JP4606276B2 - ピストンシール部材及び該ピストンシール部材を用いたディスクブレーキ - Google Patents

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Description

本発明は、無架橋のゴム組成物で形成されたピストンシール部材及び該ピストンシール部材を用いたディスクブレーキに関する。
ピストンシール部材は、一般にゴムを主成分とする架橋ゴム組成物によって成形されている。例えば、車両用のディスクブレーキには、ピストンおよびシリンダを内蔵したキャリパボディが装着され、シリンダの内周面に形成された環状溝には、ピストンシール部材が装着されている。ディスクブレーキは、ブレーキ液圧によって、各車輪に固定されているディスクロータにブレーキパッドを押し付け、摩擦材であるブレーキパッドの摩擦力で車輪の回転を止めるものである。このピストンシール部材は、ブレーキ液をシールする役割と、ブレーキ液圧によって前進したピストンを戻す(ロールバック)役割とを有する。ここで、このブレーキパッドは、ブレーキ液圧によって、シリンダの孔のピストンが前進することにより、ディスクに押し付けられる。
すなわち、このピストンシール部材が装着されていることにより、前記シリンダと、前記シリンダの孔に挿入されたピストンと、を液密的に移動可能な状態で密接させることができる。また、液圧にて前進したピストンは、ピストンシール部材によってロールバックされる。したがって、このピストンシール部材には、ブレーキ液を確実にシールするための靭性と、液圧にて前進したピストンを元の位置に戻す(ロールバック)ための弾性との両方が求められる。
また、ディスクブレーキのキャリパボディは、ディスクロータとブレーキパッドとの間に生じる摩擦熱によって、作動中に高温になる。これに伴い、ピストンシール部材も高温に曝される。ゴム組成物からなるピストンシール部材は、高温になると熱膨張するとともに、ピストンシール部材の弾性率が低下する。この場合、ピストンシール部材の熱膨張及びピストンシール部材の弾性率の低下によってピストンのロールバック量が変化することになり、ブレーキの効き代が変化することになる。例えば、オートバイのディスクブレーキにおいては、ブレーキ・レバーのストローク量が変化することになり、運転者のブレーキ操作に違和感を生じることがある。
そこで、エチレン・プロピレンゴム100重量部に対し、少なくともカーボンブラック100重量部以上を添加したゴム組成物によって成形されたピストンシール部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、炭素繊維(カーボンナノファイバーを含む)およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなるピストンシール部材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、従来の架橋ゴム組成物で形成されたピストンシール部材は、リサイクルすることができなかった。ゴム組成物のリサイクルは、環境保護を推進する産業界、特に自動車産業界におけるリサイクル率向上のために切望されていた。
特開2004−316773号公報 特開2004−232786号公報
そこで、本発明の目的は、リサイクル可能なゴム組成物からなるピストンシール部材及び該ピストンシール部材を用いたディスクブレーキを提供することにある。
本発明にかかるピストンシール部材は、シリンダ孔と、該シリンダ孔内を摺動するピストンと、を液密にかつ摺動可能に保持するピストンシール部材であって、
ムと、該ゴムに分散されたカーボンナノファイバーと、を含む無架橋のゴム組成物で形成され
前記無架橋のゴム組成物は、30℃の動的弾性率に対する150℃の動的弾性率の割合である動的弾性率の保持率が50%以上であることを特徴とする。
本発明にかかるピストンシール部材によれば、無架橋のゴム組成物で形成されているため、使用後に再度せん断力をかけて混練し、再利用(リサイクル)することができる。しかも、ゴム組成物は、無架橋であってもカーボンナノファイバーによって補強されることで柔軟性と強さを備え、無架橋のままピストンシール部材として使用可能である。特に、カーボンナノファイバーが分散された無架橋のゴム組成物は、流動温度が150℃以上であり、高温においても流動しないため、無架橋の状態のまま架橋したゴム組成物と同じようにピストンシール部材として使用できる。また、本発明にかかるピストンシール部材によれば、圧縮永久歪及び引張永久歪が小さいため、ピストンとシリンダとの液密性を確実に維持することができる。
本発明にかかるピストンシール部材において、前記無架橋のゴム組成物は、前記ゴム100重量部に対して、前記カーボンナノファイバーを5〜100重量部含み、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.7〜15nmかつ平均長さが0.5〜100μmとすることができる。
また、本発明にかかるピストンシール部材において、前記無架橋のゴム組成物は、30℃及び150℃における動的弾性率がいずれも8MPa以上であることができる。
本発明にかかるピストンシール部材によれば、非常に細いカーボンナノファイバーを大量に用いて補強することによって、高温における物性低下が小さく、温度変化に対してピストンとシリンダとの安定した液密性を維持することができる。
また、ゴムの不飽和結合または基が、カーボンナノファイバーの活性な部分、特にカーボンナノファイバーの末端のラジカルと結合することにより、カーボンナノファイバーの凝集力を弱め、その分散性を高めることができる。その結果、ピストンシール部材は、基材であるゴムにカーボンナノファイバーが均一に分散されたものとなる。
本発明にかかるディスクブレーキは、前記本発明のピストンシール部材と、
シリンダ孔を有するシリンダと、
前記シリンダ孔に挿入されるピストンと、を含み、
前記ピストンシール部材は、前記シリンダ孔の内周壁に形成された環状溝に嵌め込まれ、
前記シリンダ孔に挿入された前記ピストンを液密的に移動可能な状態で密接させるとともに、液圧にて前進した該ピストンをロールバックさせる。
本発明にかかるディスクブレーキによれば、本発明のピストンシール部材が環状溝に嵌め込まれることにより、広い温度範囲において安定したピストンの作動性及びピストンとシリンダとの液密性を維持することができる。また、本発明にかかるピストンシール部材が無架橋のゴム組成物で形成されているため、車両におけるリサイクル率を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るピストンシール部材8を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示すピストンシール部材8を含むディスクブレーキ20を模式的に示す断面図である。本実施の形態においては、一例として、フローティングタイプの車両用ディスクブレーキ(図2参照)について説明する。
(ディスクブレーキ)
本実施の形態にかかるディスクブレーキ20は、環状のピストンシール部材8と、シリンダ孔6aを有するシリンダ6と、シリンダ孔6aに挿入されるピストン5と、を含み、ピストンシール部材8は、シリンダ孔6aの内周壁に形成された環状のピストンシール溝7に嵌め込まれ、シリンダ孔6aに挿入されたピストン5を液密的に移動可能な状態で密接させるとともに、液圧にて前進したピストン5をロールバックさせる。
ディスクブレーキ20には、ピストン5およびシリンダ6を含むキャリパボディ1が設けられている。キャリパボディ1は、作用部1bおよび反作用部1cを含む。この作用部1bおよび反作用部1cは、ブリッジ部1aを介して一体的に形成されている。
車輪(図示せず)と一体回転するディスクロータ2の両側の摩擦面に臨ませて、一対の摩擦パッド4b,4cが配置されている。ブラケット3には、摩擦パッド4b,4cをディスクロータ2に押圧するキャリパボディ1がスライドピン(図示せず)を介して進退可能に連結している。このキャリパボディ1は、一方の摩擦パッド4bの背面に配置する作用部1bと、他方の摩擦パッド4cの背面に配置する反作用部1cと、ディスクロータ2の外周を跨いで作用部1bおよび反作用部1cを連結するブリッジ部1aとで構成される。
このディスクブレーキ20は、車体(図示せず)に固定されたブラケット3に摺動可能な状態で支持されている。また、図2に示すように、ピストン5およびシリンダ6は作用部1bに形成されている。
摩擦パッド4bは、シリンダ6の孔6aに挿入されたピストン5によって押されて移動し、ディスクロータ2の一側面に接する。摩擦パッド4cは、反作用部1cによって押されて移動し、ディスクロータ2の他方の側面に接する。上記の動作により、制動が行なわれる。
シリンダ孔6aの内周壁には、環状のピストンシール溝7が設けられている。このピストンシール溝7にピストンシール部材8が嵌め込まれている。ピストンシール部材8の材質については後述する。
液圧室9は、ピストン5の底部とシリンダ6との間に設けられている。この液圧室9には、供給口10よりブレーキ液が供給される。ピストンシール部材8は、このブレーキ液をシールする機能と、液圧室9の液圧が低下したときに、前進していたピストン5をロールバックさせる機能を有する。供給口10は、液圧経路28を介して、液圧源であるマスタシリンダ(図示せず)の出力ポート(図示せず)に接続されている。
図1に示すように、ピストンシール溝7は、面取コーナ7aと面取コーナ7bとを有している。ピストンシール部材8は、図1に示す黒い矢印方向(図2におけるディスクロータ2側)にピストン5が摺動して前進することによって、ピストン5の摺動面に追従してピストンシール部材8の一部が面取コーナ7aに入り込む。そして、液圧室9の液圧が低下したらピストンシール部材8の弾性によって復元することでピストン5が矢印と反対方向にロールバックされる。
(ピストンシール部材)
本実施の形態にかかるピストンシール部材8は、例えばディスクブレーキ20のキャリパボディ1に設けられたシリンダ孔6aと、該シリンダ孔6a内を摺動するピストン5と、を液密にかつ摺動可能に保持し、ゴムと、該ゴムに分散されたカーボンナノファイバーと、を含む無架橋のゴム組成物で形成され、前記無架橋のゴム組成物は、30℃の動的弾性率に対する150℃の動的弾性率の割合である動的弾性率の保持率が50%以上である。
(ゴム)
まず、本実施の形態にかかるゴムは、分子量が好ましくは5000ないし500万、さらに好ましくは2万ないし300万である。ゴムの分子量がこの範囲であると、ゴム分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、ゴムは、凝集したカーボンナノファイバーの相互に侵入しやすく、したがってカーボンナノファイバー同士を分離する効果が大きい。ゴムの分子量が5000より小さいと、ゴム分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけてもカーボンナノファイバーを分散させる効果が小さくなる。また、ゴムの分子量が500万より大きいと、ゴムが固くなりすぎて加工が困難となる。
ゴムは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃で測定した、未架橋体におけるネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が好ましくは100ないし3000μ秒、より好ましくは200ないし1000μ秒である。上記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、ゴムは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができる。このことにより、ゴムとカーボンナノファイバーとを混合したときに、ゴムは高い分子運動によりカーボンナノファイバーの相互の隙間に容易に侵入することができる。スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が100μ秒より短いと、ゴムが充分な分子運動性を有することができない。また、スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が3000μ秒より長いと、ゴムが液体のように流れやすくなり、カーボンナノファイバーを分散させることが困難となる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法によりゴムのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、ゴムは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、ゴムは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかるゴムは中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
ゴムは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーの末端のラジカルに対して親和性を有する不飽和結合または基を有するか、もしくは、このようなラジカルまたは基を生成しやすい性質を有する。かかる不飽和結合または基としては、二重結合、三重結合及び官能基から選択される少なくともひとつであることができる。このような官能基としては、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基などがある。
カーボンナノファイバーは、通常、側面は炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっている。本実施の形態では、ゴムの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーのラジカルと親和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や基を有することにより、ゴムとカーボンナノファイバーとを結合することができる。このことにより、カーボンナノファイバーの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。そして、ゴムと、カーボンナノファイバーと、を混練する際に、ゴムの分子鎖が切断されて生成したフリーラジカルは、カーボンナノファイバーの欠陥を攻撃し、カーボンナノファイバーの表面にラジカルを生成すると推測できる。
ゴムとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのゴム類およびこれらの混合物を用いることができる。特に、ブレーキ液と接触するピストンシール部材には、ゴムとしてエチレン・プロピレンゴムやスチレン−ブタジエンゴムが好ましい。例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)のように極性の低いゴムは、混練の温度を比較的高温(例えばEPDMの場合、50℃〜150℃)とすることで、フリーラジカルを生成するのでカーボンナノファイバーを分散させることができる。エチレン・ピロピレンゴムとしては、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・共重合体)、EPM(エチレン・プロピレン共重合体)等を用いることができるが、EPDMが好ましい。なお、ゴムは、通常架橋して使用されるゴムであり、熱可塑性エラストマーを含まない。
本実施の形態にかかるエチレン・プロピレンゴムは、プロピレン含有量が35〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは37〜55%である。プロピレン含有量が35重量%未満ではエチレン成分が多すぎてゴム組成物が剛直になり、柔軟性が低くなるため好ましくない。また、プロピレン含有量が60重量%を超えると、柔らかすぎてシール部材として好ましくない。
(カーボンナノファイバー)
本実施の形態にかかるカーボンナノファイバーは、平均直径が0.7〜15nmかつ平均長さが0.5〜100μmである。ピストンシール部材のゴム組成物において、カーボンナノファイバーの配合量は、ゴム100重量部に対して、5〜100重量部であることが好ましい。ゴム組成物におけるカーボンナノファイバーの配合量が5重量部よりも少ないとカーボンナノファイバーの補強効果が小さく、100重量部を超えると硬度や弾性率が高くなり好ましくない。このように非常に細いカーボンナノファイバーで補強することによって、高温における物性低下を小さくすることができる。なお、カーボンナノファイバーが0.7nmより細いものは入手が困難であり、15nmを越えるものは材料特性(補強効果)が得ることができないので好ましくない。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。
アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。
レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。
気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。
カーボンナノファイバーは、ゴムと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、ゴムとの接着性やぬれ性を改善することができる。
本実施の形態にかかるゴム組成物は、ゴム100重量部に対して、カーボンナノファイバーの配合量が比較的少量例えば20重量部未満の場合、カーボンナノファイバー以外の配合剤として、カーボンブラックや繊維を加えることが好ましい。その場合、カーボンブラックは、種々の原材料を用いた種々のグレードのカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは、その基本構成粒子(いわゆる一次粒子)が融着して連結したアグリゲート(いわゆる二次凝集体)が発達した比較的高いストラクチャーを有するものが好ましい。
本実施の形態にかかるカーボンブラックは、基本構成粒子の平均粒径が10〜100nmであって、DBP吸収量が80ml/100g以上であり、さらに好ましくは、平均粒径が10〜40nmであって、DBP吸収量が100〜500ml/100gである。カーボンブラックの平均粒径が10nm未満だと加工(混練)が困難であり、平均粒径が100nmより太いと補強効果が劣る。カーボンブラックは、アグリゲートが発達したストラクチャーの高低によって補強効果が影響を受けるため、DBP吸収量が80ml/100g以上とすると補強効果が大きい。
このようなカーボンブラックとしては、例えばケッチェンブラック、SAF、SAF-HS、ISAF、ISAF-HS、HAF、HAF-HS、FEF、FEF−HS、SRF−HSなどのカーボンブラックを用いることができる。
本実施の形態にかかるゴム組成物は、カーボンナノファイバー以外の配合剤として、繊維を加える場合、繊維は、しなやかで屈曲性に優れ、平均直径が1〜100μmかつアスペクト比が50〜500が好ましい。繊維の平均直径が1μm未満だと加工(混練)が困難であり、平均直径が100μmより太いと補強効果が劣る。
繊維としては、屈曲性に優れたしなやかな繊維が好ましく、天然繊維、金属繊維、合成繊維またはこれらの繊維の混合物を用いることができる。天然繊維としては、綿、麻などの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維を適宜選択して用いることができる。金属繊維としては、ステンレス繊維、銅繊維などを適宜選択して用いることができる。合成繊維としては、脂肪族ポリアミド系の繊維を用いることができる。なお、ポリエステル系繊維、芳香族ポリアミド系繊維、セラミックス繊維などは剛直であり、屈曲性がないので適当ではない。また、繊維は、カーボンブラックと一緒に加えてもよい。
(ゴム組成物の製造方法)
本実施の形態にかかるゴム組成物の製造方法としては、ゴムとカーボンナノファイバーとを、オープンロール、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなど公知の混合機に供給し、混練する方法が挙げられる。カーボンブラック及び繊維などのカーボンナノファイバー以外の充填材は、カーボンナノファイバーを供給する前に混合器に供給することが好ましい。通常、この混練の際に、カーボンブラックと同量程度のプロセスオイルが使用されるが、本発明のゴム組成物の製造過程では使用しないことが望ましい。プロセスオイルを用いて製造されたピストンシール部材を用いた液圧マスタシリンダは、プロセスオイルが作動液中に溶け出し、作動液の性能の経時変化や耐熱性の変化の原因となるからである。
ゴム組成物の製造方法として、例えば、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロール法を用いる場合には、例えば1.5mmの間隔で配置された回転する2本のロールにゴムを投入する。次に、このゴムに充填材例えばカーボンブラックや繊維などを加え、さらにカーボンナノファイバーを加えて、ロールを回転させ、ゴムとカーボンナノファイバーとの混合物を得る。この混合物を0.1ないし0.5mmの間隔に設定されたオープンロールに投入し、例えば10回程度薄通しを行なってゴム組成物を得る。このような薄通しによってゴムに高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバーがゴム分子に1本づつ引き抜かれるように相互に分離し、ゴムに分散される。特に、カーボンブラックなどの粒子状の充填材をカーボンナノファイバーに先立って混合させた場合には、カーボンブラックの周りに乱流が発生し、カーボンナノファイバーを容易に分散させることができる。
また、この混練工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ゴムとカーボンナノファイバーとの混合は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の比較的低い温度で行われる。なお、ゴムとしてEPDMを用いた場合には、2段階の混練工程を行なうことが望ましく、第1の混練工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、EPDMとカーボンナノファイバーとの混合は、第2の混練工程より50〜100℃低い第1の温度で行なわれる。第1の温度は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃である。ロールの第2の温度は、50〜150℃の比較的高い温度に設定することでカーボンナノファイバーの分散性を向上させることができる。
この混練工程では、剪断力によって剪断されたゴムにフリーラジカルが生成され、そのフリーラジカルがカーボンナノファイバーの表面を攻撃することで、カーボンナノファイバーの表面は活性化される。このとき、分子長が適度に長く、分子運動性の高いゴムがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、ゴムの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。この状態で、混合物に強い剪断力が作用すると、ゴムの移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、ゴム中に分散されることになる。そして、一旦分散したカーボンナノファイバーは、ゴムとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。要するに、この混練工程では、凝集したカーボンナノファイバーを分離でき、かつゴム分子を切断してラジカルを生成する剪断力をゴムに与えることができればよい。
(無架橋のゴム組成物の特性)
本実施の形態にかかる無架橋のゴム組成物は、10Hz、30℃及び150℃における動的弾性率がいずれも8MPa以上である。また、この無架橋のゴム組成物は、30℃から150℃への温度上昇に伴う動的弾性率の保持率が50%以上である。ピストンシール部材としては、高温においても高い動的弾性率を安定して維持することが好ましく、特に、本実施の形態にかかるディスクブレーキのキャリパボディにおけるピストンシールとして用いた場合、望ましいロールバック量を有するためには動的弾性率が8MPa以上であることが好ましい。また、本実施の形態にかかるディスクブレーキのキャリパボディにおけるピストンシールとして用いた場合、30℃から150℃への温度上昇に伴う動的弾性率の保持率が50%以上であると、高温においても望ましいロールバック量を有する。
ゴム組成物は、無架橋でありながら高温における物性低下が小さく、例えば高温における圧縮永久歪が小さいため、ピストンシール部材における耐ヘタリ性に優れている。
無架橋のゴム組成物は、基材であるゴムにカーボンナノファイバーが均一に分散されている。このことは、ゴムがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、カーボンナノファイバーによって拘束を受けたゴム分子の運動性は、カーボンナノファイバーの拘束を受けない場合に比べて小さくなる。そのため、本実施の形態にかかるピストンシール部材の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)及びスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーを含まないゴム単体の場合より短くなる。
また、ゴム分子がカーボンナノファイバーによって拘束された状態では、以下の理由によって、非ネットワーク成分(非網目鎖成分)は減少すると考えられる。すなわち、カーボンナノファイバーによってゴムの分子運動性が全体的に低下すると、非ネットワーク成分は容易に運動できなくなる部分が増えて、ネットワーク成分と同等の挙動をしやすくなること、また、非ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため、カーボンナノファイバーの活性点に吸着されやすくなること、などの理由によって、非ネットワーク成分は減少すると考えられる。そのため、第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は、カーボンナノファイバーを含まないゴム単体の場合より小さくなる。
以上のことから、無架橋のゴム組成物は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって得られる測定値が以下の範囲にあることが望ましい。
すなわち、無架橋のゴム組成物において、150℃で測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)は1000ないし10000μ秒であり、さらに第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることが好ましい。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法により測定されたスピン−格子緩和時間(T1)は、スピン−スピン緩和時間(T2)とともに物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、ゴムのスピン−格子緩和時間が短いほど分子運動性が低く、ゴムは固いといえ、そしてスピン−格子緩和時間が長いほど分子運動性が高く、ゴムは柔らかいといえる。したがって、カーボンナノファイバーが均一に分散したピストンシール部材は、分子運動性が低くなり、上述のT2n,T2nn,fnnの範囲となる。
無架橋のゴム組成物は、動的粘弾性の温度依存性測定における流動温度が、原料ゴム単体の流動温度より20℃以上高温であることが好ましく、無架橋のゴム組成物の流動温度は150℃以上が好ましく、より好ましくは200℃以上である。無架橋のゴム組成物は、ゴムにカーボンナノファイバーが良好に分散されている。このことは、上述したように、ゴムがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、ゴムは、カーボンナノファイバーを含まない場合に比べて、その分子運動が小さくなり、その結果、流動性が低下する。このような流動温度特性を有することにより、無架橋のゴム組成物は、動的粘弾性の温度依存性が小さくなり、その結果、優れた耐熱性を有すると共に、無架橋のままピストンシール部材として使用できる。
また、無架橋のゴム組成物は、カーボンナノファイバーを含むことで表面粘着性が低くなり、架橋しない状態でありながら成形が可能である。
(ピストンシール部材の特性)
混練されたゴム組成物は、ピストンシール部材の形状を有した金型を用いて押出成形もしくは射出成形される。一般にゴム組成物を架橋成形してピストンシール部材を得るが、本実施例のピストンシール部材は、無架橋のまま成形され、再利用(リサイクル)可能である。
したがって、本実施の形態にかかるピストンシール部材は、上述した無架橋のゴム組成物の特性をそのまま有しており、低温から高温にかけて広い温度範囲で物性変化が少なく、特に熱膨張が安定しているので広い温度範囲で使用することが可能である。このようなピストンシール部材は、無架橋でありながら、広い温度範囲で摺動抵抗が温度変化に対して安定しており、ピストンへのはり付き現象も改善される。また、ピストンシール部材は、永久歪も小さいのでシール不良も少ない。また、このようなピストンシール部材をディスクブレーキのキャリパボディに用いると、ピストンをロールバックさせるという作動性を広い温度範囲で安定させることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
例えば、本実施の形態においては、車両用のディスクブレーキに内蔵するピストンシール部材であったが、その他のピストンシール部材であってもよい。特に室温(30℃)などの低温領域から例えば150℃の高温領域で使用されるピストンシール部材において有用である。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜6、比較例1〜3)
(a)無架橋ゴム組成物の作製
1)6インチオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、ゴムを投入して、ロールに巻き付かせた。
2)ゴム100重量部(phr)に対して表1に示す量(重量部(phr))のカーボンナノファイバー(表1では「CNT13」と記載する)をゴムに投入した。実施例4と5においては、さらにカーボンブラック(表1では「HAF−HS」と記載する)を、実施例3と5においては、繊維(絹糸)を、ゴムに投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。
3)カーボンナノファイバーを投入し終わったら、ゴムとカーボンナノファイバーとの混合物をロールから取り出した。
4)ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し10回行った。
5)ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした混合物を投入し、分出しした。
このようにして、実施例1〜6および比較例1〜3の無架橋のゴム組成物を得た。表1において、原料ゴムは、「EPDM」がエチレン・プロピレンゴム、「SBR」がスチレン−ブタジエンゴムである。また、表1において、「CNT13」は平均直径が約13nmのマルチウォールカーボンナノチューブであり、「HAF−HS」は平均粒径27nm、DBP吸収量101ml/100g、窒素比表面積82m/gのHAF−HSグレードのカーボンブラックであり、「絹糸」は平均直径が約3μm平均長さが約6mmの絹糸であり、POはパーオキサイド(架橋剤)である。
(b)ピストンシール部材の作製
前記(a)で得られたゴム組成物を射出成形し、実施例1〜6および比較例2、3の無架橋のピストンシール部材を得た。比較例1は、ピストンシール部材に成形された後、架橋した。
(c)電子顕微鏡による観察
各無架橋のゴム組成物について、電子顕微鏡(SEM)を用いて、カーボンナノファイバー及びカーボンブラックの分散の状態を観察した。全てのサンプルでカーボンナノファイバー及びカーボンブラックがゴム中に均一に分散している様子が観察された。
(d)静的物性の測定
各無架橋のゴム組成物について、ゴム硬度(JISA)、引張強度(TB)および切断伸び(EB)を測定した。ゴム硬度(JISA)については、JIS K 6253によって測定した。TB及びEBについては、JIS K 6521−1993によって測定した。これらの結果を表1に示す。
(e)動的物性の測定
各無架橋のゴム組成物について、30℃及び150℃におけるE’(動的粘弾性率)をJIS K 6521−1993によって測定した。さらに、E’保持率(%)として30℃のE’に対する150℃のE’の割合(E’保持率(%)=E’(150℃)/E’(30℃)・100)を計算した。これらの結果を表1に示す。
(f)流動温度の測定
原料ゴム単体および無架橋のゴム組成物について、動的粘弾性測定(JIS K 6394)によって流動温度を測定した。具体的には、流動温度は、幅5mm、長さ40mm、厚み1mmのサンプルに正弦振動(±0.1%以下)を与え、これによって発生する応力と位相差δを測定して求めた。このとき、温度は、−70℃から2℃/分の昇温速度で200℃まで変化させた。その結果を表1に示す。なお、表1において、200℃までサンプルの流動現象がみられない場合を「200℃以上」と記載した。
(g)パルス法NMRを用いた柔軟性の測定
各無架橋のゴム組成物について、パルス法NMRを用いてハーンエコー法及び反復法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、無架橋のゴム組成物は、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は150℃であった。この測定によって、サンプルの第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)を求めた。その結果を表1に示す。
(h)リサイクル性の評価
各ピストンシール部材のサンプルを、オープンロールで混練し、射出成形してピストンシール部材を作成する工程を5回繰り返して製品(ピストンシール部材)が作成可能であるかどうかを評価した。その結果を表1に示す。なお、表1において、「○」は製品が作成可能であったことを示し、「×」はリサイクルできなかったことを示し、「−」はリサイクル試験を行なっていないことを示す。
(i)ロールバック量の評価試験及びレバーストローク増加量の評価試験
ゴム組成物を調整して成形したピストンシール部材をディスクブレーキの環状のピストンシール溝に嵌め込み、ロールバック量の評価試験及び図示せぬマスタシリンダを作動させる図示せぬ操作レバーのレバーストローク増加量について評価試験を行い、その特性を評価した。その結果を表1に示す。なお、ロールバック量の測定は、ピストンシール部材140℃において、液圧0.5MPaをディスクブレーキに10回加えて作動させた後、液圧6.9MPaで5秒間保持し、そのときのピストン位置に対する液圧を解放した時のピストン移動量を測定した。また、レバーストローク増加量(表1では「レバーストローク変化」)は、ピストンシール部材が30℃と140℃の状態におけるブレーキの効きはじめまでの2輪車用のブレーキレバーのストローク量を測定した。さらに、ピストンシール部材の耐久性評価として引きずりの有無を確認した。なお、表1において、「○」は引きずりが見られなかったものを示し、「×」は引きずりが見られたことを示す。
(j)表面粘着性の評価
ピストンシール部材の表面粘着性によって成形性を評価した。その結果を表1に評価を示す。表面の粘着性が高く成形が困難な場合には「×」を記入し、表面の粘着性が低く成形が容易である場合には「○」を記入した。
(k)圧縮永久歪(耐ヘタリ性)及び高温定荷重疲労の測定
各ゴム組成物について、圧縮永久歪(JIS K6262)を測定した。圧縮永久歪は、150℃、70時間、25%圧縮の条件で行なった。圧縮永久歪は、ピストンシール部材のいわゆる耐ヘタリ性についての評価である。高温定荷重疲労は、150℃、2MPaの荷重を繰り返し与え、破断した回数を求めた。これらの結果を表1に示す。
Figure 0004606276
表1から、本発明の実施例1〜6によれば、以下のことが確認された。すなわち、実施例1〜6の無架橋のゴム組成物は、架橋したゴム組成物と同等の静的物性及び動的物性を示した。特に、常温から高温における動的弾性率の保持率及び流動温度は高く、無架橋でありながら高温における物性低下が小さいことがわかった。また、実施例1〜6のゴム組成物は、圧縮永久歪が30%以下であり、耐ヘタリ性の評価がよかった。実施例1〜6のピストンシール部材は、ロールバック量が0.04mm以上であり、レバーストローク増加量が20mm以下であったので、よい評価が得られた。さらに、実施例1〜6のピストンシール部材には、引きずりが見られなかった。また、比較例1の架橋されたゴム組成物は、リサイクル性に問題があった。比較例2、3のゴム組成物においては、表面の粘着性が高く成形が困難であったので、リサイクル性の評価をしていない。また、比較例2、3のゴム組成物においては、圧縮永久歪が30%を大きく超え、80%以上であった。比較例2、3のピストンシール部材は、ロールバック量が0.04mm未満であり、レバーストローク増加量が20mmを超えていたので、運転者がブレーキ操作時に違和感を受けるようになると評価された。さらに、比較例2、3のピストンシール部材には、引きずりが見られた。
表1に示すように、実施例1〜6のピストンシール部材は、ハーンエコー法によるfnnが0.2未満であった。
表1に示すように、無架橋のゴム組成物における流動温度は、200℃以上であり、優れた耐熱性を有するため、無架橋のままピストンシール部材として利用できることがわかる。特に、無架橋のままピストンシール部材として利用できるため、リサイクル性が良好であった。
本発明の一実施の形態に係るピストンシール部材を模式的に示す断面図である。 図1に示すピストンシール部材を含むディスクブレーキを模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 キャリパボディ
1a ブリッジ部
1b 作用部
1c 反作用部
2 ディスクロータ
3 ブラケット
4b,4c 摩擦パッド
5 ピストン
6 シリンダ
6a シリンダ孔
7 ピストンシール溝
7a,7b 面取コーナ
8 ピストンシール部材
9 液圧室
10 供給口
11 ブーツ
20 ディスクブレーキ
28 液圧経路

Claims (8)

  1. シリンダ孔と、該シリンダ孔内を摺動するピストンと、を液密にかつ摺動可能に保持するピストンシール部材であって、
    ムと、該ゴムに分散されたカーボンナノファイバーと、を含む無架橋のゴム組成物で形成され
    前記無架橋のゴム組成物は、30℃の動的弾性率に対する150℃の動的弾性率の割合である動的弾性率の保持率が50%以上である、ピストンシール部材。
  2. 請求項1において、
    前記無架橋のゴム組成物は、前記ゴム100重量部に対して、前記カーボンナノファイバーを5〜100重量部含み、
    前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.7〜15nmかつ平均長さが0.5〜100μmである、ピストンシール部材。
  3. 請求項1または2において、
    前記無架橋のゴム組成物は、30℃及び150℃における動的弾性率がいずれも8MPa以上である、ピストンシール部材。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    前記ゴムは、分子量が5000ないし500万である、ピストンシール部材。
  5. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記ゴムは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、未架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし3000μ秒である、ピストンシール部材。
  6. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記ゴムは、エチレン・プロピレンゴムもしくはスチレン−ブタジエンゴムである、ピストンシール部材。
  7. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    前記無架橋のゴム組成物の流動温度は、150℃以上である、ピストンシール部材。
  8. 請求項1ないし記載のいずれかのピストンシール部材と、
    シリンダ孔を有するシリンダと、
    前記シリンダ孔に挿入されるピストンと、を含み、
    前記ピストンシール部材は、前記シリンダ孔の内周壁に形成された環状溝に嵌め込まれ、
    前記シリンダ孔に挿入された前記ピストンを液密的に移動可能な状態で密接させるとともに、液圧にて前進した該ピストンをロールバックさせる、ディスクブレーキ。
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