JP2004273342A - 真空バルブ用接点材料及び真空バルブ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電成分と耐弧成分とを含有した接点材料を真空バルブに組み込み複数回開閉した後に、接点表面に新たに形成される変質層中の耐弧成分の平均粒径rと、変質層に隣接する層中の耐弧成分の平均粒径Rとの間に、0.001≦r/R≦1.0の関係が成立するような構成とする。例えば、接点材料を溶解法により製造して図の(b)に示すように、または通電面のみを一旦溶融させて図の(c)に示すように、変質層とそれに隣接する層の耐弧成分Crの平均粒子径の相違を小さくし、図の(a)に示すような亀裂が生じることをなくし、遮断特性と耐電圧特性を向上させることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空遮断器等に使用される真空バルブの接点材料に要求される特性の内、遮断性能と耐圧性能を向上させた真空バルブ用接点材料、及びこれを用いた真空バルブに関する。
【0002】
【従来の技術】
真空バルブ用接点材料に要求される特性としては、遮断特性、耐電圧特性、耐溶着特性に対する各性能で示される基本三要件と、この他に電気抵抗(バルク抵抗と接触抵抗)と温度上昇が低く安定していることが重要な要件となっている。
【0003】
しかしながら、これらの要件の中には相反するものがある関係上、単一の金属種によって全ての要件を満足させることは不可能である。このため、実用化されている多くの接点材料においては、不足する特性を相互に補えるような2種以上の物質、例えば導電成分と耐弧成分、を組合せて大電流用または高電圧用等のように特定の用途に合った接点材料の開発が行われ、ある程度優れた特性を有するものが開発されている。開閉器という使用目的から、高確率で電流の開閉が可能であることは言うまでもない。
【0004】
従来の発明でも、Louis Renner社からは「クロム銅接点材料成型品、その製造方法及びその使用方法」と題して出願され、公開されている(特許文献1参照)が、この出願では、通電面に高ネルギー放射線を幾何学的パターン状に放射することにより、微細構造をもつ領域を部分的に形成することを特徴としており、断面組織は、微細領域が楔状に分布しているために、微細領域部から接点が離脱し易い。
【0005】
またSiemens社からは「真空遮断器用接触子材料としての銅・クロム溶融合金の製造方法」と題して出願され、公開されている(特許文献2参照)が、この出願では、Cu−Crを溶解法で製造することを特徴としており、その表面を微細化することについては開示されていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−223075号公報(第3−4頁、図4−5)
【特許文献2】
特公平4−71970号公報(第3−4頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
真空バルブの遮断性能や耐電圧性能を充分に発揮させるには、通電面(正確には通電予定面)近傍の物性値、例えば、平均粒径、硬さ、熱膨張率等が接点全体(基材)の物性値と同等であることが好ましい。接点材料を真空バルブに組み込んだ後に、定格通電電流を流した状態で開閉した場合や、定格遮断電流を流した状態で遮断した場合に、通電面に形成される変質層の物性にバラツキが小さく、接点全体の材料物性との相違が小さいことが望ましい。
【0008】
従来の接点材料では、真空バルブに組み込んだ後の開閉により、通電面近傍に、接点基材と異なる層、即ち変質層が形成される。その変質層と接点基材で異なる材料物性としては、組成、組織(耐弧成分の粒径)、導電率、硬さなどがあり、特に耐弧成分の平均粒径については、1/1000以上も値が異なっていた。これらの相違により、両者の境界部(界面)で亀裂が進行して接点材の一部の脱落や移行が観察され、安定した遮断性能、耐電圧性能、通電性能が得られないことが多い。
【0009】
すなわち、図6の(a)に示すような一対の接点を複数回開閉すると、同図(b)に示すように、通電面近傍に、接点基材61と異なる層、即ち変質層62が形成される。このような接点を閉極すると同図(c)に示すように溶着し、これを開極したとき同図(d)に示すように変質層62と接点基材61の界面が破断起点となり、基材ごと引き外し突起63が生成され、安定した遮断性能、耐電圧性能、通電性能が得られない。
【0010】
本発明は、従来のこのような点に鑑みて為されたもので、真空遮断器等に使用される真空バルブの接点材料に要求される遮断、耐電圧、通電等の性能の安定性を向上させた真空バルブ用接点材料、及びこれを用いた真空バルブを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る真空バルブ用接点材料は、真空バルブに組み込まれた導電成分と耐弧成分とを含有した接点材料を複数回の電流遮断を行って接点表面に新たに形成される変質層中の耐弧成分の平均粒径rと、変質層に隣接する層中の耐弧成分の平均粒径Rとの間に、0.001≦r/R≦1.0の関係が成立することを特徴とする。
【0012】
このような構成の本発明によれば、変質層とそれに隣接する層(例えば基材)の材料物性、特に耐弧成分の粒子径を小さくすることにより、変質層とそれに隣接する層(例えば基材)の界面からの亀裂の発生を抑制させ、接点の脱落や移転を抑制し、安定な遮断性能や耐電圧性能が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
前述したように、真空バルブ用接点材料の性能、例えばCu−Cr接点の遮断性能や耐電圧性能を充分に発揮させるには、接点の通電面に形成される変質層とそれに隣接する層(例えば基材)の材料物性、特に耐弧成分Crの平均粒子径の相違が小さいことが必要である。ここで言う変質層とは、主に接点閉極時に流していた電流のエネルギーが開極により接点表面の一部が溶融されて形成された層であり、この変質層の特徴はCr粒子も一旦溶解している為に非常に微細な組織を有する点にある。
【0015】
本発明の特徴は、接点材料を真空バルブに組み込んだ後に接点を開閉することにより形成される変質層とそれに隣接する層(例えば基材)の材料物性の相違により発生する接点の脱落や移転による影響を低減下することにある。それを得る為の具体的手段としては、接点材料を溶解法により製造すること、あるいは所定形状に加工する前に通電面のみを一旦溶融させることが挙げられる。
【0016】
すなわち、従来は図1の(a)に示すように変質層と接点基材の耐弧成分の平均粒径の値が著しく異なっていたために両者の境界部(界面)で亀裂が生じることがあったが、接点材料を溶解法により製造することにより、図1の(b)に示すように変質層と接点基材の耐弧成分Crの平均粒子径の相違が小さくなり、また所定形状に加工する前に通電面のみを一旦溶融させることにより、図1の(c)に示すように変質層とそれに隣接する層の耐弧成分Crの平均粒子径の相違が小さくなる。
【0017】
なお本発明の主旨はCu−Cr接点に限るものではなく、その他の導電成分とその他の耐弧成分と必要により補助成分からなる接点材料についても適用可能である。
【0018】
本発明により、接点表面からの離脱や移行を抑制出来、遮断性能、耐電圧性能等を安定化させ、接点性能を向上させることを可能とした。
【0019】
以下、本発明を具体的実施態様に基づいて説明するが、はじめに、本発明の接点材料が適用される真空バルブの一実施形態の構成を、図2で説明する。
【0020】
図2において、1は遮断室を示し、この遮断室1は、絶縁材料によりほぼ円筒状に形成された絶縁容器2と、この両端に封着金具3a、3bを介して設けた金属性の蓋体4a、4bとで真空気密に構成されている。しかし、上記遮断室1内には、導電棒5、6の対向する端部に取り付けられた一対の電極7、8が配設され、上部の電極7を固定電極、下部の電極8を可動電極としている。また、この可動電極8の導電棒6には、ベローズ9が取り付けられ遮断室1内を真空気密に保持しながら電極8の軸方向の移動を可能にし、このベローズ9上部には金属性のアークシールド10が設けられ、ベローズ9がアーク蒸気で覆われることを防止している。11は、上記電極7、8を覆うようにして遮断室1内に設けられた金属性のアークシールドで、絶縁容器2がアーク蒸気で覆われることを防止している。さらに、電極8は、図3に拡大して示すように、導電棒6にロウ付け部12によって固定されるか、また、かしめによって圧着接続されている。接点13aは、電極8にロウ付け部14で固着されている。なお、図2における13bは固定側接点である。
【0021】
続いて図4〜5を基にして、本発明による真空バルブ用接点材料の製造方法の実施例の実施条件及び遮断特性と耐電圧特性の測定結果について述べる。
【0022】
(比較例1〜2、実施例1〜3)
比較例1では、固相焼結法でCu−50Cr接点を製造した。Cu粉末(平均粒径30μm)とCr粉末(平均粒径150μm)を重量比1:1となるように混合してφ60mmの坩堝に充填した後、10−3Paオーダの真空中で、1000℃×5時間の条件で焼結した。得られた焼結体をφ60mmの金型で10t/cm2で成形した後、再度同一条件で焼結し、Cu−50Cr合金を得た。
【0023】
このCu−Cr合金を所定の接点形状(φ50mm、t5mm)に加工した後、真空バルブに組み込んで遮断試験を実施した。遮断試験は、5kAから徐々に電流値を上げていく方法で最大遮断電流を測定した。また遮断試験後の接点について、耐電圧試験を実施した。耐電圧試験は、電極間隔を一定(約5mm)にして絶縁破壊電圧を100回測定し、その平均値を算出した。これらの比較例1の測定結果を基準とし、その他の測定結果は相対値で示した。
【0024】
なお図4〜5に示したrとRの比については、電気試験後の接点について、rとRを測定した後で算出した。その測定方法は、接点材料を通電面に垂直な方向に切断し、切断面を研摩した後に、光学顕微鏡または電子顕微鏡で断面写真を撮影し、変質層の耐弧成分の平均粒子径rとそれに隣接する層(通常は接点基材)の耐弧成分の平均粒子径Rを、断面写真から画像処理装置で測定した。rをRで除した値が、図4に示した0.0006である。
【0025】
実施例1では、Cu−50Cr合金を比較例1と同一工程で作製し、通電面に電子線を照射して(注入エネルギーは例えば1W/mm2)、CuとCrを溶融微細化させて所定形状に加工し(その際通電面には微細組織は存在)、遮断試験と耐電圧試験を実施した。電子線照射後のr/Rは0.007であり、遮断特性と耐電圧特性は比較例1のそれぞれ1.2倍と1.3倍であった。
【0026】
実施例2では、Cu−50Cr合金を比較例1と同一工程で作製して通電面を溶融させてCuとCrを微細化させた後所定形状に加工して、遮断試験と耐電圧試験の両試験を実施した。また実施例2では、試験用接点を真空バルブに組み込んだ後に、数百Aを通電させて150回開閉することにより溶融させた。r/Rは0.08であり、遮断特性と耐電圧特性は、比較例1の1.2倍と1.1倍であった。
【0027】
実施例3ではレーザ照射(注入エネルギーは例えば2W/mm2)により溶融させた。r/Rは0.9であり、遮断特性と耐電圧特性は、比較例1の1.1倍と1.0倍であった。
【0028】
比較例2では、Cu−50Cr合金を比較例1と同一工程で作製して所定形状に加工する前に、レーザ照射後の冷却速度を実施例3よりも高めたところ、レーザ照射部が極端に高硬度な層が形成された為に、電気試験後の変質層よりもCrの平均粒径が小さく、r/Rは1.2であり変質層とレーザ照射部との界面に亀裂が観察された。遮断特性と耐電圧特性は、比較例1の1.0倍と0.9倍であった。
【0029】
以上のように、接点材料を所定形状に機械加工する前に、通電面を非酸化性雰囲気で溶融させ、rとRの比は、0.001≦r/R≦1.0とすることが好ましい。すなわち、接点材料を真空バルブに組み込む前に表面近傍を予め溶融させておくことにより、変質層とそれに隣接する層の材料物性の相違が小さくなり、安定な遮断性能や耐電圧性能が得られる。
【0030】
(比較例3〜4、実施例4〜5)
比較例3〜4と実施例4〜5では、水素雰囲気中の固相焼結法で作製したCu−40Cr合金を所定形状に加工する前に、通電面を溶融する際の注入エネルギーを調整して、溶融深さをパラメータとした。なお、エネルギーは、Cu−40Crにアークを発生させることにより注入した。
【0031】
比較例3では、表面からの溶融深さは約0.0008mmであり、遮断特性、耐電圧特性ともに比較例1とほぼ同等であった。
【0032】
実施例4と実施例5では、溶融深さはそれぞれ、0.002mmと1.5mmであり、遮断特性と耐電圧特性は、比較例1の1.1〜1.2倍であり、若干向上した。
【0033】
比較例4では、溶融深さは2.2mmで、接点厚さの半分程度であり、真空バルブの組立て中に、接点側面に割れが発生したので、試験を中止した。この割れは溶融微細層と基材の材料物性(硬度、熱膨張率等)の差により発生したと考えられる。
【0034】
以上のように、接点材料の通電面を溶融させる際、その溶融させる領域は接点表面から0.001mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0035】
(比較例5、実施例6〜7)
比較例5と実施例6〜7では、焼結溶浸法でCu−55Cr合金を作製し、所定形状に加工する前に、通電面を溶融する際の電子線の注入エネルギーと凝固する際の冷却速度を調整して、微細層中(溶融層中)のCr粒子の粒径をパラメータとした。Cu−55Cr合金は、Cr粉末を加圧成形した後、真空雰囲気中で、1150℃×1時間の条件で焼結して製造したCrスケルトンと溶浸材Cuを坩堝内で上下に配置し、真空雰囲気中で1150℃に加熱し、導電成分であるCuを溶浸させることにより作製した。
【0036】
比較例5では、Cr粒子径が約70μm、r/Rは0.0008であり、遮断特性と耐電圧特性は、比較例1のそれぞれ0.9倍と1.1倍であった。
【0037】
実施例6では、Cr粒子径が約40μm、r/Rは0.009であり、遮断特性と耐電圧特性は、比較例1のそれぞれ1.1倍と1.2倍であった。
【0038】
実施例7では、Cr粒子径が約10μm、r/Rは0.1であり、遮断特性と耐電圧特性は、比較例1のそれぞれ1.2倍と1.3倍であった。
【0039】
以上のように、接点材料の通電面を溶融させた後に、CuとCrが二相分離しない程度の速度で急冷凝固させ、溶融層の耐弧成分の平均粒子径を50μm以下に微細化させることが好ましい。
【0040】
(比較例6〜7、実施例8〜9)
前記比較例1〜6と実施例1〜7では、焼結温度を1000℃と1150℃の2通り、即ち導電成分Cuの融点(1083℃)を基準にして±90℃以内の温度で焼結している事例について述べたが、本発明の主旨はこれに限るものではない。
【0041】
比較例6、実施例8〜9、比較例7では、焼結温度をそれぞれ900℃、950℃、1200℃、1300℃で、Cu−25Cr合金を製造した。この内1200℃で焼結した実施例9では液相焼結のために、元来のCr粒子の周囲に微細なCr粒子が再溶出していた。また1300℃で焼結した比較例7では、CuとCrが分離してしまったので、接点の電気評価に値しないと判断した。残りの2種類のCu−25Cr合金については、所定形状に加工する前に、通電面をイオンビームの照射により溶融させた。
【0042】
比較例6では、r/Rが0.1であったが、遮断特性と耐電圧特性は、比較例1のそれぞれ0.9倍と1.0倍であり、向上されなかった。これは焼結温度が低い為に、焼結が進まず、基材の密度が低かった(相対密度85%)からである。
【0043】
実施例8では、r/Rが0.3であり、遮断特性と耐電圧特性は、比較例1のそれぞれ1.1倍と1.0倍であった。
【0044】
実施例9では、r/Rが0.5であり、遮断特性と耐電圧特性は、比較例1のそれぞれ1.2倍と1.1倍であった。
【0045】
以上のように、接点材料は、非酸化性雰囲気で焼結法で製造し、焼結温度は導電成分の溶融温度を基準にして±150℃以内であることが好ましい。
【0046】
(実施例10〜11)
前記比較例2〜8と実施例1〜9では、Cu−Cr合金を所定形状に加工する前に、通電面を溶融させた事例について述べたが、本発明の主旨はこれに限るものではなく、実施例10〜11では、接点全体を溶解法で製造することにより、基材を10μm以下に微細化させ、r/Rを0.1〜0.5にし、接点特性を向上させている。
【0047】
実施例10では、アーク溶解法で製造したCu−20Cr合金を所定形状に加工して電気試験を実施した結果、r/Rが0.1であり、遮断特性と耐電圧特性は、比較例1のそれぞれ1.3倍と1.2倍であった。
【0048】
実施例11では、誘導溶解炉で製造したCu−10Cr合金を所定形状に加工して電気試験を実施した結果、r/Rが0.5であり、遮断特性と耐電圧特性は、比較例1のそれぞれ1.2倍と1.1倍であった。
【0049】
以上のように、溶解法で接点材料を製造する場合、接点材料は、非酸化性雰囲気で溶解して、CuとCrが二相分離しない程度の速度で急冷凝固させて製造し、耐弧成分の平均粒子径を10μm以下に微細化させることが好ましい。溶解法で接点材料を製造することにより、変質層と基材の材料物性の相異を小さく出来、変質層と基材の界面からの亀裂の発生を抑制させ、接点の脱落や移転を抑制し、安定な遮断性能や耐電圧性能が得られる。
【0050】
(実施例12〜17)
前記比較例1〜7と実施例1〜11では、耐弧成分がCrで、導電成分がCuである接点材料の事例について述べたが、本発明の主旨はこれに限るものではない。
【0051】
実施例12では、耐弧成分をWとし導電成分をCuとしたCu−20wt%W接点を、通電面を溶融させた後、所定形状に加工して作製し、遮断特性と耐電圧特性を評価した結果、最大遮断電流と絶縁破壊電圧は、加工前の処理工程(通電面の溶融工程)を経ていない通常の固相焼結法で製造した時のCu−W接点の、それぞれ1.2倍と1.1倍であった。
【0052】
実施例13〜15では、耐弧成分をそれぞれNb、WC、Cr+Wとし、導電成分をCuとして、固相焼結または液相焼結、接点材料を製造して遮断特性と耐電圧特性を評価した結果、遮断特性は、実施例13〜15全て、通電面溶融工程を経ていない通常の固相焼結法で製造した時の接点の1.2倍であり、耐電圧特性は1.1倍であった。
【0053】
実施例16〜17では、導電成分をそれぞれAg、Ag+Cu(重量比で、Ag:Cu=1:1)とし、耐弧成分をWCとして、実施例13と同様な条件で、接点材料を製造して電気特性を評価した結果、遮断特性は、実施例16、実施例17共に、通電面溶融工程を経ていない通常の焼結溶浸法で製造した時の接点の1.3倍であり、耐電圧特性は1.2倍であった。
【0054】
(実施例18〜20)
前記比較例1〜9と実施例1〜17では、導電成分と耐弧成分で構成される接点材料の事例について述べたが、本発明の主旨はこれに限るものではない。
【0055】
実施例18〜20では、補助成分としてそれぞれBi、Te、Te+Seとし、実施例12と同様な条件で、接点材料を製造して電気特性を評価した結果、遮断特性は、実施例18〜20全て、通電面の溶融工程を経ていない通常の固相焼結法で製造した時の接点の1.2倍であり、耐電圧特性は1.1倍であった。
【0056】
以上の結果が示すように、本発明によって真空バルブ用接点材料の遮断特性と耐電圧特性を向上させることが可能となる。
【0057】
(その他の実施例)
なお、耐弧成分については、発明実施の形態では、Cr、W、Nb、WC、Cr+Wでの記載しかないが、Cr、W、Nb、Ta、Ti、Mo及びこれらの炭化物の内の少なくとも1つを副耐弧成分として使用しても、同様の効果が得られる。
【0058】
また導電成分については、発明実施の形態では、Cu、Ag、Ag+Cuでの記載しかないが、CuまたはAgを主成分とするならば、同様の効果が得られる。
【0059】
さらに補助成分については、発明実施の形態では、Bi、Te、Te+Seとした場合のみ記載しているが、Bi、Te、Se、Sb、Coの内の少なくとも1つを補助成分としても、同様の効果が得られる。なお、接点材料の補助成分の含有率の合計量は5wt%以下であることが好ましい。
【0060】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、遮断特性と耐電圧特性を向上させた真空バルブ用接点材料及び真空バルブを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を従来技術と比較して、その相違を説明するための図。
【図2】本発明の接点材料が適用される真空バルブの一実施形態の構成を示す断面図。
【図3】図2の接点部の拡大断面図。
【図4】本発明の実施例1〜7および比較例1〜5の実施条件及び試験結果を示す表図。
【図5】本発明の実施例8〜20および比較例6〜7の実施条件及び試験結果を示す表図。
【図6】真空バルブが複数回開閉した時の接点の突起発生メカニズムを示す図。
【符号の説明】
1…遮断室
2…絶縁容器
3a、3b…封着金具
4a、4b…蓋体
5、6…導電棒
7…固定電極
8…可動電極
9…ベローズ
10、11…アークシールド
12、14…ロウ付け部
13a…可動側接点
13b…固定側接点
Claims (11)
- 真空バルブに組み込まれた導電成分と耐弧成分とを含有した接点材料を複数回の電流遮断を行って接点表面に新たに形成される変質層中の耐弧成分の平均粒径rと、変質層に隣接する層中の耐弧成分の平均粒径Rとの間に、0.001≦r/R≦1.0の関係が成立することを特徴とする真空バルブ用接点材料。
- 真空バルブに組み込まれる前記接点材料の通電面を非酸化性雰囲気で溶融させたことを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ用接点材料。
- 前記接点材料の通電面を溶融させる領域は接点表面から0.001mm以上2mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空バルブ用接点材料。
- 前記接点材料の通電面を溶融させた後に、CuとCrが二相分離しないように急冷凝固させ、溶融層の耐弧成分の平均粒子径を50μm以下にしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の真空バルブ用接点材料。
- 前記接点材料は、非酸化性雰囲気で焼結法で製造し、焼結温度は導電成分の溶融温度を基準にして±150℃以内であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の真空バルブ用接点材料。
- 前記接点材料は、非酸化性雰囲気中で溶解させた後に、CuとCrが二相分離しないように急冷凝固させる方法で製造し、耐弧成分の平均粒子径を10μm以下にしたことを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ用接点材料。
- 前記接点材料の耐弧成分は、Cr、W、Nb、Ta、Ti、Mo及びこれらの炭化物の内の少なくとも1種類を含有したことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の真空バルブ用接点材料。
- 前記接点材料の導電成分は、少なくともCuまたはAgのどちらか一方を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の真空バルブ用接点材料。
- 前記接点材料は補助成分として、Bi、Te、Se、Sb、Coの内の少なくとも1種類を含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の真空バルブ用接点材料。
- 前記接点材料の補助成分の含有率の合計量が5wt%以下であることを特徴とする請求項9に記載の真空バルブ用接点材料。
- 請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の真空バルブ用接点材料を用いたことを特徴とする真空バルブ。
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Cited By (3)
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