JP4515695B2 - 真空遮断器用接点材料 - Google Patents

真空遮断器用接点材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、優れた遮断特性と再点弧特性とを有する真空遮断器用接点材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に真空遮断器において、真空中でのア−クの拡散性を利用して高真空中で電流遮断を行わせる真空バルブの接点は、対向する固定、可動の2つの接点から構成されている。
【0003】
図7に示す如く、絶縁容器101の両端開口部を蓋体102a、102bにより閉塞した真空容器103内に、一対の接点104、105を対向させて設けると共にこれらを前記蓋体102a、102bを貫通させて真空容器103内に挿入された通電軸106、107の端部にそれぞれ装着し、その一方の通電軸107を図示しない操作機構により軸方向に移動可能として、前記一方の接点(以下固定接点)104に対して、他方の接点(以下可動接点)105を接触または開離出来るようにしてある。
【0004】
この場合、蓋体102bと通電軸107との間には、真空容器103内を真空気密に保持しかつ通電軸107の軸方向への移動を可能とするベロ−ズ108が設けられる。なお図中109は、前記各接点104、105および通電軸106、107を包囲する如く設けられたシ−ルドである。
【0005】
上記真空遮断器は、通常両接点104、105が接触し通電状態となる。この状態からの動作により通電軸107が図中矢印M方向に移動すると、可動接点105が固定接点104から開離し、面接点間にはア−クが発生する。このア−クは陰極例えば可動接点105側からの金属蒸気の発生により維持され、電流がゼロ点(零点)に達すると金属蒸気の発生が止まってア−クが維持できなくなり、遮断が完了する。
【0006】
ところで、上記両接点104、105間に発生するア−クは、遮断電流が大きいとア−ク自身により生じた磁場と外部回路の作る磁場との相互作用により著しく不安定な状態となる。その結果ア−クは接点面上を移動し(接点が電極に取り付けられ一体化している時には、ア−クは電極面上にも移動している場合もある)、接点の端部或いは周辺部に片寄り、その部分を局部的に過熱し、多量の金属蒸気を放出させて、真空容器103内の真空度を低下させる。その結果、真空遮断器の遮断性能は低下する。これらは金属組織などで代表される接点の状態に依存することが多い。
【0007】
図8は、一対の接点41、51を対向させて設けると共に接点41の背面には平板型電極40、接点51の背面には平板型電極50をそれぞれ装着した真空バルブである。また接点41の背面にはコイル電極40、接点51の背面にはコイル電極50をそれぞれ装着してもよい。
【0008】
一般に真空遮断器では、大電流遮断性能、耐電圧性能、耐溶着性能の基本的3要件の他に再点弧現象の発生の抑制が重要な要件となっている。
【0009】
しかしながら、これらの要件の中には相反するものがある関係上、単一の金属種によって総ての要件を満足させることは不可能である。この為実用されている多くの接点材料に於いては、不足する性能を相互に補うような2種以上の元素を組合せることによって、例えば大電流用、高耐圧用などのように特定の用途に合った接点材料の選択採用が行われ、それなりに優れた特性を持つ真空バルブが開発されているが、それでも一部の機能を犠牲にして対応している製品が多い。さらに強まる要求を充分満足する真空バルブは未だ得られていないのが実情である。
【0010】
例えば、大電流遮断性を目的とした接点として、Crを50重量%程度含有させたCu−Cr合金(特公昭45−35101号)が知られている。この合金は、Cr自体がCuと略同等の蒸気圧特性を保持しかつ強力なガスのゲッタ作用を示す等の効果で高電圧大電流遮断性を実現し、高耐圧特性と大容量遮断とを両立させ得る接点として多用されている。
【0011】
この合金は、活性度の高いCrを使用していることから、原料粉の選択、不純物の混入、雰囲気の管理などに十分に配慮しながら接点素材を製造(焼結工程など)したり、接点素材から接点片へと加工に配慮しながら接点製品としたりしているが、再点弧の発生が引金となって遮断性能を低下させる場合が見られ、その改善が望まれている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
一般にCuCr接点は、両者の高温度での蒸気圧特性が近似していることなどが寄与して、遮断した後でも接点表面は比較的平滑な損傷特性を示し、安定した電気特性を発揮している。
【0013】
しかし近年では、一層の大電流遮断や一層の高電圧が印加される可能性のある回路への適応が日常的に行われる結果、接点として加工した新品時の表面の状態、電流遮断後の接点表面の損傷の状態などによっては、耐電圧不良を示し再点弧発生の一因となったり、次の電流の開閉時の接触抵抗の異常上昇や温度の異常上昇を引起こす原因となり、遮断特性の低下の一因となったりしている。
【0014】
しかし、接点の表面状態を管理しても完全には再点弧発生を抑制することが出来ていないのが現実であり、十分な遮断特性が得られていないのが現実である。
【0015】
CuCr合金の遮断特性と再点弧特性は、合金中のCr量の変動、Cr粒子の粒度分布、Cr粒子の偏析の程度、合金中に存在する空孔の程度、接点表面および内部のガスの量や存在状態などに依存し、これらの最適化が重要となっている。上述した近年の適応状況では、これらの最適化を進めているにも拘らず、遮断特性にばらつきが発生したり、再点弧発生頻度にもばらつきが見られたりしている。優れた遮断特性と再点弧特性とを兼備した真空遮断器の実現は未達成であり、これらを両立させた真空遮断器の開発が期待されている。
【0016】
この発明の目的は、遮断特性と再点弧特性の優れた真空遮断器用接点材料を提供するにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する為に、本発明に係る真空遮断器用接点材料は、15〜85重量%のCu相から成る導電性成分と、0.05重量%以下のCと、残部としてのCrを主成分とする耐弧性成分とを含む合金からなり、昇温過程での前記Cu相の摂氏で測定した溶融開始温度をT1とし、少なくとも1200℃からの冷却過程での、前記Cu相の摂氏で測定した凝固開始温度をT2とした場合に、[(T1−T2)/(T1)]比率で示した比率が、3.5%以下になるように、前記合金を1000〜1030℃で焼結し、800〜900℃での冷却速度を0.1〜10℃/分としたことを特徴とする。
【0018】
すなわちこの発明によって、安定した再点弧特性、遮断特性が得られる。
【0019】
[(T1−T2)/(T1)]比率が3.5%を越えると再点弧特性の低下と大きなバラツキが発生する。遮断特性も低下する。
【0020】
これに対して、[(T1−T2)/(T1)]比率が3.5%以下なら、安定した再点弧特性、遮断特性が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態の主旨は、15〜85重量%(以下重量%を、単に%と表示する)のCu相から成る導電性成分と、残部としてのCrを主成分とする耐弧性成分とを含む合金からなり、昇温過程でのCu相の摂氏で測定した溶融開始温度(吸熱開始温度)T1と、少なくとも1200℃に加熱した後の冷却過程での、Cu相の摂氏で測定した凝固開始温度(発熱開始温度)T2との差(T1−T2)値と、溶融開始温度(吸熱開始温度)T1との比率、すなわち、[(T1−T2)/(T1)]比率が、3.5%以下である接点材料から成る接点を真空遮断器に搭載し、再点弧発生と遮断特性の安定化を図ることである。
【0023】
本発明の実施形態で対象とする接点では、総Cr量が85%を越えると、定格電流の開閉および大電流の遮断によって、接点部もしくは遮断器端子部の温度上昇特性や接触抵抗特性の低下を招き好ましくない。一方、総Cr量が15%未満の接点では、電流遮断時に耐ア−ク性が劣り、遮断後の接点の表面損傷が著しく、再点弧特性が低下を招き好ましくない。
【0024】
また、本発明の実施形態で対象とする接点におけるCr粒子は、0.1〜150μmの範囲の平均粒子直径(以下粒径)が好ましく、この範囲にあるCr粒子が少なくとも75%(容積%)を占める時、さらに安定した再点弧特性を発揮する。
【0025】
本発明の実施形態として、Cu相から成る導電性成分と、残部としてのCrを主成分とする耐弧性成分とを含むCu−Cr合金を、固相焼結法(Cu相の溶融温度以下の温度)、溶浸法(Cu相の溶融温度以上の温度)、溶解法、アーク溶解法、レーザ溶解法、プラズマ溶解法(Cu相およびCrの溶融温度以上の温度)、アトマイズド法(Cu相およびCrの溶融温度以上の温度)のいずれかによって製造した接点材料に於いて、昇温過程でのCu相の溶融開始温度(吸熱開始温度)T1と、少なくとも1200℃に加熱した後の冷却過程での前記Cu相の凝固開始温度(発熱開始温度)T2との差と、溶融開始温度(吸熱開始温度)T1との比率、すなわち[(T1−T2)/(T1)]比率を3.5%以下としてもよい。
【0026】
すなわち、この発明は、Cu−Cr合金の製造方法の種類には関係なく、いずれかの方法によって得られたCu−Cr合金自体の前記[(T1−T2)/(T1)]比率が3.5%以下であることが重要である。
【0027】
また、本発明の実施形態として、Cu相から成る導電性成分と、残部としての、アトマイズド法、テルミット法、電気分解法のいずれかで製造したCrを主成分とする耐弧性成分とで構成されたCu−Cr合金に於いて、昇温過程でのCu相の溶融開始温度(吸熱開始温度)T1と、少なくとも1200℃に加熱した後の冷却過程での前記Cu相の凝固開始温度(発熱開始温度)T2との差と、溶融開始温度(吸熱開始温度)T1との比率、すなわち、[(T1−T2)/(T1)]比率を3.5%以下としてもよい。
【0028】
すなわち、この発明は、Cu−Cr合金の原料Cr粉の製造方法の種類には関係なく、いずれかの方法によって得られたCu−Cr合金であっても、合金自体の前記[(T1−T2)/(T1)]比率が3.5%以下であることが重要である。
【0029】
一般に、遮断によって接点面(被ア−ク点、ア−クを受けた近傍)は著しく高温度となる。昇温中の接点面は固体から液体となり液相が発生する。遮断完了と共に接点温度はやがて降下し、液体から固体(凝固)となり液相は消滅する。接点材料の材料物性、接点の冷却条件、遮断器の機械的条件などによって変動するが、液相が発生してから消滅するまでの時間(液相が存在している時間)の大小は、接点面が遮断特性、再点弧特性の維持、向上に対して好ましくない高い温度状態に止まっている時間の大小を指す。従って高い温度状態に止まっている時間の大小は、遮断特性、再点弧特性を左右する目安となる。
【0030】
そこで、昇温過程でのCu相の溶融開始温度(吸熱開始温度)T1と、少なくとも1200℃に加熱した後、冷却させた時の冷却過程での前記Cu相の凝固開始温度(発熱開始温度)T2との差(T1−T2)と、溶融開始温度(吸熱開始温度)T1との比率、すなわち[(T1−T2)/(T1)]比率が重要な意味を持つ。Cuの融点が1080℃であるにもかかわらず、1200℃とする理由は、昇温過程でのCu相が確実に液相となる為の目安の温度である。(T1−T2)値を小さくする為にT1を小とするかまたはT2値を大とする必要がある。
【0031】
発明者らの別の実験によれば、別の手段で固体状態の接点面を加熱しながら耐電圧特性を連続測定すると、液相が出現した時点で耐電圧は大幅に低下(10〜50%)する現象を確認している。液相の出現は、ア−ク点近傍の熱物性の変化や表面(凹凸)の変化に影響を与えると共に、液相が存在している時間は、接点蒸気の放出状況、液状接点の噴出状況を左右し遮断特性に影響を与える。この様に、液相の出現と液相が存在している時間が、真空遮断器の遮断特性、耐電圧特性に影響を与えていることを示唆している。
【0032】
真空バルブの再点弧特性、遮断特性の安定化には、従来から種々の技術が開発されてきた。例えば接点材料の組成、成分量の変動、ガス量、組織形態(粒度、粒度分布、偏析の程度、合金中に存在する空孔の程度)、接点の表面形態などに依存すると考えられている。さらに発明者らの観察によれば、再点弧特性のより一層の安定化には、上記に加えてCuCr合金中のCu相のT1(溶融開始温度)とT2(冷却過程での凝固開始温度)との差(T1−T2)値と、T1との比率[(T1−T2)/T1]比率が深く関与していることが判った。この場合のT1及びT2は、便宜上(℃)で示す数値で決定される。
【0033】
以下に本発明を実施例と比較例とで詳細に説明する。評価条件と評価結果を図1〜6に示す。
【0034】
(1)再点弧特性
直径30mm、厚さ5mmの円板状接点片を、ディマウンタブル型真空バルブに装着し、24kV×500Aの回路を2000回遮断した時の再点弧発生頻度を測定した。尚、数値は実施例4の値を基準とした時の相対値を、バラツキ幅を持って比較した。
【0035】
再点弧発生頻度が、0.1倍未満を評価(A)、0.1〜0.8倍未満を評価(B)、 0.8〜1.2倍未満を評価(C)、1.2〜1.5倍未満を評価(D)、1.5〜10倍未満を評価(X)、10〜100倍未満を評価(Y)、100倍以上を評価(Z)とした。
【0036】
なお、評価(A)〜(D)を「合格」、評価(X)〜(Z)を「不良」の目安とした。
【0037】
(2)遮断特性
直径70mmの接点を装着した遮断テスト用実験バルブを開閉装置に取り付けると共に、ベーキング、電圧エージング等を与えた後、24kV、50Hzの回路に接続し、電流をほぼ1kAずつ増加しながら遮断限界を真空バルブ3本につき評価した。尚、数値は実施例4の値を1.0とした時の比較値を、バラツキ幅を持って示したもので、評価の目安は倍率が0.9倍以上は合格、0.9倍未満は不合格である。
【0038】
(3)遮断テスト用実験バルブの組立ての概要
遮断テスト用実験バルブの組立ての概要を示す。端面の平均表面粗さを約1.5μmに研磨したセラミックス製絶縁容器(主成分:AL23)を用意し、このセラミックス製絶縁容器については、組立て前に1600℃の前加熱処理を施した。封着金具として、板厚さ2mmの42%Ni−Fe合金を用意した。ロウ材として、厚さ0.1mmの72%Ag−Cu合金板を用意した。上記用意した各部材を被接合物間(セラミックス製絶縁容器の端面と封着金具)に気密封着接合が可能なように配置して、5×10-4Paの真空雰囲気で封着金具とセラミックス製絶縁容器との気密封着工程に供した。
【0039】
(4)供試接点合金の製造方法
Cu−Cr合金に於ける[(T1−T2)/T1]比率を1.6〜1.7%とした上で、耐弧性成分として所定の粒子直径(好ましくは0.1〜150μm)を持つCrと、導電性成分として所定量のCu(または0.35%以下のCrを含有するCuCr)とを準備する。これらを均一に分散する様に混合し成型した後、焼結熱処理(例えば1030℃)または焼結熱処理と溶浸熱処理(例えば1000℃と1150℃を順次)を行い、Cu−Cr接点素材(実施例1〜4、比較例1〜2)またはCuCr−Cr接点素材(実施例13〜15)を準備する。必要によりCu−Cr合金のCu相とCr粒子との界面に、補助成分として粒子直径が好ましくは5μm以下を持つCが存在するCu−Cr−C接点素材(実施例5〜8、比較例3)を準備する。
【0040】
これらの試料の製造に於ける[(T1−T2)/T1]比率を調整する1つの方法として、例えば▲1▼Cu−Cr合金中のCu相中に存在する主成分以外の微量成分の種類とその総量の制御で達成する。すなわちCuとCrとの界面に存在するC(C量はCuCr合金に対して、0.05%以下)、Cu相中のCr(Cu量に対して0.35%以下のCr)、CuおよびCr中に存在するのAl(Cr量に対して0.1%以下のAl)、CuおよびCr中に存在するのSi(Cr量に対して0.1%以下のSi)が好適である。
【0041】
これらの試料の製造に於ける[(T1−T2)/T1]比率を調整の他の方法として、例えば▲2▼焼結処理の温度と時間の制御で達成する。すなわち焼結温度は、Cu相中へのCrの拡散、CuおよびCr中へのAlの拡散、CuおよびCr中へのSiの拡散、CuとCrとの界面に存在するC量などが[(T1−T2)/T1]比率を左右する。焼結処理の温度が900℃近傍を越えると、拡散が異常に進展する。900℃近傍より低下すると拡散不足となる。
【0042】
これらの試料の製造に於ける[(T1−T2)/T1]比率を調整の他の方法として、例えば▲3▼焼結処理時の処理温度とその後の冷却速度の制御で達成する。すなわち、800〜900℃近傍の冷却速度を0.1〜10℃/分の範囲で選択して、[(T1−T2)/T1]比率を制御する。0.1℃/分を選択すると、[(T1−T2)/T1]比率は小さくなり、10℃/分を選択すると[(T1−T2)/T1]比率は大きくなる傾向を示す。実際には、[(T1−T2)/T1]比率を一層小さくする為に、上記▲1▼▲2▼▲3▼単独よりも適宜組み合わせながら実施することが好ましい。
【0043】
(5)CuCrマトリックス中およびCr粒子との界面のC量の測定
CuCrマトリックス中、およびCuCrマトリックスとCr粒子との界面のC量の確認は、例えば金属顕微鏡写真上でのCの分布状態の観察時に同時に測定する方法、SEM若しくはEDXなどの測定装置により計測する方法などによって測定した。
【0044】
(実施例1〜4、比較例1〜2)
本発明接点のポイントは、遮断器の遮断特性、再点弧特性に対して、Cu−Cr合金中のCu相の溶融開始温度T1と冷却過程での凝固開始温度T2との差(T1−T2)値とT1との比率、すなわち[(T1−T2)/T1]比率がポイントとなる。
【0045】
本発明技術がその効果を効果的に発揮する為のCu−Cr合金中のCu量の範囲を、[(T1−T2)/T1]比率を1.6〜1.7%で一定とした接点を製造する。工業的には、通常[(T1−T2)/T1]比率は、5.0程度(以上)であることが多いので、製造時に使用するCr原料中のAl、Si、Cを前記値以内に選択すると共に、焼結熱処理後の冷却条件を1℃/分程度とし、Cu相中のCr量を0.05%未満とする。
【0046】
<再点弧特性>
再点弧特性(再点弧発生の頻度)は、接点中の総Cu量を85%としたCu−15%Cr接点(実施例4)で、複数の遮断器を24kV、2000回遮断した時の再点弧発生頻度は10〜30回の範囲であった。本発明ではこの特性を性能上許容範囲とし、この接点の特性を基準とし実施例4とすると共に、他の実施例、比較例を相対評価した。
【0047】
接点中の総Cu量を15%(85%Cr)としたCu−85%Cr接点では、0.1〜0.8倍未満(評価B)から0.8〜1.2倍未満(評価C)を示し、良好な再点弧特性を示した(実施例1)。
【0048】
接点中の総Cu量を45%(55%Cr)としたCu−55%Cr接点では、前記実施例4と比較した再点弧発生頻度は、0.1倍未満(評価A)から0.1〜0.8倍未満(評価B)を示し、極めて良好な再点弧特性を示した(実施例2)。
【0049】
接点中の総Cu量を65%(35%Cr)としたCu−35%Cr接点でも、前記実施例4と比較した再点弧発生頻度は、0.1〜0.8倍未満(評価B)から0.8〜1.2倍未満(評価C)を示し、良好な再点弧特性を示した(実施例3)。
【0050】
これに対して、接点中の総Cr量を10%(90%Cr)としたCu−90%Cr接点では、[(T1−T2)/T1]比率を1.6〜1.7%としたにもかかわらず、前記実施例4と比較した再点弧発生頻度は、1.5〜10倍(評価X)と10〜100倍(評価Y)を示し、極めて劣る再点弧特性を示した(比較例1)。
【0051】
更に、接点中の総Cu量を更に増加した95%(5%Cr)としたCu−5%Cr接点では、前記実施例4と比較した再点弧の発生頻度は、10〜100倍(評価Y)から100倍以上(評価Z)を示し、極めて劣る再点弧特性を示した(比較例2)。
【0052】
したがって、本発明技術は、15〜85%Cuを含有したCu−Cr合金に対して適用する時、再点弧特性にその効果を発揮する。
【0053】
<遮断特性>
接点中の総Cu量を85%(15%Cr)としたCu−85%Cr接点は良好な遮断特性を示し、これを基準接点とし、遮断特性を1.0とした(実施例4)。
【0054】
接点中の総Cu量を15%(85%Cr)としたCu−85%Cr接点では、前記実施例4と比較した遮断特性は、1.0〜1.1倍を示し、良好な遮断特性を示した(実施例1)。
【0055】
接点中の総Cu量を45%(55%Cr)としたCu−55%Cr接点では、前記実施例4と比較した遮断特性は、1.1倍から1.2倍を示し、良好な遮断特性を示した(実施例2)。
【0056】
接点中の総Cu量を65%(35%Cr)としたCu−35%Cr接点では、前記実施例4と比較した遮断特性は、1.2〜1.3倍を示し、極めて良好な遮断特性を示した(実施例3)。
【0057】
これに対して、接点中の総Cr量を10%(90%Cr)としたCu−90%Cr接点では、[(T1−T2)/T1]比率を1.6〜1.7%としたにもかかわらず、前記実施例4と比較した遮断特性は、0.4〜0.6倍を示し、極めて劣る遮断特性を示した(比較例1)。
【0058】
更に、接点中の総Cu量を更に増加した95%(5%Cr)としたCu−5%Cr接点では、前記実施例4と比較した遮断特性は、0.8〜0.9倍を示し、やや劣る遮断特性を示した(比較例2)。
【0059】
以上の様に、[(T1−T2)/T1]比率を制御してCu−Cr合金の遮断特性、再点弧特性を向上させる為には、Cu量が15〜85%のCu−Cr合金に対して適応するのが好ましい。
【0060】
すなわち、Cu−Cr合金中のCu量を15〜85%とすることにより、一定の導電率、機械的性質を維持する結果、安定した遮断特性、再点弧特性を示す。[(T1−T2)/(T1)]比率が好ましい3.5%以下であっても、Cu量が15%未満では、十分な導電率、低い接触抵抗特性、低い温度特性が確保されず遮断特性が低下する。Cu量が85%を越えると、再点弧特性に大きなばらつきが生ずる。
【0061】
(実施例5〜8、比較例3)
前記実施例1〜4、比較例1〜2では、本発明技術を適応する接点として、Cu量が15〜85%のCu−Cr合金が好ましいことを示した。本発明では、Cu−Cr合金中のCu相とCrとの界面に補助成分(C成分)を存在させたCu−Cr−C合金としても同等の効果を発揮する。補助成分を存在させることによって、ア−ク点から周辺(接触面および接点内部)への熱伝達を遅らせ(微少領域での熱伝導度を小さくしア−クを受けてから液相を生成させる時刻を遅らせる)、結果的に液相が存在している時間を短くし、(T1−T2)値を小さく調整する結果、再点弧特性、遮断特性に好ましい状態とする。遮断後の表面近傍の顕微鏡的組織観察の結果、一部のCはCrと結合している状態が観察された。Cは、Crと結合する事によってCu相への拡散が制御され、結果としてCuCr界面付近の凝固温度を高くする(凝固温度が下がる現象を抑える)事になる。すなわち、[(T1−T2)/(T1)]比率を小さく抑える本発明では、この様な補助成分としてCの存在効果を確認した。
【0062】
Cu−Cr合金中へ適量のCを存在させる方法としては、次のような方法がある。
【0063】
第1の方法として、混合作業に於いて、まずC量とCu量との比率が容積的に同程度となる様に秤量し、CとCuとの混合粉を得て、次いで、この混合粉にCuのみを追加し混合してゆき、C量が0.005%以下、0.01〜0.1%に相当する微量のCをCu−Cr中に均一に分散させたCu−Cr−C接点素材を得る。
【0064】
第2の方法として、有機溶剤で希釈した高分子材料をCu粉の表面層に被覆し、熱分解によってその表面にCを析出させたCu粉を得て、このCu粉と所定のCr粉とを混合する。この時希釈する有機溶剤の量と高分子材料の量を調節しながら、Cu−Cr中へのCの量を調節する。これによって所定量範囲(0.005%以下、0.01〜0.1%)のC量をCu−Cr中に均一に分散させたCu−Cr−C接点素材を得る。
【0065】
第3の方法として、Cu粉とCr粉とをあらかじめ混合した混合粉を前記第2の方法に従って、有機溶剤で希釈した高分子材料を混合粉表面層に被覆し、熱分解によって混合粉の表面にCを析出さる。これによって所定量範囲(0.005%以下、0.01〜0.1%)のC量をCu−Cr中に均一に分散させたCu−Cr−C接点素材を得る。
【0066】
第4の方法として、前記第1の方法を実施するに於いて、第2の方法で得たCu粉を使用する。これによって所定量範囲(0.005%以下、0.01〜0.1%)のC量をCu−Cr中に均一に分散させたCu−Cr−C接点素材を得る。
【0067】
第5の方法として、前記第1の方法を実施するに於いて、第3の方法で得たCu粉とCr粉とをあらかじめ混合した混合粉を使用する。これによって所定量範囲(0.005%以下、0.01〜0.1%)のCをCu−Cr中に均一に分散させたCu−Cr−C接点素材を得る。
【0068】
なお、Cu−Cr−C接点では、Cの粒子直径が著しく微細である、Cの量が極めて少量である、機械的な混合法ではC粒子の持つ潤滑性のために効果的な混合が行えない、などが原因となって、良質な接点素材が得られない。そこで本発明では、上記した第1〜5の方法を適宜選択し組み合わせることによって、Cu−Cr中のCの量を所定量範囲(0.005%以下、0.01〜0.1%)とした供試接点を得る。
【0069】
<再点弧特性>
接点中のCu−Cr合金中のCの量を0.005%、0.01%、0.03%、0.05%とした接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、同等の良好な特性0.1〜0.8倍未満(評価B)と0.8〜1.2倍未満(評価C)を示した(実施例5〜7)。
【0070】
接点中のCu−Cr合金中のCの量を0.05%とした接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、同等の良好な特性0.8〜1.2倍未満(評価C)を示した(実施例8)。
【0071】
これに対して、Cu−Cr合金中のCの量を0.1%とした接点では、Cu−Cr中のCには凝集が見られ、評価した接点によって再点弧の発生頻度に大きなバラツキが見られ、基準接点(実施例4)と比較した再点弧の発生頻度は、10倍以上〜100倍未満、100倍以上(評価Y〜Z)を示し、極めて好ましくない再点弧特性を示した(比較例3)。
【0072】
なお、接点中のCu−Cr中のCの量を0.005%未満とする接点では、再点弧特性はさらに良好である。0.005%未満のCの量を持つCu−Cr合金の製造は、原料の精製(熱処理温度の高温度化による不純物の熱分解の促進)、混合および焼結熱処理工程(粉塵混入の防止)、熱処理用容器材質の選択(Cの混入の防止)、熱処理雰囲気と温度の調整と熱処理回数の増加などで調整する。
【0073】
<遮断特性>
次いで、遮断特性の評価は、各接点について遮断電流値を測定し、前記実施例4の遮断電流値を1.0とした時の倍率で示した。
【0074】
Cu−Cr合金中のCの量を0.005%、0.01%、0.03%および0.05%とした接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、同等以上の良好な遮断特性1.1〜1.2倍を示した(実施例5〜8)。
【0075】
これに対して、Cu−Cr合金中のCの量を0.1%とした接点では、Cu−Cr中のCの凝集によって、評価した接点によって遮断特性に大きなバラツキが見られ、基準接点(実施例4)と比較した遮断特性は、0.3〜0.6倍を示し、極めて好ましくない遮断特性を示した(比較例3)。
【0076】
実施例5に於いて遮断テストに供した後の接点について、Cu−Cr合金中のCの分布状態を観察すると、良好な分散を確認した。遮断電流による熱入力に対して断熱効果を十分発揮し、液相が存在する時間を短縮したものと考えられ、その結果遮断特性の向上に寄与したものと考えられる。遮断電流が消滅した時には、Cu−Cr合金中のCの断熱効果よりも、熱容量の大幅に大きな近接する電極、導電軸の冷却効果が優先し急速に冷却される為、液相が存在する時間の長短は、液相の生成時刻を遅らせることにのみ依存する。
【0077】
Cu−Cr合金の遮断特性、再点弧特性を向上させる為には、[(T1−T2)/T1]比率を制御することが必須であるが、さらに0.05%以下のC量を含む15〜85%Cu−Cr−C合金に対して適応すると一層好ましい。
【0078】
すなわち、Cu−Cr合金中のC量を0.05%以下としたCu−Cr−C合金に対して、前記[(T1−T2)/T1]比率を3.5%以下とすることによって、遮断特性、再点弧特性は標準とした実施例4と同等以上の好ましい特性を示す。この比率が3.5%を越えると、耐電圧特性、とりわけ再点弧特性、遮断特性の低下が見られる。
【0079】
Cu−Cr合金中のC量が0.05%を越えると、[(T1−T2)/(T1)]比率が3.5%以下であっても、CはCu相中に集合したり凝集したりした状態となって存在する傾向にあり、素材特性の均質性を損なう結果、再点弧発生頻度にはバラツキを伴う傾向を示すと共に、遮断特性も低下させ、両特性の両立は得られない。Cu相中のC量が0.05%以下の場合には、低い再点弧発生頻度を発揮すると共に、遮断特性にも好影響を与えている。
【0080】
なお、Cu−Cr接点中のCの粒子直径(形状が球形でない場合には球に換算した時の直径)または集合体の直径は、5μm以下(形状が球形でない場合には球に換算した時の直径)であることが望ましい。Cの粒子直径が5μm以下では、再点弧の発生頻度のバラツキが少なくなると共に、遮断時の電流による熱流のバランスが良くなり、遮断特性のバラツキも少なくなる。
【0081】
(実施例9〜12、比較例4)
前記実施例1〜8、比較例1〜3では、Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を1.6〜1.7%で一定とした接点について示したが、本発明技術ではこれに限ることなくその効果を発揮する。
【0082】
<再点弧特性>
Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を0.01〜0.2%とした接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、極めて良好な特性0.1倍未満(評価A)を示した(実施例9)。液相の存在期間を極めて短くした効果が十分見られる。
【0083】
このようにT1とT2とが近似した状態の接点を得る効果的な手段の1つは、あらかじめ原料Cuを移動速度1cm/60分程度の一方向溶解によって、不純物元素やガス状成分などCu中に余分に存在する元素を特に十分に小さくしておくことと、あらかじめ原料Cr粉を真空中で少なくとも1350℃の温度で加熱処理しておくことである。ついでこれらを汚染させずに焼結して接点を得るのが基本である。焼結熱処理に際しては、その表面に同程度以上に清浄な状態のCrを被覆した容器を選択して使用する。
【0084】
Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を1.4〜1.5%とした接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、極めて良好な特性0.1倍未満(評価A)ないし0.1〜0.8倍未満(評価B)を示した(実施例10)。
【0085】
Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を2.4〜2.5%とした接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、同等の良好な特性0.8〜1.2倍未満(評価C)を示した(実施例11)。
【0086】
Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を3.4〜3.5%とした接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、同等の良好な特性0.8〜1.2倍未満(評価C)ないし1.2〜1.5倍未満(評価D)を示した(実施例12)。
【0087】
これに対して、Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を5.4〜5.5%とした接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、1.2〜1.5倍未満(評価D)ないし10以上〜100倍(評価Y)の如く、大きなバラツキと極めて好ましくない再点弧特性を示した(比較例4)。
【0088】
<遮断特性>
Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を0.01〜0.2%とした場合には、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、1.25〜1.3倍の極めて良好な遮断特性を示した(実施例9)。
【0089】
Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を1.4〜1.5%とした場合には、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、1.25〜1.35倍の極めて良好な遮断特性を示した(実施例10)。
【0090】
Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を2.4〜2.5%とした場合には、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、1.15〜1.2倍の極めて良好な遮断特性を示した(実施例11)。
【0091】
Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を3.4〜3.5%とした場合には、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、1.0〜1.1倍の良好な遮断特性を示した(実施例12)。
【0092】
これに対して、Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を5.4〜5.5%とした接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、0.8〜1.0倍の如く、大きなバラツキと極めて好ましくない遮断特性を示した(比較例4)。
【0093】
以上の様に、[(T1−T2)/T1]比率を3.5%以下に制御したCu−Cr合金に於いて、遮断特性、再点弧特性を向上させる。
【0094】
(実施例13〜15)
前記実施例1〜12、比較例1〜4では、接点中の導電性成分をCu(特に吟味しない一般の純Cu)を使用したCu−Cr合金について、[(T1−T2)/T1]比率に及ぼす効果について示したが、本発明技術ではCu−Cr合金中の導電性成分は純Cuに限ることなくその効果を発揮する。すなわち、Cu−Cr合金中の導電性成分を純Cuの代わりにCu(Cr)としたCu(Cr)−Cr合金としても同等の効果を発揮する。
【0095】
<再点弧特性>
Cu−Cr合金中のCu相中に0.05%のCrを含有させたCu(0.05Cr)−Cr接点、0.15%のCrを含有させたCu(0.15Cr)−Cr接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、同等以上の良好な特性0.1〜0.8倍未満(評価B)を示した(実施例13〜14)。
【0096】
Cu−Cr合金中のCu相中に0.35%のCrを含有させたCu(0.35Cr)−Cr接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、良好な特性0.1〜0.8倍未満(評価B)ないし0.8〜1.2倍未満(評価C)を示した(実施例15)。
【0097】
<遮断特性>
Cu−Cr合金中のCu相中に含有するCrの量を0.05%、0.15%、0.35%とした接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、同等以上の良好な遮断特性1.25〜1.35倍(0.05%の場合)。1.1〜1.2倍(0.15%の場合)。1.0〜1.1倍(0.35%の場合)を示した(実施例13〜15)。
【0098】
以上の様に、Cu相中に0.35%以下のCrを含有させたCu(Cr)−Cr合金に於いて、遮断特性、再点弧特性を向上させる。Crの量が0.35%を越えると、接点の製造技術上経済性の面で問題であると共に、接点の導電率を著しく低下させ、接点部温度もしくは遮断器端子部温度の上昇を招き、その結果遮断特性の維持に好ましくない。
【0099】
すなわち、Cu量に対して0.35%以下のCrを含有させたCu−Cr合金に対して、前記[(T1−T2)/(T1)]比率を3.5%以下とすることによって、遮断特性、再点弧特性は標準とした実施例4と同等以上の好ましい特性を示す。この比率が3.5%を越えると、耐電圧特性、とりわけ再点弧特性、遮断特性の低下が見られる。
【0100】
しかし[(T1−T2)/(T1)]比率が好ましい範囲である3.5%以下であっても、Cu量に対するCr量が0.35%を越えて存在すると、再点弧特性、遮断特性の両立が得られない。Cu−Cr合金自体の導電率、熱伝導率が大幅に低下し、遮断特性の低下が見られる。
【0101】
(実施例16〜18、比較例5)
前記実施例1〜8、比較例1〜3では、Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を1.6〜1.7に一定とした接点に於いて、耐弧性成分としてCrを使用した例について示したが、本発明技術ではCrに限ることなくその効果を発揮する。
【0102】
<再点弧特性>
Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を1.6〜1.7で一定とした接点に於いて、耐弧性成分としてCrの一部をWで置換したCrW(Cr:W=重量比95:5、Cr:W=重量比75:25、Cr:W=重量比50:50)としたCu−CrW接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、いずれも極めて良好な特性0.1倍未満(評価A)ないし0.1〜0.8倍未満(評価B)を示した(実施例16〜18)。
【0103】
CrWの形成によって、Cr粒子の熱的安定性および機械的特性を改善し、その結果再点弧発生の一因となる遮断時のCr粒子の脱落を抑制する。また適量のWの存在は、Crの粒子成長を抑制し、Crの微細分散化にも有益に作用する。遮断後の接点面のSEM観察によれば、脱落したCr粒子の付着が減少している。[(T1−T2)/T1]比率が、3.4〜3.5の場合でも同様の現象がみられ、その結果、再点弧特性も良好な特性(評価B〜C)を発揮した。
【0104】
これに対して、Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を1.6〜1.7に一定とした接点に於いて、耐弧性成分としてのCrの一部をWで置換したCrW(Cr:W=重量比25:75)としたCu−CrW接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、一部の遮断器では好ましい0.8〜1.2倍未満(評価C)を発揮したが、1.5倍以上〜10倍(評価X)を示し、再点弧の発生頻度に大きなバラツキが見られ、極めて好ましくない再点弧特性を示した(比較例5)。Wの増加により高融点化したCrWからの過度の熱電子放出によるものである。
【0105】
<遮断特性>
Cu−Cr合金の[(T1−T2)/T1]比率を1.6〜1.7で一定とした接点に於いて、耐弧性成分としてのCrの一部をWで置換したCrW(Cr:W=重量比95:5)としたCu−CrW接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、1.2〜1.3倍の極めて良好な遮断特性を示した(実施例16)。
【0106】
Cu−Cr合金の耐弧性成分としてのCrの一部をWで置換したCrW(Cr:W=重量比75:25)としたCu−CrW接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、1.3〜1.45倍の極めて良好な遮断特性を示した(実施例17)。
【0107】
Cu−Cr合金の耐弧性成分としてのCrの一部をWで置換したCrW(Cr:W=重量比50:50)としたCu−CrW接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、1.25〜1.35倍の極めて良好な遮断特性を示した(実施例18)。
【0108】
これに対して、Cu−Cr合金の耐弧性成分としてのCrの一部をWで置換したCrW(Cr:W=重量比25:75)としたCu−CrW接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、0.75〜0.95倍の極めて好ましくない遮断特性を示した(比較例5)。
【0109】
以上の様に、Cu−Cr合金の再点弧特性、遮断特性の向上に対して、耐弧性成分としてCrの一部を所定量比以内のWで置換したCrWは、[(T1−T2)/T1]比率を3.5以下に制御した効果と相俟って有益である。
【0110】
すなわち、CrにWを含有させCrWとすることによって、Crの液相線温度および固相線温度を上昇させる。遮断時に電極空間に放出される蒸気量を適度に調整し、遮断特性の改善に貢献する。その量が50%以下の時に安定した遮断特性、再点弧特性を得る。50%を越えるとCrW自体が高融点化し遮断特性の低下を招く。なおCrWとすることによって機械的強度を調整しCr粒子の脱落が引き金となって引起こされる再点弧発生を軽減化する。
【0111】
(実施例19〜21)
前記実施例16〜18では、耐弧性成分としてCrの一部を50%以下のWで置換したCrW(Cr:W=重量比)としたCu−CrW接点では、基準接点に対して、良好な再点弧特性、遮断特性を示した。本発明技術では、耐弧性成分としてCrの一部に置換する元素は、Wに限ることなく発揮する。
【0112】
<再点弧特性>
Cu−Cr合金の耐弧性成分としてCrの一部をMo、Ta、Nbの1つで置換してCrMo、CrTa、CrNbとしたCu−CrMo、Cu−CrTa、Cu−CrNb接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、いずれも極めて良好な特性0.1〜0.8未満(評価B)ないし0.8〜1.2倍未満(評価C)を示した(実施例19〜21)。
【0113】
<遮断特性>
Cu−Cr合金の耐弧性成分としてのCrの一部をMoで置換したCrMo(Cr:Mo=重量比75:25)としたCu−CrMo接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、1.1〜1.15倍の良好な遮断特性を示した(実施例19)。
【0114】
Cu−Cr合金の耐弧性成分としてのCrの一部をTaで置換したCrTa(Cr:Ta=重量比75:25)としたCu−CrTa接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、1.0〜1.1倍の良好な遮断特性を示した(実施例20)。
【0115】
Cu−Cr合金の耐弧性成分としてのCrの一部をNbで置換したCrNb(Cr:Nb=重量比75:25)としたCu−CrNb接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、1.0〜1.05倍の良好な遮断特性を示した(実施例21)。
【0116】
以上の様に、Cu−Cr合金の再点弧特性、遮断特性の向上に対して、耐弧性成分としてCrの一部を所定量比以内のMo、Ta、Nbで置換したCu−CrMo、Cu−CrTa、Cu−CrNb接点は、[(T1−T2)/T1]比率を3.5以下に制御した効果と相俟って有益である。
【0117】
すなわち、CrにMo、Ta、またはNbを含有させ、CrMo、CrTa、またはCrNbとすることによって、遮断時に電極空間に放出されるCrの蒸気量を適度に調整し、遮断特性の改善に貢献する。その量が50%以下の時に安定した遮断特性、再点弧特性を得る。
【0118】
(実施例22〜27、比較例6〜7)
前記実施例16〜21では、耐弧性成分としてCrの一部を50%以下のW、Mo、Ta、Nbの1つで置換したCrW、CrMo、CrTa、CrNbとしたCu−CrW、Cu−CrMo、Cu−CrTa、Cu−CrNb接点であっても、基準接点に対して、良好な再点弧特性、遮断特性を示した。本発明技術での耐弧性成分は、これらに限ることなく発揮する。
【0119】
<再点弧特性>
Cu−Cr合金の耐弧性成分としてCrの一部を0.001〜0.1%のAl、Siの1つで置換したCu−CrAl、Cu−CrSi接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、いずれも良好な特性0.1倍未満(評価A)ないし1.2〜1.5倍(評価D)を示した(実施例22〜27)。
【0120】
これに対して、Cu−Cr合金の耐弧性成分としてCrの一部を、0.3%のAl、Siの1つで置換したCu−CrAl、Cu−CrSi接点では、基準接点とした実施例4の再点弧特性と比較して、1.5倍以上〜10倍(評価X)ないし100倍以上(評価Z)を示し、再点弧の発生頻度に大きなバラツキが見られ、極めて好ましくない再点弧特性を示した(比較例6〜7)。
【0121】
<遮断特性>
Cu−Cr合金の耐弧性成分としてCrの一部を0.001%〜0.1%のAl又はSiの1つと置換したCu−CrAl、Cu−CrSi接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、0.9〜1.15倍の良好な遮断特性を示した(実施例22〜27)。
【0122】
これに対して、Cu−Cr合金の耐弧性成分としてCrの一部を、0.3%のAl、Siの1つで置換したCu−CrAl、Cu−CrSi接点では、基準接点とした実施例4の遮断特性と比較して、0.6〜0.9倍の極めて好ましくない遮断特性を示した(比較例6〜7)。
【0123】
以上の様に、Cu−Cr合金の再点弧特性、遮断特性の向上に対して、耐弧性成分としてCrの一部を所定量比以内のAl、Siで置換したCu−CrAl、Cu−CrSi接点は、[(T1−T2)/T1]比率を3.5以下に制御した効果と相俟って有益である。
【0124】
すなわち、Cr中に0.1%以下のAl、またはSiを含有させることにより、Cu−Cr合金の遮断特性、再点弧特性を改善する。これに対して0.3%Al、または0.3%Siでは、遮断特性、再点弧特性に大きなばらつきが生ずるとともにこれらの特性の両立が得られない。
【0125】
【発明の効果】
本発明によれば、遮断によって接点面の一部分が溶融してから、これが消滅するまでの間の時間(液相が存在している時間)を短く制御したので、再点弧特性と遮断特性とを両立させた真空遮断器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る真空遮断器の実施例1〜8および比較例1〜3の評価条件を示す表図。
【図2】 本発明に係る真空遮断器の実施例9〜18および比較例4〜5の評価条件を示す表図。
【図3】 本発明に係る真空遮断器の実施例19〜27および比較例6〜7の評価条件を示す表図。
【図4】 本発明に係る真空遮断器の実施例1〜8および比較例1〜3の評価結果を示す表図。
【図5】 本発明に係る真空遮断器の実施例9〜18および比較例4〜5の評価結果を示す表図。
【図6】 本発明に係る真空遮断器の実施例19〜27および比較例6〜7の評価結果を示す表図。
【図7】 代表的な真空バルブの構成を示す図。
【図8】 代表的な真空バルブの他の構成を示す図。
【符号の説明】
40…電極(接点51の背面)
41…固定接点
50…電極(接点51の背面)
51…可動接点
101…絶縁容器
102a…固定側蓋体
102b…可動側蓋体
103…真空容器
104…固定接点
106…固定通電軸
107…可動通電軸
108…べローズ
109…アークシールド
M…通電軸107の移動方向

Claims (1)

  1. 15〜85重量%のCu相から成る導電性成分と、0.05重量%以下のCと、残部としてのCrを主成分とする耐弧性成分とを含む合金からなり、昇温過程での前記Cu相の摂氏で測定した溶融開始温度をT1とし、少なくとも1200℃からの冷却過程での、前記Cu相の摂氏で測定した凝固開始温度をT2とした場合に、[(T1−T2)/(T1)]比率で示した比率が、3.5%以下になるように、前記合金を1000〜1030℃で焼結し、800〜900℃での冷却速度を0.1〜10℃/分としたことを特徴とする真空遮断器用接点材料。
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