JP4628639B2 - 熱硬化性粉体塗料組成物 - Google Patents

熱硬化性粉体塗料組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化性粉体塗料組成物に関し、さらに詳細には、貯蔵中の塗料粒子が固着しにくく、加水分解による化学的な変質が少なく、さらには、熱硬化により得られる塗膜が、外観特性(平滑性、光沢、他)、物理特性(硬度、耐擦傷性、他)、化学特性(耐酸性、耐溶剤性、他)に優れる、熱硬化性粉体塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
グリシジル基を有するバインダー樹脂を使用する粉体塗料は、一般的には、ビスフェノールグリシジルエーテル型粉体塗料と、グリシジルエステル型アクリル粉体塗料とに2分される。これらの粉体塗料は、使用されるバインダー樹脂の種類、即ち、バインダー樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂あるいはグリシジルエステルモノマー共重合アクリル樹脂の何れを用いるか、またその価格、あるいは化学的特性などに応じて、使用される粉体塗料の用途・市場が独立して存在する。また、現在までのところ、粉体塗料は、熱硬化性タイプの粉体塗料が主流であるが、UVカチオン光開始剤の開発が進み、将来的には、UV硬化型粉体塗料としての新たな用途展開が期待される。
【0003】
ところで、現在主流の熱硬化型粉体塗料である、これらビスフェノールグリシジルエーテル型粉体塗料とグリシジルエステル型アクリル粉体塗料とに共通して用いられる硬化剤として、古くから、固形カルボン酸無水物があり、典型的には、無水フタル酸、無水トリメリット酸、脂肪族二塩基酸の縮合ポリ酸無水物、等の比較的低分子量の結晶性化合物が使用されてきた。
【0004】
これら酸無水物系硬化剤の有する特長としては、相当する原料カルボン酸と比較して、第一に、低融点化できるため、100〜200℃での焼付け・硬化に適する融点を確保し易いこと、第二に、酸無水物基のグリシジル基に対する反応性が低く、硬化塗膜の平滑性を確保し易いこと、さらに、第三として、特に、カルボキシル基と酸無水物基を併有する酸無水物硬化剤の場合、カルボキシル基とグリシジル基との硬化反応で副生する二級水酸基が酸無水物基と二段反応することにより、硬化塗膜の架橋密度が上昇し、より強靭になること、などが挙げられる。
【0005】
例えば、グリシジルエステル型アクリル粉体塗料に上記硬化剤を配合・応用した例としては、EP696622に記載されているように、脂肪族二塩基酸と、それを縮合して得られる線状ポリ酸無水物とを併用することにより、硬化塗膜の機械的、化学的物性を改良する試みが挙げられる。また、DE4227580では、酸無水物基と水酸基との2段反応性を応用し、酸無水物硬化剤とポリオールとを併用する硬化形式により、塗膜性能の改良が試みられている。
【0006】
ところで、このような状況にあって、グリシジル基を有するバインダー樹脂を使用する熱硬化性粉体塗料に対して、商業的に、最も多用されている固形カルボン酸無水物硬化剤の一つとして、脂肪族二塩基酸の線状ポリ酸無水物があり、その構造式は、HO−[OC−(CH2m−COO]n−Hで示される。市販されている脂肪族二塩基酸の線状ポリ酸無水物の例としては、‘Additol VXL1381‘(ソルーシア社製)があり、これは、該式中、m=10、n=2以上となっている。この線状ポリ酸無水物の融点は、85〜95℃であり、粉体塗料用の好ましい硬化剤として用いるには、若干融点が低く、さらに、該線状ポリ酸無水物は、加水分解により、縮合度nが経時的に減少するという問題点を有している。但し、相当する原料二塩基酸「HOOC−(CH210−COOH」、即ちドデカン二酸(融点129℃)と比較して、熱溶融しやすく、上述の通り、得られる硬化塗膜の平滑性、機械特性、化学特性は、格段に優れている。
【0007】
そこで、本発明者等は、上記のような問題点を解決すべくさらに鋭意研究を重ねた結果、上記脂肪族二塩基酸の線状ポリ酸無水物「HO−[OC−(CH2m−COO]n−H」のメチレン単位数mおよび繰り返し単位数nが特定の範囲にあるポリ酸無水物硬化剤は、ドデカン二酸の線状ポリ酸無水物に比して、1)同一縮合度(n)比較で、約5℃融点が高く、該硬化剤を用いると、得られる粉体塗料では、貯蔵中の粉体塗料粒子の固着・凝集が効果的に抑制できること、また2)得られる塗膜は、塗膜の擦傷性の点で圧倒的に優れること、また3)該粉体塗料を基材表面に塗布した場合、該硬化剤は、その加水分解速度がドデカン二酸の線状ポリ酸無水物に比して相対的に遅いこと、4)エポキシ樹脂と硬化剤との配合比を、該エポキシ樹脂中のグリシジル基などと、該硬化剤中の酸基などとの配合当量比が実質上ほぼ同一となるように配合すると、粉体塗料の焼付け・溶融過程で到達する最低溶融粘度値が低くなり、塗膜平滑性の改良が可能であることなどを見出すと共に、さらに特定の添加剤を添加すれば、該硬化剤を用いた場合の「塗膜の光沢低下」も克服・改良できることなどを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の目的】
すなわち本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、貯蔵中の粉体塗料粒子の固着・凝集が効果的に抑制され、また得られる塗膜は、塗膜の擦傷性の点で著しく優れ、また該粉体塗料を基材表面に塗布した場合、平滑性に優れた塗膜が得られるような熱硬化性粉体塗料組成物を提供することを目的としている。
【0009】
本発明は、さらに特定の添加剤を添加することにより、塗膜の光沢低下をも克服・改良された熱硬化性粉体塗料組成物を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明に係る熱硬化性粉体塗料組成物は、
(A)テトラデカン二酸の含有率が90重量%以上であり、C14留分を主体とするノルマルパラフィン混合物から発酵法によって製造された直鎖状脂肪族二塩基酸を原料とし、このテトラデカン二酸の含有率の高い直鎖状脂肪族二塩基酸を縮合反応させることにより製造された、残留窒素濃度150ppm以下、平均縮合度2以上、灰分濃度1000ppm以下であるテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物、及び、
(B)エポキシ当量が200〜2000g/eqであり、数平均分子量Mnが300〜8000の範囲にあり、グリシジル基を含有する常温で固形のエポキシ樹脂、
を必須成分として含有している。
【0011】
本発明においては、上記グリシジル基を有するエポキシ樹脂(B)が、(イ)グリシジルメタクリレート及び/又はβ−メチル−グリシジルメタクリレート:20〜70重量%と、(ロ)スチレン:10〜40重量%と、(ハ)その他のエチレン性不飽和単量体:残部量(全成分の合計((イ)+(ロ)+(ハ))を100重量%とする。)とを共重合して得られ、エポキシ当量が200〜750g/eq.であり、数平均分子量Mnが1000〜8000の範囲にあるアクリルコポリマーであることが好ましい。
【0012】
本発明においては、上記「その他のエチレン性不飽和単量体」(ハ)が、イソボロニルメタクリレート、イソボロニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソブチルメタクリレートからなる群から選択された、少なくとも1種類以上の不飽和単量体を含むことが好ましい。
本発明においては、上記成分(A)と(B)の総重量((A)+(B))に対し、カルボキシル基を有する、融点45℃以上のロジン(C)が0.01〜3%の濃度で、添加・配合されていることが好ましい。
【0013】
本発明においては、上記成分(B)中のグリシジル基の一部が、カルボキシル基を有する、融点45℃以上のロジン(C)により、予め変性されており、成分(B)に対するロジン(C)の添加率が0.01〜4%であることが好ましい。
上記本発明に係る熱硬化性粉体塗料組成物には、脂肪族二塩基酸の線状ポリ酸無水物「HO−[OC−(CH2m−COO]n−H」のメチレン単位数mおよび繰り返し単位数nが特定の範囲にあるポリ酸無水物硬化剤が含まれており、該硬化剤は、ドデカン二酸の線状ポリ酸無水物に比して、1)同一縮合度(n)比較で、約5℃融点が高く、得られる粉体塗料では、貯蔵中の粉体塗料粒子の固着・凝集が効果的に抑制でき、また2)得られる塗膜は、塗膜の擦傷性の点で圧倒的に優れ、また3)該粉体塗料を基材表面に塗布した場合、該硬化剤は、その加水分解速度がドデカン二酸の線状ポリ酸無水物に比して相対的に遅く、塗膜の平滑化などに寄与し、また、4)熱硬化性粉体塗料組成物中のエポキシ樹脂と硬化剤との配合比を、該エポキシ樹脂中のグリシジル基などと、該硬化剤中の酸基などとの配合当量比が実質上ほぼ同一(例:グリシジル基等1当量に対して、酸基等を0.8〜1.3当量)となるように配合すると、粉体塗料の焼付け・溶融過程で到達する最低溶融粘度値が低くなり、塗膜平滑性の改良が可能となり、さらに特定の添加剤を添加すれば、該硬化剤を用いた場合の「塗膜の光沢低下」も克服・改良できるという効果が得られる。
【0014】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る熱硬化性粉体塗料組成物について具体的に説明する。
本発明に係る熱硬化性粉体塗料組成物には、
(A)テトラデカン二酸の含有率が90重量%以上であり、C14留分を主体とするノルマルパラフィン混合物から発酵法によって製造された直鎖状脂肪族二塩基酸を原料とし、このテトラデカン二酸の含有率の高い直鎖状脂肪族二塩基酸を縮合反応させることにより製造された、残留窒素濃度150ppm以下、平均縮合度2以上、灰分濃度1000ppm以下であるテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物、および
(B)エポキシ当量が200〜2000g/eqであり、数平均分子量Mnが300〜8000の範囲にある、常温で固形のグリシジル基を含有するエポキシ樹脂、
が必須成分として含有されている。
【0015】
以下、この熱硬化性粉体塗料組成物に含まれるテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物(A)、エポキシ樹脂(B)、これらの配合比、熱硬化性粉体塗料組成物の調製法、該組成物の塗装、硬化方法等について順次説明する。
[テトラデカン二酸線状ポリ酸無水物(A)]
本発明では、テトラデカン二酸線状ポリ酸無水物(A)として、上記のように、C14留分を主体とするノルマルパラフィン混合物から発酵法により製造されたテトラデカン二酸を90重量%以上の量で含む原料直鎖状脂肪族二塩基酸混合物を縮合反応させて得られた、残留窒素濃度150ppm以下、平均縮合度2以上、灰分濃度1000ppm以下であるテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物が用いられるが、このテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物(A)についてはじめに詳説する。
【0016】
従来、脂肪族二塩基酸群「HO−[OC−(CH2m−COO]n−H」(m、n:繰り返し単位数。)の製造は、化学合成プロセスに依存しており、典型的には、メチレン単位数mが、2、4、8、10、18の偶数炭素数のものが商業化されてきた。これに対し、近年、微生物の発酵作用を利用したバイオプロセスにより、メチレン炭素数mが奇数である脂肪族二塩基酸の製造にも目処が得られてきた。例えば、m=11のブラシル酸(別名:トリデカン二酸)については、既に熱硬化性粉体塗料用の硬化剤として利用が検討されており、特開2000−302724号公報(JP2000−302724A)にその記載がある。さらに、メチレン単位数m=10、12、14、16の偶数の場合でも、パイロットスケールでの検討が進行中であり、m=12のテトラデカン二酸も、商業化の候補の一つとなっている。さらに、グリシジルエステル型アクリル粉体塗料用の硬化剤として従来多用されている、m=10のドデカン二酸も、製造プロセスとして他の製法との比較で充分に競争力を有する場合には、将来、発酵法プロセス製造への転換も有り得る。
【0017】
このような状況下にあって、本願発明者等は、特に、グリシジルエステル型アクリル粉体塗料用の硬化剤として、メチレン単位数m=8〜18の範囲の脂肪族2塩基酸、さらに、その縮合無水物およびこれらの製造法(すなわち原料入手の容易性など)を種々検討した。
その結果、本発明では、硬化剤(A)としては、上記したようなテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物(A)(硬化剤(A)ともいう。)が好ましく用いられることが分かった。
【0018】
詳説すれば、本願発明では、選定されるテトラデカン二酸は、発酵法で製造されることを想定しているが、その理由は、化学合成プロセスでの製造が困難と思われる点と、C14留分のノルマルパラフィンが、分留操作により比較的容易に得られるという原料環境を考慮したものである。既に、本発明者らによれば、パイロットスケールレベルでの上記製法(発酵法)による原料入手は容易であり、原料パラフィンの分留精度、発酵操作による末端カルボキシル化反応の効率と、その後の精製操作の精度により、純度の異なるテトラデカン二酸が得られている。
【0019】
本願発明者等の検討結果では、無水物硬化剤(A)の原料として使用すべきテトラデカン二酸の純度は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
この理由は、もし、発酵操作原料となるノルマルパラフィンの分留精度が低く、C14留分前後のC13、C15留分の多く含まれた原料を使用した場合には、これら自身(すなわち、C13留分から発酵法でカルボキシル化されたブラシル酸(トリデカン二酸)と、C15留分から得られたペンタデカン二酸)は融点が何れも117℃であり、C14留分のノルマルパラフィンから得られた本願の一原料であるテトラデカン二酸129℃(ドデカン二酸と同じ融点)を用いる場合に比して10℃以上も融点の低い二塩基酸を与え、さらに、これら複数種の留分の混合による融点降下作用も加わって、共縮合にて最終的に得られる酸無水物硬化剤(A)の融点を著しく低下させてしまい、塗料の凝集につながる為である。
【0020】
なお、テトラデカン二酸の脱水縮合は、無水酢酸法、ホスゲン法、等の既知の方法で行われる。
無水酢酸法は、Mr.A.Conis により、Jarnal of Polymerl Science,29 343(1958) に詳細に記載されており、ホスゲン法については、トリエタノールアミンを用いた方法について、マサチューセッツ工科大学での検討がある。
【0021】
得られたテトラデカン二酸ポリ酸無水物中には、通常、その不純物として、原料テトラデカン二酸中に既に存在する残存微生物由来のタンパク質、及び、無機成分由来の灰分が存在することが多い。
残存窒素は、その濃度が150ppm以上の場合、該硬化剤(A)を含む熱硬化性粉体塗料組成物を塗布し、塗膜の焼付け硬化時の過熱(過剰な焼付け加熱)により、塗膜が黄変を引き起こす場合があり、係る観点からは、残存窒素濃度の上限を上記範囲に規定することが望ましい。
【0022】
また、硬化剤(A)中の灰分は、得られる塗膜の濁り感をもたらし、さらには、塗膜上の異物として目視判定される場合がある為、1000ppmを上限値としている。これら灰分の除去操作については、特開2000−302724号公報(JP2000−302724A)に準拠した方法により、精製が可能である。
【0023】
また、硬化剤(A)すなわちテトラデカン二酸ポリ酸無水物(A)の縮合度(n)については、特に上限を規定しないが、実用的には、2〜6が好ましい。これは、線状ポリ酸無水物の多くが、加水分解による解縮合にて、原料二塩基酸に戻り、縮合度n=3近傍で安定化する傾向にある為である。
テトラデカン二酸ポリ酸無水物の場合、その分解速度は、ドデカン二酸ポリ酸無水物よりも小さいが、貯蔵期間の差異による影響を最低限に抑える目的で、2〜6の範囲が好ましい。
【0024】
ところで、特開2000―239566号公報には、脂肪族二塩基酸線状ポリ酸無水物の記載がある。該公報では、メチレン単位数mの限定的制限をせず、グリシジル基と酸無水物基(またはカルボキシル基)との硬化反応速度が、グリシジル基と酸無水物基との反応速度に比して、グリシジル基とカルボキシル基との反応の方が早いという事実を背景に、片末端のカルボキシル基を炭化水素で無官能化し、一層の硬化速度低下を達成する試みが記載されている。
【0025】
これに対し、本願発明は、両末端にカルボキシル基を有したまま、メチレン単位数m、縮合度nについて種々検討を行った結果、上記特定の硬化剤(A)では、C14留分を主体とするノルマルパラフィン混合物から発酵法により製造されたテトラデカン二酸を90重量%以上を含む原料直鎖状脂肪族二塩基酸混合物を縮合して得られた、平均縮合度2以上のテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物では、反応速度を大きく低下させることなく、特異的に優れた特性の塗膜(硬化塗膜)が得られることなどを見出したものであり、技術的アプローチなどが本発明と特開2000―239566号公報とでは、全く異なる。
【0026】
[エポキシ樹脂(B)]
エポキシ樹脂(B)としては、グリシジル基を有する限り、ビスフェノールグリシジルエーテル型樹脂(狭義のエポキシ樹脂)、グリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂のいずれも使用できる。
前者のビスフェノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、通常ビスフェノール化合物とエピハロヒドリンとを付加反応させた後、脱塩酸反応により製造され、エポキシ当量が通常、200〜2000g/eq.、好ましくは200〜750g/eq.であり、数平均分子量Mnが通常、300〜8000、好ましくは1000〜8000、特に好ましくは1000〜4000の範囲にあり、好ましくは常温で固形のものが望ましい。
【0027】
本発明において、数平均分子量Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として評価することができる。
本発明では、入手の容易さの点などを考慮すると、エポキシ樹脂(B)としては、エポキシ当量が200〜750g/eqであり、数平均分子量Mnが300〜4000の範囲にある、常温で固形のものが商業的にも広く入手でき好ましい。
【0028】
一方、後者のグリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂(アクリルコポリマー)は、例えばグリシジルメタクリレート及び/又はβ−メチル−グリシジルメタクリレート(イ)20〜70重量%と、スチレン(ロ)10〜40重量%と、これらと共重合可能な「その他のエチレン性不飽和単量体」(ハ)残部量((イ)+(ロ)+(ハ)=100重量%)とを、公知の重合技術により、ラジカル共重合させて製造できる。
【0029】
このようなグリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂においても、エポキシ当量が上記範囲(200〜2000g/eq.、好ましくは200〜750g/eq.)にあり、数平均分子量Mnが上記範囲(300〜8000、好ましくは1000〜8000、特に好ましくは1000〜4000)にあり、好ましくは常温で固形であることが望ましい。
【0030】
ところでアクリル樹脂は、本来、透明感、光沢感を有し、この特長を生かす目的で意匠用、または外装用塗料として使用される場合が多い。そこで、該熱硬化性粉体塗料組成物中に含まれているアクリル樹脂とテトラデカン二酸ポリ酸無水物(A)との相溶性が問題となり、本願発明者等の検討過程では、当初、塗膜の20度光沢値が若干悪化することが判明した。
【0031】
そこで、この解決方法を、鋭意検討した結果、2つの方策を本発明者らは見出した。すなわち、第1の方策としては、グリシジルメタクリレート及び/又はβ−メチル−グリシジルメタクリレート(イ)20〜70重量%及びスチレン(ロ)10〜40重量%と共に共重合させるべき、「その他のエチレン性不飽和単量体」(ハ)として、そのホモポリマー((ハ)のみを重合してなるホモポリマー)が疎水性(低溶解性パラメーター)を示すような単量体を1種類以上選定して使用することが挙げられる。
【0032】
また、第2の方策としては、カルボキシル基を有するロジンを、塗料用添加剤、或いは、アクリル樹脂の変性剤として使用する方法が挙げられる。
第1の方策で、「その他のエチレン性不飽和単量体」(ハ)として1種類以上選択すべき、疎水性ホモポリマーを与え得る単量体としては、イソボロニルメタクリレート、イソボロニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、及び、イソブチルメタクリレートが挙げられる。これら単量体(ハ)は、1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
また、その他に使用できる共重合可能な単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアモノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル酸エステル類;
ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル類;
アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、等のカルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物;
α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、ふっ化ビニル、モノクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロプレン等のハロゲン含有ビニル類;
その他アクリロニトリル、メタクリルニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、及びメチロールメタクリルアミド、エチレン、プロピレン、C4〜C20のα−オレフィン、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0034】
また、上記単量体、或いはその共重合体をセグメントに有し、末端にビニル基を有するマクロモノマー類も使用できる。これら単量体は、単独或いは2種以上併用して用いることができる。また、ここに記載されたメチル(メタ)アクリレートのような記載は、メチルアクリレートおよび/またはメチルメタクリレートを示す。
【0035】
このようなグリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂を、テトラデカン二酸線状ポリ酸無水物(A)と組み合わせて用いることにより、得られた塗膜の光沢値が改良される理由については、定かではないが、恐らくは、アクリル樹脂を疎水化することで、硬化剤(A)との相溶性が改善され、粉体塗料製造工程での分散性が改良されたためであろうと推測される。
【0036】
一方、第2の方策で使用される、カルボキシル基を有する、融点45℃以上のロジン(C)は、例えば、粉体塗料の製造工程で、グリシジル基を有するエポキシ樹脂(B)と反応できる共硬化剤(co−curative)としても使用できるし、予め、このエポキシ樹脂の製造工程で反応により該エポキシ樹脂と結合(変性)しておいても構わない。但し、ロジン(C)の好ましい使用量は、得られる硬化塗膜の耐候性の悪化への懸念を考慮する観点からは、上限を設けることが望ましい。すなわち、添加剤としてロジン(C)を使用する場合、上記成分(A)と(B)の総重量((A)+(B))に対し、ロジン(C)の添加・配合量は、0.01〜3%(重量%)の範囲にあることが望ましい。
【0037】
また、ロジン(C)を、グリシジル基を有するエポキシ樹脂(B)用の変性剤として使用する場合、エポキシ樹脂(B)の重量に対しロジン(C)を0.01〜4重量%(%)の範囲で添加して、グリシジル基の一部を予め変性しておくことが好ましい。
[テトラデカン二酸線状ポリ酸無水物硬化剤(A)とエポキシ樹脂(B)との配合比]
成分(A)と成分(B)との好ましい配合比率は、[(B)中のカルボキシル基+酸無水物基] /[(A)中のグリシジル基及び/またはβ−メチル−グリシジル基]が、通常、当量比で1.0/0.8〜1.0/1.3の範囲となるような量比で使用される。
【0038】
[その他の塗料用添加剤]
本発明の熱硬化性粉体塗料組成物には、通常の粉体塗料に添加される種々の添加剤を配合、添加できる。また、該組成物の使用目的などに応じて、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、等の合成樹脂、繊維素又は繊維素誘導体などを包含する天然樹脂又は半合成樹脂組成物を配合して塗膜物性、等を向上させることもできる。
【0039】
また、本発明の熱硬化性粉体塗料組成物には、硬化触媒、顔料、流動調整剤、粘度調整剤(チクソトロピー調整剤)、帯電調整剤、表面調整剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、ワキ防止剤、酸化防止剤、等の添加剤を配合しても良い。また、本発明の熱硬化性粉体塗料組成物を、クリアコートとして使用する場合に少量の顔料を配合し、透明性が損なわれない範囲で着色しても良い。
【0040】
[粉体塗料組成物の製造方法]
テトラデカン二酸線状ポリ酸無水物(A)およびエポキシ樹脂(B)を含む本発明に係る熱硬化性粉体塗料組成物を調製する方法としては、実質的に均一なコンパウンドが調製可能であれば、各成分の配合方法、コンパウンド化方法等には特に制限はない。
【0041】
通常、コンパウンド化には、加熱ロール機、加熱ニーダー機、押出し機(エクストルーダー)、ミキサー(バンバリー型、トランスファー型等)、カレンダー設備、等の従来より公知の混練機、等を適宜組み合わせて用いることができる。また、これら混練機の運転の際には、混練条件(温度、回転数、雰囲気、等)を適宜、設定すればよい。
【0042】
上記工程を経て得られた粉体塗料コンパウンド(粒径が比較的不揃いで、粒径の比較的大きなものが含まれた粉体塗料組成物)は、必要によりさらに粉砕して、(微)粉末状で、好ましくは粒径が比較的均一の粉体塗料組成物とできる。このような粉砕物を得るには、従来より公知の方法を採用することができる。例えば、平均粒径が10〜90μm程度の粉砕物を得るには、ハンマーミル等を使用することができる。
【0043】
[塗装方法および焼付け方法]
上記のようにして得られた本発明の粉体塗料(熱硬化性粉体塗料組成物)は、静電塗装法、流動浸漬法等の従来より公知の塗装方法によって、基材に付着せしめ、加熱(焼付け)して熱硬化させることにより、塗膜(硬化塗膜)を形成させることができる。
【0044】
基材としては、アルミホイール、スチール、等の金属基材でもよく、また、これらの表面を下地塗装(下地処理)したものであっても構わない。下地処理としては、水性/溶剤系ベースコートを施したものであっても構わない。
焼付けは、通常、約100〜200℃、より好ましくは130〜180℃の温度で、10〜60分間程度行われる。
【0045】
このようにして得られた硬化膜は、平滑性、光沢、硬度、擦傷性、耐酸性、耐溶剤性に優れている。
すなわち、本発明に係る熱硬化性粉体塗料組成物は、グリシジル基を有するバインダー樹脂を使用する熱硬化性粉体塗料の硬化剤としてテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物を限定的に使用することで、従来、数多くの先行技術に好んで用いられてきたドデカン二酸線状ポリ酸無水物硬化剤を使用した場合に比べ、より優れた塗料特性(すなわち、該粉体塗料は貯蔵中の粉体塗料粒子の固着・凝集が少ない。)、および上記したような優れた塗膜特性を達成することができる。
【0046】
【発明の効果】
本発明に係る熱硬化性粉体塗料組成物(粉体塗料)には、エポキシ樹脂がメインバインダーとして含まれ、また上記特定の脂肪族二塩基酸の線状ポリ酸無水物(A)が硬化剤として含まれており、該粉体塗料は貯蔵中の粉体塗料粒子の固着・凝集が少なく、また得られる塗膜は、平滑性、光沢、硬度、擦傷性、耐酸性、耐溶剤性に優れ、とりわけ、ドデカン二酸線状ポリ酸無水物を硬化剤とする粉体塗料に比して、明確な優位性を確保できる。さらに、本発明の熱硬化性粉体塗料組成物では、含まれる硬化剤(A)自体の加水分解性が低く、塗料原料としての安定性も確保できる。
【0047】
さらに詳説すれば、上記本発明に係る熱硬化性粉体塗料組成物(粉体塗料)には、エポキシ樹脂(B)と共に、脂肪族二塩基酸の線状ポリ酸無水物「HO−[OC−(CH2m−COO]n−H」のメチレン単位数mおよび繰り返し単位数nが特定の範囲にあるポリ酸無水物硬化剤(A)が含まれており、該硬化剤(A)は、ドデカン二酸の線状ポリ酸無水物に比して、1)同一縮合度(n)比較で、約5℃融点が高く、得られる粉体塗料では、貯蔵中の粉体塗料粒子の固着・凝集が効果的に抑制でき、また2)得られる塗膜は、塗膜の擦傷性の点で圧倒的に優れ、また3)該粉体塗料を基材表面に塗布した場合、該硬化剤は、その加水分解速度がドデカン二酸の線状ポリ酸無水物に比して相対的に遅く、塗膜の平滑性などに寄与し、貯蔵保存時には塗料の貯蔵安定性の向上も期待でき、また、4)熱硬化性粉体塗料組成物中のエポキシ樹脂と硬化剤との配合比を、該エポキシ樹脂中のグリシジル基などと、該硬化剤中の酸基などとの配合当量比が実質上ほぼ同一(例:グリシジル基等1当量に対して、酸基等を0.8〜1.3当量)となるように配合すると、粉体塗料の焼付け・溶融過程で到達する最低溶融粘度値が低くなり、塗膜平滑性の改良が可能となり、さらに特定の添加剤を添加すれば、該硬化剤を用いた場合の「塗膜の光沢低下」も克服・改良できるという効果が得られる。
【0048】
【実施例】
以下、本発明の樹脂組成物を製法および各種試験例を挙げ、更に説明するが、その記載によって本発明がなんら限定される性質のものではない。以下において、「部」および「%」は特記していない限り重量基準である。
<テトラデカン二酸線状ポリ酸無水物(A)の製造例>
【0049】
【製造例A1】
C14留分を主体とするノルマルパラフィンを用い、発酵による両末端のカルボキシル化、分離、精製工程を経て得られた、98重量%の純度を有するテトラデカン二酸(キャシーバイオ社製)750部、及び無水酢酸400部を反応機に仕込み、還流温度にて2時間脱水反応を行なった。次いで、160℃、2mmHgで減圧し、無水酢酸と、生成した酢酸とを留去した。さらに、精製操作として、得られた粗テトラデカン二酸線状ポリ酸無水物300部と酢酸イソブチル1500部を別の反応機に投入し、内容物を110℃で15分間保持した後、直ちに活性炭5部を投入し、10分間攪拌した。その後、熱時濾過を行ない、活性炭と不溶解分を濾別し、濾液を5℃に冷却することにより、テトラデカン二酸線状ポリ酸無水物を晶析させた。これを濾過した後、45℃にて24時間減圧乾燥し、精製されたテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物を得た。その縮合度は3.6であり、残存窒素濃度は90ppmであり、灰分濃度は200ppmであり、融点は100℃であった。
【0050】
【比較例用製造例A2】
製造例A1において、その精製操作を一切行わなかった以外は、製造例A1と同様の操作をおこなって、テトラデカン二酸線状ポリ酸無水物を得た。
得られたテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物の縮合度は製造例A1と同じ3.6であり、残存窒素濃度は220ppm、灰分濃度は1100ppm、融点は98℃であった。
【0051】
【比較例用製造例A3】
製造例A1の場合と比較してC14留分濃度が低いノルマルパラフィンを使用して得られた、発酵法により製造したテトラデカン二酸(純度85重量%)を入手し、これを製造例A1と同様に、線状ポリ酸無水物とした。(カルボキシル基+酸無水物基)としての酸当量は190g/eq.であり、縮合度は、全てがテトラデカン二酸であったと仮定した場合に、3.5と計算された。また、残存窒素濃度は110ppm、灰分濃度は310ppm、融点は84℃であった。
<エポキシ樹脂(B)の製造例>
【0052】
【製造例B1】
ビスフェノールグリシジルエーテル型樹脂(狭義のエポキシ樹脂)については、エピコート1002(油化シェル社製)を使用し、製造例B1とした。エポキシ当量は625(g/eq)。であり、数平均分子量Mnは1320であった。
【0053】
【製造例B2】
グリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂について、攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、キシレン66.7部を仕込み、窒素をパージしながら還流温度まで加熱昇温した。このフラスコ内に、表1に示すように、グリシジルメタアクリレート40部、スチレン15部、及び、第3の必須単量体として1種以上選択すべき単量体としてイソブチルメタクリレート35部、イソボロニルメタクリレート10部、さらには、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート9部とを溶解混合した原料液を、5時間にわたりフィードし、さらにその後100℃で5時間保持し、これらモノマーの共重合を行った。得られた樹脂溶液から溶剤を除去することにより、グリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂を得た。得られた樹脂は、数平均分子量Mnは1630であり、過塩素酸滴定法により分析されるエポキシ当量は、385(g/eq.)であった。
【0054】
【製造例B3】
グリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂について、攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、キシレン66.7部を仕込み、窒素をパージしながら還流温度まで加熱昇温した。このフラスコ内に、表1に示すように、β−メチルグリシジルメタアクリレート44部、スチレン21部、及び、第3の必須単量体(その他の不飽和単量体)として1種以上選択すべき単量体として、シクロヘキシルメタクリレート25部、イソボロニルアクリレート10部、さらには、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート9部とを溶解混合した原料液を、5時間にわたりフィードし、さらにその後100℃で5時間保持し、これらモノマーの共重合反応を行った。
【0055】
得られた樹脂溶液から溶剤を除去することにより、グリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂を得た。
得られた樹脂は、数平均分子量Mnは1590であり、過塩素酸滴定法により分析されるエポキシ当量は、381(g/eq.)であった。
【0056】
【製造例B4】
グリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂について、攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、キシレン66.7部を仕込み、窒素をパージしながら還流温度まで加熱昇温した。このフラスコ内に、グリシジルメタアクリレート42部、スチレン18部、メチルメタクリレート40部、さらに、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート9部とを溶解混合した原料液を、5時間にわたりフィードし、さらにその後100℃で5時間保持し、これらモノマーの共重合を行った。その後、得られた樹脂溶液中に、カルボキシル基を有するロジンKR−85(荒川化学社製; 酸価169KOHmg/g,融点85℃)を3部投入し、15分間、100℃にて攪拌後、溶剤を除去することにより、ロジン変性されたグリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂を得た。
【0057】
得られた樹脂は、数平均分子量Mnは1670であり、過塩素酸滴定法により分析されるエポキシ当量は、383(g/eq.)であった。
【0058】
【製造例B5】
製造例B4において、ロジンを添加せず、そのまま、溶剤除去によりグリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂を得た。
該樹脂の数平均分子量Mnは1610であり、エポキシ当量は363(g/eq.)であった。
【0059】
なお、製造例A1〜A3、製造例B1〜B5の内容を、一括して表1に示す。
<熱硬化性粉体塗料組成物の製造例>
【0060】
【実施例1】
製造例A1で製造されたテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物(A)24部、製造例B1で示したエピコート1002(油化シェル社製)76部、顔料として酸化チタンR820(石原産業製)40部、さらに、添加剤として、紫外線吸収剤‘チヌビン CGL1545’(チバスペシャリティーケミカル社製)2部、ヒンダードアミン系光安定剤‘チヌビン CGL 052(チバスペシャリティーケミカル社製)1部、ベンゾイン0.5部、及び、流動調整剤0.3部、テトラブチルホスフォニウムブロマイド0.2部の全てを、ヘンシェルミキサ−(三井鉱山社製)に一括投入し、室温下、3分間ドライ混合し、さらに、1軸押出し機(コペリオン社製)により、90℃で溶融混練した。その後、固化、粉砕、分級操作を実施し、最後に、粉体としての十分な流動性を確保し、凝集を防止する目的で、シリカ微粒子添加剤‘エアロジル RX300’(日本エアロジル社製)0.2部をドライ混合して熱硬化性粉体塗料組成物を調製した。
【0061】
これを、実施例1として表2に記載した。
得られた塗料組成物の粒度は、島津製作所製SALAD2000により、体積平均粒子径として26ミクロンであり、粒度分布を有する不定形状の粒子であった。尚、流動調整剤は、重量平均分子量Mwが12000のイソブチルメタアクリレートの固形ホモポリマーを、製造例B1に準拠して製造し、平均粒度0.5mmとなるよう粉砕したものを使用した。
【0062】
また、ここで使用したテトラドデカン二酸線状ポリ無水物は、「カルボキシル基+酸無水物基」の合計当量が192(g/eq. )であり、表2中に示した「A/E」、即ち、[硬化剤(A)中のカルボキシル基+酸無水物基]/[エポキシ樹脂(B)中のグリシジル基]の当量比は、1.05となっている。
該熱硬化性粉体塗料組成物を用いて種々の性能評価を行った。
【0063】
結果を表3に示す。
【0064】
【実施例2〜4】
表2に示すように、製造例A1で製造されたテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物(A)と、製造例B2〜B4で製造したグリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂を主成分として粉体塗料を製造した。顔料(酸化チタン)を使用せずにクリア塗料とした点、及び、一軸押出し機(コペリオン社製)による溶融混練温度を70℃とした以外は、実施例1と同じであり、酸基/グリシジル基のモル比も実施例1と同じ1.05とした。
【0065】
該熱硬化性粉体塗料組成物を用いて種々の性能評価を行った。
結果を表3に示す。
【0066】
【比較例1〜2】
各表に示すように、実施例1〜2で使用したテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物の代りに、ドデカン二酸線状ポリ酸無水物(‘Additol VXL1381;ソルーシア社製、縮合度n=3.6、融点91℃)を硬化剤として使用した以外は、全て、実施例1または実施例2と同様とした。
【0067】
結果を表3に示す。
【0068】
【比較例3〜4】
各表に示すように、製造例A1で製造したテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物の代りに、それぞれ比較例用製造例A2〜A3で製造したテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物を使用した以外は、全て、実施例2と同様とした。
【0069】
【実施例5】
製造例B4で得られたグリシジルエステル型アクリル共重合体樹脂に対し、ロジン変性を実施しなかった樹脂、即ち、製造例B5で製造されたアクリル共重合体樹脂を使用した以外は、全て、実施例4と同様とした。
なお、全ての塗料配合、体積平均粒子径、形状などは、表2に一括して示した。
【0070】
上記各例で得られた熱硬化性粉体塗料組成物は、いずれも下塗塗装された鋼板上に、コロナ帯電で静電塗装し、焼付けにより硬化塗膜とした。尚、実施例1及び比較例1では、目標膜厚を70ミクロンとし、焼付けは、180℃、25分間とした。
一方、その他の全ての実施例、比較例は、目標膜厚を50ミクロンとし、焼付けは、150℃、30分間とした。
【0071】
なお、下塗り塗装された鋼板は、電着塗装された0.8mm厚のリン酸亜鉛処理鋼板上に、ポリエステル−メラミン硬化型の溶剤系黒色塗料を20ミクロン膜厚となるよう塗装し、170℃、30分間で焼付けすることにより調製した。
得られた熱硬化性粉体塗料組成物(粉体塗料)、及び、焼付け硬化塗膜の性能を、表3にまとめて示す。
【0072】
ここで使用した各種評価方法については、以下の通りである。
<粉体塗料の評価>
[粉体塗料の凝集性]
製造された粉体塗料6.0gを内径20mm、高さ80mmの円筒形容器に入れて蓋をし、30℃、14日間貯蔵後に取出し、凝集の程度を指触にて、◎〜×で評価した。
【0073】
◎:全く凝集がない。○:軽度の凝集があるが、指で簡単に崩れる。×:指で崩れない。
[塗膜の濁り]
焼付けされたフィルム上の濁りの程度を、下記の基準により判定した。
◎:濁りが全くない。○:軽度の濁り感がある。 ×:かなり曇っている。
【0074】
[光沢値] BYKガードナー社製の光沢計により、20度光沢値を測定。
[鉛筆硬度] 鉛筆引っ掻き試験(日本工業規格 JIS K5400 6.14に準拠)により評価。
[耐擦傷性] 一定粒度の研磨剤を含有する、濃度30%のスラリーを用い、摩擦堅牢度試験装置(大栄科学社製)により、20往復のラビング処理を行った後、ラビング前後の20度光沢値の保持率を百分率で計算した。
【0075】
[耐酸性] 10容積%の硫酸を、塗膜表面に1cc滴下し、室温にて1日放置した。その後、硫酸滴を拭き取り、外観を観察して、下記評価基準(◎〜×)で判定した。
◎:痕跡なし。○:軽微な痕跡あり。×:明確な痕跡あり。
[耐溶剤性] キシレンを含浸させたガーゼで塗膜表面を往復50回擦った後、塗膜を観察して、下記評価基準(◎〜×)で判定した。
【0076】
◎:痕跡なし。○:軽微な痕跡あり。×:明確な痕跡あり。
[過熱黄変性] 粉体塗料を、上下の両金属製熱板表面にそれぞれテフロン(R)シートを配し、さらに、両熱板間に金属製の厚さ2mmのスペーサーを置いた加熱プレス機に挟み、テフロン(R)シートの表面温度を200℃に保持したまま20分間、熱圧硬化した。熱圧終了後、フィルムを、テフロン(R)シートから剥離する事で、厚さ2.0±0.1mmで、肉眼で気泡の残存のない、熱硬化フィルムを得た。これらフィルムの黄変度を、下記評価基準により判定した。
【0077】
◎:白色または無色。 ○:淡黄色。 ×:濃黄色。
【0078】
【表1】
Figure 0004628639
【0079】
【表2】
Figure 0004628639
【0080】
【表3】
Figure 0004628639

Claims (5)

  1. (A)テトラデカン二酸の含有率が90重量%以上であり、C14留分を主体とするノルマルパラフィン混合物から発酵法によって製造された直鎖状脂肪族二塩基酸を原料とし、このテトラデカン二酸の含有率の高い直鎖状脂肪族二塩基酸を縮合反応させることにより製造された、残留窒素濃度150ppm以下、平均縮合度2以上、灰分濃度1000ppm以下であるテトラデカン二酸線状ポリ酸無水物、及び、
    (B)エポキシ当量が200〜2000g/eqであり、数平均分子量Mnが300〜8000の範囲にあり、グリシジル基を含有する常温で固形のエポキシ樹脂、
    を必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性粉体塗料組成物。
  2. 上記グリシジル基を有するエポキシ樹脂(B)が、(イ)グリシジルメタクリレート及び/又はβ−メチル−グリシジルメタクリレート:20〜70重量%と、(ロ)スチレン:10〜40重量%と、(ハ)その他のエチレン性不飽和単量体:残部量(全成分の合計を100重量%とする。)とを共重合して得られ、エポキシ当量が200〜750g/eq.であり、数平均分子量Mnが1000〜8000の範囲にあるアクリルコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  3. 上記その他のエチレン性不飽和単量体(ハ)が、イソボロニルメタクリレート、イソボロニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソブチルメタクリレートからなる群から選択された、少なくとも1種類以上の不飽和単量体を含むことを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  4. 上記成分(A)と(B)の総重量((A)+(B))に対し、カルボキシル基を有する、融点45℃以上のロジン(C)が0.01〜3%の濃度で、添加・配合されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  5. 上記成分(B)中のグリシジル基の一部が、カルボキシル基を有する、融点45℃以上のロジン(C)により、予め変性されており、成分(B)に対するロジン(C)の添加率が0.01〜4%であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
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