JP4255491B2 - ディスクブレーキ用のシム板 - Google Patents
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Description
ライニング材を含むパッドを円盤状のディスクロータに押し付けて制動力を発生させるディスクブレーキ用のシム板であって、
金属板と、該金属板の少なくとも一方の表面に形成されたゴム部と、を有し、
前記ゴム部は、エチレン−プロピレンゴムに平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーが分散され、200℃における損失正接(tanδ)が0.05〜1.00であり、使用最低温度が−30℃以下であり、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核が 1 H、150℃で測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である。
ライニング材を含むパッドを円盤状のディスクロータに押し付けて制動力を発生させるディスクブレーキ用のシム板であって、
金属板と、該金属板の少なくとも一方の表面に形成されたゴム部と、を有し、
前記ゴム部は、エチレン−プロピレンゴムに平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーが分散され、200℃における損失正接(tanδ)が0.05〜1.00であり、使用最低温度が−30℃以下であり、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核が 1 H、150℃で測定した、架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし2000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である。
前記ゴム部は、200℃における動的弾性率(E’)が10MPa〜1000MPaであることができる。
前記ゴム部は、熱機械分析における劣化開始温度が160℃〜300℃であることができる。
前記ゴム部は、前記金属板の両方の表面に形成されることができる。
ゴム部76bを構成するゴム組成物の製造方法は、原料のエチレン−プロピレンゴムにカーボンナノファイバーを分散させる工程を含む。この工程で用いられる原料となるエチレン−プロピレンゴムは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核が 1 H、30℃で測定した、無架橋体における、ネットワーク成分の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし3000μ秒である。
まず、密閉式混練機10の材料供給口16からエチレン−プロピレンゴム20を投入し、第1,第2のロータ12,14を回転させる。さらに、チャンバー18内にカーボンナノファイバー22を加えて、さらに第1,第2のロータ12,14を回転させることにより、エチレン−プロピレンゴム20とカーボンナノファイバー22との混合が行われる。なお、カーボンナノファイバー22と共に、もしくはそれより前に公知の配合剤例えばカーボンブラックなどを加えることができる。この工程は、一般に素練りと呼ばれるもので、密閉式混練機の設定温度を例えば20℃とする。
ついで、エチレン−プロピレンゴム20にカーボンナノファイバー22を加えて混合した混合物をさらに混練する第1の混練工程が行なわれる。第1,第2のロータ12,14を所定の速度比で回転させる。第1の混練工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、エチレン−プロピレンゴムとカーボンナノファイバーとの混合は、第2の混練工程より50〜100℃低い第1の温度で行なわれる。第1の温度は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の第1の温度である。第1の温度が0℃よりも低い場合には混練が困難であり、第1の温度が50℃より高い場合には高い剪断力が得られないためカーボンナノファイバーをエチレン−プロピレンゴム全体に分散させることができない。第1の温度の設定は、チャンバー18の温度によって設定しても、第1、第2のロータ12,14の温度によって設定してもよく、あるいは混合物の温度を測定しながら速度比の制御や各種温度制御を行なってもよい。また、前述の混合工程に引き続いて同じ密閉式混練機で第1の混練工程を行なう場合は、あらかじめ第1の温度に設定しておいてもよい。
さらに、第1の混練工程によって得られた混合物を別の密閉式混練機10に投入し、第2の混練工程が行なわれる。第2の混練工程では、エチレン−プロピレンゴム20の分子を切断してラジカルを生成させるため、第1の温度よりも50〜100℃高い第2の温度で混練が行なわれる。第2の混練工程で用いられる密閉式混練機10は、ロータ内に内蔵したヒータもしくはチャンバーに内蔵されたヒータによって第2の温度まで昇温させられており、第1の温度よりも高温の第2の温度で第2の混練工程を行うことができる。第2の温度は、用いられるエチレン−プロピレンゴムの種類によって適宜選択することができるが、50〜150℃が好ましい。第2の温度が50℃より低いと、エチレン−プロピレンゴム分子にラジカルが生成されにくく、カーボンナノファイバーの凝集塊を解くことができない。また、第2の温度が150℃より高いと、エチレン−プロピレンゴムの分子量が低下しすぎてしまい、弾性率が低下して好ましくない。
そして、第2の混練工程によって得られた混合物36をさらに第1の温度に設定されたオープンロール30に投入し、図5に示すように、第3の混練工程(薄通し工程)を複数回、例えば10回行い、分出しする。第1のロール32及び第2のロール34のロール間隔d(ニップ)は、第1、第2の混練工程よりも剪断力が大きくなる0〜0.5mm、例えば0.3mmに設定され、ロール温度は第1の混練工程と同じ0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の第3の温度に設定される。第1のロール32の表面速度をV1、第2のロール34の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05ないし3.00であることが好ましく、さらに1.05ないし1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。薄通しされたゴム組成物は、ロールで圧延されてシート状に分出しされる。第3の混練工程は、エチレン−プロピレンゴム20中にカーボンナノファイバー22をさらに均一に分散させる仕上げの分散工程であり、より均一な分散性を要求されるときに有効である。この第3の混練工程(薄通し工程)によって、ラジカルが生成したエチレン−プロピレンゴム20がカーボンナノファイバー22を1本づつ引き抜くように作用し、カーボンナノファイバー22をさらに分散させることができる。また、第3の混練工程で架橋剤を投入し、架橋剤の均一分散も行うことができる。
(a)密閉式混練機のブラベンダー(チャンバー設定温度20℃)に、表1に示す所定量(100g)のエチレン−プロピレンゴム(100重量部(phr))を投入した。
(b)エチレン−プロピレンゴムに対して表1に示す量(重量部(phr))のカーボンナノファイバーをエチレン−プロピレンゴムに投入した。
(c)カーボンナノファイバーを投入し終わったら、エチレン−プロピレンゴムとカーボンナノファイバーとの混合物を混合(素練り)工程を行ない、ロータから取り出した。
(d)設定温度20℃の密閉式混練機のロータに上記(c)で得られた混合物を投入し、10分間第1の混練工程を行いロータから取り出した。
(e)上記(d)で得られた混合物を100℃に設定された密閉式混練機に投入し、10分間第2の混練工程を行い、密閉式混練機から取り出した。
(f)ロール間隔(ニップ)を0.3mmと狭くしたロール温度20℃の6インチオープンロールに上記(e)で得られた混合物を投入し、10回薄通し(第3の混練工程)をした。この薄通しした混合物を約1.1mm厚に圧延し分出しした。この分出しされたゴム組成物は90℃、5分間プレス成形し、それぞれ厚さ1mmのシート状の無架橋体のゴム組成物サンプルに成形した。また、分出しされたゴム組成物の内、実施例1〜4及び比較例1〜3のゴム組成物に架橋剤としてパーオキサイドを配合し、オープンロールで混合して、ロール間隙を1.1mmで分出しした。そして、分出しされたゴム組成物を175℃、20分間プレス架橋し、実施例1〜4及び比較例1〜3の架橋体のゴム組成物サンプルを成形した。
6インチオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔1.5mm)に、表2に示す所定量のニトリルゴム(100重量部(phr))を投入して、ロールに巻き付かせ、5分間素練りした後、表2示す量のカーボンブラックを投入し、混合物をオープンロールから取り出した。そして、ロール間隔を1.5mmから0.3mmへと狭くして、混合物を再びオープンロールに投入して薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得られたゴム組成物を投入し、分出しした。
表2において、「NBR(高ニトリル)」、「NBR(中高ニトリル)」、「NBR(低ニトリル)」はニトリルの含有割合の違う原料のニトリルゴムを用いた。
実施例1〜5及び比較例1〜6の各無架橋体のゴム組成物サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核が1H、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は表1及び表2のカッコ内に示すように、30℃と150℃であった。この測定によって、原料ゴムの第1のスピンースピン緩和時間(T2n/30℃)と、各サンプルについて第1のスピン−スピン緩和時間(T2n/150℃)と第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn/150℃)を有する成分の成分分率(fnn/150℃)とを求めた。測定結果を表1及び表2に示した。
実施例1〜4及び比較例1〜6の架橋体のゴム組成物サンプルと実施例5の無架橋体のゴム組成物サンプルを1.5mm×1.0mm×10mmに切り出した試験片について、SII社製熱機械分析機(TMASS)を用いて、側長荷重は25KPa、測定温度は−80〜350℃、昇温速度は2℃/分で線膨張係数を測定し、得られた線膨張係数の温度変化特性から軟化劣化もしくは硬化劣化が開始する劣化開始温度を測定した。これらの結果を表1及び表2に示す。劣化開始温度は、実施例4、比較例1,2について図6を用いて説明する。図6は、実施例4(図中X)、比較例1(図中Y)及び比較例2(図中Z)の微分線膨張係数の温度変化を示す、温度(℃)−微分線膨張係数(ppm/K)のグラフである。実施例4(X)は、架橋型の硬化劣化(収縮)であって、図6で線膨張係数が極端に変化している点で劣化が開始していると判断し、251℃を劣化開始温度とした。また、比較例1(Y)及び比較例2(Z)は、鎖切断型の軟化劣化(膨張)であって、それぞれ図6で線膨張係数が極端に変化している点で劣化が開始していると判断し、144℃と176℃を劣化開始温度とした。
実施例1〜4及び比較例1〜6の架橋体のゴム組成物サンプルと実施例5の無架橋体のゴム組成物サンプルを短冊形(40×1×5(巾)mm)に切り出した試験片について、SII社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm、測定温度−100〜300℃、動的ひずみ±0.05%、周波数10HzでJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い動的弾性率(E’、単位はMPa)と損失正接(tanδ)を測定した。測定温度が30℃と200℃における動的弾性率(E’)の測定結果を表1及び表2に示す。また、測定温度が−10℃、30℃及び200℃における損失正接(tanδ)の測定結果を表1及び表2に示す。さらに、ガラス転移点(Tg)付近の領域における損失正接(tanδ)のピーク温度を使用最低温度(℃)として表1及び表2に示す。使用最低温度は、これよりも低温の領域ではゴム組成物が硬くなりすぎるためクッション性を失うので、シム板用のゴム組成物としての使用限界温度である。
12 第1のロール
14 第2のロール
16 材料供給口
18 チャンバー
20 エチレン−プロピレンゴム
22 カーボンナノファイバー
30 オープンロール機
32 第1のロール
34 第2のロール
36 混合物
50 ディスクブレーキ
52 ディスクロータ
60 キャリパボディ
60a 作用部
60b 反作用部
62 ピストン
64 液圧室
70 パッド
72 ライニング材
74 裏板
76 シム板
76a 金属板
76b ゴム部
76c 係止片
d ロール間隔
V1 第1のロールの表面速度
V2 第2のロールの表面速度
X 実施例4の温度−微分線膨張係数特性
Y 比較例1の温度−微分線膨張係数特性
Z 比較例2の温度−微分線膨張係数特性
Claims (5)
- ライニング材を含むパッドを円盤状のディスクロータに押し付けて制動力を発生させるディスクブレーキ用のシム板であって、
金属板と、該金属板の少なくとも一方の表面に形成されたゴム部と、を有し、
前記ゴム部は、エチレン−プロピレンゴムに平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーが分散され、200℃における損失正接(tanδ)が0.05〜1.00であり、使用最低温度が−30℃以下であり、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核が 1 H、150℃で測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし3000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である、ディスクブレーキ用のシム板。 - ライニング材を含むパッドを円盤状のディスクロータに押し付けて制動力を発生させるディスクブレーキ用のシム板であって、
金属板と、該金属板の少なくとも一方の表面に形成されたゴム部と、を有し、
前記ゴム部は、エチレン−プロピレンゴムに平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーが分散され、200℃における損失正接(tanδ)が0.05〜1.00であり、使用最低温度が−30℃以下であり、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって観測核が 1 H、150℃で測定した、架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし2000μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である、ディスクブレーキ用のシム板。 - 請求項1または2において、
前記ゴム部は、200℃における動的弾性率(E’)が10MPa〜1000MPaである、ディスクブレーキ用のシム板。 - 請求項1または2において、
前記ゴム部は、熱機械分析における劣化開始温度が160℃〜300℃である、ディスクブレーキ用のシム板。 - 請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記ゴム部は、前記金属板の両方の表面に形成される、ディスクブレーキ用のシム板。
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