JP4604962B2 - 高白色度脱墨パルプの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は印刷古紙の脱墨方法に関し、さらに詳しくは、印刷古紙からの脱墨パルプを製造する方法に係わり、特に脱墨効率を効率的に進める際に、インキ剥離工程の後工程に洗浄工程を有する脱墨パルプの製造方法に関する。
従来、印刷古紙を脱墨再生させるには、離解・除塵・漂白・分散・脱墨・洗浄の工程からなる方法で製造を行ってきた。また、特にインキ除去を進め白色度が65%ISO以上の高白色度古紙パルプを得るためには、前段及び後段の2段処理からなるフローテーター処理が必要であった。また、漂白の効率を上昇させるために製品パルプの灰分を下げる対策として、灰分除去装置を洗浄設備として最終工程に組み入れるのが主流であった。このように、最終工程に灰分除去工程を組み入れると、一般的には、そのろ液は前工程である脱墨工程の稀釈として使用することが多いので、灰分除去装置で除去した灰分が循環し、漂白工程での薬品原単位の悪化をもたらすという問題点があった。
本発明者等は、先に、高灰分の印刷用紙からの脱墨パルプの製造方法(特許文献1)を提案し、更に、灰分除去装置の前後で役割の違う脱墨剤とし、漂白性を向上させる脱墨剤の有効な使用方法(特許文献2)を検討してきたが、フローテーター1段の処理で消費電力原単位の少ない高白色度パルプが得られる脱墨システムの構築については未検討であった。
印刷古紙から、インキを分離除去するために従来から使用されてきた薬品としては、苛性ソーダ、珪酸ソーダ、炭酸ソーダ等のアルカリ剤、過酸化水素、次亜塩素酸塩等の漂白剤、EDTAやDTPA等の金属キレート剤と共に、脱墨剤が使用されている。脱墨剤には、パルプ繊維からインキを剥離し、分散させる効果の強いものやインキを凝集させフローテーション工程でのインキ捕集能を高める効果の強いもの等がある。
離解工程で添加する脱墨剤は、剥離したインキを前段フローテーション工程で効率良く脱墨するため、パルプからのインキを剥離させて分散する能力と、フローテーターにおける泡への吸着性、インキ同士の凝集させる能力という、相反する効果のバランスをとったものを使用するため、離解工程で、パルプへの浸透力やインキ剥離性を著しく高めた脱墨剤は添加できず、印刷インキの剥離、分散が不充分となる問題点があった。
ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤は、脱墨剤として古くから知られており、例えば、古紙をフローテーション方式によって脱インキする際の脱インキ剤として、RO−(XO)−H(式中Rは炭素数8〜22のアルキル基など、XOはオキシエチレンおよびオキシプロピレンのランダム付加重合物で、オキシエチレンを50〜95%含有、nは8〜100の整数)(特許文献3)、RO−(CO)(XO)−H(式中Rは炭素数8〜22のアルキル基など、mは1〜50の整数、XOはオキシエチレンおよびオキシプロピレンのランダム付加重合物で、8〜100の整数)(特許文献4)、天然油脂と多価アルコールの混合物にアルキレンオキシドを付加して得られる反応生成物および、RO−(AO)−H(式中Rは炭素数12〜18のアルキル基など、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基で、nは5以上の数)を一定の割合で含有(特許文献5)、RO−(PO)(AO)(PO)−H(式中Rは炭素数8〜22のアルキル基など、AOはオキシアルキレン基で、xは1〜20、yは1〜50、zは1〜50の数)(特許文献6)、RO−(AO)−H(式中Rは炭素数18を超え36以下の炭化水素基、AOはオキシエチレンおよびオキシプロピレンのランダム付加重合物で、nは1〜1000の数)(特許文献7)、RO−(EO)(AO)×1(EO)−H、RO−(EO)(AO)×2(XO)−H、RO−(XO)(AO)×3(EO)−H、RO−(XO)(AO)×4(XO)−Hの混合物(式中Rは炭素数8〜36のアルキル基など、AOはオキシアルキレン基、XOはオキシプロピレン基かオキシブチレン基で、×1〜×4オキシアルキレン基の付加モル数(特許文献8)、RO−(AO)p−H(式中Rは炭素数10〜14のアルキル基、AOはオキシアルキレン基で、pは1〜100の整数)と、RO−(PO)(EO)(XO)−R(式中Rは炭素数16〜22のアルキル基など、Rは水素または炭素数2〜24のアシル基、XOはオキシアルキレン基で、mは1〜8、nは10〜40、kは重合XOの炭素数の合計が3〜120の数)(特許文献9)などが開示されている。何れの場合も、フローテーションでインキを除去する際の脱墨剤として添加されているため、フローテーターで発泡しないものは、単独で使用できず、単独で発泡するもの、もしくは、起泡性の高い剤との混合物になっている。
また、フローテーション法、洗浄法、折衷法何れの脱インキ法においても使用できる脱インキ剤として、RO−(AO)−H(式中Rは炭素数8〜24のアルキル基などの混合物、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基で、nは0または1以上の整数)(特許文献10)が開示されているが、これも、フローテーション適性も持たせた汎用タイプにするために、1種類ではなく、起泡性の高い成分など、いくつかのものを混合させた脱インキ剤である。
一方、オフィス古紙処理剤として、RO−(AO)−X(式中Rは炭素数8〜22の炭化水素基、AOはオキシアルキレン基で、nは5〜59の数、Xは水素原子、アルキル基またはアシル基)(特許文献11)が開示されているが、対象古紙はオフィス古紙に限定されている上、フローテーション適性も持たせているため、比較例よりも発泡量は増加しており、操業上問題がある。
また、フローテーション処理により、印刷古紙を脱墨する方法において、フローテーション処理温度よりも曇点の高い脱墨剤と低い脱墨剤を併用する方法(特許文献12)が開示されているが、これも、フローテーション適性を持たせるため、曇点が高く、起泡性の高い脱墨剤と併用することが必須であり、曇点が低く、発泡性の弱い脱墨剤単独では処理していない。
脱墨剤として、特定の疎水基の末端に、オキシエチレン、オキシプロピレンの順にブロック付加させた、RO−(PO)(EO)(XO)−R(式中Rは炭素数12〜22のアルキル基など、Rは水素または炭素数2〜24のアシル基、XOはオキシアルキレン基で、mは1〜8、nは10〜40、kは重合XOの炭素数の合計が3〜120の数)(特許文献13)を用い、フローテーションによって脱墨する方法が開示されているが、フローテーターで発泡することが必須であり、曇点が低く、処理温度では発泡しない脱墨剤を用いることは困難である。
また、RO−(AO)−H(式中Rは炭素数14〜24のアルキル基など、AOはオキシエチレン基、オキシプロピレン基で、EOの平均付加モル数が30〜160、EO/PO付加モル比が1.5〜4.5)と、R[−COO−(AO)−R] (式中nは1以上の整数、Rはn個の−COOHを有する総炭素数14〜24のカルボン酸から全ての−COOHを除いた残基、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基など、AOはオキシエチレン基、オキシプロピレン基で、EOの平均付加モル数が30〜160、EO/PO付加モル比が1.5〜4.5)から選ばれる一種以上の脱墨剤でインキ剥離を行い、フローテーション後、40〜80℃の温水で洗浄する脱墨方法(特許文献14)が開示されているが、この方法もフローテーションを前提としているため、曇点が低く、処理温度では発泡しない脱墨剤は用いておらず、フローテーション後の温水洗浄が必須となっている。
上記、何れの方法においても、フローテーションでの脱墨性を考慮しているため、疎水基を小さくして、曇点を上げている。従って、水に溶けすぎて界面活性は低下し、浸透力は小さくあるという欠点を有していた。
特開2002−138380号公報 特開2004−68175号公報 特開昭55−51891号公報 特開昭55−51892号公報 特開昭63−165592号公報 特開平5−263379号公報 特開平10−72789号公報 特開2001−200484号公報 特許第3225143号公報 特開平5−25789号公報 特開2003−166186号公報 特開平6−257081号公報 特開平6−257083号公報 特許第3313046号公報
古紙からインキの分離効率を損なわずに、従来より電力原単位が低く、かつ、高白色度の脱墨古紙パルプを製造することができる脱墨法を提供するものである。
上記課題を解決するため、本発明者等は、前段および後段からなる2段フローテーションを用いずに、1段のフローテーション処理でも充分に脱墨を促進させ、漂白薬品の使用を極端に増加させずに消費電力原単位を大幅に低減させることができる方法について鋭意検討した。その結果、曇点が低い、特定の構造を持つ界面活性剤をパルパーに添加し、その後に洗浄処理を行うことで、効果的に目的を達成できることを見出した。
離解工程で下記一般式(I)で表され、曇点が0℃以上25℃以下のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤を絶乾パルプに対して0.01〜1.0質量%パルパーに添加し、除塵工程に次いで40メッシュ以上100メッシュ以下のワイヤー上でインキを洗浄するワイヤー洗浄工程を設け、その後の漂白工程あるいはニーディング工程で使用する脱墨剤としては、脂肪酸あるいは脂肪酸誘導体系の脱墨剤から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする印刷古紙から高白色度脱墨パルプを製造する方法。
Figure 0004604962
前記ワイヤー洗浄工程でのパルプ濃度が0.5%〜2.0%質量%である(1)に記載の印刷古紙から高白色度脱墨パルプを製造する方法。
上記本発明によれば、印刷古紙を離解する離解工程、除塵するスクリーニング工程、脱墨処理する前後段の2段からなるフローテーション工程、漂白及びソーキング処理をする漂白工程、分散処理する分散工程、洗浄処理する洗浄工程の組み合わせからなる高白色度脱墨パルプ製造設備から構成される古紙のパルプ化工程において、曇点が低く、特定の構造を持つ界面活性剤をパルパーに添加し、前段のフローテーション工程の代わりに、40メッシュ以上100メッシュ以下のワイヤー上でインキを洗浄するワイヤー洗浄工程を採用することにより、フローテーション工程を1段工程とし、且つ、漂白工程あるいはニーディング工程で使用する脱墨剤としては、インキ凝集性の強い脂肪酸あるいは、脂肪酸誘導体系の脱墨剤から選ばれる少なくとも1種類の脱墨剤を用いることによって、電力原単位が低く、かつ、高白色度の古紙パルプを製造することが可能となる。
曇点が低く、特定の構造を持つ界面活性剤をパルパーに添加し、前段のフローテーション工程の代わりに、40メッシュ以上100メッシュ以下のワイヤー上でインキを洗浄するワイヤー洗浄工程を採用することにより、フローテーション工程を1段工程とできる理由について、発明者等は以下のように考えている。
即ち、印刷古紙からインキを除去し、1段フローテーションで高白色度のパルプを得ようとする場合、離解工程でパルプから充分にインキを剥離させ分散する必要があるが、フローテーション工程での脱インキ効率を向上させるため、パルプからインキを剥離させ分散する能力と、フローテーターにおけるインキの泡への吸着性、インキ同士の凝集性という、相反する効果のバランスを採った脱墨剤を添加しているため、パルプへの浸透性やインキ剥離性を著しく高めた界面活性剤は添加できず、インキの剥離が不充分になるという問題を有する。
従って、パルパーでインキ剥離処理を行い、しかも、1段のフローテーターにおける脱インキ性のバランスを考慮した脱インキパルプを得るには、インキとパルプ、あるいはインキと塗工層との結合力を弱め、かつフローテーション適性に影響を与えない何らかの処理が必要であり、このような目的に適した薬剤、即ちパルプからのインキ剥離、洗浄を促進するための処理が不可欠である。本発明者等は、このような化合物として、曇点が低く、特定の構造を持つ界面活性剤が極めて好適であり、かつインキ剥離工程の後工程に、フローテーターの代わりに、洗浄工程を有する脱インキ処理を行う方法が、極めて好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。上記一般式Iで表される界面活性剤が効果的であることの理由としては、曇点が0℃〜25度と低い界面活性剤は、疎水性が強く、浸透性も高いため、インキの剥離力、洗浄性に優れるものと推測される。曇点が0℃より低くなると疎水性は強いものの、インキの剥離力、洗浄性が悪くなるため好ましくない。
さらに、一般式Iで表わされる界面活性剤が効果的である他の理由としては、インキ剥離工程の後工程で、強力な洗浄工程を有することにより、フローテーターにおける脱墨剤の影響を考慮する必要がなく、従来では使用できなかった、パルプへの浸透性、インキ剥離・分散性の高い界面活性剤を使用できることが挙げられる。
一般に脱墨剤として知られる界面活性剤は、フローテーターにおける発泡性の観点から、処理温度と同等か、わずかに低い温度に曇点を持つものが有効であるとされており、本発明のような、曇点が0〜25℃と低い界面活性剤を単独で用いている例はない。
本発明が対象としている古紙としては、新聞紙、チラシ、雑誌、書籍、事務用紙、その他複写機、OA機器から生じる印刷紙などを含む。印刷古紙としては、新聞紙、チラシ、雑誌、書籍、事務用紙、その他複写機、OA機器から生ずる印刷紙等、灰分が7%〜35%含む古紙が挙げられ、中でも最も高白色度が得られにくいのは新聞紙であり、本発明の効果が顕著に現れるのは、印刷面が多く、印刷前の白紙白色度の低い新聞紙、印刷後時間の経過が3ヶ月以上の古紙等である。
<離解工程における離解条件>
本発明の方法における離解工程では、パルパーに原料印刷古紙を固形分濃度12〜18%になるように希釈水を入れ、さらに薬品(水酸化ナトリウム)を、対パルプ0〜1.0質量%、好ましくは0〜0.5質量%添加する。本発明では、離解工程でさらに、界面活性剤を添加する。本発明で使用する界面活性剤はパルプからのインキ剥離、塗工層の分散を促進する界面活性剤であり、他の脱墨剤による発泡を著しく抑制することのない作用を有した界面活性剤が好ましく、離解時間としては10〜30分、好ましくは10〜25分、更に好ましくは10〜18分で、離解温度5〜50℃、好ましくは25〜50℃で原料印刷古紙を離解する。
本発明で使用する界面活性剤は合成高分子系非イオン界面活性剤であり、親水基の種類によりポリエチレングリコール型とポリヒドロキシ型に分類される。ポリヒドロキシ型非イオン界面活性剤は、水に溶解しないものが多く、浸透性や剥離インキの洗浄性では劣るため、本発明では、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を使用する。本発明では、一般式(I)で表される曇点が0℃以上25℃以下のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤を対パルプ0.01〜1.0質量%、好ましくは0.03〜0.5質量%添加する。印刷古紙は印刷後三ヶ月以上経過するとインキの硬化が進み、インキが紙から剥離しづらくなるため浸透性に優れた本発明の界面活性剤を使用することで、インキを剥離しやすくしている。
一般式(I)で表されるポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を更に具体的に例示すれば、高級アルコールのオキシアルキレン基付加体である。これはインキの剥離力や浸透力が良好であるため、中性から弱アルカリ性でインキ剥離処理を行い、低発泡性で、かつ未剥離インキの少ない脱インキパルプを得るのに好適である。なお、アルキル基の炭素数が、11以下のものは一般的に合成されておらず、利用する場合コスト的に非常に高いものとなってしまう。また、アルキル基の炭素数が19以上、あるいはアルキル基の分子量に対するオキシアルキレン基の分子量が低くなってくると、水溶性に乏しくなり、反応系内での分散性が悪化して、浸透力が低下するばかりか、操作性にも問題が生じる。オキシアルキレン基としては、炭素数が2〜4が好ましく、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が一般的であり、アルキル基の分子量に応じて、最適な曇点になるよう、付加モル数を変えることが望ましい。付加モル数は5以上が好ましく、35以下が好ましい。
また、一般式(I)で表される界面活性剤の曇点は、低いほど疎水性が大きく、浸透性も高くなるが、反応系内で溶解せず、分散性が悪化するため、浸透性は低下し、剥離インキの洗浄性も悪化する。一方、曇点が高いものは、親水性が大きくなり、浸透性は低下することから、曇点が0〜25℃と低い界面活性剤が望ましい。また処理温度は曇点より5℃〜25℃高い処理温度で処理することが好ましい。インキ剥離工程や洗浄工程における処理温度が高い場合には、上記の理由から、界面活性剤の分散性を考慮して、曇点は高め、つまりやや親水性を強くする必要があり、逆に処理温度が低い場合には、疎水性を強めて曇点を下げ、浸透力を上げることが効果的である。処理温度としては、20℃以下では、古紙の離解性やインキ剥離性が著しく低下するため、望ましくない。一方、80℃以上では、蒸気などのコスト面、および界面活性剤の曇点を高くする必要があり、浸透性は著しく低下するため、望ましくない。
<除塵工程>
除塵工程は、クリーナー、スクリーンで原料中の異物を取り除く工程である。クリーナーで重量異物を取り除き、次にスクリーン、丸穴スクリーンやスリットスクリーンを用いて異物の除去を行う。本発明では高品質な脱墨古紙パルプを得るためにスリットスクリーン(1段目0.15mmスリット、2段目0.15mmスリット)を使用する。
<ワイヤー洗浄工程>
ワイヤー洗浄工程では、原料中の灰分を優先的に除去し、繊維分のロスを最小限に止めるワイヤー洗浄装置が用いられる。ワイヤー洗浄装置としては、エキストラクター、フォールウオッシャー(栄工機製)、ダブルニップシックナー(石川島産業機械製)等が挙げられる。一般的には、ワイヤー洗浄装置の目穴は、20〜200メッシュ程度までが考えられるが、灰分除去効率、洗浄効率の点から本発明では40〜100メッシュ、好ましく、更に好ましくは50〜80メッシュが適している。
本発明では、ワイヤー洗浄工程は前段フローテーション又は後段フローテーションのいずれかに代えて行う。前段フローテーション工程に代えて行う場合には、離解工程で剥離したインキや灰分が洗浄され除去されるため、漂白工程での漂白効率が上がることとなり、好ましい。
前記ワイヤー洗浄装置の中では、紙料入口ゾーン、置換洗浄ゾーン、仕上がりゾーンの3ゾーンを有するドラムタイプの洗浄機であるフォールウォッシャー(栄工機製)が優れている。従来のドラムタイプの洗浄機は、紙料をマット状に形成させてしまい、ワイヤーとの接触回数が減少することにより洗浄効果が発揮されにくくなるデメリットがあったが、フォールウオッシャーの場合は、マットを形成させないために、強力な高速攪拌羽根を取りつけてある。紙料処理は入口濃度を4%以下の濃度で行うことができるが、好ましくは0.5〜2.0%、更に好ましくは、1.0〜1.5%である。0.5%より低い濃度の場合、ワイヤーの処理面積が多大なものとなるし、2%の濃度を越えるとインキ除去効率が極端に低下する。
(紙パ技協誌53巻第9号第64〜67頁特に65頁図1、特開平8−176985号、特開平9−188986号公報参照)
<漂白工程>
漂白工程は、薬品を使用してパルプを白くする工程であり、古紙再生には、一般的には、過酸化水素、ハイドロサルファイド、二酸化チオ尿素、ハイポ等が使用される。過酸化水素漂白は、過酸化水素対パルプ0.5〜4.0質量%、苛性ソーダ対パルプ1.5〜3.0質量%、珪酸ソーダ対パルプ0.5〜1.0質量%( NaOHとして)で使用し、漂白時間は1〜4時間、漂白パルプ濃度は20〜35%、漂白温度は50〜75℃で行うことが好ましい。
<分散工程>
分散工程は、ニーダーやディスパーザーで繊維からインキを剥離・分散させる工程である。ディスパーザー処理濃度は20〜50%、処理温度は40〜90℃で、微細インキを凝集させ、フローテーターでのインキ凝集性の強い脱墨剤をディスパーザー処理直前に対パルプ0〜0.5質量%添加することが好ましい。フローテーション前に脱墨剤がパルプに均一に混合できれば、漂白工程に脱墨剤を添加してもかまわない。
インキ凝集性の強い脱墨剤としては、脂肪酸あるいは、脂肪酸誘導体系の脱墨剤があるが、例えば、脂肪酸の場合、花王(株)社製のDI−254(オレイン酸)、第一工業製薬(株)社製のK−4004−D等がある。また、脂肪酸誘導体系の場合、花王(株)社製のDI−1120、DI−1050、日新化学研究所(株)社製のDIY−23543、第一工業製薬(株)社製のペーパーエイドW等が挙げられる。
<フローテーション脱墨工程>
フローテーション工程は、フローテーターで空気にインキを吸着させインキを系外に除去する脱墨工程である。一般的にはフローテーターは2段~3段で処理され、1段ではフロスに含まれているパルプ分が多く歩留まりが低下するため、1次のフロスを2次に供給し、2次の精選原料を一次に戻す方式がとられている。本発明ではフローテーターは1段であり、処理濃度は0.7〜1.5%、フローテーター処理温度は10〜50℃、好ましくは30〜45℃で行う。
<洗浄工程>
洗浄工程は、フローテーターで取り除けなかった微細なインキを脱水洗浄する工程で、0.6〜1.5%のパルプスラリーを清水で希釈した後、15〜35%まで脱水洗浄することが好ましい。
<白水循環>
ワイヤー洗浄後のろ液(白水)は、固形分濃度が0.5〜1.5%あるため、一部を排水とした以外は、直接パルパーの希釈水として使用する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、実施例は本発明をなんら限定するものではない。本実施例中では、特に断らない限り、原料濃度は灰分込みの固形分濃度、薬品添加率は、対絶乾パルプあたりの質量%である。
(白色度測定方法)
白色度シートは、漂白完成パルプを離解後、パルプスラリーに硫酸バンドを対絶乾パルプ20.0%加え、Tappi試験法T205os−71(JIS P 8209)に従って、坪量60g/m2のシートを作製した。その後、パルプの白色度は、分光白色度測色計(スガ試験機製)で蛍光強度カットの白色度を測定した。
<実施例1>
オフセット印刷新聞古紙60%、チラシ古紙40%からなる印刷古紙原料をパルパーに仕込み、原料濃度15%、水酸化ナトリウム添加率0.3%、式(I)において、表1に示す曇点20℃の界面活性剤を、絶乾パルプあたり純分換算で0.3%添加し、離解温度35℃で15分間離解した。離解後の原料を除塵工程にて処理し、1.0%に濃度調整後、ワイヤー洗浄機(フォールウオッシャー:栄工機製、50メッシュワイヤー)にて処理した。
ワイヤー洗浄後のパルプスラリーは、約3%に希釈後、既存の脱墨パルプ製造設備にて、脱水処理、漂白処理、ディスパーザー処理、フローテーター処理、洗浄処理の順に従って処理して完成パルプを製造した。漂白条件は、過酸化水素添加率対パルプ3.0%、水酸化ナトリウム添加率対パルプ2.3%。珪酸ナトリウム添加率対パルプ水酸化ナトリウム換算0.7%、パルプ濃度約28%、漂白時間2時間30分、漂白温度67℃で行った。フローテーター脱墨条件は、特殊脂肪酸誘導体(花王(株)社製、DI−1120)添加率0.18%、脂肪酸(花王(株)社製、DI−254)添加率0.03%、フローテーター処理濃度1.1%、フローテーター処理温度42℃で行った。完成パルプの白色度、2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<実施例2>
ワイヤー洗浄機のワイヤーを80メッシュとした以外は、実施例1と同様に処理し、完成パルプを製造した。完成パルプの白色度、従来の2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<実施例3>
ワイヤー洗浄機の処理濃度を0.3%とした以外は、実施例1と同様に処理し、完成パルプを製造した。完成パルプの白色度、従来の2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<実施例4>
ワイヤー洗浄機の処理濃度を2.5%とした以外は、実施例1と同様に処理し、完成パルプを製造した。完成パルプの白色度、従来の2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<比較例1>
実施例1において、離解工程で、式(I)で示す界面活性剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に処理し、完成パルプを製造した。完成パルプの白色度、従来の2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<比較例2>
表1に示す式(I)で表される構造で曇点<0℃の界面活性剤とした他は、実施例1と同様に処理し、完成パルプを製造した。完成パルプの白色度、従来の2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<比較例3>
表1に示す式(I)で表される構造で曇点10℃の界面活性剤とした他は、実施例1と同様に処理し、完成パルプを製造した。完成パルプの白色度、従来の2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<比較例4>
表1に示す式(I)で表される構造で曇点39℃の界面活性剤とした他は、実施例1と同様に処理し、完成パルプを製造した。完成パルプの白色度、従来の2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<比較例5>
表1に示す式(I)で表される構造で曇点42℃の界面活性剤とした他は、実施例1と同様に処理し、完成パルプを製造した。完成パルプの白色度、従来の2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<比較例6>
ワイヤー洗浄機のワイヤーを24メッシュとした以外は、実施例1と同様に処理し、完成パルプを製造した。完成パルプの白色度、従来の2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<比較例7>
ワイヤー洗浄機のワイヤーを150メッシュとした以外は、実施例1と同様に処理し、完成パルプを製造した。完成パルプの白色度、従来の2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<比較例8>
脱墨工程に入れる脱墨剤を特殊脂肪酸誘導体(花王(株)社製、DI−1120)から、高級アルコール系脱墨剤(花王(株)社製、DI−7282)とし、添加率を対パルプ純分換算で0.18%とした以外は、実施例1と同様に処理し、完成パルプを製造した。完成パルプの白色度、従来の2段フローテーション法とのDIP工程歩留、製造電力原単位の差を表2に示す。
<比較例9>
オフセット印刷新聞古紙60%、チラシ古紙40%からなる印刷古紙原料をパルパーに仕込み、原料濃度15%、水酸化ナトリウム添加率0.3%、式(I)において、表1に示す曇点39℃の界面活性剤を、絶乾パルプあたり純分換算で0.3%添加し、離解温度35℃で15分間離解した。離解後の原料を除塵工程にて処理し、1.1%に濃度調整後、一段目のフローテーターにて処理した。一段目のフローテーター処理後のパルプスラリーは、既存の脱墨パルプ製造設備にて脱水処理、漂白処理、ディスパーザー処理、フローテーター処理の順序で処理し製品パルプを製造した。漂白条件は過酸化水素添加率対パルプ3.0%、水酸化ナトリウム添加率対パルプ2.3%、珪酸ナトリウム添加率対パルプ水酸化ナトリウム換算0.7%、パルプ濃度を約28%、漂白時間2時間30分、漂白温度67℃で行った。二段目のフローテーター脱墨条件は、特殊脂肪酸誘導体(花王社製、DI−1120)添加率0.08%、脂肪酸(花王社製、DI−254)添加率0.03%、二段目のフローテーター処理濃度1.1%、フローテーター処理温度42℃で行った。完成パルプの白色度を表2に示す。
Figure 0004604962
Figure 0004604962
実施例1〜4および比較例1〜9に示した通り、離解工程で一般式(I)で示される曇点が0℃以上25℃以下のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤をパルパーに添加し、次いで、40メッシュ以上100メッシュ以下のワイヤー洗浄工程を設け、その後の漂白工程あるいはニーディング工程で使用される脱墨剤として、脂肪酸あるいは脂肪酸誘導体系の脱墨剤の少なくとも一種類を使用することで、電力原単位が低く、かつ、高白色度の古紙パルプを製造することが可能となった。

Claims (2)

  1. 離解工程で下記一般式(I)で表され、曇点が0℃以上25℃以下のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤を絶乾パルプに対して0.01〜1.0質量%パルパーに添加し、除塵工程に次いで、40メッシュ以上100メッシュ以下のワイヤー上でインキを洗浄するワイヤー洗浄工程を設け、その後の漂白工程あるいはニーディング工程で使用する脱墨剤としては、脂肪酸あるいは脂肪酸誘導体系の脱墨剤から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする印刷古紙から高白色度脱墨パルプを製造する方法。
    Figure 0004604962
  2. 前記ワイヤー洗浄工程でのパルプ濃度(質量%)が0.5%〜2.0%である請求項1に記載の印刷古紙から高白色度脱墨パルプを製造する方法。
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