JP6004325B2 - 古紙脱墨パルプの製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、古紙の再生方法として、過酸化物化合物を含有するpH3ないし6の酸性水溶液をもつて古紙を処理することが開示されている。しかし、このような構成をとる目的は、古紙に含まれる接着剤による斑点の形成を回避することであり、粘着テープやシリコーン処理裏貼りなど特殊な古紙が混入している場合の処理を対象としている。対象とする古紙は特に限定されておらず、印刷された塗工紙を多く含む古紙についてのインク脱墨性について検討されたものではない。
特許文献2の技術は、中性領域での古紙離解を含む中性脱墨パルプ化方法であり、課題は、DIP製造工程から発生するCOD量を削減し、高品質のDIPを提供することである。しかし、離解工程で酸を添加するものではない。
特許文献3には、離解工程でアルカリ薬品を添加せず、脱インク剤のみを添加し、離解をpH4.5〜8.5で行なうことが記載されている。課題は、排水処理の負荷を軽減しつつ、白色度の高いパルプを得るというものであるが、離解工程で酸を添加するものではない。
上質古紙脱墨パルプとは、上質系古紙を原料として、BKP代替を目的とした古紙パルプであり、原料の上質系古紙として、色上、ケント、模造、チラシ等が使用される。
印刷された塗工紙を含む古紙を再生する古紙脱墨パルプの製造方法であって、古紙を離解する工程で酸を添加し、アルカリ薬品を添加せずに脱墨処理することを特徴とする古紙脱墨パルプの製造方法である。
請求項2に係る発明は、
離解工程の後、脱墨処理、分散処理をこの順に行うことを特徴とする請求項1に記載の古紙脱墨パルプの製造方法である。
請求項3に係る発明は、
離解工程の後、分散処理、脱墨処理をこの順に行うことを特徴とする請求項1に記載の古紙脱墨パルプの製造方法である。
請求項4に係る発明は、
古紙に含まれる灰分が15%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の古紙脱墨パルプの製造方法。である。
請求項5に係る発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載の古紙脱墨パルプの製造方法によって製造された、パルプの白色度が75%以上、残インク個数が200個/120mm2以下、残インク面積率が0.1%以下であることを特徴とする古紙脱墨パルプ。
まず、一般的な古紙脱墨パルプの製造方法について説明する。古紙脱墨パルプの製造工程は、古紙を、パルパー等の機械的解繊を伴う離解装置でスラリーとし(離解処理)、スクリーンやクリーナー等の除塵装置で異物を除去し(粗選・精選処理)、必要に応じて過酸化水素等で漂白し(漂白処理)、フローテーター等の浮選機で微細繊維やインク成分等を浮上選別し(浮選処理)、洗浄処理、脱水処理するなどして、古紙脱墨パルプを製造している。もちろん、例えば、浮選処理を多段としたり、一連の処理の途中でニーディング(混練)処理やディスパージョン(分散)を行う場合もある。
(離解:パルパー)
受け入れた古紙を、パルパーでパルプ繊維に解された状態にする。離解する際のパルプ濃度に限定は無いが、パルパーには、低濃度パルパー(濃度3〜5%)と高濃度パルパー(濃度13〜18%)、ドラムパルパー(濃度18〜25%)があり、パルパーの種類により離解に適したパルプ濃度がある。本発明の古紙脱墨パルプの製造方法では、このようなパルパーのうち、高濃度パルパーやドラムパルパーを用いるのが望ましい。これらのパルパーによると、ホットメルトなどの異物を細かくすることなく、パルプを離解することができるので、異物の細分化が進んでいない状態でクリーナーやスクリーンで処理することができ、異物除去効率が良くなる。
除塵工程には、古紙離解後の粗大異物除去を目的とする粗選工程と、完成パルプに要求される品質を満足するレベルまで異物を除去する精選工程がある。パルパーを出た原料は、まず重量異物を除去する高濃度クリーナー(濃度3〜4%)で、砂、金属などを分離し、排出する。次いで粗選スクリーン(濃度1.5〜4%)で紐や大きい粘着異物を除去する。精選スクリーンは、処理濃度は1.0〜1.5%程度であるが、フローテーターの前段に設置する場合は、設備の小型化、経済性を考慮し比較的高濃度(1.5〜2%)で処理する場合がある。スクリーンには、丸孔スクリーン(1.0〜7.0mmφ)とスリットスクリーン(0.10〜0.40mm幅)がある。
クリーナーは渦流によって生じる繊維と異物の比重差によって異物を選別し、スクリーンでは除去しにくい細かい砂、金属などの重量異物やホットメルト、ポリ紐などの軽量異物の除去を行う。クリーナーは低濃度のほうが異物除去効率が高く、通常1%前後の濃度である。
熟成処理は未剥離インクを低減する効果があり、通常粗選スクリーンもしくは前段精選スクリーンの後にあり要求によっては分散工程の直後に設置する。熟成がアルカリ条件下であることから、過酸化水素漂白も兼用し、アルカリ薬品と同時に過酸化水素およびケイ酸ナトリウムを添加する。パルプ濃度が高いほど薬品の効果が高いとされており、中濃度漂白の場合13〜20%程度、高濃度漂白の場合25〜30%程度である。
脱墨を行うフローテーターはパルプスラリー中に空気の泡を送り込んで、疎水性のインク粒子を泡表面に吸着させ、工程外へ除去する。フローテーターでのパルプ濃度は0.8〜1.5%程度である。
機械的な力でインクを剥離するため、混練や分散を行う。インクの剥離のほか、インクをフローテーターで除去しやすい粒径にしたり、黒染繊維の減少に効果がある。濃度は20〜35%程度である。
工程内で発生する洗浄機や脱水機のろ液は、系内各工程の希釈に用いられ、余剰分は排水として排水処理設備にて処理される。古紙脱墨パルプの系内白水には、微細インクや灰分、マイクロスティッキーなどの異物が混入しているため、白水を回収することは、これらを系内に再び取り込むことになり、完成パルプの品質低下や薬品使用量の増加を招く。以前からフローテーターを用いた白水フローテーションを導入しているが、近年では、微細異物やアニオン・カチオン類を除去するため、加圧浮上装置を用いて、白水の浄化を図っている。フローテーターは粘着異物・インク・灰分除去が可能であり、加圧浮上機より繊維ロスが少ない。加圧浮上機は入口固形分の80〜90%を除去することが可能で、粘着異物・インク・灰分の除去には有効である。ただし繊維ロスは大きい。本発明の古紙脱墨パルプの製造方法の原料に使用する古紙としては、新聞、チラシ、雑誌、色上、ケントなどに分類される古紙を、目的とするパルプの品質に合わせて使用することができる。
古紙脱墨パルプは、通常使用目的によって2つに分類される。ひとつは、新聞用紙、下級紙、中級紙などの原料として使用される新聞古紙脱墨パルプである。新聞古紙脱墨パルプには古紙として、新聞古紙を中心にチラシ古紙、雑誌古紙などが使用されるが、用途によっては、新聞古紙以外のチラシ古紙や雑誌古紙の配合率を増やして、得られる古紙脱墨パルプの白色度を高くしている場合もある。
もうひとつは、上質古紙脱墨パルプである。これは上質紙や塗工紙の原料として使用されるBKP代替を目的としたパルプである。上質古紙脱墨パルプには古紙として、色上、ケント、チラシなどが使用される。本願発明の古紙脱墨パルプの製造方法は、特に後者の上質古紙脱墨パルプの製造方法に適している。
本願発明の古紙脱墨パルプの製造方法では、酸添加によるインク剥離効果があるため、アルカリ薬品を添加しないで脱墨処理を行い、漂白・熟成工程を省くことができる。
離解工程で酸を添加することによるその他の効果としては、脱墨工程での泡立ちが良くなり、脱墨剤の添加量を減らすことができる。
本願発明の古紙脱墨パルプの製造方法では、必要に応じて灰分除去工程を追加することで白色度を高くすることもできるが、その場合、仕上がりパルプの収率は低下する。
実施例1の古紙脱墨パルプ製造工程は、本願発明の実施例である。
色上古紙(灰分28.2%)を原料に使用し、次の手順で脱墨テストを行った。
(1)離解工程(低濃度パルパー):濃度4.0%、硫酸添加率3.0%、離解時間15分
(1)の後パルプを、脱水機を用いて濃度20%に調整した。
(2)分散処理(ニーダー):濃度20%、脱墨剤0.17%
(2)の後パルプを、標準離解機を用いて4.0%の濃度で3分間ほぐした(濃度調整時には脱水時のろ水を使用)。さらに、水道水を加え濃度1.0%に調整した。
(3)脱墨工程(フローテーター):濃度1.0%、5分、エアー量10L/min、パルプスラリー量(Lm3)に対する送入空気量(GNm3)の比であるG/L比2.8
実施例2の古紙脱墨パルプ製造工程は、本願発明の実施例である。実施例1と同じ古紙を使用し、次の手順で脱墨テストを行った。
(1)離解工程(低濃度パルパー):濃度4.0%、硫酸添加率3.0%、離解時間15分
(1)の後パルプを、水道水により濃度1%に調整した。
(2)脱墨工程(フローテーター):濃度1.0%、5分、脱墨剤0.17%、エアー量10L/min、G/L比2.8
(2)の後パルプを、脱水機を用いて濃度20%に調整した。
(3)分散処理(ニーダー):濃度20%
(3)の後パルプを、標準離解機を用いて濃度4.0%で3分間ほぐし、さらに濃度1.0%に調整した(濃度調整時には脱水時のろ水を使用)。
離解工程で硫酸添加率を7.0%にしたこと以外は実施例1と同様の手順で、脱墨テストを行った。
比較例1は一般的な古紙脱墨パルプの製造工程である。実施例1と同じ古紙を使用し、次の手順で脱墨テストを行った。
(1)離解工程(低濃度パルパー):濃度4.0%、苛性ソーダ添加率0.5%、離解時間15分
(1)の後パルプを、脱水機を用いて濃度20%に調整した。
(2)分散処理(ニーダー):濃度20%、脱墨剤0.17%、苛性ソーダ0.11%、珪酸ソーダ0.5%、過酸化水素0.6%
(3)漂白・熟成工程:温度60℃、3時間
(3)の後パルプを、標準離解機を用いて4.0%の濃度で3分間ほぐした(濃度調整時には脱水時のろ水を使用)。さらに、水道水を加え濃度1.0%に調整した。
(4)脱墨工程(フローテーター):濃度1.0%、5分、エアー量10L/min、G/L比2.8
漂白・熟成工程を除いたこと以外は比較例1と同様の手順で、脱墨テストを行った。
比較例2では、離解工程で酸を添加しておらず、漂白・熟成工程が無いため、白色度が低く、残インク、夾雑物ともに多い結果となっている。
Claims (5)
- 印刷された塗工紙を含む古紙を再生する上質古紙脱墨パルプの製造方法であって、古紙を離解する工程で酸を添加し、アルカリ薬品を添加せずに脱墨処理することを特徴とする上質古紙脱墨パルプの製造方法。
- 離解工程の後、脱墨処理、分散処理をこの順に行うことを特徴とする請求項1に記載の上質古紙脱墨パルプの製造方法。
- 離解工程の後、分散処理、脱墨処理をこの順に行うことを特徴とする請求項1に記載の上質古紙脱墨パルプの製造方法。
- 古紙に含まれる灰分が15%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の上質古紙脱墨パルプの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の上質古紙脱墨パルプの製造方法によって製造された、パルプの白色度が75%以上、残インク個数が200個/120mm2以下、残インク面積率が0.1%以下であることを特徴とする上質古紙脱墨パルプ。
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