JP4602168B2 - エアスライドの組立方法 - Google Patents

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Description

本発明は、直線搬送装置やX−Yステージ等に用いられるエアスライドおよびその組立方法に関する。
半導体デバイスや液晶表示装置等の製造分野においては、被処理物を高精度で移動(搬送)、位置決めするための装置として、エアスライドが用いられている(例えば、特許文献1参照)。例えば、図6(a)に、上板部101と下板部102と側板部103a,103bから構成されるスライドテーブル100の内部空間にガイドレール104が挿入された構造を有するエアスライドを示す。なお、スライドテーブル100は、上板部101と下板部102の間に側板部103a,103bを挟んでボルト等(図示せず)で固定することができる。
図6(b)は図6(a)中の領域Aを拡大して示しており、この図6(b)に示すように、スライドテーブル100の内周面とガイドレール104の外周面との間の間隙部105a(上下),105b(左右)に空気を供給することでスライドテーブル100をガイドレール104に非接触支持させ、その状態で図示しないボールネジやリニアモータによりスライドテーブル100を紙面に垂直な方向に移動させることができる。
このようなエアスライドでは、側板部103a,103bの厚さとガイドレール104の厚さを予め機械加工により調整しておくことで、スライドテーブル100の組み立て時に、上板部101および下板部102とガイドレール104との間のクリアランス(つまり、間隙部105aの幅)を所定値に設定することができるが、その際に、側板部103a,103bとガイドレール104との間のクリアランス(つまり、間隙部105bの幅)を設定するためには、側板部103a,103bを精密に位置決めする必要がある。
この間隙部105bの幅を定める方法として、例えば、上板部101と下板部102と側板部103aを強固に固定し、ガイドレール104を側板部103aに押し当て、さらにガイドレール104と側板部103bの間に間隙部105bの設定厚さの2倍の厚さの金属箔を挟み込んで側板部103bをガイドレール104に押し当てて側板部103を強固に固定し、その後に金属箔を取り除く方法等がある。また、側板部103a,103b間の距離を決める治具を用いてこれらを位置決めする方法がある。
しかしながら、上記の金属箔を用いる方法では、金属箔はガイドレール104と側板部103bの間で圧迫されているので、これを取り除くことは困難であり、金属箔を取り除く際にガイドレール104と側板部103bの表面を傷付けるおそれもある。一方、上記の治具を用いる方法では、治具の取り付けの精度が大きな問題となり、例えば、ボルトとネジ穴の位置には一定の許容誤差があるため、間隙部105bの幅を5μm以下とすることが困難である。この間隙部105bの幅が広くなると、空気の消費量が多くなり、また間隙部105bにおける空気の流れが不安定になってスライドテーブル100に振動が発生することがある。さらに、スライドテーブル100に重量物が載置された場合、スライドテーブル100の左右(図6(a)の左右)で、ぶれが大きくなる。
特開平10−263963号
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、スライドテーブルとガイドレールとの間のクリアランスを狭めたエアスライドおよびその組立方法を提供することを目的とする。
本発明は、上板部および下板部ならびにこれら上板部と下板部とを連結する二つの側板部とからなるスライドテーブルを、当該スライドテーブルの移動方向に垂直な断面の形状が長方形であるガイド部を有するガイドレールに非接触支持させて当該ガイドレールのガイド方向に移動させるエアスライドの組立方法であって、
前記上板部と前記下板部と一つの前記側板部とを連結して略コの字型の部材に組み立てる工程と、
前記コの字型の部材をその側板部が下となるように静置し、その凹み部分に前記ガイド部を挿入する工程と、
前記ガイドレールの上側に前記上板部に残る一つの前記側板部を微少可動に仮固定する工程と、
前記側板部の移動方向端にそれぞれ、前記ガイドレールと接触して前記側板部を前記ガイドレールに対して持ち上げるように変位する圧電アクチュエータを備えた間隙調整用治具を取り付ける工程と、
前記圧電アクチュエータを3μm〜10μmの範囲の所望の長さだけ伸張させて、前記側板部を前記ガイド部から持ち上げて保持し、その状態で当該側板部を前記上板部に対して強固に固定する工程と、
前記圧電アクチュエータの駆動を解除して、前記間隙調整用治具を取り外す工程と、
を有することを特徴とするエアスライドの組立方法、を提供する。
このエアスライドの組立方法では、前記下板部は二つに分かれているエアスライドの場合には、その一方の下板部が前記略コの字型の部材を組み立てる工程で用いられ、その他方の下板部は前記一つの側板部を前記上板部に対して微少可動に仮固定する工程において、前記側板部とともに前記上板部に対して微少可動に仮固定されるように用いる。
本発明によれば、スライドテーブルとガイドレールとのクリアランスを5μm以下に容易に調整して、エアスライドを組み立てることができる。このような狭いクリアランスを実現することができることによって、エアスライド使用時の空気消費量を低減し、スライドテーブルにおける振動の発生を防止し、重量物の安定した移動を行うことができるようになる。
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、所謂、馬乗り型と呼ばれるエアスライド10の概略構造を示しており、図1(a)はその正面図であり、図1(b)はその側面図であり、図1(c)は図1(a)中の領域Bの拡大図である。
エアスライド10は、スライドテーブル11と、スライドテーブル11を非接触支持するガイドレール12とを有している。スライドテーブル11は、上板部21と、2枚の下板部22a,22bと、2枚の側板部23a,23bから構成されている。上板部21と下板部22aが側板部23aを挟んでボルト31aで締め付けられて固定され、同様に、上板部21と下板部22bが側板部23bを挟んでボルト31bで締め付けられて固定されている。また、側板部23bの外側面には、後に図2を参照して説明する間隙調整用治具50を取り付けるためのネジ穴5がX方向の端部側にそれぞれ設けられている。
ガイドレール12は、スライドテーブル11を非接触支持するためのガイド部25と、ガイド部25を支える正面凸型の土台部26とを有している。スライドテーブル11には図示しないリニアモータやボールネジ等の送り装置が取り付けられ、また、スライドテーブル11には図示しない空気供給口が設けられ、その空気供給口からスライドテーブル11とガイド部25との間に空気を供給してスライドテーブル11をガイドレール12に非接触支持させた状態で、このような送り装置を駆動することにより、スライドテーブル11をX方向にスライドさせることができる。
図1(c)に示す、スライドテーブル11とガイドレール12のガイド部25との間に形成すべき上下方向の間隙部の幅d,d(エアスライド10の駆動時に形成される間隙部の幅を指し、‘d’は上板部21の下面とガイド部25の上面との間に形成される間隙部の幅、‘d’はガイド部25の下面と下板部22a・22bの上面との間に形成される間隙部の幅)は、側板部23a,23bの厚さ(Z方向厚さ)とガイド部25の厚さを機械加工で調整することにより、設定することができる。つまり、側板部23a,23bの厚さをガイド部25の厚さよりも、例えば10μmだけ厚く調整すると、エアスライド10を駆動して上板部21,下板部22a,22bがガイド部25に対して非接触状態となったときの、間隙部の幅d,dの和(d+d)が10μmとなる。なお、理想的には幅d,dはそれぞれ同じ幅値となる。
ガイド部25のY方向端面(スライドテーブル11の移動方向であるX方向と平行な1対の対向するガイド面)71と、これに対面する側板部23a,23bの内面(ガイド面)72との間に形成される間隙部の幅(クリアランスt)の調整は、図2に示す間隙調整用治具50を用いて行う。
図2は側板部23a,23bを上下に位置させた状態で間隙調整用治具50の概略構造を示した斜視図である。この間隙調整用治具50は、L字型に連結される2枚の板部材52,53と、板部材52に取り付けられた圧電アクチュエータ51とを有する。
板部材53は、スライドテーブル11を構成する側板部23bに設けられたネジ穴5に螺合させるボルトを挿通させるためのボルト孔53aと、板部材52を取り付けるためのネジ穴53bを備えている。板部材52は、板部材53の側面に形成されたネジ穴53bに螺合させるボルトを挿通させるためのボルト孔52aを備えている。圧電アクチュエータ51は、所定の電圧を印加することにより図2中の矢印の方向に伸縮するd33タイプのものであり、伸縮方向端の一方は板部材52に取り付けられている。
圧電アクチュエータ51の他端がガイド部25に密着するように、かつ、板部材52が側板部23aに密着するように、板部材53は側板部23bに強固に固定され、かつ、板部材52は板部材53に強固に固定される。なお、圧電アクチュエータ51をこのような状態で配置するために、例えば、ボルト孔52a,53aの公差が大きく取られている。
次に、この間隙調整用治具50を用いたエアスライド10の組立方法について説明する。図3はエアスライド10の組立工程を模式的に示す図である。図3の各図において、紙面に垂直な方向がX方向(図1のX方向と同じ)であり、紙面の上下方向が鉛直方向である。また、図3の各図を対比すると部品の対応は明確であるので、図毎に全ての部品に符号を付してはいない。
最初に、図3(a)に示すように、定盤40上に上板部21と下板部22aと側板部23aを並べて(つまり、図1(a)に示す状態をX方向軸回りに90度回動して横倒しにした状態として)、これらをボルト31aで締め付けて、略コの字型の部材に組み立てる。続いて図3(b)に示すように、この略コの字型の部材の凹部にガイドレール12のガイド部25を挿入する。
その後、図3(c)に示すように、側板部23bと下板部22bを上板部21に対してボルト31bを用いて可動自在に仮固定する。この状態では、側板部23bはガイド部25に載置されており、ガイド部25は側板部23a,23bの両方に密着しているので、図1(c)に示したクリアランスtは取れていない。そこで、続いて図3(d)に示すように、間隙調整用治具50を、先に図2を参照して説明した通りに、側板部23bのX方向端にそれぞれ取り付ける。また、側板部23bの鉛直方向での変位を測定することができるように、側板部23bの上面に変位センサヘッド58を配置する。この変位センサヘッド58もまた側板部23bのX方向端にそれぞれ配置することが好ましい。
そして、図3(e)に示すように、変位センサヘッド58の指示値を確認しながら圧電アクチュエータ51に電圧を印加し、圧電アクチュエータ51を伸張させて側板部23bを持ち上げ、側板部23bを一定の高さに保持する。これにより、ガイド部25と側板部23bとの間に間隙部60が形成される。例えば、エアスライド10の駆動時におけるガイド部25と側板部23a,23bとの間のクリアランスtを5μmに設定したい場合には、側板部23bを10μm持ち上げればよい。その状態で、図3(f)に示すように、側板部23bを介して上板部21と下板部22bとをボルト31bで締め付け、これらを固定する。これにより、スライドテーブル11の組み立てが終了する。
なお、予め圧電アクチュエータ51に印加する電圧と変位量との関係がわかっていれば、変位センサヘッド58を配置することなく、圧電アクチュエータ51を駆動して側板部23bを持ち上げ、上板部21と下板部22bと側板部23bとを固定することができる。
その後、図3(g)に示すように、変位センサヘッド58と間隙調整用治具50を取り外し、さらに図3(h)に示すように、スライドテーブル11とガイドレール12をX方向軸回りに90度回動させる。この図3(h)に示す状態は、図1(a)に示す状態と同じである。スライドテーブル11とガイドレール12との間に空気を供給することで、ガイド部25の側板部23a側と側板部23b側にそれぞれ同等幅の間隙部が形成される。その間隙部のクリアランスtは上記の例によれば5μmとなる。
上記エアスライド10の組立方法によるクリアランスtの調整結果について図4および図5を参照して説明する。図3(d)〜(f)にしたがって、側板部23bのX方向端にそれぞれ間隙調整用治具50を取り付け、各圧電アクチュエータ51に120Vの電圧を印加し、その状態で下板部22bと側板部23bを上板部21に対して固定し、その後に図3(h)に示した状態とする。
図4は図3(h)を左側から見た側面図である。この図4では、2つの圧電アクチュエータ51の位置をそれぞれ‘アクチュエータL’、‘アクチュエータR’で示している。組み立てたスライドテーブル11をY方向奥(紙面に垂直な方向の奥)側に押し込むと、ガイド部25と側板部23bとが接触した状態となる。この状態は、図示しない側板部23aとガイド部25との間に間隙が形成された状態でもある。
そこで、側板部23bの外面に3点の‘測定点L’、‘測定点C’、‘測定点R’を設けて各測定点L,C,Rに変位センサヘッドを取り付け、スライドテーブル11をY方向手前側へずらして、ガイド部25と図示しない側板部23aとを密着させ、逆に側板部23bとガイド部25との間に間隙部を形成させる。このとき変位センサヘッドにより測定される側板部23bのずれ変位量(移動量)の値が、側板部23a,23bとガイド部25との間に形成される間隙部の幅(クリアランスt)の2倍の値となる。
図5はその測定結果を示したグラフである。図5中の圧電アクチュエータL,Rの変位量は無負荷時の変位特性であり、120Vの電圧印加によりともに10.5μmの変位を示した。これらの圧電アクチュエータL,Rを用いてスライドテーブル11を組み立てたときの各測定点L,C,Rにおける変位量は全て10μmとなった。このことは、ガイド部25のガイド面71と側板部23a,23bのガイド面72との間のクリアランスt(図1(c)参照)を5μmに設定し、かつ、これらガイド面71,72を平行にすることができたことを示している。
同様にして、圧電アクチュエータL,Rに印加する電圧を80Vとした場合には、圧電アクチュエータL,Rの変位特性に個体差があったために、ガイド部25のガイド面71と側板部23a,23bのガイド面72とは完全に平行にはならなかった。しかし、この問題は、例えば、圧電アクチュエータLの印加電圧を下げてその変位量を圧電アクチュエータRと同じ6μmとする等、圧電アクチュエータL,Rの変位量を印加電圧の値を調整して同じとすることにより、解決することができる。また、圧電アクチュエータL,Rに印加する電圧を50Vとした場合にも、ガイド部25のガイド面71と側板部23a,23bのガイド面72とは完全に平行にはならなかったが、この問題もまた圧電アクチュエータL,Rの変位量を調整することで解決することができる。図5より、ガイド部25のガイド面71と側板部23a,23bのガイド面72との間のクリアランスtを1.5μm以上5μm以下に設定できることが確認できた。
このように、スライドテーブル11とガイドレール12との間のクリアランスtを5μm以下とすることにより、エアスライド10の使用時の空気消費量を低減することができ、また、スライドテーブル11の振動発生を防止することができ、さらに、スライドテーブル11に重量物を載置または固定した場合の移動を安定して行うことができる。
なお、圧電アクチュエータとして、図5に示した変位量よりも大きな変位量を得ることができるものを用いれば、5μmよりも広いクリアランスtでスライドテーブル11をガイド部25に対してセッティングすることができることは明らかである。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、本発明が適用されるエアスライドは、図1に示す構造のものに限られず、図6に示す構造のものであってもよい。また、スライドテーブルとして、側板部を上板部と下板部とで挟み込む構造のものを取り上げたが、上板部を側板部で挟み込む構造のものにも、本発明に係るエアスライドの組立方法を適用することができる。
間隙調整用治具50としては、図2に示されるように、板部材52の幅を板部材53の半分の幅としたものを示したが、この場合には、1枚の板部材53に対して2枚の板部材52を取り付けた構成としてもよい。その場合、4個の圧電アクチュエータ51を駆動する必要があるが、これにより側板部23bの位置調節をさらに精密に行うことができるようになる。また、板部材52は板部材53と同じ幅としてもよい。
本発明は、リニア搬送装置やX−Yテーブル等に好適である。
エアスライドの概略構造を示す正面図、側面図、正面図中の領域Bの拡大図。 間隙調整用治具の概略構造を示す斜視図。 エアスライドの組立工程を模式的に示す図。 図3(h)の側面図であって、ガイドレールのガイド部とスライドテーブルの側板部との間のクリアランスを測定するための測定点の設定を示す図。 ガイド部と側板部のクリアランスの測定結果を示すグラフ。 エアスライドの概略構造を示す断面図。
符号の説明
5;ネジ穴(間隙調整用治具取り付け部)
10;エアスライド
11;スライドテーブル
12;ガイドレール
21;上板部
22a・22b;下板部
23a・23b;側板部
25;ガイド部
26;土台部
31a・31b;ボルト
50;間隙調整用治具
51;圧電アクチュエータ
52・53;板部材
58;変位センサヘッド
60;間隙部
71・72;ガイド面
100;スライドテーブル
101;上板部
102;下板部
103a・103b;側板部
104;ガイドレール
105a・105b;間隙部

Claims (2)

  1. 上板部および下板部ならびにこれら上板部と下板部とを連結する二つの側板部とからなるスライドテーブルを、当該スライドテーブルの移動方向に垂直な断面の形状が長方形であるガイド部を有するガイドレールに非接触支持させて当該ガイドレールのガイド方向に移動させるエアスライドの組立方法であって、
    前記上板部と前記下板部と一つの前記側板部とを連結して略コの字型の部材に組み立てる工程と、
    前記コの字型の部材をその側板部が下となるように静置し、その凹み部分に前記ガイド部を挿入する工程と、
    前記ガイドレールの上側に前記上板部に残る一つの前記側板部を微少可動に仮固定する工程と、
    前記側板部の移動方向端にそれぞれ、前記ガイドレールと接触して前記側板部を前記ガイドレールに対して持ち上げるように変位する圧電アクチュエータを備えた間隙調整用治具を取り付ける工程と、
    前記圧電アクチュエータを3μm〜10μmの範囲の所望の長さだけ伸張させて、前記側板部を前記ガイド部から持ち上げて保持し、その状態で当該側板部を前記上板部に対して強固に固定する工程と、
    前記圧電アクチュエータの駆動を解除して、前記間隙調整用治具を取り外す工程と、
    を有することを特徴とするエアスライドの組立方法。
  2. 前記下板部は二つに分かれており、
    その一方の下板部は、前記略コの字型の部材を組み立てる工程で用いられ、
    その他方の下板部は、前記一つの側板部を前記上板部に対して微少可動に仮固定する工程において、前記側板部とともに前記上板部に対して微少可動に仮固定されることを特徴とする請求項1に記載のエアスライドの組立方法。
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