層4、及びその上に設けられたポリエステル樹脂被覆層5の多層構造を有している。図5の例では、容器としたときの外面側(図において左側)において、前記無機表面処理層3を介して外面樹脂保護層6を備えているが、外面樹脂保護層6は、前記ポリエステル樹脂被覆層5と同一のポリエステル樹脂であっても、或いはこれと異なるポリエステル樹脂からなっていてもよく、また異なる樹脂からなっていてもよい。
備えている点では、図5のものと同様であるが、基体2が金属材料2aと金属メッキ層2bにより構成されており、更に、ポリエステル樹脂層5がポリエステル樹脂表層5aとポリエステル樹脂下層5bとの積層構造となっている。基体2の大部分を占める金属材料2aに被覆される金属メッキ層2bは、金属材料2aの耐食性を高める役割を持つものが使用されることは既に述べたとおりである。また、ポリエステル樹脂下層5bとしては金属基体との接着性に優れたものが使用され、一方ポリエステル樹脂表層5aとしては耐内容物性に優れたものが使用されることは既に述べたとおりである。
本発明の樹脂被覆金属材料において、金属材料上に設ける有機樹脂としては、特に限定はなく、各種熱可塑性樹脂や熱硬化性乃至熱可塑性樹脂を挙げることができる。
有機樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリルエステル共重合体、アイオノンマー等のオレフィン系樹脂フィルム、またはポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、もしくはナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムの未延伸または二軸延伸したものであってもよい。積層の際に接着剤を用いる場合は、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酸変性オレフィン樹脂系接着剤、コポリアミド系接着剤、コポリエステル系接着剤(厚さ:0.1〜5.0μm)等が好ましく用いられる。さらに熱硬化性塗料を、厚み0.05〜2μmの範囲で表面処理金属板側、あるいはフィルム側に塗布し、これを接着剤としてもよい。
これらの中でも、容器用素材としてポリエステル樹脂が最も好適に用いられる。ポリエステル樹脂としては、エチレングリコールやブチレングリコールを主体とするアルコール成分と、芳香族二塩基酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の酸成分とから誘導される熱可塑性ポリエステルが挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートそのものも勿論使用可能であるが、フィルムの到達し得る最高結晶化度を下げることが耐衝撃性や加工性の点で望ましく、この目的のためにポリエステル中にエチレンテレフタレート以外の共重合エステル単位を導入するのがよい。エチレンテレフタレート単位或いはブチレンテレフタレート単位を主体とし、他のエステル単位の少量を含む融点が210乃至252℃の共重合ポリエステルを用いることが特に好ましい。尚、ホモポリエチレンテレフタレートの融点は一般に255〜265℃である。
テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸:シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸:コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸:の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコールまたはブチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。勿論、これらのコモノマーの組合せは、共重合ポリエステルの融点を前記範囲とするのが好ましい。
三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールとしては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘミメリット酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸等の多塩基酸や、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコールが挙げられる。
ホモポリエステル或いは共重合ポリエステルは、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔η〕は0.5乃至1.5、特に0.6乃至1.5の範囲にあるのがよい。
エチレン系重合体として、例えば低−、中−或いは高−密度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらの内でも、アイオノマーが好適なものであり、アイオノマーのベースポリマーとしては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、イオン種としては、Na、K、Zn等のものが使用される。熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が使用される。
また、その本質を損なわない範囲で、脂肪族グリコールと二塩基酸とから誘導されたエステル単位との共重合体であってもよい。これらのポリアリレートは、ユニチカ社のUポリマーのUシリーズ或いはAXシリーズ、UCC社のArdelD−100、Bayer社のAPE、Hoechst社のDurel、DuPont社のArylon、鐘淵化学社のNAP樹脂等として入手できる。
多層ポリエステル樹脂層の例を示すと、表層/下層として表示して、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン・シクロへキシレンジメチレン・テレフタレート、イソフタレート含有量の少ないポリエチレンテレフタレート・イソフタレート/イソフタレート含有量の多いポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート/[ポリエチレンテレフタレート・イソフタレートとポリブチレンテレフタレート・アジペートとのブレンド物]等であるが、勿論上記の例に限定されない。表層:下層の厚み比は、5:95乃至95:5の範囲にあるのが望ましい。
中でも、トコフェロール(ビタミンE)或いはポリフェノールを用いることが好ましい。トコフェロール或いはポリフェノールは、従来より、酸化防止剤としてポリエステル樹脂の熱処理時における減成による分子量低下を防止して耐デント性を向上させるものであることが知られているが、特にポリエステル樹脂に前述したエチレン系重合体を改質樹脂成分として配合したポリエステル組成物に、このトコフェロール或いはポリフェノールを配合すると、耐デント性のみならず、レトルト殺菌やホットベンダー等の過酷な条件に付され被膜にクラックが生じたような場合でも、クラックから腐食が進むことが防止され、耐食性が著しく向上するという効果を得ることができる。
トコフェロール或いはポリフェノールは、0.05乃至3重量%、特に0.1乃至2重量%の量で配合することが好ましい。
本発明において、表面処理金属材料へのポリエステル被覆層の形成は任意の手段で行うことができ、例えば、押出コート法、キャストフィルム熱接着法、二軸延伸フィルム熱接着法等により行うことができる。押出コート法の場合、表面処理金属材料の上にポリエステル樹脂を溶融状態で押出コートして、熱接着させることにより製造することができる。即ち、ポリエステル樹脂を押出機で溶融混練した後、T−ダイから薄膜状に押し出し、押し出された溶融樹脂膜を表面処理金属材料と共に一対のラミネートロール間に通して冷却下に押圧一体化させ、次いで急冷する。多層のポリエステル樹脂層を押出コートする場合には、表層樹脂用の押出機及び下層樹脂用の押出機を使用し、各押出機からの樹脂流を多重多層ダイ内で合流させ、以後は単層樹脂の場合と同様に押出コートを行えばよい。また、一対のラミネートロール間に垂直に表面処理金属材料を通し、その両側に溶融樹脂ウエッブを供給することにより、前記基体両面にポリエステル樹脂の被覆層を形成させることができる。
また、本発明の樹脂被覆金属材料は、T−ダイ法やインフレーション製膜法で予め製膜されたポリエステル樹脂フィルムを金属材料に熱接着させることによっても製造することができる。フィルムとしては、押し出したフィルムを急冷した、キャスト成形法による未延伸フィルムを用いることもでき、また、このフィルムを延伸温度で、逐次或いは同時二軸延伸し、延伸後のフィルムを熱固定することにより製造された二軸延伸フィルムを用いることもできる。
本発明の金属缶は、前述した樹脂被覆金属材料から形成されている限り、任意の製缶法によるものでよい。この金属缶は、側面継ぎ目を有するスリーピース缶であることもできるが、一般にシームレス缶(ツーピース缶)であることが好ましい。このシームレス缶は、表面処理金属材料のポリエステル樹脂の被覆面が缶内面側となるように、絞り・再しぼり加工、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし加工(ストレッチ加工)、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし・しごき加工或いは絞り・しごき加工等の従来公知の手段に付すことによって製造される。
例えば、シームレス缶の好適な製造法では、樹脂被覆金属材料を円形にせん断し、これを絞りダイスと絞りポンチの組み合わせを用いて、絞り加工により浅絞りカップを作り、ついで同一金型中で絞りながらしごきを行う同時絞りしごき加工を複数回繰り返して径が小さくハイトの大きいカップに成形する。この成形法では、薄肉化のための変形が、缶軸方向(高さ方向)の荷重による変形(曲げ伸ばし)と缶厚み方向の荷重による変形(しごき)との組み合わせでしかもこの順序に行われ、これにより、缶軸方向への分子配向が有効に付与されるという利点がある。その後、ドーミング成形、加工により生じる被覆樹脂の残留歪みの除去を目的とした熱処理、続いて開口端部のトリミング加工、曲面印刷、ネックイン加工、フランジ加工を行って缶を作成する。
勿論、本発明の金属缶の製造には、公知の製缶法を適用することができ、例えば特開平4−231120号公報に記載された絞り・しごき成形法や、特開平9−253772号公報に記載された同時絞り・しごき成形法を適用することができる。
本発明の缶蓋は、上述した樹脂被覆金属材料から形成されている限り、従来公知の任意の製蓋法によるものでよい。一般には、ステイ・オン・タブタイプのイージーオープン缶蓋やフルオープンタイプのイージーオープン缶蓋に適用することができる。
本発明のイージーオープン缶蓋の上面を示す図8及び断面を拡大して示す図9において、この蓋60は、前述した樹脂被覆金属材料から形成されており、缶胴側面内面に嵌合されるべき環状リム部(カウンターシンク)61を介して外周側に密封用溝62を備えており、この環状リム部61の内側には開口すべき部分63を区画する全周にわたり形成されたスコア64が設けられている。この開口すべき部分63の内部には、大略中央部を押入して形成した略半円状の凹部パネル65と凹部パネル65の周囲に蓋材を突出させて形成したディンプル66と蓋材を缶蓋外面側に突出させて形成したリベット67とが形成され、開口用タブ68がこのリベット67のリベット打ちにより固定されている。開口用タブ68は、一端に押し裂きによる開口用先端69及び他端に保持用リング70を有している。リベット67の近傍において、スコア64と反対側には、スコア64とは不連続に並設された破断開始用スコア71が形成されている。
次いで、リング70を上方に引張ることにより、スコア64の残留部が全周にわたり破断されて開口が容易に行われる。
上記具体例の蓋は、いわゆるフルオープンタイプであるが、勿論、ステイ・オン・タブタイプのイージーオープン蓋にも適用可能である。
イージーオープン缶蓋の好適な製造方法では、樹脂被覆金属材料をプレス成形工程で円形に打抜くと共に蓋の形にし、密封用溝へのコンパウンドのライニング及び乾燥によるライニング工程を経て、スコア刻設工程で蓋の外面側から金属素材の途中に達するようにスコアの刻設を行い、ついでリベット形成、リベットにタブを取付け後、リベットを鋲打することによるタブ取付けを行い、イージーオープン缶蓋を作成する。イージーオープン缶蓋の適当な例は、例えば特開2000−128168号公報に記載されている。
金属容器は、表面処理金属材料又は樹脂被覆金属材料の加工性、耐食性の点で最も厳しい環境下におかれているので、実施例は金属缶および缶蓋で示すが、もちろん、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
2台の押出機から2層Tダイを介して表2に示す組成のポリエステル樹脂を溶融押出し後、冷却ロールにて冷却して得られたフィルムを巻き取り、表3に示す構成のキャストフィルム(イ),(ロ),(ハ),(ニ),(ホ)を得た。
表面処理後の金属材料をX線光電子分光装置(XPS)により下記条件で、P2p,O1s,F1s,Ti3d,Zr3dのピークをそれぞれ測定し、解析ソフトにより求めた原子濃度からP/M,O/M,F/Mの原子比(但しMは、Ti或いはTi及びZr)を求めた。但し、シリカ分散試料では、最表面に緻密なシリカ膜が形成されるため、O/Mの原子比(但しMは、Ti或いはTi及びZr)を求めるに当たっては、Si2pのピークも同時に測定しておき、Siの原子濃度からSiO2に相当するOの濃度を求め、全体からSiO2分を除外した各元素の原子濃度を再計算し、O/Mの原子比(但しMは、Ti或いはTi及びZr)の原子比を求めた。また、基材表面に含まれる主要元素、例えばアルミ合金基材の場合、Al2pもP2p,O1s,F1s,Ti3d,Zr3d,Si2pと同時に測定しておき、C1sが原子濃度で10%以下となるまでArスパッタリングにより汚染層を軽く除去した時点での
Si2pの原子濃度を表面被覆率とした。
装 置 PHI社製 Quantum 2000
励起X線源 Alモノクロメーター75W−17kV
測定径 φ100μm
光電子取り出し角 90°(試料の法線に対し0°)
解析ソフト;MultiPak
表面処理金属材料を5mm幅で80mm長さに短冊状に切断し、表3の(ハ)に示すキャストフィルムを5mm幅で80mm長さに短冊状に切段した。得られた2枚の表面処理短冊切片間に上記ポリエステルフィルム切片を挟み、2.0kg/cm2の圧力下で250℃3秒間加熱してTピール試験片とした。その後、110℃60分間のレトルト処理を行い、終了後すぐに水中に浸漬し、引張試験機による測定直前に水中から引き上げて、引張速度10mm/分で接着強度を測定した。
1.表面処理金属板の作成
金属板として厚み0.25mmのJIS5021H18アルミ合金板を用い、脱脂剤322N8(日本ペイント社製)を用いて、定法により、70℃の浴中で10秒間処理し、水洗後、40℃の1%硫酸中に5秒間浸漬し、水洗、純水洗し、前処理を行った。ついで、浴温45℃の表1のAに示す処理浴中で、攪拌を行いながら、極間距離17mmの位置に配置した酸化イリジウム被覆チタン板を陽極として、電流密度10A/dm2で、0.4秒通電−0.6秒停止を4回繰り返して断続的に陰極電解を行い、その後すぐに、流水による水洗、純水洗、乾燥の後処理を行って表面処理アルミニウム板を得た。
2.樹脂被覆金属板の作成
得られた表面処理金属板を用いて、以下の方法で製蓋用の樹脂被覆金属板を作成した。まず、予め板温度250℃に加熱しておいた表面処理金属板の片面上に、表3の(ロ)のキャストフィルムの下層側が接するようにラミネートロールを介して熱圧着後、直ちに水冷することにより、片面にフィルムをコーティングした。次に、蓋外面側となる、金属板のもう一方の片面にエポキシアクリル系塗料をロールコートにより塗装し、185℃10分間加熱の焼付け処理を行った。
3.表面処理金属板の評価
得られた表面処理金属板の一部は、Ti,Zrなどの重量膜厚測定、表面原子比測定、接着性評価に供した。結果を表4に示した。 表中、接着性の評価は、引張試験機により試験片を10mm以上剥離した後の最大引張強度が、0.6kg/5mm以上のものを◎、0.3kg/5mm以上0.6kg/5mm未満のものを○、0.3kg/5mm未満のものを×とした。
4.缶蓋の開口性評価
得られた樹脂被覆金属板を用いて、定法により301径のフルオープン缶蓋を作製後、缶胴に水を充填した缶胴に巻締めた後、110℃60分のレトルト殺菌処理を行い、冷却後直ちに開口してスコア部周辺開口部の樹脂剥離状態を観察し、缶蓋の開口性評価を行った。結果を表4に示した。表中、缶蓋の開口性評価は、開口部周辺のフェザリングを観察し、フェザリングが全く認められないものを◎、0.5mm未満で樹脂の剥離がないものを○、フェザリングが0.5mm以上のものを×とした。
電流密度を5A/dm2とし、0.6秒通電−0.4秒停止を8回繰り返した以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。
処理浴として表1のBに示す浴を用いて電流密度を7A/dm2とした以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。
処理浴として表1のBに示す浴を用いて電流密度を5A/dm2とした以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。
処理浴として表1のCに示す浴を用いて電流密度を14A/dm2とした以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。
処理浴として表1のDに示す浴を用いて電流密度を6A/dm2とした以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。
表1のAに示す浴にスノーテックスC(日産化学工業社製)を60g/リットル添加し、電流密度5A/dm2で、0.6秒通電−0.4秒停止を6回繰り返した以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。
1.フェノール系水溶性有機化合物を主体とする表面処理剤の作成
フェノール系水溶性有機化合物を主体とする表面処理剤として以下のものを用いた。
フッ化水素酸(HF) 0.01g/リットル
75%リン酸(H3PO4) 0.20g/リットル
20%ジルコニウムフッ化水素酸(H2ZrF6) 1.30g/リットル
下記式(I)の水溶性重合体固形分 0.40g/リットル
以下に水溶性重合体の一例として用いた下記式(I)を示す。
2.表面処理金属板の作成と評価
実施例1と同様にして金属板の前処理を行った後、上記1で作成したフェノール系水溶性有機化合物を主体とする表面処理剤を40℃で20秒間スプレーした後水洗、純水洗した。その後さらに、表1のAに示す処理浴中で電流密度5A/dm2で0.6秒通電−0.4秒停止を6回繰り返した以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。
表1のAに示す浴にリン酸二水素カリウムを0.002モル/リットル添加し、0.6秒通電−0.4秒停止を8回繰り返した以外は実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。
実施例7と同様にして金属板に表面処理した後、さらに、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名KBM903、信越化学工業社製)の3%水溶液にディップしロール絞り後120℃で1分間乾燥して、無機処理層の上にSi換算で5mg/m2の膜厚に相当するシランカップリング剤層を有する表面処理金属板を得た。上記以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。但し、表面原子比の値については、有機処理を行う前の値を用いた。
表1のEに示す浴にフッ化ナトリウムを0.05mol/リットル添加し、電流密度を5A/dm2で0.6秒通電−0.4秒停止を8回繰り返した以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。
実施例1と同様にして金属板の前処理を行った後、市販のチタン系化成処理液(CT-K3795、日本パーカライジング社製)を用いて定法により浴を作製し、液温40℃で15秒間スプレー処理し、その後すぐに、水洗、純水洗、乾燥の後処理を行い、表面処理アルミニウム板を得た以外は実施例1と同様に、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。
処理浴として表1のFに示す浴をアンモニアでpH2.3に調整し、攪拌せずに電流密度を5A/dm2で60秒間陰極電解処理した以外は実施例1と同様に表面処理を行った。得られた被膜を流水で洗浄すると被膜が脱落するため、電解後は、溜まり水に静かに浸した後、乾燥した。樹脂被覆、製蓋および評価についても実施例1と同様に行った。
表1のFに示す浴にフッ化ナトリウムを0.4mol/リットル添加し、攪拌しながら電流密度を5A/dm2で0.6秒通電−0.4秒停止を4回繰り返した以外は比較例2と同様に表面処理を行った。得られた被膜を流水で洗浄すると被膜が脱落するため、電解後は、溜まり水に静かに浸した後、乾燥した。樹脂被覆、製蓋および評価についても比較例2と同様に行った。
表1のAに示す浴にリン酸二水素カリウムを0.005モル/リットル添加し、0.6秒通電−0.4秒停止を4回繰り返して陰極電解した以外は実施例1と同様に表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。
実施例1と同様にして金属板に表面処理した後、さらに、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名KBM903、信越化学工業社製)の30%水溶液にディップしロール絞り後120℃で1分間乾燥して、無機処理層の上にSi換算で50mg/m2の膜厚に相当するシランカップリング剤層を有する表面処理金属板を得た。上記以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。但し、表面原子比の値については、有機処理を行う前の値を用いた。
1.表面処理金属板の作成
金属板として厚み0.26mmのJIS3004H19アルミ合金板を用いた以外は、実施例1と同様に表面処理を行った。
2.樹脂被覆金属板の作成
得られた表面処理金属板を、予め板温度250℃に加熱しておき、金属板の片面上に表3の(ロ)のキャストフィルムの下層側が、缶外面側となるもう一方の片面上に表3の(イ)のキャストフィルムが、接して被覆されるように、ラミネートロールを介して熱圧着後、直ちに水冷することにより、樹脂被覆金属板を得た。
3.金属缶の作成
得られた樹脂被覆金属板の両面に、パラフィンワックスを両面に静電塗油後、直径154mmの円形に打抜き、定法に従い浅絞りカップを作成した。ついでこの絞りカップを同時絞りしごき加工を2回繰り返して径が小さくハイトの大きいカップに成形した。この様にして得られたカップの諸特性は以下の通りであった。
カップ径 66mm、
カップ高さ 128mm、
元板厚に対する缶壁部の厚み −60%
このカップはドーミング成形後、樹脂フィルムの歪みをとるために220℃で60秒間熱処理を行い、続いて開口端端部のトリミング加工、曲面印刷、206径へネックイン加工、フランジ加工、リフランジ加工を行って350gシームレス缶を作成した。
4.表面処理金属板の評価
得られた表面処理金属板の一部は、実施例1と同様に、重量膜厚測定、表面原子比測定の測定、接着性評価に供し、結果を表4に示した。
5.金属缶のレトルト密着性評価
リランジ加工後の缶の開口端より5mm下部に缶内面側の全周に亘って素地に達する傷を入れ、空缶の状態で125℃の熱水蒸気中に30分間保持し、缶内面側傷周辺部の被覆樹脂の剥離程度を観察し、レトルト密着性を評価した。結果を表4に示した。表中、金属缶のレトルト密着性評価は、20缶中一部でも剥離した缶が全くない時を○、20缶中一部でも剥離した金属缶がある場合を×とした。
6.金属缶の耐食性評価
25℃での缶内圧が3.5kg/cm2となるように炭酸水をパックした金属缶を37℃で1週間貯蔵後、缶温を5℃に下げた後、金属缶を正立の状態から、水平方向に対し15°傾斜した厚さ10mmの鋼板上に、50cmの高さから落下させボトムラジアス部を変形させた。その後、ボトムラジアス部を含む缶底部を円周方向に切り出し、0.1%塩化ナトリウム水溶液に50℃で2週間経時後のボトムラジアス変形部周辺の腐食状態を観察し、耐食性を評価した。結果を表4に示した。表中、金属缶の耐食性評価は、ボトムラジアスの変形部周辺を実体顕微鏡観察し、腐食が認められない場合を○、少しでも腐食している場合を×とした。
処理浴として表1のBに示す浴を用いて電流密度を7A/dm2とした以外は、実施例12と同様に表面処理、樹脂被覆、製缶および評価を行った。
厚み0.26mmのJIS3004H19アルミ合金板を用いた以外は、実施例8と同様に表面処理を行った後、実施例12と同様に表面処理、樹脂被覆、製缶および評価を行った。
実施例1と同様にして金属板に表面処理した後、さらに、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名KBM903、信越化学工業社製)の3%水溶液にディップしロール絞り後120℃で1分間乾燥して、無機処理層の上にシランカップリング剤層を有する表面処理金属板を得た。上記以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。但し、表面原子比の値については、有機処理を行う前の値を用いた。
実施例8で用いたフェノール系水溶性有機化合物を主体とする表面処理剤からフッ化水素酸を除いて、表面処理剤を作成した。この表面処理剤中に、実施例1と同様にして表面処理した金属板をディップしロール絞り後120℃で1分間乾燥して、無機処理層の上にフェノール系水溶性有機化合物を主体とする有機表面処理層を有する表面処理金属板を得た。上記以外は、実施例1と同様に、表面処理、樹脂被覆、製蓋および評価を行った。但し、表面原子比の値については、有機処理を行う前の値を用いた。
金属板として厚み0.26mmのJIS3004H19アルミ合金板を用いた以外は、比較例1と同様に表面処理を行った。樹脂被覆、製缶および評価については実施例12と同様に行った。
1.表面処理金属板の作成
金属板として厚み0.22mm、調質度DR8の冷延鋼板を電解脱脂、酸洗、水洗、純水洗し、前処理を行った。ついで、表1のAの処理浴中で電流密度1A/dm2とし0.6秒通電−0.4秒停止を12回繰り返して陰極電解した以外は、実施例1と同様に処理を行った。続いてさらに、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名KBM903、信越化学工業社製)の3%水溶液にディップしロール絞り後120℃で1分間乾燥して、無機処理層の上にSi換算で5mg/m2の膜厚に相当するシランカップリング剤層を有する表面処理金属板を得た。
2.樹脂被覆金属板の作成
得られた表面処理金属板を予め板温度250℃に加熱しておき、片面上に表3の(ロ)のキャストフィルムの下層側が接して被覆され、外面側となるもう一方の片面上に表3の(ニ)のキャストフィルムが被覆されるように、ラミネートロールを介して熱圧着後、直ちに水冷することにより、樹脂被覆金属板を得た。
3.缶胴および缶蓋の作成
得られた樹脂被覆金属板に加工用潤滑剤を塗油後、再絞り加工(絞り比2.5)を行い、内径65.3mmの缶胴を作成した。続いて、樹脂フィルムの歪みをとるために220℃で60秒間熱処理を行い、開口端端部のトリミング加工、フランジ加工を行って、高さ101.1mm深絞り缶を作成した。一方、得られた樹脂被覆金属板の一部を用いて、定法により、211径のフルオープン蓋に成形した。
4.内容品充填試験
このようにして作成した缶胴および缶蓋を用いて、缶胴にミートソースを充填後、フルオープン蓋を2重巻締めし、120℃30分のレトルト殺菌処理を行った。
5.表面処理金属板の評価
得られた表面処理金属板の一部は、実施例1と同様に、重量膜厚測定、表面原子比の測定に供し、結果を表5に示した。
6.容器評価
容器成形後の有機被膜の状態を調べ、剥離、穴あき等の異常がないかを観察した。また、内容物充填後、37℃で6ヶ月貯蔵後開缶し、容器内面側の腐食や有機被膜の浮きなどが発生していないかを調べ、結果を表5に示した。
1.表面処理金属板の作成
金属板として厚み0.17mm、調質度DR8の冷延鋼板を、電解脱脂、酸洗、水洗、純水洗し、前処理を行い、片面あたりニッケルを0.3g/m2にめっきした後、片面あたりすずを0.6g/m2にめっきし、リフロー処理を行って、ニッケルーすずー鉄の合金層を形成した。続いて、実施例17と同様に、表1のAの処理浴中で陰極電解およびシランカップリング剤処理を行って、表面処理金属板を得た。
2.樹脂被覆金属板の作成
得られた表面処理金属板を、エポキシアクリル系水性塗料を用い、焼付け後の塗膜厚みが10μmになるように両面にロールコートし、200℃10分間の焼付け処理を行うことにより、樹脂被覆金属板を得た。
3.缶胴および缶蓋の作成
得られた樹脂被覆金属板に加工用潤滑剤を塗油後、絞り加工(絞り比1.3)を行い、内径83.3mmの缶胴を作成した。続いて、開口端端部のトリミング加工、フランジ加工を行って、高さ45.5mmの絞り缶を作成した。一方、得られた樹脂被覆金属板の一部を用いて、定法により、307径のフルオープン蓋に成形した。
4.内容品充填試験
このようにして作成した缶胴および缶蓋を用いて、缶胴にツナ油漬けを充填後、フルオープン蓋を2重巻締めし、115℃60分のレトルト殺菌処理を行った。
5.表面処理金属板の評価
実施例17と同様に、重量膜厚測定、表面原子比の測定を実施した。
6.容器評価
開缶後硫化変色の有無を調べた以外は、実施例17と同様に容器評価を実施した。
1.表面処理金属板の作成
金属板として厚み0.22mm、調質度T4の冷延鋼板を、電解脱脂、酸洗、水洗、純水洗し、前処理を行い、片面あたりすずを2.0g/m2にめっき後、リフロー処理を行い、続いて、表1のAの処理浴中で電流密度0.6A/dm2とし0.6秒通電−0.4秒停止を8回繰り返して陰極電解した以外は、実施例1と同様に陰極電解処理を行って、缶胴用表面処理金属板を得た。
一方、0.21mmの調質度T4の冷延鋼板についても、上記と同様に処理し、缶蓋用表面処理金属板を得た。
2.樹脂被覆金属板、缶胴および缶蓋の作成
缶胴用表面処理金属板を用いて、エポキシアクリル系水性塗料を缶胴の継目部分にあたる場所を除いて、焼付け後の膜厚が内面側5μm、外面側3μmになるようにマージン塗装し、200℃の熱風乾燥炉中で10分間焼付け硬化させて樹脂被覆金属板を得た。作成した樹脂被覆金属板をブランク状に切断し、そのブランクを線電極を用いた市販の電気抵抗溶接機にて円筒状にて溶接し、次に、缶胴の溶接継ぎ目部の内外面側に溶剤型エポキシユリア系補修塗料を乾燥塗膜厚みが40μmになるようにスプレー塗装した後250℃の熱風乾燥炉中で3分間焼付け、継ぎ目部分を被覆して溶接缶胴(缶径65.4mm、缶胴高さ122mm)を作成した。
一方、缶蓋用表面処理金属板に、エポキシアクリル系水性塗料を、焼付け後の塗膜厚みが10μmになるように両面にロールコートし、200℃10分間の焼付け処理を行った後、定法により、209径のシェル蓋に成形した。
缶胴の一方の開口端を、フランジ加工、ネックイン加工し、前記209径の蓋を巻締めた後、もう一方の開口端をトリプルネックイン、フランジ加工した。
3.内容品充填試験
50℃でコーヒー飲料を充填した後、市販の206径アルミSOT蓋を2重巻締めし、125℃25分のレトルト殺菌処理を行った。
4.表面処理金属板の評価
実施例17と同様に、重量膜厚測定、表面原子比の測定を実施した。
5.容器評価
開缶後の鉄溶出量も測定した以外は、実施例17と同様に容器評価を実施した。
1.表面処理金属板の作成
金属板として厚み0.22mm、調質度T4の冷延鋼板を、電解脱脂、酸洗、水洗、純水洗し、前処理を行い、片面あたりニッケルを0.03g/m2にめっきした後、片面あたりすずを1.3g/m2にめっき後、リフロー処理を行い、続いて、実施例19と同様に、表1のAの処理浴中で陰極電解処理を行って缶胴用表面処理金属板を得た。
一方、0.21mmの調質度T4の冷延鋼板についても、上記と同様に処理し、缶蓋用表面処理金属板を得た。
2.樹脂被覆金属板、缶胴および缶蓋の作成
缶胴用表面処理金属板を用いて、エポキシフェノール溶剤型塗料を缶胴の継目部分にあたる場所を除いて、焼付け後の膜厚が内面側5μm、外面側3μmになるようにマージン塗装し、200℃の熱風乾燥炉中で10分間焼付け硬化させて樹脂被覆金属板を得た。作成した樹脂被覆金属板をブランク状に切断し、そのブランクを線電極を用いた市販の電気抵抗溶接機にて円筒状にて溶接し、次に、缶胴の溶接継ぎ目部の内外面側に溶剤型エポキシユリア系補修塗料を乾燥塗膜厚みが40μmになるようにスプレー塗装した後250℃の熱風乾燥炉中で3分間焼付け、継ぎ目部分を被覆して溶接缶胴(缶径65.4mm、缶胴高さ122mm)を作成した。
一方、缶蓋用表面処理金属板に、エポキシフェノール溶剤型塗料を、焼付け後の塗膜厚みが10μmになるように両面にロールコートし、200℃10分間の焼付け処理を行った後、定法により、209径のシェル蓋に成形した。
缶胴の一方の開口端を、フランジ加工、ネックイン加工し、前記209径の蓋を巻締めた後、もう一方の開口端をトリプルネックイン、フランジ加工した。
3.内容品充填試験
93℃でオレンジジュースをホットパックした後、市販の206径アルミSOT蓋を2重巻締めて密封した。
4.表面処理金属板の評価
実施例17と同様に、重量膜厚測定、表面原子比の測定を実施した。
5.容器評価
実施例19と同様に容器評価を実施した。
1.表面処理金属板の作成
金属板として厚み0.195mm、調質度T3の冷延鋼板を、電解脱脂、酸洗、水洗、純水洗し、前処理を行い、片面あたりすずを1.0g/m2にめっきした後、続いて、実施例19と同様に、表1のAの処理浴中で陰極電解処理を行って、缶胴用表面処理金属板を得た。
一方、金属板として厚み0.285mmのJIS5182H19アルミ合金板を用いて表1のAの処理浴中で電流密度を5A/dm2とし、0.6秒通電−0.4秒停止を8回繰り返して陰極電解した以外は、実施例1と同様にして缶蓋用表面処理金属板を得た。
2.樹脂被覆金属板の作成
得られた缶胴用および缶蓋用表面処理金属板を予め板温度250℃に加熱しておき、片面上に表3の(ホ)のキャストフィルムの下層側が接して被覆され、外面側となるもう一方の片面上に表3の(ニ)のキャストフィルムが被覆されるように、ラミネートロールを介して熱圧着後、直ちに水冷することにより、樹脂被覆金属板を得た。
3.缶胴および缶蓋の作成
缶胴用樹脂被覆金属板の両面にパラフィンワックスを静電塗油後、直径140mmの円形に打抜き、定法に従い浅絞りカップを作成した。ついでこの絞りカップを再絞り・しごき加工を2回繰り返して径が小さくハイトの大きい、深絞りーしごきカップを得た。この様にして得られたカップの諸特性は以下の通りであった。
カップ径 52mm、
カップ高さ 138mm、
元板厚に対する缶壁部の厚み −50%
このカップはドーミング成形後、樹脂フィルムの歪みをとるために220℃で60秒間熱処理を行い、続いて開口端端部のトリミング加工、曲面印刷、200径へネックイン加工、フランジ加工、リフランジ加工を行って250gシームレス缶を作成した。
また、缶蓋用樹脂被覆金属板から定法に従い、200径のSOT蓋を作成した。
4.内容品充填試験
前記250g缶に5℃でコーラをコールドパックし、直ちに、前記SOT蓋を2重巻締めして密封した。
5.表面処理金属板の評価
実施例17と同様に、重量膜厚測定、表面原子比の測定を実施した。
6.容器評価
実施例19と同様に容器評価を実施した。
1.表面処理金属板および樹脂被覆金属板の作成
缶胴用金属板として厚み0.28mmのJIS3004H19アルミ合金板を、缶蓋用金属板として厚み0.25mmのJIS5182H19アルミ合金板を用いて、両面に表3の(イ)のキャストフィルムを被覆した以外は、実施例2と同様にして、前処理、表面処理、樹脂被覆を行った。
得られた缶胴用樹脂被覆金属板の両面に、パラフィンワックスを両面に静電塗油後、直径166mmの円形に打抜き、定法に従い、浅絞りカップを作成した。次いで、この浅絞りカップを、再絞りーしごき加工を行い、深絞りーしごき加工により缶体を得た。この様にして得られた缶体の諸特性は以下の通りであった。
缶体径 66mm、
缶体高さ 128mm、
元板厚に対する缶壁部の厚み −63%
この缶体を、定法に従い、ドーミング成形後、樹脂フィルムの歪みをとるために220℃で60秒間熱処理を行い、続いて開口端端部のトリミング加工、曲面印刷、206径へネックイン加工、フランジ加工、リフランジ加工を行って350gシームレス缶を作成した。一方、缶蓋用樹脂被覆金属板から定法に従い、206径のSOT蓋を作成した。
2.内容品充填試験
前記350g缶に5℃でビールをコールドパック後、前記SOT蓋を2重巻締めして密封した。
3.表面処理金属板の評価
実施例17と同様に、重量膜厚測定、表面原子比の測定を実施した。
4.容器評価
開缶後のアルミ溶出量も測定した以外は、実施例17と同様に容器評価を実施した。
Claims (14)
- 金属板表面に無機成分を主体とする表面処理層、及び該表面処理層の少なくとも片面上に有機樹脂被覆が形成されている樹脂被覆表面処理金属板であって、前記無機表面処理層が、陰極電解を断続的に実施して形成され、リン酸イオンを含有せずFと水酸基を含むTi或いはTi及びZrの酸化物からなり、前記無機表面処理層の最表面に含有される、OとTiの原子比が、1<O/Ti<5であり、FとM(但しMは、Ti或いはTi及びZr)の原子比が、0 .1<F /M<2.5であり、Tiの重量膜厚が5〜300mg/m 2 であることを特徴とする缶又は缶蓋用樹脂被覆表面処理金属板。
- 金属板表面に無機成分を主体とする表面処理層、及び該表面処理層の少なくとも片面上に有機樹脂被覆が形成されている樹脂被覆表面処理金属板であって、前記無機表面処理層が、陰極電解を断続的に実施して形成され、Fと水酸基を含むTi或いはTi及びZrの酸化物からなり、前記無機表面処理層の最表面に含有される、PとM(但しMは、Ti或いはTi及びZr)の原子比が0≦P/M<0.6であり、OとTiの原子比が、1<O/Ti<5であり、FとM(但しMは、Ti或いはTi及びZr)の原子比が、0.1<F/M<2.5であり、Tiの重量膜厚が5〜300mg/m 2 であることを特徴とする缶又は缶蓋用樹脂被覆表面処理金属板。
- 前記無機表面処理層がZrを含有し、最表面に含有されるOとM(但しMは、Ti及びZr)の原子比が、1<O/M<5であり、Ti及びZrの重量膜厚で、5〜300mg/m 2 であることを特徴とする請求項1又は2記載の缶又は缶蓋用樹脂被覆表面処理金属板。
- 前記無機表面処理層が、Si量で20〜80mg/m 2 のSiO 2 粒子を含有する請求項1乃至3の何れかに記載の缶又は缶蓋用樹脂被覆表面処理金属板。
- 前記無機表面処理層の上に、30mg/m 2 以下のSi量であるシランカップリング剤処理層が形成されている請求項1乃至4の何れかに記載の缶又は缶蓋用樹脂被覆表面処理金属板。
- 前記無機表面処理層の上に、フェノール系水溶性有機化合物を主体とする有機表面処理
層が形成されている請求項1乃至4の何れかに記載の缶又は缶蓋用樹脂被覆表面処理金属板。 - 前記無機表面処理層が、炭素原子換算で6〜30mg/m 2 の範囲の含有量であるフェノール系水溶性有機化合物を主体とする有機表面処理層の上に形成されている請求項1
乃至5の何れかに記載の缶又は缶蓋用樹脂被覆表面処理金属板。 - 前記有機樹脂被覆が、熱可塑性ポリエステル樹脂から成る請求項1乃至7の何れかに記載の缶又は缶蓋用樹脂被覆表面処理金属板。
- TiとFを含有し、リン酸イオン濃度が、PO 4 として0.003モル/リットル未満である水溶液中で陰極電解処理を断続的に、通電時間0.1〜0.8秒の範囲で2〜10サイクル行うことにより金属板表面に無機被膜を高速形成することを特徴とする缶又は缶蓋用表面処理金属板の表面処理方法。
- 前記水溶液がZrを含有する請求項9記載の缶又は缶蓋用表面処理方法。
- 浴濃度が、M(但しMは、Ti或いはTi及びZr)として0.010〜0.050モル/リットル、Fとして0.03〜0.35モル/リットルの範囲にある請求項9又は10記載の缶又は缶蓋用表面処理方法。
- 前記水溶液が、粒径として4〜80nmの水分散性シリカを含有する請求項9乃至11の何れかに記載の缶又は缶蓋用表面処理方法。
- 前記無機被膜を形成した後に、フェノール系水溶性有機化合物又はシランカップリング
剤を塗布乾燥させて有機被膜を形成させる請求項9乃至12の何れかに記載の缶又は缶蓋用表面処理方法。 - 炭素原子換算で6〜30mg/m 2 の範囲の含有量であるフェノール系水溶性有機化合物を主体とする層を形成した後に電解により前記無機被膜を形成させる請求項9乃至13
の何れかに記載の缶又は缶蓋用表面処理方法。
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