JP2011038197A - 脱墨パルプの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】印刷古紙からの脱墨パルプの製造方法に関し、印刷古紙を脱墨再生する際に、ダートを効率良く低減させ、脱墨パルプの品質を向上させるための印刷古紙からの脱墨パルプの製造方法を提供する。
【解決手段】印刷古紙を、離解工程、除塵工程、脱炭工程、脱水工程、漂白工程、分散工程、洗浄工程の組み合わせからなる古紙パルプ製造工程において、前記漂白工程の前の脱水工程で高分子凝集剤を添加し、脱水工程出の原料濃度を25%〜40%とした後、漂白を行ない、その後の分散工程で90〜130℃の高温分散処理を行う脱墨パルプの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は印刷古紙からなる脱墨パルプの塵(ダート)低減方法に関し、さらに詳しくは新聞古紙や雑誌古紙を主体とする印刷古紙を脱墨再生する際に、ダートを効率よく低減させ、且つ、完成パルプの白色度を向上させる脱墨パルプ製造方法に関する。
従来、印刷古紙を脱墨再生させるには、離解(パルパー)・除塵(クリナー・スクリーン)漂白・分散(ニーディング・ディスパージョン)脱墨(フローテーション)・洗浄・脱水の工程から構成される方法で製造を行ってきた。また、特に脱墨パルプのダートを低減させるためには、薬品面ではパルパー工程やフローテーション工程で使用するアルカリや脱墨剤、或いは発泡剤を高性能とするなどが必要であり、又、設備面ではスクリーン、クリーナー等の除塵機を高効率化するか、或いは分散工程でニーディングを改善強化、フローテーション工程での強化をするなど、それぞれの分野で細部にわたり研究を行ってきた。
一方、市場ではダートを極力低減させ、BKPと同等若しくはそれに準ずる品質を有する脱墨パルプがより一層望まれてきている。最近は印刷古紙の中に灰分が多く、且つ、表面処理剤により処理された極端に脱墨性の劣る中性新聞古紙が混入するようになり、従来に比べ比較的粗悪な古紙が集荷されるようになったため、新聞古紙や雑誌古紙を主体とする印刷古紙から、これらの要望に答え得る脱墨パルプを製造することが困難な状況になってきている。
これまで通常に行われていた脱墨パルプ製造方法ではインキを主体とするダートを十分除去することが困難になると同時に目標白色度を維持することが困難になり、漂白性が悪化している。
従来、脱墨パルプ製造工程ではダートを低減させ、また、白色度を向上させるために、苛性ソーダ、珪酸ソーダ、炭酸ソーダ等のアルカリ剤、過酸化水素、次亜塩素酸塩等の漂白剤、EDTA、DTPA等の金属キレート剤と共に、各種脱墨剤などの薬品が使用されてきた。脱墨剤にはパルプ繊維からインキを剥離し、微細分散させる効果の高いものや、インキを凝集させフローテーション工程でのインキ捕集性を高める効果の高いもの等がある。
従来からの脱墨剤や脱墨助剤としては、例えば高級アルコール硫酸塩、ポリオキシアルキレン高級アルコール硫酸塩、脂肪酸あるいは脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール及びアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物、多価アルコールエステルアルキレンオキサイド付加物、スチレンスルホン酸塩の単独重合体または共重合体等が使用されている。また、より効果的な脱墨剤として高級脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物又はそのエーテル化合物又はエステル化合物等が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
しかし、これらの特許文献記載の脱墨剤や脱墨助剤であっても、最近の灰分が多い印刷古紙、又は、表面処理剤により極端に脱墨性の劣る中性新聞古紙においては、脱墨効果が低く、ダートを低減するため或いは高白色度を得るためには、高添加となり多額のコストがかかる。
また、脱墨剤を補う形で凝集剤を添加し、粘着性物質をフローテーション工程で除去する方法が提案されている(特許文献6)。しかし、粘着性物質および凝集剤をフローテーション工程でフロスとして除去することは完全にはできず、取り除かれずにパルプスラリーと共に後段へ送られた場合、コロイド状態で存在する粘着性物質を反対に顕在化させることにつながる不利な点を有していた。
一方、ダートを低減させる設備などの従来技術としては、マイカプロセッサーをはじめとする、一軸のローター集面に送り刃と戻り刃が配置され、かつステーターの刃と各刃間に十分な間隙を有したミキサーを用いることを特徴とするもの(特許文献7)がある。また、分散工程におけるニーディングが3段からなり、少なくとも1段以上がディスクタイプの分散機で高温処理を行い、3段のニーディング処理後にフローテーション処理を行なうことを特徴とするもの(特許文献8)等が提案されている。
また、離解工程における温度とpHと希釈水に着目したものとして、クラフトパルプのアルカリ洗浄排水をパルパーの離解希釈水に使用し、pH8〜13、温度20〜70℃で処理することを特徴とするもの(特許文献9)等が提案されている。何れの提案も優れており一定の効果はあるものの十分ではなく、漂白工程、且つ、高温分散工程に影響を及ぼす脱水工程でのパルプ濃度の維持管理の重要性に着目したものでは無かった。
特開昭58−109696号公報 特開昭62−276093号公報 特開平5−25790号公報 特開2004−19023号公報 特開2000−282382号公報 特開平6−257082号公報 特開平4−050391号公報 特開2008−169507号公報 特開2009−35843号公報
本発明の目的は、上記のような問題を解消させ、脱墨性の悪い中性新聞を含む印刷古紙から製造される脱墨パルプのダートを大幅に低減させて、高品質の脱墨パルプを製造できる方法を提供するものである。
本発明者らは、漂白工程、且つ、分散工程に影響を及ぼす脱水工程でのパルプ濃度の維持管理の重要性に着目し、本発明を完成した。
本発明は以下の発明を包含する。
(1)印刷古紙を、離解工程、除塵工程、脱墨工程、脱水工程、漂白工程、分散工程、洗浄工程の組み合わせからなる脱墨パルプ製造工程において、前記漂白工程の前の脱水工程で高分子凝集剤を添加して、該脱水工程出の原料濃度を25%〜40%とした後、漂白を行ない、その後の分散工程を90〜130℃で行う脱墨パルプの製造方法。
(2)前記、高分子凝集剤は分解温度が90℃以下である(1)記載の脱墨パルプの製造方法。
(3)前記高分子凝集剤がカチオン性ポリアクリル酸エステルを主成分とする高分子凝集剤である(1)又は(2)のいずれか1項に記載の脱墨パルプの製造方法。
(4)前記(1)〜(3)の記載の方法で製造された脱墨パルプをJIS P 8222により作成したパルプシートは、0.004〜5.0mmの大きさのダート個数が5,000〜50,000個/mの範囲にあることを特徴とする脱墨パルプの製造方法。
本発明により、原料古紙の品質によらず、脱墨パルプのダートが低減し、品質が向上することにより、クラフトパルプ、メカニカルパルプ等より安価な脱墨パルプの紙製品への配合を高める事が可能となり、古紙の利用範囲が広がる。
原料となる印刷古紙の例としては、中性新聞紙、酸性新聞古紙、微塗工紙、高灰分の塗工紙、非塗工紙等、灰分を7%〜35%含む古紙があげられる。本発明は、多量の表面処理剤により脱墨性が悪い中性新聞古紙を含む印刷古紙に特に効果的である。
本発明での離解工程について、特に制限は無いが、好ましい処理として原料印刷古紙を固形分濃度12〜18%になるように稀釈水を入れる。更に水酸化ナトリウムを対パルプ0.6〜3.5質量%、好ましくは1.0〜2.5質量%添加する。脱墨剤を添加する場合には、パルプ繊維への浸透性が強く、インキの剥離性の強いものが好ましく、脱墨剤を対パルプ0.01〜0.5質量%、好ましくは0.03〜0.3質量%添加する。離解時間は、10〜30分、好ましくは10〜25分、更に好ましくは10〜18分、離解温度は10〜50℃、好ましくは30〜50℃で離解する。
離解時に使用するインキ剥離性の強い脱墨剤としては、高級アルコール系脱墨剤があり、例えば、花王(株)社製のDI−7020、DI−7300、DI−767、DI−7282、日新化学研究所(株)社製のDIA−Z−100、DIA−Z−5000、東邦化学(株)社製のネオスコアFW−780、ネオスコアFW−790、ネオスコアFW−795、FT−467、FT−470、FT−487、FT−511、FT−515、FT−517、FT−519、B−B剤、第一工業製薬(株)社製ダイホープ940、ダイホープ960、日華(株)社製リポブライトDP−810等があるがこの限りではない。
また、除塵工程としては特に制限は無い。スクリーン・クリーナーで原料中の異物を取り除くことが可能であればよいが、スリットスクリーン(1段目0.15mmスリット以下、2段目0.15mmスリット以下)を使用することが好ましい。クリーナーは重量異物を効率良く取り除くことが可能であればいずれでもよい。
脱水工程で処理して得られるパルプの目標濃度は、後に続く漂白工程、分散工程において十分な効果を得るためには25%〜40%が好ましく、25%〜35%がより好ましく、更に好ましくは25%〜30%である。パルプ濃度が25%未満では、温度上昇に必要なエネルギーが莫大となり、また、機械的負荷がかかりにくく、インキ剥離・ダートの分散性が低下するため適さない。処理濃度40%を越えて高濃度に搾水するのは困難で斑ができ易く、且つ、電力原単位が高くなり、パルプ強度が著しく低下する。
脱水工程におけるパルプスラリーを濃縮する装置としては、特に制限は無いが、一般にスクリュープレス等の加圧脱水機を使用する。一軸型スクリュープレスとしては、相川鉄工製のV45LM−H型、メッツォペーパー、AFT社製のオプティマム・スクリュー・プレス等がある。また、ツインプレス、ツインワイヤー方式の脱水機としては、株式会社石垣のツインスクリュープレス、丸石製作所のツインワイヤープレス等がある。脱墨パルプにおいては、加圧脱水機1段階のみで目標のパルプ濃度に通常瞬時に濃縮することが困難であるため、吸引脱水機に続けて加圧脱水機を併用するなど工夫することが好ましい。
本発明において高分子凝集剤を添加することにより、機械力のみでは十分に絞りきれない低濃度のパルプを、既存の加圧脱水機で目的のパルプ濃度まで比較的瞬時に上げられるようにする。また、機械的には微調整が困難なパルプ濃度を、高分子凝集剤の添加率を加減することにより、微調整することが可能となる。また、夏場などの工程温度が高く、機械力でも脱水効率が向上した場合には、添加量を絞るなど自在に調整することが可能である。
本発明において高分子凝集剤を添加する工程は、脱水工程より前、又は、脱水工程が好ましい。少なくとも、脱水工程におけるパルプが高分子凝集剤に十分浸ることが必要である。脱水工程以降の漂白工程、分散工程での処理効率向上のために、パルプ濃度が高いことが重要となる。高分子凝集剤の添加率は、パルプ濃度や設備にもよるが、対パルプ0.005〜0.05質量%であることが好ましく、より好ましくは対パルプ0.01〜0.04質量%である。添加率が低い場合は、十分な効果が現れない。添加率が高い場合は、目標パルプ濃度を超え、コストが掛かり実用的ではない。また、高分子凝集剤の添加濃度は特に制約は無いが、0.1から0.3%であることが好ましい。
該高分子凝集剤は、脱水工程においてパルプの濃度向上を達成した後、漂白工程では問題が無いが、脱墨工程(フローテーション工程)においては発泡低下を引き起こす可能性がある。また、完成パルプに残留した場合に、抄紙後のシートのサイズ性に影響を与える恐れもあるため、脱水工程の後の高温分散処理において、90℃を超える高温処理により分解除去されることが好ましい。
本発明で添加する高分子凝集剤は、前記脱水工程で目標濃度までパルプ濃度を上げられれば特に制約は無いが、アクリル酸エステル系のカチオン性高分子凝集剤が最も効率よくパルプ濃度を上げられるため好ましい。カチオン性ポリアクリル酸エステル系では、例えば、MTアクアポリマー株式会社製のC−525M、C−500N、栗田工業製のハイホルダー725、ハイフォームK162などがある。
脱水工程に続く漂白工程のパルプ濃度も20〜40%が好ましく、更に好ましくは25〜35%である。濃度が高いことで熟成時間が稼げ、また、余分な水分によって漂白薬品が薄まることがないので、漂白工程においての高いパルプ濃度は好ましい。
漂白工程の漂白薬品としては過酸化水素、ハイドロサルファイド、二酸化チオ尿素、ハイポ等が使用される。また、本発明の実施ではアルカリ過酸化水素漂白を行ったが、製造される脱墨パルプの目標白色度に達しさえすれば漂白方法は限定されないが過酸化水素は、漂白効果による白色度増加に加えて、アルカリ条件で熟成するため、熟成中にパルプが膨潤し、インキとの接着が弛緩し、分散機でのインキ剥離効果を高める効果も得られるため、高い白色度が得られるため好ましく、対パルプ0.5〜5.0質量%添加することが好ましい。これ以上添加量を増やしても白色度上昇はサチュレーションする傾向にある。一方、漂白時のpHは、10.5〜12.0が好ましく、この範囲を外れると過酸化水素の漂白性は悪化する。漂白温度は50〜120℃で行うことが効果的である。
また、苛性ソーダは、対パルプ1.5〜3.0質量%、珪酸ソーダは、対パルプ0.5〜1.0質量%(NaOHとして)添加し、漂白時間は10分間〜5時間、好ましくは1.5〜3時間で行う。漂白時間が短すぎると過酸化水素が十分に反応しないため好ましくない。5時間より長くしても逆に過酸化水素の消費が進み、残過酸化水素がなくなった時点からパルプの黄色化が起きるため、適切ではない。
脱水工程と漂白工程との間に、分散工程(ミキサー処理を含む)を行ない、漂白工程に添加する漂白薬品のパルプへの混ぜ込みを行なうことは、薬品のパルプへの混練が効果的に行なわれて有効である。また、同時に分散工程において、漂白工程に十分な温度にまで蒸気で温度をつけることは、比較的瞬時に温度を上昇させることができ効率的である。
本発明の漂白工程後に行なう分散工程の処理濃度は25%〜40%が好ましく、更に好ましくは25%〜35%で処理する。この濃度範囲内で分散処理を行なうことにより、機械的な負荷が適度に加わりパルプ繊維上に付いたインキを効率よく剥離することが出来る。処理濃度が25%未満では、機械的負荷がかかりにくく、インキ剥離・ダートの分散性が低下する上、温度上昇に必要なエネルギーが莫大となるため、適さない。また、該分散工程の処理濃度40%を越えた状態での分散処理は、摩擦力が増すことによりパルプ繊維に機械的な負荷が過度に加わり、パルプ強度の低下が生じるため好ましくない。
本発明の漂白工程後に行なう分散工程は、処理温度が90〜130℃の高温分散が好ましい。この範囲内で処理を行なうことにより、通常温度に比べて高温で分散処理をすることにより、高濃度で分散工程を行なうことが可能となり、また、高温によりインキや高分子凝集剤などの物理的な軟化或いは分解が生じるため、パルプ繊維からそれらを容易に剥離することが可能となる。90℃未満の処理では、十分なダート減少効果が得られず、また、高分子凝集剤を分解除去することができない。一方、130℃を超えるとパルプの黄変が生じるため適さない。
また、本発明の脱水工程の後に漂白工程、漂白工程の後に前記高温分散処理を行なうことにより、漂白工程前に行なった脱水工程の高濃度条件(25%〜40%)を引き続き利用することが出来る。また、漂白工程での高温度条件(50〜120℃)をも引き続き利用することが出来るため、僅かな温度上昇で高温分散処理に十分な温度(90℃〜130℃)まで上昇させることが出来る。このため、それぞれを分離して設置することに比べて省エネ化することが可能である。
本発明における90〜130℃で行う高温分散処理には、低速・高濃度用軸タイプの分散機または、ディスクタイプの分散機が適している。低速・高濃度用軸タイプの分散機としては、一軸型または二軸型のニーダータイプのディスパーザーが好ましい。軸状のローターに取り付けられた回転刃と、ケーシングに取り付けられた固定刃を有し、回転数50〜300rpmの低速で処理を行う。軸タイプの分散機では、繊維間の摩擦作用が主体となって、インキ剥離・ダートの分散が起こる。処理濃度が20%未満では、機械的負荷がかかりにくく、インキ剥離・ダートの分散性が低下する上、温度上昇に必要なエネルギーが莫大となるため、適さない。一般的には、一軸型ニーダーとして、二ーディング・ディスパージャーKD(商品名:アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー社製)、ディスパーザー(商品名:相川鉄工社製)、ディスパーザー(商品名:アセック社製)、ディスパーザー(商品名:三栄レギュレーター社製)、CCE型にーディングマシン(商品名:新浜ポンプ製作所社製)、ニーダー(商品名:山本百馬製作所社製)などが使用され、また、二軸型ニーダーとして、新浜ポンプ製作所社製、山本百馬製作所製のものなどが使用される。
また、ディスクタイプの分散機とは、ディスク型ディスパーザーまたはコニカル型ディスパーザーであれば特に制限はない。構造的にはディスクリファイナーと似ているが、ディスクプレートの構造が異なっている。また、コニカル型ディスパーザーは回転刃がコニカル状になっている。回転数300rpm〜2500rpm、処理濃度20%以上で処理する。
軸タイプの分散機と異なる点は、繊維と刃の衝突作用が主体となってインキ剥離・ダートの分散が起こる点である。一般的には、ディスク型ディスパーザーとして、ディスパージャーHTD(商品名:アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー社製)、KRIMAホットディスパージョン設備(商品名:Cellwood社製)などが使用され、また、コニカル型ディスパーザーとして、コニディスク(商品名:相川鉄工社製)、コニカルディスパージョンシステム/HIプリヒーター/OptiFinerディスパーザー(商品名:メッツォ SHI社製)などが使用されるが、特定の機種に限定するものではない。低速・高濃度用軸タイプのニーダーまたは、ディスクタイプのディスパーザーが適しているが、ディスクタイプのディスパーザーの方がより適している。
本発明における90〜130℃で行う高温分散処理には、過酸化水素、二酸化チオ尿素のほかにアルカリ薬品を添加してもよい。アルカリ薬品としては、水酸化ナトリウムが好ましい。過酸化水素添加量は、絶乾パルプ質量に対して0.05〜3質量%、二酸化チオ尿素の添加量は、絶乾パルプ質量に対して0.1〜2質量%で、特に好ましくは0.2〜1.0質量%である。
脱墨工程でのフローテーション処理は、フローテーターの形式に制限はないが、処理濃度は0.7〜1.5%、フローテーター処理温度は10〜55℃、好ましくは30〜50℃で行うのがよい。また、フローテーター処理は1段、2段処理いずれでも特に制限はないが、高温分散処理後にフローテーション処理を行なうほうがインク除去により効果的である。
また、フローテーション用脱墨剤をパルプに均一に混合できるのであれば、漂白工程に脱墨剤を添加してもよい。インキ凝集性の強い脱墨剤としては、脂肪酸あるいは、脂肪酸誘導体系の脱墨剤があるが、例えば、脂肪酸の場合、花王(株)社製のDI−254(オレイン酸)、DI−268、第一工業製薬(株)社製のK−4004−D等がある。また、脂肪酸誘導体系の場合、花王(株)社製のDI−1120、DI−1050、日新化学研究所(株)社製のDIY−23543、第一工業製薬(株)社製のペーパーエイドW、ダイホープ1000等があるがこの限りではない。
フローテーション処理後の洗浄工程は、フローテーターでは取り除けなかった微細なインキを脱水洗浄する工程であり、0.6〜1.5%のパルプスラリーを清水または抄紙機の白水で希釈した後、10〜30%まで脱水洗浄することが好ましい。
洗浄装置としては特に制限は無いが、エキストラクター、フォールウオッシャー(栄工機製)、ダブルニップシックナー(石川島産業機械製)等がある。洗浄装置は、原料中の微細なインキや灰分を優先的に除去し、繊維分のロスを最小限に止める洗浄機であることが好ましい。中でもワイヤー洗浄機が好ましく、目穴は、20〜200メッシュ程度までが考えられるが、好ましくは40〜100メッシュが良く、更に好ましくは、50〜80メッシュが適している。
本発明により得られたパルプは、0.004〜5.0mmのダート個数が5,000〜50,000個/mであることが好ましい。ダート個数50,000個を越えるとBKPに比べて極端に見劣りする。また、ダート個数5,000個/m以下とするには、莫大な薬品、エネルギーが必要となるため好ましくない。また、本発明により得られたパルプを50質量%以上使用して、ダートの少ない良好な紙を抄紙することが可能である。
本発明により、新聞古紙を主体とした印刷古紙より製造される脱墨パルプのISO白色度は50%〜85%まで幅広く製造できるが、いずれもダートの低減された品質を達成することが可能となる。
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、実施例は本発明をなんら限定するものではない。百分率(%)は白色度以外すべて質量%を意味し、また、薬品添加率は、対絶乾パルプあたりの質量%で示した。脱墨パルプの品質は、以下に示したダート評価方法によるダート個数で評価した。特にことわりが無い限り原料濃度は灰分込みの固形分濃度、薬品添加率は質量%である。本発明の実施は、完成パルプ120ADT/Dの脱墨パルプ製造設備を使用した。
<ダート評価方法>
脱墨パルプを150メッシュワイヤー上に分取し、パルプ1gあたり約20リットルのフィルター通過清水を用いて、繊維から遊離しているインクを完全に洗浄後、坪量60g/mの手すき紙をJIS P 8222に示される試験用手すき紙の調製方法に準じて5枚作製した。手すき紙5枚中の中心10cm×10cm中に含まれる0.004〜5.0mmサイズのダート個数を王子計測機器社製ダートアナライザー(DIP−200)を用いて測定した。測定結果は、パルプ1mあたりの個数に換算し、ダート個数とした。
<白色度測定方法>
完成パルプを離解後、パルプスラリーに硫酸バンドを対絶乾パルプ20.0%加え、Tappi試験法T205os−71(JIS P 8209)に従って、坪量60g/mのシートを作製した。作成したシートを分光白色度測色計(スガ試験機製)で蛍光強度カットの白色度を測定した。
実施例1
新聞紙及びチラシを主体とする古紙(灰分含有量13.9%)の原料をパルパーに仕込み原料濃度15%、水酸化ナトリウム添加率対パルプ1.0%、高級アルコール系脱墨剤(東邦化学社製、FT−517)添加率対パルプ0.10%、離解時間15分、離解温度35℃で離解した、離解後離解原料を除塵工程にて処理し、1.0%に濃度調整後、フローテーター(王子エンジニアリング(株)製)にて処理した。第一段目のフローテーター処理温度は、37℃で行った。
フローテーター後のパルプスラリーは、エキストラクターで洗浄を行い、その後、ポリアクリル酸エステルを主成分とするMTアクアポリマー製 カチオン性高分子凝集剤 C−525Mを対パルプ0.03%で添加した。その後、ディスクシックナー、スクリュープレス(相川鉄工製のV45LM−H型)でパルプ濃度28.0%まで脱水した。
その後、加温ミキサーで80℃まで昇温後、軸タイプの分散機として、相川鉄工社製ディスパーザーで第一段目の分散処理を電力原単位約40kwh/パルプTで処理し、その後漂白を行なった。漂白条件は過酸化水素添加率対パルプ2.5%、水酸化ナトリウム添加率対パルプ2.0%、珪酸ナトリウム添加率対パルプ水酸化ナトリウム換算0.6%、パルプ濃度約28.5%で、漂白時間150分で行った。
次いで、蒸気にて原料温度を110℃に昇温後、第二段目の分散機として、ディスクタイプのCellwood社製KURIMAホットディスパーザーを用高温分散処理を電力原単位約20kwh/パルプTで行なった。
その後、第二段目のフローテーター処理を行なった。フローテーター脱墨条件は、特殊脂肪酸誘導体(花王社製、DI−1120)添加率0.12%、フローテーター処理濃度1.1%、フローテーター処理温度40℃で行った。ディスクシックナーにて脱水洗浄後、完成パルプ(脱墨パルプ)のダート数を表1に示す。
実施例2
第二段目のディスクタイプの分散処理を125℃で行なう以外は、実施例1と同様に処理し、脱墨パルプを製造した。脱墨パルプのダート数を表1に示す。
実施例3
第二段目の分散処理を95℃の高温分散した以外は、実施例1と同様に処理し、脱墨パルプを製造した。脱墨パルプのダート数を表1に示す。
実施例4
カチオン性高分子凝集剤の添加率を対パルプ0.04%とした以外は、実施例1と同様に処理し、脱墨パルプを製造した。脱墨パルプのダート数を表1に示す。
実施例5
カチオン性高分子凝集剤の添加率を対パルプ0.02%とした以外は、実施例1と同様に処理し、脱墨パルプを製造した。脱墨パルプのダート数を表1に示す。
実施例6
カチオン性高分子凝集剤の銘柄を、ポリアクリルアミドを主成分とするMTアクアポリマー製のN−100とした以外は、実施例1と同様に処理し、脱墨パルプを製造した。脱墨パルプのダート数を表1に示す。
比較例1
カチオン性高分子凝集剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様に処理し、脱墨パルプを製造した。脱墨パルプのダート数を表1に示す。
比較例2
カチオン性高分子凝集剤を添加しない、また、第二段目の分散処理を135℃高温分散した以外は、実施例1と同様に処理し、脱墨パルプを製造した。脱墨パルプのダート数を表1に示す。
比較例3
カチオン性高分子凝集剤を添加しない、また、第二段目の分散処理を85℃で行なう以外は、実施例1と同様に処理し、脱墨パルプを製造した。脱墨パルプのダート数を表1に示す。
比較例4
ポリアクリル酸エステルを主成分とするMTアクアポリマー製カチオン性高分子凝集剤 C−525Mの添加場所を実施例1で添加した脱水工程前では行なわずに、対パルプ0.03%で2段目のフローテーター処理前にて添加した以外は、実施例1と同様に処理し、脱墨パルプを製造した。脱墨パルプのダート数を表1に示す。
比較例5
第二段目の分散処理を85℃で行なう以外は、実施例1と同様に処理し、脱墨パルプを製造した。脱墨パルプのダート数を表1に示す。
Figure 2011038197
実施例1〜6及び比較例1〜5を比較すると明らかなように漂白工程の前の脱水工程にカチオン性ポリアクリル酸エステルを添加し、漂白工程に続く分散工程の処理温度を90〜130℃に最適化することにより、完成パルプのダートが減少することは明らかである。
中性新聞古紙を含む印刷古紙を、離解工程、除塵工程、脱墨工程、脱水工程、漂白工程、分散工程、洗浄工程の組み合わせからなる脱墨パルプ製造工程において、前記漂白工程の前の脱水工程で高分子凝集剤を用いて原料の濃度を上昇させ、脱水工程出の原料濃度を25%〜40%とした後、パルプ繊維の漂白を行ない、続く分散工程で、90〜130℃で高温分散処理を行うことにより、ダート個数の少ない脱墨パルプを製造することが可能となった。

Claims (3)

  1. 印刷古紙を、離解工程、除塵工程、脱墨工程、脱水工程、漂白工程、分散工程、洗浄工程の組み合わせからなる脱墨パルプ製造工程において、前記漂白工程の前の脱水工程で高分子凝集剤添加し、該脱水工程出の原料濃度を25%〜40%とした後、漂白を行ない、その後の分散工程を90〜130℃で行うことを特徴とする脱墨パルプの製造方法。
  2. 前記高分子凝集剤は分解温度が90℃以下であることを特徴とする請求項1記載の脱墨パルプの製造方法。
  3. 前記高分子凝集剤がカチオン性ポリアクリル酸エステルを主成分とする高分子凝集剤である請求項1又は2のいずれか1項に記載の脱墨パルプの製造方法。
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