以下、添付図面を参照して、本発明に係る磁気記録媒体、記録再生装置およびスタンパーの最良の形態について説明する。
図1に示すハードディスクドライブ1は、本発明に係る記録再生装置の一例であって、モータ2、磁気ヘッド3、検出部4、ドライバ5、制御部6、記憶部7および磁気ディスク10Aを備えて各種データの記録再生が可能に構成されている。モータ2は、制御部6の制御に従って磁気ディスク10Aを一例として4200rpmの回転数で定速回転させる。磁気ヘッド3は、スイングアーム3aを介してアクチュエータ3bに取り付けられて磁気ディスク10Aに対する記録データの記録再生時においてアクチュエータ3bによって磁気ディスク10A上を移動させられる。また、磁気ヘッド3は、磁気ディスク10Aのサーボパターン領域Asa(図2参照)からのサーボデータの読み出しと、データ記録領域At(図2参照)に対する記録データの磁気的な書き込みと、データ記録領域Atに磁気的に書き込まれている記録データの読み出しとを実行する。なお、磁気ヘッド3は、実際には磁気ディスク10Aに対して磁気ヘッド3を浮上させるためのスライダの底面(エアベアリング面)に形成されているが、このスライダについての説明および図示を省略する。アクチュエータ3bは、制御部6の制御下でドライバ5から供給される駆動電流によってスイングアーム3aをスイングさせることにより、磁気ヘッド3を磁気ディスク10A上の任意の記録再生位置に移動させる。
検出部4は、磁気ヘッド3から出力された出力信号(アナログ信号)からサーボデータを取得(検出)して制御部6に出力する。ドライバ5は、制御部6から出力された制御信号に従ってアクチュエータ3bを制御して磁気ヘッド3を所望のデータ記録トラックにオントラックさせる。制御部6は、ハードディスクドライブ1を総括的に制御する。また、制御部6は、本発明に係る制御部の一例であって、検出部4から出力されたサーボデータ(「サーボパターン領域から読み取られた所定の信号」の一例)に基づいてドライバ5を制御する(トラッキングサーボ制御処理の実行)。記憶部7は、制御部6の動作プログラムなどを記憶する。
一方、磁気ディスク10Aは、本発明に係る磁気記録媒体の一例であって、前述したモータ2や磁気ヘッド3などと共にハードディスクドライブ1の筐体内に配設されている。この磁気ディスク10Aは、垂直記録方式による記録データの記録が可能なディスクリートトラック型の磁気ディスク(パターンド媒体)であって、図4に示すように、軟磁性層12、中間層13および磁性層14がガラス基材11の上にこの順で形成されている。この場合、磁性層14は、突端部(同図における上端部)から基端部(同図における下端部)までの全体が磁性材料で形成された凸部40a,40a・・と、凸部40a,40a・・間の凹部40b,40b・・とが形成されて凹凸パターン40を構成する。また、凹部40b,40b・・には、SiO2等の非磁性材料15が埋め込まれて磁気ディスク10Aの表面が平坦化されている。さらに、凹部40b,40b・・に埋め込まれた非磁性材料15、および磁性層14(凸部40a)の表面には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等によって厚みが2nm程度の保護層16(DLC膜)が形成されている。また、保護層16の表面には、磁気ヘッド3および磁気ディスク10Aの双方の傷付きを回避するための潤滑剤(一例として、フォンブリン系の潤滑剤)が塗布されている。
ガラス基材11は、本発明における基材に相当し、ガラス板を表面研磨して厚みが0.6mm程度の円板状に形成されている。なお、本発明における基材は、ガラス基材に限定されず、アルミニウムやセラミックなどの各種非磁性材料で円板状に形成した基材を使用することができる。軟磁性層12は、CoZrNb合金などの軟磁性材料をスパッタリングすることによって厚みが100nm〜200nm程度の薄膜状に形成されている。中間層13は、磁性層14を形成するための下地層として機能する層であって、CrやCoCr非磁性合金などの中間層形成用材料をスパッタリングすることによって厚みが40nm程度の薄膜状に形成されている。なお、この磁気ディスク10Aにおいては、軟磁性層12および中間層13が本発明における「所定の層」に相当する。磁性層14は、凹凸パターン40(図3に示すデータトラックパターン40tおよびサーボパターン40sa)を構成する層であって、後述するように、例えばCoCrPt合金をスパッタリングした層に対してエッチング処理することによって凹部40b,40b・・が形成されている。
この場合、図2に示すように、この磁気ディスク10Aでは、データ記録領域At,At・・の間にサーボパターン領域Asa,Asa・・が設けられてデータ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asaが磁気ディスク10Aの回転方向(矢印Rの向き)において交互に並ぶように規定されている。なお、本明細書では、回転方向において並ぶ2つのデータ記録領域(この例では、データ記録領域At)によって挟まれた領域(1つのデータ記録領域における回転方向側の端部から、他の1つのデータ記録領域における回転方向側の端部までの間の領域)をサーボパターン領域(この例では、サーボパターン領域Asa)とする。また、データ記録領域における回転方向側の端部は、そのデータ記録領域に形成された複数のデータ記録トラック(後述する凸部40a,40a・・)における回転方向側の各端部を連結した仮想線分(磁気ディスクの半径方向に沿った直線状または円弧状の線分)と一致しているものとする。
また、この磁気ディスク10Aを搭載したハードディスクドライブ1では、前述したようにモータ2が制御部6の制御に従って磁気ディスク10Aを角速度一定で回転させるように構成されている。したがって、この磁気ディスク10Aでは、単位時間当たりに磁気ヘッド3の下方を通過させられる磁気ディスク10A上の長さに比例して、磁気ディスク10Aの回転方向に沿ったデータ記録領域Atの長さ、および回転方向に沿ったサーボパターン領域Asaの長さがデータトラックパターン40tの中心Oから離間するほど長くなるように(データ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asaが内周側領域Aiよりも外周側領域Aoほど幅広となるように)規定されている。この結果、データ記録領域At内に形成されたデータ記録トラック(凸部40a)における突端面の回転方向に沿った長さや、サーボパターン領域Asa内に形成されたサーボパターン40sa用の各凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った基準の長さ、およびサーボパターン40sa用の各凹部40b,40b・・の回転方向に沿った基準の開口長(隣り合う凸部40a,40aの両突端面において対向する端部の間の長さ)(例えば、単位信号長に対応する長さ)は、磁気ディスク10Aの内周側領域Aiよりも外周側領域Aoほど長くなっている。なお、以下の説明において、凹部の開口長を「凹部の長さ」ともいう。
この場合、サーボパターン領域Asa内の各凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った基準の長さについては、磁気ディスク10Aの半径方向で隣接している数十トラックの範囲内でほぼ等しい長さとなっている。このため、本明細書では、この数十トラックの範囲内において回転方向に沿った基準の長さが等しいものとして説明する。具体的には、例えば内周側領域Aiに含まれる数十トラックの範囲内においては回転方向に沿った基準の長さが互いに等しく、外周側領域Ao内に含まれる数十トラックの範囲内においては回転方向に沿った基準の長さが互いに等しいものとする。また、各サーボパターン領域Asaに形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った長さについての説明に際して特に限定しない限りにおいては、データトラックパターン40tの中心Oからの距離が等しい同一半径位置(同一半径の領域内)における対応する長さを基準として説明するものとする。
また、図3に示すように、データ記録領域Atには、データトラックパターン40tが形成されている。なお、同図および後に参照する図5〜9,24〜26において斜線で塗り潰した領域は、凹凸パターン40における凸部40aの形成領域を表している。この場合、図5に示すように、データトラックパターン40tは、中心O(図2参照)を中心とする同心円状(または、螺旋状)の多数の凸部40a,40a・・(データ記録トラック)と、各凸部40a,40a・・の間の凹部40b,40b・・(トラック間凹部:従来の磁気ディスクにおけるガードバンド部)とで構成されている。なお、磁気ディスク10Aの回転中心とデータトラックパターン40tの中心Oとが一致しているのが好ましいが、磁気ディスク10Aの回転中心とデータトラックパターン40tの中心Oとの間には、製造誤差に起因する30〜50μm程度の極く小さなずれが生じることがある。しかし、この程度のずれ量であれば磁気ヘッド3に対するトラッキングサーボ制御が十分に可能であるため、回転中心と中心Oとは、実質的には同様であるといえる。
また、図5に示すように、この磁気ディスク10Aのデータ記録領域Atでは、一例として、凸部40a(データ記録トラック)における突端面の半径方向に沿った長さL3と、凹部40b(ガードバンド部)の半径方向に沿った長さL4とが互いに等しい長さ(長さ比が1:1)となっている。また、この磁気ディスク10Aでは、データ記録領域Atに形成された凸部40aの半径方向に沿った長さL3、および凹部40bの半径方向に沿った長さL4が磁気ディスク10Aの内周側領域Aiから外周側領域Aoまで等しい長さに規定されている。この場合、凸部40aの半径方向に沿った長さL3は、サーボパターン領域Asa(アドレスパターン領域Aaa)に形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの最大の長さ(後述する長さL2a:図7参照)以下となるように規定されている。さらに、データトラックパターン40tの凹部40b,40b・・には、非磁性材料15が埋め込まれてデータ記録領域Atが平坦化されている。
一方、図3に示すように、サーボパターン領域Asaには、プリアンブルパターン領域Apに形成されたプリアンブルパターンと、アドレスパターン領域Aaaに形成されたアドレスパターンと、バーストパターン領域Abaに形成されたバーストパターンと、非サーボ信号領域Axに形成されたダミーパターンとを有するサーボパターン40saが形成されている。この場合、プリアンブルパターン領域Ap、アドレスパターン領域Aaaおよびバーストパターン領域Abaに形成されているサーボパターン40saが本発明における「所定の信号(トラッキングサーボ制御用の制御信号)」に対応するパターンに相当する。また、サーボパターン40saは、凸部40a,40a・・および凹部40b,40b・・の形成位置やそれぞれの大きさ(回転方向に沿った長さ等)が本発明における「所定の信号(トラッキングサーボ制御用の制御信号)」に対応して規定されている。
具体的には、プリアンブルパターン領域Apに形成されたプリアンブルパターンは、アドレスパターン領域Aaa等から各種制御信号を読み取るための基準クロックを磁気ディスク10Aの回転状態(回転速度)に応じて補正するためのサーボパターンであって、図6に示すように、磁気ディスク10Aの半径方向(同図における上下方向)に長い帯状の凸部40a,40a・・が磁気ディスク10Aの回転方向(矢印Rの向き)に沿って凹部40b,40b・・を挟んで形成されている。この場合、プリアンブルパターン領域Apに形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った長さL5、および凹部40b,40b・・の回転方向に沿った長さL6は、中心Oからの距離が等しい同一半径位置において互いに等しい長さで、かつ内周側領域Aiよりも外周側領域Ao側の方が長くなるように規定されている。また、プリアンブルパターン領域Apに形成された凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った長さL5は、一例として、同一半径位置におけるアドレスパターン領域Aaaに形成された凸部40a,40a・・の回転方向に沿った各長さのうちの最小の長さ(後述する長さL1:図7参照)と等しくなるように規定されている。なお、プリアンブルパターンの凸部40aおよび凹部40bの回転方向に沿った長さL5,L6は上記の例に限定されるものではなく、また、凸部40aの長さL5と凹部40bの長さL6とを互いに相違する長さに規定することもできる。
また、アドレスパターン領域Aaaに形成されたアドレスパターンは、磁気ヘッド3がオントラックしているトラックのトラック番号等を示すアドレスデータに対応して形成されたサーボパターンであって、図7に示すように、凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さと、凹部40b,40b・・の回転方向に沿った各長さとが上記のアドレスデータに対応して規定されている。この場合、この磁気ディスク10Aでは、アドレスデータがマンチェスター符号やバイフェーズM符号等に準じて符号化されてアドレスパターン領域Aaaに記録されている。具体的には、例えば、マンチェスター符号におけるハイレベルに対応して凸部40aが形成されると共に、ローレベルに対応して凹部40bが形成されることにより、アドレスデータのデータ内容に対応する凹凸パターン40がアドレスパターン領域Aaa内に形成されている。
この磁気ディスク10Aでは、アドレスパターン領域Aaaに形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの同一半径位置における最小の長さL1は、一例として、同一半径位置のプリアンブルパターン領域Apに形成された凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った長さL5と等しくなるように規定されている。また、アドレスパターン領域Aaaに形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの同一半径位置における最大の長さL2(本発明における「第1の長さ」の一例)は、一例として、同一半径位置における上記の長さL1の2倍の長さとなるように規定されている。この場合、この磁気ディスク10Aでは、前述したように、回転方向に沿った基準の長さが内周側領域Aiよりも外周側領域Aoほど長くなっている。したがって、この磁気ディスク10Aでは、外周側領域Aoにおけるアドレスパターン領域Aaa内の凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの最大の長さL2(以下、各長さL2のうちの最大の長さを他の長さL2と区別するときには、「長さL2a」ともいう)が、本発明における「各第1の長さのうちの最大の長さ」に相当し、この長さL2aがサーボパターン領域Asa内の凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの最大の長さとなっている。なお、この磁気ディスク10Aでは、アドレスデータがマンチェスター符号等に準じて符号化されてアドレスパターンが形成されているため、アドレスパターン領域Aaa内の各同一半径位置において、アドレスパターン(サーボパターン40sa)を構成する各凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った長さ(ハードディスクドライブ1においてハイレベルとして認識される信号長)が上記の長さL1,L2の2種類のみとなっている。
また、図3に示すように、バーストパターン領域Abaは、第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4の各バースト領域と、非サーボ信号領域Axb,Axb・・とを備えている。この場合、第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4に形成されたバーストパターンは、磁気ヘッド3を所望のトラックにオントラックさせるための位置検出用のサーボパターンであって、図8,9に示すように、磁気ディスク10Aの回転方向に沿って複数の凸部40a,40a・・が凹部40bを挟んで形成されることにより、凸部40aおよび凹部40bが回転方向に沿って交互に並ぶ領域と、凹部40bが回転方向において連続する領域とが形成されている。
また、この磁気ディスク10Aでは、一例として、バーストパターン領域Abaにおける第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4において回転方向に沿って並ぶ凸部40a,凸部40a・・における突端面の回転方向に沿った長さL5が、同一半径位置におけるアドレスパターン領域Aaaに形成された凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った最小の長さL1、およびプリアンブルパターン領域Apに形成された凸部40aにおける同一半径位置の突端面の回転方向に沿った長さL5と等しくなるように規定されている。さらに、バーストパターン領域Abaに形成された凸部40a,40a・・の間の凹部40bの回転方向に沿った長さL6は、一例として、同一半径位置におけるプリアンブルパターン領域Apに形成された凹部40bの回転方向に沿った長さL6と等しくなるように規定されている。なお、第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4に形成する凸部40a,40a・・の回転方向に沿った長さL5や、凹部40bの凸部40a,40a・・の間の回転方向に沿った長さL6については上記の例に限定されるものではなく、また、凸部40aの長さL5と凹部40bの長さL6とを互いに相違する長さに規定することもできる。
さらに、図3に示すように、データ記録領域Atとプリアンブルパターン領域Apとの間、プリアンブルパターン領域Apとアドレスパターン領域Aaaとの間、アドレスパターン領域Aaaとバーストパターン領域Abaとの間、およびバーストパターン領域Abaとデータ記録領域Atとの間には、非サーボ信号領域Axがそれぞれ規定されている。また、バーストパターン領域Abaにおける第1バースト領域Ab1と第2バースト領域Ab2との間、第2バースト領域Ab2と第3バースト領域Ab3との間、および第3バースト領域Ab3と第4バースト領域Ab4との間には、前述したように、非サーボ信号領域Axbがそれぞれ形成されている。これら非サーボ信号領域Ax,Axbは、製造時に磁気ディスク10Aの表面平坦性が悪化するのを回避するためのパターンが形成された領域であって、一例として、上記のデータ記録領域At、プリアンブルパターン領域Apおよびバーストパターン領域Aba(第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4)に形成された各種パターンと同種(同じ形状)のパターンがダミーパターンとして形成されている。
具体的には、図3に示すように、データ記録領域Atとプリアンブルパターン領域Apとの間の非サーボ信号領域Ax(図中最も左側の非サーボ信号領域Ax)には、プリアンブルパターン領域Apに形成されたサーボパターン40saと同種の凹凸パターン40が形成されている。また、バーストパターン領域Abaとデータ記録領域Atとの間の非サーボ信号領域Ax(図中最も右側の非サーボ信号領域Ax)には、バーストパターン領域Abaにおける第4バースト領域Ab4に形成されたサーボパターン40saと同種の凹凸パターン40が形成されている。さらに、プリアンブルパターン領域Apとアドレスパターン領域Aaaとの間の非サーボ信号領域Axには、プリアンブルパターン領域Apに形成されたサーボパターン40saと同種の凹凸パターン40が形成されている。また、アドレスパターン領域Aaaとバーストパターン領域Abaとの間の非サーボ信号領域Axには、バーストパターン領域Abaにおける第1バースト領域Ab1に形成されたサーボパターン40saと同種の凹凸パターン40が形成されている。
また、第1バースト領域Ab1と第2バースト領域Ab2との間の非サーボ信号領域Axb(図中左側の非サーボ信号領域Axb)には、第1バースト領域Ab1に形成されているサーボパターン40saと同種の凹凸パターン40が回転方向における第1バースト領域Ab1側に形成されると共に、第2バースト領域Ab2に形成されているサーボパターン40saと同種の凹凸パターン40が回転方向における第2バースト領域Ab2側に形成されている。さらに、第2バースト領域Ab2と第3バースト領域Ab3との間の非サーボ信号領域Axb(同図における中央の非サーボ信号領域Axb)には、第2バースト領域Ab2に形成されているサーボパターン40saと同種の凹凸パターン40が回転方向における第2バースト領域Ab2側に形成されると共に、第3バースト領域Ab3に形成されているサーボパターン40saと同種の凹凸パターン40が回転方向における第3バースト領域Ab3側に形成されている。また、第3バースト領域Ab3と第4バースト領域Ab4との間の非サーボ信号領域Axb(図中右側の非サーボ信号領域Axb)には、第3バースト領域Ab3に形成されているサーボパターン40saと同種の凹凸パターン40が回転方向における第3バースト領域Ab3側に形成されると共に、第4バースト領域Ab4に形成されているサーボパターン40saと同種の凹凸パターン40が回転方向における第4バースト領域Ab4側に形成されている。
したがって、この磁気ディスク10Aでは、サーボパターン領域Asa内に恰も非サーボ信号領域Axが存在することなく、プリアンブルパターン領域Ap、アドレスパターン領域Aaaおよびバーストパターン領域Abaが互いに接して連続する状態に視認されると共に、バーストパターン領域Aba内に恰も非サーボ信号領域Axbが存在することなく、第1バースト領域Ab1から第4バースト領域Ab4までの各バースト領域が互いに接して連続する状態に視認される。しかし、この磁気ディスク10Aに対する記録データの記録再生時には、非サーボ信号領域Ax,Axbからの磁気ヘッド3による磁気的信号の読み取りなどは実行されるものの、この非サーボ信号領域Ax,Axbに形成された凹凸パターン40に対応するデータは、制御部6によってトラッキングサーボ用のサーボデータとは相違するデータと判別される。したがって、非サーボ信号領域Ax,Axb内に形成された凸部40aや凹部40bの各長さについては、他のパターンの長さに影響されることなく、磁気ディスク10Aの表面平坦性を良好にし得る範囲内で任意に規定することができる。また、凸部40aや凹部40bの形状についても任意に規定することができる。
この磁気ディスク10Aでは、前述したように、データ記録領域Atに形成した凸部40aの半径方向に沿った長さL3が、サーボパターン領域Asaに形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの最大の長さ(この例では、外周側領域Aoにおけるアドレスパターン領域Aaa内の凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った各長さのうちの最大の長さL2a)以下となるように規定されている。したがって、図5に示すように、その直径がアドレスパターン領域Aaa内の最大の長さL2aと等しい円形領域Qaをデータ記録領域At内のいずれかの部位に配置したときには、その円形領域Qa内に凹部40bの少なくとも一部が含まれることとなる。また、この磁気ディスク10Aでは、前述したように、プリアンブルパターン領域Apに形成した凸部40aの回転方向に沿った長さL5が、サーボパターン領域Asaに形成された同一半径位置の凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの最小の長さL1と等しくなるように規定されている。この場合、前述したように、長さL1が長さL2の1/2の長さであるため、図6に示すように、その直径がアドレスパターン領域Aaa内の最大の長さL2aと等しい円形領域Qaをプリアンブルパターン領域Ap内のいずれかの部位に配置したときには、その円形領域Qa内に凹部40bの少なくとも一部が含まれることとなる。
さらに、この磁気ディスク10Aでは、前述したように、アドレスデータがマンチェスター符号等に準じて符号化されてアドレスパターンがアドレスパターン領域Aaaに形成されているため、アドレスデータにおいて「1」が多数連続する場合であっても凸部40aが回転方向に沿って連続して形成されることなく、長さL1(最小の長さ)の凸部40a、長さL2(最大の長さ)の凸部40a、および凹部40bによって凹凸パターン40(アドレスパターン)が構成される。この場合、長さL1が長さL2の1/2の長さであるため、アドレスパターン領域Aaa内の最大の長さL2aと等しい円形領域Qaをアドレスパターン領域Aaa内のいずれかの部位に配置したときには、その円形領域Qa内に凹部40bの少なくとも一部が含まれることとなる。なお、アドレスパターン領域Aaa内に配置する円形領域Qaがアドレスパターン領域Aaa内において最大の長さL2aである凸部40aの突端面における内接円と一致する状態では、その円形領域Qa内に凸部40aと凹部40bとの境界部分が含まれることとなる。この場合、本明細書では、前述したように、凸部40aと凹部40bとの境界部分が含まれている状態を「凹部40bの一部が含まれている状態」とする。
また、この磁気ディスク10Aでは、前述したように、バーストパターン領域Abaにおける第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4に形成した凸部40aの回転方向に沿った長さL5が、サーボパターン領域Asaに形成された同一半径位置の凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの最小の長さL1と等しくなるように規定されている。この場合、長さL1が長さL2の1/2の長さであるため、図8,9に示すように、その直径がアドレスパターン領域Aaa内の最大の長さL2aと等しい円形領域Qaを第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4内のいずれかの部位に配置したときには、その円形領域Qa内に凹部40bの少なくとも一部が含まれることとなる。
さらに、この磁気ディスク10Aでは、前述したように、プリアンブルパターン領域Apおよびバーストパターン領域Aba(第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4)に形成したサーボパターン40saと同種の凹凸パターン40が非サーボ信号領域Ax,Axbに形成されている。したがって、図3に示すように、プリアンブルパターン領域Apおよびバーストパターン領域Aba(第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4)内のいずれの位置に円形領域Qaを配置したとしても円形領域Qa内に凹部40bの少なくとも一部が含まれるこの磁気ディスク10Aでは、これらの領域と同種のサーボパターン40saが形成されている非サーボ信号領域Ax,Axbのいずれかの部位に円形領域Qaを配置したときに、その円形領域Qa内に凹部40bの少なくとも一部が含まれることとなる。
このように、この磁気ディスク10Aでは、データ記録領域At,At・・およびサーボパターン領域Asa,Asa・・の全域において、任意に配置した円形領域Qa内に凹部40bの少なくとも一部が含まれるように凹部40b,40b・・が形成されてデータトラックパターン40tおよびサーボパターン40saが構成されている。言い換えれば、この磁気ディスク10Aでは、データ記録領域At,At・・およびサーボパターン領域Asa,Asa・・の全域において、凸部40a,40aの突端面におけるいずれかの方向に対する長さ(この例では、凸部40aにおける回転方向に沿った長さ、および半径方向に沿った長さのいずれか)が上記の円形領域Qaの直径(この例では、長さL2a)よりも短く(または、等しく)なっている。つまり、この磁気ディスク10Aでは、従来の磁気ディスク10zとは異なり、その突端面が過剰に広い凸部40aがデータ記録領域At,At・・およびサーボパターン領域Asa,Asa・・のいずれの領域にも存在しないようにデータトラックパターン40tおよびサーボパターン40saが形成されている。
次に、磁気ディスク10Aの製造方法について説明する。
上記の磁気ディスク10Aの製造に際しては、図10に示す中間体20と、図11に示すスタンパー30とを使用する。この場合、図10に示すように、中間体20は、軟磁性層12、中間層13、および磁性層14がガラス基材11の上にこの順で形成されると共に、磁性層14の上に、マスク層17と、厚み80nm程度の樹脂層(レジスト層)18とが形成されて構成されている。一方、スタンパー30は、本発明に係る磁気記録媒体製造用のスタンパーの一例であって、図11に示すように、磁気ディスク10Aにおける凹凸パターン40(データトラックパターン40tおよびサーボパターン40sa)を形成するための凹凸パターン41を形成可能な凹凸パターン39が形成されて、インプリント法による磁気ディスク10Aの製造が可能に構成されている。この場合、スタンパー30の凹凸パターン39は、凸部39a,39a・・が磁気ディスク10Aの凹凸パターン40における凹部40b,40b・・に対応し、凹部39b,39b・・が凹凸パターン40における凸部40a,40a・・に対応するように形成されている。
このスタンパー30の製造に際しては、図12に示すように、まず、ガラス基材31の上に、一例としてポジ型レジストをスピンコートした後にベーク処理することにより、厚みが150nm程度のレジスト層32をガラス基材31の上に形成する。次いで、図13に示すように、スタンパー30の凹部39b,39b・・に対応する部位(すなわち、磁気ディスク10Aの凸部40a,40a・・に対応する部位)に電子ビーム32aを照射してレジスト層32に潜像32b(トラックパターンおよびサーボパターン)を形成する。続いて、レジスト層32に対する現像処理を実行することにより、図14に示すように、レジスト層32からなる凹凸パターン33(凸部33aおよび凹部33b)をガラス基材31の上に形成する。次いで、図15に示すように、凹凸パターン33の凸部33a,33a・・および凹部33b,33b・・を覆うようにして厚みが30nm程度のニッケル層34をスパッタリング法によって形成する。続いて、このニッケル層34を電極として使用してめっき処理を実行することにより、図16に示すように、ニッケル層34の上にニッケル層35を形成する。この際には、レジスト層32によって形成された凹凸パターン33がニッケル層34,35の積層体に転写されて凹凸パターン33における凸部33a,33a・・の部位に凹部36b,36b・・が形成されると共に、凹部33b,33b・・の部位に凸部36a,36a・・が形成されてニッケル層34,35の積層体に凹凸パターン36が形成される。
続いて、ガラス基材31、レジスト層32およびニッケル層34,35の積層体をレジスト剥離液に浸すことにより、ニッケル層34,35の積層体とガラス基材31との間のレジスト層32を除去する。これにより、図17に示すように、ニッケル層34,35の積層体がガラス基材31から剥離されて、スタンパー37が完成する。次いで、スタンパー37をマスタースタンパーとして使用してスタンパー30(マザースタンパー)を製作する。具体的には、まず、スタンパー37に対する表面処理を実行することにより、スタンパー37における凹凸パターン36の形成面に酸化膜を形成する。次いで、図18に示すように、酸化膜の形成が完了したスタンパー37にメッキ処理によってニッケル層38を形成する。この際には、スタンパー37の凹凸パターン36がニッケル層38に転写されて凸部36a,36a・・の部位に凹部39b,39b・・が形成されると共に、凹部36b,36b・・の部位に凸部39a,39a・・が形成されてニッケル層38に凹凸パターン39が形成される。この後、ニッケル層38からスタンパー37を剥離した後に、ニッケル層38の裏面(凹凸パターン39の形成面に対する裏面)を研磨処理して平坦化することにより、図11に示すように、スタンパー30が完成する。
一方、中間体20の製造に際しては、まず、ガラス基材11の上にCoZrNb合金をスパッタリングすることによってガラス基材11の上に軟磁性層12を形成した後に、軟磁性層12の上に中間層形成用材料をスパッタリングすることによって中間層13を形成する。次いで、中間層13の上にCoCrPt合金をスパッタリングすることによって厚みが15nm程度の磁性層14を形成する。続いて、磁性層14の上にマスク層17を形成し、さらに、マスク層17の上に一例としてレジストをスピンコートして厚みが80nm程度の樹脂層18を形成する。これにより、図10に示すように、中間体20が完成する。
続いて、図19に示すように、中間体20の樹脂層18にスタンパー30の凹凸パターン39をインプリント法によって転写する。具体的には、スタンパー30における凹凸パターン39の形成面を中間体20の樹脂層18に押し付けることにより、凹凸パターン39の凸部39a,39a・・を中間体20の樹脂層18に押し込む。この際には、凸部39a,39a・・が押し込まれた部位のレジスト(樹脂層18)が凹凸パターン39における凹部39b,39b・・内に向けて移動する。この後、中間体20からスタンパー30を剥離し、さらに、底面に残存する樹脂(図示せず)を酸素プラズマ処理によって除去することにより、図20に示すように、中間体20におけるマスク層17の上に樹脂層18からなる凹凸パターン41が形成される。この場合、凹凸パターン41における凸部41a,41a・・の高さ(凹部41b,41b・・)の深さは、130nm程度となる。
次いで、上記の凹凸パターン41(樹脂層18)をマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、凹凸パターン41における凹部41b,41b・・の底部においてマスク(凸部41a,41a・・)から露出しているマスク層17をエッチングして、図21に示すように、凸部42aおよび凹部42bを有する凹凸パターン42を中間体20のマスク層17に形成する。続いて、凹凸パターン42(マスク層17)をマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、凹凸パターン42における凹部42b,42b・・の底部においてマスク(凸部42a,42a・・)から露出している磁性層14をエッチングして、図22に示すように、凸部40aおよび凹部40bを有する凹凸パターン40を中間体20の磁性層14に形成する。これにより、データトラックパターン40tおよびサーボパターン40sa(凹凸パターン40)が中間層13の上に形成される。次いで、凸部40a,40a・・の上に残存しているマスク層17に対して選択的にエッチング処理を行うことにより、残存しているマスク層17を完全に除去して凸部40a,40a・・の突端面を露出させる。
次いで、図23に示すように、非磁性材料15としてのSiO2をスパッタリングする。この際には、非磁性材料15によって凹部40b,40b・・が完全に埋め尽くされ、かつ、凸部40a,40a・・の上に例えば厚みが60nm程度の非磁性材料15の層が形成されるように、非磁性材料15を十分にスパッタリングする。続いて、磁性層14の上(凸部40a,40a・・の上および凹部40b,40bの上)の非磁性材料15の層に対してイオンビームエッチング処理を実行する。この際には、中間体20における外周側(後に磁気ディスク10Aの外周側領域Aoとなる部位)のアドレスパターン領域Aaaにおいて、回転方向に沿った長さが長さL2aの凸部40aにおける突端面が非磁性材料15から露出するまでイオンビームエッチング処理を継続する。
この場合、この磁気ディスク10A(中間体20)では、前述したように、データ記録領域Atの全域およびサーボパターン領域Asaの全域において、凸部40a,40aの突端面におけるいずれかの方向に対する長さが上記の円形領域Qaの直径(この例では、最大の長さL2a)よりも短く(または、等しく)なっている。したがって、その突端面が過剰に広い凸部40a(全方向に長い凸部40a)がデータ記録領域At,At・・およびサーボパターン領域Asa,Asa・・のいずれの領域にも存在しないため、従来の磁気ディスク10zとは異なり、サーボパターン領域Asa内の凸部40a,40a・・およびデータ記録領域At内の凸部40a,40a・・の上に厚手の残渣が生じることなく、各凸部40a,40a・・の突端面(上面)が非磁性材料15から露出する。これにより、非磁性材料15の層に対するイオンビームエッチング処理が完了して中間体20の表面が平坦化される。続いて、中間体20の表面を覆うようにしてCVD法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜を成膜することによって保護層16形成した後に、保護層16の表面にフォンブリン系の潤滑剤を平均厚さが例えば2nm程度となるように塗布する。これにより、図4に示すように、磁気ディスク10Aが完成する。
この磁気ディスク10Aを搭載したハードディスクドライブ1では、前述したように、磁気ディスク10Aに対する記録データの記録再生時において、非サーボ信号領域Ax,Ax・・および非サーボ信号領域Axb,Axb・・に形成された凹凸パターン40に対応するデータが制御部6によってトラッキングサーボ用のサーボデータとは相違するデータと判別される。具体的には、制御部6は、検出部4から出力されるサーボデータを含むデータのうち、プリアンブルパターン領域Ap、アドレスパターン領域Aaaおよびバーストパターン領域Aba(非サーボ信号領域Axbを除く)に形成された凹凸パターン40に対応するデータに基づいてドライバ5を制御することにより、アクチュエータ3bを駆動させて磁気ヘッド3を所望のトラックにオントラックさせる。
また、このハードディスクドライブ1では、アドレスパターン領域Aaaに形成された凹凸パターン40に対応して検出部4から出力されるデータに基づいてアドレスデータを抽出する際に、制御部6は、検出部4からの出力データがマンチェスター符号やバイフェーズM符号等で符号化されているものとして出力データを復号化する。この結果、アドレスパターン領域Aaaから読み取られたアドレスデータやバーストパターン領域Abaから読み取られたバースト信号等に基づいてトラッキングサーボ制御が実行されて、磁気ヘッド3を所望のデータ記録トラック(凸部40a,40a・・)にオントラックさせることが可能となる。これにより、データ記録領域At内の凸部40a,40a・・(データ記録トラック)にオントラックさせた磁気ヘッド3を介して記録データの記録再生を行うことが可能となる。
このように、この磁気ディスク10Aおよびハードディスクドライブ1によれば、各凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの各同一半径位置毎の最大の長さL2がその同一半径位置内の各凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った最小の長さL1の2倍の長さ(本発明における第1の長さ)となるようにアドレスパターン領域Aaaに凹部40bを形成したことにより、凸部40a,40a・・における突端面の半径方向に沿った長さが長くなる傾向があるアドレスパターン領域Aaa内にその突端面の回転方向に沿った長さが過剰に長い凸部40a(全方向に長い凸部40a)が存在しないため、従来の磁気ディスク10zとは異なり、サーボパターン領域Asa内の凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、アドレスパターン領域Aaa内の凸部40a,40a・・の上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、アドレスパターン領域Aaa内の平坦性が良好で、しかもアドレスデータの確実な読み取りが可能な磁気ディスク10A、およびその磁気ディスク10Aを備えたハードディスクドライブ1を提供することができる。また、アドレスパターン領域Aaa内の凸部40a,40a・・における回転方向に沿った最大の長さL2と最小の長さL1との差が小さいため、長さL2の凸部40aにおける突端面が非磁性材料15から露出するまで十分にエッチング処理した場合であっても長さL1の凸部40a自体が過度にエッチングされる事態を回避することができる。これにより、アドレスデータの正確な読み取りが可能な磁気ディスク10A、およびその磁気ディスク10Aを備えたハードディスクドライブ1を提供することができる。
また、この磁気ディスク10Aおよびハードディスクドライブ1によれば、各長さL2(第1の長さ)のうちの最大の長さL2aと等しい直径の円形領域Qaをサーボパターン領域Asaのいずれかの部位に配置したときに、凹部40bの少なくとも一部が円形領域Qa内に含まれるようにサーボパターン領域Asaに凹部40bを形成したことにより、アドレスパターン領域Aaaのみならず、サーボパターン領域Asaの全域において全方向に過剰に長い(突端面が過剰に広い)凸部40aが存在しないため、従来の磁気ディスク10zとは異なり、サーボパターン領域Asa内の凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、非サーボ信号領域Ax,Axb・・を含むサーボパターン領域Asaの全域において凸部40a,40a・・の上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、サーボパターン領域Asa内の平坦性が良好で、しかもトラッキングサーボ制御用のデータの確実な読み取りが可能な磁気ディスク10A、およびその磁気ディスク10Aを備えたハードディスクドライブ1を提供することができる。
さらに、この磁気ディスク10Aおよびハードディスクドライブ1によれば、基材の半径方向に沿った長さL3が各長さL2(第1の長さ)のうちの最大の長さL2a以下となるように各データ記録トラック(凸部40a,40a・・)を形成したことにより、凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った長さが長くなるデータ記録領域At内にその突端面の半径方向に沿った長さが過剰に長い凸部40a(全方向に長い凸部40a)が存在しないため、データ記録領域At内の凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、凸部40a,40a・・(データ記録トラック)上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。したがって、サーボパターン領域Asaおよびデータ記録領域Atの双方(磁気ディスク10Aの全域)において平坦性が良好で、しかも安定した記録再生が可能な磁気ディスク10A、およびその磁気ディスク10Aを備えたハードディスクドライブ1を提供することができる。
また、このハードディスクドライブ1によれば、磁気ディスク10Aと、磁気ディスク10Aにおけるサーボパターン領域Asaから読み取られた所定の信号に基づいてトラッキングサーボ制御処理を実行する制御部6とを備えたことにより、非サーボ信号領域Axに形成された凹凸パターン40(ダミーパターン)の存在に影響されることなく、データ記録領域At内の凸部40a,40a・・(データ記録トラック)にオントラックさせた磁気ヘッド3を介して記録データの記録再生を行うことができる。
また、この磁気ディスク10Aを製造するためのスタンパー30によれば、磁気ディスク10Aにおける凹凸パターン40の凹部40b,40b・・に対応して形成された凸部39a,39a・・と、磁気ディスク10Aにおける凹凸パターン40の凸部40a,40a・・に対応して形成された凹部39b,39b・・とを有する凹凸パターン39を形成したことにより、中間体20に対するインプリント処理時に、突端面が過剰に広い凸部41aがアドレスパターン領域Aaa内等に存在しない凹凸パターン41を形成することができる。したがって、この凹凸パターン41と凹凸位置関係が一致するマスク(この例では、凹凸パターン42)を用いて中間体20に対するエッチング処理を実行することにより、アドレスパターン領域Aaa等に広い突端面を有する凸部40aが形成される事態を回避することができる。したがって、この凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、アドレスパターン領域Aaa内等の凸部40a上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、平坦性が良好で、しかもアドレスデータ等の確実な読み取りが可能な磁気ディスク10Aを製造することができる。また、磁気ディスク10Aにおける各凸部40aの突端面に対応して、過剰に広い凹部39bがスタンパー30に存在しないため、中間体20における樹脂層18に凹凸パターン39を押し付けた際に、凹部39b内への樹脂材料(樹脂層18)の移動量の不足に起因する凸部41aの高さ不足(樹脂マスクの厚み不足)が生じる事態を回避することができる。したがって、凹凸パターン41をマスクとしてマスク層17をエッチングする際に、マスク層17に対するエッチングの完了に先立って凸部41aが消失する事態を回避することができる結果、十分な深さの凹部42bを有する凹凸パターン42を磁性層14の上に形成することができる。これにより、この凹凸パターン42をマスクとして磁性層14に対するエッチング処理を実行する際に、十分な深さの凹部40bを有する凹凸パターン40を中間層13上に形成することができる。
次いで、本発明に係る磁気記録媒体の他の一例である磁気ディスク10Bをハードディスクドライブ1に搭載した例について、図面を参照して説明する。なお、前述した磁気ディスク10A、および磁気ディスク10Aを搭載したハードディスクドライブ1と共通の構成要素については、共通の符号を付して重複した説明を省略する。
磁気ディスク10Bは、図24に示すように、磁気ディスク10Aにおけるサーボパターン領域Asaに代えて、データ記録領域At,Atの間にサーボパターン領域Asbが規定されて構成されている。このサーボパターン領域Asbは、磁気ディスク10Aのサーボパターン領域Asaにおけるアドレスパターン領域Aaaに代えてアドレスパターン領域Aabを備えている。この場合、この磁気ディスク10Bでは、プリアンブルパターン領域Ap、アドレスパターン領域Aabおよびバーストパターン領域Abaに形成されているサーボパターン40sbが本発明における「所定の信号(トラッキングサーボ制御用の制御信号)」に対応するパターンに相当する。また、この磁気ディスク10Bでは、データ記録領域Atに形成されたデータトラックパターン40tにおける凸部40a,40a・・(データ記録トラック)の半径方向に沿った長さL3が、サーボパターン領域Asbに形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの最大の長さ(後述する長さL1a:図25参照)以下となるように規定されている。さらに、プリアンブルパターン領域Apに形成された凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った長さL5は、一例として、同一半径位置におけるアドレスパターン領域Aabに形成された凸部40a,40a・・の回転方向に沿った各長さ(後述する長さL1:図25参照)と等しくなるように規定されている。
また、図25に示すように、アドレスパターン領域Aabに形成されたサーボパターン40sb(アドレスパターン)は、凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さと、凹部40b,40b・・の回転方向に沿った各長さとがアドレスデータに対応して規定されている。この場合、この磁気ディスク10Bでは、一例として、アドレスデータがRZ(Return-to-Zero)符号等に準じて符号化されてアドレスパターン領域Aaaに記録されている。具体的には、RZ符号等におけるハイレベルに対応して凸部40aが形成されると共に、ローレベルに対応して凹部40bが形成されることにより、アドレスデータのデータ内容に対応する凹凸パターンがアドレスパターン領域Aab内に形成されている。したがって、この磁気ディスク10Bでは、アドレスパターン領域Aab内の各同一半径位置において、アドレスパターン(サーボパターン40sa)を構成する各凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さ(ハードディスクドライブ1においてハイレベルとして認識される信号長)が互いに等しい長さL1(本発明における「第2の長さ」の一例)の1種類のみとなっている。この場合、この磁気ディスク10Bでは、前述したように、回転方向に沿った基準の長さが内周側領域Aiよりも外周側領域Aoほど長くなっている。したがって、この磁気ディスク10Bでは、外周側領域Aoにおけるアドレスパターン領域Aab内の凸部40a,40a・・における突端面の各長さL1が、本発明における「各第2の長さのうちの最大の長さ」に相当する。以下、各長さL1のうちの最大の長さを他の長さL1と区別するときには、「長さL1a」ともいう。
また、この磁気ディスク10Bでは、図24に示すように、バーストパターン領域Abaにおける第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4において回転方向に沿って並ぶ凸部40a,凸部40a・・における突端面の回転方向に沿った長さL5が、同一半径位置におけるアドレスパターン領域Aabに形成された凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った長さL1、および同一半径位置におけるプリアンブルパターン領域Apに形成された凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った長さL5と等しくなるように規定されている。さらに、バーストパターン領域Abaに形成された凸部40a,40a・・の間の凹部40bの回転方向に沿った長さL6は、一例として、同一半径位置におけるプリアンブルパターン領域Apに形成された凹部40bの回転方向に沿った長さL6と等しくなるように規定されている。また、バーストパターン領域Abaにおける第1バースト領域Ab1と第2バースト領域Ab2との間、第2バースト領域Ab2と第3バースト領域Ab3との間、および第3バースト領域Ab3と第4バースト領域Ab4との間には、前述した磁気ディスク10Aと同様にして、非サーボ信号領域Axbがそれぞれ設けられて表面平坦性が悪化するのを回避するためのダミーパターンが形成されている。さらに、図24に示すように、データ記録領域Atとプリアンブルパターン領域Apとの間、プリアンブルパターン領域Apとアドレスパターン領域Aabとの間、アドレスパターン領域Aabとバーストパターン領域Abaとの間、およびバーストパターン領域Abaとデータ記録領域Atとの間には、前述した磁気ディスク10Aと同様にして、非サーボ信号領域Axがそれぞれ規定されている。
この磁気ディスク10Bでは、前述したように、データ記録領域Atに形成した凸部40aの半径方向に沿った長さL3が、サーボパターン領域Asbに形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さL1のうちの最大の長さ(この例では、外周側領域Aoにおけるアドレスパターン領域Aab内の凸部40aの回転方向に沿った各長さL1a)以下となるように規定されている。したがって、その直径がアドレスパターン領域Aab内の最大の長さL1aと等しい円形領域Qb(図25参照)をデータ記録領域At内のいずれかの部位に配置したときには、その円形領域Qb内に凹部40bの少なくとも一部が含まれることとなる。また、この磁気ディスク10Bでは、前述したように、プリアンブルパターン領域Apに形成した凸部40aの回転方向に沿った長さL5が、サーボパターン領域Asbに形成された同一半径位置の凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さL1と等しくなるように規定されている。したがって、その直径がアドレスパターン領域Aab内の最大の長さL1aと等しい円形領域Qb(図25参照)をプリアンブルパターン領域Ap内のいずれかの部位に配置したときには、その円形領域Qb内に凹部40bの少なくとも一部が含まれることとなる。なお、プリアンブルパターン領域Ap内に配置する円形領域Qbが凸部40aの突端面における内接円と一致する状態では、その円形領域Qb内に凸部40aと凹部40bとの境界部分が含まれることとなる。この場合、本明細書では、前述したように、凸部40aと凹部40bとの境界部分が含まれている状態を「凹部40bの一部が含まれている状態」とする。
さらに、この磁気ディスク10Bでは、前述したように、アドレスデータがRZ符号等に準じて符号化されてアドレスパターンがアドレスパターン領域Aabに形成されているため、アドレスデータにおいて「1」が多数連続する場合であっても凸部40aが回転方向に連続して形成されることなく、長さL1の凸部40aおよび凹部40bによって凹凸パターン40(アドレスパターン)が構成される。この結果、アドレスパターン領域Aabに形成した凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った長さが、各同一半径位置内毎に互いに等しい長さL1となる。したがって、図25に示すように、アドレスパターン領域Aab内の最大の長さL1(この例では、外周側領域Aoにおける凸部40aの長さL1a)と等しい円形領域Qbをアドレスパターン領域Aab内のいずれかの部位に配置したときには、その円形領域Qb内に凹部40bの少なくとも一部が含まれることとなる。なお、アドレスパターン領域Aab内に配置する円形領域Qbが凸部40aの突端面における内接円と一致する状態では、その円形領域Qb内に凸部40aと凹部40bとの境界部分が含まれることとなる。また、この磁気ディスク10Bでは、前述したように、バーストパターン領域Abaにおける第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4に形成した凸部40aの回転方向に沿った長さL5が、サーボパターン領域Asbに形成された同一半径位置の凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さL1と等しくなるように規定されている。したがって、その直径がアドレスパターン領域Aab内の最大の長さL1aと等しい円形領域Qb(図25参照)をバーストパターン領域Abaにおける第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4内のいずれかの部位に配置したときには、その円形領域Qb内に凹部40bの少なくとも一部が含まれることとなる。なお、バーストパターン領域Aba内に配置する円形領域Qbが凸部40aの突端面における内接円と一致する状態では、その円形領域Qb内に凸部40aと凹部40bとの境界部分が含まれることとなる。
さらに、この磁気ディスク10Bでは、プリアンブルパターン領域Apおよびバーストパターン領域Aba(第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4)に形成したサーボパターン40sbと同種の凹凸パターン40が非サーボ信号領域Ax,Axbに形成されている。したがって、プリアンブルパターン領域Apおよびバーストパターン領域Aba(第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4)内のいずれの位置に円形領域Qbを配置したとしても円形領域Qb内に凹部40bの少なくとも一部が含まれるこの磁気ディスク10Bでは、これらの領域と同種のサーボパターン40sbが形成されている非サーボ信号領域Ax,Axbのいずれかの部位に円形領域Qbを配置したときに、その円形領域Qb内に凹部40bの少なくとも一部が含まれることとなる。
このように、この磁気ディスク10Bでは、データ記録領域At,At・・およびサーボパターン領域Asb,Asb・・の全域において、任意に配置した円形領域Qb内に凹部40bの少なくとも一部が含まれるように凹部40b,40b・・が形成されてデータトラックパターン40tおよびサーボパターン40sbが構成されている。言い換えれば、この磁気ディスク10Bでは、データ記録領域At,At・・およびサーボパターン領域Asb,Asb・・の全域において、凸部40a,40aの突端面におけるいずれかの方向に対する長さ(この例では、凸部40aにおける回転方向に沿った長さ、および半径方向に沿った長さのいずれか)が上記の円形領域Qbの直径(この例では、長さL1a)よりも短く(または、等しく)なっている。つまり、この磁気ディスク10Bでは、従来の磁気ディスク10zとは異なり、その突端面が過剰に広い凸部40aがデータ記録領域At,At・・およびサーボパターン領域Asb,Asb・・のいずれの領域にも存在しないようにデータトラックパターン40tおよびサーボパターン40sbが形成されている。
この磁気ディスク10Bの製造に際しては、前述した磁気ディスク10Aの製造時と同様にして、図10に示す中間体20と図11に示すスタンパー30とを使用する。この場合、この磁気ディスク10Bを製造するためのスタンパー30は、本発明に係る磁気記録媒体製造用のスタンパーの他の一例であって、磁気ディスク10Bにおける凹凸パターン40(データトラックパターン40tおよびサーボパターン40sb)を形成するための凹凸パターン41を形成可能な凹凸パターン39が形成されて、インプリント法による磁気ディスク10Bの製造が可能に構成されている。この場合、スタンパー30の凹凸パターン39は、凸部39a,39a・・が磁気ディスク10Bの凹凸パターン40における凹部40b,40b・・に対応し、凹部39b,39b・・が凹凸パターン40における凸部40a,40a・・に対応して形成されている。このスタンパー30を用いた磁気ディスク10Bの製造時には、前述した磁気ディスク10Aの製造時と同様にして、アドレスパターン領域Aab内等に突端面が過剰に広い凸部40a(全方向に長い凸部40a)が存在しないため、アドレスパターン領域Aab内に残渣が生じる事態が回避される。なお、この磁気ディスク10Bの製造方法については、前述した磁気ディスク10Aの製造方法と同様であるため、詳細な説明を省略する。
この磁気ディスク10Bを搭載したハードディスクドライブ1では、前述した磁気ディスク10Aを搭載したハードディスクドライブ1と同様にして、磁気ディスク10Bに対する記録データの記録再生時において、非サーボ信号領域Ax,Ax・・および非サーボ信号領域Axb,Axb・・に形成された凹凸パターン40に対応するデータが制御部6によってトラッキングサーボ用のサーボデータとは相違するデータと判別される。具体的には、制御部6は、検出部4から出力されるサーボデータを含むデータのうち、プリアンブルパターン領域Ap、アドレスパターン領域Aabおよびバーストパターン領域Aba(非サーボ信号領域Axbを除く)に形成された凹凸パターン40に対応するデータに基づいてドライバ5を制御することにより、アクチュエータ3bを駆動させて磁気ヘッド3を所望のトラックにオントラックさせる。
また、このハードディスクドライブ1では、アドレスパターン領域Aabに形成された凹凸パターン40に対応して検出部4から出力されるデータに基づいてアドレスデータを抽出する際に、制御部6は、検出部4からの出力データがRZ符号等で符号化されているものとして出力データを復号化する。この結果、アドレスパターン領域Aabから読み取られたアドレスデータやバーストパターン領域Abaから読み取られたバースト信号等に基づいてトラッキングサーボ制御が実行されて、磁気ヘッド3を所望のデータ記録トラック(凸部40a,40a・・)にオントラックさせることが可能となる。これにより、データ記録領域At内の凸部40a,40a・・(データ記録トラック)にオントラックさせた磁気ヘッド3を介して記録データの記録再生を行うことが可能となる。
このように、この磁気ディスク10Bおよびハードディスクドライブ1によれば、各凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さL1が各同一半径位置内において互いに等しい長さ(第2の長さ)となるようにアドレスパターン領域Aabに凹部40bを形成したことにより、凸部40a,40a・・における突端面の半径方向に沿った長さが長くなる傾向があるアドレスパターン領域Aab内にその突端面の回転方向に沿った長さが過剰に長い凸部40a(全方向に長い凸部40a)が存在しないため、従来の磁気ディスク10zとは異なり、サーボパターン領域Asb内の凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、アドレスパターン領域Aab内の凸部40a,40a・・の上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、アドレスパターン領域Aab内の平坦性が良好で、しかもアドレスデータの確実な読み取りが可能な磁気ディスク10B、およびその磁気ディスク10Bを備えたハードディスクドライブ1を提供することができる。また、アドレスパターン領域Aab内の凸部40a,40a・・における回転方向に沿った最大の各長さが各同一半径毎に互いに等しい長さL1の1種類のみとなるため、アドレスパターン領域Aab内のいずれかの凸部40aにおける突端面が非磁性材料15から露出するまで十分にエッチング処理した場合であっても他の凸部40a自体が過度にエッチングされる事態を回避することができる。これにより、アドレスデータの正確な読み取りが可能な磁気ディスク10B、およびその磁気ディスク10Bを備えたハードディスクドライブ1を提供することができる。
また、この磁気ディスク10Bおよびハードディスクドライブ1によれば、各長さL1,L1・・(第2の長さ)のうちの最大の長さL1aと等しい直径の円形領域Qbをサーボパターン領域Asbのいずれかの部位に配置したときに、凹部40bの少なくとも一部が円形領域Qb内に含まれるようにサーボパターン領域Asbに凹部40bを形成したことにより、アドレスパターン領域Aabのみならず、サーボパターン領域Asbの全域において突端面が全方向に過剰に長い(突端面が過剰に広い)凸部40aが存在しないため、従来の磁気ディスク10zとは異なり、サーボパターン領域Asb内の凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、非サーボ信号領域Ax,Axb・・を含むサーボパターン領域Asbの全域において凸部40a,40a・・の上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、サーボパターン領域Asb内の平坦性が良好で、しかもトラッキングサーボ制御用のデータの確実な読み取りが可能な磁気ディスク10B、およびその磁気ディスク10Bを備えたハードディスクドライブ1を提供することができる。
さらに、この磁気ディスク10Bおよびハードディスクドライブ1によれば、基材の半径方向に沿った長さL3が各長さL1(第2の長さ)のうちの最大の長さL1a以下となるように各データ記録トラック(凸部40a)を形成したことにより、凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った長さが長くなるデータ記録領域At内にその突端面の半径方向に沿った長さが過剰に長い凸部40a(全方向に長い凸部40a)が存在しないため、データ記録領域At内の凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、凸部40a,40a・・(データ記録トラック)上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。したがって、サーボパターン領域Asbおよびデータ記録領域Atの双方(磁気ディスク10Bの全域)において平坦性が良好で、しかも安定した記録再生が可能な磁気ディスク10B、およびその磁気ディスク10Bを備えたハードディスクドライブ1を提供することができる。
また、このハードディスクドライブ1によれば、磁気ディスク10Bと、磁気ディスク10Bにおけるサーボパターン領域Asbから読み取られた所定の信号に基づいてトラッキングサーボ制御処理を実行する制御部6とを備えたことにより、非サーボ信号領域Axに形成された凹凸パターン40(ダミーパターン)の存在に影響されることなく、データ記録領域At内の凸部40a,40a・・(データ記録トラック)にオントラックさせた磁気ヘッド3を介して記録データの記録再生を行うことができる。
また、この磁気ディスク10Bを製造するためのスタンパー30によれば、磁気ディスク10Bにおける凹凸パターン40の凹部40b,40b・・に対応して形成された凸部39a,39a・・と、磁気ディスク10Bにおける凹凸パターン40の凸部40a,40a・・に対応して形成された凹部39b,39b・・とを有する凹凸パターン39を形成したことにより、中間体20に対するインプリント処理時に、突端面が過剰に広い凸部41aがアドレスパターン領域Aab内等に存在しない凹凸パターン41を形成することができる。したがって、この凹凸パターン41と凹凸位置関係が一致するマスク(この例では、凹凸パターン42)を用いて中間体20に対するエッチング処理を実行することにより、アドレスパターン領域Aab等に広い突端面を有する凸部40aが形成される事態を回避することができる。したがって、この凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、アドレスパターン領域Aab内等の凸部40a上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、平坦性が良好で、しかもアドレスデータ等の確実な読み取りが可能な磁気ディスク10Bを製造することができる。また、磁気ディスク10Bにおける各凸部40aの突端面に対応して、過剰に広い凹部39bがスタンパー30に存在しないため、中間体20における樹脂層18に凹凸パターン39を押し付けた際に、凹部39b内への樹脂材料(樹脂層18)の移動量の不足に起因する凸部41aの高さ不足(樹脂マスクの厚み不足)が生じる事態を回避することができる。したがって、凹凸パターン41をマスクとしてマスク層17をエッチングする際に、マスク層17に対するエッチングの完了に先立って凸部41aが消失する事態を回避することができる結果、十分な深さの凹部42bを有する凹凸パターン42を磁性層14の上に形成することができる。これにより、この凹凸パターン42をマスクとして磁性層14に対するエッチング処理を実行する際に、十分な深さの凹部40bを有する凹凸パターン40を中間層13上に形成することができる。
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、上記の磁気ディスク10A,10Bでは、バーストパターン領域Aba内に複数の凸部40a,40a・・を回転方向に沿って並べて形成することでバーストパターンが構成されているが、本発明はこれに限定されず、図26に示す磁気ディスク10Cのように、磁気ディスク10A,10Bにおける凸部40a,40a・・に代えて、複数の凹部40b,40b・・をバーストパターン領域Abc内に回転方向に沿って並べて形成することでバーストパターンを構成することもできる。なお、同図では、バーストパターン領域Abcにおける第1バースト領域Ab1および第2バースト領域Ab2のみを図示している。この場合、この磁気ディスク10Cでは、バーストパターン領域Abc内の4つの凹部40b,40b・・に接する円形領域Qcの直径L7が、アドレスパターン領域内に形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの最大の長さ以下となるようにアドレスパターン等のサーボパターン40scが形成されている。これにより、アドレスパターン領域内に形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さのうちの最大の長さと等しい直径の円形領域をサーボパターン領域Ascのいずれかの部位に配置したときに、その円形領域内に凹部40bの少なくとも一部(凸部40aおよび凹部40bの境界部分を含む)が含まれることとなる。この結果、この磁気ディスク10Cにおいても、前述した磁気ディスク10A,10Bと同様にして、非磁性材料15に対するエッチング処理に際して、サーボパターン領域Asc内に厚手の残渣が生じる事態が回避される。
また、上記の磁気ディスク10A、10B等では、凹凸パターン40における凸部40aの突端部から基端部までの全体が磁性層14(磁性材料)で形成されているが、本発明における凹凸パターンを構成する凸部はこれに限定されない。具体的には、例えば、図27に示す磁気ディスク10Dのように、ガラス基材11に形成した凹凸パターン(凹凸パターン40と凹凸の位置関係が同様の凹凸パターン)を覆うようにして薄厚の磁性層14を形成することにより、その表面が磁性材料で形成された複数の凸部40a,40a・・と底面が磁性材料で形成された複数の凹部40b,40b・・とによって凹凸パターン40を構成することができる(凹凸パターンが基材の一面に直接形成されている構成の一例)。さらに、図28に示す磁気ディスク10Eのように、凸部40aだけではなく凹部40bの底部を含めて磁性層14で形成して凹凸パターン40を構成することもできる。また、例えば凹凸パターン40における凸部40aの突端部のみが磁性層14で形成されて基端部側が非磁性材料または軟磁性材料で形成された凸部40a,40a・・を備えて凹凸パターン40を構成することもできる(図示せず)。
さらに、上記の磁気ディスク10A,10B等では、非サーボ信号領域Ax,Ax・・および非サーボ信号領域Axb,Axb・・にダミーパターン(凹凸パターン40)が形成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、データ記録領域Atとプリアンブルパターン領域Apとの間、プリアンブルパターン領域Apとアドレスパターン領域Aaa(Aab)との間、アドレスパターン領域Aaa(Aab)とバーストパターン領域Abaとの間、およびバーストパターン領域Abaとデータ記録領域Atとの間に、その全域が凹部で構成された非サーボ信号領域を規定すると共に、バーストパターン領域Abaにおける第1バースト領域Ab1と第2バースト領域Ab2との間、第2バースト領域Ab2と第3バースト領域Ab3との間、および第3バースト領域Ab3と第4バースト領域Ab4との間にも、その全域が凹部で構成された非サーボ信号領域を規定することもできる。このように形成した磁気ディスクによれば、残渣が生じるおそれのある凸部40aが凹部で構成された非サーボ信号領域内に存在しないため、サーボパターン領域内の凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、サーボパターン領域の全域において厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、サーボパターン領域Asa(Asb)内の平坦性が良好で、しかもサーボデータの確実な読み取りが可能な磁気ディスクを提供することができる。
また、上記の磁気ディスク10A,10B等では、プリアンブルパターン領域Apおよびバーストパターン領域Aba内の凹凸パターン40と同種のパターンを非サーボ信号領域Ax、Axb内にダミーパターンとして形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、各種サーボ信号用の凹凸パターン40とは形状が相違する任意の形状の凹凸パターン40をダミーパターンとして形成する構成を採用することができる。さらに、本発明に係る磁気記録媒体には、非サーボ信号領域Axが存在せずに、プリアンブルパターン領域、アドレスパターン領域およびバーストパターン領域が回転方向において互いに接するように連続して規定された磁気記録媒体や、非サーボ信号領域Axbが存在せずに、各バースト領域が回転方向において互いに接するように連続して規定された磁気記録媒体が含まれる。また、上記の磁気ディスク10A,10B等では、ガラス基材11の片面にのみサーボパターン40sa(40sb)およびデータトラックパターン40tが形成されているが、本発明に係る磁気記録媒体はこれに限定されず、ガラス基材11の表裏両面にサーボパターン40sa(40sb)およびデータトラックパターン40tを形成することもできる。さらに、本発明に係る磁気記録媒体は、磁気ディスク10A,10Bのような垂直記録方式の磁気記録媒体に限定されず、面内記録方式の磁気記録媒体にも適用することができる。