JP5374047B2 - 炭素繊維複合材料 - Google Patents

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Description

本発明は、高耐熱性を有する炭素繊維複合材料に関する。
近年、カーボンナノチューブとして例えば気相成長炭素繊維を用いた複合材料が注目されている。このような複合材料は、気相成長炭素繊維を含むことで、機械的強度などの向上が期待されている。気相成長炭素繊維は相互に強い凝集性を有するため、複合材料の基材に気相成長炭素繊維を均一に分散させることが非常に困難であった。
エラストマーにカーボンナノチューブを混練することで、エラストマー分子がカーボンナノチューブの末端のラジカルと結合することにより、カーボンナノチューブの凝集力を弱め、その分散性を高めた炭素繊維複合材料が提案された(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−97525号公報
本発明の目的は、気相成長炭素繊維が均一に分散された高耐熱性を有する炭素繊維複合材料を提供することにある。
本発明にかかる炭素繊維複合材料は、
含フッ素エラストマー100重量部に対して、気相成長炭素繊維を5〜40重量部含み、
23℃における破断伸び(EB)が200%〜500%であり、
30℃における動的弾性率(E’/30℃)が25MPa〜3000MPaであり、
250℃における動的弾性率(E’/250℃)が15MPa〜1000MPaであり、
前記含フッ素エラストマーは、分子中にフッ素原子を含む2元系の合成ゴムであって、かつ、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃、観測核が Hで測定した、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が30ないし100μ秒であり、
前記気相成長炭素繊維は、平均直径が67nm〜107nmであり、かつ、下記式(1)で定義される屈曲指数の平均値が8以上15以下の剛直な繊維である。
屈曲指数=Lx÷D (1)
Lx:気相成長炭素繊維の屈曲していない直線部分の長さ
D:気相成長炭素繊維の直径
本発明にかかる炭素繊維複合材料は、
3元系の含フッ素エラストマー100重量部に対して、気相成長炭素繊維を5〜40重量部含み、
23℃における破断伸び(EB)が200%〜500%であり、
30℃における動的弾性率(E’/30℃)が25MPa〜3000MPaであり、
250℃における動的弾性率(E’/250℃)が15MPa〜1000MPaであり、
前記含フッ素エラストマーは、分子中にフッ素原子を含む3元系の合成ゴムであって、かつ、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃、観測核が Hで測定した、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が30ないし100μ秒であり、
前記気相成長炭素繊維は、平均直径が67nm〜107nmであり、かつ、下記式(1)で定義される屈曲指数の平均値が8以上15以下の剛直な繊維である。
屈曲指数=Lx÷D (1)
Lx:気相成長炭素繊維の屈曲していない直線部分の長さ
D:気相成長炭素繊維の直径
本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、一般的な含フッ素エラストマーの使用限界温度である250℃においても高い動的弾性率を維持し、高耐熱性を有することができる。また、本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、含フッ素エラストマー単体よりも柔軟で高い破断伸び(EB)を有することができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
引張強さが6MPa〜50MPaであることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記含フッ素エラストマー100重量部に配合された前記気相成長炭素繊維1重量部当たりにおける、前記含フッ素エラストマー単体の50%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の50%モジュラスの上昇率が20%〜100%であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
20℃〜260℃において、平均線膨張係数が0ppm〜200ppm(1/K)であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
250℃で250KPaの負荷をかけたクリープ試験におけるクリープ瞬間ひずみが0%〜3%であり、かつ、定常クリープ期の1時間当たりのクリープ率が±500ppm以内であることができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記クリープ試験で60時間破壊しないことができる。
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
耐熱温度が350℃〜500℃であることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態で用いたオープンロール法による含フッ素エラストマーと気相成長炭素繊維との混練法を模式的に示す図である。図2は、本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料を模式的に示す拡大断面図である。
本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、含フッ素エラストマー100重量部に対して、平均直径が30nmを超え200nm以下の気相成長炭素繊維を5〜40重量部含み、23℃における破断伸び(EB)が200%〜500%であり、30℃における動的弾性率(E’/30℃)が25MPa〜3000MPaであり、250℃における動的弾性率(E’/250℃)が15MPa〜1000MPaである。
(I)含フッ素エラストマー
本実施の形態に用いられる含フッ素エラストマーは、2元系の含フッ素エラストマーまたは3元系の含フッ素エラストマーであって、分子中にフッ素原子を含む合成ゴムであり、フッ素ゴムとも呼ばれ、例えば、含フッ素アクリレートの重合体、フッ化ビニリデン系共重合体(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(TFE-P)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(TFE-PMVE)、含フッ素ホスファゼン系、含フッ素シリコーン系などがある。含フッ素エラストマーは、分子量が好ましくは50,000ないし300,000である。含フッ素エラストマーの分子量がこの範囲であると、含フッ素エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、含フッ素エラストマーは気相成長炭素繊維を分散させるために良好な弾性を有している。含フッ素エラストマーは、粘性を有しているので凝集した気相成長炭素繊維の相互に侵入しやすく、さらに弾性を有することによって気相成長炭素繊維同士を分離することができる。含フッ素エラストマーの分子量が50,000より小さいと、含フッ素エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけても弾性が小さいため気相成長炭素繊維を分散させる効果が小さくなる。また、含フッ素エラストマーの分子量が300,000より大きいと、含フッ素エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる。
含フッ素エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃、観測核がHで測定した、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が30ないし100μ秒であり、好ましくは45ないし60μ秒である。上記範囲のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)を有することにより、含フッ素エラストマーは、柔軟で充分に高い分子運動性を有することができ、すなわち気相成長炭素繊維を分散させるために適度な弾性を有することになる。また、含フッ素エラストマーは粘性を有しているので、含フッ素エラストマーと気相成長炭素繊維とを混合したときに、含フッ素エラストマーは高い分子運動により気相成長炭素繊維の相互の隙間に容易に侵入することができる。スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が30μ秒より短いと、含フッ素エラストマーが充分な分子運動性を有することができない。また、スピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が100μ秒より長いと、含フッ素エラストマーが液体のように流れやすく、弾性が小さい(粘性は有している)ため、気相成長炭素繊維を分散させることが困難となる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法により含フッ素エラストマーのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、含フッ素エラストマーは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、含フッ素エラストマーは柔らかいといえる。
パルス法NMRを用いたハーンエコー法によって得られるスピン−スピン緩和時間は、物質の分子運動性を表す尺度である。具体的には、パルス法NMRを用いたハーンエコー法により含フッ素エラストマーのスピン−スピン緩和時間を測定すると、緩和時間の短い第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間のより長い第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する第2の成分とが検出される。第1の成分は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク成分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そして、第1のスピン−スピン緩和時間が短いほど分子運動性が低く、含フッ素エラストマーは固いといえる。また、第1のスピン−スピン緩和時間が長いほど分子運動性が高く、含フッ素エラストマーは柔らかいといえる。
パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法でなくてもソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)あるいは90゜パルス法でも適用できる。ただし、本発明にかかる炭素繊維複合材料は中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。一般的に、ソリッドエコー法および90゜パルス法は、短いT2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度のT2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適している。
含フッ素エラストマーは、気相成長炭素繊維、特にその末端のラジカルに対して親和性を有するハロゲン基を有する。気相成長炭素繊維は、通常、側面は炭素原子の6員環で構成され、先端は5員環が導入されて閉じた構造となっているが、構造的に無理があるため、実際上は欠陥を生じやすく、その部分にラジカルや官能基を生成しやすくなっている。本実施の形態では、含フッ素エラストマーの主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、気相成長炭素繊維のラジカルと親和性(反応性または極性)が高いハロゲン基を有することにより、含フッ素エラストマーと気相成長炭素繊維とを結合することができる。このことにより、気相成長炭素繊維の凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。
本実施の形態の含フッ素エラストマーは、未架橋体のまま気相成長炭素繊維と混練することが好ましい。
(II)気相成長炭素繊維
本実施の形態に用いられる気相成長炭素繊維は、平均直径が67nm以上107nm以下である。気相成長炭素繊維は、平均長さが5〜20μmであることが好ましい。気相成長炭素繊維は、炭素六角網面のグラファイトの1枚面(グラフェンシート)を巻いて筒状にした形状を有する多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)であって、特に欠陥の少ない気相成長炭素繊維VGCF(昭和電工社の登録商標
)を用いることが好ましい。炭素繊維複合材料中における気相成長炭素繊維の配合量は、含フッ素エラストマー100重量部に対して、5〜40重量部である。
気相成長炭素繊維は、直線状の繊維形態を有し、屈曲指数の平均値が8以上15以下の剛直な繊維である。屈曲指数は、気相成長炭素繊維の剛直性を示すものであって、顕微鏡などで撮影した多数の気相成長炭素繊維の屈曲していない直線部分の長さと直径とを測定し、計算することで得られる。気相成長炭素繊維を含むカーボンナノファイバーの屈曲部分(欠陥)は、電子顕微鏡で繊維を幅方向に横切る白い線として写る。気相成長炭素繊維の屈曲していない直線部分の長さLxとし、気相成長炭素繊維の直径をDとしたとき、屈曲指数はLx÷Dで定義される。したがって、屈曲指数が小さい気相成長炭素繊維は短い間隔で折れ曲がることを示し、屈曲指数が大きい気相成長炭素繊維は直線部分が長く、屈曲していないことを示す。本実施の形態における気相成長炭素繊維の直線部分の長さLxの測定は、1万〜5万倍で撮影した気相成長炭素繊維の写真データを例えば2〜10倍に拡大した状態で行なう。拡大表示した写真では、繊維を幅方向に横切る屈曲部分(欠陥)確認することができる。このようにして確認した隣接する屈曲部分(欠陥)の間隔を、気相成長炭素繊維の直線部分の長さLxとして複数箇所計測して行なう。なお、平均直径13nmの多層カーボンナノチューブ(MWNT)の屈曲指数は約2であり、本実施の形態に用いる気相成長炭素繊維に比べて欠陥が多く、屈曲間隔が短く湾曲している。
このような剛直な気相成長炭素繊維は、各種気相成長法により製造することができる。気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、気相成長炭素繊維を合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。気相成長炭素繊維は、例えばベンゼン、トルエン、天然ガス等の有機化合物を原料に、フェロセン等の遷移金属触媒の存在下で、水素ガスとともに800℃〜1300℃で熱分解反応させることによって得られる、実測平均直径が87nm、平均長さ5〜20μm、屈曲指数平均値が8以上15以下の気相成長炭素繊維であることが好ましい。また、気相成長炭素繊維は、ホウ素、炭化ホウ素、ベリリウム、アルミニウム、ケイ素等の黒鉛化触媒と共に約2300℃〜3200℃で黒鉛化処理してもよい。
気相成長炭素繊維は、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
(III)炭素繊維複合材料を得る工程
本実施の形態では、炭素繊維複合材料を得る工程として、図1を用いてロール間隔が0.5mm以下の薄通しを行なうオープンロール法を用いた例について述べる。
図1は、2本のロールを用いたオープンロール法を模式的に示す図である。図1において、符号10は第1のロールを示し、符号20は第2のロールを示す。第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、例えば1.5mmの間隔で配置されている。第1および第2のロールは、正転あるいは逆転で回転する。図示の例では、第1のロール10および第2のロール20は、矢印で示す方向に回転している。
まず、第1,第2のロール10,20が回転した状態で、第1のロール10に、含フッ素エラストマー30を巻き付けると、ロール10,20間に含フッ素エラストマーがたまった、いわゆるバンク32が形成される。このバンク32内に気相成長炭素繊維40を加えて、第1、第2のロール10,20を回転させると、含フッ素エラストマー30と気相成長炭素繊維40の混合物が得られる。この混合物をオープンロールから取り出す。さらに、第1のロール10と第2のロール20の間隔dを、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1ないし0.5mmの間隔に設定し、得られた含フッ素エラストマーと気相成長炭素繊維の混合物をオープンロールに投入して薄通しを行なう。薄通しの回数は、
例えば1回〜10回程度行なうことが好ましい。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05ないし3.00であることが好ましく、さらに1.05ないし1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。
このようにして得られた剪断力により、含フッ素エラストマー30に高い剪断力が作用し、凝集していた気相成長炭素繊維が含フッ素エラストマー分子に1本ずつ引き抜かれるように相互に分離し、含フッ素エラストマー30に分散される。
また、気相成長炭素繊維の投入に先立って、金属もしくは非金属の粒子をバンク32に投入しておくと、ロールによる剪断力は金属粒子のまわりに乱流状の流動を発生させ、気相成長炭素繊維を含フッ素エラストマー30にさらに分散させることができる。
この工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、含フッ素エラストマーと気相成長炭素繊維との混合は、好ましくは0ないし50℃、より好ましくは5ないし30℃の比較的低い温度で行われる。このような低温での薄通しは、含フッ素エラストマーがゴム弾性を有しているので、気相成長炭素繊維を効率よくマトリックス中に分散することができる。
このとき、本実施の形態の含フッ素エラストマーは、上述した特徴、すなわち、含フッ素エラストマーの分子形態(分子長)や分子運動によって表される弾性と、粘性と、気相成長炭素繊維との化学的相互作用と、を有することによって気相成長炭素繊維の分散を容易にするので、分散性および分散安定性(気相成長炭素繊維が再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。より具体的には、含フッ素エラストマーと気相成長炭素繊維とを混合すると、粘性を有する含フッ素エラストマーが気相成長炭素繊維の相互に侵入し、かつ、含フッ素エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によって気相成長炭素繊維の活性の高い部分と結合する。この状態で、分子長が適度に長く、分子運動性の高い(弾性を有する)含フッ素エラストマーと気相成長炭素繊維との混合物に強い剪断力が作用すると、含フッ素エラストマーの移動に伴って気相成長炭素繊維も移動し、さらに剪断後の弾性による含フッ素エラストマーの復元力によって、凝集していた気相成長炭素繊維が分離されて、含フッ素エラストマー中に分散されることになる。本実施の形態によれば、混合物が狭いロール間から押し出された際に、含フッ素エラストマーの弾性による復元力で混合物はロール間隔より厚く変形する。その変形は、強い剪断力の作用した混合物をさらに複雑に流動させ、気相成長炭素繊維を含フッ素エラストマー中に分散させると推測できる。そして、一旦分散した気相成長炭素繊維は、含フッ素エラストマーとの化学的相互作用によって再凝集することが防止され、良好な分散安定性を有することができる。
含フッ素エラストマーに気相成長炭素繊維を剪断力によって分散させる工程は、上記オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集した気相成長炭素繊維を分離できる剪断力を含フッ素エラストマーに与えることができればよい。
本工程(混合・分散工程)によって得られた炭素繊維複合材料は、架橋剤によって架橋させて成形するか、もしくは架橋させずに成形することができる。
含フッ素エラストマーと気相成長炭素繊維との混合・分散工程において、あるいは続いて、通常、ゴムなどの含フッ素エラストマーの加工で用いられる例えばカーボンブラックなどの配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。
配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを挙げることができる。
(IV)炭素繊維複合材料
図2は、本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料を模式的に示す拡大断面図である。本工程によって得られた本実施の形態の炭素繊維複合材料1は、基材(マトリックス)である含フッ素エラストマー30に気相成長炭素繊維40が均一に分散している。気相成長炭素繊維40の周囲には、気相成長炭素繊維40の表面に吸着した含フッ素エラストマー30の分子の凝集体と考えられる界面相36が形成される。界面相36は、例えば含フッ素エラストマーとカーボンブラックとを混練した際にカーボンブラックの周囲に形成されるバウンドラバーに類似するものと考えられる。このような界面相36は、気相成長炭素繊維40を被覆して保護し、炭素繊維複合材料中における気相成長炭素繊維の量が増えるにつれて界面相36同士が連鎖して微小なセル34を形成する。しかも、炭素繊維複合材料1中における気相成長炭素繊維40が最適割合にあると、連鎖した界面相36によって炭素繊維複合材料1のセル34内への酸素の浸入が減少し、例えば250℃という高温においても熱劣化し難くなり、高い弾性率を維持することができる。また、炭素繊維複合材料1は、一般的な含フッ素エラストマーの使用限界温度である250℃においてもクリープ瞬間ひずみが小さく、かつ、定常クリープにおける低クリープ率を維持し、高耐熱性を有することができる。
このような炭素繊維複合材料1中における気相成長炭素繊維40の最適割合は、含フッ素エラストマー30を100重量部に対して、気相成長炭素繊維40を5〜40重量部含むことで得られる。
炭素繊維複合材料1は、23℃における破断伸び(EB)が200%〜500%であり、30℃における動的弾性率(E’/30℃)が25MPa〜3000MPaであり、250℃における動的弾性率(E’/250℃)が15MPa〜1000MPaである。炭素繊維複合材料1は、30℃における動的弾性率(E’/30℃)が25MPa〜2000MPaであることが好ましく、250℃における動的弾性率(E’/250℃)が15MPa〜500MPaであることが好ましい。炭素繊維複合材料1は、気相成長炭素繊維40の補強により剛性、特に高温(250℃)における高い剛性を有することができる。カーボンナノファイバーを含フッ素エラストマーに配合すると炭素繊維複合材料1の破断伸びは含フッ素エラストマー単体より小さくなる傾向があるが、本実施の形態のように比較的太い気相成長炭素繊維40を均一に分散させることで柔軟性を向上させながら剛性を向上させることができる。これは、気相成長炭素繊維40が炭素繊維複合材料1内の欠陥に応力集中して破断するのを防止しているものと考えられる。
また、炭素繊維複合材料1は、引張強さが6MPa〜50MPaであることが好ましく、6MPa〜50MPaであることがさらに好ましい。炭素繊維複合材料1は、含フッ素エラストマー100重量部に配合された気相成長炭素繊維40の1重量部当たりにおける含フッ素エラストマー単体の50%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の50%モジュラスの上昇率が20%〜100%であることが好ましく、20%〜80%であることがさらに好ましい。50%モジュラスは炭素繊維複合材料1の剛性を表し、50%モジュラスの上昇率は気相成長炭素繊維40を1重量部配合することでマトリックスの含フッ素エラストマーの50%モジュラスがどれだけ上昇したかを示すもので、補強の尺度を示すものである。
炭素繊維複合材料1は、20℃〜260℃において、平均線膨張係数が0ppm〜200ppm(1/K)であることが好ましく、10ppm〜150ppmであることがさらに好ましい。このように炭素繊維複合材料1は、広い温度範囲において安定した線膨張係
数を得ることができる。炭素繊維複合材料1は、250℃で250KPaの負荷をかけたクリープ試験におけるクリープ瞬間ひずみが0%〜3%であり、かつ、定常クリープ期の1時間当たりのクリープ率が±500ppm以内であることが好ましい。炭素繊維複合材料1は、このクリープ瞬間ひずみが0%〜2%であり、かつ、定常クリープ期の1時間当たりのクリープ率が0ppm〜500ppmであることがさらに好ましい。クリープ試験を実施すると、負荷をかけた瞬間の変形量であるクリープ瞬間ひずみ、クリープ率の安定した定常クリープ期、急速にひずみが大きくなる加速クリープ期を経て破断する。定常クリープ期における1時間当たりのクリープ率が小さいことによって、加速クリープ期に移行するまでの時間が長いことや破断(破壊)までの時間が長いことがわかる。したがって、炭素繊維複合材料1によれば、一般的な含フッ素エラストマーの使用限界温度である250℃においてもクリープ瞬間ひずみが小さく、かつ、定常クリープにおける低クリープ率を維持し、高耐熱性を有することができる。このような炭素繊維複合材料1は、250℃で250KPaの負荷をかけたクリープ試験で60時間破壊しないことが好ましい。
炭素繊維複合材料1は、耐熱温度が350℃〜500℃であることが好ましい。耐熱温度は、熱機械分析(TMA)によって炭素繊維複合材料1を昇温して線膨張係数を測定し、得られた線膨張係数の温度変化特性から軟化劣化が開始する劣化開始温度である。
また、炭素繊維複合材料1は、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、無架橋体における、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は500ないし1500μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることができる。炭素繊維複合材料1は、架橋体において、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)は100ないし1500μ秒であり、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は0.2未満であることが好ましい。
ゴム組成物のT2n,fnnは、マトリックスのエラストマーに気相成長炭素繊維が均一に分散されていることを表すことができる。つまり、含フッ素エラストマーに気相成長炭素繊維が均一に分散されているということは、含フッ素エラストマー分子が気相成長炭素繊維によって拘束されている状態であるともいえる。この状態では、気相成長炭素繊維によって拘束を受けた含フッ素エラストマー分子の運動性は、気相成長炭素繊維の拘束を受けない場合に比べて小さくなる。そのため、本実施の形態にかかる無架橋体における炭素繊維複合材料の第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)及びスピン−格子緩和時間(T1)は、気相成長炭素繊維を含まない含フッ素エラストマー単体の場合より短くなり、特に気相成長炭素繊維が均一に分散することでより短くなる。
また、含フッ素エラストマー分子が気相成長炭素繊維によって拘束された状態では、以下の理由によって、非ネットワーク成分(非網目鎖成分)は減少すると考えられる。すなわち、気相成長炭素繊維によって含フッ素エラストマーの分子運動性が全体的に低下すると、非ネットワーク成分は容易に運動できなくなる部分が増えて、ネットワーク成分と同等の挙動をしやすくなること、また、非ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため、気相成長炭素繊維の活性点に吸着されやすくなること、などの理由によって、非ネットワーク成分は減少すると考えられる。そのため、第2のスピン−スピン緩和時間(T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は、気相成長炭素繊維を含まない含フッ素エラストマー単体の場合より小さくなる。なお、第1のスピン−スピン緩和時間(T2n)を有する成分の成分分率(fn)は、fn+fnn=1であるので、気相成長炭素繊維を含まない含フッ素エラストマー単体の場合より大きくなる。
このような炭素繊維複合材料1は、高温下で用いられるシール部品例えば車両用ブレーキのキャリパーボディのピストンシール部材や耐熱パッキンなどに好適に用いることができる。特に、車両用ブレーキのキャリパーボディのピストンシール部材として炭素繊維複合材料1を用いた場合、連鎖した界面相36によって高温のブレーキ液の浸透を防ぐことができるため、耐熱性に優れると共に、含フッ素エラストマーを含む炭素繊維複合材料であってもブレーキ液による炭素繊維複合材料1の劣化を防ぐことができる。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜5、参考例1、比較例1〜4)
(1)サンプルの作製
(a)炭素繊維複合材料の作製
第1の工程:ロール径が6インチのオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、表1に示す100重量部(phr)の含フッ素エラストマー(表1では「2元系FKM」、「3元系FKM」と記載する)を投入して、ロールに巻き付かせた。
第2の工程:次に、表1に示す重量部(phr)の気相成長炭素繊維(表1では「気相炭素87nm」、「気相炭素156nm」と記載する)、架橋剤(パーオキサイド)をエラストマーに投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。
第3の工程:気相成長炭素繊維を投入し終わったら、エラストマーと気相成長炭素繊維との混合物をロールから取り出した。
第4の工程:ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し10回行った。
第5の工程:ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした炭素繊維複合材料を投入し、分出しした。
なお、表1における「気相炭素87nm」は実測平均直径87nmで平均屈曲指数が9.9の気相成長炭素繊維であり、「気相炭素156nm」は実測平均直径156nmで平均屈曲指数が6.8の昭和電工社製気相成長炭素繊維「VGCF(昭和電工社の登録商標)」であった。気相成長炭素繊維(「気相炭素87nm」、「気相炭素156nm」)の平均直径及び平均屈曲指数は電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した写真で測定され、平均屈曲指数の測定は繊維の屈曲していない直線部分の長さ(隣接する欠陥の間隔)Lxと繊維の直径Dを測定し、その結果を用いて繊維の種類毎に200箇所の屈曲指数をLx/Dで計算し、その屈曲指数を測定箇所の数(200)で割って平均屈曲指数を求めた。また、表1における「3元系FKM」がダイセル社製(T2n/30℃が50μ秒)であり、「2元系FKM」がデュポン・ダウ・エラストマー・ジャパン社製の含フッ素エラストマーのバイトン(分子量50,000、T2n/30℃が55μ秒)であった。
このようにして得られた炭素繊維複合材料をロールで圧延後、185℃10分間プレス成形(キュア)した後、さらに200℃8時間ポストキュアして、実施例1〜5、参考例1及び比較例1〜4の架橋体の炭素繊維複合材料(厚さ1mmのシート形状)を得た。比較例3、4については、気相成長炭素繊維の代わりにHAFグレードのカーボンブラック(表1では「HAF」と記載する)を用いた。
(2)パルス法NMRを用いた測定
未架橋体の実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4のゴム組成物サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜y)にて、減衰曲線を測定し、炭素繊維複合材料サンプルの150℃における特性緩和時間(T2n/150℃)及び第2の
スピンスピン緩和時間(T2n/150℃)を有する成分の成分分率(fnn)を測定した。測定結果を表1に示す。なお、原料の2元系FKMの特性緩和時間(T2n/30℃)は55μ秒、3元系FKMの(T2n/30℃)は50μ秒であった。
(3)硬度の測定
架橋体の実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4のゴム組成物サンプルについて、ゴム硬度(JIS−A)をJIS K 6253に基づいて測定した。測定結果を表1に示す。
(4)50%モジュラス(M50)の測定
実施例1〜5、参考例1の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4の架橋体のゴム組成物サンプル(幅5mm×長さ50mm×厚さ1mm)を10mm/minで伸長し、50%変形時の応力(M50:50%モジュラス(MPa))を求めた。測定結果を表1に示す。また、この測定結果に基づいて、エラストマー100重量部に配合された気相成長炭素繊維1重量部当たりにおける、含フッ素エラストマー単体の50%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の50%モジュラスの上昇率(M50上昇率)を計算し、表1に示す。50%モジュラスの上昇率(M50上昇率)は、例えば、実施例1であれば、実施例1と比較例1のM50の差(4MPa−1MPa)を比較例1のM50の値(1MPa)で割り、さらに実施例1の気相成長炭素繊維の配合量(5重量部)で割った百分率である。また、実施例1、2は2元系FKMを用いたので比較例1に対するM50上昇率を計算し、実施例3〜6は3元系FKMを用いたので比較例2に対するM50上昇率を計算した。
(5)引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)の測定
実施例1〜5、参考例1の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4の架橋体のゴム組成物サンプルを1A形のダンベル形状に切り出した試験片について、東洋精機社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行い引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)を測定した。これらの結果を表1に示す。
(6)動的粘弾性試験
実施例1〜5、参考例1の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4の架橋体のゴム組成物サンプルを短冊形(40×1×5(巾)mm)に切り出した試験片について、SII社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm、測定温度−100〜300℃、動的ひずみ±0.05%、周波数10HzでJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い動的弾性率(E’、単位はMPa)を測定した。測定温度が30℃と250℃における動的弾性率(E’/30℃、E’/150℃)の測定結果を表1に示す。
(7)クリープ特性の測定
実施例1〜5、参考例1の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4の架橋体のゴム組成物サンプルについて、250℃で250KPaの負荷をかけ、60時間の耐熱クリープ試験を行ない、クリープ瞬間ひずみと、定常クリープ期の1時間当たりのクリープ率と、を測定した。クリープ瞬間ひずみは、250KPaの負荷をかけた瞬間の伸びである。クリープ率は、クリープ瞬間ひずみの後かつ加速クリープ期の前の定常クリープ期における1時間当たりのひずみ変化量(1ppm=0.0001%)である。これらの結果を表1に示す。
(8)熱機械分析(TMA)
実施例1〜5、参考例1の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4の架橋体
のゴム組成物サンプルを1.5mm×1.0mm×10mmに切り出した試験片について、SII社製熱機械分析機(TMASS)を用いて、側長荷重は25KPa、測定温度は−100〜450℃、昇温速度は2℃/分で線膨張係数を測定した。
この測定によって得られた測定温度20℃〜260℃における平均線膨張係数(ppm/K)を表1に示す。
また、線膨張係数の温度変化特性から軟化劣化が開始する劣化開始温度を測定して「耐熱温度」として表1に示す。なお、450℃においても軟化劣化が開始しなかった場合には「無し」と表1に示す。
表1から、本発明の実施例1〜5、参考例1によれば、以下のことが確認された。すなわち、本発明の実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料は、含フッ素エラストマー100重量部に対して気相成長炭素繊維を5〜36重量部の範囲において、23℃における破断伸び(EB)が200%〜365%であり、30℃における動的弾性率(E’/30℃)が28MPa〜1456MPaであり、250℃における動的弾性率(E’/250℃)が18MPa〜300MPaであった。比較例1,2の含フッ素エラストマー単体よりも実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料の方が高い破断伸び(%)を有していた。本発明の実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料の引張強さは、比較例1,2の含フッ素エラストマー単体よりも高く、8MPa〜22MPaであった。
また、本発明の実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料は、クリープ瞬間ひずみが3%以下であり、定常クリープ期の1時間当たりのクリープ率が5ppm〜400ppmであった。しかも、本発明の実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料は、クリープ試験で60時間破壊しなかった。比較例1〜3のように気相成長炭素繊維が含まれないと初期破壊(破断)し、比較例4のようにHAFカーボンブラックを多く配合すればクリープ試験で60時間破壊しなかった。したがって、実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料は、高温における耐クリープ性能に優れることがわかった。
本発明の実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料は、50%モジュラスの上昇率が20%〜60%であった。したがって、気相成長炭素繊維によって炭素繊維複合材料が補強され、剛性が向上した。本発明の実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料は、20℃〜260℃において、平均線膨張係数が24ppm(1/K)〜130ppm(1/K)であった。したがって、実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料は、室温から260℃の高温に亘って安定して低い熱膨張を示した。また、本発明の実施例1〜5、参考例1の炭素繊維複合材料は、耐熱温度が355℃以上であり、優れた耐熱性を有することがわかった。
本実施の形態で用いたオープンロール法によるエラストマーと気相成長炭素繊維との混練法を模式的に示す図である。 本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の一部を拡大して示す模式図である。
1 炭素繊維複合材料
10 第1のロール
20 第2のロール
30 含フッ素エラストマー
34 セル
36 界面相
40 気相成長炭素繊維

Claims (8)

  1. 含フッ素エラストマー100重量部に対して、気相成長炭素繊維を5〜40重量部含み、
    23℃における破断伸び(EB)が200%〜500%であり、
    30℃における動的弾性率(E’/30℃)が25MPa〜3000MPaであり、
    250℃における動的弾性率(E’/250℃)が15MPa〜1000MPaであり、
    前記含フッ素エラストマーは、分子中にフッ素原子を含む2元系の合成ゴムであって、かつ、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃、観測核が Hで測定した、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が30ないし100μ秒であり、
    前記気相成長炭素繊維は、平均直径が67nm〜107nmであり、かつ、下記式(1)で定義される屈曲指数の平均値が8以上15以下の剛直な繊維である、炭素繊維複合材料。
    屈曲指数=Lx÷D (1)
    Lx:気相成長炭素繊維の屈曲していない直線部分の長さ
    D:気相成長炭素繊維の直径
  2. 含フッ素エラストマー100重量部に対して、気相成長炭素繊維を5〜40重量部含み、
    23℃における破断伸び(EB)が200%〜500%であり、
    30℃における動的弾性率(E’/30℃)が25MPa〜3000MPaであり、
    250℃における動的弾性率(E’/250℃)が15MPa〜1000MPaであり、
    前記含フッ素エラストマーは、分子中にフッ素原子を含む3元系の合成ゴムであって、かつ、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって、30℃、観測核が Hで測定した、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n/30℃)が30ないし100μ秒であり、
    前記気相成長炭素繊維は、平均直径が67nm〜107nmであり、かつ、下記式(1
    )で定義される屈曲指数の平均値が8以上15以下の剛直な繊維である、炭素繊維複合材料。
    屈曲指数=Lx÷D (1)
    Lx:気相成長炭素繊維の屈曲していない直線部分の長さ
    D:気相成長炭素繊維の直径
  3. 請求項1または2において、
    引張強さが6MPa〜50MPaである、炭素繊維複合材料。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、
    前記含フッ素エラストマー100重量部に配合された前記気相成長炭素繊維1重量部当たりにおける、前記含フッ素エラストマー単体の50%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の50%モジュラスの上昇率が20%〜100%である、炭素繊維複合材料。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、
    20℃〜260℃において、平均線膨張係数が0ppm〜200ppm(1/K)である、炭素繊維複合材料。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、
    250℃で250KPaの負荷をかけたクリープ試験におけるクリープ瞬間ひずみが0%〜3%であり、かつ、定常クリープ期の1時間当たりのクリープ率が±500ppm以内である、炭素繊維複合材料。
  7. 請求項6において、
    前記クリープ試験で60時間破壊しない、炭素繊維複合材料。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項において、
    耐熱温度が350℃〜500℃である、炭素繊維複合材料。
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