JP2004232786A - ピストンシールおよびディスクブレーキ - Google Patents

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徹 野口
Shigeru Fukazawa
茂 深澤
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Abstract

【課題】ディスクブレーキのキャリパボディが高温になっても、弾性を維持することでピストンの作動性および追従性を維持し、かつ靭性に優れた、ディスクブレーキ用ピストンシールを提供する。
【解決手段】本発明のピストンシール8は、車両用のディスクブレーキ20に用いられる。ピストンシール8は、炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスクブレーキ用ピストンシール、ならびに前記ピストンシールを含むディスクブレーキに関する。
【0002】
【背景技術】
車両用ディスクブレーキには、ピストンおよびシリンダを内蔵したキャリパボディが装着されている。ディスクブレーキは、液圧によって、各車輪に固定されているディスクロータにブレーキパッドを押し付け、摩擦材であるブレーキパッドの摩擦力で車輪の回転を止める。ここで、このブレーキパッドは、液圧によって、シリンダの孔にピストンが挿入されることにより、ディスクに押し付けられる。
【0003】
また、シリンダの内周面に形成された環状溝には、ピストンシールが装着されている。このピストンシールは、ブレーキ液をシールする役割と、液圧によって前進したピストンを戻す役割とを有する。
【0004】
すなわち、このピストンシールが装着されていることにより、前記シリンダと、前記シリンダの孔に挿入されたピストンとを液密的に移動可能な状態で密接させることができる。また、液圧にて前進した該ピストンは、ピストンシールによってロールバックされる(特許文献1参照)。したがって、このピストンシールには、ブレーキ液を確実にシールするための靭性と、液圧にて前進した該ピストンを元の位置に戻すための弾性との両方が求められる。
【0005】
また、ディスクブレーキのキャリパボディは、ディスクロータとブレーキパッドとの間に生じる摩擦熱によって、作動中に高温になる。これに伴い、ピストンシールも高温に曝される。ピストンシールは一般に、ゴムを主成分とする材料からなる。したがって、ピストンシールが高温になると、ピストンシールが熱膨張するとともに、ピストンシールの弾性率が低下する。この場合、ピストンシールが熱膨張することによってピストンの作動性および追従性が低下するのに加えて、ピストンシールの弾性率が低下することによって、ピストンシールの靭性が低下する場合があった。
【0006】
【特許文献1】
特公平3−59291号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ディスクブレーキのキャリパが高温になっても、弾性を維持することでピストンの作動性および追従性を維持し、かつ靭性に優れたディスクブレーキ用ピストンシールを提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、前記ピストンシールを含むディスクブレーキを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のピストンシールは、車両用ディスクブレーキのキャリパボディに用いられるピストンシールであって、炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなる。
【0010】
上記本発明のピストンシールによれば、炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなることにより、ピストンシールの放熱性を高めることができる。これにより、ピストンシールの熱膨張を抑制することができるととにに、ディスクブレーキのキャリパボディが高温になっても、ピストンシールの弾性率を所定の範囲内に維持することができるため、ピストンの作動性および追従性を維持することができる。また、ピストンシールの弾性率を所定の範囲内に維持することができるため、ピストンシールの靭性を維持させることができる。
【0011】
上記本発明のピストンシールにおいては、前記炭素繊維および前記フラーレンを合わせて0.01〜50重量%含むことが好ましい。前記炭素繊維および前記フラーレンの割合が50重量%を超えると、ピストンシールの弾性を十分確保できない場合があり、0.01重量%未満であると、ピストンシールの放熱性を十分確保できない場合がある。なお、上記重量は、前記炭素繊維および前記フラーレンをそれぞれ単独で含有する場合は、前記炭素繊維および前記フラーレン単独の重量である。
【0012】
上記本発明のピストンシールにおいて、前記炭素繊維は、平均直径が0.7〜500nmであって、平均長さが0.01〜1000μmであるカーボンナノファイバーからなることができる。
【0013】
このような構成とすることで、炭素繊維の中でもカーボンナノファイバーと呼ばれる超微細な繊維構造を有することになり、ピストンシールの靭性および放熱性をより向上させることができるとともに、ピストンシールの弾性を所定の範囲内に維持することができる。さらに、超微細なカーボンナノファイバーとすることで、ゴムの成形加工を容易とすることができる。
【0014】
上記本発明のピストンシールにおいて、前記カーボンナノファイバーは、イオン注入処理されていることができる。
【0015】
このような構成とすることで、イオン注入処理されたカーボンナノファイバーは、少なくともその表面の化学的な組成が変わることで、ゴムとカーボンナノファイバーの接着性やヌレ性が改善され、ピストンシールの機械的強度をさらに向上させることができる。また、カーボンナノファイバーの表面が化学的に改質されることにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中においてカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するピストンシールを得ることができる。
【0016】
上記本発明のピストンシールにおいて、前記カーボンナノファイバーは、スパッタエッチング処理されていることができる。
【0017】
このような構成とすることで、スパッタエッチング処理されたカーボンナノファイバーは、その表面に微細な凹凸が形成されるので、ゴムに対するカーボンナノファイバーの接触面積を増大させることができる。その結果、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性を改善することができるため、ピストンシールの機械的強度をさらに向上させることができる。また、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性が向上することにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中においてカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するピストンシールを得ることができる。
【0018】
上記本発明のピストンシールにおいて、前記カーボンナノファイバーは、プラズマ処理されていることができる。
【0019】
このような構成とすることで、プラズマ処理されたカーボンナノファイバーは、 その表面に微細な凹凸が形成されるので、ゴムに対するカーボンナノファイバーの接触面積を増大させることができる。その結果、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性を改善することができるため、ピストンシールの機械的強度をさらに向上させることができる。また、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性が向上することにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中においてカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するピストンシールを得ることができる。
【0020】
上記本発明のピストンシールにおいて、前記フラーレンは、カーボン60およびカーボン70を含み、前記カーボン70より前記カーボン60を多く含むことができる。
【0021】
このような構成とすることで、放熱性をより向上させることができるとともに、ピストンシールの弾性を所定の範囲内に確実に維持することができるため、ピストンシールの靭性を向上させることができる。さらに、ゴムの成形加工を容易とすることができる。
【0022】
上記本発明のピストンシールにおいて、さらに、前記カーボンナノファイバーおよび前記フラーレンのいずれか一方の合成過程において得られる炭素化合物を含むことができる。
【0023】
また、本発明のディスクブレーキは、上記本発明のピストンシールと、
シリンダ孔を有するシリンダと、
前記シリンダ孔に挿入可能なピストンと、
を含み、
前記ピストンシールは、前記シリンダ孔の内周壁に形成された環状溝に嵌め込まれ、
前記シリンダ孔に挿入された前記ピストンとを液密的に移動可能な状態で密接させるとともに、液圧にて前進した該ピストンをロールバックさせる。
【0024】
上記本発明のディスクブレーキによれば、本発明のピストンシールが前記環状溝に嵌め込まれることにより、ピストンの作動性および追従性を維持することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施の形態に係るピストンシール8を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示すピストンシール8を含むディスクブレーキ20を模式的に示す断面図である。本実施の形態においては、一例として、フローティングタイプの車両用ディスクブレーキ(図2参照)について説明する。
【0027】
ディスクブレーキ20は、ピストン5およびシリンダ6を含むキャリパボディ1に設けられている。キャリパボディ1は、作用部1bおよび反作用部1cを含む。この作用部1bおよび反作用部1cは、ブリッジ部1aを介して一体的に形成されている。
【0028】
車輪(図示せず)と一体回転するディスクロータ2の両側の摩擦面に臨ませて、一対の摩擦パッド4b,4cが配置されている。プラケット3には、摩擦パッド4b,4cをディスクロータ2に押圧するキャリパボディ1がスライドピン(図示せず)を介して進退可能に連結している。このキャリパボディ1は、一方の摩擦パッド4bの背面に配置する作用部1bと、他方の摩擦パッド4cの背面に配置する反作用部1cと、ディスクロータ2の外周を跨いで作用部1bおよび反作用部1cを連結するブリッジ部1aとで構成される。
【0029】
このディスクブレーキ20は、車体(図示せず)に固定されたブラケット3に摺動可能な状態で支持されている。また、図2に示すように、ピストン5およびシリンダ6は作用部1bに形成されている。
【0030】
摩擦パッド4bは、シリンダ6の孔5aに挿入されたピストン5によって押されて移動し、ディスクロータ2の一側面に接する。摩擦パッド4cは、反作用部1cによって押されて移動し、ディスクロータ2の他方の側面に接する。上記の動作により、制動が行なわれる。
【0031】
シリンダ孔6aの内周壁には、環状のピストンシール溝7が設けられている。このピストンシール溝7にピストンシール8が嵌め込まれている。ピストンシール8の材質については後述する。
【0032】
液圧室9は、ピストン5の底部とシリンダ6との間に設けられている。この液圧室9には、供給口10よりブレーキ液が供給される。ピストンシール8は、このブレーキ液をシールする機能と、液圧が低下したときに、前進していたピストン5をロールバックさせる機能を有する。供給口10は、液圧経路28を介して、液圧源であるマスタシリンダ(図示せず)の出力ポート(図示せず)に接続されている。
【0033】
図1に示すように、ピストンシール溝7は、ディスクロータ2に面している部分に面取コーナ7aを有し、液圧室9に面している部分に面取コーナ7bを有している。
【0034】
ピストンシール8は、炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなる。ピストンシール8が炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなることにより、ピストンシール8の放熱性を高めることができる。これにより、ピストンシール8の熱膨張を抑制することができるとともに、ディスクブレーキ20のキャリパボディ1が高温になっても、ピストンシール8の弾性率を所定の範囲内に維持することができる。これにより、ピストン5の作動性および追従性を維持することができる。また、ピストンシール8の弾性率を所定の範囲内に維持することができるため、ピストンシール8の靭性を維持させることができる。
【0035】
前記ゴムとしては、スチレン・ブタジエン・ラバー(SBR)、エチレン・プロピレン・ラバー(EPR)、エチレン・プロピレン・ジエン・メチレンリンケージ(EPDM)が例示できるが、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、および、これらのブレンド物を用いることができる。
【0036】
ピストンシール8において、炭素繊維およびフラーレンを合わせて0.01〜50重量%含むことが好ましい。炭素繊維およびフラーレンの割合が50重量%を超えると、ピストンシールの弾性を十分確保できない場合があり、0.01重量%未満であると、ピストンシールの放熱性を十分確保できない場合がある。なお、上記重量は、炭素繊維およびフラーレンをそれぞれ単独で含有する場合は、炭素繊維およびフラーレン単独の重量である。なお、ピストンシール8には、さらに、炭素繊維およびカーボンナノファイバーのいずれか一方の合成過程において得られる炭素化合物を含むことができる。
【0037】
(炭素繊維)
ゴムに炭素繊維が混合されたピストンシール8を形成する場合、ゴムと炭素繊維の混合は、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリ−ミキサ−、ニ−ダ−、ミキシングロ−ルなど通常公知の混合機に供給して混練する方法などを例として挙げることができる。また、ゴムと炭素繊維の混合順序は、全ての両材料を配合後上記の方法により混練する方法、一部の炭素繊維を配合後上記の方法により混練しさらに残りの炭素繊維を配合し混練する方法、あるいはゴムを単軸あるいは二軸の押出機により混練中にサイドフィーダーを用いて炭素繊維を混合する方法などの方法を用いることができる。
【0038】
ゴムに混入させる炭素繊維は、石油精製時の残査であるピッチを原料とするピッチ系炭素繊維、およびポリアクリル繊維を原料とするポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維などを使用することができる。
【0039】
また、ゴムに混入させる炭素繊維は、平均直径が0.7〜500nmであって、平均長さが0.01〜1000μmのカーボンナノファイバーを用いることが好ましい。また、カーボンナノファイバーの配合量は、成形時の流動性、得られる成形品の比重および強度、弾性の観点から、ピストンシール8の主成分であるゴム中に0.01〜50重量%の範囲で含まれていることが好ましい。このようなカーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
【0040】
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。
【0041】
アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。
【0042】
レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。
【0043】
気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。
【0044】
ピストンシール8を形成するにあたり、カーボンナノファイバーは、ゴムと混練する前に、あらかじめ表面処理例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、ピストンシール8の主成分であるゴムとの接着性やぬれ性を改善することができる。
【0045】
(イオン注入処理)
イオン注入処理(ion implantation)は、イオン源によってイオン化された元素(例えば酸素など)に加速器によって必要なエネルギーを与え、真空ポンプによって高真空状態に保たれた真空チャンバ内で、カーボンナノファイバーの表面内にイオンを打ちこむものである。
【0046】
本発明の一実施の形態のイオン注入処理について、図3に示す全方位型イオン注入装置の概略構成図を用いて説明する。全方位型イオン注入装置50は、真空ポンプ57に接続された例えばステンレス製の真空チャンバー51内にイオン注入処理を施す試料(例えばカーボンナノファイバー52)を置く回転テーブル53が回転自在に配置されている。回転テーブル53は、パルスバイアス電源54に接続され、真空チャンバー51との間は絶縁体55によって絶縁されている。真空チャンバー51は、プロセスガス供給装置58と、高周波電源59に接続されたコイル60と、アーク式蒸発源61と、真空チャンバー51内温度を測定する赤外線放射温度計62と接続されている。
【0047】
イオン注入処理は、真空ポンプ57によって適当な真空状態とされた真空チャンバー51内に、プロセスガス供給装置58からガスが供給され、高周波電源59によってコイル60の周りにプラズマを発生させる。これによってイオン化されたガスが、パルスバイアス電源54の負極に接続されている試料例えばカーボンナノファイバー52に引き込まれ、注入される。また、真空チャンバー51に接続されたアーク式蒸発源61によって、金属イオンを試料例えばカーボンナノファイバー52に注入させることができる。この場合、アーク式蒸発源61内の金属蒸発源は、図示せぬ直流アーク電源に接続され、アーク放電によって蒸発させられる。このとき、回転テーブル53及び試料例えばカーボンナノファイバー52は、スイッチ63によって切りかえられた負の直流バイアス電源56により印加されているので、金属イオンが試料例えばカーボンナノファイバー52に注入される。
【0048】
また、全方位型イオン注入装置50の回転テーブル53を図4に示すような攪拌羽53a及び容器53bとしてもよい。容器53bは、広口の開口部を上方に有し、容器53b中には試料例えばカーボンナノファイバー52を配置できる。イオン注入処理の間、カーボンナノファイバー52のような粉体の試料は、攪拌羽53aの回転によって攪拌されることで、全体にまんべんなくイオン注入処理を受けることができる。攪拌翼53aの回転速度は、カーボンナノファイバー52の量や、イオン注入処理時間などによって適宜調整することができる。
【0049】
イオン注入処理されたカーボンナノファイバーは、その表面が化学的に改質され、ピストンシール8の主成分であるゴムとカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性が改善され、ピストンシール8の靭性をさらに向上させることができる。また、カーボンナノファイバーの表面が化学的に改質されることにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中においてカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するピストンシール8を得ることができる。
【0050】
イオン注入処理に用いられる元素は、ピストンシール8の主成分であるゴムとの相性によって適宜選択することができる。前記元素としては、例えば、イオン注入処理に用いられる元素は、例えば、酸素(O)、窒素(N)、塩素(Cl)、クロム(Cr)、炭素(C)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、リン(P)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。
【0051】
(スパッタエッチング処理)
ドライエッチング方式のスパッタエッチング処理は、真空ポンプによって高真空状態に保たれた真空チャンバ内にエッチングガス、極低圧不活性ガス雰囲気例えばアルゴン(Ar)中で、交流を印加してグロー放電を行わせ、かつグロー放電によって生じたプラズマ中に露出される電極と接触したカーボンナノファイバーの表面にイオンを衝突させることで、エッチングするものである。
【0052】
スパッタエッチング処理されたカーボンナノファイバーの表面は、物理的にエッチングされることで、微細(ナノサイズ)な凹凸が形成される。このカーボンナノファイバーの表面の凹凸によって、ピストンシール8の主成分であるゴムとの接触面積を増大させることができる。その結果、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性を改善することができるため、ゴムにカーボンナノファイバーを混入させて成形(例えば射出成形)したピストンシール8の靭性を向上させることができる。加えて、ゴムとカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性が向上することにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中におけるカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するピストンシール8を得ることができる。
【0053】
(プラズマ処理)
プラズマ処理は、プラズマをカーボンナノファイバーに照射することによって表面を改質させるものである。プラズマ処理は、一般的なグロー放電処理やコロナ放電処理などを採用することができる。
【0054】
例えばプラズマは、相対向する放電極と対向電極との間に、パルス生成回路によって生成された高電圧・高頻度のパルス電圧を印加し、両電極間にコロナ放電を惹起して空気中にプラズマを発生させるようにしている。そして、被処理物は、両電極間に静止状態又は移動状態で配置され、その表面にプラズマ処理が施される。
【0055】
プラズマの作り方には、2枚の平行平板電極に数百から数千ボルトの電圧をかけて放電する二極放電タイプ、熱陰極から発した大量の電子が陽極に入るまでに気体分子と衝突しプラズマを作る熱電子放電タイプ、磁場を使って高真空で放電するマグネトロン放電タイプ、高周波電磁誘導によりプラズマを発生させる無電極放電タイプ、磁場のある共振室へマイクロ波を送りこみ電子を共振させるECR(Electron Cyclotron Resonance)放電タイプなどがあり、適宜選択することができる。
【0056】
このようにプラズマ処理されたカーボンナノファイバーの表面は、微細な凹凸が形成されるので、ゴムに対するカーボンナノファイバーの接触面積を増大させることができる。その結果、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性を改善することができるため、ピストンシール8の機械的強度をさらに向上させることができる。また、ゴムに対するカーボンナノファイバーとの接着性やヌレ性が向上することにより、カーボンナノファイバーがゴムに対して含浸しやすくなり、ゴム中におけるカーボンナノファイバーの分散性が向上する。これにより、全体に均質な性能を有するピストンシール8を得ることができる。
【0057】
(フラーレン)
本実施の形態に用いられるフラーレンは、球殻状炭素例えばカーボン60(以下、C60とする)、C70、C74、C78、C82、C720、C860などのフラーレン類等が例示できるが、C60を主成分とすることが好ましい。また、C60を主成分として、C70がC60よりも多く含まれることが好ましい。さらに、C60を主成分として、他のフラーレン類を含んでいてもよいし、フラーレン生成時に同時に生成された他の炭素化合物を含んでいてもよい。フラーレン類の形態は、例えば、サッカーボール状、バッキーボール状などであってもよい。また、フラーレンは、炭素繊維の場合と同様の方法にてゴムに混合することができる。
【0058】
フラーレン類は、置換基の導入などにより修飾されていてもよい。修飾方法は、特に限定されず、例えば、フラーレン類の反応性に富む炭素5員環部を化学的に修飾できる。置換基の種類は特に限定されず、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ジオキソラン単位、ハロゲン又は酸素原子等が例示でき、液晶ポリマー、色素類、ポリエチレンオキシドなどの導入により修飾してもよい。フラーレン類の修飾により、硬化性樹脂との親和性の改善、フラーレン類の分散を可能にする。
【0059】
C60フラーレンは、黒鉛電極を用い、ヘリウム雰囲気下でアーク放電し、得られたススをベンゼンで抽出し、得られたC60混合物を、塩基性活性アルミナを担体とし、ヘキサンを展開溶媒として、カラム分離精製することにより調整した。なお、フラーレンを得る方法は、このアーク放電法に限定されるわけではなく、他の手法を用いることもできる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るピストンシールを模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示すピストンシールを含むディスクブレーキを模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に用いられる全方位型イオン注入装置の概略説明図である。
【図4】全方位型イオン注入装置の回転テーブルの他の実施態様を示す一部断面図である。
【符号の説明】
1 キャリパボディ
1a ブリッジ部
1b 作用部
1c 反作用部
2 ディスクロータ
3 ブラケット
4b,4c 摩擦パッド
5 ピストン
6 シリンダ
6a シリンダ孔
7 ピストンシール溝
7a,7b 面取コーナ
8 ピストンシール
9 液圧室
10 供給口
11 ブーツ
20 ディスクブレーキ
28 液圧経路
50 全方位型イオン注入装置
53 回転テーブル
53a 攪拌羽
53b 容器

Claims (9)

  1. 車両用ディスクブレーキのキャリパボディに用いられるピストンシールであって、
    炭素繊維およびフラーレンの少なくとも一方を含有するゴムからなる、ピストンシール。
  2. 請求項1において、
    前記炭素繊維および前記フラーレンを合わせて0.01〜50重量%含む、ピストンシール。
  3. 請求項1または2において、
    前記炭素繊維は、平均直径が0.7〜500nmであって、平均長さが0.01〜1000μmであるカーボンナノファイバーからなる、ピストンシール。
  4. 請求項3において、
    前記カーボンナノファイバーは、イオン注入処理されている、ピストンシール。
  5. 請求項3において、
    前記カーボンナノファイバーは、スパッタエッチング処理されている、ピストンシール。
  6. 請求項3において、
    前記カーボンナノファイバーは、プラズマ処理されている、ピストンシール。
  7. 請求項1ないし6のいずれかにおいて、
    前記フラーレンは、カーボン60およびカーボン70を含み、
    前記カーボン70より前記カーボン60を多く含む、ピストンシール。
  8. 請求項1ないし7のいずれかにおいて、
    さらに、前記カーボンナノファイバーおよび前記フラーレンのいずれか一方の合成過程において得られる炭素および炭素化合物を含む、ピストンシール。
  9. 請求項1ないし8記載のいずれかのピストンシールと、
    シリンダ孔を有するシリンダと、
    前記シリンダ孔に挿入可能なピストンと、
    を含み、
    前記ピストンシールは、前記シリンダ孔の内周壁に形成された環状溝に嵌め込まれ、
    前記シリンダ孔に挿入された前記ピストンとを液密的に移動可能な状態で密接させるとともに、液圧にて前進した該ピストンをロールバックさせる、ディスクブレーキ。
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