JP4293065B2 - 耐硫化変色性、耐食性に優れた溶接缶 - Google Patents

耐硫化変色性、耐食性に優れた溶接缶 Download PDF

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Description

本発明は、ノンクロム系の表面処理鋼板から成る溶接缶に関し、より詳細には、耐硫化変色性、耐食性に顕著に優れると共に高速溶接が可能な溶接缶に関する。
食品用、飲料用などの金属製の包装体に充填される内容物には、魚介類の水煮、肉類の水煮、スイートコーン、グリーンピース等の野菜類の水煮等のように、加熱殺菌や貯蔵中に硫化水素ガスを発生させるものがある。このような内容物を従来多用されていたブリキ(錫めっき鋼板)においては、錫めっき表面にクロム系の表面処理(いわゆるクロメート処理)を施すことにより、硫化黒変を防止していた。
しかしながら、このクロム系の表面処理は、錫めっき鋼板を6価クロムを含む処理液中で陰極電解処理し、これを水洗浄することにより製造されるものであり、最終成形品であるクロム系表面処理被膜中に6価クロムは含まれないものの、有害な6価クロムを処理液中に含有するため、環境問題から種々の問題を有しており、6価クロムを処理液に使用しないことが要求されている。
また上記クロム系表面処理錫めっき鋼板から成る長方形のブランクを円筒状に丸めた後、端部を溶接して得た缶胴は、ネッキング加工、ビード加工、張り出し加工等の厳しい加工を受けると、クロム系表面処理被膜が破壊してしまい、加工部における硫化変色を十分抑制することは困難であった。
このような問題を解決するため、低炭素冷延板の少なくとも片面の地鉄表面に、目付量1〜15g/mのSnよりなる電気メッキ層と、さらに目付量0.0071〜0.71g/mのZnよりなる電気メッキ層とを有し、Snメッキ層の全メッキ層中に占める重量割合が少なくとも58.4%である、耐硫化性と耐スマッジ性の優れた電気ぶりき(特許文献1)や、低炭素冷延鋼板表面に片面当り目付量0.2〜1g/mのSnメッキを施した後、Snメッキ量に対するZnメッキ量の比率が常に2〜30wt%となるように、少なくとも片側面に目付量0.01〜0.3g/mのZnを重層メッキした後、該Zn単独メッキ層としては実質的に消失するまで加熱することを特徴とする耐錆性、溶接性に優れた薄Snメッキ鋼板の製造方法(特許文献2)が提案されている。
特公昭53−47216号公報 特開昭63−290292号公報
上記特許文献1記載の電気ブリキにおいては、硫化変色性は改善されているものの、以下のような問題を有している。
すなわち、特許文献1記載の電気ブリキを用いて溶接缶を作成する場合、オーバーラップ幅を小さくしてシーム溶接を行うと、金属亜鉛が表面に存在するため、金属亜鉛が突沸してスプラッシュとなって付着し、有機物による溶接部周辺の補修を行っても金属露出をなくすことができず、耐食性に劣ると共に、スプラッシュの付着した部分は焦げ茶色に変色し、外観特性にも劣っている。また、加熱殺菌処理を行うとネックイン加工部、フランジ加工部等での有機樹脂被膜の密着性に劣り、被膜の剥離やクラックが入るという問題もあった。
また上記特許文献2記載の製法により製造される錫メッキ鋼板においては、耐錆性、溶接性に優れた安価な容器用表面処理鋼板が提供されるが、この錫メッキ鋼板は、塗装しないそのままの状態で、且つ、オーバーラップ幅が広い状態では溶接は可能であるが、塗装、印刷、焼付けを行う場合には、満足する溶接性を得ることができない。すなわち塗装焼付け時の熱により金属錫が鉄と反応し、鉄−錫合金量が増加し、溶接に必要な金属錫量が不足し、小さいオーバーラップ幅では、高速溶接をすることができない。
従って本発明の目的は、環境負荷の少ないノンクロム系の表面処理鋼板を用い、耐硫化変色性、耐食性に優れた溶接缶を提供することである。
また本発明の他の目的は、塗装や印刷等の焼付け等の熱履歴を受けた場合でも小さいオーバーラップ幅で高速溶接可能な溶接缶を提供することである。
本発明によれば、缶内面となる側の鋼板表面に、鋼板側から順に、錫めっき層、錫−亜鉛合金層、ノンクロム系の表面処理層、有機樹脂被覆層が形成されて成る表面処理鋼板から成る溶接缶において、前記錫めっき層及び錫−亜鉛合金層における錫量が0.9〜12g/mであり、フリー錫量が0.10〜12g/mであり、及び亜鉛量が0.01〜0.5g/mであり、前記ノンクロム系の表面処理層がシランカップリング剤を主剤とする表面処理或いは水溶性フェノール樹脂による表面処理から成る層であり、溶接部におけるオーバーラップ幅が1mm以下であることを特徴とする溶接缶が提供される。
本発明の溶接缶においては、
1.表面処理鋼板の缶外面となる側の表面には、錫量が0.9〜12g/mの錫めっき層が形成されていること、
2.シランカップリング剤を主剤とした表面処理層が、2〜35mg/mのSi量を有するものであること、
3.水溶性フェノール樹脂による表面処理層が、0.8〜50mg/mのC量を有するものであること、
が好適である。
本発明の溶接缶は、缶内面となる側が、鋼板側から順に、錫めっき層、錫−亜鉛合金層、ノンクロム系の表面処理層、有機樹脂被覆層が形成され、錫めっき層及び錫−亜鉛合金層における錫量が0.9〜12g/mであり、フリー錫量が0.10〜12g/mであり、及び亜鉛量が0.01〜0.5g/mであり、ノンクロム系の表面処理層がシランカップリング剤を主剤とする表面処理層(以下、シランカップリング剤表面処理層という)或いは水溶性フェノール樹脂による表面処理層(以下、フェノール樹脂表面処理層という)である有機樹脂被覆表面処理鋼板を用いること、及び溶接部におけるオーバーラップ幅が1mm以下であることが重要な特徴である。
図1は、本発明の溶接缶に用いる有機樹脂被覆表面処理鋼板の一例の断面構造を模式的に示すものであり、鋼板1、鋼板1の少なくとも缶内面側となる面に鋼板側から順に、鉄−錫合金層2、金属錫層3、錫−亜鉛合金層4、ノンクロム系表面処理層5、溶接部及びその近傍を除いて有機樹脂被覆層6が形成されている。一方、鋼板1の缶外面側となる面には鉄−錫合金層7、金属錫層8が形成されている。なお、本図では、各層の界面を直線で描いているが、実際には複雑に入り組んでおり、また、合金組成比も層内で変化している。
本発明においては、鋼板上に錫めっき層及び錫−亜鉛合金層が形成されていることにより、硫化変色の原因となる硫化水素と錫の反応を、亜鉛の存在により抑制することができる一方、この亜鉛はフリー亜鉛として0.15g/m以下しか残存していないことから、溶接性にも優れているという効果を奏することが可能となるのである。
ここで、フリー亜鉛とは、錫や鉄と合金化していない金属亜鉛のことである。
本発明の溶接缶においては、錫めっき層及び錫−亜鉛合金層における錫量が0.9〜12g/mであり、フリー錫量が0.10〜12g/mであり、及び亜鉛量が0.01〜0.5g/mであること、すなわち、鋼板に施される錫めっきが0.9g/m以上、特に0.9〜12g/m、特に1.0〜12g/mの範囲の錫量であること、錫めっき層上に施される亜鉛めっきが0.010〜9g/m、特に1.0〜8g/mの範囲の亜鉛量であることも重要であり、このことは後述する実施例の結果からも明らかである。
すなわち上記範囲よりもフリー錫量が少ない場合には、塗装、印刷の焼付け時に金属錫と素地鉄との合金化が進むことにより、溶接に必要な金属錫量を確保することが困難になり、溶接性が低下してしまうからである(比較例15及び比較例16)。一方上記範囲よりもフリー錫量が多くても各種性能上は特に問題はないが、コストの面から12g/m以下であることが好ましい。
ここで、フリー錫とは、鉄や亜鉛と合金化していない金属錫のことであり、電気化学的方法又は電気化学的に金属錫を溶解した前後の試験片について、蛍光X線で錫量を測定し、差から量を知ることができる。
また上記範囲よりも亜鉛量が少ない場合には、反応により捕捉し得る硫化水素の量が少なく、充分な耐硫化変色性を得ることが困難になる(比較例2)。一方上記範囲よりも亜鉛量が多いとリフロー処理を行って錫−亜鉛合金層を形成しても、フリー亜鉛が0.15g/mを超えて残存し、溶接の際スプラッシュやブローホールが発生し溶接性が低下することになる(比較例1)。
本発明においては、錫−亜鉛合金層の上に形成されるシランカップリング剤表面処理層或いはフェノール樹脂表面処理層が形成されていることも重要であり、これにより、厳しい加工が付された高加工部においても有機樹脂被覆との密着性に優れ、耐食性、耐錆性を有することが可能になるのである。
ノンクロム系の表面処理としては一般に、無機系でチタネート系、シリケート系、ジルコネート系、リン酸塩系、Ti、Zr,Al等のゾル−ゲル処理などの表面処理、有機系ではポリアクリル酸系、ポリアクリル酸/マレイン酸系、トリアジンチオール系等の表面処理が知られているが、後述する実施例の結果から明らかなように、これらの表面処理を施した溶接缶においては、いずれも加工部に腐食が発生しており、充分な加工密着性が得られていないことが明らかである(比較例7〜12)。
シランカップリング剤表面処理層は2mg/m以上40mg/m未満のSi量であることが好ましく、またフェノール樹脂による表面処理層は0.8mg/m以上55mg/m未満のC量であることが好ましい。上記範囲よりもSi量及びC量が少ない場合には、缶内面側に被覆する有機被覆(塗膜或いは樹脂被覆)との密着性が低下し、レトルト処理時に有機被膜が剥離し、腐食が発生するおそれがあり、特に加工部での剥離が著しくなる。また表面処理鋼板の製造において有機樹脂被覆を行うまでの保管期間が長くなると、かかる表面処理を行っていても錫の酸化膜が生成することにより黄変したり、塗装焼付け時に更に錫酸化膜が成長して、黄変度が増したり、表面抵抗が増大することにより溶接性が低下する場合がある。
一方シランカップリング剤表面処理層又はフェノール樹脂表面処理層は溶接性に影響を与えることから、シランカップリング剤表面処理層では、Si量が40mg/m以上になると、フェノール樹脂表面処理層では、C量が55mg/m以上になると、オーバーラップ幅を1mm以下にして溶接することが困難になる。
本発明の溶接缶においては、溶接部におけるオーバーラップ幅を1mm以下とすることが重要である。
一般に溶接缶においては、溶接部のオーバーラップ幅dが大きいほど溶接が容易である一方、溶接部のオーバーラップ幅dを小さくすると、溶接部のオーバーラップ幅が変化しやすく、溶接が困難であるが、本発明においては、用いる表面処理鋼板が上述した特徴を有することから安定しており、オーバーラップ幅dを1mm以下としても、溶接部のオーバーラップ幅が変化することがないのである。
図2及び図3は、溶接部の断面構造を示す図であり、図2はオーバーラップ幅dが1mmより大きい場合、図3はオーバーラップ幅dが1mm以下である場合をそれぞれ示す。
図2に示すように、溶接部のオーバーラップ幅dが大きいと溶接部10の押し潰しが小さくなり、溶接部の厚みが厚くなって、溶接段差が大きくなる。その結果、溶接部近傍を有機樹脂11で完全に補修することが困難になり、金属端縁12の露出が生じて、内容物による腐食が発生してしまうことになる。これに対して、溶接部のオーバーラップ幅dを1mm以下とすると、図3に示すように、押し潰しにより金属端縁が突出することなく、有機樹脂による補修で完全にカバーすることができ、溶接部の耐食性を確保することが可能となるのであり、本発明の溶接缶においては、溶接性と耐食性の両方を満足することが可能となるである。
(有機樹脂被覆表面処理鋼板)
本発明の溶接缶の成形に用いる有機樹脂被覆表面処理鋼板は、缶内面となる側の鋼板表面に、鋼板側から順に、錫めっき層、錫−亜鉛合金層、ノンクロム系の表面処理層、有機樹脂被覆層が形成されて成るものであり、好適には、缶外面となる側の鋼板表面にも錫めっき層が形成されていることが望ましい。
[鋼板]
本発明に用いる鋼板は、製缶用に用いられていた従来公知の冷延鋼板等を使用することができ、板厚は0.1〜0.4mm程度のものが好ましい。
[錫めっき層]
鋼板の少なくとも缶内面側となるべき面に設ける錫めっき層は、前述した通り、錫量が0.9g/m以上、特に0.9〜12g/m、特に1.0〜11.2g/mの範囲となるようにめっきされた層であり、フリー錫量が0.10〜12g/mとなるように鋼板上に錫めっき層を形成し、有機樹脂被覆後の加熱条件を制御することにより、鋼板自体の耐食性を向上させると共に、シランカップリング剤表面処理層或いはフェノール樹脂含有表面処理層との組み合わせにより、溶接性、有機樹脂被覆との加工密着性を向上させ、更に加工後の耐食性の向上を図ることが可能となるのである。なお、錫めっき層は鋼板表面を一様に被覆していても、島状に存在していても良い。
また鋼板の缶外面側となるべき面にも錫めっき層を設けることが望ましく、錫量は内面側と同様に、0.9〜12g/mであることが望ましい。
本発明においては、鋼板上に設ける錫めっき層の鋼板側の一部を錫鉄合金とすることによって錫めっき層/錫鉄合金層の二層構成にすることもできる。
錫めっき層を、錫めっき層/錫鉄合金層の二層構成に形成するには、鋼板上に所定量の錫めっきを行った後、錫の融点以上に加熱した後冷却を行う(リフロー処理)ことによって錫めっき層の鋼板側の一部を鉄−錫合金層に変化させることができるし、或いは後述する亜鉛めっき後、錫−亜鉛合金層を形成するためのリフロー処理の際に同時に鉄−錫合金層に変化させることもできる。なお、錫めっき前の鋼板表面に薄ニッケルめっきや薄いニッケル拡散層を予め設けておくことにより、鋼板側の一部を錫−ニッケル−鉄合金とすることもできる。又、表面処理鋼板に塗装後150℃以上の温度での乾燥焼付けにより鉄−錫合金層が成長する。合金化は、錫めっき層に含有される錫量の5〜50%であることが望ましい。
このように錫−鉄合金層を形成することによって、加工密着性が向上すると共に、鋼板自体の耐食性も向上させることが可能になる。
一方、前記したように、合金化していないフリー錫層を0.10g/m以上残存させることが重要である。
[錫−亜鉛合金層]
缶内面側となる鋼板表面に形成された錫めっき層上に設ける錫−亜鉛合金層は、亜鉛量が0.01〜0.5g/mの範囲となるように錫めっき層上に亜鉛めっきをした後、錫の融点以上の温度で加熱した後冷却するリフロー処理をすることにより、又は錫めっきした後にリフロー処理し、次いで亜鉛メッキした後、150℃以上での塗装焼付けやラミネート前後の加熱等の製缶工程における各種の熱処理をすることにより形成される。尚、フリー亜鉛が0.15g/m以上残存しないようにするのが好ましい。さらに、亜鉛量のほぼ全量を合金化することが望ましい。
錫−亜鉛合金層を形成することにより、亜鉛の存在により硫化変色の原因となる硫化水素と錫の反応を抑制することができる一方、亜鉛はフリー亜鉛として0.15g/m以上残存していないことから、前述したように亜鉛が突沸することもなく、溶接性を低下させることもないのである。
一方、錫―鉄合金層や錫―亜鉛合金層を形成し、更に有機樹脂を被覆して加熱した後であっても、溶接する前の状態で合金化していないフリー錫量が0.10g/m以上残存させることが溶接性から重要である。合金化していないフリー錫量は好ましくは0.15g/m以上であり、さらに好ましくは0.30g/m以上であることが望ましい。
[シランカップリング剤表面処理層]
錫−亜鉛合金層上に形成されるシランカップリング剤処理層は、シランカップリング剤が有する反応基により、錫めっき層あるいは錫−亜鉛合金層と熱可塑性ポリエステル樹脂層の密着性を向上させることが可能となる。またシランカップリング剤処理層自体が耐久性と耐水性を向上させる一方、錫めっき層へのガス透過を抑制し、これにより錫めっき層の酸化皮膜の形成を抑制するため、酸化皮膜の生成・成長による有機樹脂被覆層の密着性の低下を防止できる。
シランカップリング剤表面処理層は、前述した通り、Si量が2mg/m以上40mg/m未満、特に3〜30mg/mとなるように形成されていることが好ましい。
シランカップリング剤表面処理層を形成するために用いるシランカップリング剤は、有機樹脂被覆と化学結合する反応基と錫めっき鋼板と化学結合する反応基を有するものであり、アミノ基、エポキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基等の反応基と、メトキシ基、エトキシ基等の加水分解性アルコキシ基を含むオルガノシランから成るものや、メチル基、フェニル基、エポキシ基、メルカプト基等の有機置換基と加水分解性アルコキシ基を含有するシランを使用することができる。
本発明において、好適に用いることができるシランカップリング剤の具体例としては、γ-APS(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)、γ−GPS(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、BTSPA(ビストリメトキシシリルプロピルアミノシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
シランカップリング剤処理層を錫−亜鉛合金層上に形成するには、上述したシランカップリング剤溶液を錫−亜鉛合金層上に塗布、若しくはシランカップリング剤溶液中に、錫めっき層及び錫−亜鉛合金層が形成された鋼板を浸漬し、その後絞りロールで過剰な溶液を除去することにより形成することができる。好適なシランカップリング剤溶液の組み合わせ及び処理の順序は以下の通りである。
1.アミノ基含有シラン溶液及び/又はエポキシ基含有シランカップリング剤溶液を用いて処理生成する。
2.アミノ基及び/又はエポキシ基を含むシランカップリング剤と有機置換基と加水分解性アルコキシ基を含有したシランから成る混合溶液を用いて処理生成する。
3.有機置換基と加水分解性アルコキシ基を含有したシランで処理した後、次いでアミノ基含有シラン溶液及び/又はエポキシ基含有シラン溶液から成るシランカップリング剤溶液を用いて処理生成する。
[フェノール樹脂表面処理層]
錫−亜鉛合金層上に形成されるフェノール樹脂表面処理層は、C量が0.8mg/m以上55mg/m未満、特に1〜40mg/mの範囲となるように形成することが好ましく、下記式(1)の重合体から成る水溶性フェノール樹脂を用いて形成することができる
Figure 0004293065
式中、X1はそれぞれの構成単位において独立に水素原子または下記式(2)


= −CH−N ・・・(2)


式中、R1およびR2は、互いに独立に、水素原子、C1〜C10のアルキル基またはC1〜C10のヒドロキシアルキル基を表す)で表されるZ1基を表し、Y1およびY2は、Y1が水素原子、水酸基、C1〜C5のアルキル基、C1〜C5のヒドロキシアルキル基、C6〜C12のアリール基、ベンジル基または下記式(3)
Figure 0004293065
式中、R3およびR4は、互いに独立に、水素原子、C1〜C10のアルキル基、またはC1〜C10のヒドロキシアルキル基を表し、X2は、Y1が上記式(3)で表される基である場合、式(1)で表されるそれぞれの構成単位において独立に水素原子または下記式(4)


= −CH−N ・・・(4)


式中、R5およびR6は、互いに独立に、水素原子、C1〜C10のアルキル基、またはC1〜C10のヒドロキシアルキル基を表す、で表されるZ2基を表す、で表される基を表し、Y2が水素原子を表すか、またはY1とY1に隣接する位置に存在する場合のY2がY1とY2との間の結合も含めて一体となって縮合ベンゼン環を表し、ここにおいて、Z1基+Z2基の導入率はベンゼン環1個あたり0.2〜1.0個である。
本発明においては上記重合体からなる水溶性フェノール樹脂単独で表面処理層を形成する他、かかる水溶性フェノール樹脂にジルコニウム、チタン等の無機物を含有させて表面処理層を形成することもでき、これにより耐食性を更に向上させることが可能となる。
無機物は全炭素の4乃至3750重量%の量で含有されていることが望ましい。
フェノール樹脂表面処理層を錫−亜鉛合金層上に形成するには、上述した水溶性フェノール樹脂組成物を錫−亜鉛合金層の表面に塗布乾燥することにより形成できる。
[有機樹脂被覆]
本発明において、シランカップリング剤処理層或いは水溶性フェノール樹脂表面処理層上に形成される有機樹脂被覆としては、熱可塑性樹脂フィルムの被覆或いは熱硬化性塗料による塗膜の何れであってもよく、溶接部及びその近傍を除いて、シランカップリング剤表面処理層或いはフェノール樹脂表面処理層の上に施される。
樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂等従来公知の熱可塑性樹脂を挙げることができるが、最も好適には、熱可塑性ポリエステル樹脂を用いることが望ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂は、内容物中の芳香成分の吸着が少なく、腐食成分に対するバリア性や耐衝撃性にも優れたものである。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、従来公知のカルボン酸成分とアルコール成分とから誘導されたポリエステル樹脂を使用することができ、ホモポリエステルでも、共重合ポリエステルでも、或いはこれらの2種以上のブレンド物であってもよい。
本発明においては、従来公知の熱可塑性ポリエステル樹脂の中でも、特にポリエチレンテレフタレート系の共重合樹脂、すなわちカルボン酸成分の50モル%以上がテレフタル酸で、アルコール成分の50モル%以上がエチレングリコール成分であるエチレンテレフタレート系の共重合ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。好適には、カルボン酸成分としてイソフタル酸を3〜18モル%を含有するポリエチレンテレフタレート/イソフタレートを使用できる。
用いるポリエステル樹脂は、フィルムを形成し得る分子量を有し、オルトクロロフェノール中25℃で測定した固有粘度[η]が0.6〜1.2の範囲にあることが好ましい。
樹脂フィルム層をシランカップリング剤処理層或いはフェノール樹脂表面処理層が形成された鋼板に形成するには、従来公知の任意の手段を行うことができ、例えば、押出コート法、キャストフィルム熱接着法、フィルム熱接着法等により行うことができる。
フィルムを用いる場合は、フィルムはT−ダイ法や、インフレーション製膜法により得ることができる。フィルムとしては、押出したフィルムを急冷した、キャスト成形法による未延伸フィルムであることが、フィルムの歪みがなく、加工性、密着性に優れているので好ましいが、このフィルムを延伸温度で逐次或いは同時二軸延伸し、延伸後のフィルムを熱固定することにより製造される二軸延伸フィルムを用いることもできる。
有機樹脂被覆を構成する塗料としては、金属缶の塗装に用いられていた従来公知の熱硬化性塗料を用いることができ、エポキシ系塗料、フェノール系塗料、アクリル系塗料、ウレタン系塗料等を挙げることができる。特に作業性等の観点から有機溶剤を用いない水溶性の塗料を用いることが望ましいことから、エポキシ・アクリル系水性塗料を用いることが好ましい。
樹脂フィルム層の厚みは、8〜42μm、特に10〜40μmの範囲、塗膜の厚みは、1〜10μm、特に3〜16μmの範囲にあることが表面処理鋼板の保護及び加工性とのバランスの点で好ましい。有機樹脂被覆の厚みが上記範囲より小さい場合は、バリア性が低下し、内容物浸透による腐食が発生したり、加工時に被膜にキズが入りやすくなり、腐食が発生する確率が高くなる。また、厚みが上記範囲より大きい場合には、被膜自体の剛性が高くなり、ネックイン部、巻締部等の厳しい加工を受ける部分において加工密着性が劣るようになる。
尚、本発明においては、溶接性の点から有機樹脂被覆を溶接部及びその近傍を除いた個所に施すが、有機樹脂被覆を施した後の、溶接部の錫−亜鉛合金層表面の金属錫の量が0.1g/m以上、好ましくは0.25g/m以上、さらに好ましくは0.30g/m以上残存していることが望ましい。すなわち、樹脂フィルムの被覆或いは塗膜形成のための焼き付け等により、錫−亜鉛合金層の合金化が進みすぎると、溶接に必要な金属錫量が不足してしまうからである。
[層構成]
本発明に用いる有機樹脂被覆表面処理鋼板は、上述した通り、少なくとも缶内面となる側の鋼板表面に、錫めっき層、錫−亜鉛合金層、シランカップリング剤処理層或いはフェノール樹脂含有表面処理層、有機樹脂被覆の順に設けて成るものであるが、必要により他の層を設けることも可能である。すなわち、缶外面側となる鋼板表面にも内面側と同様に錫めっき層及び有機樹脂被覆を設けることは勿論、有機樹脂被覆の上にホワイトコート層、印刷層等を設けることもできる。
(溶接缶)
本発明の溶接缶は、上述した有機樹脂被覆表面処理鋼板からなる缶胴ブランクの両端縁部を1mm以下のオーバーラップ幅で重ね合わせた状態で溶接を行う。図4は溶接を説明するための図であり、電極ロール20a、20b又は電極ロール20a,20bでバックアップした溶接銅線21a,21bで有機樹脂被覆表面処理鋼板22のオーバーラップ部23をはさんでシーム溶接を行った後、溶接部を上述した熱硬化性塗料等を用いて溶接部の金属露出を補修する。次いで、ネックイン加工、ビード加工、フランジ加工を施すことにより、缶胴部が形成される。次いで、別途形成された缶端部(缶蓋及び缶底)を巻締め加工することにより溶接缶が成形される。
実施例及び比較例について、溶接性評価、溶接近傍補修部金属露出測定、実缶保存試験は下記のように行った。
(1) 溶接性試験
溶接電圧上限はスプラッシュ、ブローホールの発生、溶接下限は溶接部引き剥がし試験で溶接されていない部分が僅かでも存在した場合を下限とし、その間の電圧ポイント数で評価した。尚、スプラッシュは肉眼観察で、ブローホールの発生はX線の透過観察により判断した。
溶接性5 溶接可能範囲4ポイント以上
4 溶接可能範囲3ポイント(安定生産できる下限)
3 溶接可能範囲2ポイント
2 溶接可能範囲1ポイント
1 溶接可能範囲なし
(2)溶接近傍補修部金属露出測定
片側に305径アルミニウムイージーオープン蓋を巻締めたT2号缶の空缶を用い、溶接近傍の補修部以外の部分をパラフィンを用いてシールした後、0.1%食塩水と界面活性剤からなるエナメルレーター測定液を空缶に満たした後、銀棒を対極とし缶胴を陽極とし直流電圧6.3Vを印加し、その時流れる電流値で評価した。
(3) 実缶保存試験
片側に305径アルミニウムイージーオープン蓋を巻締めたT2号缶の空缶にサケを140g、ブラインを40g充填し、307径のスチール蓋を巻締めた後、117℃で100分のレトルト処理を行った。こうして得た、サケ水煮缶詰を、37℃の恒温室中に2年間保管後、開缶し、缶内面の腐食状態、硫化変色状態、缶外面の状態を肉眼観察した。
(実施例1)
金属板として厚み0.17mm、調質度T4の冷延鋼板を用い、常法により缶内面側となる面に錫を0.9g/m、缶外面側となる面に錫を1.3g/mめっきした後、続いて、常法により缶内面側となる面に、亜鉛量として0.01g/m2めっきし、その後240℃で錫のリフロー処理を行った。次に、こうして得ためっき鋼板の両面にγ-アミノプロピルトリメトキシシランの2%水溶液を用い、片面当たりSi量として8mg/mになるように塗布し、80℃で乾燥し、缶胴用表面処理鋼板を得た。
一方、0.24mmの調質度T4の冷延鋼板を用いた以外は、同様に処理し、缶蓋用表面処理金属板を得た。
缶胴用表面処理鋼板に、エポキシ・アクリル系水性塗料を缶胴の継目部分にあたる場所の近傍1.5mm幅を除いて、焼付け後の膜厚が5μmになるように内面側にマージン塗装し、200℃の熱風乾燥炉中で10分間焼付け硬化させ、次いで焼付け後の膜厚が5μmになるように外面側にホワイトコートをマージン塗装し、190℃の熱風乾燥炉中で10分間焼付け硬化させ、次いで外面側に印刷と仕上げニスを塗布後160℃で10分間の乾燥を行い、樹脂被覆金属板を得た。この樹脂被覆金属板のフリー錫量は0.22g/m、フリー亜鉛量は0.0g/mであった。作成した樹脂被覆金属板をT2号缶胴ブランクに切断し、そのブランクを丸めた後、端部をオーバーラップ幅0.3mm、1.5mmとし銅線電極を用いた市販の電気抵抗溶接機にて溶接性評価を行った。その時の溶接性評価結果を表2に示す。
次に、オーバーラップ幅0.3mmで溶接した缶胴の溶接継ぎ目部の内外面側に溶剤型エポキシフェノール系補修塗料を乾燥塗膜厚みが40μmになるようにスプレー塗装した後200℃の熱風乾燥炉中で30秒間焼付け、継ぎ目部分を被覆し補修した。
その後、缶胴中央部に内面側に凸の深さが0.5mmのビードを3本形成し、一方の缶端部を305径にネックインし、フランジ成形してT2号缶胴を作製し、305径の市販のアルミニウムイージーオープン蓋を巻締めた。補修部の金属露出をエナメルレーター法で測定した。その結果を表2に示す。
一方、缶蓋用表面処理金属板に、エポキシ・アクリル系水性塗料を、焼付け後の塗膜厚みが10μmになるように両面にロールコートし、200℃10分間の焼付け処理を行った後、常法により、307径のスチール蓋を作製した。
こうして得た缶にサケを充填し、307径スチール蓋を巻締めてレトルト処理を行い、実缶保存試験を行った。その結果を表2に示す。
(実施例2〜5)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量およびシランカップリング剤の種類とSi量を表1に示す値に変えた以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例6〜9及び比較例1、2)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量を表1に示す量に変え、表面処理をZr含有水溶性フェノール樹脂処理とし、C量を表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例10、11)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量を表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例12)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量を表1に示す量に変え、めっき板製造順序を錫めっき後リフロー処理し、次いで亜鉛めっきを行うように変更した以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例3及び4)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量、水溶性フェノール樹脂表面処理によるC量を表1に示す量に変えた以外は実施例6と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例5及び6)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量、シランカップリング剤表面処理によるSi量を表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例7)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量、および表面処理の種類をチタネート処理にし、処理量をTi量として表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
尚、チタネート処理は被処理板を60℃の硫酸チタン20g/L水溶液中で、陰極電解することにより処理した。
(比較例8)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量、および表面処理の種類をジルコネート処理にし、処理量をZr量として表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
尚、ジルコネート処理は被処理板を60℃の硫酸ジルコニウム20g/L水溶液中で、陰極電解することにより処理した。
(比較例9)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量、および表面処理の種類をリン酸処理にし、処理量をP量として表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
尚、リン酸処理は被処理板を50℃のリン酸ナトリウム30g/Lの水溶液中で、陰極電解することにより処理した。
(比較例10)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量、および表面処理の種類をモリブネート処理にし、処理量Mo量として表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
尚、モリブデート処理は被処理板を60℃の硫酸モリブデン酸ナトリウム10g/L、リン酸水素ナトリウム3g/Lの水溶液中で、陰極電解することにより処理した。
(比較例11)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量、および表面処理の種類をポリアクリル酸処理にし、処理量をC量として表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
尚、ポリアクリル酸処理は、被処理板をポリアクリル酸75g/L、HTiF40g/Lの水溶液に浸漬することにより処理した。
(比較例12)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量、および表面処理の種類をトリアジンチオール処理にし、処理量をC量として表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
尚、トリアジンチオール処理は、被処理板を20℃の1,3,5−トリアジンー2,4,6−トリチオール・モノナトリウム1%水溶液中に浸漬し、陰極として0.3Vで2分間処理を行った。
(比較例13)
特公昭53−47216号公報実施例1の表1と同様にして、缶内面側錫めっき量5.6g/m、亜鉛めっき量0.05μm(約0.35g/m)、錫リフロー処理なし、クロメート処理(Cr量;5mg/m)、缶外面側錫めっき量5.6g/mの缶胴用めっき鋼板を得たのち、本発明の実施例1のスチール蓋を使用し本発明の実施例1と同様にして、各評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例14)
特公昭53−47216号公報の実施例2の表2と同様にして、缶内面側錫めっき量5.6g/m、亜鉛めっき量0.1μm(約0.70g/m)、錫リフロー処理あり、クロメート処理、缶外面側錫めっき量5.6g/mの缶胴用めっき鋼板を得たのち、本発明の実施例1のスチール蓋を使用し本発明の実施例1と同様にして、各評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例15)
特開昭63−290292号公報の実施例1と同様にして、缶内外面側錫めっき量0.8g/m、亜鉛めっき量0.10g/m、錫リフロー処理あり、クロメート処理の缶胴用めっき鋼板を得たのち、本発明の実施例1のスチール蓋を使用し本発明の実施例1と同様にして、各評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例16)
特開昭63−290292号公報の実施例1と同様にして、缶内外面側錫めっき量0.5g/m、亜鉛めっき量0.08g/m、錫リフロー処理あり、クロメート処理の缶胴用めっき鋼板を得たのち、本発明の実施例1のスチール蓋を使用し本発明の実施例1と同様にして、各評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例17)
缶内面側の全錫めっき量、フリー錫量、および全亜鉛めっき量、フリー亜鉛量を表1に示す量に変えた以外は実施例1と同様にし、溶接缶胴、スチール缶蓋を製造し、各評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1〜実施例9および比較例1〜比較例16から、冷間圧延鋼板上の少なくとも缶内面側になる面に、錫量として0.9〜12g/mのめっきを行い、その上に、亜鉛量として0.06〜0.5g/mのめっきを行った後、錫の融点以上に加熱し錫と亜鉛の合金層を形成させ、次いでその上にSi量として2〜35mg/mのシランカップリング剤を主剤とした表面処理またはC量として0.8〜50mg/mのフェノール樹脂含有の有機樹脂処理またはフェノール樹脂含有の有機無機複合処理を行った後、溶接部近傍を除き溶接有機樹脂皮膜を設け、焼付けた後のフリー錫量を0.10〜12g/mとした後、缶胴ブランクの両端縁部を1mm以下のオーバーラップで重ね合わせた状態で、電極ロールまたは電極ロールでバックアップした溶接銅線を介してシーム溶接を行うと、溶接可能範囲が広く、出来上がった溶接缶は、耐食性、耐硫化変色性に優れていることが分かる。
Figure 0004293065
Figure 0004293065
本発明の溶接缶の溶接部における有機樹脂被覆表面処理鋼板の断面構造の一例を示す図である。 オーバーラップ幅が1mmより大きい場合の溶接部の拡大断面図である。 オーバーラップ幅が1mm以下の場合の溶接部の拡大断面図である。 溶接を説明するための図である。

Claims (4)

  1. 缶内面となる側の鋼板表面に、鋼板側から順に、錫めっき層、錫−亜鉛合金層、ノンクロム系の表面処理層、有機樹脂被覆層が形成されて成る有機樹脂被覆表面処理鋼板から成る溶接缶において、
    前記錫めっき層及び錫−亜鉛合金層における錫量が0.9〜12g/mであり、フリー錫量が0.10〜12g/mであり、及び亜鉛量が0.01〜0.5g/mであり前記ノンクロム系の表面処理層がシランカップリング剤を主剤とする表面処理或いは水溶性フェノール樹脂による表面処理から成る層であり、溶接部におけるオーバーラップ幅が1mm以下であることを特徴とする溶接缶。
  2. 前記表面処理鋼板の缶外面となる側の表面には、錫量が0.9〜12g/mの錫めっき層が形成されている請求項1記載の溶接缶。
  3. 前記シランカップリング剤を主剤とした表面処理層が、2〜35mg/mのSi量を有するものである請求項1又は2記載の溶接缶。
  4. 前記水溶性フェノール樹脂による表面処理層が、0.8〜50mg/mのC量を有するものである請求項1又は2記載の溶接缶。
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