以下、添付図面を参照して、本発明に係るスタンパーの製造方法および情報記録媒体の製造方法の最良の形態について説明する。
最初に、情報記録媒体製造装置100の構成について、図面を参照して説明する。
図1に示す情報記録媒体製造装置100は、本発明に係る情報記録媒体の製造方法に従って図2に示す磁気ディスク1を製造する装置であって、スタンパー製造装置110、中間体製造装置120、インプリント装置130、エッチング装置140およびスパッタリング装置150を備えて構成されている。この場合、磁気ディスク1は、本発明に係る情報記録媒体に相当するディスクリートトラック型の磁気ディスク(パターンド媒体)の一例であって、垂直記録方式による記録データの記録が可能に構成されている。具体的には、図2に示すように、磁気ディスク1は、軟磁性層12、中間層13および磁性層14がディスク基材11の上にこの順で形成されている。この場合、磁性層14は、突端部(同図における上端部)から基端部(同図における下端部)までの全体が磁性材料で形成された凸部6,6・・と、凹部7,7・・とが形成されて凹凸パターン5(本発明におけるD凹凸パターンの一例)を構成する。また、凹部7,7・・には、SiO2等の非磁性材料15が埋め込まれて磁気ディスク1の表面が平坦化されている。この場合、図26に示すように、この磁気ディスク1は、平面視矩形状の複数の凹部7,7・・が例えばサーボパターン領域内のバーストパターン領域やアドレスパターン領域などに形成されている。
ディスク基材11は、一例として、ガラス板を表面研磨して厚みが0.6mm程度の円板状に形成されている。なお、磁気ディスク1に用いる基材は、ガラス基材に限定されず、アルミニウムやセラミックなどの各種非磁性材料で円板状に形成した基材を使用することができる。軟磁性層12は、CoZrNb合金などの軟磁性材料をスパッタリングすることによって厚みが100nm〜200nm程度の薄膜状に形成されている。中間層13は、磁性層14を形成するための下地層として機能する層であって、CrやCoCr非磁性合金などの中間層形成用材料をスパッタリングすることによって厚みが40nm程度の薄膜状に形成されている。磁性層14は、凹凸パターン5を構成する層であって、後述するように、例えばCoCrPt合金をスパッタリングした層に対してエッチング処理することによって凹部7,7・・が形成されている。さらに、図2に示すように、この磁気ディスク1は、凹部7,7・・に埋め込まれた非磁性材料15、および磁性層14(凸部6)の表面に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等によって厚みが2nm程度の保護層16(DLC膜)が形成されている。また、保護層16の表面には、磁気ディスク1の傷付きを回避するための潤滑剤(一例として、フォンブリン系の潤滑剤)が塗布されている。
一方、スタンパー製造装置110は、本発明に係るスタンパーの製造方法に従って図3に示すマザースタンパー50を製造する装置であって、図4に示すように、レジスト塗布装置111、ベーク処理装置112、電子線描画装置113、現像処理装置114、導電膜形成装置115、メッキ処理装置116および剥離装置117を備えて構成されている。この場合、マザースタンパー50は、本発明における「スタンパー」の一例であって、インプリント法によって磁気ディスク1を製造可能に構成されている。具体的には、図3に示すように、マザースタンパー50は、磁気ディスク1における凹凸パターン5と凹凸位置関係が反転した凹凸パターン55(本発明におけるA凹凸パターンの一例)が形成されて、図22に示すように、磁気ディスク1を製造するための中間体10に凹凸パターン65を形成(転写)可能に構成されている。このマザースタンパー50における凹凸パターン55は、凸部57,57・・が磁気ディスク1の凹凸パターン5における凹部7,7・・に対応し、凹部56,56・・が凹凸パターン5における凸部6,6・・に対応するように形成されている。したがって、図21に示すように、磁気ディスク1に平面視矩形状の凹部7,7・・を形成するための凸部57,57・・は、磁気ディスク1の凹凸パターン5における凹部7,7・・(図26参照)と同様に平面視矩形状に形成されている。
レジスト塗布装置111は、図7に示すように、シリコン基板21(本発明における基材の一例)の表面にポジ型レジストを塗布して本発明におけるレジスト層に相当する樹脂層22をシリコン基板21の上に形成する(レジスト層形成処理の実行)。ベーク処理装置112は、レジスト塗布装置111によって形成された樹脂層22に対するベーク処理を実行する。電子線描画装置113は、図8に示すように、ベーク処理装置112によるベーク処理が完了した樹脂層22に向けて所定の手順に従って電子線113aを照射することにより、マザースタンパー50に形成すべき凹凸パターン55における凹部56,56・・の平面パターンを樹脂層22に描画して潜像22aを形成する(描画処理の実行)。この場合、電子線描画装置113は、シリコン基板21を回転させる回転ステージ(図示せず)と、回転ステージを水平方向に移動させる水平動ステージ(図示せず)と、回転ステージ上のシリコン基板21に向けて電子線113aを照射する電子線照射部(図示せず)を備えている。また、電子線描画装置113は、図示しない制御部が、回転ステージによるシリコン基板21の回転速度、および水平動ステージによる回転ステージの移動を制御すると共に、電子線照射部による電子線113aの照射位置の制御や電子線113aの射出のブランキング制御等を実行することで所望のパターンを樹脂層22に描画する。
現像処理装置114は、図12に示すように、電子線描画装置113による描画処理が完了した樹脂層22を現像処理して複数の凹部31,31・・を形成することにより、樹脂層22に凹凸パターン30(本発明における第1凹凸パターンの一例)を形成する(凹凸パターン形成処理の実行)。導電膜形成装置115は、図15に示すように、樹脂層22に形成された凹凸パターン30を覆うようにして第1ニッケル層41を形成する。メッキ処理装置116は、図16に示すように、メッキ処理を実行して第1ニッケル層41の上に第2ニッケル層42を形成する。また、メッキ処理装置116は、図19に示すように、マスタースタンパー40に形成された凹凸パターン45(本発明における第2凹凸パターンの一例)を覆うようにしてニッケル層51を形成する。この場合、上記の第1ニッケル層41および第2ニッケル層42が本発明における第1スタンパー形成部材の一例であって、導電膜形成装置115およびメッキ処理装置116による両ニッケル層41,42の形成処理が本発明における第1パターン転写処理に相当する。また、上記のニッケル層51が本発明における第2スタンパー形成部材の一例であって、メッキ処理装置116によるニッケル層51の形成処理が本発明における第2パターン転写処理に相当する。剥離装置117は、シリコン基板21上の樹脂層22を除去することにより、図17に示すように、第1ニッケル層41および第2ニッケル層42の積層体(マスタースタンパー40)をシリコン基板21から剥離する。また、剥離装置117は、図20に示すように、マスタースタンパー40からニッケル層51(マザースタンパー50)を剥離する。
また、中間体製造装置120は、磁気ディスク1を製造するための中間体10(本発明における「情報記録媒体製造用基材」の一例:図6参照)を製造する装置であって、図5に示すように、スパッタリング装置121、レジスト塗布装置122およびベーク処理装置123を備えて構成されている。スパッタリング装置121は、ディスク基材11の上に軟磁性材料をスパッタリングして軟磁性層12を形成する処理と、軟磁性層12の上に中間層形成用材料をスパッタリングして中間層13を形成する処理と、中間層13の上に磁性材料をスパッタリングして磁性層14を形成する処理と、磁性層14の上にマスク層形成材料をスパッタリングしてマスク層17を形成する処理とを実行する。レジスト塗布装置122は、スパッタリング装置121によって形成されたマスク層17の上にレジストを塗布して樹脂層18(レジスト層:本発明における凹凸パターン転写層の一例)を形成する。ベーク処理装置123は、レジスト塗布装置122によって形成された樹脂層18に対するベーク処理を実行する。さらに、インプリント装置130は、スタンパー製造装置110によって製造されたマザースタンパー50と、中間体製造装置120によって製造された中間体10とを用いてインプリント法によって凹凸パターン65(マスクパターン:図23参照)を中間体10に形成(転写)する。
また、エッチング装置140は、インプリント装置130によって凹凸パターン65が形成された樹脂層18をマスクとして用いて中間体10に対するエッチング処理を実行することによって凹凸パターン65と凹凸位置関係が一致する凹凸パターン75(マスクパターン:図24参照)をマスク層17に形成する。さらに、エッチング装置140は、凹凸パターン75が形成されたマスク層17をマスクとして用いて中間体10に対するエッチング処理を実行することによって凹凸パターン75と凹凸位置関係が一致する凹凸パターン5(本発明におけるD凹凸パターン:図25参照)を磁性層14に形成する。また、エッチング装置140は、スパッタリング装置150によって形成される非磁性材料15の層に対するエッチング処理を実行して磁気ディスク1の表面を平滑化する。さらに、スパッタリング装置150は、図27に示すように、凹凸パターン5を覆うようにして非磁性材料15をスパッタリングして中間体10の上に非磁性材料15の層を形成する。
次に、情報記録媒体製造装置100による磁気ディスク1の製造方法について、図面を参照して説明する。
最初に、中間体製造装置120による中間体10の製造方法について説明する。図6に示す中間体10の製造に際しては、まず、スパッタリング装置121がディスク基材11の上にCoZrNb合金(非磁性材料の一例)をスパッタリングすることによってディスク基材11の上に軟磁性層12を形成した後に、軟磁性層12の上に中間層形成用材料をスパッタリングすることによって中間層13を形成する。次いで、スパッタリング装置121が中間層13の上にCoCrPt合金(磁性材料の一例)をスパッタリングすることによって厚みが15nm程度の磁性層14を形成した後に、磁性層14の上にマスク層形成用材料をスパッタリングすることによってマスク層17を形成する。続いて、レジスト塗布装置122がマスク層17の上にレジストをスピンコートして厚みが80nm程度の樹脂層18(レジスト層:本発明における凹凸パターン転写層)を形成する。次いで、ベーク処理装置123がレジスト塗布装置122によって形成された樹脂層18に対するベーク処理を実行する。これにより、図6に示すように、中間体10が完成する。
次いで、スタンパー製造装置110によるマザースタンパー50の製造方法について説明する。マザースタンパー50の製造に際しては、図7に示すように、まず、レジスト塗布装置111がベーク処理後の厚みが100nm程度となるようにポジ型レジストをシリコン基板21の上にスピンコートして(塗布して)シリコン基板21の上に樹脂層(レジスト層)22を形成する(本発明におけるレジスト層形成処理)。次いで、ベーク処理装置112がレジスト塗布装置111によって形成された樹脂層22に対してベーク処理を実行する。
続いて、電子線描画装置113が、マザースタンパー50の凹凸パターン55における凹部56,56・・の平面パターンを描画する。具体的には、図8に示すように、電子線描画装置113の電子線照射部が回転ステージ上のシリコン基板21(樹脂層22)に向けて電子線113aを照射する。この際に、電子線描画装置113の制御部は、回転ステージを制御してシリコン基板21の回転速度を一定に維持しつつ、電子線照射部を制御して電子線113aの射出をブランキング制御することにより、図9に示すように、後述する現像処理によって凹凸パターン30の凸部32,32・・が形成されるべき領域(同図において破線で囲んだ領域:凸部形成領域)の周囲(後の工程でマザースタンパー50における凹凸パターン55の凹部56,56・・が形成される領域)に電子線113aを照射させて凹凸パターン55における凹部56,56・・の平面パターン(トラックパターンおよびサーボパターン)を描画させる(平面パターンに対応する潜像22aの形成)。
この場合、制御部は、平面パターンを描画すべき領域(潜像22aを形成すべき領域)をシリコン基板21の回転方向に沿った複数の帯状領域に分けて電子線113aを順次照射することで樹脂層22に平面パターンを描画する。具体的には、図9に示すように、制御部は、回転ステージによってシリコン基板21を矢印Rの向きで回転させた状態で電子線照射部を制御することにより、位置P11から位置P12まで樹脂層22に向けて電子線113aを照射させることで領域A11に潜像22aを形成する。同様にして、位置P21から位置P22まで樹脂層22に向けて電子線113aを照射させることで領域A21に潜像22aを形成する。このように、回転ステージを制御してシリコン基板21を回転させつつ、電子線照射部を制御して電子線113aの射出をブランキング制御することにより、領域A31,A32・・,A71,A81・・に潜像22aを順次形成する。なお、電子線113aの強度がガウス分布しているため、実際には、図10に示すように、上記の領域A11,A21・・の周囲(同図における領域Aa21〜Aa41等)を含む領域Aa内に電子線113aの照射による潜像22aが形成される。この結果、図11に示すように、領域A11,A21・・とその周囲とを含む領域Abに潜像22aが形成される。この場合、図10に示すように、例えば、領域Aa21と領域Aa31とが重なり合う領域Ax1や、領域Aa31と領域Aa41とが重なり合う領域Ax2などにおいては、電子線113aの照射による影響(樹脂層22の化学的変化の度合い)が大きくなっている。
次いで、現像処理装置114が樹脂層22に対する現像処理を実行することにより、図12に示すように、潜像22aの部位(電子線113aの照射領域)を消失させて凹部31,31・・を形成し、樹脂層22からなる凸部32,32・・と凹部31,31・・とを有する凹凸パターン30をシリコン基板21の上に形成する(本発明における凹凸パターン形成処理)。この際には、図13に示すように、領域A11,A21・・と、領域Ax1,Ax2・・等の一部とが消失するように現像液の成分や温度、および現像液に浸す時間等を適宜調節する。これにより、図14に示すように、電子線113aの照射開始位置(前述した位置P31,P33・・,P61,P63・・等:図9参照)、および電子線113aの照射停止位置(前述した位置P32,P34・・,P62,P64・・等:図9参照)において平面視矩形状の凸部32,32・・を含む各凸部32,32・・の4つの角部が突端部から基端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成された凹凸パターン30がシリコン基板21上に形成される。
続いて、図15に示すように、導電膜形成装置115が凹凸パターン30の凸部32,32・・および凹部31,31・・を覆うようにして厚みが30nm程度の第1ニッケル層41をスパッタリング法によって形成する。次いで、図16に示すように、メッキ処理装置116が、第1ニッケル層41を電極として使用してめっき処理を実行することにより、第1ニッケル層41の上に第2ニッケル層42を形成する。この際には、樹脂層22に形成された凹凸パターン30が両ニッケル層41,42の積層体に転写されて凹凸パターン30における凸部32,32・・の部位に凹部47,47・・が形成されると共に、凹凸パターン30における凹部31,31・・の部位に凸部46,46・・が形成されてニッケル層41,42の積層体に凹凸パターン45が形成(転写)される(第1パターン転写処理)。続いて、剥離装置117が、シリコン基板21から両ニッケル層41,42の積層体を剥離する。この際に、剥離装置117は、シリコン基板21、樹脂層22および両ニッケル層41,42の積層体をレジスト剥離液に浸すことにより、両ニッケル層41,42の積層体とシリコン基板21との間の樹脂層22を除去する。これにより、図17に示すように、ニッケル層41,42の積層体がシリコン基板21から剥離されて、マスタースタンパー40が完成する。この場合、前述したように、シリコン基板21上に形成された凹凸パターン30における平面視矩形状の凸部32,32・・を含む各凸部32,32・・の各角部が突端部から基端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成されているため、この凹凸パターン30が転写された上記の凹凸パターン45は、図18に示すように、凹凸パターン30の凸部32,32・・に対応する平面視矩形状の凹部47,47・・を含む各凹部47,47・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成される。
次いで、マスタースタンパー40を使用してマザースタンパー50を製作する。具体的には、まず、マスタースタンパー40に対する表面処理を実行することにより、マスタースタンパー40における凹凸パターン45の形成面に酸化膜を形成する(図示せず)。次いで、図19に示すように、メッキ処理装置116が、マスタースタンパー40に対するメッキ処理を実行することによって凹凸パターン45を覆うようにしてニッケル層51を形成する。この際には、マスタースタンパー40の凹凸パターン45がニッケル層51に転写されて凸部46,46・・の部位に凹部56,56・・が形成されると共に、凹部47,47・・の部位に凸部57,57・・が形成されてニッケル層51に凹凸パターン55が形成(転写)される(第2パターン転写処理)。この後、図20に示すように、剥離装置117がニッケル層51からマスタースタンパー40を剥離して所定の大きさに打ち抜き処理した後に、図示しない研磨装置が、ニッケル層51の裏面(凹凸パターン55の形成面に対する裏面)を研磨処理して平坦化することにより、図3に示すように、マザースタンパー50が完成する。この場合、前述したように、マスタースタンパー40に形成された凹凸パターン45における平面視矩形状の凹部47,47・・を含む各凹部47,47・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部までシャープに形成されているため、この凹凸パターン45が転写された上記の凹凸パターン55は、図21に示すように、凹凸パターン45の凹部47,47・・に対応する平面視矩形状の凸部57,57・・を含む各凸部57,57・・の各角部が突端部から基端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成される。以上により、本発明に係るスタンパーの製造方法によるマザースタンパー50の製造が完了する。
この場合、後述する磁気ディスク1の製造に際しては、上記のマザースタンパー50に代えて、スタンパー50A(図3参照)を使用することもできる。このスタンパー50Aは、上記のマザースタンパー50を複製元として用いたパターン転写処理を任意の偶数回に亘って繰り返して実行することによってマザースタンパー50と凹凸位置関係が一致するように形成されている。具体的には、例えば、マザースタンパー50を複製元とするパターン転写処理(マザースタンパー50の凹凸パターン55をニッケル層等に転写して凹凸パターン55と凹凸位置関係が反転した凹凸パターンを形成する処理)を実行してマザースタンパー50と凹凸位置関係が反転した凹凸パターンを有するスタンパー(図示せず)を製作する。次いで、製作したスタンパーを用いたパターン転写処理(製作したスタンパーの凹凸パターンをニッケル層53等に転写して凹凸パターン55と凹凸位置関係が一致する凹凸パターン55a(本発明におけるB凹凸パターンの一例)を形成する処理)を実行する。これにより、図3に示すように、マザースタンパー50における凹部56,56・・および凸部57,57・・に対応して凹部56a,56a・・および凸部57a,57a・・がニッケル層53に形成されてマザースタンパー50と凹凸位置関係が一致するスタンパー50Aが完成する。このように製造したスタンパー50Aは、前述したマザースタンパー50よりも1枚当りの製造コストが十分に安価であるため、このスタンパー50Aを使用することで、磁気ディスク1の製造コストを十分に低下させることができる。
続いて、中間体10およびマザースタンパー50を用いて磁気ディスク1を製造する方法について説明する。磁気ディスク1の製造に際しては、まず、中間体10およびマザースタンパー50をインプリント装置130にセットして、マザースタンパー50の凹凸パターン55を中間体10の樹脂層18にインプリント法によって転写する。具体的には、図22に示すように、インプリント装置130が、マザースタンパー50における凹凸パターン55の形成面を中間体10の樹脂層18に押し付けることにより、凹凸パターン55の凸部57,57・・を中間体10の樹脂層18に押し込む。この際には、凸部57,57・・が押し込まれた部位のレジスト(樹脂層18)が凹凸パターン55における凹部56,56・・内に向けて移動する。この結果、マザースタンパー50における凸部57,57・・が押し込まれた部位に凹部67,67・・が形成されると共に、凹部56,56・・の部位にレジスト(樹脂層18)からなる凸部66,66・・が形成される。次いで、インプリント装置130が中間体10からマザースタンパー50を剥離させ、さらに、底面に残存する樹脂(図示せず)を酸素プラズマ処理によって除去することにより、図23に示すように、中間体10におけるマスク層17の上に凹凸パターン55と凹凸位置関係が反転した凹凸パターン65が形成される。
次いで、エッチング装置140が、上記の凹凸パターン65(樹脂層18)をマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、凹凸パターン65における凹部67,67・・の底部においてマスク(凸部66,66・・)から露出しているマスク層17をエッチングして、図24に示すように、凸部76および凹部77を有する凹凸パターン75を中間体10のマスク層17に形成する。続いて、エッチング装置140が、凹凸パターン75(マスク層17)をマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、凹凸パターン75における凹部77,77・・の底部においてマスク(凸部76,76・・)から露出している磁性層14をエッチングして、図25に示すように、凸部6および凹部7を有する凹凸パターン5を中間体10の磁性層14に形成する。これにより、データトラックパターンおよびサーボパターン(凹凸パターン5:本発明におけるD凹凸パターン)が中間層13の上に形成される。次いで、凸部6,6・・の上に残存しているマスク層17に対して選択的にエッチング処理を行うことにより、残存しているマスク層17を完全に除去して凸部6,6・・の突端面を露出させる。
この場合、前述したように、マザースタンパー50に形成された凹凸パターン55における平面視矩形状の凸部57,57・・を含む各凸部57,57・・の各角部が突端部から基端部までシャープになるように凹部56,56・・が形成されているため、この凹凸パターン55が転写された凹凸パターン65は、凹凸パターン55の凸部57,57・・に対応する平面視矩形状の凹部67,67・・を含む各凹部67,67・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成される。したがって、この凹凸パターン65をマスクとして用いて形成した凹凸パターン75についても、凹凸パターン65と同様にして、凹凸パターン55の凸部57,57・・に対応する平面視矩形状の凹部77,77・・を含む各凹部77,77・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成される。この結果、図26に示すように、この凹凸パターン75をマスクとして用いて形成した凹凸パターン5についても、凹凸パターン55の凸部57,57・・に対応する平面視矩形状の凹部7,7・・を含む各凹部7,7・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部までシャープになるように凸部6,6・・が形成される。これにより、例えば、バーストパターン等を構成する平面視矩形状の凹部7,7・・を含む各凹部7,7・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成されて、磁性層14に凹凸パターン5が形成される。
次いで、図27に示すように、スパッタリング装置150が凹凸パターン5を覆うようにして非磁性材料15としてのSiO2をスパッタリングする。この際には、非磁性材料15によって凹部7,7・・が完全に埋め尽くされ、かつ、凸部6,6・・の上に例えば厚みが60nm程度の非磁性材料15の層が形成されるように、非磁性材料15を十分にスパッタリングする。続いて、エッチング装置140が、磁性層14の上(凸部6,6・・の上および凹部7,7の上)の非磁性材料15の層に対してイオンビームエッチング処理を実行することにより、図28に示すように、凹凸パターン5の各凸部6,6・・の突端面を露出させる。これにより、非磁性材料15の層に対するイオンビームエッチング処理が完了して中間体10の表面が平坦化される。続いて、CVD装置(図示せず)が、中間体10の表面を覆うようにしてCVD法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜を成膜することによって保護層16を形成する。この後、保護層16の表面にフォンブリン系の潤滑剤を平均厚さが例えば2nm程度となるように塗布する。これにより、図2に示すように、磁気ディスク1が完成する。
このように、上記のスタンパー製造装置110によるスタンパーの製造方法では、レジスト塗布装置111がポジ型レジストを塗布して樹脂層(レジスト層)22を形成し(レジスト層形成処理)、電子線描画装置113がマザースタンパー50の凹凸パターン55(A凹凸パターン)における各凸部57,57・・を形成すべき領域(この例では、矩形状の領域:凸部形成領域)の周囲にシリコン基板21(樹脂層22)を回転させつつ電子線113aを照射して凹凸パターン55における凹部56の平面パターンを描画し(描画処理)、現像処理装置114が現像処理によって樹脂層22に凹凸パターン30(第1凹凸パターン)を形成し(凹凸パターン形成処理)、導電膜形成装置115およびメッキ処理装置116が第1ニッケル層41および第2ニッケル層42(第1スタンパー形成部材)に凹凸パターン30を転写して凹凸パターン45(第2凹凸パターン)を形成し(第1パターン転写処理)、メッキ処理装置116がニッケル層51(第2スタンパー形成部材)に凹凸パターン45を転写して凹凸パターン55を形成して(第2パターン転写処理)平面視矩形状の凸部57,57・・を含む複数の凸部57,57・・を有する凹凸パターン55を備えたマザースタンパー50を製造するときに、上記の描画処理に際してシリコン基板21(樹脂層22)の回転方向において隣り合う2つの凸部形成領域の間を回転方向に沿った複数の領域A31,A32・・,A61,A62・・に分けて電子線113aを照射する。
したがって、このスタンパー製造装置110によるスタンパーの製造方法によれば、凹凸パターン55における凹部56の平面パターンを描画する際に、凸部57に対応する領域(凸部形成領域)の角部をシャープに形成することができる。この結果、描画処理が完了した樹脂層22を現像処理した際に、各角部が突端部から基端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成された凸部32,32・・が形成されてシリコン基板21上に凹凸パターン30が形成されるため、この凹凸パターン30を両ニッケル層41,42・・に転写した際に(マスタースタンパー40を製作した際に)、平面視矩形状の凹部47,47・・を含む各凹部47,47・・の各角部を開口面側の端部から底面側の端部までシャープに形成することができる。このため、このマスタースタンパー40の凹凸パターン45をニッケル層51に転写した際に(マザースタンパー50を製造した際に)、平面視矩形状の凸部57,57・・を含む各凸部57,57・・の各角部を突端部から基端部までシャープに形成することができる。これにより、磁気ディスク1の製造に際してこのマザースタンパー50を使用することで、中間体10に形成される平面視矩形状の凹部67,67・・を含む各凹部67,67・・の各角部を開口面側の端部から底面側の端部までシャープに形成することができるため、磁性層14に形成される平面視矩形状の凹部7,7・・を含む各凹部7,7・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成される。したがって、この製造方法によれば、各種信号を正確に読み取り可能な磁気ディスク1を製造し得るマザースタンパー50を製造することができる。この場合、描画処理に際して矩形状の領域(凸部形成領域)における角部をシャープに形成することができるため、上記の製造方法に従って製造したマザースタンパー50を使用して磁気ディスク1を製造することで、例えば、バーストパターンやアドレスパターンのような平面視矩形状の凹部7,7・・が多数存在するサーボパターンを高精度で形成することができる。
また、上記の情報記録媒体製造装置100による磁気ディスク1の製造方法によれば、インプリント装置130がスタンパー製造装置110によって製造されたマザースタンパー50における凹凸パターン55(A凹凸パターン)を中間体10の樹脂層18(情報記録媒体製造用基材の凹凸パターン転写層)に転写して凹凸パターン65を形成し、その後に、凹凸パターン65が形成された樹脂層18をマスクとしたエッチング処理、および凹凸パターン75が形成されたマスク層17をマスクとしたエッチング処理を実行して凹部7,7・・を有する凹凸パターン5(D凹凸パターン)を中間体10に形成することにより、各角部が突端部から基端部までシャープに形成された各凸部57,57・・を樹脂層18に転写することで、中間体10に形成される各凹部67,67・・の各角部を開口面側の端部から底面側の端部までシャープに形成することができるため、磁性層14に形成される平面視矩形状の凹部7,7・・を含む各凹部7,7・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成される。これにより、各種信号を正確に読み取り可能な磁気ディスク1を製造することができる。この場合、マザースタンパー50に形成された平面視矩形状の各凸部57,57・・の各角部が突端部から基端部までシャープであるため、このマザースタンパー50を使用して磁気ディスク1を製造することで、例えば、バーストパターンやアドレスパターンのような平面視矩形状の凹部7,7・・が多数存在するサーボパターンを高精度で形成することができる。
この場合、上記のマザースタンパー50に代えて、前述したスタンパー50Aを使用して磁気ディスク1を製造したときには、マザースタンパー50を使用して製造したときと同様にして、各種信号を正確に読み取り可能な磁気ディスク1を製造することができると共に、スタンパー50Aの1枚当りの製造コストがマザースタンパー50よりも十分に安価であるため、このスタンパー50Aを使用することで、磁気ディスク1の製造コストを十分に低下させることができる。
なお、上記の磁気ディスク1の製造方法では、中間体10における磁性層14と樹脂層18との間にマスク層17が存在するため、パターン複製処理を2度に亘って実行することで樹脂層18に形成した凹凸パターン65が磁性層14に凹凸パターン5として複製されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、磁性層14と樹脂層18との間に他の層が介在していないときには、1回のパターン複製処理(樹脂層18をマスクとする磁性層14のエッチング処理)を実行するだけで凹凸パターン65の複製(凹凸パターン5の形成)が完了する。また、磁性層14と樹脂層18との間にN層(Nは自然数)のマスク層が存在するときには、M回(M=N+1)のパターン複製処理を実行することによって凹凸パターン65が磁性層14に凹凸パターン5として複製される。この場合、樹脂層18と磁性層14との間のマスク層の要否や形成数については、一例として、磁性層14をエッチングするためのエッチングガスによる各マスク層(樹脂層18を含む)のエッチングレートにより決定される。具体的には、例えば、樹脂層18のエッチングレートが、磁性層14に十分な深さの凹部7,7・・を形成可能なエッチングレート(十分な深さの凹部7,7・・が形成されるまで樹脂層18が消失することのないエッチングレート)の場合には、上記のマスク層17等が不要となる。これに対して、十分な深さの凹部7,7・・が形成される以前における樹脂層18の消失を回避する場合には、上記の磁気ディスク1と同じようにして、まず、樹脂層18に転写した凹凸パターンを磁性層14よりもエッチングレートの低いマスク層17に複製し、このマスク層17を用いて磁性層14に凹凸パターン5として複製することにより、凹凸パターン65と凹凸位置関係が一致する凹凸パターン5を磁性層14に複製する。また、インプリント法によるパターンの転写に限定されず、射出成形法によるパターンの転写や、スピンコート法等の各種塗布処理(パターン転写層形成用の材料をスタンパーに塗布する処理)によってパターンを転写することもできる。
さらに、上記の磁気ディスク1の製造方法では、シリコン基板21上に形成した凹凸パターン30を覆うようにして第1ニッケル層41および第2ニッケル層42を順次形成することで凹凸パターン30を両ニッケル層41,42に転写しているが、本発明はこれに限定されない。具体的には、まず、シリコン基板21上に形成した凹凸パターン30(樹脂層22)をマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、図29に示すように、凹凸パターン30における凹部31,31・・の底面において樹脂層22(凸部32,32・・)から露出しているシリコン基板21(本発明における「レジスト層よりも下層の所定層」の一例)に凹部31a,31a・・を形成し、上記の凹凸パターン30と凹凸位置関係が一致する凹凸パターン30a(本発明における第3凹凸パターン)をシリコン基板21に形成する(パターン複製処理)。次いで、図30に示すように、この凹凸パターン30aを覆うようにして両ニッケル層41,42を順次形成することで凹凸パターン30aを両ニッケル層41,42の積層体に転写する。この場合、前述したように、凹凸パターン30における平面視矩形状の凸部32,32・・を含む各凸部32,32・・の各角部が突端部から基端部までシャープになるように凹部31,31・・が形成されているため、この凹凸パターン30をマスクとしてシリコン基板21に形成した凹凸パターン30aは、平面視矩形状の凸部32a,32a・・を含む各凸部32a,32a・・の各角部が突端部から基端部までシャープになるように凹部31a,31a・・が形成される。したがって、この凹凸パターン30aを両ニッケル層41,42の積層体に転写することで、前述した製造方法によって形成される凹凸パターン45と同様に各角部が開口面側の端部から底面側の端部までシャープに形成された平面視矩形状の凹部47,47・・を含む各凹部47,47・・と凸部46,46・・とを有する凹凸パターン45をマスタースタンパー40に形成することができる。これにより、前述した製造方法によって製造されるマスタースタンパー40を用いた場合と同様にして、平面視矩形状の凸部57,57・・を含む各凸部57,57・・の各角部が突端部から基端部までシャープなマザースタンパー50を作製することができる。
したがって、シリコン基板21に凹凸パターン30aを形成して両ニッケル層41,42に凹凸パターン45を形成するスタンパーの製造方法によれば、前述した情報記録媒体製造装置100によるマザースタンパー50の製造方法と同様にして、凹凸パターン55における凹部56の平面パターンを描画する際に、凸部57に対応する領域(凸部形成領域)の角部をシャープに形成することができる。この結果、描画処理が完了した樹脂層22を現像処理した際に、各角部が突端部から基端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成された各凸部32,32・・が形成されてシリコン基板21上に凹凸パターン30が形成されるため、この凹凸パターン30をマスクとして用いてシリコン基板21に凹凸パターン30aを形成することで、各凸部32a,32a・・の各角部を突端部から基端部までシャープに形成することができる。これにより、この凹凸パターン30aを両ニッケル層41,42・・に転写した際に(マスタースタンパー40を製作した際に)、各凹部47,47・・の各角部を開口面側の端部から底面側の端部までシャープに形成することができるため、このマスタースタンパー40の凹凸パターン45をニッケル層51に転写した際に(マザースタンパー50を製造した際に)、各凸部57,57・・の各角部を突端部から基端部までシャープに形成することができる。これにより、磁気ディスク1の製造に際してこのマザースタンパー50を使用することで、中間体10に形成される各凹部67,67・・の各角部を開口面側の端部から底面側の端部までシャープに形成することができる結果、磁性層14に形成される平面視矩形状の凹部7,7・・を含む各凹部7,7・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成される。したがって、この製造方法によれば、各種信号を正確に読み取り可能な磁気ディスク1を製造し得るマザースタンパー50を製造することができる。この場合、情報記録媒体製造装置100によるマザースタンパー50の製造方法と同様にして、この製造方法に従って製造したマザースタンパー50を使用して磁気ディスク1を製造することで、例えば、バーストパターンやアドレスパターンのような平面視矩形状の凹部7,7・・が多数存在するサーボパターンを高精度で形成することができる。
次いで、情報記録媒体の製造方法の他の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、前述した磁気ディスク1の製造過程において使用または製作した各種構成要素と共通の構成要素については、共通の符号を付して重複する説明を省略する。
図31に示す情報記録媒体製造装置100Aは、図2に示す磁気ディスク1を製造する装置であって、スタンパー製造装置110、中間体製造装置120、インプリント装置130、エッチング装置140、スパッタリング装置150およびレジスト除去装置160を備えて構成されている。この場合、中間体製造装置120は、前述した情報記録媒体製造装置100における中間体製造装置120とは異なり、図32に示す中間体10A(「情報記録媒体製造用基材」の他の一例)を製造可能に構成されている。具体的には、この情報記録媒体製造装置100Aにおける中間体製造装置120のスパッタリング装置121は、ディスク基材11の上に軟磁性材料をスパッタリングして軟磁性層12を形成する処理と、軟磁性層12の上に中間層形成用材料をスパッタリングして中間層13を形成する処理と、中間層13の上に磁性材料をスパッタリングして磁性層14を形成する処理とを実行する。また、レジスト塗布装置122は、スパッタリング装置121によって形成された磁性層14の上にレジストを塗布して樹脂層(レジスト層:凹凸パターン転写層の一例)18を形成する。
さらに、インプリント装置130は、スタンパー製造装置110によって製造されたマスタースタンパー40(スタンパーを製造している過程において第2凹凸パターンが形成された第1スタンパー形成部材の一例)と、中間体製造装置120によって製造された中間体10Aとを用いてインプリント法によって凹凸パターン85(マスクパターン:図35参照)を中間体10Aに形成(転写)する(パターン転写処理の実行)。なお、このマスタースタンパー40の使用に際しては、その裏面を表面研磨処理するのが好ましい。
この場合、この情報記録媒体製造装置100Aでは、上記のようにマスタースタンパー40を用いて中間体10Aに凹凸パターン85を形成するが、このマスタースタンパー40に代えて図33に示すスタンパー40Aを使用することもできる。このスタンパー40Aは、上記のマスタースタンパー40を複製元として用いたパターン転写処理を任意の偶数回に亘って繰り返して実行することによってマスタースタンパー40と凹凸位置関係が一致するように形成されている。具体的には、例えば、マスタースタンパー40を複製元とするパターン転写処理を実行して前述したマザースタンパー50を製作し、次いで、マザースタンパー50を用いたパターン転写処理(マザースタンパー50の凹凸パターン55をニッケル層43等に転写して凹凸パターン55と凹凸位置関係が反転した凹凸パターン45aを形成する処理)を実行することでマスタースタンパー40と凹凸位置関係が一致するスタンパー40Aを製造する。これにより、マスタースタンパー40の凸部46,46・・に対応して凸部46a,46a・・が形成されると共に、凹部47,47・・に対応して凹部47a,47a・・が形成されてスタンパー40Aが完成する。この結果、1枚当りの製造コストが比較的高いマスタースタンパー40を用いて複数のスタンパー40A,40A・・を安価に製造し、マスタースタンパー40よりも安価なスタンパー40Aを用いて磁気ディスク1を安価に製造することが可能となる。
また、エッチング装置140は、後述するようにレジスト除去装置160によって磁性層14上に形成された凹凸パターン75(マスク層17:図24参照)をマスクとして用いて中間体10Aに対するエッチング処理を実行することによって凹凸パターン75と凹凸位置関係が一致する凹凸パターン5(図25参照)を磁性層14に形成する。さらに、スパッタリング装置150は、図36に示すように、凹凸パターン85上にマスク層形成材料をスパッタリングしてマスク層17を形成すると共に、図27に示すように、凹凸パターン5を覆うようにして非磁性材料15をスパッタリングして非磁性材料15の層を形成する。また、レジスト除去装置160は、スパッタリング装置150によってマスク層17が形成された状態の中間体10Aに対するレジスト除去処理を実行することにより、樹脂層18上に形成されているマスク層17と共に磁性層14上から樹脂層18を除去して磁性層14上に凹凸パターン75(図24参照)を形成する(パターン反転処理の実行)。
次に、情報記録媒体製造装置100Aによる磁気ディスク1の製造方法について、図面を参照して説明する。
最初に、中間体製造装置120による中間体10Aの製造方法について説明する。中間体10Aの製造に際しては、まず、中間体製造装置120のスパッタリング装置121がディスク基材11の上に、軟磁性層12、中間層13および磁性層14をこの順で形成する。次いで、レジスト塗布装置122が磁性層14の上にレジストをスピンコートして厚みが80nm程度の樹脂層18を形成する。続いて、ベーク処理装置123がレジスト塗布装置122によって形成された樹脂層18に対するベーク処理を実行する。これにより、図32に示すように、中間体10Aが完成する。
次いで、中間体10Aおよびマスタースタンパー40を用いて磁気ディスク1を製造する方法について説明する。なお、マスタースタンパー40の製造方法については前述した製造方法と同様のため、その説明を省略する。磁気ディスク1の製造に際しては、まず、中間体10Aおよびマスタースタンパー40をインプリント装置130にセットして、マスタースタンパー40の凹凸パターン45を中間体10Aの樹脂層18にインプリント法によって転写する。具体的には、図34に示すように、インプリント装置130が、マスタースタンパー40における凹凸パターン45の形成面を中間体10Aの樹脂層18に押し付けることにより、凹凸パターン45の凸部46,46・・を中間体10Aの樹脂層18に押し込む。この際には、凸部46,46・・が押し込まれた部位のレジスト(樹脂層18)が凹凸パターン45における凹部47,47・・内に向けて移動する。この結果、マスタースタンパー40における凸部46,46・・が押し込まれた部位に凹部86,86・・が形成されると共に、凹部47,47・・の部位にレジスト(樹脂層18)からなる凸部87,87・・が形成される。次いで、インプリント装置130が中間体10Aからマスタースタンパー40を剥離させ、さらに、底面に残存する樹脂(図示せず)を酸素プラズマ処理によって除去することにより、図35に示すように、中間体10Aにおける磁性層14の上に凹凸パターン45と凹凸位置関係が反転した凹凸パターン85が形成される(パターン転写処理)。
続いて、図36に示すように、スパッタリング装置150が凹凸パターン85の上(凸部87における突端面の上と、凹部86における底面の上)にマスク層形成用材料をスパッタリングすることによってマスク層17を形成する。次いで、レジスト除去装置160が中間体10Aに対するレジスト除去処理を実行する(パターン反転処理の実行)。この際には、樹脂層18上に形成されているマスク層17と共に樹脂層18が磁性層14上から除去され、図24に示すように、磁性層14上に凹凸パターン75が形成される。続いて、前述した情報記録媒体製造装置100による磁気ディスク1の製造工程と同様にして、エッチング装置140が、凹凸パターン75(マスク層17)をマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、凹凸パターン75における凹部77,77・・の底部においてマスク(凸部76,76・・)から露出している磁性層14をエッチングして、図25に示すように、凸部6および凹部7を有する凹凸パターン5を中間体10Aの磁性層14に形成する。これにより、データトラックパターンおよびサーボパターン(凹凸パターン5)が中間層13の上に形成される。次いで、凸部6,6・・の上に残存しているマスク層17に対して選択的にエッチング処理を行うことにより、残存しているマスク層17を完全に除去して凸部6,6・・の突端面を露出させる。
この場合、前述したように、マスタースタンパー40に形成された凹凸パターン45における平面視矩形状の凹部47,47・・を含む各凹部47,47・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成されているため、この凹凸パターン45が転写された凹凸パターン85は、上記の各凹部47,47・・に対応する各凸部87,87の各角部が突端部から基端部までシャープになるように凹部86,86・・が形成される。したがって、この凹凸パターン85を用いて形成した凹凸パターン75についても、凹凸パターン45の各凹部47,47・・に対応する各凹部77,77・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部までシャープになるように凸部76,76・・が形成される。この結果、図26に示すように、前述した情報記録媒体製造装置100によって形成される凹凸パターン5と同様にして、この情報記録媒体製造装置100Aによって形成した凹凸パターン75をマスクとして用いて形成した凹凸パターン5についても、凹凸パターン45の各凹部47,47・・に対応する各凹部7,7・・(平面視矩形状の凹部7,7・・を含む各凹部7,7・・)の各角部が開口面側の端部から底面側の端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成される。これにより、例えば、バーストパターンを構成する平面視矩形状の凹部7,7・・を含む各凹部7,7・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成されて、磁性層14に凹凸パターン5が形成される。
この後、スパッタリング装置150が凹凸パターン5を覆うようにして非磁性材料15の層を形成し、エッチング装置140が磁性層14の上(凸部6,6・・の上および凹部7,7の上)の非磁性材料15の層に対してイオンビームエッチング処理を実行して凹凸パターン5の各凸部6,6・・の突端面を露出させ、CVD装置(図示せず)が、中間体10Aの表面を覆うようにして保護層16を形成する。次いで、保護層16の表面にフォンブリン系の潤滑剤を平均厚さが例えば2nm程度となるように塗布することにより、図2に示すように、磁気ディスク1が完成する。
このように、この情報記録媒体製造装置100Aによる磁気ディスク1の製造方法では、スタンパー製造装置110における導電膜形成装置115およびメッキ処理装置116によって凹凸パターン30が転写された第1ニッケル層41および第2ニッケル層42(第1スタンパー形成部材:マスタースタンパー40)をスタンパーとして用いて、インプリント装置130が中間体10Aの樹脂層18(情報記録媒体製造用基材の凹凸パターン転写層)にマスタースタンパー40の凹凸パターン45(第2凹凸パターン)を転写して凹凸パターン85を形成し、その後に、パターン反転処理の一例として、スパッタリング装置150が凹凸パターン85を覆うようにしてマスク層17を形成し、レジスト除去装置160が中間体10Aの樹脂層18を除去することで凹凸パターン85の凹凸形状を反転させた凹凸パターン75を形成し、エッチング装置140が凹凸パターン75をマスクとして用いて中間体10Aをエッチング処理して平面視矩形状の凹部7,7・・を含む複数の凹部7,7・・を有する凹凸パターン5を中間体10Aに形成する。したがって、この磁気ディスク1の製造方法によれば、各角部が開口面側の端部から底面側の端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成された各凹部47,47・・を有する凹凸パターン45を樹脂層18に転写することで、中間体10Aに形成される各凸部87,87・・の各角部を突端部から基端部までシャープに形成することができる。この結果、この凸部87,87・・を有する凹凸パターン85の凹凸位置関係を反転することで各凹部77,77・・の各角部を開口面側の端部から底面側の端部までシャープに形成することができるため、この凹部77,77・・を有する凹凸パターン75をマスクとして用いて磁性層14をエッチング処理することにより、磁性層14に形成される平面視矩形状の凹部7,7・・を含む各凹部7,7・・の各角部を開口面側の端部から底面側の端部までシャープに形成することができる。これにより、各種信号を正確に読み取り可能な磁気ディスク1を製造することができる。この場合、マスタースタンパー40に形成された平面視矩形状の凹部47,47・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部までシャープであるため、このマスタースタンパー40を使用して磁気ディスク1を製造することで、例えば、バーストパターンやアドレスパターンのような平面視矩形状の凹部7,7・・が多数存在するサーボパターンを高精度で形成することができる。
この場合、上記のマスタースタンパー40に代えて、前述したスタンパー40Aを使用して磁気ディスク1を製造したときには、マスタースタンパー40を使用して製造したときと同様にして、各種信号を正確に読み取り可能な磁気ディスク1を製造することができると共に、スタンパー40Aの1枚当りの製造コストがマスタースタンパー40よりも十分に安価であるため、このスタンパー40Aを使用することで、磁気ディスク1の製造コストを十分に低下させることができる。
続いて、本発明に係る情報記録媒体の製造方法の他の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、前述した磁気ディスク1の製造過程において使用または製作した各種構成要素と共通の構成要素については、共通の符号を付して重複する説明を省略する。
前述した情報記録媒体製造装置100,100Aでは、例えばサーボパターン領域内のバーストパターン領域に平面視矩形状の凹部7,7・・を有する凹凸パターン5が形成された磁気ディスク1を製造しているが、本発明に係る情報記録媒体の製造方法は、上記の磁気ディスク1のような情報記録媒体の製造方法に限定されず、例えば、図40に示すように、サーボパターン領域内のバーストパターン領域等に平面視矩形状の凸部6,6・・が形成された凹凸パターン5A(本発明におけるE凹凸パターンの一例)を有する磁気ディスク1Aを製造することもできる。
この磁気ディスク1Aの製造に際しては、前述した中間体10Aとマザースタンパー50(または、スタンパー50A)とを使用する。最初に、中間体10Aおよびマザースタンパー50をインプリント装置130にセットして、マザースタンパー50の凹凸パターン55を中間体10Aの樹脂層18にインプリント法によって転写する。具体的には、図37に示すように、インプリント装置130が、マザースタンパー50における凹凸パターン55の形成面を中間体10Aの樹脂層18に押し付けることにより、凹凸パターン55の凸部57,57・・を中間体10Aの樹脂層18に押し込む。この際には、凸部57,57・・が押し込まれた部位のレジスト(樹脂層18)が凹凸パターン55における凹部56,56・・内に向けて移動する。この結果、マザースタンパー50における凸部57,57・・が押し込まれた部位に凹部86a,86a・・が形成されると共に、凹部56,56・・の部位にレジスト(樹脂層18)からなる凸部87a,87a・・が形成される。次いで、インプリント装置130が中間体10Aからマザースタンパー50を剥離させ、さらに、底面に残存する樹脂(図示せず)を酸素プラズマ処理によって除去することにより、中間体10Aにおける磁性層14の上に凹凸パターン55と凹凸位置関係が反転した凹凸パターン85a(本発明における第4凹凸パターンの一例)が形成される(本発明における第3パターン転写処理)。
続いて、図38に示すように、スパッタリング装置150が凹凸パターン85aの上(凸部87aにおける突端面の上と、凹部86aにおける底面の上)にマスク層形成用材料をスパッタリングすることによってマスク層17を形成する。次いで、レジスト除去装置160が中間体10Aに対するレジスト除去処理を実行する(パターン反転処理の実行)。この際には、樹脂層18上に形成されているマスク層17と共に樹脂層18が磁性層14上から除去され、図39に示すように、上記の凹凸パターン85aと凹凸位置関係が反転した凹凸パターン75aが磁性層14上に形成される。続いて、前述した情報記録媒体製造装置100,100Aによる磁気ディスク1の製造工程と同様にして、エッチング装置140が、凹凸パターン75a(マスク層17)をマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、凹凸パターン75aにおける凹部77a,77a・・の底部においてマスク(凸部76a,76a・・)から露出している磁性層14をエッチングして、凸部6および凹部7を有する凹凸パターン5Aを中間体10Aの磁性層14に形成する。これにより、データトラックパターンおよびサーボパターン(凹凸パターン5A)が中間層13の上に形成される。次いで、凸部6,6・・の上に残存しているマスク層17に対して選択的にエッチング処理を行うことにより、残存しているマスク層17を完全に除去して凸部6,6・・の突端面を露出させる。
この場合、前述したように、マザースタンパー50に形成された凹凸パターン55における平面視矩形状の凸部57,57・・を含む各凸部57,57・・の各角部が突端部から基端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成されているため、この凹凸パターン55が転写された凹凸パターン85aは、上記の各凸部57,57・・に対応する各凹部86a,86a・・の各角部が開口面側の端部から底面側の端部までシャープになるように凸部87a,87a・・が形成される。したがって、この凹凸パターン85aを用いて形成した凹凸パターン75aについても、凹凸パターン55の各凸部57,57・・に対応する各凸部76a,76a・・の各角部が突端部から基端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成される。この結果、図40に示すように、この凹凸パターン75aをマスクとして用いて形成した凹凸パターン5Aについても、凹凸パターン55の各凸部57,57・・に対応する各凸部6,6・・(平面視矩形状の各凸部6,6・・を含む各凸部6,6・・)の各角部が突端部から基端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成される。これにより、例えば、バーストパターン等を構成する平面視矩形状の凸部6,6・・の各角部が突端部から基端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成されて、磁性層14に凹凸パターン5が形成される。
この後、スパッタリング装置150が凹凸パターン5Aを覆うようにして非磁性材料15の層を形成し、エッチング装置140が磁性層14の上(凸部6,6・・の上および凹部7,7の上)の非磁性材料15の層に対してイオンビームエッチング処理を実行して凹凸パターン5の各凸部6,6・・の突端面を露出させ、CVD装置(図示せず)が、中間体10Aの表面を覆うようにして保護層16を形成する。次いで、保護層16の表面にフォンブリン系の潤滑剤を平均厚さが例えば2nm程度となるように塗布することにより、磁気ディスク1Aが完成する。
このように、この磁気ディスク1Aの製造方法では、インプリント装置130がスタンパー製造装置110によって製造されたマザースタンパー50における凹凸パターン55(A凹凸パターン)を中間体10Aの樹脂層18(情報記録媒体製造用基材の凹凸パターン転写層)に転写して凹凸パターン85a(第4凹凸パターン)を形成し(第3パターン転写処理)、その後に、本発明における所定のパターン反転処理の一例として、スパッタリング装置150が凹凸パターン85aを覆うようにしてマスク層17を形成し、レジスト除去装置160が中間体10Aの樹脂層18を除去することで凹凸パターン85aの凹凸形状を反転させた凹凸パターンを形成し、エッチング装置140がその凹凸パターンをマスクとして用いて中間体10Aをエッチング処理して平面視矩形状の凸部6,6・・を含む複数の凸部6,6・・を有する凹凸パターン5A(E凹凸パターン)を中間体10Aに形成する。したがって、この磁気ディスク1Aの製造方法によれば、各角部が突端部から基端部まで丸みを帯びることなくシャープに形成された凸部57,57・・を有する凹凸パターン55を樹脂層18に転写することで、中間体10Aに形成される凹部86a,86a・・の各角部を開口面側の端部から底面側の端部までシャープに形成することができる。この結果、この凹部86a,86a・・を有する凹凸パターン85aの凹凸位置関係を反転することで凸部76a,76a・・の各角部を突端部から基端部までシャープに形成することができるため、この凸部76a,76a・・を有する凹凸パターン75aをマスクとして用いて磁性層14をエッチング処理することにより、磁性層14に形成される各凸部6,6・・(平面視矩形状の各凸部6,6・・を含む各凸部6,6・・)の各角部を突端部から基端部までシャープに形成することができる。これにより、各種信号を正確に読み取り可能な磁気ディスク1Aを製造することができる。この場合、マザースタンパー50に形成された平面視矩形状の凸部57,57・・の各角部が突端部から基端部までシャープであるため、このマザースタンパー50を使用して磁気ディスク1Aを製造することで、例えば、バーストパターンやアドレスパターンのような平面視矩形状の凸部6,6・・が多数存在するサーボパターンを高精度で形成することができる。
この場合、上記のマザースタンパー50に代えて、前述したスタンパー50Aを使用して磁気ディスク1Aを製造したときには、マザースタンパー50を使用して製造したときと同様にして、各種信号を正確に読み取り可能な磁気ディスク1Aを製造することができると共に、スタンパー50Aの1枚当りの製造コストがマザースタンパー50よりも十分に安価であるため、このスタンパー50Aを使用することで、磁気ディスク1Aの製造コストを十分に低下させることができる。
なお、本発明は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、本発明に係る情報記録媒体の製造方法に従って製造する情報記録媒体は、上記の磁気ディスク1,1Aのようなディスクリートトラック型の磁気ディスクに限定されず、データトラックパターンが連続磁性層に磁気的に書き込まれると共にサーボパターンが凹凸パターン5によって形成された磁気ディスクの製造時に本発明に係る製造方法を好適に適用することができる。また、磁気ディスク1,1Aのような垂直記録方式の磁気ディスクのみならず、面内記録方式の磁気ディスクの製造時にも本発明に係る製造方法を好適に適用することができる。さらに、磁気ディスクのみならず、光ディスク(光記録媒体)の製造時にも本発明に係る製造方法を好適に適用することができる。