以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の第1の実施形態は、Cuからなる第2層の表面に、0.1〜150μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のCrと、同程度の平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状のCuとを、15〜60重量%がCr、残部がCuとなる様に混合したCu・Cr混合体からなる第1層を接触させた構成体に於いて、第1層と第2層とを接触させたまま、900〜1150℃の温度で、例えば0.25時間以上保持し1次加熱処理一体化し、Cu・Cr混合体の合金化と、第1層と第2層の界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入するようにさせながら第1層と第2層とを一体化した事を特徴とする真空バルブ用複合接点である。更に詳しくは、第1層と第2層は電気的に一体化していることを要する。
これによって同一条件(直径20mmの通電軸の一端面に、直径42mm、厚さ3mmの接点をろう付けによって取り付けた後、両接点を接触させ、両者間に加重100kgを与えた時の前記通電軸の側面の表面温度)での温度上昇テストにおいて、温度上昇値が4〜5℃程度改善(低く抑制)でき、本発明の目的である温度特性の改善に寄与している。
ここで、0.1〜150μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のCrを、0.1〜15μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のWで置換し、Cu・Cr混合体を、Wと、同程度の平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状のCuとを、50〜90重量%がW、残部がCuとなる様に混合したCu・W混合体で置換したものとする事もできる。
すなわち本実施形態の条件で製造するポイントは、第1層、第2層の両者を接触した状態としてあるので、1次加熱前あるいは昇温過程中に特にCu・Cr混合体(またはCu・W混合体)中に存在するガス成分の混合体外への除去が容易で効率的となり、結果的に焼結後のCu−Cr合金(またはCu−W合金)中の低ガス量化が可能である。
本実施形態の条件で製造する他のポイントは、Cu・Cr混合体のCu−Cr合金化(またはCu・W混合体のCu−W合金化)と、第2層のCuが第1層のCu−Cr合金(またはCu−W合金)中に、また第1層のCu−Cr合金(またはCu−W合金)中のCuが第2層のCu中に、互いに20μm以上で100μm以下の範囲だけ侵入し、第1層と第2層の界面近傍の合金化とを同時に得る点にある。このように両合金化を同時に得る事による利点は、Cu−Cr合金(またはCu−W合金)内部および第1層と第2層の界面の双方が、雰囲気(熱処理中あるいは焼結前の準備、保管中)などからの汚染を受けずに一体化することが可能となり、Cu−Cr合金(またはCu−W合金)内部の低ガス化や、第1層と第2層の界面強度の向上、熱伝導性(温度特性)の向上などの利益を得る。更に、互いに20μm以上で100μm以下の範囲だけ侵入する過程で、相手側の中に存在する欠陥(微細の空隙、不純物、ガス成分等)を第1層と第2層の界面近傍から除去しながら互いに侵入を進行させ、界面近傍の清浄化も得て、優れた温度特性を持った複合接点となる。
なお、第1層中のCuと第2層中のCuとを互いに他の層に侵入させ第1層と第2層の界面近傍を合金化させたとき、界面がそのまま残る場合もあるが、更に合金化を進めて界面をほぼ消失させれば、温度特性および遮断特性が、より一層良くなる。
1次加熱処理の温度を900〜1150℃とするのは、900℃未満では合金化後のCu−Cr複合接点(またはCu−W複合接点)の温度上昇が大きく(温度特性が劣る)、遮断特性も劣るためであり、1150℃を越えると複合接点の内部に空孔が残存し易く、やはり温度特性を低下させ好ましくない。保持時間が0.25時間未満では、やはり合金化後のCu−Cr複合接点の温度上昇が大きく、遮断特性も、劣る。5時間を越える場合は、充分な強度を得るものの、他の部分の軟化を招いたり、経済性の点で得策でない。
ここで、『第1層中のCuと第2層中のCuとが互いに20μm以上で100μm以下の範囲だけ侵入』した状態とは、第1層中のCuが界面を通って20〜100μmだけ第2層へ侵入すること、第2層中のCuが界面を通って20〜100μmだけ第1層へ侵入することを意味する。すなわち、100μm以上であっても、一方が20μm未満(界面からの侵入の量が20μm未満)では、第1層中と第2層中との間の接触している機械的な強度が不十分なると共に、そりの発生も起こり、この界面部分からの剥離が起こり好ましくない。侵入の量が100μmを越える時には、強度的には十分となり好ましいが、100μmを越す様な長い処理時間では、第1層中の構成成分の組成変動による接点特性の変化や、他の部品の必要以上の軟化などを招くと共に経済性に劣り好ましくなく、従ってこれを除外する。
なお、侵入の量については、界面から第1層または第2層に侵入する距離(深さ)は多少バラツキがあるので、その平均値を侵入の量とする。
『第1層中のCuと第2層中のCuとが互いに20μm以上で100μm以下の範囲だけ侵入』した状態を得るのは、第1層の焼結の進行の程度と、第1層と第2層の界面近傍でのCuの侵入の程度との相関で決定され、通常の拡散のように温度と時間と材料の拡散係数の大小のみでは決定されず予測も出来ない。すなわち第1層の焼結の進行の程度は、Cr(またはW)粒径やCr(またはW)の純度や加熱一体化時の雰囲気の質の制御に依存し、第1層と第2層の界面近傍でのCuの侵入の程度は、第1層と第2層の接触状況(接触面積、接触力、接触面の清浄度)、第1層と第2層の純度の制御に依存する。
本実施形態での第2層のCuは、例えばCu板、Cu焼結体、Cu成型体等である。第2層の表面に、0.1〜150μmの平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状(以下粉状で代表)のCr(または0.1〜15μmの平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状(以下粉状で代表)のW)と、同程度の平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状(以下粉状で代表)のCuとを均一に混合したCu・Cr混合体(またはCu・W混合体)からなる第1層を接触させて載置する必要がある。また本実施形態では、Cu(第2層)の表面に、Cr・Cu混合体(またはCu・W混合体)(第1層)を載置する状況は、両者を接触させることが前提となり、載置に於ける両者の上下は関係なく、Cr・Cu混合体(またはCu・W混合体)(第1層)の上面にCu(第2層)を載置する場合も包含される。
本実施形態での第1層中のCr(またはW)の平均粒径として、0.1μm以下の粉を使用すると、合金化後のCu−Cr合金(またはCu−W合金)中に内蔵されるガス量が増加の傾向となり、電流遮断特性の低下のみでなく温度特性も低下(温度上昇値が大となる)させる。また、第1層中のCrの平均粒径として、150μm以上の粉(Wの場合は、15μm以上の粉)を使用すると、複合化後の接点の温度特性が低下(バラツキが大となる)して好ましくない。遮断電流特性のバラツキも見られる。このようにCr粉(またはW粉)の粒径の選択は、本発明の目的の達成の為の補助的技術として有益である。
本発明での第2層のCuは、十分に軟化させた低硬度とするのが好ましい。この場合のCuのビッカース硬さ(以下Hv)は、通常のCuの硬さがHv=60〜80程度であるのに対して、Hv=60以下好ましくはHv=50以下とする(また、第1層がCuW合金の場合は、第2層のCuは、通常のCuの硬さがHv=60〜80程度であるのに対して、Hv=60以下とする)。低硬度化させる事により、第1層と第2層とを積層させる際に両者の界面が好ましい接触状態(第1層中のCuと第2層のCuとが互いに20μm以上侵入させるのに有利となる状態)を得る。その結果、容易にCr・Cu混合体のCr−Cu合金化(またはCu・W混合体のCu−W合金化)と、第1層と第2層の界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者を一体化し、好ましい温度特性を得る。
本実施形態での第1層中のCu相、CuCr合金中のCuとCr(またはCuW合金中のCuとW)も十分に軟化させた低硬度とすることで、同様に良好の接触状態を得て、好ましい温度特性を得る。この場合のCuのビッカ−ス硬さは、通常のCuの硬さがHv=60〜80程度であるのに対して、Hv=60以下好ましくはHv=50以下とする。通常のCrの硬さがHv=220〜270程度であるのに対して、CrがHv=220以下、好ましくはHv=200が望ましい。(また、CuW合金の場合は、Cuのビッカ−ス硬さは、通常のCuの硬さがHv=60〜80程度であるのに対して、Hv=60以下とする。通常のWの硬さがHv=400〜500程度であるのに対して、WがHv=360以下が望ましい。)これらの硬さの調整は、事前の熱処理や純度の調整で可能である。このように硬さの選択は、本発明の目的の達成の為の補助的技術である。
本発明の第2の実施形態は、Cuからなる第2層の表面に、0.1〜150μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のCrと、同程度の平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状のCuとを、15〜60重量%がCr、残部がCuとなる様に混合したCu・Cr混合体からなる第1層を接触させた構成体に於いて、第1層と第2層とを6トン/cm2以下の圧力で1次加圧処理一体化した後で、900〜1150℃の温度で1次加熱処理一体化し、Cu・Cr混合体の合金化と、第1層と第2層の界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入するようにさせながら第1層と第2層とを一体化した事を特徴とする真空バルブ用複合接点である。
ここで、0.1〜150μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のCrを、0.1〜15μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のWで置換し、Cu・Cr混合体を、Wと、同程度の平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状のCuとを、50〜90重量%がW、残部がCuとなる様に混合したCu・W混合体で置換したものとする事もできる。
すなわち、本実施形態では、まずCuとCu・Cr混合体(またはCu・W混合体)とが十分に接触する様に、ゼロを含む6トン/cm2以下の接触圧力で両者を接触させて載置するのが好ましく、次いでCr・Cu混合体(またはCu・W混合体)の焼結後の相対密度が90%以上となる様に、例えば900℃で加熱焼結したので、Cr・Cu混合体は合金化しCu−Cr合金となる(または、Cu・W混合体は合金化しCu−W合金となる)と共に、Cu(第2層)と接続した状態となる。
また本実施形態で、補助的技術としての1次加圧処理を6トン/cm2以下とする理由は、6トン/cm2を越えると、接触する両者間の接触面で片当たりの現象(特定の1部分のみでの接触、接触点の集中)が起こり、接触面積の確保に好ましくなく、電流遮断、開閉時に温度上昇値にばらつきが見られ好ましくない。下限は、対面するCuとCu・Cr混合体(またはCu・W混合体)の一方が他方に自重のみが作用する場合も包含すると定義した。ゼロは自重を指す。
また本実施形態では、補助的技術としての1次加熱処理を1150℃以下とする理由は、1150℃を越えると、複合接点の第1層中に気孔の生成が見られるのみならず、複合接点の第1層と第2層の界面の合金化が過度に進行し、互いに侵入するCu量を100μm以下に制御することが困難となり、安定した温度特性が得られない。1次加熱保持時間は、同様に、0.25時間以上を要する。
また本実施形態では、Cu(第2層)の表面に、Cr・Cu混合体(またはCu・W混合体)(第1層)を載置する状況は、両者を接触させることが前提となり、載置に於ける両者の上下は関係なく、Cr・Cu混合体(またはCu・W混合体)(第1層)の上面にCu(第2層)を載置する場合も包含される。
本発明の第3の実施形態は、Cuからなる第2層の表面に、0.1〜150μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のCrと、同程度の平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状のCuとを、15〜60重量%がCr、残部がCuとなる様に混合したCu・Cr混合体からなる第1層を接触させた構成体に於いて、900〜1150℃の温度で1次加熱処理一体化した後で、第1層と第2層とを6トン/cm2以下の圧力で1次加圧処理一体化し、Cu・Cr混合体の合金化と、第1層と第2層の界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入するようにさせながら第1層と第2層とを一体化した事を特徴とする真空バルブ用複合接点である。
ここで、0.1〜150μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のCrを、0.1〜15μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のWで置換し、Cu・Cr混合体を、Wと、同程度の平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状のCuとを、50〜90重量%がW、残部がCuとなる様に混合したCu・W混合体で置換したものとする事もできる。
すなわち、本実施形態は、前記第2の実施形態のように1次加圧処理一体化した後で、1次加熱処理一体化する代わりに、まず1次加熱処理一体化を行ない、その後で、1次加圧処理一体化を行なうこととしたものである。このように、1次加圧処理一体化と、1次加熱処理一体化の順序を入れ替えても、前記第2の実施形態と同様の効果が得られる。
本発明の第4の実施形態は、Cuからなる第2層の表面に、0.1〜150μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のCrと、同程度の平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状のCuとを、15〜60重量%がCr、残部がCuとなる様に混合したCu・Cr混合体からなる第1層を接触させた構成体に於いて、第1層と第2層とを6トン/cm2以下の圧力で1次加圧したままの状態で、900〜1150℃の温度で1次加熱処理一体化し、Cu・Cr混合体の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入するようにさせながら第1層と第2層とを一体化した事を特徴とする複合接点である。
ここで、0.1〜150μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のCrを、0.1〜15μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のWで置換し、Cu・Cr混合体を、Wと、同程度の平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状のCuとを、50〜90重量%がW、残部がCuとなる様に混合したCu・W混合体で置換したものとする事もできる。
すなわち本実施形態によって、加圧処理一体化と、加熱処理一体化とを同時に行っているので、前記第2及び第3の実施形態よりも汚染がなく高品質でかつ短時間に効率良く第1層と第2層との一体化を可能とし、一層優れた温度特性を持つ複合接点を得る。
本発明の第5の実施形態は、Cuからなる第2層の表面に、0.1〜150μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のCrと、同程度の平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状のCuとを、15〜60重量%がCr、残部がCuとなる様に混合したCu・Cr混合体からなる第1層を接触させた構成体に於いて、第1層と前記第2層との6トン/cm2以下の圧力での1次加圧処理一体化と900〜1150℃の温度での1次加熱処理一体化を同時に行ない、又はいずれか一方を行なった後他方を行ない、その後で、4トン/cm2以上の圧力での2次加圧処理一体化と、1080℃以下での2次加熱処理一体化のうちの少なくとも一方を行ない、Cu・Cr混合体の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入するようにさせながら第1層と第2層とを一体化した事を特徴とする真空バルブ用複合接点である。
ここで、0.1〜150μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のCrを、0.1〜15μmの平均粒子直径(球形以外のものは、球に換算した直径)を持つ粉状又は粒子状のWで置換し、Cu・Cr混合体を、Wと、同程度の平均粒子直径を持つ粉状又は粒子状のCuとを、50〜90重量%がW、残部がCuとなる様に混合したCu・W混合体で置換したものとする事もできる。
すなわち、本実施形態によって、第1層と第2層との1次加圧処理一体化と1次加熱処理一体化を、同時に行ない、又はいずれか一方を行なった後他方を行ない、その後に、更に2次加圧処理一体化と、2次加熱処理一体化のうちの少なくとも一方を行なっているので、前記第1乃至第4の実施形態よりも短時間に効率良く第1層と第2層の一体化が可能で、一層優れた温度特性を持つ複合接点を得る。
2次加熱処理温度が、1080℃を越えるときには、2次加圧処理が4トン/cm2では、1次加熱処理、1次加圧処理で得た効果と大差がない。2次加熱処理温度を1080℃以上にすると、界面での反応が過度に進み、脆化を招く。
なお本実施形態では、補助的技術としての2次加圧処理を4トン/cm2以上の圧力とする理由は、第1層の一層の高密度化に対して有益となる為である。
また本実施形態では、補助的技術としての2次加熱処理の温度を1080℃以下とする理由は、加熱一体化後の第1層中の亀裂発生を抑制すると共に気孔の生成を防止するのに有益となる為である。
本発明の第6の実施形態は、第1乃至第5の実施形態のいずれかに記載の真空バルブ用複合接点において、Cu・Cr混合体(またはCu・W混合体)の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得た後の第2層のCuが、実質的にCuの相対密度値を持つCu板又はCu焼結体である事を特徴とするものである。
すなわち本実施形態によって、第2層として実質的にCuの相対密度値すなわち少なくとも8.0gr/ccの相対密度を持つCu板とした場合は、第2層の高熱伝導度化を達成し、優れた温度特性を持つ複合接点となる。なお相対密度が8.0gr/ccより低いCu板では、発熱が大となり好ましくなく温度特性の低下を招くと共に、機械的強度の不足から変形した複合接点となり易く好ましくない(8.0gr/ccの相対密度を持つCuは、純Cuの密度のおおよそ90%に相当する)。第2層としてFeやSUSを利用した複合接点では、温度特性の低下を招き好ましくない。
また、本実施形態によって、第2層を実質的にCuの相対密度値すなわち少なくとも8.0gr/ccの相対密度を持つCu焼結体とした場合は、Cu焼結体中に残存する微少の空孔が変形する際に、電流遮断時の外力を緩和する緩衝作用を呈する。その結果、複合接点面に発生する微少アークの発生を抑制出来るため、複合接点面の表面荒れを抑制し高伝導度化に寄与し、接点面の温度上昇を低く抑制した温度特性を持つ複合接点となる。
なお相対密度が8.0gr/ccより低いCu焼結体では、発熱が大となり好ましくなく温度特性の低下を招くと共に、機械的強度の不足から変形した複合接点となり好ましくない。
なお、上記第1乃至第6の実施形態のWを、W炭化物,Mo,Mo炭化物のいずれかで置換してもよい。さらに、第1層中のCuの一部または全部を、Agで置換してもよい。
本発明の第7の実施形態は、第1乃至第6の実施形態のいずれかに記載の真空バルブ用複合接点において、Cu・Cr混合体の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得た後の第1層のCu中には、Cr,Al,Si,Feの少なくとも1つを0.5重量%以下の量含有した事を特徴とするものである。
すなわち本実施形態によって、第1層のCu中に、Cr,Al,Si,Feの少なくとも1つを0.5重量%以下の量含有することとしたので、遮断特性を改良した上で、機械的変形のないかつ安定な温度特性を持つ複合接点を得る。Cr,Al,Si,Feの少なくとも1つの量が0.5重量%を越えた場合には温度特性の低下を招く。このように第1層のCu中への所定量内のCr,Al,Si,Feの少なくとも1つの成分の選択は、本発明目的の達成の為の補助的技術として有益である。
本発明の第8の実施形態は、第1乃至第7の実施形態のいずれかに記載の真空バルブ用複合接点において、第1層の厚さを0.5mm以上〜3.0mm以下、第2層の厚さを0.5mm以上〜3.0mm以下、第1層の厚さと第2層の厚さの合計を1.0mm以上〜5.0mm以下(第1層がCu・W混合体の場合は、第1層の厚さを0.5mm以上〜5.0mm以下、第2層の厚さを1.0mm以上〜3.0mm以下、第1層の厚さと第2層の厚さの合計を1.5mm以上〜7.0mm以下)とし、第1層を接触面、第2層を第1層の支持台座とした事を特徴とするものである。
すなわち本実施形態によって、電気抵抗に重要な役割を持つ第1層の厚さ、第2層の厚さ、その合計の厚さの各々を最適化する補助的技術によって、全体としての材料抵抗を小さく出来るのみでなく、更に、厚さをも所定値の範囲内に薄く(小さく)したので、複合接点全体で遮断時の機械的外力に弾性的に対応する。このように、第1層、第2層の厚さ(複合接点の厚さ)を最適化した効果は、遮断、開閉時などに接触面に及ぶ外力に対して、第1層、第2層が薄いので、接触面は柔軟に接触面積を確保しながら追従出来る効果を得るのが重要である。第1層、第2層の厚さが上述の上限値を越えて厚いと、接触面は点接触となり、柔軟に接触面積を確保しながら追従することが出来ず真実接触面積は大きくならず、温度特性の向上の効果が低い。
以上の如く、第1層、第2層の厚さを所定値の範囲内の適性値とする事によって、材料抵抗を小さく出来るという補助的効果を得るのみでなく、接触面での真実接触面積を大きく確保するように作用し、これらの相乗的効果によって温度特性のより一層の安定化に寄与する作用を持つ。
この相乗的効果に対する知見は、材料の厚さを単に変動させて最適値を追及した程度の事ではなく、外力による変形に対して複合接点全体がその変形に追従できる範囲の厚さの選択、第1層としてCu−15〜60重量%Crの選択(またはCu−50〜90%重量Wの選択)、第2層として十分に軟化させた8.0gr/cc以上の相対密度を持つCuの選択、第1層と第2層とを積層させた上で、第1層を接触面として第2層を支持部材として使用した事などの前提条件と、第2層のCuと第1層中のCuとが互いに20μm以上で100μmの範囲で互いに侵入しあった界面を持たせる主条件との組み合わせで、温度特性に対してこれらの各々が互いに密接に影響しあった複合的寄与によるものである。
この結果、温度上昇を低くし優れた温度特性を持つ複合接点となる。
なお、補助的技術として、第1層の厚さが0.5mm未満では、遮断数および開閉数が多数回経過した時、第1層の材料の総て、一部分が蒸発、飛散、消耗することが見られ、例えば第2層の露出などによる溶着障害や耐電圧性障害の発生などのトラブルによって、表面荒れを起し好ましくない。逆に第1層の厚さが3mm(第1層がCu・W混合体の場合は5mm)を越すと、その分だけ素材の電気抵抗が増大し、接点面の温度上昇を大として好ましくないのみならず、前記真実接触面積の確保にも好ましくない。
一方、第2層の厚さが0.5mm未満(第1層がCu・W混合体の場合は1mm未満)では、第2層を第1層の支持台座として使用する時、強度不足となり複合接点全体としての変形を招き好ましくない。変形は接触状態の不均一となり温度特性の低下の一因となる。第2層の厚さが3mmを越すと、第1層が柔軟に接触面積を確保しようと追従する変形能力を低下させ、第1層の接触面積は大きくならず、温度特性の向上の効果が低いのみならず、やはりその分だけ素材の電気抵抗が増大し、接点面の温度上昇を大として好ましくない。更に、第1層の厚さと第2層の厚さの合計値は同じ理由によって、5mm以下(第1層がCu・W混合体の場合は、7mm以下)が好ましい。
本発明の第9の実施形態は、第1乃至第7の実施形態のいずれかに記載の真空バルブ用複合接点において、Cu・Cr混合体からなる第1層のCu中には、Bi,Te,Sbの少なくとも1つを0.001〜1重量%含有した事を特徴とするものである。
すなわち本実施形態によって、耐溶着性を一層改善させるのに有益である。
次にこれらの実施形態の作用について説明する。
真空遮断器では、接点材料に品質欠陥が存在すると、遮断特性や温度特性にばらつきが出たり、要求する機能を発揮しなかったりなどのケースが見られる。
本発明者らが、真空バルブに使用されている接点材料を検討し、真空バルブ特性と対比した結果、(a)接点素材自体の固有抵抗、(b)固定通電軸自体の固有抵抗、(c)可動通電軸自体の固有抵抗、(d)接点素材の厚さとCu層の厚さ、(e)接点と固定通電軸との接合状態、(f)接点と可動通電軸との接合状態などが温度特性に深く関与する。この他に(g)遮断あるいは開閉の経過による接触面の表面の劣化状態(表面荒れ、汚染物の付着度合い)も温度特性の低下に関与する。
まず、(a)と(b)と(c)は、接点素材の組成比については、15〜60%Cr−Cu(または50〜90%W−Cu)の適用、第2層のCuには、相対密度が8.0gr/cc以上とし、例えばCu板やCu焼結体とするなど、本発明を効果的に発揮させるための阻害条件を制御することによって、すなわち接点素材、固定、可動通電軸の材質が決まれば、事前に把握が可能である。適応する第1層のCu−Cr合金中のCr量が15%未満の時(またはCu−W合金中のW量が50%未満の時)には、電流を遮断した時の耐アーク性が十分でない事から接触面領域の材料損傷が激しく接触抵抗値の変動が著しく温度特性が低下する。Cr量が15%以上(またはW量が50%以上)で耐アーク性が向上し温度特性が安定する。しかし、Cr量が60%を越えたCu−Cr合金(またはW量が90%を越えたCu−W合金)を本発明の第1層に配置した複合接点では、遮断特性の低下が見られると共に温度特性(熱伝導性)が低下し好ましくない。
つぎに、(d)は、第1層、第2層の厚さに関係する。第1層、第2層の厚さを薄くした第1の効果は、素材自体の電気抵抗、熱拡散に重要な役割を持つ第1層の厚さ、第2層の厚さ、その合計の厚さの各々を最適化したので、全体としての材料抵抗を小さく出来る。真空バルブの接点では、電流遮断でアークを受けた接触面領域は、受けたエネルギによって溶融、蒸発し著しい荒れや材料消耗を呈し、接点表面から数μm〜数100μm程度の深さのクレ−タを生ずる事がある。そこで本実施形態では、第1層のCu−Cr接点(またはCu−W接点)の厚さとして、このクレ−タの深さよりも十分に厚い厚さの0.5mm以上を選択しているので、著しい荒れや材料消耗が発生しても、なお第1層のCuCr接点(またはCuW接点)を接触面領域に残存させることが出来、安定した温度特性を得る。第1層の厚さが0.5mm未満では、第2の層の露出を十分に予防するには不満足である。第1層の厚さが3mm以上(第1層がCu・W混合体の場合は5mm以上)となると抵抗の増加のため限度とした。その結果0.5mm以上〜3.0mm以下(第1層がCu・W混合体の場合は5mm以下)の厚さを持つCu−Cr接点(第1層)を配置すると共に、第1層の変形を防止する為の支持台座として第2層(Cu)を配置し、安定した温度特性を発揮する。
第1層、第2層の厚さを薄くした第2の効果は、第1層、第2層の厚さが十分に薄いので、遮断、開閉時に接触面に及ぶ外力に対して、柔軟に3点接触を確保しながら追従する。第1層、第2層の厚さが上述の上限値を越えて厚いと、接触面は、点接触となり柔軟に接触面積を確保しながら追従することが出来ず、真実接触面積は大きくならず、安定した温度特性を発揮できない。電力用の遮断器の接点技術では第1層、第2層を所定構成とし最適化することによって、柔軟さを活用し温度特性を確保することは従来行われていない新規の着目である。
以上の如く、第1層、第2層の厚さを所定値の範囲内とする事によって、材料抵抗を小さく出来るの一般的効果のみでなく、第1層、第2層が一体として変形するのに好ましい所定の厚さとし、接触面の真実接触面積を大きく確保する効果も発揮する。これらの相乗的効果によって温度特性のより一層の安定化に寄与する。
また、(e)、(f)は、接合状態の良否に依存し最も把握が困難な変動要素となる。第1層と第2層との接続に通常行われるAgろう付では、Agろう層の存在によって、温度特性にばらつきを呈し変動要素となる。そこで本実施形態では、この(e)、(f)の状態が温度特性に対して変動要素とならない様に、Agろう層の存在を排除することとし、第1層のCuCr接点中のCuと、第2層のCuとが互いに所定量だけ侵入しあう状態とした結果、第1層と第2層とを一体化した後の強度を確保すると共に温度特性に対する変動要素を除くこととした。
そして、(g)は、遮断あるいは開閉の状態によって刻々と変動し定量化が難しい。
すなわち電流遮断を行うと、アークを受けた第1層のCu−Cr合金(またはCu−W合金)の接触面領域は、溶融、蒸発、飛散の繰り返しを受け、接点表面は著しい荒れや材料消耗を呈し、温度上昇や遮断特性の低下を招いている。この様な溶融、蒸発、飛散の繰り返しを受ける接点表面は、遮断を受ける度ごとにその表面状態を刻々大きく変化させる。その為、十分な接触面積を確保した時には、低い温度上昇値を得て安定した温度特性を得るが、表面形態は遮断の度ごとに変化する事から、次の遮断では十分な接触を確保出来る保証はなく、温度特性は不安定となり、遮断特性も不安定となる。これに対して本実施形態では、第1層、第2層の厚さの範囲を最適に選択する補助的技術によって、前記した効果によってアーク発生を抑制する配慮をして温度特性の安定化をはかっている。
接点としての機能を持つ第1層と、支持機能を持つ第2層とを積層させた本発明の複合接点の温度特性の安定化には、まず接触現象に直接関与する第1層のCu−Cr接点(またはCu−W接点)の温度特性を安定化させる事、第1層を支持する第2層の温度特性を安定化させる事、さらに第1層と第2層とを積層した界面近傍の温度特性を安定化させる事の3点が重要である事が分かった。
これらの知見のもとに、本発明の実施例を詳細に説明する。
まず、遮断特性、温度特性、および関連特性を評価する方法と条件は、次のようである。
(1)温度特性(温度上昇値)
所定条件で製造した第1層と第2層とから成る複合接点片を試験用真空バルブに搭載し、組立てた後、接点に200Aの連続電流、20kg/cm2の荷重を与えながら、試験用真空バルブの端子部の表面温度を、高感度赤外温度計を用いて非接触的に測定し、測定値から室温を差引いた後の数値を温度上昇値として求め温度特性とした。
実施例2の値を基準として、温度上昇値が実施例2の値の0.8倍よりも低く好ましい場合を評価A、0.8倍以上〜0.9倍未満を評価B、0.9倍以上〜1.05倍未満を評価C、1.05倍以上〜1.15倍未満を評価Dとした。一方、実施例2の値より不安定となった1.15倍以上〜1.3倍未満を評価X、1.3倍以上〜1.5倍未満を評価Y、1.5倍以上を越える場合を評価Zとした相対値で示した(A〜D:特性良好、X〜Z:特性不良)。
(2)遮断特性
直径70mmの接点を装着した遮断テスト用実験バルブを開閉装置に取付けると共に、ベーキング、電圧エージング等を与えた後、24kv、50Hzの回路に接続し、電流をほぼ1kAずつ増加しながら遮断限界を試験用真空バルブ3本につき比較評価した。数値は実施例2の遮断限界値を1.0とした時の相対値で示した。
参考(1):遮断試験用実験バルブ
遮断テスト用試験バルブの概要は、端面の平均表面粗さを約1.5μmに研磨したセラミックス製絶縁容器(主成分:AL2O3)を用意した。このセラミックス製絶縁容器については、組立て前に1600℃の前加熱処理を施した。封着金具として、板厚さ2mmの42%Ni−Fe合金を用意した。ロウ材として、厚さ0.1mmの72%Ag−Cu合金板を用意した。上記用意した各部材を被接合物間(セラミックス製絶縁容器の端面と封着金具)に気密封着接合が可能なように配置して、5×10−4Pa.の真空雰囲気で封着金具とセラミックス製絶縁容器との気密封着工程に供し試験バルブを組立てた。
参考(2):Cu侵入量の評価
本発明の複合接点のポイントは、第1層中のCuと第2層中のCuとが、どれだけの量互いに侵入して両者が一体化されているかであり、その侵入した量の計測が重要である。
侵入したCu量の測定は、第1層と第2層とが接触する界面近傍の断面によって調査する。第1層のCuCr(またはCuW)中のCuの中に放射性物質(64Cu)をド−プする。この際第2層中のCuの中には放射性物質(64Cu)はド−プしない。この様な両者を接触させて加熱処理し一体化した後、界面近傍の断面について第2層中のCu中に存在する放射性物質(64Cu)の量を、第1層から侵入してきたCuとして、例えばIMA(イオンマイクロアナライザ)で定量する。
次に、第2層中のCuの中にCuの放射性物質(64Cu)をド−プする。この際第1層のCuCr(またはCuW)中のCuの中には放射性物質(64Cu)はド−プしない。両者を接触させて加熱処理し一体化した後、切断した断面部について第1層中のCu中に存在する放射性物質(64Cu)の量を、第2層から侵入してきたCuとして、例えばIMA(イオンマイクロアナライザ)で定量する。
これによって、界面からどれだけの距離にCuがお互いに侵入したかを求める。測定はIMAの他にXMA(X線マイクロアナライザ)も併用し測定値の信頼性を確認した。
すなわち、試験片を使用した事前の実験によって求めた。(1)第2層のCuには、あらかじめ放射性物質(64Cu)をド−プしたCu板を用意する。第1層には放射性物質(64Cu)をド−プしていないCu粉とCr粉(またはW粉)を原料粉として混合したCu・Cr混合粉(またはCu・W混合粉)を用意する。例えばこれら両者をそのまま(載置したまま)、所定の加熱処理(900〜1150℃の温度で1次加熱一体化)によって一体化して複合接点とする。(2)逆に放射性物質(64Cu)をド−プしていないCu板(第2層)を用意する。第1層には放射性物質(64Cu)をド−プしたCu粉とCr粉(またはW粉)とを使用して、これらを混合したCu・Cr混合粉(またはCu・W混合粉)を用意する。これら両者をそのまま(載置したまま)、所定の加熱処理(900〜1150℃の温度で1次加熱一体化)によって一体化して複合接点とする。この様にして、Cu層(第2層)とCuCr合金(またはCuW合金)(第1層)のいずれかに放射性物質(64Cu)を含む複合接点とし、加熱処理条件に対応した放射性物質(64Cu)侵入量との関係を計測する。これらの間の関係を事前の実験で知ることによって、実際に実施例、比較例に供する総ての複合接点の製造に使用するCu板やCu粉に放射性物質(64Cu)をド−プせず侵入したCu量を推定する。
参考(3):複合接点の製造条件の例
本発明の実施例、比較例で採用したCu(第2層)とCu・Cr混合体(またはCu・W混合体)(第1層)を接触させた後に採用した工程(イ〜ト)を以下に示す。
(工程) (接触後の工程の内容)
工程(イ):両者を単に接触 → 機械的圧着
工程(ロ):両者を単に接触 → 1次加熱処理(900℃未満)
工程(ロ):両者を単に接触 → 1次加熱処理(900℃〜1150℃)
工程(ロ):両者を単に接触 → 1次加熱処理(1150℃超)
工程(ハ):両者を単に接触 → 1次加熱処理(1050℃)
→ 1次加圧処理(6t/cm2以下)
工程(ニ):両者を単に接触 → 1次加圧接触(6t/cm2以下)
→ 1次加熱処理(1150℃)
工程(ホ):両者を単に接触 → 1次加熱処理(1050℃)
→ 1次加圧処理(6t/cm2以下)
→ 2次加熱処理(900℃)
→ 2次加圧処理(4t/cm2以上)
工程(ヘ):両者を単に接触 → 1次加圧接触のまま(おもりを載置のまま)
→ 1次加熱処理(1050℃)
工程(ト):両者を単に接触 → 1次加圧処理(6t/cm2以下)
→ 1次加熱処理(1050℃)
→ 2次加圧処理(4t/cm2以上)
→ 2次加熱処理(900℃)。
以下に、図1〜図4を参照して、第1層がCu・Cr混合体の場合の実施例、比較例を詳細に説明する。
(実施例1〜5、比較例1〜7)
これらの実施例、比較例においては、実施例3を除き、第2層のCuとしてCu板を使用した。
すなわち、第2層の代表素材として厚さ2mmの純Cu板を、第1層の代表素材とし厚さ1mmのCu−25%Cr合金を使用して説明する。
Cu板は、あらかじめ500℃以上の温度で約10分以上の保持時間で加熱処理を行った。Cu・Cr混合粉のCuもあらかじめ350℃以上の温度で約1時間の保持時間で、Cu・Cr混合粉のCrもあらかじめ1350℃以上の温度と、約30分以上の保持時間で加熱処理を行って使用した。
第1層のためのCu、Crとして、44〜105μmの平均粒子直径を持つCr(クロム)粉、同じ平均粒子直径を持つCu(銅)粉とが所定の比率(25重量%Cr−Cu)となる様に均一に混合したCu・Cr混合粉(第1層)を用意する。第2層の為のCuとして、厚さ2mmまで圧延したCu板を用意する。
CuとCu・Cr混合体を接触させた後の工程は、比較例1では工程(イ)を、比較例2〜5では工程(ロ)を、実施例1〜5も工程(ロ)を採用した。比較例6〜7では機械的処理によって表面層の一部を除去する方法で所定の厚さを残した。
両者をそのまま接触させ(載置したまま)、工程(イ)のように8t/cm2の圧力で機械的圧着し一体化したもので界面近傍でのCuの侵入をほぼゼロとした(比較例1)。
両者をそのまま接触させ(載置したまま)、工程(ロ)によって700℃の1次加熱処理を与え、第1層中のCuを2〜5μmだけ第2層中へ、第2層中のCuを3〜5μmだけ第1層中へ侵入させた(比較例2)。
両者をそのまま接触させ(載置したまま)、工程(ロ)によって800℃の1次加熱処理を与え、第1層中のCuを15〜17μmだけ第2層中へ、第2層中のCuを15〜17μmだけ第1層中へ侵入させた(比較例3)。
両者をそのまま接触させ(載置したまま)、工程(ロ)によって900〜1150℃で、約1時間の1次加熱処理を適宜選択の上で与えたもので、Cr・Cu混合体(第1層)の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら一体化した複合接点を得た(実施例1〜2、4〜5)。
両者をそのまま接触させ(載置したまま)、工程(ロ)によって1250℃で、約1時間の1次加熱処理を与え、Cr・Cu混合体(第1層)の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から100μm〜110μmの範囲で侵入した複合接点を得た(比較例4)。
両者をそのまま接触させ(載置したまま)、工程(ロ)によって1300℃の1次加熱処理を与え、Cr・Cu混合体(第1層)の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から110μm〜120μmの範囲で侵入した複合接点を得た(比較例5)。
両者をそのまま接触させ(載置したまま)、前記実施例1〜2、4〜5で製造した複合接点を利用して、一方の面(第2層)を機械的に除去しながらCuの厚さを2〜5μmだけ残し、他方の面(第1層)は機械加工せずそのままとし30〜35μmとした(比較例6)。逆に第1層を機械的に除去してCuの厚さを2〜5μmだけ残し、第2層は機械加工せずそのままとし30〜35μmとした(比較例7)。この様にして厚さの異なる組み合わせの複合接点を製造した(比較例6〜7)。
なお本発明での評価は、第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ30〜35μm、30〜35μmとした場合の温度特性、遮断特性を基準とした(実施例2)。
各複合接点について、温度特性、遮断特性を評価したところ、第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、ほぼゼロおよび2〜5μm、3〜5μmとした場合には、基準とした実施例2の値に対して、1.5倍(評価Z)、1.3〜1.5倍と1.5倍以上(評価Y〜Z)の温度上昇を示し不合格とした。遮断特性に於いても基準とした実施例2の値に対して、0.3倍、0.5倍に低下した上に、遮断試験に際して第1層と第2層とが分離し好ましくなかった(比較例1〜2)。
また、第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ15〜17μm、15〜17μmとした場合には、基準とした実施例2の値に対して、1.15〜1.3倍と1.3〜1.5倍(評価X〜Y)の温度上昇を示し不合格とした。遮断特性に於いても基準とした実施例2の値に対して、0.8〜0.9倍に低下した上に、遮断試験に際して第1層と第2層とが分離し好ましくなかった(比較例3)。
これに対して、第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ20〜25μm、20〜25μmとした場合(実施例1)では、基準とした実施例2の値と同程度の温度特性(評価C〜D)であった。さらに、遮断特性も0.9〜1.0倍を示し、基準とした実施例2の値と同程度で合格の範囲である。
第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ45〜50μm、45〜50μmとした場合(実施例4)には、基準とした実施例2の値と同程度又はそれ以上の温度特性(評価B〜C)であった。遮断特性も1.0〜1.1倍を示し良好となった。
第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ95〜100μm、95〜100μmとした場合(実施例5)には、基準とした実施例2の0.8〜0.9の温度特性(評価B)であった。遮断特性も1.0〜1.1倍を示し良好となった。
しかし、第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ100μm〜110μm、100μm〜110μmとした場合(比較例4)または110μm〜120μm、110μm〜120μmとした場合(比較例5)には、基準とした実施例2の値に対して、1.15〜1.3倍、1.3〜1.5倍(評価X〜Y)または1.05〜1.15倍ないし1,5倍以上(評価D〜Z)の温度上昇を示した。遮断特性に於いても基準とした実施例2の値に対して、0.8倍〜1.0倍または0.7倍〜1.0倍を示し、合格と不合格が混在し好ましくない。遮断試験後の接点表面には、蒸発などによる組成の変動や内部空孔の発生が原因と考えられる。
また、第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量のいずれかを2〜5μmとした場合(比較例6、7)では、温度特性は1.05〜1.15倍、1.3〜1.5倍または1.15〜1.3倍(評価D〜Y、評価D〜X)となり、バラツキも見られている。遮断特性に於いても基準とした実施例2の値に対して、0.8倍〜1.0を示し、合格と不合格が混在し好ましくない。
以上から、第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、実施例1〜2、4〜5に従って20〜100μmの範囲とするのが好ましい。
<実施例3>
実施例3においては、第2層のCuとしてCu焼結板を使用した。
すなわち、第1層のためのCu、Crとして、44〜105μmの平均粒子直径を持つCr(クロム)粉、同じ平均粒子直径を持つCu(銅)粉とが所定の比率(25重量%Cr−Cu)となる様に均一に混合したCu・Cr混合粉(第1層)を用意する。第2層のためのCuとして、8.0gr/cc以上の相対密度を持ち、厚さ2mmまで圧延したCu焼結板を用意する。
Cu焼結体(第2層)の上面に前記Cu・Cr混合粉(第1層)を置き、両者をそのまま(載置したまま)、所定の1次加熱処理(900〜1150℃で、約1時間)を与え(工程ロ)、Cr・Cu混合粉(第1層)のCr−Cu合金化と、同時に第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら、両者(第1層、第2層)が一体化した事を特徴とする複合接点を得て、温度特性、遮断特性を評価した。その結果、第2層がCu焼結体板であっても同じ傾向を得た(実施例3)。なおCu・Cr混合粉のCuは、350℃以上の温度で約1時間、Cu・Cr混合粉のCrは1350℃以上の温度で約1時間加熱処理を行って使用した。
(実施例6〜7、比較例8〜9)
第1層のためのCu、Crとして、44〜105μmの平均粒子直径を持つCr(クロム)粉と、同じ平均粒子直径を持つCu(銅)粉とが所定の比率(5〜90%Cr−Cu)となる様に混合したCu・Cr混合粉を用意する。第2層のためのCuとして、Cu板を用意する。
Cu板(第2層)の上面に前記Cu・Cr混合粉(第1層)を置き、両者をそのまま接触させ(載置したまま)、6トン/cm2以下、例えば2トン/cm2の圧力で1次加圧処理し一体化した後で、900〜1150℃の温度で約1時間の1次加熱処理を与え、Cr・Cu混合粉(第1層)の合金化と、同時に第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化した複合接点を得た(工程ニ)。
第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ30〜35μm、30〜35μmに一定とした場合の温度特性、遮断特性を、各Cr量(5〜90%Cr)を持つCuCr複合接点を使用して、本発明の主旨である第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を制御する効果を検討した。
基準とした実施例2の値に対して、15%Cr−Cu(実施例6)および60%Cr−Cu(実施例7)では、0.8〜0.9倍(評価B)、1.0倍(評価C)の温度特性を示した。遮断特性に於いても基準とした実施例2の値に対して、0.9倍を確保し、両特性共良好であった。
これに対して、5%Cr−Cu(比較例8)では、基準とした実施例2の値に対して、0.8〜0.9倍(評価B)の温度特性を示し合格の範囲であったが、遮断特性が0.7倍に低下し好ましくなく総合的には不合格である。遮断後の接点表面には顕著な表面荒れが見られている(比較例8)。
さらに90%Cr−Cu(比較例9)では、基準とした実施例2の値に対して、1.15〜1.3倍(評価X)と、1.3〜1.5倍(評価Y)の温度特性(不合格)を示し好ましくなかった。遮断特性でも、基準とした実施例2の値に対して0.4倍に大幅な低下を示し不合格となった(比較例9)。
以上から、第1層のCr量を15〜60%CrとするCu−Cr合金(実施例6、実施例7)が好ましく、より好ましくは25%CrとするCu−Cr合金(実施例2)を選択する事が本発明を実施する補助的技術として有益である。
(実施例8〜9、比較例10)
前記同様のCu板(第2層)と、前記同様のCu・Cr混合粉(第1層)とを用意する。Cu板の上面に、前記Cu・Cr混合粉(第1層)を置き、6トン/cm2以下の圧力で1次加圧処理し一体化し(冷却した後で)、950〜1150℃の温度で、約1時間の1次加熱処理し一体化し、その後で4トン/cm2以上の圧力での2次加圧と、1080℃以下、例えば950℃での2次加熱一体化を与えた(工程ト)。
Cu−Cr合金(第1層)中のCrの平均粒子直径が0.5〜44μmの場合(実施例8)の温度特性は、1.05〜1.15倍未満の評価Dを示し、遮断特性も0.9〜1.0倍を示し、いずれも合格の範囲となった。Crの平均粒子直径を105〜150μmとした場合(実施例9)でも、温度特性は基準とする実施例2と同等の評価Cを示し、遮断特性も1.1倍を示し、いずれも合格の範囲となった。これに対してCrの平均粒子直径を150〜300μmとした場合(比較例10)では、温度特性は実施例2と同等の評価Cを示し合格であったが、遮断特性が0.7〜1.0倍を示し大きなばらつきを示し、好ましくない。
(実施例10〜12、比較例11〜12)
Cu板(第2層)の上面に前記Cu・Cr混合粉(第1層)を置き、両者をそのまま接触(載置したまま)させ、900〜1150℃の温度、例えば1050℃で、1時間の1次加熱処理を与え一体化した後で、6トン/cm2以下、例えば4トン/cm2の圧力で1次加圧処理し一体化し、Cr・Cu混合粉(第1層)のCr−Cu合金化と、同時に第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化した複合接点を得た(工程ハ)。
第1層の厚さをそれぞれ0.5mm、1〜2mm、3.0mmとした場合(実施例10〜12)では、基準とした実施例2の値と同程度の温度特性(評価B〜C、C)であった。遮断特性も0.9〜1.0倍を示し、基準とした実施例2の値と同程度で合格の範囲である。
しかし、第1層の厚さを0.1mm以下とした場合(比較例11)では、基準とした実施例2の値と比較して、同程度の温度特性(評価B)で合格であったが、遮断特性が0.5〜0.7倍に大幅な低下を示し総合的には不合格となった。
さらに、第1層の厚さを5〜6mmとした場合(比較例12)では、基準とした実施例2の値に対して、1.05〜1.15倍(評価D)の温度上昇を示し合格の範囲であったが、遮断特性が基準とした実施例2の値に対して、0.8倍を示し総合的には不合格となった。
以上から、第1層の厚さとして0.5〜3.0mmを選択する事が本発明を実施する補助的技術として有益である。
(実施例13〜14、比較例13〜14)
第2層の厚さをそれぞれ0.5mm、3.0mmとした場合(実施例13〜14)では、基準とした実施例2の値と同等の温度特性(評価C)であった。遮断特性もほぼ同等の1.0倍を示し、両特性共も基準とした実施例2の値と同程度で合格である。
しかし、第2層の厚さを0.3mm以下とした場合(比較例13)では、基準とした実施例2の値と比較して、同等以上の温度特性(評価B〜C)で合格であったが、遮断特性が0.6〜0.8倍に低下を示し総合的には不合格となった。さらに、第2層の厚さを6.0mmとした場合(比較例14)では、基準とした実施例2の値に対して、1.05〜1.15倍(評価D)の温度上昇を示し合格であったが、遮断特性に於いては基準とした実施例2の値に対して、0.8倍を示し不合格となった。
以上から、第2層の厚さとして0.5〜3.0mmを選択する事が本発明を実施する補助的技術として有益である。
なお、第1層、第2層のいずれかが厚さの条件を満たさない時、遮断特性を満たさない(比較例11、13)。
(実施例15〜16)
第2層と第1層を接触させた後の工程として、両者をそのまま接触(載置)させた後、1次加熱処理を与え、Cr・Cu混合粉(第1層)のCu−Cr合金化と、同時に第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化し複合接点とした場合は実施例1〜5で示した(工程ロ)。
工程ロの1次加熱処理の後に1次加圧処理を与えCu・Cr混合粉(第1層)をCu−Cr合金化し、同時に第1層と第2層と界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化し複合接点とした場合は実施例10〜12で示した(工程ハ)。
両者を接触(載置)させた後、1次加圧処理を与え、次いで1次加熱処理を与え、Cu・Cr混合粉(第1層)のCu−Cr合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化し複合接点とした場合は実施例6〜7で示した(工程ニ)
さらに、工程ニの1次加圧処理、1次加熱処理の後に、更に2次加圧処理と2次加熱処理を与えCu・Cr混合粉(第1層)をCu−Cr合金化し、同時に第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化し複合接点とした場合は実施例8〜9で示した(工程ト)
しかし、本発明はこれらの(工程ロ、ハ、ニ、ト)に限ることなく、複合接点を製造する。工程ハの1次加熱処理、1次加圧処理の後に、更に2次加熱処理と2次加圧処理を与えCu・Cr混合粉(第1層)をCu−Cr合金化し、同時に第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化し複合接点とした(実施例15:工程ホ)。基準とした実施例2の値と同程度の温度特性(評価A)であった。さらに、遮断特性も1.2倍を示し、基準とした実施例2の値より向上し合格である。
なお、1次加熱処理と1次加圧処理の後に行なう2次加熱処理と2次加圧処理については、2次加熱処理だけを行なうこととしてもよいし、2次加圧処理だけを行なうこととしてもよい。
次に、両者(第1層、第2層)を接触(載置)させた後、2kg/cm2の重りを与えながら1次加熱処理を行ない、Cu・Cr混合粉(第1層)を合金化し、同時に第1層と第2層との界面の合金化を同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化し複合接点とした(実施例16:工程ヘ)。基準とした実施例2の値と同程度の温度特性(評価A〜B)であった。さらに、遮断特性も1.1〜1.2倍を示し、基準とした実施例2の値より向上し合格である。
(実施例17〜20)
Cu・Cr混合粉(第1層)の原料粉として、純CuでなくCu中に0.35重量%以下のCrを含有するCuを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、複合接点を製造した(実施例17)。基準とした実施例2の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.1倍を示し、基準とした実施例2の値より向上し合格である。
Cu・Cr混合粉(第1層)の原料粉として、純CuでなくCu中に0.5重量%以下のAlを含有するCuを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、複合接点を製造した(実施例18)。基準とした実施例2の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.1倍を示し、基準とした実施例2の値より向上し合格である。
Cu・Cr混合粉(第1層)の原料粉として、純CuでなくCu中に0.5重量%以下のSiを含有するCuを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、複合接点を製造した(実施例19)。基準とした実施例2の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.1倍を示し、基準とした実施例2の値より向上し合格である。
Cu・Cr混合粉(第1層)の原料粉として、純CuでなくCu中に0.5重量%以下のFeを含有するCuを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、複合接点を製造した(実施例20)。基準とした実施例2の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.1倍を示し、基準とした実施例2の値より向上し合格である。
以上から、第1層のCu中に、Cr,Al,Si,Feの少なくとも1つを0.5重量%以下の量含有させることが、遮断特性、温度特性を一層改善させるのに有益である。
(実施例21)
前記第1層の厚さを0.5mm以上〜3.0mm以下、前記第2層の厚さを0.5mm以上〜3.0mm以下、第1層の厚さと第2層の厚さの合計を1.0mm以上〜5.0mm以下とした構成体に於いて、Cr・Cu混合体の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者を一体化した複合接点を製造し、前記第1層を接触面、前記第2層を第1層の支持台座として使用した。Cu板は、十分に軟化させた純Cuを使用した(実施例21)。基準とした実施例2の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.1〜1.2倍を示し、基準とした実施例2の値と同程度であり合格である。
(実施例22)
第1層としてあらかじめ合金化してあるCuCrを使用した(実施例22)。基準とした実施例2の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.0を示し、基準とした実施例2の値と同程度であり合格である。ただし、そりの問題については、冷却速度を制御すれば、問題なく実施することができる。
(実施例23〜30、比較例15〜17)
前記Cu・Cr混合体(第1層)中に、Cu量に対して0.01重量%のBiを含有させたCuCrBiを用意し、別途用意する第2層と一体化すると共に、両者の界面から互いに40μmだけ進入した複合接点を用意した。Biの存在しない他の実施例接点と比較して、溶着引きはずし力を測定したところ、引きはずし力は約1/4程度に低下(耐溶着向上)していることが判明した。すなわち本実施例によって、耐溶着性を一層改善させるのに有益である(実施例23)。
同様に0.1重量%のBiを含有させたCuCrBiを用意し、別途用意する第2層と一体化すると共に、両者の界面から互いに40μmだけ進入した複合接点を用意した。引きはずし力は約1/6程度に低下(耐溶着向上)していることが判明した(実施例24)。
1重量%のBiを含有させたCuCrBiを用意し、別途用意する第2層と一体化すると共に、両者の界面から互いに40μmだけ進入した複合接点を用意した。引きはずし力は約1/10以下に低下(耐溶着向上)していることが判明した(実施例25)。
一方、2重量%のBiを含有させたCuCrBiでは、耐電圧特性が好ましくなく除外する(比較例15)。
前記Cu・Cr混合体(第1層)中に、Cu量に対して0.01重量%のTeを含有させたCuCrTeを用意し、別途用意する第2層と一体化すると共に、両者の界面から互いに30μmだけ進入した複合接点を用意した。Biの存在しない他の実施例接点と比較して、溶着引きはずし力を測定したところ、引きはずし力は約1/2程度に低下(耐溶着向上)していることが判明した(実施例26)。
同様に0.1重量%のTeを含有させたCuCrTeを用意し、別途用意する第2層と一体化すると共に、両者の界面から互いに30μmだけ進入した複合接点を用意した。Teの存在しない他の接点と比較して、溶着引きはずし力を測定したところ、引きはずし力は約1/4程度に低下(耐溶着向上)していることが判明した(実施例27)。
1重量%のTeを含有させたCuCrTeを用意し、別途用意する第2層と一体化すると共に、両者の界面から互いに30μmだけ進入した複合接点を用意した。引きはずし力は約1/6以下に低下(耐溶着向上)していることが判明した(実施例28)。
一方、3重量%のTeを含有させたCuCrTeを用意し、別途用意する第2層と一体化すると共に、両者の界面から互いに40μmだけ進入した複合接点を用意した。耐電圧特性の観点から好ましくなく除外する(比較例16)。
前記Cu・Cr混合体(第1層)中に、Cu量に対して0.01重量%のSbを含有させたCuCrSbを用意し、別途用意する第2層と一体化すると共に、両者の界面から互いに30μmだけ進入した複合接点を用意した。Sbの存在しない他の接点と比較して、溶着引きはずし力を測定したところ、引きはずし力は約1/2程度に低下(耐溶着向上)していることが判明した(実施例29)。
前記Cu・Cr混合体(第1層)中に、Cu量に対して1重量%のSbを含有させたCuCrSbを用意し、別途用意する第2層と一体化すると共に、両者の界面から互いに30μmだけ進入した複合接点を用意した。Sbの存在しない他の接点と比較して、溶着引きはずし力を測定したところ、引きはずし力は約1/3程度に低下(耐溶着向上)していることが判明した(実施例30)。
一方、2重量%のSbを含有させたCuCrSbを用意し、別途用意する第2層と一体化すると共に、両者の界面から互いに40μmだけ進入した複合接点を用意した。耐電圧特性の観点から好ましくなく除外する(比較例17)。
以上から、Cu・Cr混合体からなる第1層のCu中には、Bi,Te,Sbの少なくとも1つを所定量含有させることが、耐溶着性を一層改善させるのに有益である。
次に、図5〜図8を参照して、第1層がCu・W混合体の場合の実施例、比較例を詳細に説明する。
(実施例31〜35、比較例18〜24)
これらの実施例、比較例においては実施例33を除き、第2層のCuとしてCu板を使用した。(実施例33は第2層のCuとしてCu焼結体を使用した。)
第1層の代表素材としては厚さ1mmのCu−73%W合金を製造することを目標とし、第2層の代表素材として厚さ2mmの純Cu板を使用した。このCu板は、あらかじめ500℃以上の温度で加熱処理を行った。Cu・W混合粉のCuもあらかじめ350℃以上の温度で、Cu・W混合粉のWもあらかじめ1350℃以上の温度で加熱処理を行って使用した。第1層のためのCu、Wは、1〜6μmの平均粒子直径を持つW(タングステン)粉、10μmの平均粒子直径を持つCu(銅)粉とが所定の比率(73重量%W−Cu)となる様に均一に混合したCu・W混合粉(第1層)を用意する。第2層の為のCuとして、厚さ2mmまで圧延したCu板を用意する。また、CuとCu・W混合体を接触させた後の工程は、比較例18では工程(イ)を、比較例19〜22では工程(ロ)を、実施例31〜32、実施例34〜35も工程(ロ)を採用した。比較例23〜24では機械的処理によって表面層の一部を除去する方法で所定の厚さを残すようにした。
比較例18では、両者をそのまま接触させ(載置したまま)、工程(イ)のように8t/mm2の圧力で機械的圧着し一体化したもので界面近傍でのCuの侵入をほぼゼロとした。
比較例19では、両者をそのまま接触させ(載置したまま)、工程(ロ)によって750℃の1次加熱処理を与え、第1層中のCuを2〜3μmだけ第2層中へ、第2層中のCuを3〜5μmだけ第1層中へ侵入させたものである。
比較例20では、両者をそのまま接触させ(載置したまま)、工程(ロ)によって850℃の1次加熱処理を与え、第1層中のCuを15〜17μmだけ第2層中へ、第2層中のCuを15〜17μmだけ第1層中へ侵入させたものである。
実施例31〜32、実施例34〜35では、両者をそのまま接触(載置したまま)させ、工程(ロ)によって900〜1150℃の1次加熱処理を適宜選択した上で与えたもので、Cu・W混合体(第1層)の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら一体化した複合接点を得た。1次加熱処理を適宜選択が900℃未満であったり、1150℃を越えたりすると、第1層と第2層との界面でのCuの侵入量が20μm以上で100μm以下の範囲とならない。
比較例21では、両者をそのまま接触(載置したまま)させ、工程(ロ)によって1250℃の1次加熱処理を与え、Cu・W混合体(第1層)の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から100μm〜110μmの範囲で侵入した複合接点を得た。
比較例22では、両者をそのまま接触(載置したまま)させ、工程(ロ)によって1300℃の1次加熱処理を与え、Cu・W混合体(第1層)の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から110μm〜120μmの範囲で侵入した複合接点を得た。
比較例23では、両者をそのまま接触(載置したまま)させ、前記実施例32で製造した複合接点を利用して、一方の面(第2層)を機械的に除去し、Cuの厚さを2〜5μmだけ残した。他方の面(第1層)は機械加工せずそのままとし30〜35μmとした。
比較例24では、逆に第1層を機械的に除去してCuの厚さを2〜5μmだけ残し、第2層は機械加工せずそのままとし30〜35μmとした。
なおこの第1層がCu・W混合体の場合の実施例、比較例での評価は、第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ30〜35μmとした場合の温度特性、遮断特性を基準とした(実施例32)。
各複合接点について、温度特性、遮断特性を評価したところ、第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、ほぼゼロおよび2〜3μm、3〜5μmとした場合には、基準とした実施例32の値に対して、1.5倍以上(評価Z)、1.3〜1.5倍と1.5倍以上(評価Y〜Z)の温度上昇を示し不合格とした。遮断特性に於いても基準とした実施例32の値に対して、0.3倍、0.5倍に低下した上に、遮断試験に際して第1層と第2層とが分離し好ましくなかった(比較例18〜19)。
第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ15〜17μm、15〜17μmとした場合には、基準とした実施例32の値に対して、1.15〜1.3倍と1.3〜1.5倍(評価X〜Y)の温度上昇を示し不合格とした。遮断特性に於いても基準とした実施例32の値に対して、0.8〜0.9倍に低下した上に、遮断試験に際して第1層と第2層とが分離し好ましくなかった(比較例20)。
第1層中から第2層中へのCuの侵入量を20〜25μm、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を20〜25μmとした場合(実施例31)では、基準とした実施例32の値と同程度の温度特性(評価C〜D)であった。さらに、遮断特性も0.9〜1.0倍を示し、基準とした実施例32の値と同程度で合格の範囲である。
第1層中から第2層中へのCuの侵入量を30〜35μm、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を30〜35μmとした場合(実施例32)では、同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.0倍を示し、これを基準とした。
第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ45〜50μm、45〜50μmとした場合(実施例34)には、基準とした実施例32の値と同程度またはそれ以上の温度特性(評価B〜C)であった。遮断特性も1.0〜1.1倍を示し良好となった。
第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ95〜100μm、95〜100μmとした場合(実施例35)には、基準とした実施例32の0.8〜0.9倍の温度特性(評価B)であった。遮断特性も1.0〜1.1倍を示し良好となった。
しかし、第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ100μm〜110μm、100μm〜110μmとした場合(比較例21)または110μm〜115μm、110μm〜115μmとした場合(比較例22)には、基準とした実施例32の値に対して、1.15〜1.3倍、1.3〜1.5倍(評価X〜Y)または1.05〜1.15倍ないし1.5倍以上(評価D〜Z)の温度上昇を示し好ましくない。遮断特性に於いても基準とした実施例32の値に対して、0.8倍〜1.0倍または0.7〜1.0倍を示し、合格と不合格が混在し好ましくない。遮断試験後の接点表面には、蒸発などによる組成の変動や内部空孔の発生が見られている。これが原因と考えられる。
第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量のいずれかを2〜5μmとした場合(比較例23、24)では、温度特性は1.05〜1.15倍、1.3〜1.5倍または1.15〜1.3倍(評価D〜Y、評価D〜X)となり、バラツキが見られている。遮断特性に於いても基準とした実施例32の値に対して、0.8倍〜1.0を示し、合格と不合格が混在し好ましくない。
<実施例33>
実施例33では、第2層のCuとしてCu焼結板を使用した。
すなわち、第1層のためのCu、Wとして、1〜6μmの平均粒子直径を持つW粉、10μmの平均粒子直径を持つCu粉とが所定の比率(73重量%W−Cu)となる様に均一に混合したCu・W混合粉(第1層)を用意する。第2層のためのCuとして、8.0gr/cc以上の相対密度を持ち、厚さ2mmまで圧延したCu焼結板を用意する。
Cu焼結体(第2層)の上面に前記Cu・W混合粉(第1層)を置き、両者をそのまま(載置したまま)、所定の1次加熱処理(1150℃)を与え(工程ロ)、Cu・W混合粉(第1層)のCu−W合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら、両者(第1層、第2層)が一体化した事を特徴とする複合接点を得て、温度特性、遮断特性を評価した。
その結果、第2層がCu焼結体板であっても同じ傾向を得た(実施例33)。なおCu・W混合粉のCuは、350℃以上の温度で、Cu・W混合粉のWは1350℃以上の温度で加熱処理を行って使用した。
以上から、本発明技術の適応は、第2層としてのCu板をCu焼結体板に代替した複合接点に対しても有益である。
(実施例36〜37、比較例25〜26)
第1層のためのCu、Wとして、1〜6μmの平均粒子直径を持つW粉と、10μmの平均粒子直径を持つCu粉とが所定の比率(25〜95%W−Cu)となる様に混合したCu・W混合粉(第1層)を用意する。第2層のためのCuとして、Cu板を用意する。
Cu板(第2層)の上面に前記Cu・W混合粉(第1層)を置き、両者をそのまま接触(載置したまま)させ、6トン/cm2以下の圧力で1次加圧処理し一体化した後で、1150℃の温度での1次加熱処理を与え、Cu・W混合粉(第1層)の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化した複合接点を得た(工程ニ)。
第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を、それぞれ30〜35μm、30〜35μmに一定とした場合の温度特性、遮断特性を、各W量(25〜95%W)を持つCuW複合接点を製造し、本発明の主旨である第1層中から第2層中へのCuの侵入量、第2層中から第1層中へのCuの侵入量を制御する効果を検討した。
基準とした実施例32の値に対して、50%W−Cu(実施例36)および90%W−Cu(実施例37)では、0.8〜0.9倍(評価B)、1.05〜1.10倍(評価D)の温度特性を示し良好であった。遮断特性に於いても基準とした実施例32の値に対して、1.1倍、0.9倍を確保し、両特性共良好であった。
これに対して、25%W−Cu(比較例25)では、基準とした実施例32の値に対して、0.8〜0.9倍(評価B)の温度特性を示し合格の範囲であったが、遮断特性が0.7倍に低下し好ましくなく総合的には不合格である。遮断後の接点表面には顕著な表面荒れが見られている(比較例25)。
さらに95%W−Cu(比較例26)では、基準とした実施例32の値に対して、1.15〜1.3倍(評価X)および1.3〜1.5倍(評価Y)の温度特性を示し、遮断特性でも、基準とした実施例32の値に対して0.4倍を示し、不合格となった(比較例26)。
以上から、第1層のW量を50〜95%W(重量%)とするCu−W合金(実施例36、実施例37)に本発明技術を適応することが好ましい。
(実施例38〜39、比較例27)
前記同様のCu板(第2層)と、前記同様のCu・W混合粉(第1層)とを用意する。Cu板の上面に、前記Cu・W混合粉(第1層)を置き、6トン/cm2以下の圧力で1次加圧処理し一体化し(冷却した後で)、950〜1150℃の温度で1次加熱処理し一体化し、その後で4トン/cm2以上の圧力での2次加圧と、1080℃以下での2次加熱一体化を与えた(工程ト)。
Cu−W合金(第1層)中のWの平均粒子直径が0.1〜1μmの場合(実施例38)の温度特性は、1.05〜1.15倍(評価D)を示した。遮断特性も0.9〜1.0倍を示し、いずれも合格の範囲となった。
Wの平均粒子直径を9〜15μmとした場合(実施例39)でも、温度特性は基準とする実施例32と同等の評価Cを示し、遮断特性も1.1倍を示し、いずれも合格の範囲となった。
これに対して、Wの平均粒子直径を25〜35μmとした場合(比較例27)では、温度特性は基準とする実施例32と同等の評価Cを示し合格であったが、遮断特性が0.7〜1.0倍を示し不合格であった。Wの平均粒子直径が大となった時、遮断特性にばらつきが見られている。
以上から、第1層のWの平均粒子直径として0.1〜15μmを選択した接点に本発明技術を適応することが有益である。
(実施例40〜42、比較例28〜29)
Cu板(第2層)の上面に前記Cu・W混合粉(第1層)を置き、両者をそのまま接触(載置したまま)させ、900〜1150℃の温度での1次加熱処理を与え一体化した後で、6トン/cm2以下の圧力で1次加圧処理し一体化し、Cu.W混合粉(第1層)のCr−W合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化した複合接点を得た(工程ハ)。
第1層の厚さをそれぞれ0.5〜0.6mm、2.5〜3mm、4.5〜5mmとした場合(実施例40〜42)では、基準とした実施例32の値と同程度の温度特性(評価B〜C)で良好であった。遮断特性も0.9〜1.0倍を示し、基準とした実施例32の値と同程度で合格の範囲である。
しかし、第1層の厚さを0.1mm以下とした場合(比較例28)では、基準とした実施例32の値と比較して、同程度の温度特性(評価B)で合格であったが、遮断特性が0.4〜0.8倍に大幅な低下を示し総合的には不合格となった。
さらに、第1層の厚さを5.5〜6mmとした場合(比較例29)では、基準とした実施例32の値に対して、1.05〜1.15倍(評価D)の温度上昇を示し合格の範囲であったが、遮断特性は、0.7〜0.9倍を示し総合的には不合格となった。第1層の厚さが過度に厚い場合には柔軟な接触面の確保に不利となる。
以上から、第1層の厚さとして0.5〜5mmを選択した接点に本発明技術を適応することが有益である。
(実施例43〜44、比較例30〜31)
第1層の厚さを1.0mmに一定とした上で、第2層の厚さをそれぞれ1mm、3mmとした場合(実施例43〜44)では、基準とした実施例32の値と同等の温度特性(評価C)であった。遮断特性も同等(1.0倍)を示し、両特性共も基準とした実施例32の値と同程度で合格である。
しかし、第2層の厚さを0.4mm以下とした場合(比較例30)では、基準とした実施例32の値と比較して、同等以上の温度特性(評価B〜C)で合格であったが、遮断特性が0.6〜0.8倍に低下を示し総合的には不合格となった。さらに、第2層の厚さを6mmとした場合(比較例31)では、基準とした実施例30の値に対して、1.05〜1.15倍(評価D)の温度上昇を示し合格であったが、遮断特性に於いては基準とした実施例30の値に対して、0.8倍を示し不合格となった。
以上から、第2層の厚さとして1〜3mmを選択した接点に本発明技術を適応する時に有益である。
(実施例45〜46)
両者(第2層と第1層)を単に接触(載置)させた後、1次加熱処理(1050℃)、1次加圧処理(6t/cm2以下)を与え、更に2次加熱処理(900℃)と2次加圧処理(4t/cm2以上)を与えCu・W混合粉(第1層)のCu−W合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化し複合接点とした(実施例45:工程ホ)。基準とした実施例32の値と同程度の温度特性(評価A)であった。さらに、遮断特性も1.2倍を示し、基準とした実施例32の値より向上し合格である。
なお、1次加熱処理と1次加圧処理の後に行なう2次加熱処理と2次加圧処理については、2次加熱処理だけを行なうこととしてもよいし、2次加圧処理だけを行なうこととしてもよい。
次に、両者(第1層と第2層)を単に接触させた後、1次加圧接触のまま(2kg/cm2の重りを載置のまま)1次加熱処理(1050℃)を行ない、Cu−W混合粉(第1層)を合金化し、第1層と第2層との界面の合金化を同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者(第1層、第2層)を一体化し複合接点とした(実施例46:工程ヘ)。基準とした実施例32の値と同程度の温度特性(評価A〜B)であった。さらに、遮断特性も1.1〜1.2倍を示し、基準とした実施例32の値より向上し合格である。
(実施例47〜51)
Cu・W混合粉(第1層)の原料粉として、純CuでなくCu中に0.001%のBiを含有するCuを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ハ)の条件で複合接点を製造した(実施例47)。基準とした実施例32の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.1倍を示し、基準とした実施例32の値より向上し合格である。
Cu・W混合粉(第1層)の原料粉として、純CuでなくCu中に0.1%のBiを含有するCuを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ハ)の条件で複合接点を製造した(実施例48)。基準とした実施例32の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.1倍を示し、基準とした実施例32の値より向上し合格である。
Cu・W混合粉(第1層)の原料粉として、純CuでなくCu中に1.0のBiを含有するCuを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ハ)の条件で複合接点を製造した(実施例49)。基準とした実施例32の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.1倍を示し、基準とした実施例32の値より向上し合格である。
Cu・W混合粉(第1層)の原料粉として、純CuでなくCu中に0.01%のTeを含有するCuを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ハ)の条件で複合接点を製造した(実施例50)。基準とした実施例32の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.1倍を示し、基準とした実施例32の値より向上し合格である。
Cu・W混合粉(第1層)の原料粉として、純CuでなくCu中に0.1%のSbを含有するCuを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ハ)の条件で複合接点を製造した(実施例51)。基準とした実施例32の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.0倍を示し、基準とした実施例32の値より向上し合格である。
(実施例52〜54)
混合粉(第1層)の原料粉として、Wに代替してWCを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ホ)の条件で複合接点を製造した(実施例52)。
基準とした実施例32の値と比較した温度特性は、評価Dであった。さらに、遮断特性も1.1倍を示し、合格である。
混合粉(第1層)の原料粉として、Wに代替してMoを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ホ)の条件で複合接点を製造した(実施例53)。
基準とした実施例32の値と比較した温度特性は、評価Cであった。さらに、遮断特性も1.0倍を示し、合格である。
混合粉(第1層)の原料粉として、Wに代替してMoCを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ホ)の条件で複合接点を製造した(実施例54)。
基準とした実施例32の値と比較した温度特性は、評価Dであった。さらに、遮断特性も0.9〜1.0倍を示し、合格である。
以上から、第1層のWをWC,Mo,MoCに置換した接点に本発明技術を適応しても有益である。
(実施例55〜58)
混合粉(第1層)の原料粉として、Cuに代替してAgを、Wに代替してWCを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ホ)の条件で複合接点を製造した(実施例55)。
基準とした実施例32の値と比較した温度特性は、評価Dであった。さらに、遮断特性も0.9〜1.0倍を示し、合格である。
混合粉(第1層)の原料粉として、Cuに代替してAgを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ホ)の条件で複合接点を製造した(実施例56)。
基準とした実施例32の値と比較した温度特性は、評価Dであった。さらに、遮断特性も0.9〜1.0倍を示し、合格である。
混合粉(第1層)の原料粉として、Cuに代替してAgを、Wに代替してMoCを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ホ)の条件で複合接点を製造した(実施例57)。
基準とした実施例32の値と比較した温度特性は、評価Dであった。さらに、遮断特性も0.9〜1.0倍を示し、合格である。
混合粉(第1層)の原料粉として、Cuに代替してAgを、Wに代替してMoを用意した。Cu板(第2層)は、十分に軟化させた純Cuを用意し、工程(ホ)の条件で複合接点を製造した(実施例58)。
基準とした実施例32の値と比較した温度特性は、評価Dであった。さらに、遮断特性も0.9〜1.0倍を示し、合格である。
(変形例1)
前記第1層の厚さを0.5mm以上〜3.0mm以下、前記第2層の厚さを1.0mm以上〜3.0mm以下、第1層の厚さと第2層の厚さの合計を1.5mm以上〜5.0mm以下とした構成体に於いて、Cu・W混合体の合金化と、第1層と第2層との界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入しながら両者を一体化した複合接点を製造し、前記第1層を接触面、前記第2層を第1層の支持台座として使用した。Cu板は、十分に軟化させた純Cuを使用した(変形例1)。
基準とした実施例32の値と同程度の温度特性(評価C)であった。さらに、遮断特性も1.0倍を示し、基準とした実施例32の値と同程度であり合格である。
(実施例の効果)
以上のように、これらの実施例によれば、Cuからなる第2層とCu・Cr混合体(またはCu・W混合体)からなる第1層とを接触させたまま(載置させたまま)、所定条件での加熱処理一体化、加圧処理一体化などによってCu・Cr混合体のCr−Cu合金化(またはCu・W混合体のW−Cu合金化)と、第1層と第2層の界面の合金化とを同時に得ると共に、第2層のCuと第1層中のCuとが界面から互いに20μm以上で100μm以下の範囲で侵入させ、第1層と第2層の両者を一体化させたことから、安定した温度特性を持つ複合接点を提供することができる。そして、これを例えば図9に示すような真空バルブの接点として使用することにより、真空遮断器の高性能化に貢献する。