JP2009161652A - 炭素繊維複合材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の炭素繊維複合材料は、含フッ素エラストマー30を100重量部に対して、平均直径が30nmを超え200nm以下の気相成長炭素繊維40を5〜40重量部含む。本発明の炭素繊維複合材料は、23℃における破断伸び(EB)が200%〜500%であり、30℃における動的弾性率(E’/30℃)が25MPa〜3000MPaであり、250℃における動的弾性率(E’/250℃)が15MPa〜1000MPaである。
【選択図】図1
Description
含フッ素エラストマー100重量部に対して、平均直径が30nmを超え200nm以下の気相成長炭素繊維を5〜40重量部含み、
23℃における破断伸び(EB)が200%〜500%であり、
30℃における動的弾性率(E’/30℃)が25MPa〜3000MPaであり、
250℃における動的弾性率(E’/250℃)が15MPa〜1000MPaである。
前記気相成長炭素繊維は、平均直径が67nm〜176nmであることができる。
前記気相成長炭素繊維は、下記式(1)で定義される屈曲指数の平均値が5〜15の剛直な繊維であることができる。
Lx:気相成長炭素繊維の屈曲していない直線部分の長さ
D:気相成長炭素繊維の直径
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
引張強さが6MPa〜50MPaであることができる。
前記含フッ素エラストマー100重量部に配合された前記気相成長炭素繊維1重量部当たりにおける、前記含フッ素エラストマー単体の50%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の50%モジュラスの上昇率が20%〜100%であることができる。
20℃〜260℃において、平均線膨張係数が0ppm〜200ppm(1/K)であることができる。
250℃で250KPaの負荷をかけたクリープ試験におけるクリープ瞬間ひずみが0%〜3%であり、かつ、定常クリープ期の1時間当たりのクリープ率が±500ppm以内であることができる。
前記クリープ試験で60時間破壊しないことができる。
耐熱温度が350℃〜500℃であることができる。
本実施の形態に用いられる含フッ素エラストマーは、分子中にフッ素原子を含む合成ゴムであり、フッ素ゴムとも呼ばれ、例えば、含フッ素アクリレートの重合体、フッ化ビニリデン系共重合体(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(TFE-P)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(TFE-PMVE)、含フッ素ホスファゼン系、含フッ素シリコーン系などがある。含フッ素エラストマーは、分子量が好ましくは50,000ないし300,000である。含フッ素エラストマーの分子量がこの範囲であると、含フッ素エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、含フッ素エラストマーは気相成長炭素繊維を分散させるために良好な弾性を有している。含フッ素エラストマーは、粘性を有しているので凝集した気相成長炭素繊維の相互に侵入しやすく、さらに弾性を有することによって気相成長炭素繊維同士を分離することができる。含フッ素エラストマーの分子量が50,000より小さいと、含フッ素エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけても弾性が小さいため気相成長炭素繊維を分散させる効果が小さくなる。また、含フッ素エラストマーの分子量が300,000より大きいと、含フッ素エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる。
本実施の形態に用いられる気相成長炭素繊維は、平均直径が30nmを超え200nm以下である。気相成長炭素繊維は、平均直径が67nm〜176nmであることが好ましく、より詳細には平均直径が67〜107nmもしくは136〜176nmであって、平均長さが5〜20μmであることが好ましい。気相成長炭素繊維は、炭素六角網面のグラファイトの1枚面(グラフェンシート)を巻いて筒状にした形状を有する多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)であって、特に欠陥の少ない気相成長炭素繊維VGCF(昭和電工社の登録商標)を用いることが好ましい。炭素繊維複合材料中における気相成長炭素繊維の配合量は、含フッ素エラストマー100重量部に対して、5〜40重量部である。
本実施の形態では、炭素繊維複合材料を得る工程として、図1を用いてロール間隔が0.5mm以下の薄通しを行なうオープンロール法を用いた例について述べる。
図1は、2本のロールを用いたオープンロール法を模式的に示す図である。図1において、符号10は第1のロールを示し、符号20は第2のロールを示す。第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、例えば1.5mmの間隔で配置されている。第1および第2のロールは、正転あるいは逆転で回転する。図示の例では、第1のロール10および第2のロール20は、矢印で示す方向に回転している。
図2は、本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料を模式的に示す拡大断面図である。本工程によって得られた本実施の形態の炭素繊維複合材料1は、基材(マトリックス)である含フッ素エラストマー30に気相成長炭素繊維40が均一に分散している。気相成長炭素繊維40の周囲には、気相成長炭素繊維40の表面に吸着した含フッ素エラストマー30の分子の凝集体と考えられる界面相36が形成される。界面相36は、例えば含フッ素エラストマーとカーボンブラックとを混練した際にカーボンブラックの周囲に形成されるバウンドラバーに類似するものと考えられる。このような界面相36は、気相成長炭素繊維40を被覆して保護し、炭素繊維複合材料中における気相成長炭素繊維の量が増えるにつれて界面相36同士が連鎖して微小なセル34を形成する。しかも、炭素繊維複合材料1中における気相成長炭素繊維40が最適割合にあると、連鎖した界面相36によって炭素繊維複合材料1のセル34内への酸素の浸入が減少し、例えば250℃という高温においても熱劣化し難くなり、高い弾性率を維持することができる。また、炭素繊維複合材料1は、一般的な含フッ素エラストマーの使用限界温度である250℃においてもクリープ瞬間ひずみが小さく、かつ、定常クリープにおける低クリープ率を維持し、高耐熱性を有することができる。
(1)サンプルの作製
(a)炭素繊維複合材料の作製
第1の工程:ロール径が6インチのオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、表1に示す100重量部(phr)の含フッ素エラストマー(表1では「2元系FKM」、「3元系FKM」と記載する)を投入して、ロールに巻き付かせた。
第2の工程:次に、表1に示す重量部(phr)の気相成長炭素繊維(表1では「気相炭素87nm」、「気相炭素156nm」と記載する)、架橋剤(パーオキサイド)をエラストマーに投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。
第3の工程:気相成長炭素繊維を投入し終わったら、エラストマーと気相成長炭素繊維との混合物をロールから取り出した。
第4の工程:ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し10回行った。
第5の工程:ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした炭素繊維複合材料を投入し、分出しした。
なお、表1における「気相炭素87nm」は実測平均直径87nmで平均屈曲指数が9.9の気相成長炭素繊維であり、「気相炭素156nm」は実測平均直径156nmで平均屈曲指数が6.8の昭和電工社製気相成長炭素繊維「VGCF(昭和電工社の登録商標)」であった。気相成長炭素繊維(「気相炭素87nm」、「気相炭素156nm」)の平均直径及び平均屈曲指数は電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した写真で測定され、平均屈曲指数の測定は繊維の屈曲していない直線部分の長さ(隣接する欠陥の間隔)Lxと繊維の直径Dを測定し、その結果を用いて繊維の種類毎に200箇所の屈曲指数をLx/Dで計算し、その屈曲指数を測定箇所の数(200)で割って平均屈曲指数を求めた。また、表1における「3元系FKM」がダイセル社製(T2n/30℃が50μ秒)であり、「2元系FKM」がデュポン・ダウ・エラストマー・ジャパン社製の含フッ素エラストマーのバイトン(分子量50,000、T2n/30℃が55μ秒)であった。
このようにして得られた炭素繊維複合材料をロールで圧延後、185℃10分間プレス成形(キュア)した後、さらに200℃8時間ポストキュアして、実施例1〜6及び比較例1〜4の架橋体の炭素繊維複合材料(厚さ1mmのシート形状)を得た。比較例3、4については、気相成長炭素繊維の代わりにHAFグレードのカーボンブラック(表1では「HAF」と記載する)を用いた。
未架橋体の実施例1〜6の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4のゴム組成物サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核が1H、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜y)にて、減衰曲線を測定し、炭素繊維複合材料サンプルの150℃における特性緩和時間(T2n/150℃)及び第2のスピンスピン緩和時間(T2n/150℃)を有する成分の成分分率(fnn)を測定した。測定結果を表1に示す。なお、原料の2元系FKMの特性緩和時間(T2n/30℃)は55μ秒、3元系FKMの(T2n/30℃)は50μ秒であった。
架橋体の実施例1〜6の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4のゴム組成物サンプルについて、ゴム硬度(JIS−A)をJIS K 6253に基づいて測定した。測定結果を表1に示す。
実施例1〜6及び比較例1〜4の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル(幅5mm×長さ50mm×厚さ1mm)を10mm/minで伸長し、50%変形時の応力(M50:50%モジュラス(MPa))を求めた。測定結果を表1に示す。また、この測定結果に基づいて、エラストマー100重量部に配合された気相成長炭素繊維1重量部当たりにおける、含フッ素エラストマー単体の50%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の50%モジュラスの上昇率(M50上昇率)を計算し、表1に示す。50%モジュラスの上昇率(M50上昇率)は、例えば、実施例1であれば、実施例1と比較例1のM50の差(4MPa−1MPa)を比較例1のM50の値(1MPa)で割り、さらに実施例1の気相成長炭素繊維の配合量(5重量部)で割った百分率である。また、実施例1、2は2元系FKMを用いたので比較例1に対するM50上昇率を計算し、実施例3〜6は3元系FKMを用いたので比較例2に対するM50上昇率を計算した。
実施例1〜6の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4の架橋体のゴム組成物サンプルを1A形のダンベル形状に切り出した試験片について、東洋精機社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行い引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)を測定した。これらの結果を表1に示す。
実施例1〜6の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4の架橋体のゴム組成物サンプルを短冊形(40×1×5(巾)mm)に切り出した試験片について、SII社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm、測定温度−100〜300℃、動的ひずみ±0.05%、周波数10HzでJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い動的弾性率(E’、単位はMPa)を測定した。測定温度が30℃と250℃における動的弾性率(E’/30℃、E’/150℃)の測定結果を表1に示す。
実施例1〜6の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4の架橋体のゴム組成物サンプルについて、250℃で250KPaの負荷をかけ、60時間の耐熱クリープ試験を行ない、クリープ瞬間ひずみと、定常クリープ期の1時間当たりのクリープ率と、を測定した。クリープ瞬間ひずみは、250KPaの負荷をかけた瞬間の伸びである。クリープ率は、クリープ瞬間ひずみの後かつ加速クリープ期の前の定常クリープ期における1時間当たりのひずみ変化量(1ppm=0.0001%)である。これらの結果を表1に示す。
実施例1〜6の架橋体の炭素繊維複合材料サンプル及び比較例1〜4の架橋体のゴム組成物サンプルを1.5mm×1.0mm×10mmに切り出した試験片について、SII社製熱機械分析機(TMASS)を用いて、側長荷重は25KPa、測定温度は−100〜450℃、昇温速度は2℃/分で線膨張係数を測定した。
この測定によって得られた測定温度20℃〜260℃における平均線膨張係数(ppm/K)を表1に示す。
また、線膨張係数の温度変化特性から軟化劣化が開始する劣化開始温度を測定して「耐熱温度」として表1に示す。なお、450℃においても軟化劣化が開始しなかった場合には「無し」と表1に示す。
10 第1のロール
20 第2のロール
30 含フッ素エラストマー
34 セル
36 界面相
40 気相成長炭素繊維
Claims (9)
- 含フッ素エラストマー100重量部に対して、平均直径が30nmを超え200nm以下の気相成長炭素繊維を5〜40重量部含み、
23℃における破断伸び(EB)が200%〜500%であり、
30℃における動的弾性率(E’/30℃)が25MPa〜3000MPaであり、
250℃における動的弾性率(E’/250℃)が15MPa〜1000MPaである、炭素繊維複合材料。 - 請求項1において、
前記気相成長炭素繊維は、平均直径が67nm〜176nmである、炭素繊維複合材料。 - 請求項1または2において、
前記気相成長炭素繊維は、下記式(1)で定義される屈曲指数の平均値が5〜15の剛直な繊維である、炭素繊維複合材料。
屈曲指数=Lx÷D (1)
Lx:気相成長炭素繊維の屈曲していない直線部分の長さ
D:気相成長炭素繊維の直径 - 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
引張強さが6MPa〜50MPaである、炭素繊維複合材料。 - 請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記含フッ素エラストマー100重量部に配合された前記気相成長炭素繊維1重量部当たりにおける、前記含フッ素エラストマー単体の50%モジュラスに対する炭素繊維複合材料の50%モジュラスの上昇率が20%〜100%である、炭素繊維複合材料。 - 請求項1ないし5のいずれかにおいて、
20℃〜260℃において、平均線膨張係数が0ppm〜200ppm(1/K)である、炭素繊維複合材料。 - 請求項1ないし6のいずれかにおいて、
250℃で250KPaの負荷をかけたクリープ試験におけるクリープ瞬間ひずみが0%〜3%であり、かつ、定常クリープ期の1時間当たりのクリープ率が±500ppm以内である、炭素繊維複合材料。 - 請求項7において、
前記クリープ試験で60時間破壊しない、炭素繊維複合材料。 - 請求項1ないし8のいずれかにおいて、
耐熱温度が350℃〜500℃である、炭素繊維複合材料。
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