JP5072644B2 - 炭素繊維複合材料及び炭素繊維複合材料の製造方法 - Google Patents

炭素繊維複合材料及び炭素繊維複合材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、カーボンナノファイバーが均一に分散された炭素繊維複合材料及び炭素繊維複合材料の製造方法に関する。
一般に、カーボンナノファイバーはマトリックスに分散させにくいフィラーであった。本発明者等が先に提案した炭素繊維複合材料の製造方法は、これまで困難とされていたカーボンナノファイバーの分散性を改善し、エラストマーにカーボンナノファイバーを均一に分散させることができた(例えば、特許文献1参照)。このような炭素繊維複合材料の製造方法によれば、エラストマーとカーボンナノファイバーを混練し、剪断力によって凝集性の強いカーボンナノファイバーの分散性を向上させている。より具体的には、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合し、この状態で、分子長が適度に長く、分子運動性の高い(弾性を有する)エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの変形に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散していた。
また、本発明者等は、カーボンナノファイバーが均一に分散した炭素繊維複合材料を用いて他のマトリックス、例えば金属のマトリックスにカーボンナノファイバーを均一に分散させる炭素繊維複合金属材料の製造方法を提案した(例えば、特許文献2参照)。
このように、マトリックスへのカーボンナノファイバーの分散性を向上させることで、高価なカーボンナノファイバーを効率よく複合材料のフィラーとして用いることができるようになった。
特開2005−97525号公報 特開2005−97534号公報
本発明の目的は、カーボンナノファイバーが均一に分散された炭素繊維複合材料及び炭素繊維複合材料の製造方法を提供することにある。
本発明にかかる炭素繊維複合材料は、
エチレン−プロピレンゴムと、非極性の液状ゴムと、平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーと、を含み、
前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである
本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、カーボンナノファイバーを配合することで高い剛性を有しながら、柔軟性に優れたゴム組成物とすることができる。また、非極性の液状ゴムである液状エチレン−プロピレンゴムを含むことにより、カーボンナノファイバーを配合していても比較的低硬度の炭素繊維複合材料とすることができる。したがって、液状ゴムの配合量を調整することで炭素繊維複合材料の硬度を調整することができる。また、炭素繊維複合材料によれば、非極性の液状ゴムを含むことで耐熱性も向上することができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記エチレン−プロピレンゴムと前記液状ゴムとを合わせたゴム成分100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーを10質量部〜100質量部含むことができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記液状ゴムは、前記エチレン−プロピレンゴムの1/2倍〜3倍の質量割合で配合されることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記エチレン−プロピレンゴムと前記液状エチレン−プロピレンゴムとを合わせたゴム成分100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーを10質量部〜100質量部含み、
前記液状エチレン−プロピレンゴムは、前記エチレン−プロピレンゴムの1/2倍〜3倍の質量割合で配合され、
破断伸びが280%〜500%であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、
エチレン−プロピレンゴムと非極性の液状ゴムとを混合して第1の混合物を得る第1の工程と、
前記第1の混合物と平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーとを混合して第2の混合物を得る第2の工程と、
前記第2の混合物を0〜50℃のオープンロールで薄通ししてカーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合材料を得る第3の工程と、
を含み、
前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、カーボンナノファイバーを配合することによる高い剛性を有しながら、柔軟性に優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。また、非極性の液状ゴムである液状エチレン−プロピレンゴムを混合することにより、カーボンナノファイバーを配合していても比較的低硬度の炭素繊維複合材料を得ることができる。したがって、液状ゴムの配合量を調整することで製造される炭素繊維複合材料の硬度を調整することができる。また、このようにして得られた炭素繊維複合材料によれば、非極性の液状ゴムを含むことで耐熱性も向上することができる。本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、第1の工程においてエチレン−プロピレンゴムと液状ゴムとを予め混合させることができるため、エチレン−プロピレンゴムに対して液状ゴムの割合が比較的多い場合であっても混合することができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、
非極性の液状ゴムと平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーとを混合して第1の混合物を得る第1の工程と、
エチレン−プロピレンゴムと前記第1の混合物とを混合して第2の混合物を得る第2の工程と、
前記第2の混合物を0〜50℃のオープンロールで薄通ししてカーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合材料を得る第3の工程と、
を含み、
前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、カーボンナノファイバーを配合することによる高い剛性を有しながら、柔軟性に優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。また、非極性の液状ゴムである液状エチレン−プロピレンゴムを混合することにより、カーボンナノファイバーを配合していても比較的低硬度の炭素繊維複合材料を得ることができる。したがって、液状ゴムの配合量を調整することで製造される炭素繊維複合材料の硬度を調整することができる。また、このようにして得られた炭素繊維複合材料によれば、非極性の液状ゴムを含むことで耐熱性も向上することができる。本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、第1の工程において液状ゴムにカーボンナノファイバーを予め混合することで、液状ゴムがカーボンナノファイバーに拘束されることで半固形の状態になるため、エチレン−プロピレンゴムに第1の混合物を容易に混合させることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、
エチレン−プロピレンゴムと平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーとを混合して第1の混合物を得る第1の工程と、
前記第1の混合物を0〜50℃のオープンロールで薄通ししてカーボンナノファイバーが分散した第2の混合物を得る第2の工程と、
前記第2の混合物と非極性の液状ゴムとを混合して炭素繊維複合材料を得る第3の工程と、
を含み、
前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、カーボンナノファイバーを配合することによる高い剛性を有しながら、柔軟性に優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。また、非極性の液状ゴムである液状エチレン−プロピレンゴムを混合することにより、カーボンナノファイバーを配合していても比較的低硬度の炭素繊維複合材料を得ることができる。したがって、液状ゴムの配合量を調整することで製造される炭素繊維複合材料の硬度を調整することができる。また、このようにして得られた炭素繊維複合材料によれば、非極性の液状ゴムを含むことで耐熱性も向上することができる。本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、第1の工程においてエチレン−プロピレンゴムにカーボンナノファイバーを予め混合することで、エチレン−プロピレンゴムのゴム弾性を利用してカーボンナノファイバーを均一に分散することができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記オープンロールのロール間隔が0.5mm以下であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記第3の工程で得られた前記炭素繊維複合材料を架橋する第4の工程をさらに含むことができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、エチレン−プロピレンゴムと、非極性の液状ゴムと、平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーと、を含み、前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、エチレン−プロピレンゴムと非極性の液状ゴムとを混合して第1の混合物を得る第1の工程と、前記第1の混合物と平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーとを混合して第2の混合物を得る第2の工程と、前記第2の混合物を0〜50℃のオープンロールで薄通ししてカーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合材料を得る第3の工程と、を含み、前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、非極性の液状ゴムと平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーとを混合して第1の混合物を得る第1の工程と、エチレン−プロピレンゴムと前記第1の混合物とを混合して第2の混合物を得る第2の工程と、前記第2の混合物を0〜50℃のオープンロールで薄通ししてカーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合材料を得る第3の工程と、を含み、前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、エチレン−プロピレンゴムと平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーとを混合して第1の混合物を得る第1の工程と、前記第1の混合物を0〜50℃のオープンロールで薄通ししてカーボンナノファイバーが分散した第2の混合物を得る第2の工程と、前記第2の混合物と非極性の液状ゴムとを混合して炭素繊維複合材料を得る第3の工程と、を含み、前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである
(I)エチレン−プロピレンゴム
炭素繊維複合材料のマトリックス原料となるエチレン−プロピレンゴムは、エチレン及びプロピレン、またはエチレン、プロピレン、ジエンを重合して得ることができるゴムであり、特にEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)を用いることが好ましい。エチレン−プロピレンゴムは、液状ゴムではなく、室温でゴム弾性を有する固形ゴムである。また、エチレン−プロピレンゴムは、耐熱性を得るため、エチリデンノルボルネンなどの第3成分を含み、かつ、エチレンとプロピレンの共重合比は、エチレン含量で45%〜80%のEPDMが好ましい。エチレン−プロピレンゴムの平均分子量は、通常5万以上のものが望ましく、より好ましくは7万以上、特に好ましくは10万〜50万程度のものを用いることができる。エチレン−プロピレンゴムの分子量がこの範囲であると、エチレン−プロピレンゴム分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、エチレン−プロピレンゴムは、凝集したカーボンナノファイバーの相互に侵入しやすく、したがってカーボンナノファイバー同士を分離する効果が大きい。エチレン−プロピレンゴムの分子量が5000より小さいと、エチレン−プロピレンゴム分子が相互に充分に絡み合うことができず、先に説明した工程で剪断力をかけてもカーボンナノファイバーを分散させる効果が小さくなり好ましくない。また、エチレン−プロピレンゴムの分子量が500万より大きいと、エチレン−プロピレンゴムが固くなりすぎて加工が困難となり好ましくない。
エチレン−プロピレンゴムは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃、観測核がHで測定した、未架橋体におけるネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が好ましくは100〜3000μ秒、より好ましくは200〜1000μ秒である。上記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、エチレン−プロピレンゴムは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができ、すなわちカーボンナノファイバーを分散させるために適度な弾性を有することになる。また、エストラマーは粘性を有しているので、エチレン−プロピレンゴムとカーボンナノファイバーとを混合したときに、エチレン−プロピレンゴムは高い分子運動によりカーボンナノファイバーの相互の隙間に容易に侵入することができる。スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が100μ秒より短いと、エチレン−プロピレンゴムが充分な分子運動性を有することができない。また、スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が3000μ秒より長いと、エチレン−プロピレンゴムが液体のように流れやすく、弾性が小さいため、そのままではカーボンナノファイバーを分散させることが困難となる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法によりエチレン−プロピレンゴムのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、エチレン−プロピレンゴムは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、エチレン−プロピレンゴムは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかるエチレン−プロピレンゴムは中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
(II)非極性の液状ゴム
エチレン−プロピレンゴムと共に炭素繊維複合材料のマトリックス原料となる液状ゴムは、エチレン−プロピレンゴムとの相溶性に優れた非極性の液状ゴムである。ゴム製品の用途に応じてゴム材料には所定の材料物性が要求されるが、液状ゴムを適量配合調整することで柔軟性向上や硬度低下を調整することができる。ゴムが非極性であることは、例えば溶解度パラメータ(SP値)で分類することができる。非極性の液状ゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPDM、SP値:16.0-17.8)、スチレンブタジエンゴム(SBR、SP値:15.0-17.8)、ブチルゴム(IIR、SP値:15.8-16.7)、ブタジエンゴム(BR,SP値:14 .7-18.5)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO、SP値:17.5)などがある。非極性の液状ゴムは、加工性や取り扱い易さなどからエチレン−プロピレンゴムとの相溶性に優れた液状エチレン−プロピレンゴムであ、特に二重結合を有していない例えば分子量が5000程度の液状エチレン−プロピレンゴムが好ましいが、液状EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)であってもよい。
エチレン−プロピレンゴムに非極性の液状ゴムを配合することで、炭素繊維複合材料の硬度を低下させ、柔軟性を向上させることができるが、カーボンナノファイバーを分散させるために重要なエチレン−プロピレンゴムのゴム弾性も低下させる。したがって、非極性の液状ゴムは、エチレン−プロピレンゴムの1/2倍〜3倍の質量割合で配合されることが好ましい。液状ゴムがエチレン−プロピレンゴムの1/2倍より大きい配合割合であると炭素繊維複合材料の硬度を低下させる効果が得られ、液状ゴムがエチレン−プロピレンゴムの3倍より小さい配合割合であれば炭素繊維複合材料の加工が可能であると共に強度の低下も小さくできる。
(III)カーボンナノファイバー
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5〜500nmであり、平均直径が0.5ないし100nmであることが好ましい。また、カーボンナノファイバーは、平均長さが0.01〜1000μmであることが好ましい。カーボンナノファイバーの配合量は、製品に要求される性能などによって適宜設定できるが、エチレン−プロピレンゴムと液状ゴムとを合わせたゴム成分100質量部に対し、カーボンナノファイバーを10質量部〜100質量部含むことが高弾性率を有しながら優れた柔軟性を得るために好ましい。また、ゴム組成物に通常用いられる補強剤としての例えばカーボンブラックをカーボンナノファイバーと共に配合してもよい。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ:SWNT)、2層に巻いた2層カーボンナノチューブ(ダブルウォールカーボンナノチューブ:DWNT)、3層以上に巻いた多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)などが適宜用いられる。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。また、カーボンナノファイバーは、ホウ素、炭化ホウ素、ベリリウム、アルミニウム、ケイ素等の黒鉛化触媒と共に約2300℃〜3200℃で黒鉛化処理したものを用いてもよい。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。なお、カーボンナノファイバーは、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
(IV)炭素繊維複合材料の製造方法
(第1の製造方法)
図1は、一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の第1の製造方法を模式的に示す図である。炭素繊維複合材料36の第1の製造方法は、エチレン−プロピレンゴム30と非極性の液状ゴム50とを混合して第1の混合物32aを得る第1の工程と、第1の混合物32aと平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバー40とを混合して第2の混合物34aを得る第2の工程と、第2の混合物34aを0〜50℃のオープンロール2で薄通ししてカーボンナノファイバー40が分散した炭素繊維複合材料36を得る第3の工程と、を含み、液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである。図1(a)は第1の工程、図1(b)は第2の工程、図1(c)は第3の工程をそれぞれ示す。
図1(a)に示すように、第1の工程は、ゴム組成物用の混練機例えばニーダー1へ、容器3内から固形状のエチレン−プロピレンゴム30を投入し、さらに非極性の液状ゴム50を投入し、例えば2枚のブレード6,7を矢印の方向に回転させることによって混合して第1の混合物32aを得る。このように、第1の工程でカーボンナノファイバーを混合する前に液状ゴム50とエチレン−プロピレンゴム30とを混合することができるため、例えば液状ゴム50の量がエチレン−プロピレンゴム30に対して比較的多い場合であっても容易に混合することができる。第1の製造方法の第1の工程において用いられる液状ゴムの配合量は、作業性からエチレン−プロピレンゴムの1/3倍〜3倍であることが好ましい。第1の工程で得られた第1の混合物32aは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃、観測核がHで測定した、未架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)がエチレン−プロピレンゴム単体のときと変化は少ない。
次に、図1(b)に示すように、第2の工程は、第1の工程で得られた第1の混合物32aにカーボンナノファイバー40を投入し、ニーダー1で混合し、第2の混合物34aを得る。第1の工程及び第2の工程では、ニーダー1を用いたがゴム組成物用の混練機であれば他の公知の混練機を用いることができる。第2の混合物34aは、凝集性の強いカーボンナノファイバー40を解繊することができず、カーボンナノファイバー凝集体が海−島状に分散している。
さらに、図1(c)に示すように、第3の工程は、第2の工程で得られた第2の混合物34aを0〜50℃に温度制御した例えば2本ロールのオープンロール2へ投入して1回もしくは複数回薄通しすることでカーボンナノファイバー40をマトリックス中に均一に分散させる。薄通しの回数は、例えば1回〜10回程度行なうことが好ましい。この薄通しの工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜30℃の比較的低い温度に設定して行われ、第2の混合物34aの実測温度も0〜50℃に調整されることが好ましい。オープンロール2は、第1のロール10と第2のロール20とが矢印の方向にロール表面速度V1、V2で回転しており、両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05〜3.00であることが好ましく、さらに1.05〜1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。第1のロール10と第2のロール20とのロール間隔(ニップとも呼ばれる)dは、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1mm〜0.5mmの間隔に設定する。このようにして得られた薄通しによる剪断力により、エチレン−プロピレンゴム及び液状ゴム(以下、「ゴム成分」という)に高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバーがゴム成分の分子に1本づつ引き抜かれるように相互に分離し、ゴム成分中に均一に分散される。特に、ゴム成分は、弾性と、粘性と、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノファイバーを容易に分散することができる。そして、カーボンナノファイバーの分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。より具体的には、オープンロールでゴム成分とカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するゴム成分がカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、ゴム成分の特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。カーボンナノファイバーの表面は高度にグラファイト化されていないため、表面に非結晶部分が適度に残されていて活性が高く、ゴム成分の分子と結合し易い。次に、ゴム成分に強い剪断力が作用すると、ゴム成分の分子の移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるゴム成分の復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、ゴム成分中に分散されることになる。本実施の形態によれば、第2の複合材料34aが狭いロール間から押し出された際に、ゴム成分の弾性による復元力で第2の複合材料34aはロール間隔より厚く変形する。その変形は、強い剪断力の作用した第2の複合材料34aをさらに複雑に流動させ、カーボンナノファイバーをゴム成分中に分散させると推測できる。そして、一旦分散したカーボンナノファイバーは、ゴム成分との化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。また、第3の工程に先立って、第2の混合物34aを第1のロール10に巻き付けてあるいは他の混練機を用いて混練を行ない、ゴム成分の分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成してもよい。カーボンナノファイバーは、適度な熱処理によって表面欠陥が減少し、しかも適度に表面に非結晶化部分が残されているので、ラジカルや官能基を生成しやすくなり、素練りによって生成されたゴム成分のフリーラジカルがカーボンナノファイバーと結びつきやすい状態となるためである。この第3の工程に先立って行なう混練工程は、第2の工程で行なってもよく、第1の混練温度で行なう第1の混練工程と第2の混練温度で行なう第2の混練工程とを有することができる。第1の混練工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ゴム成分とカーボンナノファイバーとの混合は、第2の混練工程より50〜100℃低い第1の温度で行なわれる。第1の温度は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の第1の温度である。第1の温度の設定は、例えば密閉式混練機を用いた場合、チャンバーの温度によって設定しても、ロータの温度によって設定してもよく、あるいは混合物の温度を測定しながら速度比の制御や各種温度制御を行なってもよい。第1の混練工程によって得られた混合物を別の混練機例えば密閉式混練機に投入し、第2の混練工程を行うことができる。第2の混練工程では、ゴム成分の分子を切断してラジカルを生成させるため、第1の温度よりも50〜100℃高い第2の温度で混練が行なわれることが好ましい。密閉式混練機は、ロータ内に内蔵したヒータもしくはチャンバーに内蔵されたヒータによって第2の温度まで昇温させことができる。第2の温度は、50〜150℃が好ましい。第2の混練時間は、第2の温度の設定や、ロータ間隔の設定、回転速度などによって適宜設定することができるが、例えば10分以上の混練時間が好ましい。
(第2の製造方法)
図2は、一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の第2の製造方法を模式的に示す図である。炭素繊維複合材料36の第2の製造方法は、非極性の液状ゴム50と平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバー40とを混合して第1の混合物32bを得る第1の工程と、エチレン−プロピレンゴム30と第1の混合物32bとを混合して第2の混合物34bを得る第2の工程と、第2の混合物34bを0〜50℃のオープンロール2で薄通ししてカーボンナノファイバー40が分散した炭素繊維複合材料36を得る第3の工程と、を含み、液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである。図2(a)は第1の工程、図2(b)は第2の工程、図2(c)は第3の工程をそれぞれ示す。
図2(a)に示すように、第1の工程は、容器3内の非極性の液状ゴム50へカーボンナノファイバー40を投入して攪拌、混合して第1の混合物32bを得る。一般的に液体の液状ゴム50と固形状のエチレン−プロピレンゴム30とを混合することは作業上容易ではない。しかしながら、本実施の形態の第1の工程のように、まず液状ゴム50とカーボンナノファイバー40とを混合することで、カーボンナノファイバー40が液状ゴム50の分子を拘束して粘度が上がり、半固形のような状態になるため、第2の工程でエチレン−プロピレンゴムに混合しやすくなり、生産性に優れる。
次に、図2(b)に示すように、第2の工程は、エチレン−プロピレンゴム30をオープンロール2の第1のロール10に巻きつかせ、そのバンクに第1の工程で得られた第1の混合物32bを投入し混合して第2の混合物34bを得る。第1のロール10と第2のロール20のロール間隔dは、例えば0.5mm〜2.0mmの間隔で配置されることができる。なお、第1の工程及び第2の工程では、ゴム組成物用の混練機であれば他の公知の混練機を用いることができる。第1の工程及び第2の工程では、凝集性の強いカーボンナノファイバー40を解繊することができず、カーボンナノファイバー凝集体がマトリックス中に海−島状に分散している。
さらに、図2(c)に示すように、第3の工程は、炭素繊維複合材料の第1の製造方法で説明した第3の工程と基本的に同じであり、第2の混合物34bをオープンロール2で薄通ししてカーボンナノファイバー40が均一に分散した炭素繊維複合材料36を得るものであり、詳細については説明を省略する。
また、第3の工程に先立って、第2の混合物34bを第1のロール10に巻き付けてあるいは他の混練機を用いて混練を行ない、ゴム成分の分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成してもよい。カーボンナノファイバーは、適度な熱処理によって表面欠陥が減少し、しかも適度に表面に非結晶化部分が残されているので、ラジカルや官能基を生成しやすくなり、素練りによって生成されたゴム成分のフリーラジカルがカーボンナノファイバーと結びつきやすい状態となるためである。この第3の工程に先立って行なう混練工程は、第2の工程で行なってもよく、第1の混練温度で行なう第1の混練工程と第2の混練温度で行なう第2の混練工程とを有することができる。第1の混練工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ゴム成分とカーボンナノファイバーとの混合は、第2の混練工程より50〜100℃低い第1の温度で行なわれる。第1の温度は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の第1の温度である。第1の温度の設定は、例えば密閉式混練機を用いた場合、チャンバーの温度によって設定しても、ロータの温度によって設定してもよく、あるいは混合物の温度を測定しながら速度比の制御や各種温度制御を行なってもよい。第1の混練工程によって得られた混合物を別の混練機例えば密閉式混練機に投入し、第2の混練工程を行うことができる。第2の混練工程では、エラストマー30の分子を切断してラジカルを生成させるため、第1の温度よりも50〜100℃高い第2の温度で混練が行なわれることが好ましい。密閉式混練機は、ロータ内に内蔵したヒータもしくはチャンバーに内蔵されたヒータによって第2の温度まで昇温させことができる。第2の温度は、50〜150℃が好ましい。第2の混練時間は、第2の温度の設定や、ロータ間隔の設定、回転速度などによって適宜設定することができるが、例えば10分以上の混練時間が好ましい。第2の製造方法の第2の工程において用いられる液状ゴムの配合量は、作業性からエチレン−プロピレンゴムの1/3倍以上1/2倍未満であることが好ましい。
(第3の製造方法)
図3は、一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の第3の製造方法を模式的に示す図である。炭素繊維複合材料36の第3の製造方法は、エチレン−プロピレンゴム30と平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバー40とを混合して第1の混合物32cを得る第1の工程と、第1の混合物32cを0〜50℃のオープンロール2で薄通ししてカーボンナノファイバー40が分散した第2の混合物34cを得る第2の工程と、第2の混合物34cと非極性の液状ゴム50とを混合して炭素繊維複合材料36を得る第3の工程と、を含み、液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである。図3(a)は第1の工程、図3(b)は第2の工程、図3(c)は第3の工程をそれぞれ示す。
図3(a)に示すように、第1の工程は、エチレン−プロピレンゴム30をオープンロール2の第1のロール10に巻きつかせ、そのバンクにカーボンナノファイバー40を投入し混合して第1の混合物32cを得る。第1のロール10と第2のロール20のロール間隔dは、例えば0.5mm〜2.0mmの間隔で配置されることができる。なお、第1の工程では、ゴム組成物用の混練機であれば他の公知の混練機を用いることができる。第1の工程では、凝集性の強いカーボンナノファイバー40を解繊することができず、カーボンナノファイバー凝集体がエチレン−プロピレンゴム30中に海−島状に分散している。次に、図3(b)に示すように、第2の工程は、第1の工程で得られた第1の混合物32cを0〜50℃に温度制御した例えば2本ロールのオープンロール2へ投入して1回もしくは複数回薄通しすることでカーボンナノファイバー40をマトリックス中に均一に分散させ、第2の混合物34cを得る。基本的には、図1(c)の第1の製造方法の第1の工程と同様であるので詳細な説明は省略する。このような薄通しによる剪断力により、エチレン−プロピレンゴム30に高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバーがエチレン−プロピレンゴム分子に1本づつ引き抜かれるように相互に分離し、第2の混合物34c中に均一に分散される。
また、第2の工程に先立って、第1の混合物32cを第1のロール10に巻き付けてあるいは他の混練機を用いて混練を行ない、ゴム成分の分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成してもよい。カーボンナノファイバーは、適度な熱処理によって表面欠陥が減少し、しかも適度に表面に非結晶化部分が残されているので、ラジカルや官能基を生成しやすくなり、素練りによって生成されたゴム成分のフリーラジカルがカーボンナノファイバーと結びつきやすい状態となるためである。この第2の工程に先立って行なう混練工程は、第2の工程で行なってもよく、第1の混練温度で行なう第1の混練工程と第2の混練温度で行なう第2の混練工程とを有することができる。第1の混練工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ゴム成分とカーボンナノファイバーとの混合は、第2の混練工程より50〜100℃低い第1の温度で行なわれる。第1の温度は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の第1の温度である。第1の温度の設定は、例えば密閉式混練機を用いた場合、チャンバーの温度によって設定しても、ロータの温度によって設定してもよく、あるいは混合物の温度を測定しながら速度比の制御や各種温度制御を行なってもよい。第1の混練工程によって得られた混合物を別の混練機例えば密閉式混練機に投入し、第2の混練工程を行うことができる。第2の混練工程では、エラストマー30の分子を切断してラジカルを生成させるため、第1の温度よりも50〜100℃高い第2の温度で混練が行なわれることが好ましい。密閉式混練機は、ロータ内に内蔵したヒータもしくはチャンバーに内蔵されたヒータによって第2の温度まで昇温させことができる。第2の温度は、50〜150℃が好ましい。第2の混練時間は、第2の温度の設定や、ロータ間隔の設定、回転速度などによって適宜設定することができるが、例えば10分以上の混練時間が好ましい。
さらに、図3(c)に示すように、第3の工程は、第2の混合物34cをオープンロール2の第1のロール10に巻きつかせ、そのバンクに非極性の液状ゴム50を投入し混合して炭素繊維複合材料を得る。第1のロール10と第2のロール20のロール間隔dは、例えば0.5mm〜2.0mmの間隔で配置されることができる。なお、第2の工程でカーボンナノファイバーはエチレン−プロピレンゴム中に均一に分散しているので、第3の工程はゴム組成物用の混練機であれば他の公知の混練機を用いることができる。また、第2の混合物34cはカーボンナノファイバー40によって分子が拘束されているため、第3の工程において大量の液状ゴム50を混合することは容易ではなく、比較的少量の液状ゴム50を用いる際に作業性の点から有用である。第3の製造方法の第3の工程において用いられる液状ゴムの配合量は、作業性からエチレン−プロピレンゴムの1/9倍未満であることが好ましい。
炭素繊維複合材料の第1〜第3の製造方法において、通常、エラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを挙げることができる。
(V)炭素繊維複合材料
一実施の形態の炭素繊維複合材料は、エチレン−プロピレンゴムと、非極性の液状ゴムと、平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーと、を含み、液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである。カーボンナノファイバーは、炭素繊維複合材料の基材であるゴム成分中に均一に分散されることができる。カーボンナノファイバーの分散状態は、電子顕微鏡による炭素繊維複合材料の断面を観察し、カーボンナノファイバーの凝集塊がなく海−島状になっていないことで評価することができる。炭素繊維複合材料は、エチレン−プロピレンゴムと液状ゴムとを合わせたゴム成分100質量部に対し、カーボンナノファイバーを10質量部〜100質量部含むことができ、液状ゴムがエチレン−プロピレンゴムの1/2倍〜3倍の質量割合で配合されることができる。このような配合の炭素繊維複合材料は、破断伸びが280%〜500%であることができる。一般に、カーボンナノファイバーをゴム組成物の補強材とすることで、剛性が向上するとともに、硬度が高くなる傾向がある。これに対し、本実施の形態のように、エチレン−プロピレンゴムに液状ゴムを配合することによって、剛性を維持しながら、柔軟性を向上させ、硬度を低下させることができる。特に、ゴム製品は、その用途に応じて様々な物性が要求されるため、カーボンナノファイバーによる剛性の向上とともに、液状ゴムを適量配合することにより、製品の要求に応じた所望の硬度や柔軟性を炭素繊維複合材料に付与することができる。また、炭素繊維複合材料は、非極性の液状ゴムを含むことで耐熱性も向上することができる。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)実施例1〜6のサンプルの作製
第1の工程:液状ゴムとして液状エチレン−プロピレンゴム(表1及び表2では「トライレン」と記載する)にカーボンナノファイバー(表1及び表2では「気相炭素87nm」と記載する)を所定量加えて混合して第1の混合物を得た。なお、実施例5では、カーボンナノファイバーと共にHAFカーボンブラック(表1及び表2では「HAF」と記載する)を液状エチレン−プロピレンゴムに混合した。
第2の工程:エチレン−プロピレンゴム(表1及び表2では「EPDM」と記載する)をオープンロール(ロール温度20℃、ロール間隔1.5mm)に巻きつけ、そのエチレン−プロピレンゴムに対して第1の工程で得られた第1の混合物を所定量加えて混練して第
2の混合物を得た。第2の混合物をオープンロール(ロール設定温度20℃)に投入して第1の混練工程を行いロールから取り出し、さらに取り出した第2の混合物を100℃に設定されたオープンロールに再度投入して第2の混練工程を行い、オープンロールから第2の混合物を取り出した。
第3の工程:第2の工程で得られた第2の混合物をオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔0.3mm)に投入して薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得られた炭素繊維複合材料を投入し、分出しした。
分出ししたシートを90℃、5分間圧縮成形して厚さ1mmの実施例1〜6の無架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。
また、薄通しして得られた無架橋の炭素繊維複合材料にパーオキサイド2質量部(phr)を混合し、ロール間隙を1.1mmにセットしたオープンロールに投入し、分出しした。分出しした架橋剤を含むシートを175℃、20分間圧縮成形して厚さ1mmの実施例1〜6の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。
(2)比較例1〜8のサンプルの作製
まず、比較例1〜6サンプルとして、オープンロール(ロール設定温度20℃)に、表1に示す所定量のエチレン−プロピレンゴムを投入し、カーボンナノファイバーをエラストマーに投入し素練りの後、第1の混練工程を行いロールから取り出した。さらに、その混合物を100℃に設定されたオープンロールに再度投入し、第2の混練工程を行い、オープンロールから取り出した。
次に、この混合物をオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔0.3mm)に巻きつけ、薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得られた炭素繊維複合材料を投入し、分出しした。
分出ししたシートを90℃、5分間圧縮成形して厚さ1mmの比較例1〜6の無架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。
また、薄通しして得られた無架橋の炭素繊維複合材料にパーオキサイド2質量部(phr)を混合し、ロール間隙を1.1mmにセットしたオープンロールに投入し、分出しした。分出しして金型サイズに切り取ったパーオキサイドを含む炭素繊維複合材料を金型にセットし、175℃、20分間圧縮成形して厚さ1mmの比較例1〜6の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。
比較例7としては、オープンロールに巻きつけたエチレン−プロピレンゴムに液状エチレン−プロピレンゴムを投入して混練して得られたゴム組成物を分出しして同様に架橋して架橋サンプルとした。
比較例8としては、エチレン−プロピレンゴム単体をオープンロールで薄通しした後、分出しして同様に架橋して架橋サンプルとした。
実施例1〜6及び比較例1〜8に用いられた、カーボンナノファイバーは実測平均直径87nmで平均長さ約10μmの気相成長法で製造したマルチウォールカーボンナノチューブであり、HAFカーボンブラックは平均粒径27nm、窒素吸着比表面積が82m/gであり、液状エチレン−プロピレンゴムはユニロイヤル社製の液状EPDM(商品名トライレン、質量平均分子量70,000以下)であり、エチレン−プロピレンゴムはJSR社製のEPDM(商品名EP103AF)であった。
なお、液状エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、カーボンナノファイバー及びHAFカーボンブラックの配合量は、表1及び表2に示すとおりであり、液状エチレン−プロピレンゴムとエチレン−プロピレンゴムとの合計を100質量部(phr)とした。
(3)パルス法NMRを用いた測定
実施例2、4及び比較例2,5,7の各無架橋体の炭素繊維複合材料サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。
この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、測定温度150℃、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。この測定によって、各サンプルについて、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)と第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)とを求めた。
測定した結果、実施例2のサンプルは第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)=2370μ秒、T2nnの成分分率(fnn)=0.135であり、実施例4のサンプルは第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)=1630μ秒、T2nnの成分分率(fnn)=0.13であり、比較例2のサンプルは第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)=1970μ秒、T2nnの成分分率(fnn)=0.22であり、比較例5のサンプルは第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)=1760μ秒、T2nnの成分分率(fnn)=0.14であり、比較例7のサンプルは第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)=3780μ秒、T2nnの成分分率(fnn)=0.34であった。
また、測定温度を30℃で同様にして測定した、エチレン−プロピレンゴム40質量部と液状エチレン−プロピレンゴム60質量部とを混合した混合物の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)=515μ秒であり、エチレン−プロピレンゴム66質量部と液状エチレン−プロピレンゴム34質量部とを混合した混合物の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)=510μ秒であり、エチレン−プロピレンゴム単体の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)=520μ秒であった。
また、実施例4と比較例7の無架橋体の炭素繊維複合材料における多成分系の平均的緩和時間である特性緩和時間(T2’/150℃)を測定し、その経過時間による変化を図4にグラフで示した。図4のグラフにおいて、曲線Lが実施例4の測定結果であり、曲線Mが比較例7の測定結果である。
(4)硬度の測定
実施例1〜6及び比較例1〜8の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルのゴム硬度(JIS−A)をJIS K 6253に基づいて測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
(5)M100(100%モジュラス)の測定
実施例1〜6及び比較例1〜8の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル(幅5mm×長さ50mm×厚さ1mm)を10mm/minで伸長し、100%変形時の応力(M100:100%モジュラス(MPa))を求めた。測定結果を表1及び表2に示す。
(6)TB(引張強度)の測定
実施例1〜6及び比較例1〜8の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを1A形のダンベル形状に切り出した試験片について、東洋精機社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行いTB(引張強度(MPa))を測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
(7)EB(破断伸び)の測定
実施例1〜6及び比較例1〜8の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルをJIS−K6251のダンベル型に切り出した試験片について、東洋精機社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minで引張破壊試験を行いEB(破断伸び(%))を測定した。これらの結果を表1及び表2に示す。測定結果を表1及び表2に示す。また、引張破壊試験で破断した実施例2の炭素繊維複合材料サンプルの破断面の電子顕微鏡写真を図5(300倍)、図6(2,000倍)、図7(20,000倍)、図8(50,000倍)に示した。
(8)E’(動的貯蔵弾性率)の測定
実施例1〜6及び比較例1〜8の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを短冊形(40×1×5(巾)mm)に切り出した試験片について、SII社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm、動的ひずみ±0.05%、周波数10HzでJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い25℃、150℃、200℃におけるE’(動的弾性率(MPa))を測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
また、実施例1〜4と比較例1〜6の各測定結果に基づいて、図9に硬度(JIS−A)−M100のグラフ示し、図10に硬度(JIS−A)−破断伸び(EB)のグラフを示し、図11に動的貯蔵弾性率(E’(25℃))−破断伸び(EB)のグラフを示した。各グラフにおいて、曲線Xが実施例1〜4の測定結果であり、曲線Yが比較例1〜6の測定結果である。
表1及び表2から、本発明の実施例1〜6によれば、以下のことが確認された。すなわち、本発明の実施例1〜6の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルは、比較例1〜5の炭素繊維複合材料サンプルに比べて、同じカーボンナノファイバーの配合量の場合、硬度(JIS−A)が低くなった。したがって、エチレン-プロピレンゴムに液状エチレン-プロピレンゴムを配合することで、カーボンナノファイバーを用いながらも炭素繊維複合材料の硬度を低くすることができた。
また、本発明の実施例1〜6の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルは、比較例1〜5の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルに比べて、同じカーボンナノファイバーの配合量の場合、破断伸び(EB)が向上した。特に、実施例2〜6においては、動的貯蔵弾性率(E’(25℃))も向上した。したがって、エチレン-プロピレンゴムに液状エチレン-プロピレンゴムを配合することで、カーボンナノファイバーを用いながらも剛性を維持しながら柔軟な炭素繊維複合材料を得ることができた。
図4のグラフのように、比較例7の炭素繊維複合材料は150℃における特性緩和時間の時間変化からまず軟化劣化した後、硬化劣化が起こることが判ったが、実施例4の炭素繊維複合材料は150℃という高温においても変化が小さく耐熱性に優れることが判った。
実施例2の炭素繊維複合材料サンプルの破断面は、図5、図6の電子顕微鏡写真のように海−島構造がみられずカーボンナノファイバーが全体に均一に分散していることがわかった。また、実施例2の炭素繊維複合材料サンプルの破断面は、図7,図8の電子顕微鏡写真のようにマトリックス材料とカーボンナノファイバーとの濡れ性が良好であることがわかった。
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の第1の製造方法を模式的に示す図である。 本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の第2の製造方法を模式的に示す図である。 本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の第3の製造方法を模式的に示す図である。 実施例4と比較例7の時間−特性緩和時間(T2n’/150℃)のグラフを示す図である。 実施例2の炭素繊維複合材料サンプルの引張破断面の電子顕微鏡写真(300倍)である。 実施例2の炭素繊維複合材料サンプルの引張破断面の電子顕微鏡写真(2,000倍)である。 実施例2の炭素繊維複合材料サンプルの引張破断面の電子顕微鏡写真(20,000倍)である。 実施例2の炭素繊維複合材料サンプルの引張破断面の電子顕微鏡写真(50,000倍)である。 実施例1〜4と比較例1〜6の硬度(JIS−A)−M100のグラフを示す図である。 実施例1〜4と比較例1〜6の硬度(JIS−A)−破断伸び(EB)のグラフを示す図である。 実施例1〜4と比較例1〜6の動的貯蔵弾性率(E’(25℃))−破断伸び(EB)のグラフを示す図である。
10 第1のロール
20 第2のロール
30 エラストマー
32a〜32c 第1の混合物
34a〜34c 第2の混合物
36 炭素繊維複合材料
40 カーボンナノファイバー
50 液状ゴム
d ロール間隔
V1 第1のロールの表面速度
V2 第2のロールの表面速度
X 実施例1〜4の測定結果を示す曲線
Y 比較例1〜6の測定結果を示す曲線

Claims (9)

  1. エチレン−プロピレンゴムと、非極性の液状ゴムと、平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーと、を含み、
    前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである、炭素繊維複合材料。
  2. 請求項1において、
    前記エチレン−プロピレンゴムと前記液状ゴムとを合わせたゴム成分100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーを10質量部〜100質量部含む、炭素繊維複合材料。
  3. 請求項1または2において、
    前記液状ゴムは、前記エチレン−プロピレンゴムの1/2倍〜3倍の質量割合で配合される、炭素繊維複合材料。
  4. 請求項において、
    前記エチレン−プロピレンゴムと前記液状エチレン−プロピレンゴムとを合わせたゴム成分100質量部に対し、前記カーボンナノファイバーを10質量部〜100質量部含み、
    前記液状エチレン−プロピレンゴムは、前記エチレン−プロピレンゴムの1/2倍〜3倍の質量割合で配合され、
    破断伸びが280%〜500%である、炭素繊維複合材料。
  5. エチレン−プロピレンゴムと非極性の液状ゴムとを混合して第1の混合物を得る第1の工程と、
    前記第1の混合物と平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーとを混合して第2の混合物を得る第2の工程と、
    前記第2の混合物を0〜50℃のオープンロールで薄通ししてカーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合材料を得る第3の工程と、
    を含み、
    前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである、炭素繊維複合材料の製造方法。
  6. 非極性の液状ゴムと平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーとを混合して第1の混合物を得る第1の工程と、
    エチレン−プロピレンゴムと前記第1の混合物とを混合して第2の混合物を得る第2の工程と、
    前記第2の混合物を0〜50℃のオープンロールで薄通ししてカーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合材料を得る第3の工程と、
    を含み、
    前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである、炭素繊維複合材料の製造方法。
  7. エチレン−プロピレンゴムと平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーとを混合して第1の混合物を得る第1の工程と、
    前記第1の混合物を0〜50℃のオープンロールで薄通ししてカーボンナノファイバーが分散した第2の混合物を得る第2の工程と、
    前記第2の混合物と非極性の液状ゴムとを混合して炭素繊維複合材料を得る第3の工程と、
    を含み、
    前記液状ゴムは、液状エチレン−プロピレンゴムである、炭素繊維複合材料の製造方法。
  8. 請求項のいずれか1項において、
    前記オープンロールのロール間隔が0.5mm以下である、炭素繊維複合材料の製造方法。
  9. 請求項のいずれか1項において、
    前記第3の工程で得られた前記炭素繊維複合材料を架橋する第4の工程をさらに含む、炭素繊維複合材料の製造方法。
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