JP2011108380A - 真空バルブ用電気接点およびそれを用いた真空遮断器 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、溶着引離し力が小さく、優れた通電性能,遮断性能を有する電気接点を提供することにある。
【解決手段】クロム,銅、およびテルルを含み、銅マトリックス中にクロムと銅とテルルからなる金属間化合物およびクロムが分散した組織を有する電気接点であって、該金属間化合物が銅マトリックスの結晶粒内および粒界、並びにクロムと銅の界面に存在することを特徴とする電気接点。
【選択図】 図1
【解決手段】クロム,銅、およびテルルを含み、銅マトリックス中にクロムと銅とテルルからなる金属間化合物およびクロムが分散した組織を有する電気接点であって、該金属間化合物が銅マトリックスの結晶粒内および粒界、並びにクロムと銅の界面に存在することを特徴とする電気接点。
【選択図】 図1
Description
本発明は、真空遮断器,真空開閉器等に用いられる新規な真空バルブ用電気接点に関する。
真空遮断器等の受配電機器には、小型・低価格化が求められている。そのためには真空バルブ内の電気接点を低強度化し、ジュール熱により電気接点同士が溶着した際の引離し力を低減することによって、電気接点の開閉動作を行う操作機構部を小型化する必要がある。電気接点の多くはCr−Cu系の焼結合金が用いられ、これを低強度化させる手段として、Teなどの低融点金属を添加する方法が用いられる。
低融点金属は耐溶着成分として、あるいは電流遮断後の接点表面の荒れを抑制するために添加され、数重量%の添加量が必要である。
数重量%の低融点金属を添加すると、通電成分であるCuマトリクスに欠陥が生じたり、焼結が不十分となるなど、電気接点に良好な通電性能や遮断性能が得られない場合がある。
また、真空バルブを真空封止ろう付けして製作する場合、電気接点から低融点金属が揮散してろう付け部の健全性を損ない、真空バルブ内の真空度低下を招く恐れがある。
さらに、低融点金属添加量が適正量に対して少ない場合には、電気接点の低強度化が十分でなく、引離し力の低減効果が不足する場合がある。
本発明の目的は、溶着引離し力が小さく、優れた通電性能,遮断性能を有する電気接点を提供することにある。
上記課題を解決する本発明は、CrとCuを主成分とし、Cuマトリックス中にCrが分散した組織を有する電気接点であって、さらにCuマトリックス中に金属間化合物を分散させたものである。特に、金属間化合物が、Cuマトリックスの結晶粒内,粒界,CrとCuの界面に存在することを特徴とする。金属間化合物はCrとCuとTeからなる三元系化合物である。Crの含有量が18〜45体積%であることが好ましい。また、金属間化合物の含有量が0.02〜2.0体積%であることが好ましい。特に、金属間化合物としてCr2CuTe4,Cr4Cu2Te7のいずれか、もしくは両方を含む。
また、上記課題を解決する本発明は、Crの粉末と、Cuの粉末と、CrとCuとTeからなる三元系化合物よりなる金属間化合物の粉末を混合し、加圧成形し、Cuの融点以下の温度で加熱焼結することを特徴とする電気接点の製造方法にある。前記Cr粉末の粒径が104μm以下、前記Cu粉末および前記金属間化合物粉末の粒径が61μm以下の粉末を用いることが好ましい。
また、金属間化合物の粉末は、CrとCuとTeの粉末を混合し、もしくはCu2TeとCr2Te3の粉末を混合したのち、加圧成形し、金属間化合物の融点以下の温度で加熱し、粉砕することにより得られる。混合粉末の加熱は真空中,不活性雰囲気中または還元性雰囲気中で行う。
上記の構成によれば、溶着引離し力が小さく、優れた通電性能,遮断性能を有する電気接点を提供できる。
真空遮断器は、真空バルブ内の固定側電極及び可動側電極の各々に接続された導体端子と、可動側電極を駆動する開閉手段とを備える。また、真空開閉機器は、真空バルブを導体によって直列に複数接続し、可動側電極を駆動する開閉手段を備えたものである。真空バルブは、真空容器内に一対の固定側電極及び可動側電極とを備える。この固定側電極及び可動側電極の少なくとも一方に、本発明の構成を用いることができる。
真空遮断器用の電極は、円板形状をなし、円板形状の円中心に形成された中心孔と、この中心孔に対して非接触で円中心から外周部に向かって形成された複数本の貫通したスリット溝とを有し、円板形状部材のアーク発生面の反対面に一体に接合された電極棒を有する。前記の円板形状部材(電気接点)に優れた通電性能,遮断性能を有する材料を用いることで、真空遮断器,真空開閉機器等の機器の小型化が可能となる。
本発明者らは、低融点金属を添加したCr−Cu焼結電気接点における強度低減機構が、焼結材組織中のCr粒子とCuマトリクスとの界面における脆化層の形成であることを見出した。すなわち、低融点金属は焼結過程において溶融し、Cr粉末とCu粉末の間に移動した後、CrとCuと低融点金属成分からなる三元系の金属間化合物を形成する。この金属間化合物の機械的特性(破壊靱性値KIC)を測定した結果、焼結材中のCr粒子の約1/2以下の値であった。破壊靱性値KICは、破壊に対する抵抗を示す特性値で、値が小さいほどき裂が進展しやすく、脆性であることを表わす。したがって、Cr粒子とCuマトリックスの界面に形成された脆性の金属間化合物層がCrとCuの界面強度を低下させ、破壊の進展を促進し、焼結材強度を低減したものと考えられる。このことから、焼結電気接点の強度低減には、組織中に金属間化合物を分散させることが有効であるとの知見を得た。
この知見を基に、CrとCu、および金属間化合物からなり、Cuマトリックス中にCrおよび金属間化合物が分散した組織を有する電気接点とした。この金属間化合物はCrとCuの界面のみならず、Cuマトリックスの結晶粒内および粒界にも存在するものである。脆性の金属間化合物がCr粒子とCuマトリックスの界面だけでなく、延性のCuマトリックス中にも存在することによって、Cuの伸び変形を抑制して脆性破壊を促進し、溶着した電気接点同士を引離す力を小さくすることができる。また、一般に毒性を有する低融点金属を用いずに上記効果が得られるため、環境負荷を小さくできる。さらに、金属間化合物を用いたことで、焼結過程の加熱や電流遮断時のアーク加熱によっても低融点金属の揮散減少が生じないため、強度低減効果の劣化や真空度低下に伴う耐電圧性能低下を防止できる。
この金属間化合物はCrとCuとTeからなる三元系化合物であり、Cr2CuTe4,Cr4Cu2Te7のうちのいずれか1種または2種以上からなるものである。金属間化合物をこれらの元素により構成することで、電気接点中に含んでも電流遮断性能に悪影響を及ぼすことなく、脆性破壊の起点を電気接点中に形成することができる。
Crの含有量は18〜45体積%、金属間化合物の含有量は好ましくは0.02〜2.0体積%の範囲にあることが望ましい。Cr量がこれより少ないと耐電圧性能が低下し、これより多いと通電性能が低下するとともに焼結性が低下して緻密な電気接点の製造が困難になり、十分な遮断性能が得られない。金属間化合物がこれより少ないと強度低減効果が不足し、これより多いと導電率が低下するとともに、接触抵抗が大きくなり溶着面積が増す傾向となるため、溶着引離し性を向上させる効果が小さい。また、金属間化合物が多いと有害なTeの絶対量が多くなり、Te単体に替えて金属間化合物を添加することの利点がなくなる。
電気接点の製造方法は、前記のCrの粉末と、Cuの粉末と、金属間化合物の粉末とを混合し、この混合粉末を加圧成形した後、Cuの融点以下の温度で加熱焼結するもので、比較的容易に低コストで製造することが可能になる。混合粉末の加圧成形は、最終形状の金型を用いて成形することにより、加熱焼結後に機械加工を用いることなく、最終形状の電気接点を製造することができる。
この金属間化合物の粉末は、CrとCuとTeの粉末を化学量論組成比に混合し、加圧成形し、金属間化合物の融点以下の温度で加熱合成したのち、粉砕するか、あるいはCu2TeとCr2Te3の粉末を化学量論組成比に混合し、加圧成形し、金属間化合物の融点以下の温度で加熱合成したのち、粉砕することによって得られる。これらの方法により、所望の金属間化合物成分が比較的容易に得られ、粉砕の程度によって粒度を調整することができる。
以上の電気接点を得るための加熱焼結、あるいは金属間化合物を得るための加熱合成は、真空中,不活性雰囲気中または還元性雰囲気中で行うことにより、加熱中の酸化を防止して真空バルブを高真空に保つとともに、所望の電気接点組成あるいは金属間化合物組成を得ることができる。
また、電気接点を得るために用いる原料粉末の粒径は、Cr粉末が104μm以下、Cu粉末および金属間化合物粉末が61μm以下とすることが望ましい。それぞれの粒径がこの値より大きいと、焼結後の組織の均一性が低下し、電流遮断時における接点面においてCuが溶出し、溶着が発生しやすくなり、あるいは金属間化合物による強度低減効果が不安定となる。
上記の電気接点を用いた電極は、円板形状をなし、この円板形状の円中心に形成された中心孔と、この中心孔に対して非接触で円中心から外周部に向かって形成された複数本の貫通したスリット溝とを有し、さらに円板形状部材のアーク発生面の反対面に一体に接合された電極棒を有するもので、円板形状部材が上記の電気接点からなることにより、遮断性能に優れ、溶着引離し力の小さい所望の性能を有する電極が得られる。
真空バルブは、真空容器内に一対の固定側電極及び可動側電極を備え、その少なくとも一方が、上記の電気接点を用いた電極からなるものである。また、真空遮断器は、真空バルブ内の固定側電極及び可動側電極の各々に接続された導体端子と、可動側電極を駆動する開閉手段とを備えたものである。さらに、真空開閉機器は、真空バルブを導体によって直列に複数接続し、可動側電極を駆動する開閉手段を備えたものである。これにより、優れた遮断性能や通電性能を有し、電気接点同士が溶着した際の引離し力が小さく、操作機構部を小型化することができ、小型で低価格の真空遮断器、さらには各種真空開閉装置が得られる。
以下、発明を実施するための最良の形態を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例では、表1に示す組成の電気接点1の素材となる焼結体を作製した。
電気接点1の作製方法について説明する。まず、三元系金属間化合物の粉末を作製した。本実施例ではCu2TeとCr2Te3の粉末(いずれも粒径10μm以下)を、組成が48.2Cu2Te−51.8Cr2Te3(重量%)となるように乳鉢で混合し、金型に充填して294MPaの圧力で加圧成形した後、真空中で800℃×1時間加熱してCr2CuTe4を合成した。これを乳鉢を用いて粉砕し、粒径が50μm以下のCr2CuTe4粉末を作製した。次に、粒径が80μm以下のCr粉末と、粒径60μm以下のCu粉末と、上記Cr2CuTe4粉末とを、表1に示す組成でV型混合器により混合し、この混合粉末を金型に充填して294MPaの圧力で加圧成形した。成形体の相対密度は、およそ74%であった。これを真空中で1060℃×2時間加熱して焼結し、電気接点1の素材となる焼結体を作製した。得られた焼結体の相対密度は、およそ96%であった。
〔比較例1〕
比較例として、Teを単体で添加した従来材であるCr−Cu−Te焼結体を、次の方法により作製した。粒径が80μm以下のCr粉末と、粒径60μm以下のCu粉末と、粒径45μm以下のTe粉末とを、表1(No.11)に示す組成で乳鉢およびV型混合器により混合し、この混合粉末を実施例1と同様の方法で加圧成形後、加熱して焼結体を作製した。成形体および焼結体の相対密度は、いずれも実施例1と同等であった。
比較例として、Teを単体で添加した従来材であるCr−Cu−Te焼結体を、次の方法により作製した。粒径が80μm以下のCr粉末と、粒径60μm以下のCu粉末と、粒径45μm以下のTe粉末とを、表1(No.11)に示す組成で乳鉢およびV型混合器により混合し、この混合粉末を実施例1と同様の方法で加圧成形後、加熱して焼結体を作製した。成形体および焼結体の相対密度は、いずれも実施例1と同等であった。
実施例1,比較例1で得られた焼結体の電気的特性として、導電率を測定した結果を表1に併せて示す。導電率は渦電流式測定器を用いて測定し、焼きなまし純銅の導電率を100%とした相対値(IACS%)で表わした。表1に示すように、導電率にはCrの含有量が大きく影響し、Crが多いほど導電率は小さくなる。これに対し、金属間化合物の添加量による影響は小さく、Cr量が23体積%の場合、導電率(IACS)は45%前後でTeを添加した場合(No.11)と同程度の値となるが、金属間化合物が多くなると導電率は小さくなる傾向にある。
また、得られた焼結体の断面を研磨し、走査電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分析装置を用いて、断面組織中における金属間化合物の存在箇所を観察した結果を表1に併せて示す。金属間化合物を添加した場合には(No.11を除く全て)、金属間化合物はCr粒子とCuマトリックスの界面のみならず、Cuマトリックス中(結晶粒内および結晶粒界)にも均一に分散していた。この傾向は、Cr含有量や金属間化合物の添加量に関わらず、同様であった。一方、Teを添加したNo.11の場合には、Cr粒子とCuマトリックスの界面にはCr−Cu−Te系の金属間化合物が存在していたが、Cuマトリックス中には単体Teが部分的に存在するものの、金属間化合物は見られなかった。これは、Cr粒子とCuマトリックスの界面においてのみ、CrとCuとTeが共存し、金属間化合物を生成し得るためであり、Teを単体で添加した場合には金属間化合物はCuマトリックス中には存在しないことが明らかとなった。
図1は電極の構造を示す断面図である。図1において、1は電気接点、2はアークに駆動力を与えるためのスリット溝、3はステンレス製の補強板,4は電極棒,5はろう材、44は電気接点1の中央にアークが発生して停滞するのを防ぐための中央孔である。
実施例1で得られた焼結体を機械加工し、図1に示す形状の電気接点1を作製した。なお、スリット溝2および中央孔44を有する最終形状を形作ることのできる金型に混合粉末を充填し、焼結する方法によっても電気接点1を得ることができ、この方法では機械加工などの後加工が不要であるため、容易に製作が可能である。
電極の作製方法は次の通りである。電極棒4を無酸素銅で、また、補強板3をSUS304であらかじめ機械加工により作製しておき、前記の焼結および機械加工で得られた電気接点1,補強板3,電極棒4それぞれの間にろう材5を載置し、これを8.2×10-4Pa以下の真空中で970℃×10分間加熱し、図1に示す電極を作製した。この電極は定格電圧7.2kV,定格電流600A,定格遮断電流20kA用の真空バルブに用いられる電極である。なお、電気接点1の強度が十分であれば、補強板3は省いてもよい。
実施例2で作製した電極を用いて、真空バルブを作製した。真空バルブの仕様は,定格電圧7.2kV,定格電流600A,定格遮断電流20kAである。
図2は、本実施例に関わる真空バルブの構造を示す図である。図2において、1a,1bはそれぞれ固定側電気接点,可動側電気接点、3a,3bは補強板、4a,4bはそれぞれ固定側電極棒,可動側電極棒で、これらをもってそれぞれ固定側電極6a,可動側電極6bを構成する。なお、本実施例では、固定側と可動側の電気接点の溝が接触面において一致するように設置した。可動側電極6bは、遮断時の金属蒸気等の飛散を防ぐ可動側シールド8を介して可動側ホルダー12にろう付け接合される。これらは、固定側端板9a,可動側端板9b、及び絶縁筒13によって高真空にろう付け封止され、固定側電極6a及び可動側ホルダー12のネジ部をもって外部導体と接続される。絶縁筒13の内面には、遮断時の金属蒸気等の飛散を防ぐシールド7が設けられ、また、可動側端板9bと可動側ホルダー12の間には摺動部分を支えるためのガイド11が設けられる。可動側シールド8と可動側端板9bの間にはベローズ10が設けられ、真空バルブ内を真空に保ったまま可動側ホルダー12を上下させ、固定側電極6aと可動側電極6bを開閉させることができる。
このように、実施例2で作製した電気接点を図2に示す電気接点1a,1bに用いて、真空バルブを作製した。
実施例3で作製した真空バルブを搭載した真空遮断器を作製した。図3は、真空バルブ14とその操作機構を示す真空遮断器の構成図である。
真空遮断器は、操作機構部を前面に配置し、背面に真空バルブ14を支持する3相一括型の3組のエポキシ筒15を配置した構造である。真空バルブ14は、絶縁操作ロッド16を介して、操作機構によって開閉される。
遮断器が閉路状態の場合、電流は上部端子17,電気接点1,集電子18,下部端子19を流れる。電極間の接触力は、絶縁操作ロッド16に装着された接触バネ20によって保たれている。電極間の接触力および短絡電流による電磁力は、支えレバー21およびプロップ22で保持されている。投入コイル30を励磁すると開路状態からプランジャ23がノッキングロッド24を介してローラ25を押し上げ、主レバー26を回して電極間を閉じたあと、支えレバー21で保持している。
遮断器が引き外し自由状態では、引き外しコイル27が励磁され、引き外しレバー28がプロップ22の係合を外し、主レバー26が回って電極間が開かれる。
遮断器が開路状態では、電極間が開かれたあと、リセットバネ29によってリンクが復帰し、同時にプロップ22が係合する。この状態で投入コイル30を励磁すると閉路状態になる。なお、31は排気筒である。
次に、本実施例4の真空遮断器の性能試験を行った。上述のように、真空バルブは、定格電圧7.2kV,定格電流600A,定格遮断電流20kAである。表2に、性能試験結果を示す。各性能は、Teを単体で添加した従来材であるCr−Cu−Te焼結体(No.11)の結果を基準とし、相対値で表わした。引離し性は、28kA通電後の溶着引離し力(相対値)の逆数とした。
No.1〜No.4は、金属間化合物として添加したCr2CuTe4の量を変化させた場合である。Cr2CuTe4の量が多くなると、最大遮断電流値や耐電圧性は従来材(No.11)と同等以上で、引離し性が明らかに向上する。これは、脆性の金属間化合物が焼結体中に均一に分散し、溶着後の引離しに伴う破壊を容易にするためと考えられる。
No.5とNo.6はCr含有量を変化させた場合で、Cr量が多いと導電率の低下に伴い最大遮断電流値が低下し、耐アーク成分のCr量が少ないと耐電圧性が低下するが、いずれも実用上支障のない範囲である。Cr含有量に関わらず、引離し性はCr2CuTe4の均一分散によって優れた値を示している。なお、Cr量が多いNo.6の場合、同じCr2CuTe4量のNo.2に比べて引離し性が低下するのは、硬質で電気抵抗が比較的大きなCrが多いため、接点間の接触抵抗が大きくなり、溶着面積が増大するためである。
No.7はCr2CuTe4を微量添加した場合、No.8はCr2CuTe4を比較的多く添加した場合である。Teを単体で添加したNo.11に比べて、No.7では電流遮断に伴うアーク加熱によるTeの揮散がないため、最大遮断電流値や耐電圧性は優れる傾向にあるが、引離し性は改善効果が見られない。No.8では引離し性に優れるものの、硬質のCr2CuTe4が多いために接触抵抗が増大し、溶着面積が大きく、引離し改善効果はNo.4に比べて小さい。また、Cr2CuTe4が比較的多いために焼結性が低下し、導電率が小さいため、最大遮断電流値や耐電圧性が従来材(No.11)と同等である。さらに、Cr2CuTe4が多いとTeの絶対量が多くなるため、有害なTe単体に替えて金属間化合物を添加する利点がなくなる。したがって、金属間化合物の添加量は0.02〜2.0体積%の範囲が好ましいといえる。
No.9,10は、Crの含有量を変化させた例である。No.9はNo.2の電気接点のCr含有量を少なくした場合、No.10は多くした場合である。耐アーク成分のCrが少ないNo.9では耐電圧性が、Cr量が多いために導電率が小さいNo.10では最大遮断電流値がそれぞれ低下した。したがって、Crの含有量は18〜45体積%が適するといえる。
このように、上記の電気接点によって、優れた電流遮断性能および耐電圧性能を有しながら、溶着した接点同士の引離し力を低減することができ、操作機構部の小型化が実現可能な真空バルブおよび真空遮断器が得られる。
実施例3で作製した真空バルブを、真空遮断器以外の真空開閉装置に搭載した。図4は、実施例3で作製した真空バルブ14を搭載した、路肩設置変圧器用の負荷開閉器である。
この負荷開閉器は、主回路開閉部に相当する真空バルブ14が、真空封止された外側真空容器32内に複数対収納されたものである。外側真空容器32は、上部板材33と下部板材34及び側部板材35を備え、各板材の周囲(縁)が互いに溶接によって接合されているとともに、設備本体とともに設置されている。
上部板材33には、上部貫通孔36が形成されており、各上部貫通孔36の縁には環状の絶縁性上部ベース37が各上部貫通孔36を覆うように固定されている。そして、各上部ベース37の中央に形成された円形空間部には、円柱状の可動側電極棒4bが往復動(上下動)自在に挿入されている。すなわち、各上部貫通孔36は上部ベース37と可動側電極棒4bによって閉塞されている。
可動側電極棒4bの軸方向端部(上部側)は、外側真空容器32の外部に設置される操作器(電磁操作器)に連結されるようになっている。また、上部板材33の下部側には、各上部貫通孔36の縁に沿って外側ベローズ38が往復動(上下動)自在に配置されており、各外側ベローズ38は、軸方向の一端側が上部板材33の下部側に固定され、軸方向の他端側が各可動側電極棒4bの外周面に装着されている。すなわち、外側真空容器32を密閉構造とするために、各上部貫通孔36の縁には各可動側電極棒4bの軸方向に沿って外側ベローズ38が配置されている。また、上部板材33には排気管(図示省略)が連結され、この排気管を介して外側真空容器32内が真空排気されるようになっている。
一方、下部板材34には下部貫通孔39が形成されており、各下部貫通孔39の縁には絶縁性ブッシング40が各下部貫通孔39を覆うように固定されている。各絶縁性ブッシング40の底部には、環状の絶縁性下部ベース41が固定されている。そして、各下部ベース41の中央の円形空間部には、円柱状の固定側電極棒4aが挿入されている。すなわち、下部板材34に形成された下部貫通孔39は、それぞれ絶縁性ブッシング40,下部ベース41、及び固定側電極棒4aによって閉塞されている。そして、固定側電極棒4aの軸方向の一端側(下部側)は、外側真空容器32の外部に配置されたケーブル(配電線)に連結されるようになっている。
外側真空容器32の内部には、負荷開閉器の主回路開閉部に相当する真空バルブ14が収納されており、各可動側電極棒4bは、2つの湾曲部を有するフレキシブル導体(可撓性導体)42を介して互いに連結されている。このフレキシブル導体42は、軸方向において2つの湾曲部を有する導電性板材としての銅板とステンレス板を交互に複数枚積層して構成されている。フレキシブル導体42には貫通孔43が形成されており、各貫通孔43に各可動側電極棒4bを挿入して互いに連結される。
以上のように、実施例3で作製した真空バルブは、路肩設置変圧器用の負荷開閉器にも適用可能であり、これ以外の真空絶縁スイッチギアなどの各種真空開閉装置にも適用できる。
1 電気接点
1a 固定側電気接点
1b 可動側電気接点
2 スリット溝
3,3a,3b 補強板
4,4a,4b 電極棒
5 ろう材
6a 固定側電極
6b 可動側電極
7 シールド
8 可動側シールド
9a 固定側端板
9b 可動側端板
10 ベローズ
11 ガイド
12 可動側ホルダー
13 絶縁筒
14 真空バルブ
15 エポキシ筒
16 絶縁操作ロッド
17 上部端子
18 集電子
19 下部端子
20 接触バネ
21 支えレバー
22 プロップ
23 プランジャ
24 ノッキングロッド
25 ローラ
26 主レバー
27 引き外しコイル
28 引き外しレバー
29 リセットバネ
30 投入コイル
31 排気筒
32 外側真空容器
33 上部板材
34 下部板材
35 側部板材
36 上部貫通孔
37 上部ベース
38 外側ベローズ
39 下部貫通孔
40 絶縁性ブッシング
41 下部ベース
42 フレキシブル導体
43 フレキシブル導体貫通孔
44 中央孔
1a 固定側電気接点
1b 可動側電気接点
2 スリット溝
3,3a,3b 補強板
4,4a,4b 電極棒
5 ろう材
6a 固定側電極
6b 可動側電極
7 シールド
8 可動側シールド
9a 固定側端板
9b 可動側端板
10 ベローズ
11 ガイド
12 可動側ホルダー
13 絶縁筒
14 真空バルブ
15 エポキシ筒
16 絶縁操作ロッド
17 上部端子
18 集電子
19 下部端子
20 接触バネ
21 支えレバー
22 プロップ
23 プランジャ
24 ノッキングロッド
25 ローラ
26 主レバー
27 引き外しコイル
28 引き外しレバー
29 リセットバネ
30 投入コイル
31 排気筒
32 外側真空容器
33 上部板材
34 下部板材
35 側部板材
36 上部貫通孔
37 上部ベース
38 外側ベローズ
39 下部貫通孔
40 絶縁性ブッシング
41 下部ベース
42 フレキシブル導体
43 フレキシブル導体貫通孔
44 中央孔
Claims (14)
- クロム,銅、およびテルルを含み、銅マトリックス中にクロムと銅とテルルからなる金属間化合物およびクロムが分散した組織を有する電気接点であって、該金属間化合物が銅マトリックスの結晶粒内および粒界、並びにクロムと銅の界面に存在することを特徴とする電気接点。
- 前記金属間化合物としてCr2CuTe4,Cr4Cu2Te7のうちの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気接点。
- 前記クロムの含有量が18〜45体積%であることを特徴とする請求項1に記載の電気接点。
- 前記金属間化合物の含有量が0.02〜2.0体積%であることを特徴とする請求項1に記載の電気接点。
- クロムの粉末と、銅の粉末と、クロムと銅とテルルからなる金属間化合物の粉末とを混合し、加圧成形し、銅の融点以下の温度で加熱焼結することを特徴とする電気接点の製造方法。
- 前記の混合粉末の加熱焼結は、真空中,不活性雰囲気中または還元性雰囲気中で行うことを特徴とする請求項5に記載の電気接点の製造方法。
- 前記金属間化合物の粉末を、クロムと銅とテルルの粉末を混合し、加圧成形し、該金属間化合物の融点以下の温度で加熱したのち、粉砕して得ることを特徴とする請求項5に記載の電気接点の製造方法。
- 前記金属間化合物の粉末を、Cu2Teの粉末とCr2Te3の粉末とを混合し、加圧成形し、該金属間化合物の融点以下の温度で加熱したのち、粉砕して得ることを特徴とする請求項5に記載の電気接点の製造方法。
- 前記の混合粉末の加熱は、真空中,不活性雰囲気中または還元性雰囲気中で行うことを特徴とする請求項7または8に記載の電気接点の製造方法。
- 前記クロム粉末の粒径は104μm以下、前記銅粉末および前記金属間化合物粉末の粒径は61μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の電気接点の製造方法。
- 円板形状をなし、該円板形状の円中心に形成された中心孔と、該中心孔に対して非接触で円中心から外周部に向かって形成された複数本の貫通したスリット溝とを有し、該円板形状部材のアーク発生面の反対面に一体に接合された電極棒を有する電極であって、
前記円板形状部材は請求項1〜4に記載の電気接点からなることを特徴とする電極。 - 真空容器内に一対の固定側電極及び可動側電極とを備えた真空バルブにおいて、前記固定側電極及び可動側電極の少なくとも一方が、請求項11に記載の電極からなる真空バルブ。
- 真空容器内に一対の固定側電極及び可動側電極を備えた真空バルブと、該真空バルブ内の前記固定側電極及び可動側電極の各々に前記真空バルブ外に接続された導体端子と、前記可動側電極を駆動する開閉手段とを備えた真空遮断器において、前記真空バルブが請求項12に記載の真空バルブからなる真空遮断器。
- 真空容器内に一対の固定側電極および可動側電極を備えた真空バルブを導体によって直列に複数接続し、前記可動側電極を駆動する開閉手段を備え、前記真空バルブが請求項12に記載の真空バルブからなる真空開閉機器。
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