JP4569247B2 - 耐硫化変色性、耐食性に優れたプレス成形缶及び蓋 - Google Patents
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Description
また上述したような内容物においては、缶に内容物を充填した状態で缶上部から水蒸気を所定時間吹き掛ける蒸煮を行うことがあり、このような蒸煮を行った場合にも、ポリエステル樹脂被覆が剥離してしまうという問題が生じた。
本発明の他の目的は、内容物充填後の内容物の蒸煮や密封後の高温、長時間の加熱殺菌によっても樹脂被覆の剥離やクラックの発生がなく、耐食性や内容物の保存性に優れたプレス成形缶を提供することである。
本発明の更に他の目的は、上記プレス成形缶に好適に使用できる耐硫化変色性、熱可塑性樹脂被覆の密着性等に優れた蓋を提供することである。
1.ノンクロム表面処理層が、Zr及び/又はTiを含有する無機表面処理を行った後に、Si量が2〜50mg/m 2 の範囲にあるシランカップリング剤を主剤とする表面処理又は水溶性フェノール系化合物による表面処理を行うことにより形成されたものであること、
2.塗布乾燥型の水溶性フェノール系化合物による表面処理層が、水溶性フェノール系化合物にZr及び/又はTiを含有させて成るものであること、
3.ポリエステル系熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレートの共重合樹脂及び/又はポリブチレンテレフタレートの共重合樹脂であること、
4.ポリエステル系熱可塑性樹脂層が、ポリエステル系熱可塑性樹脂にポリオレフィンをブレンドして成ること、
5.ポリエステル系熱可塑性樹脂が、コロナ処理に付されていること、
6.レトルト処理の前に、Tm−40℃〜Tm+10℃(Tm:表面処理層と接着する熱可塑性樹脂層に用いるベース熱可塑性樹脂の融点)の範囲で加熱処理に付されていること、
が好適である。
また錫亜鉛合金層の亜鉛量が上記範囲よりも少ない場合には、満足する耐硫化変色性を得ることができず(後述する比較例4及び5参照)、一方上記範囲よりも亜鉛量が多い場合には、熱可塑性樹脂被覆の密着性が低下すると共に(後述する比較例2及び3)、亜鉛が上記範囲にある場合に比して、色調が暗く印刷下地としての性能が低下する傾向がある。
本発明においてレトルト後の缶胴上部の樹脂被覆の剥離強度を問題とするのは、この剥離強度が上記値以上であれば、実缶保存試験に付した場合にもフィルムの剥離や腐食の発生が生じないことを端的に表すことができるからである。すなわち、前述した通り内容物充填後レトルト処理に付されることにより樹脂被覆の密着性、すなわち剥離強度が大きく低下することから、レトルト後の剥離強度を基準として熱可塑性樹脂被覆の密着性を評価し、後述する実施例からも明らかなように、この評価が実缶保存試験の結果と対応していることから、レトルト後の剥離強度が上記値以上である缶では、実際に内容物を充填し、蒸煮、密封、レトルト殺菌等を経て保存された場合にもフィルムの剥離や腐食の発生が生じないことが保証されると考えられる。
上記具体例においては、熱可塑性樹脂層5は単層で形成されているが、樹脂被覆は単層に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂層5の上に更に他の熱可塑性樹脂から成る層を形成することもできる。また缶外面側となる面にも金属錫層7の上に樹脂被覆を形成することもできる。
本発明のプレス成形缶の成形に用いる樹脂被覆表面処理鋼板は、缶内面となる側の鋼板表面に、鋼板側から順に、錫めっき層、錫−亜鉛合金層、ノンクロム系の表面処理層、熱可塑性樹脂層が形成されて成るものであり、好適には、缶外面となる側の鋼板表面にも錫めっき層が形成されていることが望ましい。
本発明に用いる鋼板は、製缶用に用いられていた従来公知の冷延鋼板等を使用することができ、板厚は0.07〜0.4mm程度のものが好ましい。冷延鋼板は耐食性を上げるため薄Niめっき後、焼鈍により冷延鋼板表面をNi拡散層にすることもできる。
鋼板の少なくとも缶内面側となるべき面に設ける錫めっき層は、前述した通り、錫量が0.8g/m2以上、特に0.8〜12g/m2、特に1.0〜9g/m2の範囲となるように鋼板上に錫めっき層を形成して、熱可塑性樹脂を被覆した後の加熱条件を制御することにより、鋼板自体の耐食性を向上させると共に、特定のノンクロム表面処理層との組み合わせにより、熱可塑性樹脂被覆との加工密着性、レトルト後の密着性を向上させて、耐食性の向上を図ることが可能となるのである。
また鋼板の缶外面側となるべき面にも錫めっき層を設けることが望ましく、錫量は内面側と同様に、0.8〜12g/m2であることが望ましい。なお、両表面に、順に錫めっき層、錫−亜鉛合金層を形成した表面処理鋼板を使用することを妨げるものではない。
錫めっき層を、錫めっき層/錫鉄合金層の二層構成に形成するには、鋼板上に所定量の錫めっきを行った後、錫の融点以上に加熱した後冷却を行う(リフロー処理)ことによって錫めっき層の鋼板側の一部を錫−鉄合金層に変化させることができるし、或いは後述する亜鉛めっき後、錫−亜鉛合金層を形成するためのリフロー処理の際に同時に錫−鉄合金層に変化させることもできる。合金化は、錫めっき層に含有される錫量の5〜50%であることが望ましい。
このように錫−鉄合金層を形成することによって、加工密着性が向上すると共に、鋼板自体の耐食性も向上させることが可能になる。
缶内面側となる鋼板表面に形成された錫めっき層上に設ける錫−亜鉛合金層は、亜鉛量が0.06〜0.5g/m2、特に0.07〜0.48g/m2の範囲となるように錫めっき層上に亜鉛めっきをした後、錫の融点以上の温度で加熱した後冷却するリフロー処理をすることにより、又は錫めっきした後にリフロー処理し、次いで亜鉛めっきし、熱可塑性樹脂被覆のための前加熱、塗装後の焼付けのための加熱を行うことにより形成される。
錫−亜鉛合金層を形成することにより、亜鉛の存在により硫化変色の原因となる硫化水素と錫の反応を抑制することができる一方、錫亜鉛合金層中に亜鉛が0.06〜0.5g/m2と少量で存在していることから、熱可塑性樹脂被覆の密着性を損なうことが有効に防止されている。また、錫−亜鉛合金層上に少量(金属亜鉛が錫−亜鉛合金層全面をを覆わない程度)であれば金属亜鉛が残存することも可能である。
錫−亜鉛合金層上に形成されるノンクロム系表面処理層としては、水溶性フェノール樹脂による表面処理層,Zr及び/又はTiを含有する無機表面処理層の少なくとも一つから成ることが好ましく、これにより熱可塑性樹脂被覆の密着性を向上させ、前述したように、レトルト処理後の缶胴上部の樹脂被覆の剥離強度を100g/15mm幅以上の値にすることを可能にし、耐食性を向上させることが可能となるのである。
尚、表面処理層は、上記処理の何れかにより形成されていることが好ましく、特に無機系の表面処理と有機系の表面処理とを組み合わせで行うことが好ましい。この場合無機系の表面処理を先に行った後、有機系の表面処理を行い、複合処理被膜を形成することが好ましい。
錫−亜鉛合金層上に形成された無機表面処理層上に形成されるシランカップリング剤処理層は、シランカップリング剤が有する反応基により、錫−亜鉛合金層上に形成された無機表面処理層と熱可塑性ポリエステル樹脂層の密着性を向上させることが可能となる。またシランカップリング剤処理層自体が耐久性と耐水性を向上させる。
シランカップリング剤表面処理層は、Si量が2〜50mg/m2、特に2.5〜40mg/m2となるように形成されていることが好ましい。
本発明において、好適に用いることができるシランカップリング剤の具体例としては、γ-APS(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)、γ−GPS(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、BTSPA(ビストリメトキシシリルプロピルアミノシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
(i) アミノ基含有シラン溶液及び/又はエポキシ基含有シランカップリング剤溶液を用いて処理生成する。
(ii) アミノ基及び/又はエポキシ基を含むシランカップリング剤と有機置換基と加水分解性アルコキシ基を含有したシランから成る混合溶液を用いて処理生成する。
(iii) 有機置換基と加水分解性アルコキシ基を含有したシランで処理した後、次いでアミノ基含有シラン溶液及び/又はエポキシ基含有シラン溶液から成るシランカップリング剤溶液を用いて処理生成する。
錫−亜鉛合金層上に形成される水溶性フェノール系化合物から成る表面処理層は、C量が0.8〜50mg/m2、特に1〜40mg/m2の範囲となるように形成することが好ましく、下記式(1)の重合体から成る水溶性フェノール樹脂を用いて形成することができる
|
− φ −CH2− ・・・(1)
|
X
式中、φはベンゼン環を表し、Xは水素原子又は下記式(2)
Z= −CH2−N−R1 ・・・(2)
|
R2
式中、R1及びR2の各々は炭素数10以下のアルキル基又は炭素数10以下のヒドロキシアルキル基である、で表されるZを表し、基Zの導入率はベンゼン環1個当たり0.2〜1.0であるものとする、
で表される反復単位から成るフェノール樹脂であることが好適である。
タンニンとしては、ハマメリタンニン、カキタンニン、チャタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランタンニン、ジビジビタンニン、アルガロビラタンニン、バロニアタンニン、カテキンタンニン等を挙げることができる。タンニンは、数平均分子量が200以上であることが好ましい。
無機物は全炭素の4乃至3750重量%の量で含有されていることが望ましい。
水溶性フェノール系化合物による表面処理層を錫−亜鉛合金層上に形成するには、上述した水溶性フェノール系化合物を錫−亜鉛合金層の表面に塗布乾燥することにより形成できる。
錫−亜鉛合金層上に形成されるZr及び/又はTiを含有する無機表面処理層は、Zr及び/又はTiを主成分として含有する処理液を用いて形成されるものであり、本発明においては特にこれらの無機成分とO,Fを含有し、リン酸を含有しない水溶液中で陰極電解処理することにより形成されるものであることが好ましい。
表面処理に用いる処理液は、浴濃度が、Zr及び/又はTiが0.010〜0.050モル/リットルの範囲にあることが好ましく、またpHが3.0〜8.0の水溶液であることが好ましい。
また、チタンイオンやジルコニウムイオンとフッ素イオンを別々の薬剤より供給することもでき、Ti薬剤としてシュウ酸チタンカリウム2水和物K2TiO(C2O4)2・2H2O、塩化チタン(III)溶液TiCl3、塩化チタン(IV)溶液TiCl4など、Zr薬剤としてオキシ硝酸ジルコニウムZrO(NO3)2、オキシ酢酸ジルコニウムZrO(CH3COO)2など、F薬剤としてフッ化ナトリウムNaF、フッ化カリウムKF、フッ化アンモニウムNH4Fなどを用いることができる。
浴中のFイオンの浴濃度としては、Fとして、0.03モル/リットル〜0.35モル/リットルの範囲にあることが好ましい。
また処理液中には、粒径4〜80nmの水分散性シリカをSi量で3〜100mg/m2の範囲で配合することが、耐食性、膜形成性の点から好ましく、更に必要に応じて硝酸イオン、過酸化物及び錯化剤を添加することもできる。
陽極側に相当する対極板には、酸化イリジウム被覆したチタン板が好適に用いられる。対極板の条件としては、電解中に対極材料が処理液中に溶解せず、酸素過電圧の小さい不溶性陽極であることが望ましい。
形成される表面処理層の厚みは、Zr及び/又はTiの重量膜厚で、5〜300mg/m2の間にあることが、被覆の均一性や加工密着性の点から好ましい。
本発明においては、ノンクロム系表面処理層上に施される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリルエステル共重合体、アイオノマー等のオレフィン系樹脂、またはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、もしくはナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の熱可塑性樹脂を挙げることができるが、特にポリエステル系熱可塑性樹脂、中でも融点が200〜235℃のポリエステル系熱可塑性樹脂であることが好ましい。
ポリエステル系熱可塑性樹脂の融点が上記範囲よりも小さい場合には、ポリエステル樹脂のバリア性が低下して、本発明の重要な特徴であるレトルト後の缶胴上部の剥離強度が小さくなって、剥離を生じるようになるため耐食性に劣るようになり(後述する比較例11)、特に錫めっき量が少ない場合に腐食が発生しやすくなり、一方融点が上記範囲よりも大きい場合には、ポリエステル系熱可塑性樹脂を良好に被覆するために必要な温度が錫の融点(232℃)に近くなったり、錫の融点を超えることになり、被覆状態は不均一になり、密着性が不安定になって、やはりレトルト後の缶胴上部の剥離強度が低下する傾向がある。
一般に共重合ポリエステル中の二塩基酸成分の70モル%以上、特に75モル%以上がテレフタル酸成分から成り、ジオール成分の70モル%以上、特に75モル%以上がエチレングリコールまたはブチレングリコールから成り、二塩基酸成分の1乃至30モル%、特に5乃至25モル%がテレフタル酸以外の二塩基酸成分から成ることが好ましい。
テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸:シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸:コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸:の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコールまたはブチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。勿論、これらのコモノマーの組合せは、共重合ポリエステルの融点を前記範囲とするのが好ましい。
三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールとしては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘミメリット酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸等の多塩基酸や、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコールが挙げられる。
ポリオレフィンとしては、例えば低−、中−或いは高−密度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。これらの内でも、アイオノマーが好適なものであり、アイオノマーのベースポリマーとしては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、イオン種としては、Na、K、Zn等のものが使用される。
熱可塑性樹脂層は、単層或いは多層の樹脂層であってもよく、多層の樹脂層とする場合には、上述した融点200〜235℃の接着性に優れたポリエステル樹脂層が表面処理層側に位置することが好ましく、表層側に耐内容物性、すなわち耐抽出性やフレーバー成分の非吸着性に優れた組成のポリエステル樹脂を選択することが好ましい。
中でも、トコフェロール(ビタミンE)或いはポリフェノールを用いることが好ましい。トコフェロール或いはポリフェノールは、従来より、酸化防止剤としてポリエステル樹脂の熱処理時における減成による分子量低下を防止して耐デント性を向上させるものであることが知られているが、特にポリエステル樹脂に前述したポリオレフィンを改質樹脂成分として配合したポリエステル組成物に、このトコフェロール或いはポリフェノールを配合すると、耐デント性のみならず、レトルト殺菌やホットベンダー等の過酷な条件に付され被膜にクラックが生じたような場合でも、クラックから腐食が進むことが防止され、耐食性が著しく向上するという効果を得ることができる。
トコフェロール或いはポリフェノールは、0.05乃至3重量%、特に0.1乃至2重量%の量で配合することが好ましい。
熱可塑性樹脂層をノンクロム系表面処理層が形成された鋼板に形成するには、従来公知の任意の手段を行うことができ、例えば、押出コート法、キャストフィルム熱接着法、フィルム熱接着法等により行うことができる。
フィルムを用いる場合は、フィルムはT−ダイ法や、インフレーション製膜法により得ることができる。フィルムとしては、押出したフィルムを急冷した、キャスト成形法による未延伸フィルムであることが、フィルムの歪みがなく、加工性、密着性に優れているので好ましいが、このフィルムを延伸温度で逐次或いは同時二軸延伸し、延伸後のフィルムを熱固定することにより製造される二軸延伸フィルムを用いることもできる。
本発明に用いる樹脂被覆表面処理鋼板は、上述した通り、少なくとも缶内面となる側の鋼板表面に、錫めっき層、錫−亜鉛合金層、ノンクロム表面処理層、熱可塑性樹脂層の順に設けて成るものであるが、必要により他の層を設けることも可能である。すなわち、缶外面側となる鋼板表面にも内面側と同様に錫めっき層及び有機樹脂被覆を設けることは勿論、熱可塑性樹脂層の上にホワイトコート層、印刷層等を設けることもできる。
本発明のプレス成形缶は、前述した樹脂被覆表面処理鋼板から形成されている限り、任意のプレス成形法により成形でき、樹脂被覆表面処理鋼板の熱可塑性樹脂層が缶内面側となるように、絞り加工、絞り・再しぼり加工、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし加工(ストレッチ加工)、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし・しごき加工或いは絞り・しごき加工等の従来公知のプレス成形手段に付すことによって製造される。
図2は、本発明のプレス成形缶の一例を示す側面図であり、このプレス成形缶11は、前述した樹脂被覆表面処理鋼板の絞り成形で形成されており、底部12と胴部13とを備えている。底部12と胴部13とは継ぎ目なしに接続されている。
耐圧性を付与するため、缶胴部には一本乃至複数のビードを、缶底部にはエクスパンジョンリングを設けることもできる。
本発明の蓋は、上述した樹脂被覆表面処理鋼板から形成されている限り、従来公知の任意の製蓋法によるものでよい。イージーオープン機能のない蓋だけでなく、一般には、ステイ・オン・タブタイプのイージーオープン缶蓋やフルオープンタイプのイージーオープン缶蓋の形状に成形でき、上述したプレス成形缶に好適に使用することができる。
本発明の蓋の一例の上面を示す図3及び断面を拡大して示す図4において、この蓋20は、前述した樹脂被覆表面処理鋼板から形成されており、缶胴側面内面に嵌合されるべき環状リム部(カウンターシンク)21を介して外周側に密封用溝22を備えており、この環状リム部21の内側には開口すべき部分23を区画する全周にわたり形成されたスコア24が設けられている。この開口すべき部分23の内部には、大略中央部を押入して形成した略半円状の凹部パネル25と凹部パネル25の周囲に蓋材を突出させて形成したディンプル26と蓋材を缶蓋外面側に突出させて形成したリベット27とが形成され、開口用タブ28がこのリベット27のリベット打ちにより固定されている。開口用タブ28は、一端に押し裂きによる開口用先端29及び他端に保持用リング30を有している。リベット27の近傍において、スコア24と反対側には、スコア24とは不連続に並設された破断開始用スコア31が形成されている。
図3及び図4に示した具体例は、いわゆるフルオープンタイプであるが、勿論、ステイ・オン・タブタイプのイージーオープン蓋にも適用可能である。
本発明のプレス成形缶及び蓋は、耐硫化変色性に優れていることから、特に魚介類、肉類、野菜類等の硫化水素を発生させるおそれのある内容物を好適に充填することができ、このような内容物を充填した後、蒸煮や、レトルト殺菌に付された場合にも、熱可塑性樹脂層の密着性が損なわれることが有効に防止されている。
樹脂被覆表面処理鋼板を、147.5mm径の円形ブランクに打ち抜いた後、絞り比1.51の絞り加工を行い、更に絞り比1.32の再絞り加工と底部パネル加工、ビード加工、トリミング加工を行い、缶内径74.1mm、缶高さ47mm、内容積183mlの再絞り缶を成形した。成形後の缶を観察し、有機樹脂被覆層の浮き、剥離の状態を、下記評価点で評価した。
評点5;異常なし、
評点4;フランジ部の5%長以下に0.2mm径未満の樹脂被覆の浮き発生
評点3;フランジ部に0.5mm径未満の樹脂被覆の浮き発生
評点2;フランジ部または缶胴部に0.5mm径以上の樹脂被覆の浮き発生
評点1;フランジ部または缶胴部に樹脂被覆の剥離発生
加工密着性試験に使用した2ピース缶を使用し、空缶上部から水蒸気を30分間吹き掛けた。蒸煮後、缶を観察し、有機樹脂被覆層の浮き、剥離を下記評価点で評価した。
評点5;異常なし、
評点4;フランジ部の5%長以下に0.2mm径未満の樹脂被覆の浮き発生
評点3;フランジ部に0.5mm径未満の樹脂被覆の浮き発生
評点2;フランジ部または缶胴部に0.5mm径以上の樹脂被覆の浮き発生
評点1;フランジ部または缶胴部に樹脂被覆の剥離発生
加工密着性試験に使用した2ピース缶を使用し、さけ肉または牛肉を充填後、アルミニウム製イージーオープン蓋または缶胴と同じ有機樹脂被覆表面処理鋼板製のイージーオープン蓋を二重巻締めした後、レトルト処理を行った。その後、37℃の恒温室に1年間保存後、開缶し缶内面を肉眼で観察し、硫化変色、有機樹脂被覆層の状態、内面腐食を評価した。
尚、さけ肉の場合は、肉175g、食塩を1.9g充填、巻締め後、115.5℃で90分間のレトルト処理を行い、牛肉の場合は肉170gを充填、巻締め後、113℃で70分間のレトルト処理を行った。
実缶保存試験と同様にして、充填、蓋巻締め、レトルト処理を行った後、開缶し内容物を除去洗浄後、内面缶胴上部の有機樹脂被覆層に缶高さ方向に15mm幅の間隔で直線状切れ目を入れ、有機樹脂被覆層の一部を剥離した後、引張り試験機を用い有機樹脂被覆層を缶高さ方向に5mm/分の速度で180度方向に引き剥がし、剥離強度を測定した。有機樹脂被覆層の引張り破断強度が弱く、剥離前に破断してしまう場合には、粘着剤を塗布した金属箔テープを有機樹脂被覆層に貼り付け破断強度を上げた状態で測定を行った。
金属板として厚み0.18mm、調質度DR8の冷間圧延鋼板を用い、常法により缶内面側となる面に錫を厚み0.8g/m2、缶外面となる面に錫を厚み1.3g/m2同時にめっきし、洗浄後、続いて、常法により缶内面となる面に、亜鉛を厚み0.10g/m2めっきし洗浄後、錫のリフロー処理を行った。次に、このめっき鋼板の両面にγ−アミノプロピルトリメトキシシランの2%水溶液を用い、片面当たりSi量として8mg/m2になるように塗布し、80℃で乾燥し表面処理鋼板を得た。
こうして得た表面処理鋼板を220℃に加熱後、缶内面となる面にポリエチレンテレフタレート/イソフタレート(共重合比15モル%)樹脂が82wt%とアイオノマー樹脂が18wt%のブレンド樹脂を厚みが20μmになるように溶融状態で押出し被覆し、急冷した。
缶外面となる面には、エポキシアクリル系水性塗料を厚み3μmになるように塗布し、200℃で焼き付け乾燥後、印刷、仕上げニスを塗布し180℃で焼き付け乾燥を行った。この両面有機樹脂被覆表面処理鋼板を用いて、再絞り缶を製造し、210℃で1.5分の加熱処理(缶のピーク温度205℃、ピーク時間0.5秒)を行った。こうして得た2ピース缶のレトルト処理後の缶胴上部内面有機樹脂被覆層の剥離強度測定および加工密着性評価、蒸煮時の有機樹脂の剥離評価、サケ肉を充填後アルミニウム製イージーオープン蓋を巻締めた実缶保存試験(硫化変色、フィルム浮き、腐食の評価)を行った。その結果を表1、2に示す。
実施例2〜4、比較例1は、内面錫めっき量を表1に示す値に変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
実施例5は内面錫めっき量、表面処理の種類および処理厚み、内面有機樹脂の種類を表1に示すものに変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
実施例6、7は内面錫めっき量、表面処理の種類を水溶性フェノール樹脂処理とし、厚みを表1に示すものに変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
実施例8〜11、比較例2〜5は、内面錫めっき量、錫−亜鉛合金中の亜鉛量を表1に示すものに変え、牛肉を充填し、缶胴と同じ樹脂被覆鋼板製のイージーオープン蓋を巻締めた以外は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
実施例12〜14、比較例6、7は内面錫めっき量、表面処理厚みを表1に示す量に変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
実施例15〜17、比較例8、9は内面錫めっき量、表面処理の種類をZr含有水溶性フェノール樹脂処理とし、C量を表1に示すものに変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
実施例18は内面錫めっき量、表面処理の種類と厚み、内面有機樹脂被覆の種類を表1に示すものに変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
尚、電解ジルコニウム酸化物処理は、ジルコニウムフッ化水素酸カリウム 6.25g/L、硝酸カリウム 0.5g/L、過ホウ酸ナトリウム 0.05モル/Lの水溶液を作成し、pH6.0に調整後、その溶液中に被処理板を浸漬し、サンプルを陰極とし電流密度0.6A/dm2で断続電解を行い金属Zr換算として20mg/m2のジルコニウム酸化物処理膜を得た。
実施例19は内面錫めっき量、表面処理の種類と厚み、内面有機樹脂被覆の種類を表1に示すものに変え、カップ加熱を行わないこと以外は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
尚、電解ジルコニウム酸化物処理とシランカップリング剤処理の複合処理は、先ず実施例18と同様にして、ジルコニウム酸化物処理膜を得た後、両面にγ−アミノプロピルトリメトキシシランの2%水溶液を用い、片面当たり5mg/m2になるように塗布し、80℃で乾燥することにより複合処理膜を得た。
実施例20は内面錫めっき量、表面処理の種類と厚み、内面有機樹脂被覆の種類を表1に示すものに変え、カップ加熱を行わない以外は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
尚、電解ジルコニウム酸化物処理と水溶性フェノール樹脂処理の複合処理は、先ず実施例18と同様にして、ジルコニウム酸化物処理膜を得た後、水溶性フェノール樹脂処理を行い、複合処理被膜を得た。
実施例21は内面錫めっき量、表面処理の種類と厚み、内面有機樹脂被覆の種類を表1に示すものに変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
尚、電解チタニウム酸化物処理は、フッ化水素酸 0.01g/L、75%リン酸 0.20g/L、20%ジルコニウムフッ化水素酸 1.30g/Lの水溶液を作成し、その溶液中に被処理板を浸漬し、サンプルを陰極とし電流密度5A/dm2で断続電解を行い金属Ti換算として25mg/dm2のチタニウム酸化物処理膜を得た。
比較例10は内面錫めっき量、表面処理の種類および厚みを表1に示すものに変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
尚、リン酸処理は被処理板を50℃のリン酸ナトリウム30g/Lの水溶液中で陰極電解することにより処理した。
比較例11は内面錫めっき量、表面処理の種類および厚みを表1に示すものに変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
尚、モリブデート処理は被処理板を60℃の硫酸モリブデン酸ナトリウム10g/L、リン酸水素ナトリウム3g/Lの水溶液中、陰極電解することにより処理した。
比較例12は内面錫めっき量、表面処理の種類および厚みを表1に示すものに変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
尚、ポリアクリル酸処理は、被処理板をポリアクリル酸75g/L、H2TiF6 40g/Lの水溶液に浸漬することにより処理した。
比較例13は内面錫めっき量、表面処理の種類および厚みを表1に示すものに変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
尚、トリアジンチオール処理は、被処理板を20℃の1,3,5−トリアジン−2,4、6−トリチオール・モノナトリウム1%水溶液中に浸漬し、陰極として0.3Vで2分間処理を行った。
実施例22、23、比較例14、15は内面錫めっき量、内面有機樹脂被覆の種類およびカップ加熱温度を表1に示すものに変えた他は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
実施例24は内面錫めっき量、内面有機樹脂被覆の種類を表1に示すものに変え、下記の被覆方法に変え、カップ加熱を行わないこと以外は、実施例1と同様にして2ピース缶を製造し、各種評価を行った。その結果を表1、2に示す。
尚、内面有機樹脂は冷却したロール上にキャストしたフィルムを用い、このフィルムをコロナ処理(電圧200V、電流2A/25cm、5m/分の処理速度)した後、予め220℃に加熱しておいた表面処理鋼板上に熱ラミネートすることにより有機樹脂被覆表面処理鋼板を得た。
A:PET/IA15モル(82wt%)とアイオノマー樹脂(18wt%)のブレンド樹脂
B:PET/IA15モル
C:PET/IA11モル(82wt%)とポリプロピレン樹脂(18wt%)のブレンド樹脂
D:PET/IA20モル(82wt%)
E:PET/IA15モル(54wt%)とPBT/IA10モル(36wt%)とアイオノマー樹脂(10wt%)のブレンド樹脂
F:PET/IA8モル(82wt%)とアイオノマー樹脂(18wt%)のブレンド樹脂
G:PBT/IA20モル(90wt%)とポリプロピレン樹脂(10wt%)のブレンド樹脂
Claims (8)
- 缶内面となる側の鋼板上に鋼板側から順に、錫めっき層、錫亜鉛合金層、ノンクロム表面処理層、熱可塑性樹脂層が形成されて成る樹脂被覆表面処理鋼板をプレス成形して成るプレス成形缶であって、前記錫めっき層のSn量が0.8〜12g/m 2 であり、前記錫亜鉛合金層中のZn量が0.06〜0.5g/m2であり、前記ノンクロム表面処理層が、C量が15〜50mg/m 2 の範囲にある塗布乾燥型の水溶性フェノール系化合物による表面処理層、及びZr及び/又はTi,O,Fを主成分とする水溶液を用いて断続的な陰極電解処理により形成されたZr及び/又はTiを含有する無機表面処理層の少なくとも一つであり、前記熱可塑性樹脂層が、融点200〜235℃のポリエステル系熱可塑性樹脂から形成されて成り、レトルト処理後の缶胴上部における熱可塑性樹脂層の剥離強度が100g/15mm幅以上の剥離強度を有することを特徴とするプレス成形缶。
- 前記ノンクロム表面処理層が、Zr及び/又はTiを含有する無機表面処理を行った後に、Si量が2〜50mg/m 2 の範囲にあるシランカップリング剤を主剤とする表面処理又は水溶性フェノール系化合物による表面処理を行うことにより形成されたものである請求項1記載のプレス成形缶。
- 前記塗布乾燥型の水溶性フェノール系化合物による表面処理層が、水溶性フェノール系化合物にZr及び/又はTiを含有させて成るものである請求項1記載のプレス成形缶。
- 前記ポリエステル系熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレートの共重合樹脂及び/又はポリブチレンテレフタレートの共重合樹脂である請求項1乃至3の何れかに記載のプレス成形缶。
- 前記ポリエステル系熱可塑性樹脂層が、ポリエステル系熱可塑性樹脂にポリオレフィンをブレンドして成る請求項1乃至4の何れかに記載のプレス成形缶。
- 前記ポリエステル系熱可塑性樹脂が、コロナ処理に付されている請求項1乃至5の何れかに記載のプレス成形缶。
- 前記レトルト処理の前に、Tm−40℃〜Tm+10℃(Tm:表面処理層と接着する熱可塑性樹脂層に用いるベース熱可塑性樹脂の融点)の範囲で加熱処理に付されている請求項1乃至6の何れかに記載のプレス成形缶。
- 少なくとも缶内面側となる鋼板上に鋼板側から順に、Sn量が0.8〜12g/m 2 の錫めっき層、Zn量が0.06〜0.5g/m2の錫亜鉛合金層、C量が15〜50mg/m 2 の範囲にある塗布乾燥型の水溶性フェノール系化合物による表面処理層、及びZr及び/又はTiを含有する無機表面処理層の少なくとも一つから成るノンクロム表面処理層、及び融点200〜235℃のポリエステル系熱可塑性樹脂層が形成されて成る樹脂被覆表面処理鋼板から成ることを特徴とする蓋。
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