JP4607556B2 - ヘッジトリマ - Google Patents

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Description

本発明は、庭木の剪定等に用いられるヘッジトリマに関する。特に、ヘッジトリマが発生する騒音を低減するための技術に関する。
庭木の剪定等のためにヘッジトリマと称される動力工具が開発されている。ヘッジトリマは、ヘッジトリマ本体から突出している一対のシャーブレードを備えている。少なくとも一方のシャーブレードは、ヘッジトリマ本体に対して進退可能に案内されている。ヘッジトリマ本体は、一対のシャーブレードに相対的な進退運動を実現する動力を内蔵している。シャーブレードには櫛状に並ぶ刃部が形成されており、一対のシャーブレードが相対的に進退することによって、枝葉等を切断する。
ヘッジトリマは、回転源(典型的には電動モータ)の回転動力をシャーブレードの進退運動に変換するために、そのヘッジトリマ本体に内蔵されている回転源によって回転させられるカムを備えている。そのカムは偏心カムであり、回転中心から外形に至るまでの距離(径)が周方向に変化している。シャーブレードにはカムと嵌合する嵌合孔が形成されている。偏心カムが偏心回転することによって、偏心カムに嵌合しているシャーブレードが進退する。
偏心カムとシャーブレードの嵌合孔との間には、偏心カムとシャーブレードの製造上の寸法精度を考慮して、クリアランス(あそび)が設けられている。あそびが存在するために、シャーブレードの運動方向が反転する際に、偏心カムとシャーブレードの嵌合孔が瞬間的に離反し、両者が再度接触する運動が生じる。偏心カムとシャーブレードの嵌合孔が再度接触するときに衝突音を発生する。この衝突音が、ヘッジトリマの発生する騒音を増大させている。
カムとシャーブレードを高い寸法精度で製造すれば、カムとシャーブレードの間のあそびを排除することができる。しかしながら、カムが僅かにでも小径に製造されればあそびが形成されてしまう。カムが僅かにでも大径に形成されればカムとシャーブレードを組み付けることができない。あそびを排除するためには極めて高い寸法精度を必要とする。また、ヘッジトリマの使用に伴ってカムやシャーブレードが磨耗し、あそびが形成されてしまうという問題もある。カムとシャーブレードの間からあそびをなくすことは極めて困難である。
上記の問題に対して、特許文献1では、シャーブレードをカム側に押し続けるばね部材を設けたヘッジトリマを提案している。このヘッジトリマでは、ばね部材によってシャーブレードをカム側に常に押し付けておくことによって、上述した衝突音が発生しないようにしている。
特開2003−134935号公報
特許文献1のヘッジトリマでは、弾性力に抗してシャーブレードを進退させる必要があることから、本来的に必要となるモータ以上に大型のモータを必要としてしまう。
本発明は、上記の課題を解決する。本発明では、シャーブレードの進退運動を妨げないようにしながらヘッジトリマが発生する騒音を低減する技術を提供する。
本発明が提供するヘッジトリマは、ヘッジトリマ本体と、ヘッジトリマ本体に内蔵されている回転源によって回転させられるカムと、ヘッジトリマ本体に対して進退可能に案内されているシャーブレードを備えている。カムは、回転中心から周面に至る径が周方向に変化する偏心カムである。シャーブレードには、カムと嵌合する嵌合孔と、その嵌合孔の周面の一部に沿って伸びる空孔が形成されている。それにより、その嵌合孔の周面の一、嵌合孔の外側に位置する空孔に向けて弾性変形可能な弾性変形部となっていることを特徴とする。
このヘッジトリマでは、シャーブレードの嵌合孔の周面の少なくとも一部が、嵌合孔の外側に向けて弾性変形可能であることから、カムとシャーブレードとの間にクリアランスを設けておく必要がない。クリアランスを設けておかなくても、カムとシャーブレードを組み付けることができる。
このヘッジトリマによると、偏心カムとシャーブレードの間に必要とされていたあそびを排除することができるので、偏心カムとシャーブレードが瞬間的に離反して衝突することを防止することができる。衝突音が発生しないので、ヘッジトリマが発生する騒音を低減することができる。シャーブレードの進退運動が無用に妨げられることがなく、大型のモータを必要とすることもない。
上記のヘッジトリマにおいて、弾性変形部は、シャーブレードが進退運動の死点位置にあるときに前記カムと接触する位置に設けられていることが好ましい。ここでいう死点位置は、上死位置に対立する意味での下死位置を示すものではなく、上下の死点位置をも含む上位概念と理解するべきである。弾性変形部は、下死点位置にあるシャーブレード、または上死点位置にあるシャーブレードと接触する位置に設けられている。双方に設けられていてもよい。
カムとシャーブレードの間にあそびが生じていると、シャーブレードの運動方向が反転する際にカムとシャーブレードは離反する。即ち、シャーブレードが死点位置にあるときに、カムとシャーブレードが離反し、その後に両者が衝突してしまう。
このヘッジトリマでは、シャーブレードが死点位置にあるときに、弾性変形部によってカムとシャーブレードの嵌合孔があそびなく嵌合する。その結果、シャーブレードの運動方向が反転する際に、カムとシャーブレードの嵌合孔との間にあそびが生じず、両者が衝突音を発生することがない。
即ち、弾性変形部が、偏心カムの回転中心を通ってシャーブレードの進退方向に伸びている線上に設けられていれば、シャーブレードが死点位置にあるときにカムとシャーブレードが離反せず、カムとシャーブレードが衝突することもない。
上述したヘッジトリマは、シャーブレードの運動方向が反転する際にカムとシャーブレードが離反することを禁止することによって、ヘッジトリマが発生する騒音を低減する。それに対して、シャーブレードの運動方向が反転する際にカムとシャーブレードが衝突することを許容しながら、その衝突速度を減速することによって、ヘッジトリマが発生する騒音を低減することも可能である。
先に説明したように、カムとシャーブレードは、シャーブレードの運動方向が反転する際に瞬間的に非接触の状態となり、再び接触する際に衝突音を発生する。カムとシャーブレードが非接触の状態のとき、カムは無負荷の状態となっており、回転源がカムの回転速度を増速する。カムの回転速度が増速することで、カムとシャーブレードの衝突音は大きくなる。このことから、カムが無負荷の状態となることを禁止することができれば、カムとシャーブレードの衝突音を低減することが可能となる。
本発明では、この技術思想を具現化した新規で有用なヘッジトリマを提供する。このヘッジトリマは、ヘッジトリマ本体と、ヘッジトリマ本体に内蔵されている回転源によって回転させられるカムと、ヘッジトリマ本体に対して進退可能に案内されているシャーブレードを備えている。カムは、回転中心から周面に至る径が周方向に変化する偏心カムである。シャーブレードには、カムと嵌合する嵌合孔が形成されている。嵌合孔の周面には、カムの回転中心を通ってシャーブレードの進退方向に伸びている線と嵌合孔の周面が交差する点よりもカムの回転方向前方側にカムの周面と接触する干渉部が設けられている。しかも、カムとシャーブレードの少なくとも一方が、シャーブレードの進退方向と直交する方向に、移動可能に支持されていることを特徴とする。
ヘッジトリマでは、回転するカムの長径がシャーブレードの進退方向と平行になったときに、シャーブレードが進退運動の死点位置に到達する。この状態では、カムの長径部の周面がシャーブレードの嵌合孔の周面と接触しており、その反対側であるカムの短径部の周面と嵌合孔の周面との間にはクリアランスが生じている。この時点からカムの短径部の周面が嵌合孔の周面と接触するまでカムは無負荷の状態となり、両者が接触する際に大きな衝突音を発生する。
本発明によるヘッジトリマでは、カムの回転中心を通ってシャーブレードの進退方向に伸びる線と嵌合孔の周面が交差する点よりもカムの回転方向前方側にカムの周面と接触する干渉部が設けられているために、回転するカムの長径がシャーブレードの進退方向と平行になってからさらに回転するときに、この干渉部がカムと接触し続ける。カムが無負荷の状態となることが禁止される。
上記の構成であると、カムの周面が嵌合孔の周面と2箇所で接触したときに、シャーブレードの嵌合孔内でカムが回転不能な状態となってしまう。そこで、このヘッジトリマでは、カムとシャーブレードの少なくとも一方が、シャーブレードの進退方向と直交する方向に移動可能に案内されている。それにより、カムやシャーブレードはスムーズに運動することができる。
上記のヘッジトリマでは、カムの長径部から反回転方向に短径部に至る周面が、カムの長径部から回転方向に短径部に至る周面に比して、少なくとも一部で径が縮小していることが好ましい。
それにより、前記カムの周面が嵌合孔の周面に設けられている干渉部と無用に接触することを避けることができる。
本発明により、シャーブレードの進退運動を妨げないようにして、ヘッジトリマが発生する騒音を低減することが可能となる。
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) ヘッジトリマは、円板形状の第1偏心カムと円板形状の第2偏心カムを備えている。各偏心カムは、自身の形状対称軸とは異なる位置に設けられている回転軸によって、偏心回転可能に軸支されている。
(形態2) シャーブレードの基部には、偏心カムと嵌合する嵌合孔が形成されている。その嵌合孔は長円形状をしており、短径がシャーブレードの進退方向に伸び、長径がそれに直交して伸びている。
(形態3) 偏心カムの回転中心を通ってシャーブレードの進退方向に伸びる線と、シャーブレードの嵌合孔の周面が交差する位置に、弾性変形部と突出部が設けられている。
(形態4) シャーブレードの嵌合孔の嵌合孔の短径方向を画定する周面の少なくとも一方に、弾性変形部が形成されている。
(形態5) 弾性変形部が形成されている位置における嵌合孔の短径は、偏心カムの直径よりも小さい。
(実施例1)
図1に示すように、本実施例のヘッジトリマ2は、ヘッジトリマ本体(以下、単に本体ということがある)10と、本体10から突出しているシャーブレードアセンブリ30を備えている。シャーブレードアセンブリ30は、複数のネジによって本体10に固定されており、工具(スクリュウドライバ等)を用いて本体10に脱着可能となっている。
本体10は、外部の電源に接続するための電源コード12と、利用者が把持するための第1把持部14と第2把持部20と、第1把持部14に設けられているトリガスイッチ16と、回転源であるモータ18と、モータ18の回転力をシャーブレードアセンブリ30側に伝達する動力伝達部80等を備えている。電源コード12から供給される電源電力は、トリガスイッチ16を介してモータ18に供給される。
図1に示すように、シャーブレードアセンブリ30は、上側シャーブレード40と下側シャーブレード50からなる一対のシャーブレードと、ガイドプレート32と、プレッシャプレート34等を備えている。各シャーブレード40、50は、ガイドプレート32とプレッシャプレート34によって挟持されている。シャーブレードアセンブリ30では、ガイドプレート32上に、下側シャーブレード50と、上側シャーブレード40と、プレッシャプレート34が順に載置されており、それらが複数の締結部材38、39等によって締結されている。シャーブレードアセンブリ30では、ガイドプレート32が本体10に固定されており、各シャーブレード40、50が本体10に対して進退可能に案内されている。
図2は、本体10とシャーブレードアセンブリ30の組付部分を拡大して示している。図1、図2に示すように、動力伝達部80は、モータ出力軸18aに噛み合っている回転ギヤ82と、回転ギヤ82を回転可能に軸支しているシャフト86と、シャフト86によって回転可能に軸支されている第1偏心カム88aおよび第2偏心カム88bを備えている。
回転ギヤ82と第1偏心カム88aと第2偏心カム88bは、シャフト86に対して相対回転不能に固定されている。それにより、回転ギヤ82と第1偏心カム88aと第2偏心カム88bは、一体となって回転するように構成されている。
動力伝達部80では、モータ18が駆動して出力軸18aが回転すると、回転ギヤ82がシャフト86(回転軸X)の回りに回転する。回転ギヤ82が回転すると、両偏心カム88a、88bが回転軸Xの回りに回転する。
図3は、両偏心カム88a、88bと、一対のシャーブレード40、50の構成を示す図である。図2、図3に示すように、第1偏心カム88aは略円板形状をしている。第1偏心カム88aは、自身の形状対称軸とは異なる位置でシャフト86によって軸支されている。第1偏心カム88aでは、回転軸Xから周面89aまでの距離(径)が回転軸Xの回りに変化している。第1偏心カム88aは、回転軸Xの回りに偏心回転するようになっている。第2偏心カム88bは、第1偏心カム88aと略同一の構成をしている。ただし、第2偏心カム88bでは、回転軸Xから周面89bまでの距離(径)が、回転軸Xの回りに第1偏心カム88aと略180度の位相差を持って周方向に変化している。即ち、シャフト86の中心軸Xに対して、第1偏心カム88aと第2偏心カム88bは対向して位置している。第1偏心カム88aと第2偏心カム88bは略180度の位相差を持って偏心回転する。
図2、図3に示すように、上側シャーブレード40の基部44には、第1偏心カム88aが嵌合している嵌合孔46が形成されている。嵌合孔46は、略長円形状に形成されている。その長円形状では、短径が上側シャーブレード40の進退方向に伸びており、長径がそれに直交して伸びている。なお、上側シャーブレード40の進退方向は、図3の上下方向に一致する。
図3に示すように、上側シャーブレード40の嵌合孔46では、嵌合孔46の周面(図面では嵌合孔を示す符号をその周面に付している)の一部47eに沿って、空孔47が形成されている。それにより、嵌合孔46の周面の一部47eは、空孔47に向けて弾性変形可能となっている。即ち、嵌合孔46の周面の一部47eは、嵌合孔46の外側に向けて弾性変形可能となっている。以下、この弾性変形可能な周面の一部47eを、弾性変形部47eということがある。弾性変形部47eは、第1偏心カム88aの回転軸Xを通って上側シャーブレード40の進退方向に伸びる線と嵌合孔46の周面が交差する2箇所のうち、ヘッジトリマ本体10側(図3の下方向)の交差位置の周面に設けられている。なお、弾性変形部47eは、回転軸Xを通ってシャーブレード40の進退方向に伸びる線と嵌合孔46の周面が交差する2箇所のうち、反ヘッジトリマ本体10側(図3の上方向)の交差位置の周面に設けてもよい。あるいは、両位置の周面に設けてもよい。
嵌合孔46の周面の弾性変形部47eに対向する位置に、嵌合孔46の内側に突出している突出部43が形成されている。それにより、嵌合孔46の短径は、弾性変形部47eが設けられている位置で小さくなっている。その最小短径W2は、第1偏心カム88aの直径よりも小さく設定されている。一方、弾性変形部47eが設けられてない位置での短径W1は、第1偏心カム88aの直径よりも大きく設定されている。
突出部43は、弾性変形部47eと同じ位置に設けてもよい。即ち、弾性変形部47eを嵌合孔46の内側に向けて突出させて設けてもよい。
図3に示す位置関係のように、上側シャーブレード40が上死点(反本体10側への移動限界)に位置する場合、第1偏心カム88aと上側シャーブレード40の嵌合孔46は、突出部43において接触するとともに(接触点Ta1)、弾性変形部47eにおいて接触する(接触点Ta2)。即ち、第1偏心カム88aと上側シャーブレード40の嵌合孔46はクリアランスなく嵌合している。第1偏心カム88aと嵌合孔46は2点で接触しているが、弾性変形部47eが嵌合孔46の外側に弾性変形することから、第1偏心カム88aは嵌合孔46内でスムーズに偏心回転することができる。同様に、上側シャーブレード40が下死点(本体10側への移動限界)に位置する場合でも、第1偏心カム88aと上側シャーブレード40の嵌合孔46はクリアランスなく嵌合する。
図3に示すように、下側シャーブレード50は、上側シャーブレード40と略同様の構成をしている。下側シャーブレード50の基部54には、第2偏心カム88bが嵌合している嵌合孔56が形成されている。嵌合孔56の周面の一部57eに沿って空孔57が形成されており、嵌合孔56の周面の一部に弾性変形部57eが設けられている。嵌合孔56の周面では、弾性変形部57eと対向する位置に、嵌合孔56の内側に突出している突出部53が形成されている。
図3に示す位置関係のように、下側シャーブレード50が下死点(本体10側への移動限界)に位置する場合、第2偏心カム88bと下側シャーブレード50の嵌合孔56は、突出部53において接触するとともに(接触点Tb2)、弾性変形部57eにおいても接触する(接触点Tb1)。即ち、第2偏心カム88bと下側シャーブレード50の嵌合孔56はクリアランスなく嵌合する。同様に、下側シャーブレード50が上死点(反本体10側への移動限界)に位置する場合でも、第2偏心カム88bと下側シャーブレード50の嵌合孔56はクリアランスなく嵌合する。
利用者がトリガスイッチ14を操作すると、モータ18が第1偏心カム88aと第2偏心カム88aを、図3に示すD方向に偏心回転させる。第1偏心カム88aが偏心回転することによって、上側シャーブレード40は進退運動を行う。第2偏心カム88bが偏心回転することによって、下側シャーブレード50は進退運動を行う。両偏心カム88a、88bは略180度の位相差を持って偏心回転することから、一対のシャーブレード40、50も略180度の位相差を持って相対的に進退運動する。図3に示すように、上側シャーブレード40には進退方向に沿って櫛状に並ぶ刃部42が形成されており、下側シャーブレード50にも進退方向に沿って櫛状に並ぶ刃部52が形成されている。一対のシャーブレード40、50が相対的に進退することによって、刃部42、52が枝葉等を切断する。
図4を参照して、両偏心カム88a、88bと一対のシャーブレード40、50が運動する様子を説明する。図4(a)〜図4(d)は、両偏心カム88a、88bがD方向に略90度ずつ偏心回転した状態を順に示している。なお、第1偏心カム88aと上側シャーブレード40の運動と、第2偏心カム88bと下側シャーブレード50の運動は対称性を持つことから、ここでは第1偏心カム88aと上側シャーブレード40について説明し、第2偏心カム88bと下側シャーブレード50についての説明は省略する。図4においても、下側シャーブレード50の図示は省略する。
図4(a)は、上側シャーブレード40が上死点(反本体10側への移動限界)に位置する状態を示している。この状態において、第1偏心カム88aは、上側シャーブレード40の嵌合孔46と2つの接触点Ta1、Ta2で接触している。即ち、第1偏心カム88aと嵌合孔46はクリアランスなく嵌合している。このとき、弾性変形部47eは嵌合孔46の外側に弾性変形している。
図4(b)は、両偏心カム88a、88bが、図4(a)の状態からD方向に90度だけ回転した状態を示している。上側シャーブレード40は図面下方(本体10側)に移動している。図4(a)の状態から図4(b)の状態に変化する過程で、接触点Ta1での接触は解消されるが、接触点Ta2での接触は維持される。なお、接触点Ta2の位置は連続的に変化する。
図4(c)は、両偏心カム88a、88bが、図4(b)の状態からD方向に90度だけ回転した状態を示している。上側シャーブレード40は下死点(本体10側への移動限界)に到達している。第1偏心カム88aは、上側シャーブレード40の嵌合孔46と2つの接触点Ta1、Ta2で接触している。このとき、弾性変形部47eは嵌合孔47の外側に弾性変形している。図4(b)の状態から図4(c)の状態に変化する過程で、接触点Ta2での接触が維持されるとともに、接触点Ta1での接触が再び生じる。なお、接触点Ta2の位置は連続的に変化する。
図4(d)は、両偏心カム88a、88bが、図4(c)の状態からD方向に90度だけ回転した状態を示している。上側シャーブレード40は図面上方(反本体10側)に移動している。図4(c)の状態から図4(d)の状態に変化する過程で、接触点Ta2での接触が解消されるが、接触点Ta1での接触は維持される。なお、接触点Ta1の位置は連続的に変化する。
図4(d)の状態から両偏心カム88a、88bがD方向に90度回転すると、図4(a)の状態に戻る。図4(d)の状態から図4(a)の状態に変化する過程で、接触点Ta1での接触が維持されるとともに、接触点Ta2での接触が再び生じる。
第1偏心カム88aと上側シャーブレード40の嵌合孔46は、1点で接触する状態と2点で接触する状態を繰り返しながら、互いに接触する状態を常に維持している。図4(a)(c)に示すように、特に上側シャーブレード40が上下の死点に位置する際には、第1偏心カム88aと嵌合孔46は2点で接触している。即ち、上側シャーブレード40が上下の死点に位置する際には、第1偏心カム88aと嵌合孔46との間のあそびが取り除かれている。それにより、上側シャーブレード40の運動方向が反転する際に、第1偏心カム88aと上側シャーブレード40が衝突することがなく、両者による衝突音が発生することがない。
第1偏心カム88aと上側シャーブレード40の嵌合孔46は常に接触しており、両者が完全に離反することがない。第1偏心カム88aが無負荷の状態となることが禁止されている。それにより、第1偏心カム88aがモータ18によって増速されながら上側シャーブレード240と衝突することもない。
以上の説明は、第2偏心カム88bと下側シャーブレード50の運動についても当てはまる。
このヘッジトリマ2では、各シャーブレード40、50の進退運動が反転する際に、各偏心カム88a、88bと各シャーブレード40、50が大きな相対速度で衝突することがない。両者が大きな衝突音を発生することがなく、ヘッジトリマ2が発生する騒音が低減されている。ヘッジトリマ2では、一対のシャーブレード40、50の進退運動が過剰に妨げられることもない。
(実施例2)
本実施例では、実施例1のヘッジトリマ2において、各シャーブレードの構成を変更したヘッジトリマについて説明する。従って、本実施例の説明では、主にシャーブレードについて説明し、他の構成について重複して説明することは避けるように努める。
図5は、本実施例のヘッジトリマが備える上側シャーブレード140と下側シャーブレード150を示している。
上側シャーブレード140の基部144には、第1偏心カム88aが嵌合している嵌合孔146が形成されている。嵌合孔146は長円形状をしている。その長円形状では、短径が上側シャーブレード140の進退方向に伸びており、長径がそれに直交して伸びている。その短径の寸法W2は、実施例1の最小短径W2に相当し、第1偏心カム88aの直径よりも小さい。
図5に示すように、上側シャーブレード140の嵌合孔146では、嵌合孔146の周面の一部147e、148eに沿って、空孔147、148が形成されている。それにより、嵌合孔146の周面の一部147e、148eは、嵌合孔146の外側に向けて弾性変形可能となっている。以下、この弾性変形可能な周面の一部147e、148eを、弾性変形部147e、148eということがある。上側シャーブレード140の嵌合孔146では、長径方向のいずれの位置においても、短径方向(図5の上下方向)に対向する周面の少なくとも一方に弾性変形部147e、148eが形成されている。
図5に示すように、上側シャーブレード140が上死点(反本体10側への移動限界)に位置する場合、第1偏心カム88aは上側シャーブレード140の嵌合孔146と2点Ta1、Ta2で接触している。このとき、接触点Ta1は弾性変形部147e上に位置しており、接触点Ta2は弾性変形部148e上に位置している。第1偏心カム88aの直径が嵌合孔146の短径寸法W2よりも大きいことから、弾性変形部147e、148eが弾性変形することによって、第1偏心カム88aと嵌合孔146はクリアランスなく嵌合している。
図5に示すように、下側シャーブレード150は、上側シャーブレード140と略同一の構成をしている。即ち、下側シャーブレード150の基部154には、第2偏心カム88bが嵌合している嵌合孔156が形成されている。嵌合孔156の周面の一部には、弾性変形部157e、158eが設けられている。図5に示すように、弾性変形部157e、158eが弾性変形することによって、第2偏心カム88bと下側シャーブレード150の嵌合孔156はクリアランスなく嵌合している。
図6(a)〜図6(d)は、両偏心カム88a、88bがD方向に略90度ずつ回転したときに実現される状態を順に示している。なお、下側シャーブレード150の図示は省略する。先に説明したように、第1偏心カム88aの直径は嵌合孔146の短径寸法W2よりも大きい。また、上側シャーブレード140の嵌合孔146では、長径方向のいずれの位置においても、短径方向に対向する周面の少なくとも一方に弾性変形部147e、148eが形成されている。それにより、図6(a)〜図6(d)に示すように、弾性変形部147e、148eの少なくとも一方が弾性変形することによって、第1偏心カム88bと上側シャーブレード140の嵌合孔146は、常に2点Ta1、Ta2で接触している。即ち、第1偏心カム88aと上側シャーブレード140の嵌合孔146は常にクリアランスなく嵌合している。第1偏心カム88aと上側シャーブレード140の嵌合孔146との間にあそびが生じず、両者が離反したり衝突したりすることがない。
以上の説明は、第2偏心カム88bと下側シャーブレード150の運動についても当てはまる。
本実施例のヘッジトリマでは、各偏心カム88a、88bと各シャーブレード140、150が衝突することがなく、両者が衝突音を発生することがない。ヘッジトリマが発生する騒音が低減されている。このヘッジトリマでは、一対のシャーブレード140、150の進退運動が過剰に妨げられることもない。
(実施例3)
本実施例では、実施例1のヘッジトリマ2において、各偏心カムと各シャーブレードの構成を変更したヘッジトリマについて説明する。従って、本実施例の説明では、主に偏心カムとシャーブレードについて説明し、他の構成について重複して説明することは避けるように努める。
図7は、本実施例のヘッジトリマが備える第1偏心カム288aと、第2偏心カム288bと、上側シャーブレード240と、下側シャーブレード250を示している。
図7に示すように、本実施例の第1偏心カム288aは、実施例1の第1偏心カム88aと略同様に、略円板形状をしている。第1偏心カム288aは、自身の形状対称軸とは異なる位置でシャフト86によって軸支されている。第1偏心カム288aでは、回転軸Xから周面289a、290aまでの距離(径)が回転軸Xの回りに変化している。第1偏心カム288aは、回転軸Xの回りに偏心回転するようになっている。
図8は、本実施例の第1偏心カム288aの構成を示す図である。図7、図8に示すように、本実施例の第1偏心カム288aでは、長径部RLの周面FLから反回転方向(反D方向)側に短径部RSの周面FSへと至る周面290aは、長径部RLの周面FLから回転方向(D方向)側に短径部RSの周面FSへと至る周面289aに比して、一部で径が縮小されている。
第2偏心カム288bは、第1偏心カム288aと略同一の構成をしている。ただし、第2偏心カム288bでは、回転軸Xから周面までの距離(径)が、回転軸Xの回りに第1偏心カム288aと略180度の位相差を持って周方向に変化している。第1偏心カム288aと第2偏心カム288bは略180度の位相差を持って偏心回転する。
図7に示すように、本実施例の上側シャーブレード240の基部244には、第1偏心カム288aが嵌合している嵌合孔246が形成されている。嵌合孔246は長円形状をしている。その長円形状では、短径が上側シャーブレード240の進退方向に伸びており、長径がそれに直交して伸びている。
図7に示すように、上側シャーブレード240の嵌合孔246では、嵌合孔246の周面の一部247、248が、嵌合孔246の内側に突出している。以下、この突出している周面の一部247、248を、干渉部247、248ということがある。干渉部247と248は点対称に設けられており、嵌合孔246は点対称の形状に形成されている。
図7は、第1偏心カム288aが偏心回転中心Xに対して上側シャーブレード240の進退方向の反ヘッジトリマ本体10側(図7の上方向)に位置する状態を示している。この状態において、第1偏心カム288aと嵌合孔246は接触点Ta1において接触している。詳しくは、嵌合孔246に設けられている干渉部247が、第1偏心カム288aの長径部RLよりも回転方向前方(D方向)側に位置する周面(Ta1の位置)と接触している。一方、第1偏心カム288aの短径部RS側では、第1偏心カム288aと嵌合孔246の間にクリアランスGが生じている。
下側シャーブレード250の基部254には、第2偏心カム288bが嵌合している嵌合孔256が形成されている。下側シャーブレード250の嵌合孔256は、上側シャーブレード240の嵌合孔246と略同様に形成されている。
各シャーブレード240、250には、後述する締結部材239等を通すための孔241、251が設けられている。
本実施例のヘッジトリマは、実施例1のヘッジトリマで利用する締結部材39(図1参照)に換えて、図9(a)(b)に示す締結部材239とリーフスプリング270を備えている。締結部材239は、ガイドプレート232とプレッシャプレート234によって一対のシャーブレード240、250を挟持するための締結部材のなかで、最もヘッジトリマ本体10側に位置するものである。
図9(a)(b)に示すように、締結部材239は、ねじ239aとナット239bとスリーブ239c等を備えている。リーフスプリング270は、側面の一部が切除された円筒形状をしており、内径はスリーブ239cの外形よりも大きく、リーフスプリング270は縮径方向に弾性変形可能である。各シャーブレード240、250は、リーフスプリング270によって、進退方向に案内されている。また、各シャーブレード240、250は、リーフスプリング270を弾性変形させることによって、進退方向と直交する方向に移動可能となっている。各シャーブレード240、250が進退方向と直交する方向に移動した場合、リーフスプリング270は各シャーブレード240、250を基準位置へと付勢する。
本実施例のヘッジトリマでは、各シャーブレード240、250が締結部材239の位置で進退方向と直交する方向に移動可能に支持されているので、各偏心カム288a、288bに対して進退方向と直交する方向に移動することができる。
なお、締結部材239に加えて、図1に示す他の締結部材38の一つあるいは複数を、締結部材239と同様の構成に変更することもできる。
図10を参照して、両偏心カム288a、288bと一対のシャーブレード240、250が運動する様子を説明する。図10(a)〜図10(d)は、両偏心カム288a、288bがD方向に変位する状態を順に示している。ここでは第1偏心カム288aと上側シャーブレード240について説明し、第2偏心カム288bと下側シャーブレード250についての説明は省略する。図10においても、下側シャーブレード250の図示は省略する。
図10(a)は、第1偏心カム288aが偏心回転中心Xに対して上側シャーブレード240の進退方向の反ヘッジトリマ本体10側に位置(上死点)する状態を示している。この状態において、第1偏心カム288aと上側シャーブレード240の嵌合孔246が、接触点Ta1において接触している。詳しくは、嵌合孔246に設けられている干渉部247が、第1偏心カム288aの長径部RLよりも回転方向(D方向)側に位置する周面(Ta1の位置)と接触している。
図10(b)は、第1偏心カム288aの長径部の周面FLが、嵌合孔246の干渉部247と接触点Ta1で接触している状態を示している。図10(a)の状態から図10(b)の状態に変化する過程で、干渉部247に対して第1偏心カム288aの周面289aのより長径側部分が近接することから、接触点Ta1での接触は維持される。それと同時に、第1偏心カム288aは上側シャーブレード240の進退方向のヘッジトリマ本体10側(図10の下方向)に変位するので、第1偏心カム288aの周面289aと嵌合孔246が新たに接触点Ta2で接触するようになる。第1偏心カム288aの周面289aが嵌合孔246と2箇所で接触すると、第1偏心カム288aが上側シャーブレード240を図中のS方向に移動させる。図中のS方向は、上側シャーブレード240の進退方向と直交する方向である。第1偏心カム288aと上側シャーブレード240が、上側シャーブレード240の進退方向と直交する方向に相対的に移動することによって、第1偏心カム288aや上側シャーブレード240はスムーズに運動することができる。
図10(c)は、第1偏心カム288aの縮径されている周面290aが、嵌合孔246の干渉部247に近接している状態を示している。図10(b)の状態から図10(c)の状態に変化する過程で、接触点Ta1での接触が解消されるとともに、接触点Ta2での接触が維持される。接触点Ta1での接触が解消されることによって、上側シャーブレード240は図中のU方向に移動する。図中のU方向は、上側シャーブレード240の進退方向と直交する方向であり、S方向に対して反対の方向である。
図10(d)は、第1偏心カム288aが偏心回転中心Xに対して上側シャーブレード240の進退方向のヘッジトリマ本体10側に位置する状態を示している。この状態において、第1偏心カム288aと上側シャーブレード240の嵌合孔246が、接触点Ta2において接触している。詳しくは、嵌合孔246に設けられている干渉部248が、第1偏心カム288aの長径部RLよりも回転方向(D方向)側に位置する周面(Ta2の位置)と接触している。図10(c)の状態から図10(d)の状態に変化する過程で接触点Ta2での接触が維持される。
図10(d)の状態は、図10(a)状態と点対称な状態である。図10(d)の状態以降は、図10(b)(c)の状態と点対称な状態が順に実現され、図10(a)の状態に戻ることとなる。
第1偏心カム288aと上側シャーブレード240の嵌合孔246は、1点で接触する状態と2点で接触する状態を繰り返しながら、互いに接触する状態を常に維持している。このヘッジトリマでは、両者が完全に離反することがなく、第1偏心カム288aが無負荷の状態となることが禁止されている。それにより、第1偏心カム288aがモータ18によって増速されながら上側シャーブレード240と衝突することがない。
なお、上側シャーブレード240を進退方向と直交する方向に移動可能に支持することに換えて、第1偏心カム288aの回転中心Xを上側シャーブレード240の進退方向と直交する方向に移動可能に支持する構成としてもよい。即ち、例えばシャフト86を上側シャーブレード240の進退方向と直交する方向に移動可能に支持する構成としてもよい。
以上の説明は、第2偏心カム288bと下側シャーブレード250の運動についても当てはまる。
本実施例のヘッジトリマでは、各偏心カム288a、288bが常に各シャーブレード240、250と接触しており、無負荷の状態となることがない。それにより、各偏心カム288a、288bが、モータ18によって増速されながら各シャーブレード240、250に衝突することがない。カムとシャーブレードが大きな衝突音を発生することがなく、ヘッジトリマが発生する騒音を低減することができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
実施例1のヘッジトリマの構成を示す図。 ヘッジトリマ本体とシャーブレードアセンブリの組付部を示す図。 実施例1の偏心カムとシャーブレードの構成を示す図。 実施例1の偏心カムと一対のシャーブレードの運動の様子を経時的に示す図。 実施例2のヘッジトリマのシャーブレードの構成を示す図。 実施例2の偏心カムとシャーブレードの運動の様子を経時的に示す図。 実施例3のヘッジトリマの偏心カムとシャーブレードの構成を示す図。 実施例3の偏心カムの構成を示す図。 実施例3の締結部材の構成を示す図。 実施例3の偏心カムとシャーブレードの運動の様子を経時的に示す図。
符号の説明
2・・ヘッジトリマ
10・・ヘッジトリマ本体
12・・電源コード
14・・第1把持部
16・・トリガスイッチ
18・・モータ
18a・・モータの出力軸
20・・第2把持部
30・・シャーブレードアセンブリ
32・・ガイドプレート
34・・プレッシャプレート
38、39・・締結部材
40、50、140、150、240、250・・シャーブレード
42、52・・シャーブレードの刃部
44、54、144、154、244、254・・シャーブレードの基部
47e、147e、148e・・弾性変形部
46、56、146、156、246、256・・シャーブレードの嵌合孔
80・・動力伝達部
82・・回転ギヤ
86・・シャフト
88a、88b、288a、288b・・偏心カム
89a、89b、289a、290a・・偏心カムの周面
247、248・・干渉部

Claims (4)

  1. ヘッジトリマ本体と、
    ヘッジトリマ本体に内蔵されている回転源によって回転させられるカムと、
    ヘッジトリマ本体に対して進退可能に案内されているシャーブレードを備えており、
    前記カムは、回転中心から周面に至る径が周方向に変化する偏心カムであり、
    前記シャーブレードには、前記カムと嵌合する嵌合孔と、その嵌合孔の周面の一部に沿って伸びる空孔が形成されており、
    前記嵌合孔の周面の一、嵌合孔の外側に位置する前記空孔に向けて弾性変形可能な弾性変形部となっていることを特徴とするヘッジトリマ。
  2. 前記弾性変形部は、前記シャーブレードが進退運動の死点位置にあるときに前記カムと接触する位置に設けられていることを特徴とする請求項1のヘッジトリマ。
  3. 前記弾性変形部は、前記カムの回転中心を通って前記シャーブレードの進退方向に伸びている線上に設けられていることを特徴とする請求項1又は2のヘッジトリマ。
  4. 前記嵌合孔の周面には、嵌合孔の内側に突出している突出部が、前記弾性変形部と対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項のヘッジトリマ。
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