JP4619470B2 - 光学記録媒体用装置用波長板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学記録媒体用装置用波長板、特に環状ポリオレフィン系樹脂膜を有する光学記録媒体用装置用波長板(以下「波長板」ともいう)に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、従来の磁気方式に較べ、非接触、単位体積あたりの情報量の多さなどから、情報を光によって読み書きするメディアとして、光学記録媒体が大きく伸長してきている。光学記録媒体としては、情報をあらかじめ光学記録媒体に導入し、それを音や画像として再生するコンパクトディスク(CD)、レーザーディスク(LD)、CD−ROM、CD−Iなど、また光学記録媒体基板に記録膜などを付着させ、レーザーによって情報を書き込んで用いるCD−RやDRAW、または情報の読み書きが繰り返しできるE−DRAWディスクなどがある。
【0003】
このような光学記録媒体の再生および/または追記を行うための光学系装置としては、レーザー光源から光検出器にいたる光路の途中位置に偏光ビームスプリッター(PBS)および1/4λ波長板(QWP)(以下「1/4波長板」ともいう)が配置された光ピックアップ装置が知られている。ここで、1/4波長板とは、特定波長の直交する2つの偏光成分の間にλ/4の光路差(したがって、π/2の位相差)を与えるものである。上記光ピックアップ装置においては、レーザー光源から直線偏光(S波)が照射され、PBSを通り、1/4波長板を通ることで直線偏光が円偏光となり、集光レンズにより光学記録媒体に照射される。光学記録媒体から反射された戻り光は、再び同じ経路をたどり、1/4波長板を通ることで円偏光が90度方位を変換されて直線偏光(P波)となり、PBSを通過し、光検出器に導かれるように構成されている。
また、書き換え型光磁気ディスク装置として、レーザー光源からの照射光が、偏向子、PBSを通り光磁気ディスクに照射され、光磁気ディスクで反射された戻り光が、再びPBSを通り、光検出器にいたる光路の途中位置に1/2λ波長板(以下「1/2波長板」ともいう)が配置されたものも知られている。ここで、1/2波長板とは、特定波長の直交する2つの偏光成分の間にλ/2の光路差(したがって、πの位相差)を与えるものである。
【0004】
このような波長板としては、複屈折性を備える雲母、石英、水晶、方解石、LiNbO3 、LiTaO3 などの単結晶から形成される波長板、ガラス基板などの下地基板に対して斜め方向から無機材料を蒸着することにより得られる下地基板の表面に複屈折膜を有する波長板、複屈折性を有するLB(Langmuir-Blodget)膜を有する波長板が開示されている。
また、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂などのフィルムを延伸したものを、平坦性、定形性維持のためガラス基板に接着したり、2枚のガラス基板で挾持した波長板も知られている。
【0005】
しかし、水晶などの単結晶を作成するためには、高価な単結晶製造装置が必要なため安価に製造できず、また大面積の波長板が容易に得られないという問題点がある。さらに、単結晶を波長板に加工する際には、単結晶の研磨が必要であるが、研磨の際の単結晶の厚みやレタデーション値の変化の調整は困難である。
また、下地基板に対して斜め方向から無機材料を蒸着して、複屈折膜を有する波長板の製造においては、無機材料の蒸着方向の制御が可能な真空蒸着装置が必要であり、やはり製造設備が高価となる。さらに、LB膜を有する波長板の製造は、単分子膜であるLB膜を積層する必要があるため、製造が煩雑で、やはり製造費用がかかる。
さらに、ポリカーボネートなどの合成樹脂フィルムを延伸したものを波長板に使用した場合、レタデーション値の安定性や耐久性に問題がある。さらに、従来の合成樹脂フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が低く、耐熱性が劣るため、再生および/または追記を行うための光学装置を製造する際の工程温度、例えば、ハンダ付けや接着工程での温度に制限を生じる問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたもので、高い耐熱性、低い吸湿性、各種材料との高い密着性、および安定なレタデーション値を有する合成樹脂膜を有する、安価な波長板を提供するものである。
【0007】
本発明は、(3)(1)下記一般式(I)で表される特定単量体の開環重合体、または(2)下記一般式(I)で表される特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体、の水素添加(共)重合体から選ばれた少なくとも1種の環状ポリオレフィン系樹脂膜からなる光の偏光状態を変化させるために用いる光学記録媒体用装置用波長板であって、ここで使用する光は波長780nmのレーザー光、波長635nmのレーザー光または650nmのレーザー光であり、かつ波長650nmのレーザー光に対しては、λ/4波長板またはλ/2波長板となる、光学記録媒体用装置用波長板(以下、単に「波長板」ともいう)に関する。
ここで、前記水素添加(共)重合体の水素添加率は、60MHz、1H−NMRで測定した値が好ましくは98%以上である。
また、前記水素添加(共)重合体中に含まれるゲル含有量は、好ましくは1重量%以下である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の波長板は、環状ポリオレフィン系樹脂膜からなる。ここで、環状ポリオレフィン系樹脂は、次の(3)水素添加(共)重合体である。
(3)(1)下記一般式(I)で表される特定単量体の開環重合体、または(2)下記一般式(I)で表される特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体、の水素添加(共)重合体
【0009】
【化1】
【0010】
〔式中、R1 〜R4 は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一または異なっていてもよい。R1 とR2 またはR3 とR4 は、一体化して2価の炭化水素基を形成しても良く、R1 またはR2 とR3 またはR4 とは互いに結合して、単環または多環構造を形成してもよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。〕
【0011】
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂には、▲1▼特定単量体の開環重合体が含まれる。
<特定単量体>
特定単量体のうち好ましいのは、上記一般式(I)中、R1 およびR3 が水素原子または炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基であり、R2 およびR4 が水素原子または一価の有機基であって、R2 およびR4 の少なくとも一つは水素原子および炭化水素基以外の極性を有する極性基を示し、mは0〜3の整数、pは0〜3の整数であり、より好ましくはm+p=0〜4、さらに好ましくは0〜2、とくに好ましくは1であるものである。
上記特定単量体の極性基としては、ハロゲン、カルボキシル基、水酸基、アルキルエステル基や、芳香族エステル基などのエステル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、エーテル基、アシル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、などが挙げられる。これらの中では、カルボキシル基、エステル基が好ましく、特にアルキルエステル基が好ましい。
【0012】
特定単量体のうち、特に、R2 およびR4 の少なくとも一つの極性基が式−(CH2 )nCOORで表される単量体は、得られる環状ポリオレフィン系樹脂が高いガラス転移温度と低い吸湿性、各種材料との優れた密着性を有するものとなる点で好ましい。上記の特定の極性基にかかる式において、Rは炭素原子数1〜12、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。また、nは通常、0〜5であるがnの値が小さいものほど、得られる環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度が高くなるので好ましく、さらにnが0である特定単量体は、その合成が容易である点で、また、得られる環状ポリオレフィン系樹脂がガラス転移温度の高いものとなる点で好ましい。
【0013】
さらに、特定単量体は、前記一般式(I)においてR1 またはR3 がアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、さらに好ましくは1〜2のアルキル基、特にメチル基であることが好ましく、特にこのアルキル基が上記の式−(CH2 )nCOORで表せる特定の極性基が結合した炭素原子と同一の炭素原子に結合されていることが好ましい。また、一般式(I)においてmが1である特定単量体は、ガラス転移温度の高い環状ポリオレフィン系樹脂が得られる点で好ましい。
【0014】
上記特定単量体としては、次のような化合物が挙げられる。具体的には、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6 ]−8−デセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]−4−ペンタデセン、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5 .19,12.08,13]−3−ペンタデセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5 ]−3−ウンデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
ジメタノオクタヒドロナフタレン、
エチルテトラシクロドデセン、
6−エチリデン−2−テトラシクロドデセン、
トリメタノオクタヒドロナフタレン、
ペンタシクロ[8.4.0.12,5 .19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、
ヘプタシクロ[8.7.0.13,6 .110,17 .112,15 .02,7 .011,16 ]−4−エイコセン、
ヘプタシクロ[8.8.0.14,7 .111,18 .113,16 .03,8 .012,17 ]−5−ヘンエイコセン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。
これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0015】
これらのうち、得られる開環重合体の耐熱性の面から、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
8−エチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕−3−ドデセン、
ペンタシクロ〔7.4.0.12,5 .19,12.08,13〕−3−ペンタデセン
が好ましい。
【0016】
<共重合性単量体>
共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、トリシクロ[5.2.1.02,6 ]−3−デセン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましいのは5〜12である。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
特定単量体/共重合性単量体の好ましい使用範囲は、重量比で100/0〜50/50であり、さらに好ましくは100/0〜60/40である。
【0017】
<開環重合触媒>
本発明において、▲1▼特定単量体の開環重合体、および▲2▼特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体を得るための開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行われる。
このメタセシス触媒は、(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素(例えばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(例えば、Mg、Caなど)、IIB族元素(例えば、Zn、Cd、Hgなど)、IIIA族元素(例えば、B、Alなど)、IVA族元素(例えば、Si、Sn、Pbなど)、あるいはIVB族元素(例えば、Ti、Zrなど)の化合物であって、少なくとも1つの該元素−炭素結合あるいは該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒である。また、この場合に触媒の活性を高めるために、後述の(c)添加剤が添加されたものであってもよい。
【0018】
(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl6 、MoCl5 、ReOCl3 などの特開平1−132626号公報第8頁左下欄第6行〜第8頁右上欄第17行に記載の化合物を挙げることができる。
(b)成分の具体例としては、n−C4 H9 Li、(C2 H5 )3 Al、(C2 H5 )2 AlCl、(C2 H5 )1.5 AlCl1.5 、(C2 H5 )AlCl2、メチルアルモキサン、LiHなど特開平1−132626号公報第8頁右上欄第18行〜第8頁右下欄第3行に記載の化合物を挙げることができる。
添加剤である(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、さらに特開平1−132626号公報第8頁右下欄第16行〜第9頁左上欄第17行に示される化合物を使用することができる。
【0019】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と特定単量体とのモル比で「(a)成分:特定単量体」が、通常、1:500〜1:50,000となる範囲、好ましくは1:1,000〜1:10,000となる範囲とされる。
(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で(a):(b)が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲とされる。
(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で(c):(a)が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲とされる。
【0020】
<重合反応用溶媒>
開環重合反応において用いられる溶媒(分子量調節剤溶液を構成する溶媒、特定単量体および/またはメタセシス触媒の溶媒)としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素、クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどの、ハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリールなどの化合物、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類などを挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒の使用量としては、「溶媒:特定単量体(重量比)」が、通常、1:1〜10:1となる量とされ、好ましくは1:1〜5:1となる量とされる。
【0021】
<分子量調節剤>
得られる開環(共)重合体の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節する。
ここに、好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
分子量調節剤の使用量としては、開環重合反応に供される特定単量体1モルに対して0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルとされる。
【0022】
▲2▼開環共重合体を得るには、開環重合工程において、特定単量体と共重合性単量体とを開環共重合させてもよいが、さらに、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン化合物、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖に炭素−炭素間二重結合を2つ以上含む不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に特定単量体を開環重合させてもよい。
【0023】
以上のようにして得られる開環(共)重合体は、これをさらに水素添加して(3)水素添加(共)重合体として用いられるが、かかる水素添加(共)重合体は耐衝撃性の大きい樹脂の原料として有用である。
<水素添加触媒>
水素添加反応は、通常の方法、すなわち開環重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が挙げられる。
【0024】
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は、粉末でも粒状でもよい。
【0025】
これらの水素添加触媒は、開環(共)重合体:水素添加触媒(重量比)が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。このように、水素添加することにより得られる水素添加(共)重合体は、優れた熱安定性を有するものとなり、成形加工時や製品としての使用時の加熱によっても、その特性が劣化することはない。
【0026】
上記のようにして得られた水素添加(共)重合体には、公知の酸化防止剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−ジオキシ−3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン;紫外線吸収剤、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどを添加することによって安定化することができる。また、加工性を向上させる目的で、滑剤などの添加剤を添加することもできる。
【0027】
また、水素添加(共)重合体の水素添加率は、60MHz、 1H−NMRで測定した値が50%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは98%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れたものとなる。
なお、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂として使用される水素添加(共)重合体は、該水素添加(共)重合体中に含まれるゲル含有量が5重量%以下であることが好ましく、さらに1重量%以下であることが特に好ましい。
【0037】
本発明で用いられる環状ポリオレフィン系樹脂の好ましい分子量は、固有粘度〔η〕inh で0.2〜5、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は8,000〜100,000、重量平均分子量(Mw)は20,000〜300,000の範囲のものが好適である。
固有粘度〔η〕inh または重量平均分子量が上記範囲にあることによって、環状ポリオレフィン系樹脂の成形加工性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性などが良好となる。
【0038】
本発明に使用される環状ポリオレフィン系樹脂は、上記のような(3)水素添加(共)重合体より構成されるが、これに公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加してさらに安定化することができる。また、加工性を向上させるために、滑剤などの従来の樹脂加工において用いられる添加剤を添加することもできる。
【0039】
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂は、キャスト法、押し出し法などにより成形して、適宜延伸し、波長板用膜とすることができる。
【0040】
キャスト法で本発明の環状ポリオレフィン系樹脂膜を成形する場合、好ましい有機溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらの中で、塩化メチレン、トルエン、シクロヘキサンが好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0041】
上記溶液を孔径が数μm程度のフィルターでろ過したのち、スピンコート法、溶液キャスト法などを行うことで、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂膜(ベースフィルム)が得られる。得られるベースフィルムの膜厚は、通常、10〜500μm、好ましくは100〜200μm、レタデーション値は、波長板として必要な値以下であれば特に制限はないが、延伸加工のやりやすさを考慮すると、50nm以下が好ましい。
【0042】
また、押し出し法で本発明の環状ポリオレフィン系樹脂膜を成形する場合、押し出し温度としては、好ましくは200〜350℃、さらに好ましくは250〜330℃、特に好ましくは280〜320℃である。
ベースフィルムの膜厚は、通常、10〜500μm、好ましくは100〜200μm、レタデーション値は、波長板として必要な値以下であれば特に制限はないが、延伸加工のやりやすさを考慮すると、50nm以下が好ましい。
【0043】
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂膜のレタデーション値の調整は、キャスト法、押し出し法などにより得られたベースフィルムを常法により延伸し、延伸倍率によって調整する。
上記環状ポリオレフィン系樹脂膜は、そのまま本発明の波長板として使用することができる。
【0044】
また、本発明の波長板は、使用波長に対して透明な下地基板の表面に、上記環状ポリオレフィン系樹脂膜を設けたものでもよい。
本発明の光学記録媒体の下地基板の材料としては、ガラス基板やプラスチック基板など、使用する光の波長に対して透明性を有するものを使用できる。使用する光としては、例えば、CD再生用の光ピックアップ装置で通常使用される波長780nmのレーザー光、DVD再生用に通常使用される波長635nmまたは650nmのレーザー光などが挙げられる。
下地基板材料として好ましくはガラス、透明樹脂などの透明材料が用いられる。下地基板材料の形状は特に限定されるものではなく、平板状であってもプリズム形状など光学的な機能を有する形状であってもよい。
上記下地基板の厚さは、好ましくは0.01〜5mm、さらに好ましくは0.1〜0.5mmである。0.01mm未満であると、剛性が不足する。一方、5mmを超えると波長板としての大きさが大きくなり、光学系装置の小型化が難しくなる。
【0045】
下地基板を使用する本発明の波長板の作製方法としては、上記環状ポリオレフィン系樹脂膜を、紫外線硬化型接着剤や熱硬化型接着剤などを使用して、下地基板の上に貼りつける方法が挙げられる。
接着剤を使用して、熱可塑性樹脂膜を上記下地基板の上に貼りつける方法としては、通常行われている方法が適宜採用できる。すなわち、下地基板の上に、液状の接着剤をスピンコート法などで塗布し、その上から環状ポリオレフィン系樹脂膜を積層し、接着剤を硬化させ、波長板を形成する。
【0046】
また、上記方法により環状ポリオレフィン系樹脂膜を使用して波長板を形成する際のレタデーション値の変化は、設計値に対して、好ましくは±20nm以下、さらに好ましくは±10nm以下、特に好ましくは±5nm以下である。レタデーション値の変化が±20nmを超えると、波長板としての機能が著しく低下する。
【0047】
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂膜の光の波長に対する光透過率を図1に示す。
図1より、本発明の波長板は、CD再生用に通常使用される波長780nmのレーザー光、DAD再生用に通常使用される波長635nm、または650nmのレーザー光の透過率が90%以上であり、CDおよびDAD再生用の光ピックアップ装置に好適に使用できることが明らかである。
【0048】
本発明の波長板を使用する光学装置としては、例えば、図2に示すような、1/4波長板を用いた光ピックアップ装置10が挙げられる。
図2の光ピックアップ装置10では、レーザー光源であるレーザーダイオード(LD)20から光学記録媒体23に至る往路の途中位置に偏光ビームスプリッター(PBS)21および1/4波長板(QWP)22および対物レンズ23が配置されている。光学記録媒体24から反射された戻り光の復路は、対物レンズ23、1/4波長板22を通過し、PBS21により90度進行方向を変えられ、光検出器25に至る。
本発明の波長板は、高い耐熱性、低い吸湿性、各種材料との高い密着性、および安定なレタデーション値を有する環状ポリオレフィン系樹脂膜を使用するため、安価で高性能の波長板であり、本発明の波長板を使用すると安価で高性能の光学記録媒体用装置を製造することができる。
なお、本発明の波長板を使用した光学記録媒体用装置は、音声、画像の記録に関して、再生専用記録媒体、追記(ライトワンス)型記録媒体、および書き換え可能型記録媒体のいずれにも適用できるものである。
【0049】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り重量部および重量%である。また、実施例中の各種の測定は、次のとおりである。
【0050】
固有粘度(〔η〕 inh )
溶媒にクロロホルムまたはシクロヘキサンを使用し、0.5g/dlの重合体濃度で30℃の条件下、ウベローデ粘度計にて測定した。
ゲル含有量
25℃の温度で、水素添加(共)重合体50gを1%濃度になるようにクロロホルムに溶解し、この溶液をあらかじめ重量を測定してある孔径0.5μmのメンブランフィルター〔アドバンテック東洋(株)〕を用いてろ過し、ろ過後のフィルターを乾燥後、その重量の増加量からゲル含有量を算出した。
【0051】
水素化率
水素添加単独重合体の場合には、60MHz、 1H−NMRを測定し、エステル基のメチル水素とオレフィン系水素のそれぞれの吸収強度の比、またはパラフィン系水素とオレフィン系水素のそれぞれの吸収強度の比から水素化率を測定した。また、水素添加共重合体の場合には、重合後の共重合体の 1H−NMR吸収と水素化後の水素添加共重合体のそれを比較して算出した。
ガラス転移温度
走査熱量計(DSC)により、チッ素雰囲気下において、10℃/分の昇温速度で測定した。
【0052】
膜の厚み
キーエンス(株)製、レーザーフォーカス変位計、LT−8010を用い、測定した。
レタデーション値
王子計測機器(株)製、KOBRA−21ADHを用い、波長590nmで測定した。
【0053】
参考例1
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5 .17,10〕ドデカ−3−エン100g、1,2−ジメトキシエタン60g、シクロヘキサン240g、1−ヘキセン25g、およびジエチルアルミニウムクロライド0.96モル/リットルのトルエン溶液3.4mlを、内容積1リットルのオートクレーブに加えた。
一方、別のフラスコに、六塩化タングステンの0.05モル/リットルの1,2−ジメトキシエタン溶液20mlとパラアルデヒドの0.1モル/リットルの1,2−ジメトキシエタン溶液10mlを混合した。
この混合溶液4.9mlを、上記オートクレーブ中の混合物に添加した。密栓後、混合物を80℃に加熱して3時間攪拌を行った。
得られた重合体溶液に、1,2−ジメトキシエタンとシクロヘキサンの2/8(重量比)の混合溶媒を加えて重合体/溶媒が1/10(重量比)にしたのち、トリエタノールアミン20gを加えて10分間攪拌した。
【0054】
この重合溶液に、メタノール500gを加えて30分間攪拌して静置した。2層に分離した上層を除き、再びメタノールを加えて攪拌、静置後、上層を除いた。同様の操作をさらに2回行い、得られた下層をシクロヘキサン、1,2−ジメトキシエタンで適宜希釈し、重合体濃度が10%のシクロヘキサン−1,2−ジメトキシエタン溶液を得た。
この溶液に20gのパラジウム/シリカマグネシア〔日揮化学(株)製、パラジウム量=5%〕を加えて、オートクレーブ中で水素圧40kg/cm2 として165℃で4時間反応させたのち、水添触媒をろ過によって取り除き、水素添加(共)重合体溶液を得た。
【0055】
また、この水素添加(共)重合体溶液に、酸化防止剤であるペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を、水素添加(共)重合体に対して0.1%加えてから、380℃で減圧下に脱溶媒を行った。
次いで、溶融した樹脂を、チッ素雰囲気下で押し出し機によりペレット化し、トリシクロデカンを基本骨格とする熱可塑性樹脂Aを得た。熱可塑性樹脂Aの分析結果を表1に示す。
【0056】
参考例2
単量体として、8−エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,6 .17,10〕−3−ドデセン100gを用い、溶媒としてシクロヘキサン300gを用いた以外は、参考例1と同様に重合、水素化の操作を行い、熱可塑性樹脂Bを得た。熱可塑性樹脂Bの分析結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例1
参考例1で得られた熱可塑性樹脂Aのペレットを原料として、塩化メチレンを溶媒として用いた溶液キャスト法により、厚さ10μm、レタデーション値15nmのベースフィルムを得た。得られたベースフィルムを延伸倍率150%で1軸延伸し、環状ポリオレフィン系樹脂膜を得た。0.3mm厚みのガラス基板上に、協立化学(株)製紫外線硬化型接着剤フォトボンドをスピンコートして、環状ポリオレフィン系樹脂膜を積層したのち、紫外線照射して波長板(a)を調製した。得られた波長板(a)の光の波長に対する光吸収特性を図1に示す。以上の様にして作成した波長板(a)を150℃で1時間加熱し、加熱前後のレタデーション値を測定した。評価結果を表2に示す。
実施例2
参考例2で得られた熱可塑性樹脂Bのペレットを原料とし、溶媒としてシクロヘキサンを用いた以外は、参考例1と同様にして波長板(b)の作製を行った。
評価結果を表2に示す。
【0059】
実施例3
参考例1で得られた熱可塑性樹脂Aのペレットを原料として、日立造船(株)製、40mmφ押し出し機を用い、シリンダー温度300℃、ダイス温度300℃で押し出し成形して、厚さ140μm、レタデーション値25nmのベースフィルムを得た。得られたベースフィルムを延伸倍率200%で1軸延伸して、環状ポリオレフィン系樹脂膜を得た。得られた環状ポリオレフィン系樹脂膜を使用して、参考例1と同様にして波長板(c)の作製を行った。評価結果を表2に示す。
【0060】
比較例1
出光石油化学(株)製、ポリカーボネートA2700〔重量平均分子量:32,800(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定、ポリスチレン換算)、ガラス転移温度:155℃〕を原料とし、シリンダー温度280℃、ダイス温度280℃で、実施例3と同様に押し出し成形して厚さ10μm、レタデーション値40nmのベースフィルムを得た。得られたベースフィルムを延伸倍率130%で1軸延伸して、厚さ110μm、レタデーション値328nmのポリカーボネート膜を得た。なお、上記温度条件は、この材料においては最良の光学特性を与えるものであった。得られたポリカーボネート膜を使用して、参考例1と同様にして波長板(d)の作製を行った。評価結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
*1:650nmの1/4λ相当
*2:650nmの1/2λ相当
【0063】
【発明の効果】
本発明の波長板は、高い耐熱性、低い吸湿性、各種材料との高い密着性、および安定なレタデーション値を有する環状ポリオレフィン系樹脂膜を有するものであるため、安価で高性能の波長板であり、本発明の波長板を使用すると安価で高性能の光学記録媒体用装置を製造することができる。
なお、本発明の波長板を使用した光学記録媒体用装置は、音声、画像の記録に関して、再生専用記録媒体、追記型記録媒体、および書き換え可能型記録媒体のいずれにも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の熱可塑性膜の、光の波長に対する光透過率を示す図である。
【図2】本発明の波長板を適用できる光ピックアップ装置の一例の概略構成図である。
【符号の説明】
10 光ピックアップ装置
21 偏光ビームスプリッター
22 波長板
24 光学記録媒体
Claims (3)
- (3)(1)下記一般式(I)で表される特定単量体の開環重合体、または(2)下記一般式(I)で表される特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体、の水素添加(共)重合体から選ばれた少なくとも1種の環状ポリオレフィン系樹脂膜からなる光の偏光状態を変化させるために用いる光学記録媒体用装置用波長板であって、ここで使用する光は波長780nmのレーザー光、波長635nmのレーザー光または650nmのレーザー光であり、かつ波長650nmのレーザー光に対してλ/4波長板またはλ/2波長板となる、光学記録媒体用装置用波長板。
- 前記水素添加(共)重合体の水素添加率が、60MHz、1H−NMRで測定した値が98%以上である請求項1に記載の光学記録媒体用装置用波長板。
- 前記水素添加(共)重合体中に含まれるゲル含有量が1重量%以下である請求項1または2に記載の光学記録媒体用装置用波長板。
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