JP4749362B2 - ピストンシール部材及び該ピストンシール部材を用いたディスクブレーキ - Google Patents

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Description

本発明は、ピストンシール部材及び該ピストンシール部材を用いたディスクブレーキに関する。
ピストンシール部材は、一般にゴムを主成分とする架橋体のゴム組成物によって成形されている。例えば、車両用のディスクブレーキには、ピストンおよびシリンダを内蔵したキャリパボディが装着され、シリンダの内周面に形成された環状溝には、ピストンシール部材が装着されている。ディスクブレーキは、ブレーキ液圧によって、各車輪に固定されているディスクロータにブレーキパッドを押し付け、摩擦材であるブレーキパッドの摩擦力で車輪の回転を止めるものである。このピストンシール部材は、ブレーキ液をシールする役割と、ブレーキ液圧によって前進したピストンを戻す(ロールバック)役割とを有する。ここで、このブレーキパッドは、ブレーキ液圧によって、シリンダの孔のピストンが前進することにより、ディスクに押し付けられる。
すなわち、このピストンシール部材が装着されていることにより、前記シリンダと、前記シリンダの孔に挿入されたピストンと、を液密的に移動可能な状態で密接させることができる。また、液圧にて前進したピストンは、ピストンシール部材によってロールバックされる(例えば、特許文献1参照)。したがって、このピストンシール部材には、ブレーキ液を確実にシールするための靭性と、液圧にて前進したピストンを元の位置に戻す(ロールバック)ための弾性との両方が求められる。
また、ディスクブレーキのキャリパボディは、ディスクロータとブレーキパッドとの間に生じる摩擦熱によって、作動中に高温になる。これに伴い、ピストンシール部材も高温に曝される。ゴム組成物からなるピストンシール部材は、高温になると熱膨張するとともに、ピストンシール部材の弾性率が低下する。この場合、ピストンシール部材の熱膨張及びピストンシール部材の弾性率の低下によってピストンのロールバック量が変化することになり、ブレーキの効き代が変化することになる。例えば、オートバイのディスクブレーキにおいては、ブレーキ・レバーのストローク量が変化することになり、運転者のブレーキ操作に違和感を生じることがある。
そこで、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)100重量部に対し、少なくともカーボンブラック100重量部以上を添加したゴム組成物によって成形されたピストンシール部材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、フッ素ゴムを用いた工業用、医療用注射器ピストンシール材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
炭素繊維(カーボンナノファイバーを含む)およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなるピストンシール部材が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、200℃以上の高温のブレーキ液に対する耐久性を備えたピストンシール部材は、開発されていなかった。
特公平3−59291号公報 特開2004−316773号公報 特開平5−277187号公報 特開2004−232786号公報
本発明の目的は、耐熱性に優れたピストンシール部材及び該ピストンシール部材を用いたディスクブレーキを提供することにある。
本発明にかかるピストンシール部材は、
シリンダ孔と、該シリンダ孔内を摺動するピストンと、を液密にかつ摺動可能に保持するディスクブレーキのキャリパボディに用いられるピストンシール部材であって、
前記ピストンシール部材は、含フッ素エラストマー100重量部に対し、平均直径が0.5〜500nmのカーボンナノファイバー5〜40重量部を含む架橋体のゴム組成物によって成形され
前記ゴム組成物は、
(a)前記含フッ素エラストマーに前記カーボンナノファイバーが均一に分散され、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核が Hで測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は500ないし1500μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であり、
(b)10Hz、30℃における動的弾性率が30〜90MPaであって、10Hz、200℃における動的弾性率が10〜40MPaであり、
(c)200℃で24時間後における圧縮永久ひずみが45%以下であって、230℃で24時間後における圧縮永久ひずみが65%以下であり、
(d)200℃で250KPa荷重のクリープ試験において、瞬間ひずみが2%以下であって、定常ひずみが−300ppm/時間〜+300ppm/時間である
本発明にかかるピストンシール部材によれば、耐熱性に優れたピストンシール部材を得ることができる。また、カーボンナノファイバーを用いることによって、ピストンシール部材は高温における高い耐久性を備えることができる。
本発明にかかるピストンシール部材において、前記ゴム組成物は、硬度(JIS−A)が80〜95であることができる。
本発明にかかるピストンシール部材において、前記ゴム組成物は、成形収縮率が0.1〜1.0%であることができる。
本発明にかかるディスクブレーキは、
前記ピストンシール部材と、
シリンダ孔を有するシリンダと、
前記シリンダ孔に挿入されるピストンと、を含み、
前記ピストンシール部材は、前記シリンダ孔の内周壁に形成された環状溝に嵌め込まれ、前記シリンダ孔に挿入された前記ピストンを液密的に移動可能な状態で密接させるとともに、液圧にて前進した該ピストンをロールバックさせる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るピストンシール部材8を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示すピストンシール部材8を含むディスクブレーキ20を模式的に示す断面図である。本実施の形態においては、一例として、フローティングタイプの車両用ディスクブレーキについて説明する。
(ディスクブレーキ)
本実施の形態にかかるディスクブレーキ20は、ピストンシール部材8と、シリンダ孔6aを有するシリンダ6と、前記シリンダ孔6aに挿入されるピストン5と、を含み、前記ピストンシール部材8は、前記シリンダ孔6aの内周壁に形成された環状溝のピストンシール溝7に嵌め込まれ、前記シリンダ孔6aに挿入された前記ピストン5を液密的に移動可能な状態で密接させるとともに、液圧にて前進した前記ピストン5をロールバックさせる。
ディスクブレーキ20は、車体(図示せず)に固定されたブラケット3と、ブラケット3に摺動可能な状態で支持されたキャリパボディ1と、を有している。キャリパボディ1は、作用部1bおよび反作用部1cを含み、ピストン5およびシリンダ6は作用部1bに形成されている。この作用部1bおよび反作用部1cは、ブリッジ部1aを介して一体的に形成されている。車輪(図示せず)と一体回転するディスクロータ2の両側の摩擦面に臨ませて、一対の摩擦パッド4b,4cが配置されている。ブラケット3には、摩擦パッド4b,4cをディスクロータ2に押圧するキャリパボディ1がスライドピン(図示せず)を介して進退可能に連結している。このキャリパボディ1は、一方の摩擦パッド4bの背面に配置する作用部1bと、他方の摩擦パッド4cの背面に配置する反作用部1cと、ディスクロータ2の外周を跨いで作用部1bおよび反作用部1cを連結するブリッジ部1aとで構成される。摩擦パッド4bは、シリンダ孔6aに挿入されたピストン5によって押されて移動し、ディスクロータ2の一側面に接する。摩擦パッド4cは、反作用部1cによって押されて移動し、ディスクロータ2の他方の側面に接する。上記の動作により、制動が行なわれる。
シリンダ孔6aの内周壁には、環状のピストンシール溝7が設けられている。このピストンシール溝7に環状のピストンシール部材8が嵌め込まれている。ピストンシール部材8の材質及びその製造方法については後述する。
液圧室9は、ピストン5の底部とシリンダ6との間に設けられている。この液圧室9には、供給口10よりブレーキ液が供給される。ピストンシール部材8は、このブレーキ液をシールする機能と、液圧室9の液圧が低下したときに、前進していたピストン5をロールバックさせる機能と、を有する。供給口10は、液圧経路28を介して、液圧源であるマスタシリンダ(図示せず)の出力ポート(図示せず)に接続されている。
図1に示すように、ピストンシール溝7は、面取コーナ7aと面取コーナ7bとを有している。ピストンシール部材8は、図1に示す黒い矢印方向(図2におけるディスクロータ2側)にピストン5が摺動して前進することによって、ピストン5の摺動面に追従してピストンシール部材8の一部が面取コーナ7aに入り込む。そして、液圧室9の液圧が低下したらピストンシール部材8の弾性によって復元することでピストン5が矢印と反対方向にロールバックされる。なお、ディスクブレーキ20の形式は、本実施の形態のようなピンスライド式に限らず、ピストンがディスクロータの両側に配置された対向型ディスクブレーキでもよく、ピストンの数やピストンシール部材の形状も本実施の形態に限定されない。
(ピストンシール部材)
本実施の形態にかかるピストンシール部材8は、シリンダ孔6aと、該シリンダ孔6a内を摺動するピストン5と、を液密にかつ摺動可能に保持するディスクブレーキのキャリパボディに用いられるピストンシール部材8であって、ピストンシール部材8は、含フッ素エラストマー100重量部に対し、平均直径が0.5〜500nmのカーボンナノファイバー5〜40重量部を含む架橋体のゴム組成物によって成形される。ゴム組成物は、(a)前記含フッ素エラストマーに前記カーボンナノファイバーが均一に分散され、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核が Hで測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は500ないし1500μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であり、(b)10Hz、30℃における動的弾性率が30〜90MPaであって、10Hz、200℃における動的弾性率が10〜40MPaであり、(c)200℃で24時間後における圧縮永久ひずみが45%以下であって、230℃で24時間後における圧縮永久ひずみが65%以下であり、そして、(d)200℃で250KPa荷重のクリープ試験において、瞬間ひずみが2%以下であって、定常ひずみが−300ppm/時間〜+300ppm/時間である。ピストンシール部材8は、例えば図2に示すようなディスクブレーキ20のキャリパボディ1に用いられることができる。ここで、「重量部」は、特に指定しない限り「phr」を示し、「phr」は、parts per hundred of resin or rubberの省略形であって、ゴム等に対する添加剤等の外掛百分率を表すものである。
(含フッ素エラストマー)
本実施の形態に用いられる含フッ素エラストマー(FKM)は、分子中にフッ素原子を含む合成ゴムであり、フッ素ゴムとも呼ばれ、例えば、含フッ素アクリレートの重合体、フッ化ビニリデン系共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(TFE−P)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(TFE−PMVE)、含フッ素ホスファゼン系、含フッ素シリコーン系などがある。含フッ素エラストマーは、分子量が好ましくは10,000ないし300,000である。含フッ素エラストマーの分子量がこの範囲であると、含フッ素エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、含フッ素エラストマーはカーボンナノチューブを分散させるために良好な弾性を有している。含フッ素エラストマーは、粘性を有しているので凝集したカーボンナノチューブの相互に侵入しやすく、さらに弾性を有することによってカーボンナノチューブ同士を分離することができる。含フッ素エラストマーの分子量が10,000より小さいと、含フッ素エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけても弾性が小さいためカーボンナノチューブを分散させる効果が小さくなる。また、含フッ素エラストマーの分子量が300,000より大きいと、含フッ素エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる。
含フッ素エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃、観測核が で測定した、非架橋体におけるネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が好ましくは30ないし100μ秒、より好ましくは40ないし60μ秒である。上記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、含フッ素エラストマーは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができ、すなわちカーボンナノチューブを分散させるために適度な弾性を有することになる。また、含フッ素エラストマーは粘性を有しているので、含フッ素エラストマーとカーボンナノチューブとを混合したときに、含フッ素エラストマーは高い分子運動によりカーボンナノチューブの相互の隙間に容易に侵入することができる。スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が30μ秒より短いと、含フッ素エラストマーが充分な分子運動性を有することができない。また、スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が100μ秒より長いと、含フッ素エラストマーが液体のように流れやすく、弾性が小さい(粘性は有している)ため、カーボンナノチューブを分散させることが困難となる。
また、含フッ素エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が20ないし100μ秒であることが好ましい。その理由は、上述した未架橋体と同様である。すなわち、上記の条件を有する未架橋体を本発明の製造方法によって架橋化すると、得られる架橋体のT2nはおおよそ上記範囲に含まれる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法により含フッ素エラストマーのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、含フッ素エラストマーは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、含フッ素エラストマーは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかる炭素繊維複合材料は中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
含フッ素エラストマーは、カーボンナノチューブ、特にその末端のラジカルに対して親和性を有するハロゲン基を有する。カーボンナノチューブは、通常、側面は炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっている。本実施の形態では、含フッ素エラストマーの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノチューブのラジカルと親和性(反応性または極性)が高いハロゲン基を有することにより、含フッ素エラストマーとカーボンナノチューブとを結合することができる。このことにより、カーボンナノチューブの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。
(カーボンナノファイバー)
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5〜500nmであり、さらに好ましくは平均直径が0.5ないし100nmである。また、カーボンナノファイバーは、平均長さが0.01〜1000μmであることが好ましい。カーボンナノファイバーの配合量は、ピストンシール部材に配合されるカーボンブラックの量やピストンシール部材に要求される高温特性などによって適宜設定できるが、優れた耐熱性を得るために含フッ素エラストマー100重量部に対してカーボンナノファイバー5〜40重量部を含むことが好ましい。
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ:SWNT)、2層に巻いた2層カーボンナノチューブ(ダブルウォールカーボンナノチューブ:DWNT)、3層以上に巻いた多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)などが適宜用いられる。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。また、カーボンナノファイバーは、ホウ素、炭化ホウ素、ベリリウム、アルミニウム、ケイ素等の黒鉛化触媒と共に約2300℃〜3200℃で黒鉛化処理したものを用いてもよい。
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。なお、カーボンナノファイバーは、含フッ素エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、含フッ素エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
(ゴム組成物の製造方法)
本実施の形態にかかるゴム組成物の製造方法としては、含フッ素エラストマーとカーボンナノファイバーとを、オープンロール、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなど公知の混合機に供給し、混練する方法が挙げられる。カーボンブラックなどのカーボンナノファイバー以外の充填材は、カーボンナノファイバーを供給する前に混合機に供給することが好ましい。通常、この混練の際に、カーボンブラックと同量程度のプロセスオイルが使用されるが、本発明のゴム組成物の製造過程では使用しないことが望ましい。プロセスオイルを用いて製造されたピストンシール部材を用いた液圧マスタシリンダは、プロセスオイルが作動液中に溶け出し、作動液の性能の経時変化や耐熱性の変化の原因となるからである。
図3は、オープンロール法によるゴム組成物の製造方法(混練工程)を模式的に示す図である。図4は、オープンロール機によるゴム組成物の製造方法(薄通し工程)を模式的に示す図である。図3に示すように、第1のロール100と第2のロール200とは、所定の間隔d、例えば0.5mm〜1.0mmの間隔で配置され、図3において矢印で示す方向に回転速度V1,V2で正転あるいは逆転で回転する。まず、第2のロール200に巻き付けられた含フッ素エラストマー30の素練りを行ない、含フッ素エラストマー分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成する。カーボンナノファイバーは、通常、側面は炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっているため、素練りによって含フッ素エラストマーのフリーラジカルがカーボンナノファイバーと結びつきやすい状態となる。
次に、第2のロール200に巻き付けられた含フッ素エラストマー30のバンク32に、平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバー40を投入し、混練して混合物36を得る。含フッ素エラストマー30とカーボンナノファイバー40とを混合する工程は、オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。
さらに、図4に示すように、第1のロール100と第2のロール200とのロール間隔dを、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0ないし0.5mmの間隔に設定し、混合物36をオープンロールに投入して薄通しを複数回行なう。薄通しの回数は、例えば5回〜10回程度行なうことが好ましい。第1のロール100の表面速度をV1、第2のロール200の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05ないし3.00であることが好ましく、さらに1.05ないし1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。薄通しされたゴム組成物は、ロールで圧延されてシート状に分出しされる。この混練工程及び薄通し工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の比較的低い温度に設定して行われ、含フッ素エラストマー30の実測温度も0ないし50℃に調整されることが好ましい。このようにして得られた剪断力により、含フッ素エラストマー30に高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバー40が含フッ素エラストマー分子に1本づつ引き抜かれるように相互に分離し、含フッ素エラストマー30中に分散される。特に、含フッ素エラストマー30は、弾性と、粘性と、カーボンナノファイバー40との化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノファイバー40を容易に分散することができる。そして、カーボンナノファイバー40の分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れたゴム組成物を得ることができる。
より具体的には、オープンロールで含フッ素エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有する含フッ素エラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、含フッ素エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。次に、含フッ素エラストマーに強い剪断力が作用すると、含フッ素エラストマー分子の移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性による含フッ素エラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、含フッ素エラストマー中に分散されることになる。本実施の形態によれば、ゴム組成物が狭いロール間から押し出された際に、含フッ素エラストマーの弾性による復元力でゴム組成物はロール間隔より厚く変形する。その変形は、強い剪断力の作用したゴム組成物をさらに複雑に流動させ、カーボンナノファイバーを含フッ素エラストマー中に分散させると推測できる。そして、一旦分散したカーボンナノファイバーは、含フッ素エラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。また、カーボンナノファイバーの投入前に強化材例えばカーボンブラックを投入した場合には、カーボンブラックのまわりに発生するエラストマーの乱流のような幾通りもの複雑な流動によって、個々のカーボンナノファイバー同士を引き離す方向にも剪断力が働くことになる。したがって、カーボンナノファイバーは、個々に化学的相互作用によって結合したエラストマー分子のそれぞれの流動方向へ移動するため、エラストマー中により均一に分散されることになる。
含フッ素エラストマーにカーボンナノファイバーを剪断力によって分散させる工程は、前記オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集したカーボンナノファイバーを分離できる剪断力を含フッ素エラストマーに与えることができればよい。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。
本実施の形態にかかるゴム組成物の製造方法において、通常、含フッ素エラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを挙げることができる。これらの配合剤は、例えばオープンロールにおけるカーボンナノファイバーの投入前に含フッ素エラストマーに投入することができる。
なお、本実施の形態にかかるゴム組成物の製造方法においては、ゴム弾性を有した状態の含フッ素エラストマーにカーボンナノファイバーを直接混合したが、これに限らず、以下の方法を採用することもできる。まず、カーボンナノファイバーを混合する前に、含フッ素エラストマーを素練りして含フッ素エラストマーの分子量を低下させる。含フッ素エラストマーは、素練りによって分子量が低下すると、粘度が低下するため、凝集したカーボンナノファイバーの空隙に浸透しやすくなる。原料となる含フッ素エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、未架橋体における、ネットワーク成分の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)が30ないし100μ秒のゴム状弾性体である。この原料の含フッ素エラストマーを素練りして含フッ素エラストマーの分子量を低下させ、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100μ秒を越える液体状の含フッ素エラストマーを得る。なお、素練り後の液体状の含フッ素エラストマーの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は、素練りする前の原料の含フッ素エラストマーの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)の5〜30倍であることが好ましい。この素練りは、含フッ素エラストマーが固体状態のままで行なう一般的な素練りとは異なり、強剪断力を例えばオープンロール法で与えることによって含フッ素エラストマーの分子を切断し分子量を著しく低下させ、混練に適さない程の流動を示すまで、液体状態になるまで行なわれる。この素練りは、例えばオープンロール法を用いた場合、ロール温度20℃(素練り時間最短60分)〜150℃(素練り時間最短10分)で行なわれロール間隔dは例えば0.1mm〜1.0mmで、素練りして液体状態の含フッ素エラストマーにカーボンナノファイバーを投入する。しかしながら、含フッ素エラストマーは液体状で弾性が著しく低下しているため、含フッ素エラストマーのフリーラジカルとカーボンナノファイバーが結びついた状態で混練しても凝集したカーボンナノファイバーはあまり分散されない。
そこで、液体状の含フッ素エラストマーとカーボンナノファイバーとを混練して得られた混合物中における含フッ素エラストマーの分子量を増大させ、含フッ素エラストマーの弾性を回復させてゴム状弾性体の混合物を得た後、先に説明したオープンロール法の薄通しなどを実施してカーボンナノファイバーを含フッ素エラストマー中に均一に分散させる。含フッ素エラストマーの分子量が増大したゴム状弾性体の混合物は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、ネットワーク成分の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100μ秒以下である。また、含フッ素エラストマーの分子量が増大したゴム状弾性体の混合物の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は、素練りする前の原料含フッ素エラストマーの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)の0.5〜10倍であることが好ましい。ゴム状弾性体の混合物の弾性は、含フッ素エラストマーの分子形態(分子量で観測できる)や分子運動性(T2nで観測できる)によって表すことができる。含フッ素エラストマーの分子量を増大させる工程は、混合物を加熱処理例えば40℃〜100℃に設定された加熱炉内に混合物を配置し、10時間〜100時間行なわれることが好ましい。このような加熱処理によって、混合物中に存在する含フッ素エラストマーのフリーラジカル同士の結合などによって分子鎖が延長され、分子量が増大する。また、含フッ素エラストマーの分子量の増大を短時間で実施する場合には、架橋剤を少量、例えば架橋剤の適量の1/2以下を混合させておき、混合物を加熱処理(例えばアニーリング処理)し架橋反応によって短時間で分子量を増大させることもできる。架橋反応によって含フッ素エラストマーの分子量を増大させる場合には、この後の工程で混練が困難にならない程度に架橋剤の配合量、加熱時間及び加熱温度を設定することが好ましい。
ここで説明したゴム組成物の製造方法によれば、カーボンナノファイバーを投入する前に含フッ素エラストマーの粘度を低下させることで、含フッ素エラストマー中にカーボンナノファイバーを従来よりも均一に分散させることができる。より詳細には、先に説明した製造方法のように分子量が大きい含フッ素エラストマーにカーボンナノファイバーを混合するよりも、分子量が低下した液体状の含フッ素エラストマーを用いた方が凝集したカーボンナノファイバーの空隙に含フッ素エラストマー分子が侵入しやすく、薄通しの工程においてカーボンナノファイバーをより均一に分散させることができる。また、含フッ素エラストマーが分子切断されることで大量に生成された含フッ素エラストマーのフリーラジカルがカーボンナノファイバーの表面とより強固に結合することができるため、さらにカーボンナノファイバーを均一に分散させることができる。したがって、ここで説明した製造方法によれば、先の製造方法よりも少量のカーボンナノファイバーでも同等の性能を得ることができ、高価なカーボンナノファイバーを節約することで経済性も向上する。
こうして混練されて得られたゴム組成物は、架橋剤を適量加えて、ピストンシール部材の形状を有した金型を用いて押出成形もしくは射出成形されて架橋体のゴム組成物からなるピストンシール部材に成形される。
(ゴム組成物の特性)
ゴム組成物は、マトリックスである含フッ素エラストマーに平均直径が0.5〜500nmのカーボンナノファイバーが均一に分散され、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核が で測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は500ないし1500μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満である。ゴム組成物は、架橋してピストンシール部材に成形されることができる。ゴム組成物は、架橋体において、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃で測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし1500μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることが好ましい。
ゴム組成物のT2n,fnnは、マトリックスである含フッ素エラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されていることを表すことができる。つまり、含フッ素エラストマーにカーボンナノファイバーが均一に分散されているということは、含フッ素エラストマーがカーボンナノファイバーによって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、カーボンナノファイバーによって拘束を受けた含フッ素エラストマー分子の運動性は、カーボンナノファイバーの拘束を受けない場合に比べて小さくなる。そのため、本実施の形態にかかるゴム組成物の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)及びスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーを含まない含フッ素エラストマー単体の場合より短くなり、特にカーボンナノファイバーが均一に分散することでより短くなる。なお、架橋体におけるスピン−格子緩和時間(T1)は、カーボンナノファイバーの混合量に比例して変化する。
また、含フッ素エラストマー分子がカーボンナノファイバーによって拘束された状態では、以下の理由によって、非ネットワーク成分(非網目鎖成分)は減少すると考えられる。すなわち、カーボンナノファイバーによって含フッ素エラストマーの分子運動性が全体的に低下すると、非ネットワーク成分は容易に運動できなくなる部分が増えて、ネットワーク成分と同等の挙動をしやすくなること、また、非ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため、カーボンナノファイバーの活性点に吸着されやすくなること、などの理由によって、非ネットワーク成分は減少すると考えられる。そのため、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は、カーボンナノファイバーを含まない含フッ素エラストマー単体の場合より小さくなる。なお、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する成分の成分分率(fn)は、fn+fnn=1であるので、カーボンナノファイバーを含まない含フッ素エラストマー単体の場合より大きくなる。
以上のことから、本実施の形態にかかるゴム組成物は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって得られる測定値が上記の範囲にあることによってカーボンナノファイバーが均一に分散されていることがわかる。
パルス法NMRを用いた反転回復法により測定されたスピン−格子緩和時間(T1)は、スピン−スピン緩和時間(T2)とともに物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、含フッ素エラストマーのスピン−格子緩和時間が短いほど分子運動性が低く、含フッ素エラストマーは固いといえ、そしてスピン−格子緩和時間が長いほど分子運動性が高く、含フッ素エラストマーは柔らかいといえる。
図5は、本実施の形態にかかるゴム組成物36の一部を拡大して示す模式図である。前記実施の形態にかかる製造方法によって得られたゴム組成物36は、基材(マトリックス)である含フッ素エラストマー30にカーボンナノファイバー40が均一に分散されている。カーボンナノファイバー40の周囲には、カーボンナノファイバー40の表面に吸着した含フッ素エラストマー30の分子の凝集体と考えられる界面相38が形成される。界面相38は、例えば含フッ素エラストマーとカーボンブラックとを混練した際にカーボンブラックの周囲に形成されるバウンドラバーに類似するものと考えられる。このような界面相38は、カーボンナノファイバー40を被覆して保護し、ゴム組成物36中におけるカーボンナノファイバーの量が増えるにつれて界面相38同士が連鎖して微小なセル34を形成する。しかも、ゴム組成物36中におけるカーボンナノファイバー40が最適割合にあると、連鎖した界面相38によってゴム組成物36のセル34内への酸素の浸入が減少し、250℃という高温においても熱劣化し難くなり、高い弾性率を維持することができる。また、ゴム組成物36は、一般的な含フッ素エラストマーの使用限界温度である250℃においてもクリープ瞬間ひずみが小さく、かつ、定常クリープにおける低クリープ率を維持し、高耐熱性を有することができる。
このようなゴム組成物36中におけるカーボンナノファイバー40の最適割合は、含フッ素エラストマー30を100重量部に対して、カーボンナノファイバー40を5〜40重量部含むことで得られる。
こうして得られた架橋体のゴム組成物は高温例えば200℃以上で優れたクリープ性を有し、このようなゴム組成物で成形されたピストンシール部材は優れた耐熱性を有する。架橋体のゴム組成物は、硬度(JIS−A)が80〜95であることが好ましく、90〜95であることがさらに好ましい。また、架橋体のゴム組成物は、10Hz、30℃における動的弾性率が30〜90MPaであって、10Hz、200℃における動的弾性率が10〜40MPaである。ゴム組成物が200℃において10〜40MPaの動的弾性率を有することによって、ピストンシール部材は高温においても適度なロールバック量を有することができる。
架橋体のゴム組成物は、200℃で24時間後における圧縮永久ひずみが45%以下であって、230℃で24時間後における圧縮永久ひずみが65%以下である。このようなゴム組成物によれば、望ましい耐ヘタリ性を有することができる。また、架橋体のゴム組成物は、200℃で250KPa荷重のクリープ試験において、瞬間ひずみが2%以下であって、定常ひずみが−300ppm/時間〜+300ppm/時間である。このようなゴム組成物によれば、高温における優れた耐クリープ性を有することができる。また、架橋体のゴム組成物は、成形収縮率が0.1〜1.0%であることが好ましい。
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
例えば、本実施の形態においては、車両用のディスクブレーキに内蔵するピストンシール部材であったが、その他のピストンシール部材であってもよい。特に例えば200℃以上の高温領域で使用されるピストンシール部材において有用である。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)ゴム組成物サンプルの作製
6インチオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔1.5mm)に、表1及び表2に示す所定量の含フッ素エラストマー(100重量部(phr))を投入して、ロールに巻き付かせ、5分間素練りした後、表1及び表2に示す量のカーボンナノファイバー及び/もしくはカーボンブラックを投入し、混合物をオープンロールから取り出した。そして、ロール間隔を1.5mmから0.3mmへと狭くして、混合物を再びオープンロールに投入して薄通しを繰り返し10回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得られたゴム組成物を投入し、分出しした。
この分出しされたゴム組成物は90℃、5分間プレス成形し、それぞれ厚さ1mmのシート状の実施例1〜6及び比較例1、2の無架橋体のゴム組成物サンプルに成形した。また、分出しされた無架橋体のゴム組成物に架橋剤としての受酸剤2種類(MgO、Ca(OH))を配合し、オープンロールで混合して、ロール間隙を1.1mmで分出しした。そして、分出しされたゴム組成物を185℃、10分間プレス架橋し、さらに200℃、8時間ポストキュアして、実施例1〜6及び比較例1、2の架橋体のゴム組成物サンプルを成形した。
表1及び表2において、原料「FKM1」は旭硝子社製の含フッ素エラストマーのアフラス150E(T2n(30℃)65μ秒)であり、原料「FKM2」はデュポン・ダウ・エラストマー・ジャパン社製の含フッ素エラストマーのバイトンA−500(分子量50,000、T2n(30℃)49μ秒)であり、「MWNT13」は平均直径が約13nmの気相成長マルチウォールカーボンナノチューブであり、「MWNT100」は平均直径が約100nmの気相成長マルチウォールカーボンナノチューブであり、「HAF」は平均粒径27nm、DBP吸収量101ml/100gのHAFグレードのカーボンブラックであった。
(2)ピストンシール部材の作製
前記(1)で得られたゴム組成物を射出成形し、実施例1〜6および比較例1,2の架橋したピストンシール部材を得た。
(3)パルス法NMRを用いた柔軟性の測定
各無架橋体のゴム組成物サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法及び反復法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)にて、Piをいろいろ変えて減衰曲線を測定した。また、無架橋のゴム組成物サンプルは、磁場の適正範囲までサンプル管に挿入して測定した。測定温度は150℃であった。この測定によって、原料エラストマー及び無架橋体のゴム組成物サンプルの第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)と第2のスピン−スピン緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)とを求めた。その結果を表1及び表2に示す。
(4)静的物性の測定
各架橋体のゴム組成物サンプルについて、ゴム硬度(JIS−A)、引張強さ(TB)および切断伸び(EB)を測定した。ゴム硬度(JIS−A)については、JIS K 6253によって測定した。TB及びEBについては、JIS K 6521−1993によって測定した。これらの結果を表1及び表2に示す。
(5)動的物性の測定
各架橋体のゴム組成物サンプルについて、SII社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm、測定温度−100〜300℃、動的ひずみ±0.05%、周波数10HzでJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い30℃及び200℃におけるE’(動的弾性率)を測定した。また、各架橋体のゴム組成物サンプルについて、圧縮永久ひずみ(JIS K6262)を測定した。圧縮永久ひずみは、200℃、24時間、25%圧縮の第1の条件と、230℃、24時間、25%圧縮の第2の条件と、で行なった。圧縮永久ひずみは、高温におけるピストンシール部材のいわゆる耐ヘタリ性についての評価である。さらに、各架橋体のゴム組成物サンプルについて、200℃で250KPa荷重のクリープ試験を行い、瞬間ひずみ及び定常ひずみを測定した。これらの結果を表1及び表2に示す。
(6)成形収縮率
前記(1)で得られた架橋体のゴム組成物の高さ寸法とプレス金型の高さ寸法の差から成形収縮率(%)を求めた。これらの結果を表1及び表2に示す。
(7)高温高圧作動耐久性試験
各ピストンシール部材を耐久試験用ディスクブレーキに装着し、液圧13MPa、液温200℃で繰り返し作動させ、ピストンシール部材が破断した回数を求めた。これらの結果を表1及び表2に示す。なお、10万回の繰り返し作動にも耐えて液漏れその他の異常がなかった場合には、表1及び表2に「○」を記入した。
Figure 0004749362
Figure 0004749362
表1から、本発明の実施例1〜6によれば、以下のことが確認された。すなわち、実施例1〜6のピストンシール部材は、比較例1,2のピストンシール部材に比べ液温200℃における高温高圧作動耐久性に優れており、優れた耐熱性を有していることがわかった。また、このようなピストンシール部材に用いられた架橋体のゴム組成物は、硬度(JIS−A)が80〜95であり、30℃における動的弾性率が30〜90MPaであって、200℃における動的弾性率が10〜40MPaであった。さらに、架橋体のゴム組成物は、200℃における圧縮永久ひずみが45%以下であって、230℃における圧縮永久ひずみが65%以下であった。特に、架橋体のゴム組成物は、200℃のクリープ試験において、瞬間ひずみが2%以下であって、定常ひずみが−300ppm/時間〜+300ppm/時間であり、比較例1,2の架橋体のゴム組成物よりも耐クリープ性に優れていた。また、実施例1〜6の架橋体のゴム組成物における成形収縮率は、0.1〜1.0%であって、比較例1、2よりも小さく、成形時の寸法制度が高くかつ熱変形が小さいことがわかった。
本発明の一実施の形態に係るピストンシール部材を模式的に示す断面図である。 図1に示すピストンシール部材を含むディスクブレーキを模式的に示す断面図である。 オープンロール機によるゴム組成物の製造方法(混練)を模式的に示す図である。 オープンロール機によるゴム組成物の製造方法(薄通し)を模式的に示す図である。 本実施の形態にかかるゴム組成物の一部を拡大して示す模式図である。
符号の説明
1 キャリパボディ
1a ブリッジ部
1b 作用部
1c 反作用部
2 ディスクロータ
3 ブラケット
4b,4c 摩擦パッド
5 ピストン
6 シリンダ
6a シリンダ孔
7 ピストンシール溝
7a,7b 面取コーナ
8 ピストンシール部材
9 液圧室
10 供給口
20 ディスクブレーキ
28 液圧経路
30 含フッ素エラストマー
40 カーボンナノファイバー
100 第1のロール
200 第2のロール

Claims (4)

  1. シリンダ孔と、該シリンダ孔内を摺動するピストンと、を液密にかつ摺動可能に保持するディスクブレーキのキャリパボディに用いられるピストンシール部材であって、
    前記ピストンシール部材は、含フッ素エラストマー100重量部に対し、平均直径が0.5〜500nmのカーボンナノファイバー5〜40重量部を含む架橋体のゴム組成物によって成形され
    前記ゴム組成物は、
    (a)前記含フッ素エラストマーに前記カーボンナノファイバーが均一に分散され、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核が Hで測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は500ないし1500μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であり、
    (b)10Hz、30℃における動的弾性率が30〜90MPaであって、10Hz、200℃における動的弾性率が10〜40MPaであり、
    (c)200℃で24時間後における圧縮永久ひずみが45%以下であって、230℃で24時間後における圧縮永久ひずみが65%以下であり、
    (d)200℃で250KPa荷重のクリープ試験において、瞬間ひずみが2%以下であって、定常ひずみが−300ppm/時間〜+300ppm/時間である、ピストンシール部材。
  2. 請求項において、
    前記ゴム組成物は、硬度(JIS−A)が80〜95である、ピストンシール部材。
  3. 請求項において、
    前記ゴム組成物は、成形収縮率が0.1〜1.0%である、ピストンシール部材。
  4. 請求項1〜のいずれかのピストンシール部材と、
    シリンダ孔を有するシリンダと、
    前記シリンダ孔に挿入されるピストンと、を含み、
    前記ピストンシール部材は、前記シリンダ孔の内周壁に形成された環状溝に嵌め込まれ、前記シリンダ孔に挿入された前記ピストンを液密的に移動可能な状態で密接させるとともに、液圧にて前進した該ピストンをロールバックさせる、ディスクブレーキ。
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