JP3663038B2 - 真空バルブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接触抵抗特性と遮断特性とを安定化させた接点素材を備え、遮断特性に優れた真空バルブに関する。
【0002】
【従来の技術】
真空中でのアーク拡散性を利用して、高真空中で電流遮断を行わせる真空バルブの接点は対向する固定、可動の2つの接点から構成されている。
真空遮断器には、大電流遮断特性、耐電圧性能、対溶着性能の基本的3要件の他に、接点の対消耗特性が重要な用件となっている。
【0003】
しかしながら、これらの要件の中には相反するものがある関係上、単一の金属種によって総ての要件を満足させることは不可能である。この為、実用化されている多くの接点材料においては、不足する性能を相互に補うような2種以上の元素を組み合わせることによって、例えば大電流用、高耐圧用等のように特定の用途に合った接点材料の選択採用が行われ、それなりに優れた特性を持つ真空バルブが開発されているが、更に強まる要求を十分満足する真空バルブは未だ得られていないのが実情である。
【0004】
例えば、大電流遮断性を目的とした接点として、Crを50wt%程度含有させたCu−Cr合金(特公昭45−35101号公報参照)が知られている。この合金は、Cr自体がCuとほぼ同等の蒸気圧特性を保持し、かつ強力なガスのゲッタ作用を示す等の効果で高電圧大電流遮断性を実現している。即ち、Cu−Cr合金は、高耐圧特性と大電流遮断とを両立させ得る接点として多用されている。
【0005】
この合金は、活性度の高いCrを使用していることから、接点素材の製造(焼結工程など)、接点素材から接点片へと加工する時などにおいて、原料粉の選択、不純物の混入、雰囲気の管理などに配慮しながら製造しているが、真空バルブの高耐圧特性と大容量遮断とを両立させるのに必要な耐圧特性と接触抵抗特性とを同時に兼備した接点材料の供給に対して必ずしも完全な技術とはなっていない。
【0006】
このようなことから、本発明者らはCuCr接点の組成的改良を検討した結果、耐圧特性と接触抵抗特性とを兼備した好ましい接点片を具備した真空バルブを提供できるようになった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
CuCr接点は、両者の高温度での蒸気圧特性が近似していることなどが主因となって、遮断した後でも比較的平滑な表面損傷特性を示し、安定した電気特性を発揮している。
【0008】
しかし近年一層の大電流遮断やより高電圧が印加される可能性のある回路への適応が日常的に行われ、接点に著しい消耗や強固な溶着現象が見られるようになってきた。真空バルブにおいて、遮断によって異常的に損傷・消耗した接点では、次の定常電流の開閉時の接触抵抗の異常上昇や温度の異常上昇を引き起こしたり、耐電圧不良を示したりする為、接点の異常的損傷・消耗は極力抑制する必要がある。
【0009】
研究によれば、CuCr合金の接点特性は、合金中のCr量の変動、Cr粒子の粒度分布、Crの偏析の程度、合金中に存在する空孔の程度などに依存することが判明した。しかし、その最適化を進めているにも拘わらず、上述した近年の適応状況では耐圧特性と接触抵抗特性にばらつきが見られ、遮断特性をあるレベルに維持した上で、両特性を兼備した真空バルブが必要となってきた。
この発明の目的は、接触抵抗特性と遮断特性とを安定化した接点を備え、遮断特性に優れた真空バルブを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Cu,Agの少なくとも1種よりなる高導電性成分と、Crよりなり、粒子径が0.1〜150μmの範囲にある粒子が、粒子全体の少なくとも90容積%を占める耐弧性成分とからなる接点素材を備えた真空バルブに於いて、接点素材は、900℃の時の熱膨張率値α900 と50℃の時の熱膨張率値α50との差の、900℃の時の熱膨張率値α900 に対する比率[(α900 −α50)×100/(α900 )]が、0.8%以上12%以下であることを特徴とする。
【0011】
このような構成とすることにより、接点素材が、ロウ付け工程を経た後にCr粒子とCuマトリックスとの界面に生成する溝の生成を抑制し、静耐圧特性、接触抵抗特性の安定化、遮断特性の安定化を図ることができる。
【0012】
この接点素材は、Cu,Agの少なくとも1種よりなる高導電性成分と、Crよりなり、粒子径が0.1〜150μmの範囲にある粒子が、粒子全体の少なくとも90容積%を占める耐弧性成分とを各々均一に混合して高導電性粉末・耐弧性粉末混合粉を製造した後、この混合粉に対して、非酸化性雰囲気中での加熱処理によって相対密度を88%以上に調節した接点素材とすることができる。
【0013】
このような構成とすることにより、ロウ付け工程を経た後にCr粒子とCuマトリックスとの界面に生成する溝の生成の抑制にさらに効果を発揮する。また、この接点素材は、高導電性成分としてCu又はAgの少なくとも1種の量を40〜80(重量)%、第1補助成分としてAl、Si、Feから選ばれた1つ以上の元素の量を0.01〜1.0%、残部の所定量が耐弧性成分としてCrを含有した高導電性粉末・耐弧性粉末・第1補助成分粉末混合粉で構成され、この混合粉を非酸化性雰囲気中で高導電性成分の溶融温度以上の温度(例えば溶浸法の場合は溶融温度以上の温度とする。)、または800℃以上高導電性成分の溶融温度以下の温度(例えば固相焼結法の場合は溶融温度以下の温度とする。)但し高導電性成分の溶融温度が800℃以下の場合は高導電性成分の溶融温度以上の温度で加熱処理して得た接点素材であってもよい。
【0014】
このような第1補助成分としての所定量のAl、Si、Feの存在によりCr粒子とCuマトリックスとの界面に生成する溝の状態が更に改善される。また、接点素材は、第2補助成分として0.05〜5%のBi、Te、Sbの1つを含有した高導電性粉末・耐弧性粉末・第2補助成分粉末混合粉または高導電性粉末・耐弧性粉末・第1補助成分粉末・第2補助成分粉末混合粉で構成され、この混合粉を非酸化性雰囲気中で高導電性成分の溶融温度以上の温度、または800℃以上高導電性成分の溶融温度以下の温度但し高導電性成分の溶融温度が800℃以下の場合は高導電性成分の溶融温度以上の温度で加熱処理して得た接点素材であってもよい。
【0015】
このようなBi、Te、Sb等の第2補助成分により、耐溶着性を改善することができる。さらに、接点素材は、混合粉に対して、混合粉自体の自重のみによる圧力以上8トン/cm2 以下の圧力を与えて成型体とした後、この成型体を非酸化性雰囲気中で高導電性成分の溶融温度以上の温度、または800℃以上高導電性成分の溶融温度以下の温度但し高導電性成分の溶融温度が800℃以下の場合は高導電性成分の溶融温度以上の温度で加熱処理して得た接点素材であってもよい。
【0016】
また、接点素材は、Cuを含む材料(例えばCu粉末、Cu薄板、Cu合金板、AgCu合金板等)と混合粉とを接触させて載置し、必要により加圧した後、この混合粉をCuを含む材料と共に、非酸化性雰囲気中で800℃以上高導電性成分の溶融温度以下の温度但し高導電性成分の溶融温度が800℃以下の場合は高導電性成分の溶融温度以上の温度で焼結して得た少なくとも一面に高導電性成分層を持つ接点素材であってもよい。
【0017】
更に、この接点素材は、Crの一部をCr量に対して、0.1%以上50%未満のTi、V、Nb、Ta、Mo、Wより選ばれた1つによって置換して得た接点素材であってもよい。
【0018】
Crの一部をTi、V、Nb、Ta、Mo、またはWで置換することによりより、耐圧が改善される。
また、この接点素材は、Crの表面を、厚さ0.01〜50μmのFe、Ni、Coより選ばれた1つで被覆して得た接点素材であってもよい。
【0019】
この場合のFe、Ni、またはCoによる被覆により、混合過程でのCr粉の変質を軽減できるとともに、焼結の時の相対密度の調整(密度を高くする)が可能となる。
【0020】
さらに、この接点素材は、Crの表面を、厚さ0.01〜50μmのTi、V、Nb、Ta、Mo、Wより選ばれた1つで被覆して得た接点素材であってもよい。
【0021】
この場合のTi、V、Nb、Ta、Mo、またはWによる被覆により、混合過程でのCr粉の変質を軽減できるとともに、、耐圧が改善される。
また、この接点素材は、Al、Si、Feから選ばれた1つ以上の元素の所定量と、ほぼ同容量のCu、Ag、Crから選ばれた1つ以上の金属とを予め1次予備混合し、1次予備混合された1次予備混合粉と、残部の金属とを混合して混合粉を得た後、この混合粉を成型、焼結して得た接点素材であってもよい。
【0022】
また、この接点素材は、Bi、Te、Sbから選ばれた1つ以上の元素の所定量と、ほぼ同容量のCu、Ag、Crから選ばれた1つ以上の金属とを予め1次予備混合し、1次予備混合された1次予備混合粉と、残部の金属とを混合して混合粉を得た後、この混合粉を成型、焼結して得た接点素材であってもよい。
【0023】
更に、この接点素材は、1次予備混合粉と、ほぼ同容量のCu、Ag、Crから選ばれた1つ以上の金属とを2次予備混合し、必要によりこの予備混合粉とほぼ同容量の残部のCu、Ag、Crから選ばれた1つ以上の金属とを混合して予備混合粉を得る混合作業を複数回繰り返し、得られた予備混合粉と残部の金属とを混合し、混合粉を得た後、この混合粉を成型、焼結して得た接点素材であってもよい。
以上のような予備混合を行う混合方法により均一に混合された混合粉を用いることにより溝の生成を抑制する効果を一層高めることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
最新の開閉装置プラントや開閉システムでも、その性能がたった1つの接点材料、接点部品の品質欠陥によって、ばらつきが出たり機能発揮しないケースが存在する場合がある。本発明者らは、真空バルブに使用されている接点材料を検討し真空バルブ特性を対比した結果、この発明を完成するに至った。すなわちこの発明は、下記の事項をもつことを特徴とするものである。
【0025】
上記した開閉装置プラントや開閉システムの電気的(または機械的、化学的)性能のばらつきの一部には、真空バルブに搭載された接点と密接に相関している傾向にあることが判明した。特に、ロウ付け工程を経た後にばらつきが発生している場合が認められた。
【0026】
すなわち、種々の条件・状態にあるCuCr接点片に於いて、その表面粗さの平均値Rave.を0.1μm程度に十分平滑に表面仕上げした状態にある接点の針/平板電極を対向させた静耐圧特性、接触抵抗特性を調査すると、原料Crの粒子直径や粒度分布、CuCr合金の組成成分、焼結条件又は焼結・溶浸条件などがある程度一定ならば、同じ条件・状態グループ間ではほぼ同じ静耐圧特性、接触抵抗特件を示す。しかし、これらの接点片を使用しロウ付け工程を経て真空バルブとして組立てた後、再度静耐圧特性、接触抵抗特性を詳細に調査すると、前記静耐圧値の低下とばらつき幅の拡大、接触抵抗特性の上昇とばらつき幅の拡大が発生することがある。
【0027】
ロウ付け工程を経た直後の接点表面を走査型電子顕微鏡によって観察すると、Cr粒子とCuマトリックスとの界面には、幅が主として0.1〜10μm程度の溝が連続状または不連続状に存在していることが観察され、かつこの溝のエッジ部分には静耐圧測定時の放電の痕跡が集中する傾向があるのが観察された。この様な場合には、前記静耐圧特性、接触抵抗特性の低下が見られ、真空バルブとしての遮断特性にも好ましくない影響を示している。すなわち前記したロウ付け工程を経た直後に認められた溝の存在など表面状態と前記ロウ付け工程を経た後の静耐圧特牲、接触抵抗特性のばらつきとが関連し、また遮断特性にも影響を与えたと推察された。
【0028】
更に、ロウ付け工程を経た直後の接点表面のCr粒子とCuマトリックスとの界面に見られた前記した連続状または不連続状に存在している溝の状態に対して、CuCr中のAl、Siの量とも密接に相関している傾向にあることが判明した。すなわち一定量範囲以内のAl、Si量の存在によって幅、連続の長さ、深さなど溝の状態が改善され、ロウ付け工程を経た直後の静耐圧特性、接触抵抗特性に好影響が見られている。
【0029】
以上の様に、上記したロウ付け工程を経た直後の接点表面のCr粒子とCuマトリックスとの界面に見られた前記した連続状または不連続状に存在する前記した溝の状態を所定範囲に制御する事が不可欠である。
【0030】
すなわち本発明の実施形態では、上述した様にロウ付け工程を経た直後のCuCr接点のCr粒子とCuマトリックスとの界面に生ずる連続状または不連続状に存在する溝の生成欠陥を抑制したCuCrとする。
【0031】
前記した溝の生成を制御する為に、原料粉として0.1〜150μmの粒子直径のCr粉を選択して製造し、CuCr中の0.1〜150μmの範囲にある粒子直径のCrを少なくとも90容積%とした上で、しかもそのCuCr合金は、ロウ付け温度として900℃の時の熱膨張率値α900 と50℃の時の熱膨張率値α50との差の、900℃の時の熱膨張率値α900 に対する比率[(α900 −α50)×100/(α900 )]が、0.8%以上12%以下の素材とすることによって、前記した溝の生成を抑制する。その結果ロウ付け工程を経た後でも、Cr粒子とCuマトリックスとの界面に生成する溝の生成を抑制し、静耐圧特性、接触抵抗特性の安定化、遮断特性の安定化に寄与する。更に上述した様にCuCr合金中のAl,Si量の制御も溝の生成の抑制に対して、効果を発揮する。
【0032】
なお、900℃の時の熱膨張率値α900 と50℃の時の熱膨張率値α50との差の、900℃の時の熱膨張率値α900 に対する比率[(α900 −α50)×100/(α900 )]が、12%を大きく越えるCuCr素材では、ロウ付け工程を経ることによって接点表面の荒れなどで静耐圧特性、接触抵抗特性、遮断特性の不安定化を招き好ましくない。
【0033】
また、上記Al、Si量が一定量以下(0.01%以下)では、上記溝の状態の改善が少なく、一定量範囲以上(1.0%以上)では、CuCr合金素材自体の機械的特性の変化で、逆に静耐圧特性、接触抵抗特性は低下傾向を示している。CuCr接点中のAl、Siの量のばらつきも前記した界面に見られた連続状または不連続状に存在した溝の状態に影響を与え、これらも一因となって、真空バルブとしての静耐圧特性、接触抵抗特性の安定化に対して不具合を示している。
【0034】
一方、有益な上記溝抑制手段を実施した上で、あらかじめCuマトリックス中のCr粒子の分散を均一化したり、Cuマトリックス中Cr、Al、Siなどの分散を均一化したCuCr合金では、前記ロウ付け工程を経た後の、Cr粒子とCuマトリックスとの界面に生成する溝の抑制に有益となる。
【0035】
例えば、Cuマトリックス中のCr粒子の分散を均一化したCuCr合金を得るには、75%Cu−25%Crの時には、25%Crとほぼ同量のCuとをあらかじめ混合(1次混合)し、得られた1次混合粉と残部Cuとを再度混合(2次混合)した原料粉を用いてCuCr合金とする。
【0036】
また、Cuマトリックス中Cr、Al、Si等の分散を均一化したCuCr合金を得る手段は、Al、Si、Fe、Bi、Te、Sbから選ばれた1つ以上の元素の所定量と、ほぼ同容積のCu,Ag,Crから選ばれた1つ以上の金属とをあらかじめ1次予備混合し、この1次予備混合した1次予備混合粉と残部のCu、Ag,Crとを十分混合する。
【0037】
このようにして混合した後、この混合粉を成型、焼結して得た接点素材を得る。
以上説明したように、CuCr合金の静耐圧特性、接触抵抗特性、遮断特性の安定化には、ロウ付け工程を経た直後の接点表面のCr粒子とCuマトリックスとの界面に見られる連続状または不連続状に存在する溝の制御する事が不可欠である。
【0038】
溝の制御の効果を、以下具体例によって説明する。
実際に試作した、実施例及び比較例の試作の条件を図1乃至図3に、またこれらの実施例及び比較例の評価結果を図4乃至図6に示す。なお、図4乃至図6における「熱膨張値の比率」は、900℃の時の熱膨張率値α900 と50℃の時の熱膨張率値α50との差の、900℃の時の熱膨張率値α900 に対する比率[(α900 −α50)×100/(α900 )]のことである。
【0039】
ここで、まず、これらの実施例及び比較例に係る接点の評価条件及び結果について説明する。接触抵抗特性、温度上昇特性、温度上昇特性及び遮断特性は、次の通りである。
【0040】
(a)接触抵抗特性
曲率半径5Rの純銅製の針状電極と平板状の各接点片とを、接触加重10Kgで対向させ、直流10Aを通電した時の両者間の電位降下から、接触抵抗を求めた。
【0041】
(b)温度上昇特性
各接点片を真空バルブに組み込んだ後、バルブ端子部の温度を、高感度赤外温度計を用いて表面温度を非接触的に測定した測定値から、室温を差し引いた後の数値をもって温度上昇特性とした。
【0042】
(c)遮断特性
遮断テストも実施した。遮断テストは、接点間ギャップ8mmに対向させた直径20mmの接点を、着脱可能な簡易型真空バルブに組み込み、ベーキング、電圧エージング等を与えた後、7.2KV、50Hzで1KAずつ電流を増加させながら遮断限界を調べた。
【0043】
なお、評価は、3本の簡易型真空バルブについて測定したもので、図4乃至図6では実施例5に示したCu−Cr接点のデータを1.0とした時の相対的な値で比較した。図中の各例は比較例8を除き、耐弧成分の粒径範囲を、0.1〜150μmの粒子を90容量%又はそれ以上含有する接点とした。
【0044】
次いで、実施するに当たっては、接点製造には、例えば溶浸法、固相焼結法、アークメルト法等、主として耐弧性成分量によって選択し適宜使用した。
例えば、固相焼結法を選択して本発明の実施例、比較例の接点を製造するには、Cu粉、Cr粉、Al粉の各々を所定の粒子範囲に調整する。
【0045】
Cr粉では、粒子径を0.1μm以下、0.1〜150μm、150μm以上に区分するとともに、特に比較例8を除いて、0.1〜150μmの粒子径のCr粉が90容量%となるように篩いわけなどで制御した。その理由は、粒子径が0.1μm以下では接点の微粉Crを均一分散させながら工業的規模で供給することは、接点製造コスト上、また品質管理上不利となるので、本発明の対象から除外する。また150μm以上では、接触抵抗値、温度上昇値がともに著しく上昇し好ましくない為である。
【0046】
これらの各々を均一に混合しCu・Cr混合粉、又はCu・Cr・Al混合粉を得る。次いでプレス機にてこの混合粉を成型し、成型体を得た後、例えば水素ガス、アルゴンガス、窒素ガスなどでは露点を−70℃程度又は真空雰囲気では真空度を1×10-3Pa.程度の雰囲気にて、850℃以上Cuの溶融点以下の焼結温度(Agの場合には800℃以上Agの溶融点以下の温度)で約1時間焼結し焼結体(供試接点素材)とした。
【0047】
なおプレス機にて混合粉を成型する時の圧力は8トン/cm2 以下とすることが好ましい。混合粉を8トン/cm2 以上で成型すると、型から取り出した時に成型体に亀裂が入りやすいのみならず、これ以上高い圧力で行うことは経済的にも好ましくない。
【0048】
必要によりこの過程を複数回繰り返し(上記成型、焼結を再度与える)、接点の相対密度を88%以上に調整し供試接点とした。その理由は、相対密度が88%未満では接点の耐消耗特性が著しく劣るとともに、接点素材中にガス成分が多く残存し耐電圧特性を害する為である。例えば、焼結温度、時間を適宜選択することによっても接点密度を調整し供試接点とした。密度が88%より低い時には、接点の対溶着性は、相対密度がほぼ100%の接点の1/3〜2/3程度に改善されるものの、接点の耐消耗性が、相対密度がほぼ100%の接点の1.3〜3.5倍程度に増加(特性が劣化)するとともに、耐電圧値も0.8〜0.4倍に低下(特性が劣化)する傾向にあり、更に800℃での銀ロウ付け処理を行った時、5mmの厚さの接点内部の空隙を貫通して接点表面層にまで銀ロウがしみ出てきて、耐電圧特性の一層の低下が見られる。従って、相対密度を88%以上とした接点を使用することによって後述する本発明の効果の発揮に有益である。
【0049】
また、溶浸法を選択した本発明の実施例の接点の製造は、特に実施例6、実施例39〜40、比較例3で示したCr量が例えば50%程度のCuCrの製造に有効である。Cu粉、Cr粉、Al粉の各々を所定の粒子範囲に調整する。まず必要により少量のCu粉を混合したCr粉、またはCr・Al粉を所定の粒子範囲に調整し、これを露点が−70℃程度の水素、アルゴン、窒素などの雰囲気で又は真空度が1×10-3Pa.程度の真空雰囲気にて、850℃以上Cuの溶融点以下の焼結温度(Agの場合には800℃以上Agの溶融点以下の温度)例えば950℃で約1時間仮焼結し、Cr、CrCu、CrAl、CrAlCu、CrAg、CrAlAg等の仮焼結体を得る。次いで、これら仮焼結体の残存空孔中にCu(導電成分がAgの場合にはAg)をCuの溶融点以上の温度例えば1150℃(導電成分がAgの場合にはAgの溶融点以上の温度例えば1000℃)で1時間溶浸させ供試接点とした。一部の接点では溶浸工程の後の冷却工程を凝固温度近傍から約650℃近傍の温度区間の冷却速度をCuマトリックス中に(導電成分がAgの場合にはAgマトリックス中に)Crが大量には固溶しないように制御しながら冷却し導電率を調整し供試接点とした。
【0050】
さらに、アークメルト法を選択した本発明の実施例の接点の製造は、ラバープレスしたCr粉、CuCr、CrAl、CuCrAl、CrAg等の混合粉を水素中で例えば800℃で約1時間仮焼結して得た仮焼結体、又はCu(又はAg)とCrとAlとを重ね合わせたCuCrAl合せ板を製造した後これを電極としアルゴン中で例えば2000Aでエレクトロンビーム溶解させながら水冷銅ルツボで凝固させ供試接点とした。
【0051】
又、溶融吹付け法を選択した本発明の実施例の接点の製造は、1〜10mm程度の厚さのCu板表面上に溶融Cu(又はAg)、溶融Cr、溶融Alを同時に又は溶融CuCrAl(又はAg)を吹付け凝固させて供試接点とした。
【0052】
さらに、直接溶融法を選択した本発明の実施例の接点の製造は、Cu(又はAg)板表面上に設置した固体状のCrAl混合体、Cu(又はAg)CrAl混合体に直接例えばエレクトロンビームを照射し、Cu板(又はAg)の一部又は全部とともに溶融しCuCrAl供試接点とした。
【0053】
供試するCr粉は、上記のようにCr粉単体でも良いが、実施例30〜38に示したように、その表面を予め0.01〜50μmの厚さのFe、Ni、Co、Ti、V、Nb、Ta、W、Mo等で被覆したものを使用することによって、混合過程でのCr粉の変質を軽減できる為、必要により適宜採用した。
【0054】
又、Al等第1の補助成分や、Bi等第2の補助成分の量は、Cu等の高導電性成分やCr等の耐弧性成分の量に比べて著しく微量な為、これらの混合には十分な管理の下で実施したが、より確実にする為にまず第1の補助成分や第2の補助成分の量とほぼ同量の高導電性成分や耐弧性成分とを1次混合し、得られた1次混合粉と残部の高導電性成分や耐弧性成分とを混合することが、均一分散混合に対して有効である為必要により適宜採用した。
【0055】
また、各製法によって得た接点に対しても更に非酸化性雰囲気中で少なくとも350℃の熱処理を追加することは、接点の硬さ、加工性、導電率等の調整に対して有益である為必要により適宜採用した。上記いずれの方法を選択しても900℃と50℃との熱膨張率比を所定範囲に制御した接点素材の効果を一層発揮させ発明の目的を達成するのに有益である。
各実施例及び比較例の評価結果は、以下の通りである。
【0056】
(実施例1〜3、比較例1)
接点素材の900℃の時の熱膨張率値α900 と50℃の時の熱膨張率値α50との差の900℃の時の熱膨張率値α900 に対する比率[(α900 −α50) ×100/(α900 )]値を所定値に制御することによって、諸特性に及ぼす効果を明らかにする為に、まず、70〜100μmの範囲の対弧成分Crの粒径のものが90容量%以上となるように篩選別し、Cu量を75%、Al量を0.05%とした上で、[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を、0.8〜35(%)の範囲に変化させた75%Cu−Cr−Al接点を製造した。この製造にあたっては、原料Cr粉中のAlの量を0.002%近傍〜0.1近傍に調製したCr粉を出発粉として適宜採用するとともに、上記[(α900 −α50)×100/(α900 )]値の制御に際しては、使用するCr粉に対して、0.1〜150μmの粒子径範囲の中での粒度分布、低温度での揮発性物質の添加とその量の調整、成型圧力、焼結(溶浸)温度、焼結時間、冷却速度等の調整を適宜実施した。なお、[(α900 −α50)×100/(α900 )]値が12%近傍のものを得るには、成型圧力、焼結温度を低目に設定すると容易に得られる。
【0057】
製造した接点を前記した着脱式の簡易型真空バルブに装着し、前記した温度上昇特性及び遮断特性を評価した。また組立て式の接触抵抗測定装置に半径5Rの純銅製の針状電極と平板状の各接点片とを装着し、接点間に接触加重10Kgで対向させ、直流10Aを通電した時の両者間の電位降下から求めた接触抵抗特性も評価した。その結果を図4に示す。
【0058】
標準試料とした実施例5の特性と比較して、接触抵抗特性、温度上昇特性、及び遮断特性において、[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を0.8%〜12%(実施例1〜3)とした時、後述する標準接点とした実施例5とほぼ同等の好ましい値の範囲にあった。しかし、[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を35%(比較例1)とした時には、諸特性が著しく低下した。
【0059】
従って、上述した実施結果から[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した時の効果は、0.8%〜12%の範囲とすることが好ましい。
【0060】
更に、銀ロウ接合処理後の接点、遮断テスト後の接点について、走査型電子顕微鏡により表面を観察すると、比較例1の接点では、Cr粒子とCuマトリックスとの間に、連続状又は不連続状の溝がCr粒子を取囲むように存在するのが観察され、特に遮断テスト後の接点では、その溝は幅が広くかつ深く、しかも溝はCr粒子の周囲を連続化した状態で存在している。更に溝の淵部は盛り上がりも見られ、接点面の平滑性をミクロ的に損なっている。この状態が図4に示した特性と関係しているものと考えられる。
【0061】
これに対して、実施例1〜3では、銀ロウ接合処理後の接点の溝は幅が狭くかつ溝の淵部は盛り上がりもなく平坦であり、好ましい表面状態を呈し、接触抵抗特性、温度上昇特性の安定化に寄与している。
【0062】
(実施例4〜6、比較例2〜3)
上述した実施例1〜3、比較例1では、CuCr中の導電成分Cuを75%、使用した耐弧成分Crの粒子直径を70〜100μm、第1補助成分としてAlを例として選択し、その量を0.05%とした時の[(α900 −α50)×100/(α900 )]値の効果を検討した結果を示した。
【0063】
ここでは、[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を2.5%とした上で、導電成分Cuの量を30〜95%の範囲とした時の調査結果を述べる。
導電成分Cuの量が75〜80%(実施例4〜5)では、接触抵抗特性、温度上昇特性、更に遮断特性において、標準接点とした実施例5の特性と比較して、好ましい特性を発揮した。なお実施例5は標準接点としている。更に40%(実施例6)においては、接触抵抗特性、温度上昇特性ともやや上昇の傾向は示すものの、ほぼ同等の好ましい特性を発揮した。
【0064】
これに対して、導電成分Cuの量が30%(比較例3)では、接触抵抗特性、温度上昇特性とも著しくばらつきの傾向を示すとともに、遮断特性が著しく低下し好ましくない特性を示している。
【0065】
従って、上述した結果から、Cu−Cr−Al接点中のCuの量は、40〜80%の範囲の接点において、本発明における[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した時の効果が発揮されることがわかった。
【0066】
なお、実施例6に示した40%Cu−Cr−Al接点は、所定比率のCu板とCr板とを複数組重ね合わせたCuCrを消耗電極としたアーク溶解法によっても製造供給して、固相焼結法、溶浸法によって各々製造した接点と比較したが、アーク溶解法による接点では特に耐消耗特性に、また固相焼結法による接点では特に耐溶融特性に、溶浸法よる接点では特に遮断特性に優位にある傾向を示したが、互いに許容範囲の特性を示し、本発明における第1の補助成分のAl又は/及びSiの添加効果を発揮させる製造方法として、いずれも実用上有益な製造方法であることがわかった。
【0067】
更に、内径50mmの水冷るつぼの中に、外径が約50mm、厚さ約6mmのCu板と、ほぼ75%Cu粉、0.1%Al粉、残部Crの比率となるように混合した混合粉を成型した直径50mm、厚さ約1mmの成型体とを重ねるようにして設置した後、Cu−Al−Cr成型体の表面に、エレクトロンビームを、下部に配置したCu板の表面一部が同時に溶融するようビーム深さ、ビームの焦点、照射時間、照射速度を調整しながら照射し溶融させて接点素材を得た。所定形状に加工後、同様の電気的評価に供したが、本発明における[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果が十分発揮され、標準試料とした実施例5の特性と比較して、接触抵抗特性、温度上昇特性及び遮断特性においてほぼ同等の好ましい値の範囲にあった。
【0068】
(実施例7〜9、比較例4〜5)
上述した実施例1〜6、比較例1〜3では、使用した耐弧成分Crの粒子直径を70〜100μmとした時の効果を示した。しかし、本発明ではこれに限ることなく粒子直径を所定範囲に変化させても効果があることが確認された。
【0069】
即ち、諸特性に及ぼす効果を明らかにする為に、まず、Cu量をほぼ75%と一定とし、第1補助成分としてAlを0.05%とした上で、耐弧成分Crの粒径を0.1μm以下、0.1〜150μm、150μm以上の範囲に変化させた75%Cu−Cr−Al接点を製造した。(実施例7〜9、比較例4〜5)。
【0070】
接点素材の製造にあたっては、原料Cr粉中のAlの量が少量の為、前記実施例の場合と同じ配慮をしたCr粉を出発粉として採用した。
製造した接点を前記した着脱式の簡易型真空バルブに装着し、前記した接触抵抗特性、温度上昇特性及び参考として遮断特性を評価した。その結果を図4に示す。
【0071】
図4から明らかなように、75%Cu−Cr−Al接点中で用いた耐弧成分Crの粒径が0.1μm以下(比較例4)では、標準試料とした実施例5の特性と比較して、接触抵抗特性、温度上昇特性とも好ましい範囲であったが、活性な性質を有する微粉を均一分散させながら工業的規模で供給することは、接点製造コスト上、また品質管理上不利となり本発明の対象から除外する。
【0072】
150μm以上(比較例5)では、標準試料とした実施例5の特性と比較して、接触抵抗値において平均値、最大値とも大きな増加とばらつきが見られた上、さらに温度上昇特性においても著しい特性低下が見られた。特に遮断テスト後の接点断面の金属顕微鏡的観察によると、150μm以上の巨大Cr粒子とCuとの界面が起点となった長く連続した亀裂が多数発生した。
【0073】
他の粒子直径のCrを使用した接点では、同じCr量であっても亀裂発生が少ないことがわかった。耐弧成分Crの粒径が0.1〜20μm、70〜150μm、100〜150μm(実施例7〜9)では、標準試料とした実施例5の特性とほぼ同等の好ましい範囲であった。
【0074】
従って、上述した結果から、本発明における[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果が十分発揮させるには、耐弧成分Crの粒径は0.1〜150μmの範囲の接点とするのが好ましい。
【0075】
(実施例10〜12、比較例6)
第1補助成分(Al量)が諸特性に及ぼす効果を明らかにする為に、まず、Cu量をほぼ75%とした上で、Al量を0.01〜4.5%の範囲に変化させた75%Cu−Cr−Al接点を製造した(実施例10〜12、比較例6)。製造にあたっては、原料Cr粉中のAlの量を0.002%近傍〜0.1%近傍に調製したCr粉を出発粉として適宜採用した。
【0076】
本発明の実施においては、実施例1〜40、比較例1〜5、7〜8(比較例6を除く)のように、Al量が0.01〜0.1%の如く、きわめて少量のAl量を含有させた接点を製造するには、目標とするAl量から原料Cr粉(出発粉)中のAlの量を差引いた量だけを、混合工程で追加する方法を採用した。
【0077】
また、具体的には、Al量が量的に極めて微量である為、Al量とほぼ同量(同容積)のCu、Crのいずれか1つを1次混合し(1次混合粉)、得られた1次混合粉とほぼ同量(同容積)のCuとを2次混合する(2次混合粉)方式によって均一混合粉を得た。このようにして得た均一混合粉の所定量とCu、Crとを十分混合後、例えば7トン/cm2 で成型し、真空中1000℃で焼結して75%Cu−Cr−Al接点素材を得た後、所定接点形状に加工し接点とした。
【0078】
一方、目標とするAl量が4.5%(比較例6)のように前記より多い時には、上記したような1次混合粉、2次混合粉を作っても良いが、必ずしもこの方法でなく、直接Cu、Cr、Al粉を混合する通常の方法でも目標成分量を得る。
【0079】
図4から明らかなように、接点中のAl量が0.01〜1.0%(実施例10〜12)では、標準試料とした実施例5の特性と比較して、接触抵抗特性、温度上昇特性、及び7.2KV、50Hzで1KAずつ電流を増加させながら調査した遮断特性においてほぼ同等の好ましい値の範囲にあった。
【0080】
しかし、接点中のAl量が、4.5%(比較例6)では、標準試料とした実施例5の特性と比較して、接触抵抗特性、温度上昇特性とも大きな増加とばらつきが見られ、さらに遮断特性において著しい劣化が見られた。
【0081】
従って、上述した結果から、[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果は、接点中のAl量が0.01〜1.0%(実施例10〜12)の範囲において、発揮されることがわかった。
【0082】
(実施例13〜15)
前記実施例10〜12では、Cu量をほぼ75%、使用した耐弧成分Crの粒子直径を70〜100μmとし、かつ[(α900 −α50)×100/(α900 )]値も2.5%と、一定とした上で、第1補助成分(Al量)の効果を検討し、Al量が0.01〜1.0%含有させたCuCrAl接点において、[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果が有効に示されることを示した。
【0083】
上記した[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果は、第1成分がAlの場合のみに発揮されるのはなく、Si、Si+Al、Feを含有した接点の場合(実施例13〜15)でも、標準とする実施例5と比較してほぼ同等の接触抵抗特性、温度上昇特性を発揮し、遮断特性も良好であった。
【0084】
(実施例16〜21、比較例7)
上記した実施例1〜15、比較例1〜6では、Cu(高導電成分)、Cr(耐弧成分)と第1補助成分(Al、Si、Fe)とで構成された接点合金について、[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果を示したが、本発明における[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果は、上記構成に限ることなく、更に第2補助成分を添加した接点材料に対しても有効であることがわかった。
【0085】
即ち、Bi、Te、Sb等耐溶着性を改善する第2補助成分を含有したCu−Cr−Al系接点においては、耐溶着性効果が発揮され、著しい向上が見られている。その上、図5に示した如く標準試料とした実施例5の特性と比較して、接触抵抗特性、温度上昇特性、及び遮断特性においてほぼ同等の好ましい値の範囲にあった(実施例16〜21)。
【0086】
しかし、第2補助成分の量が15%(比較例7)の時には、耐溶着性は良好であったが、標準試料とした実施例5の特性と比較して、高い接触抵抗値とその大きなばらつき幅を示すとともに、高い温度上昇値を示した。更に遮断特性の低下と耐電圧の著しい低下が見られ、本発明における[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果は消失し好ましくなかった。
【0087】
従って、第2補助成分の量は、その値を0.05〜5%とした時に、本発明における[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果が発揮される。
【0088】
(実施例22〜29)
上記した実施例1〜21ではCrを耐弧成分の代表材料として使用したが、本発明における[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果は、Crに限ることなく発揮される。
【0089】
即ち、Crに代替して99.9%Cr−Ti、95%Cr−Ti、50%Cr−Ti、95%Cr−V、95%Cr−Nb、95%Cr−Ta、95%Cr−Mo、95%Cr−Wにおいて、標準試料とした実施例5の特性と比較して、接触抵抗特性、温度上昇特性、及び遮断特性においてほぼ同等の好ましい値の範囲にあった(実施例22〜29)。
【0090】
(実施例30〜38)
上記した実施例1〜21ではCrを耐弧成分の代表材料として使用したが、本発明における[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果は、Cr又はCr合金に限ることなく発揮される。
【0091】
即ち、Cr表面にFe、Ni、Co、Ti、V、Nb、Ta、Mo、またはWを被覆したCrに代替しても、標準試料とした実施例5の特性と比較して、接触抵抗特性、温度上昇特性、及び遮断特性においてほぼ同等の好ましい値の範囲にあった(実施例30〜38)。
なお、被覆方法は電気メッキ法、スパッタリング、イオンプレーティング等通常の技術を利用した。
【0092】
(実施例39〜40)
上記した実施例1〜38ではCuを高導電成分の代表材料として使用した例について示したが、本発明における[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果は、これに限ることなく発揮される。
【0093】
即ち、高導電成分がAgであっても、標準試料とした実施例5の特性と比較して、接触抵抗特性、温度上昇特性、及び遮断特性においてほぼ同等の好ましい値の範囲にあった(実施例39〜40)。
【0094】
(比較例8)
上記した実施例1〜40では、Cr(CrTi合金、Ti被覆Cr)等の粒子直径を0.1μm〜150μmとした時に本発明における[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果が十分発揮されることを示した。接点合金中の全耐弧成分の粒子直径が0.1μm〜150μmのものが90容量%以下の時には、接触抵抗値と温度上昇特性及び遮断特性に著しいばらつきが見られ、前記した本発明における[(α900 −α50)×100/(α900 )]値を所定値に制御した効果は十分に発揮されない。
【0095】
(変形例1)
所定のCu板(Cu粉末、Cu薄板、Cu合金板、AgCu合金板など)と前記混合粉とを接触させて載置し、必要により加圧した後、この混合粉を前記Cu板とともに、非酸化性雰囲気中800℃以上CuまたはAgの溶融温度以下の温度範囲で焼結し、少なくとも一面に高導電成分層を持つ接点素材を得て、Cu板面を接合面とすることによって、銀ロウ付け性を改善するのに有益となる。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば接触抵抗特性と遮断特性に優れ安定した真空バルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る真空バルブの接点素材の実施例1〜12及び比較例1〜6の試作の条件を示す表図。
【図2】 本発明に係る真空バルブの接点素材の実施例13〜29及び比較例7の試作の条件を示す表図。
【図3】 本発明に係る真空バルブの接点素材の実施例30〜40及び比較例8の試作の条件を示す表図。
【図4】 本発明に係る真空バルブの接点素材の実施例1〜12及び比較例1〜6の評価結果を示す表図。
【図5】 本発明に係る真空バルブの接点素材の実施例13〜29及び比較例7の評価結果を示す表図。
【図6】 本発明に係る真空バルブの接点素材の実施例30〜40及び比較例8の評価結果を示す表図。
Claims (12)
- Cu,Agの少なくとも1種よりなる高導電性成分と、Crよりなり、粒子径が0.1〜150μmの範囲にある粒子が、粒子全体の少なくとも90容積%を占める耐弧性成分とからなる接点素材を備えた真空バルブに於いて、
前記接点素材は、900℃の時の熱膨張率値α900 と50℃の時の熱膨張率値α50との差の、900℃の時の熱膨張率値α900 に対する比率[(α900 −α50)×100/(α900 )]が、0.8%以上12%以下であることを特徴とした真空バルブ。 - Cu,Agの少なくとも1種よりなる高導電性成分と、Crよりなり、粒子径が0.1〜150μmの範囲にある粒子が、粒子全体の少なくとも90容積%を占める耐弧性成分とを各々均一に混合して高導電性粉末・耐弧性粉末混合粉を製造した後、この混合粉に対して、非酸化性雰囲気中での加熱処理によって相対密度を88%以上に調節した接点素材を備えた真空バルブに於いて、前記接点素材は、900℃の時の熱膨張率値α900 と50℃の時の熱膨張率値α50との差の、900℃の時の熱膨張率値α900 に対する比率[(α900 −α50)×100/(α900 )]が、0.8%以上12%以下であることを特徴とした真空バルブ。
- 前記接点素材は、高導電性成分としてCu又はAgの少なくとも1種の量を40〜80(重量)%、第1補助成分としてAl、Si、Feから選ばれた1つ以上の元素の量を0.01〜1.0%、残部の所定量が耐弧性成分としてCrを含有した高導電性粉末・耐弧性粉末・第1補助成分粉末混合粉で構成され、この混合粉を非酸化性雰囲気中で高導電性成分の溶融温度以上の温度、または800℃以上高導電性成分の溶融温度以下の温度但し高導電性成分の溶融温度が800℃以下の場合は高導電性成分の溶融温度以上の温度で加熱処理して得た接点素材であることを特徴とした請求項1または請求項2に記載の真空バルブ。
- 前記接点素材は、第2補助成分として0.05〜5%のBi、Te、Sbの1つを含有した高導電性粉末・耐弧性粉末・第2補助成分粉末混合粉または高導電性粉末・耐弧性粉末・第1補助成分粉末・第2補助成分粉末混合粉で構成され、この混合粉を非酸化性雰囲気中で高導電性成分の溶融温度以上の温度、または800℃以上高導電性成分の溶融温度以下の温度但し高導電性成分の溶融温度が800℃以下の場合は高導電性成分の溶融温度以上の温度で加熱処理して得た接点素材であることを特徴とした請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の真空バルブ。
- 前記接点素材は、前記混合粉に対して、混合粉自体の自重のみによる圧力以上8トン/cm2 以下の圧力を与えて成型体とした後、この成型体を非酸化性雰囲気中で高導電性成分の溶融温度以上の温度、または800℃以上高導電性成分の溶融温度以下の温度但し高導電性成分の溶融温度が800℃以下の場合は高導電性成分の溶融温度以上の温度で加熱処理して得た接点素材であることを特徴とした請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の真空バルブ。
- 前記接点素材は、Cuを含む材料と前記混合粉とを接触させて載置した後、この混合粉を前記Cuを含む材料と共に、非酸化性雰囲気中で800℃以上前記高導電性成分の溶融温度以下の温度但し高導電性成分の溶融温度が800℃以下の場合は高導電性成分の溶融温度以上の温度で焼結して得た少なくとも一面に高導電性成分層を持つ接点素材であることを特徴とした請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の真空バルブ。
- 前記接点素材は、前記Crの一部をCr量に対して、0.1%以上50%未満のTi、V、Nb、Ta、Mo、Wより選ばれた1つによって置換して得た接点素材であることを特徴とした請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の真空バルブ。
- 前記接点素材は、前記Crの表面を、厚さ0.01〜50μmのFe、Ni、Coより選ばれた1つで被覆して得た接点素材であることを特徴とした請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の真空バルブ。
- 前記接点素材は、前記Crの表面を、厚さ0.01〜50μmのTi、V、Nb、Ta、Mo、Wより選ばれた1つで被覆して得た接点素材であることを特徴とした請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の真空バルブ。
- 前記接点素材は、Al、Si、Feから選ばれた1つ以上の元素の所定量と、ほぼ同容量のCu、Ag、Crから選ばれた1つ以上の金属とを予め1次予備混合し、1次予備混合された1次予備混合粉と、残部の金属とを混合して混合粉を得た後、この混合粉を成型、焼結して得た接点素材であることを特徴とした請求項3乃至請求項9のいずれかに記載の真空バルブ。
- 前記接点素材は、Bi、Te、Sbから選ばれた1つ以上の元素の所定量と、ほぼ同容量のCu、Ag、Crから選ばれた1つ以上の金属とを予め1次予備混合し、1次予備混合された1次予備混合粉と、残部の金属とを混合して混合粉を得た後、この混合粉を成型、焼結して得た接点素材であることを特徴とした請求項4乃至請求項9のいずれかに記載の真空バルブ。
- 前記接点素材は、前記1次予備混合粉と、ほぼ同容量のCu、Ag、Crから選ばれた1つ以上の金属とを2次予備混合し、必要によりこの予備混合粉とほぼ同容量のCu、Ag、Crから選ばれた残部の金属とを混合して予備混合粉を得る混合作業を複数回繰り返し、得られた予備混合粉と残部の金属とを混合し、混合粉を得た後、この混合粉を成型、焼結して得た接点素材であることを特徴とした請求項10または請求項11に記載の真空バルブ。
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