JP4587443B2 - 回路基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、発熱素子が複数設けられた回路基板の製造方法に関する。特に、電気エネルギーを発熱素子により熱エネルギーに変換し、その熱エネルギーを利用して液体を吐出する液体吐出装置用の回路基板の製造方法に関する。
以下インクジェットヘッドを例にあげて、従来の回路基板の製造方法を説明する。
インクジェット記録装置では、インクを微小な液滴として吐出口から被記録部材に吐出することにより画像を記録できる。その原理を説明すると、電気エネルギーを発熱素子により熱エネルギーに変換し、その熱エネルギーでインク中に気泡を発生させる。その気泡の作用により液体吐出ヘッドの先端部にある吐出口から液滴が吐出され、被記録部材に付着して画像が記録される。したがって、このような液体吐出ヘッドは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する発熱素子が複数設けられた回路基板を有している。
具体的には、絶縁性表面上に抵抗層、電極材料層が形成された後、電極材料層の一部が取り除かれて一対の電極が形成され、その電極の間が発熱部となる。その後、これらをインクから保護するための保護層と、発熱に伴う化学的或いは物理的なダメージから保護層を保護するための耐キャビテーション膜が形成される。
このような構成においては、発熱部を形成するための電極のエッジ部のステップカバレッジが悪くなる場合がある。それを模式的に示したのが図7である。Si基板上のSiO2の酸化層61上にはTaSiN等の抵抗層62が形成されている。抵抗層62上には例えばAlの配線層63があるが、一部にはAlの無い部分がある。Alの無い部分が発熱素子の発熱部64である。これらの上には、これらをインクから保護するためのP−SiN(プラズマCVDで形成されたSiN膜)等からなる保護層65と、発熱に伴う化学的或いは物理的なダメージから保護層65を保護するためのTa等からなる耐キャビテーション膜66が形成されている。
液体吐出装置用の回路基板は、上述したような発熱素子を高密度で複数有し、画像の記録を可能としている。そして、各発熱素子は、発熱素子を流れる電流をオンオフ制御するパワートランジスタ(不図示)とそれぞれ直列に接続されている。また、回路基板の上には吐出口が形成され、液体吐出装置となる。
上記の問題を解決するために、特許文献1や特許文献2に開示されているように、発熱素子の有する一対の電極のエッジ部にテーパ形状を持たせる方法が開発された。
この手法により、発熱素子の有する一対の電極のエッジ部においても、保護層および耐キャビテーション膜の被覆性を改善できる。以下、発熱素子の有する一対の電極のテーパ形状部分の形成方法を含め、回路基板の製造方法について説明する。
図6に回路基板の製造プロセスのフローを、図5(a)に製造した回路基板の発熱素子周辺の断面図を示す。まず、基板としてSiウェハを使用し、その上には、熱酸化処理により厚さ数μm程度のSiO2の酸化層41が形成されている。その上に、スパッタリングにより厚さ50nm程度のTaSiN等の抵抗材料層を形成する。その後、例えばAlを膜厚200nm程度で成膜して電極材料層を形成する。その上にレジスト層(I)を形成し、パターニングした後、RIE等を用いてAl及び抵抗材料層をドライエッチングして素子分離を行い、配線層43及び抵抗層42を形成する。レジスト層(I)をO2アッシングにより除去した後、レジスト層(II)を形成し、パターニングを実施した後、発熱素子の抵抗部44となる部分のAlをウェットエッチングにて除去する。このとき、ウェットエッチング液としてはテトラ・メチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド(以下、TMAH)を主成分とする有機アルカリエッチング液や、リン酸を主成分とする酸エッチング液を用いることで、レジスト層(II)の端部がエッチングされ後退しながらAlがエッチングされるため、形成される一対の電極のエッジ部がテーパ形状となる。次に、膜厚300nm程度のSiNによる保護層45をプラズマCVD法により成膜をし、Ta膜46をスパッタリングにより成膜する。Ta膜46の不要な部分をドライエッチング法により除去することにより、回路基板となる。
特開平4−320849号公報 特開平4−320850号公報
しかし、近年、印刷の高精彩化が更に進み、一回あたりのインクの吐出量が数十plから数plへと少なくなってきている。また、さらなる印刷の高速化の要求も強く、液体吐出ヘッドの往復移動を減らすために、回路基板の長尺化が図られている。このため、一回路基板当たりの発熱素子数が、数百個から数千個へと増加している。このような状況下、上述のテーパ形状となる一対の電極の形成方法においもそのテーパ形状にわずかなゆらぎが起こり、一部の発熱素子上の保護層および耐キャビテーション膜の被覆性が悪くなるという問題が発生してきている。
そこで、本発明の目的は、発熱素子上の保護層および耐キャビテーション膜の被覆性が良好で、耐久性に優れた液体吐出装置用の回路基板の製造方法を提供することにある。
上記の原因は、レジスト層(I)を除去した後の電極材料層表面に、レジスト層の灰化物やエッチング時の付着物のAl化合物などが残存し、あるいは電極材料層を形成する材料の酸化物が形成され、その後に行うウェットエッチング処理時にこれらが庇49のような構造になって残ってしまうためであり、それによって保護層および耐キャビテーション膜の被覆性が低下していることを見出した(図5(b)参照)。このため、電極材料層の表面部分を、そのエッチング速度が電極材料層を形成する材料よりも速くなるように表面処理することで、この問題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、基板の絶縁性表面上に設けられた抵抗層と、該抵抗層上に間隔をおいて形成された一対の電極を有する素子の複数と、を有する回路基板の製造方法において、(a)前記基板の絶縁性表面上に、前記抵抗層を形成するための抵抗材料層と、前記電極を形成するための電極材料層とをこの順に積層する工程と、(b)前記電極材料層上に、前記素子ごとに分離するためのパターンを有するレジスト層(I)を形成する工程と、(c)該レジスト層(I)のパターンに基づいて前記抵抗材料層及び前記電極材料層をドライエッチングによりパターニングして、前記抵抗層上に前記電極材料層が積層された積層構造を形成する工程と、(d)該積層構造上のレジスト層(I)を除去する工程と、(e)前記間隔を形成するためのパターンを有するレジスト層(II)を形成する工程と、(f)該レジスト層(II)のパターンに基づいてウェットエッチングにより前記電極材料層をパターニングして、前記間隔を形成して前記素子を形成する工程と、(g)少なくとも該工程(e)の前に、前記電極材料層の表面部分を、そのエッチング速度が前記電極材料層を形成する材料よりも速くなるように表面処理する工程と、を有し、前記工程(g)が、前記電極材料層のレジスト層(II)側の表面部分に、前記電極材料層を形成する材料のフッ化物を形成する処理であり、前記工程(d)においてフルオロカーボン系のガスによるアッシングを行うことにより、前記工程(d)と工程(g)を同時に行うことを特徴とする回路基板の製造方法である。
上記のような本発明の回路基板の製造方法によれば、素子上の保護層および耐キャビテーション膜の被覆性が良好で、耐久性に優れた液体吐出装置用の回路基板を製造することが可能となる。
また、前記工程(f)の後に、更に、少なくとも前記素子を覆うように、保護層を形成する工程を含むことが好ましい。前記保護層の厚さは前記電極材料層の厚さ以下であることが好ましい。また、前記保護層と前記電極との厚さの比が、1≦電極/保護層≦2であることが好ましい。
本発明によって、発熱素子上の保護層および耐キャビテーション膜の被覆性が良好で、耐久性に優れた液体吐出ヘッド用の回路基板の製造方法を提供できる。
本発明の回路基板の製造方法は、基板の絶縁性表面上に設けられた抵抗層と、該抵抗層上に所定の間隔をおいて形成された一対の電極を有する素子の複数と、を有する回路基板の製造方法において、(a)前記基板の絶縁性表面上に、前記抵抗層を形成するための抵抗材料層と、前記電極を形成するための電極材料層とをこの順に積層する工程と、(b)前記電極材料層上に、前記素子ごとに分離するためのパターンを有するレジスト層(I)を形成する工程と、(c)該レジスト層(I)のパターンに基づいて前記抵抗材料層及び前記電極材料層をドライエッチングによりパターニングして、前記抵抗層上に前記電極材料層が積層された積層構造を形成する工程と、(d)該積層構造上のレジスト層(I)を除去する工程と、(e)前記間隔を形成するためのパターンを有するレジスト層(II)を形成する工程と、(f)該レジスト層(II)のパターンに基づいてウェットエッチングにより前記電極材料層をパターニングして、前記間隔を形成して前記素子を形成する工程と、(g)少なくとも該工程(e)の前に、前記電極材料層の表面部分を、そのエッチング速度が前記電極材料層を形成する材料よりも速くなるように表面処理する工程と、を有することが特徴である。
上記ウェットエッチング処理は、発熱素子の抵抗部における電極のエッジ部にテーパ形状を持たせるため、TMAH(テトラ・メチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド)を主成分とする有機アルカリエッチング剤や、リン酸を主成分とする酸エッチング剤を用いて行うことによって、所望のテーパ形状を得ることが容易であり好適である。
このような本発明の回路基板の製造方法によれば、発熱部を形成するためのウェットエッチング処理の際に、配線層のレジスト(II)側の表面部分のエッチングが、それ以外の部分よりも速く進むため、その表面部分に庇のような構造が残ることがなく、保護層および耐キャビテーション膜の被覆性を改善することができる。
本発明においては、例えば、以下に示す手法のうち一つまたは二つ以上を適宜組合せて実施することで、目的とする配線層のレジスト層(II)側の表面部分を形成することが可能となる。
(1)工程(a)〜(d)を酸素のない状態で行う。
(2)工程(d)で、フルオロカーボン系のガスによるアッシングを行う。
(3)工程(d)でのアッシングの後、配線層の表面部分にレジスト層の灰化物やエッチング時の付着物のAl化合物などを除去する。
(4)工程(d)の後、配線層の表面部分の酸化膜を除去する。
(5)工程(d)の後もしくは工程(d)と同時に、配線層の表面部分をフッ化処理、塩化処理、窒化処理のいずれかを行う。
上記の(1)としては、例えば、真空中で行う、不活性ガス雰囲気下で行う等が挙げられる。
上記の(2)としては、例えば、CF4−O2−メタノールガス、CF4−O2ガス、CHF3ガス、C26ガス、C48ガス等のフルオロカーボン系のガスによるアッシングを行うことが挙げられる。
上記の(3)としては、例えば、TMAH(テトラ・メチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド)やSST−A1(東京応化製商品名、ポリマー除去剤)を用いて除去することが挙げられる。
上記の(4)としては、例えば、真空中でのアルゴンスパッタにより除去することが挙げられる。
上記の(5)としては、例えば、F2あるいはCF4によるプラズマ放電処理(フッ化処理)、BCl3あるいはSiHCl3によるプラズマ放電処理(塩化処理)、NH3あるいはヒドラジンによるプラズマ放電処理(窒化処理)等を行うことが挙げられる。
本発明における配線層を形成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に制限なく使用できるが、通常は、アルミニウムや銅を主成分とする金属を用いることが多い。特に、配線層を形成する材料としてアルミニウムを主成分とする材料を用いた場合に、従来技術において発熱素子上の保護層および耐キャビテーション膜の被覆性が悪くなる傾向があり、本発明の効果が大きい。例えば、Al、Al−Cu、Al−Si−Cu、Al−Si,Al−Ta等が挙げられる。なお、「主成分」とは、その材料中に最も多く含まれる成分を意味する。配線層の厚みは200nm〜15000nmである時に、本発明は特に好適に用いることが可能となる。
また、配線層がアルミニウムを主成分とする材料からなる場合、上述の庇のような構造は、配線層のレジスト層(II)側の表面部分が酸化されることで形成された酸化アルミニウムによるものである。すなわち、表面部分に酸化アルミニウムが存在しない時、あるいは酸化アルミニウムが存在し、その酸化アルミニウムの領域が配線層のレジスト層(II)側の表面部分に対して95at%未満である時に、工程(f)における配線層のレジスト(II)側の表面部分のエッチング速度が、配線層を形成する材料よりも速くなる構成とすることができ、好ましい実施の態様である。なお、「at%」とは「atomic%」のことであり、XPSやSIMSを用いた分析により求められるものである。
さらに、前記素子を覆うように設ける保護層の厚さが電極材料層の厚さ以下である場合には、発熱素子上の保護層および耐キャビテーション膜の被覆性が悪くなる傾向があり、本発明による効果が大きい。
また配線層とは、パターニングすることにより一対の電極を形成したものであり、また該電極間を通電するための配線を兼ねるものである。
本発明は、基板の絶縁性表面上に設けられた抵抗層と、該抵抗層上に所定の間隔をおいて形成された一対の電極を有する素子の複数と、を有する回路基板の製造方法において、(a)前記基板の絶縁性表面上に、前記抵抗層を形成するための抵抗材料層と、前記電極を形成するための電極材料層とをこの順に積層する工程と、(b)前記電極材料層上に、前記素子ごとに分離するためのパターンを有するレジスト層(I)を形成する工程と、(c)該レジスト層(I)のパターンに基づいて前記抵抗材料層及び前記電極材料層をドライエッチングによりパターニングして、前記抵抗層上に前記電極材料層が積層された積層構造を形成する工程と、(d)該積層構造上のレジスト層(I)を除去する工程と、(e)前記間隔を形成するためのパターンを有するレジスト層(II)を形成する工程と、(f)該レジスト層(II)のパターンに基づいてウェットエッチングにより前記電極材料層をパターニングして、前記間隔を形成して前記素子を形成する工程と、を有し、更に、前記レジスト層(I)を除去する工程は、少なくともフッ素を含むガスを用いたアッシングであり、該アッシング後に、前記電極材料層表面に形成された、少なくとも前記レジスト層(I)の灰化物もしくは前記電極材料層の化合物のいずれかを除去する工程であることを特徴とする回路基板の製造方法によっても達成可能である。
以下において、実施例1および3は本発明の範囲に含まれる実施例であり、実施例2は本発明に関連する参考例である。
(実施例1)
図1は、実施例1における回路基板の製造プロセスのフローを示す図、図2はプロセス途中での断面図の模式図である。まず、基板としてSiウェハを使用し、その上に熱酸化により厚さ数μm程度の絶縁性表面201としてSiO2の酸化層を形成した。さらに、酸化層上に、スパッタリングにより抵抗材料層202としてTaSiNを50nmの厚みで形成した。その後、電極材料層203として、Cuを0.5質量%含むAlを用い、膜厚600nmに成膜して形成した(図2(a))。次に、電極材料層203の上にレジスト層(I)204を形成し、パターニングした(図2(b))。その後、RIEによって電極材料層及び抵抗材料層をドライエッチングして素子分離を行い、配線層203a及び抵抗層202aを形成した(図2(C))。その後、レジスト層(I)をCF4、O2、メタノールガスを用いたプラズマアッシングで除去した。このとき、配線層表面には、アッシング条件によっては、一部フッ化アルミニウムが形成されている(不図示)。その後、配線層表面に残存したレジスト層(I)の灰化物やエッチング時の付着物のAl化合物などを、TMAH(テトラ・メチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド)を用いて除去した。次に、レジスト層(II)205を形成し、パターニングした後(図2(d))、発熱素子の発熱部206となる配線層をウェットエッチングにて除去した(図2(e))。ウェットエッチング液としては、TMAHを主成分とする有機アルカリエッチング液を用いた。配線層表面にはフッ化アルミニウムが形成されているために、すばやくエッチングされ、形成された一対の電極のエッジ部はテーパ形状を有する構造となり、庇のような構造は見られなかった。また、レジスト層(I)の灰化物やエッチング時の付着物のAl化合物などを、除去することによっても庇はできない、もしくは除去しない場合に比べて庇が形成される程度を低減させることができた。次に、レジスト層(II)を除去した後、保護層207として膜厚300nmのSiNをプラズマCVD法により成膜し(図2(f))、その上に更に耐キャビテーション膜208として、Taをスパッタリングにより成膜した。耐キャビテーション膜の不要な部分をドライエッチング法により除去することにより回路基板とした(図2(g))。製造した回路基板の発熱素子上の保護膜及び耐キャビテーション膜の被覆性は良好であった。
(実施例2)
図3は、実施例2における回路基板の製造プロセスのフローを示す図である。まず、実施例1と同様に、Si基板上に酸化層、抵抗材料層、電極材料層を形成した。電極材料層の上に、レジスト層(I)を形成し、パターニングした後、RIEによって素子分離を行い電極材料層及び抵抗材料層をドライエッチングして配線層及び抵抗層を形成した。その後、レジスト層(I)をH2O、O2によるアッシングにより除去した。このとき、配線層表面には、酸化アルミニウムが形成されている。その後、配線層表面に残存したレジスト層(I)の灰化物やエッチング時の付着物のAl化合物などを、SST−A1(東京応化製商品名、ポリマー除去剤)を用いて除去した。次に、真空中でアルゴンスパッタを用いて配線層表面の酸化アルミニウムを除去した後、CF4をプラズマ放電させて、配線層表面をフッ化アルミニウムにした。本手法によれば、実施例1に比べて配線層表面をより均一にフッ化させることができた。次に、レジスト層(II)を形成し、パターニングした後、発熱素子の発熱部となる配線層をウェットエッチングにて除去した。形成された一対の電極のエッジ部は実施例1と同様にテーパ形状を有する構造となり、庇のような構造は見られなかった。なお、ウェットエッチング液としては、TMAHを主成分とする有機アルカリエッチング液を用いた。次に、膜厚300nmのSiNによる保護層をプラズマCVD法により成膜し、その上に更にTaによる耐キャビテーション膜をスパッタリングにより成膜した。耐キャビテーション膜の不要な部分をドライエッチング法により除去することにより回路基板とした。製造した回路基板における発熱素子上の保護膜及び耐キャビテーション膜の被覆性は良好であった。
(実施例3)
図4は、実施例3における回路基板の製造プロセスのフローを示す図である。まず、実施例1と同様に、Si基板上に酸化層、抵抗材料層、電極材料層を形成した。電極材料層の上に、レジスト層(I)を形成し、パターニングした後、RIEによって電極材料層及び抵抗材料層をドライエッチングして素子分離を行い配線層及び抵抗層を形成した。その後、レジスト層(I)をO2、CF4ガスによるアッシングにより除去した。このとき、配線層表面には、フッ化アルミニウムが形成されている。その後、配線層表面に残存したレジスト層(I)の灰化物やエッチング時の付着物のAl化合物などを、SST−A1(東京応化製商品名、ポリマー除去剤)を用いて除去した。次に、NH3をプラズマ放電させて、配線層表面に窒化アルミニウムを形成させた。このとき、配線層表面に形成された窒化アルミニウムは大気中に存在する程度の水分では溶解しない。次に、レジスト層(II)を形成し、パターニングした後、発熱素子の発熱部となる配線層をウェットエッチングにて除去した。ウェットエッチング液としては、TMAHを主成分とする有機アルカリエッチング液を用いた。このとき窒化アルミニウムはアルミニウムより速くエッチングされるため、形成された一対の電極のエッジ部はテーパ形状を有する構造となり、庇のような構造は見られなかった。次に、膜厚300nmのSiNによる保護層をプラズマCVD法により成膜し、その上に更にTaによる耐キャビテーション膜をスパッタリングにより成膜した。耐キャビテーション膜の不要な部分をドライエッチング法により除去することにより回路基板とした。製造した回路基板における発熱素子上の保護膜及び耐キャビテーション膜の被覆性は良好であった。
(比較例)
従来の回路基板の製造方法である図6に示す製造プロセスのフローにて回路基板を作製した。まず、実施例1と同様に、Si基板上に酸化層、抵抗材料層、電極材料層を形成した。電極材料層の上に、レジスト層(I)を形成し、パターニングした後、RIEによって電極材料層及び抵抗材料層をドライエッチングして素子分離を行い配線層及び抵抗層を形成した。その後、レジスト層(I)をO2ガスによるアッシングにより除去した。このとき、配線層表面には、酸化アルミニウムが形成されている。次に、レジスト層(II)を形成し、パターニングした後、発熱素子の発熱部となる配線層をウェットエッチングにて除去した。ウェットエッチング液としては、TMAHを主成分とする有機アルカリエッチング液を用いた。次に、膜厚300nmのSiNによる保護層をプラズマCVD法により成膜し、その上に更にTaによる耐キャビテーション膜をスパッタリングにより成膜した。耐キャビテーション膜の不要な部分をドライエッチング法により除去することにより回路基板とした。
表1に、実施例1〜3および比較例で作製した回路基板におけるインク耐久性の比較、評価結果を示す。試験方法は、回路基板を液体吐出ヘッドにくみ、10000回のインクの吐出を行った後、各回路基板上の発熱素子の断線数を調べた。各々の方法について、それぞれ母数は100000個とした。
Figure 0004587443
実施例1〜3のいずれにおいても断線数は比較例に比べて格段に向上し、更に耐久性に優れていた。
また、実施例1におけるアッシング条件を変更したり、ポリマー除去方法を変更したりすることにより、Al表面のフッ化アルミニウムと酸化アルミニウムの領域の面積比を変化させることが可能であり、フッ化アルミニウムがAl表面に5at%以上存在すればインク耐久性の向上が見られた。
上記の実施例1〜3においては、Cuを0.5質量%含むAlを用い、配線層の膜厚を600nmとしたが、Al−Si−Cu、Al−Si、Al−Ta等のAlを含む材料を用いて配線層とした場合も同様の効果が見られた。また、配線層をCuで形成し、配線層表面をフッ化処理等した場合も同様の効果が得られた。また、配線層膜厚は200nm〜15000nmの範囲で有効であった。
さらに、保護層の膜厚が配線材料層の膜厚以下である場合には、比較例の製造方法において被覆性が極端に低下するため、有効であった。特に、配線層(電極)/保護層の比が1〜2の場合に、本発明のプロセスは有効であり、1.4〜1.6の場合が最も効果が大きかった。
また本発明においては、電極と、前記保護層との界面に形成される該電極を形成する材料の、フッ化物、窒化物、及び塩化物のいずれかが形成されていることが好ましい。その中でも、特にフッ化アルミニウムが好ましい。それは、フッ化物は塩化物に比べて水分が付着した場合のコロージョン(corrosion)が起こりにくく、窒化物に比べて水に対する溶解性が高いため、テーパーエッチングを行ない易く、また生成エネルギーが低いために容易に形成されやすいためである。
(液体吐出装置)
本発明の実施形態による液体吐出ヘッドは、例えば、上述した各実施形態による回路基板に、吐出口やそれに連通する液路を形成するために、成形樹脂やフィルムなどからなる天板などの吐出口形成部材を組合せれば作製できる。そして、インクを収納した容器を接続して、プリンター本体に搭載し、本体の電源回路から電源電圧を、画像処理回路から画像データをヘッドに供給すれば、インクジェットプリンタとして動作することになる。
図8は、本発明の液体吐出ヘッドの一実施形態を説明するための図であり、液体吐出ヘッドの一部分を示している。
本発明の回路基板152上には、電流が流れる電気信号を受けることで熱を発生し、その熱によって発生する気泡によって吐出口153からインクを吐出するための電気熱変換素子141が複数列状に配されている。この電気熱変換素子のそれぞれには、各電気熱変換素子を駆動するための電気信号を供給する配線電極154が設けられており、配線電極の一端側はスイッチ素子(不図示)に電気的に接続されている。
電気熱変換素子141に対向する位置に設けられた吐出口153へインクを供給するための流路155がそれぞれの吐出口153に対応して設けられている。これらの吐出口153および流路155を構成する壁が溝付き部材156に設けられており、これらの溝付き部材156を回路基板152に接続することで流路155と複数の流路にインクを供給するための共通液室157が設けられている。
図9は本発明の回路基板152を組み込んだ液体吐出ヘッドの構造を示すもので、枠体158に本発明の回路基板152が組み込まれている。この回路基板152上には前述のような吐出口153や流路155を構成する溝付き部材156が取り付けられている。そして、装置側からの電気信号を受け取るためのコンタクトパッド159が設けられており、フレキシブルプリント配線基板160を介して回路基板152の有する回路に、装置本体の制御器から各種駆動信号となる電気信号が供給される。
図10は本発明の液体吐出ヘッドが適用される液体吐出装置の一実施形態を説明するためのものであり、インクジェット記録装置IJRAの概観を示している。
駆動モータ9011の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア5011、5009を介して回転するリードスクリュー5005のら線溝5004に対して係合するキャリッジHCは、ピン(不図示)を有し、矢印a、b方向に往復移動される。
5002は紙押え板であり、キャリッジ移動方向にわたって紙を記録媒体搬送手段であるプラテンに対して押圧する。5007、5008はフォトカプラでキャリッジのレバー5006のこの域での存在を確認して駆動モータ9011の回転方向切換等を行うためのホームポジション検知手段である。記録ヘッドの前面をキャップするキャップ部材を支持する部材が設けられており、5013はこのキャップ内を吸引する吸引手段でキャップ内開口5023を介して記録ヘッドの吸引回復を行う。5017はクリーニングブレードで、5019はこのブレードを前後方向に移動可能にする部材であり、本体支持板5018にこれらは支持されている。ブレードは、この形態でなく周知のクリーニングブレードが本例に適用できることはいうまでもない。又、5012は、吸引回復の吸引を開始するためのレバーで、キャリッジと係合するカム5020の移動に伴って移動し、駆動モータからの駆動力がクラッチ切換等の公知の伝達手段で移動制御される。
これらのキャッピング、クリーニング、吸引回復は、キャリッジがホームポジション側領域にきたときにリードスクリュー5005の作用によってそれらの対応位置で所望の処理が行えるように構成されているが、周知のタイミングで所望の作動を行うようにすれば、本例には何れも適用できる。上述における各構成は単独でも複合的に見ても優れた発明であり、本発明にとって好ましい構成例を示している。
尚、本装置は、電源電圧や画像信号や駆動制御信号などを回路基板152に供給するための電気回路からなる制御器駆動信号供給手段(不図示)を有している。
又、本発明は、上述した各種実施形態に限定されるものではなく、上述した課題を解決できるものであれば、本発明の各構成要件を代替物や均等物に置換できることは明らかである。
本発明の一実施例である実施例1における回路基板の製造プロセスのフローを示す図である。 本発明の一実施例である実施例1における回路基板の製造プロセス途中での断面模式図である。 本発明の一実施例である実施例2における回路基板の製造プロセスのフローを示す図である。 本発明の一実施例である実施例3における回路基板の製造プロセスのフローを示す図である。 回路基板の発熱素子周辺の概略を示す断面図であり、(a)は保護膜及び耐キャビテーション膜の被覆性が良好な回路基板の断面図、(b)は配線表面に庇にような構造が形成され保護膜及び耐キャビテーション膜の被覆性が悪い回路基板の断面図である。 従来の回路基板の製造プロセスのフローを示す図である。 従来の回路基板の発熱素子周辺の構造を示す断面図である。 本発明の回路基板を用いた液体吐出ヘッドの構成の一部分を示す図である。 本発明の回路基板を用いた液体吐出ヘッドの構造を示す図である。 本発明の回路基板を用いた液体吐出ヘッドを適用した液体吐出装置の概観を示す図である。
符号の説明
41 酸化層
42 抵抗層
43 配線層
44 抵抗部
45 保護層
46 Ta膜
49 庇
61 酸化層
62 抵抗層
63 配線層
64 発熱部
65 保護層
66 耐キャビテーション膜
201 絶縁性表面
202 抵抗材料層
202a 抵抗層
203 電極材料層
203a 配線層
204 レジスト層(I)
205 レジスト層(II)
206 発熱素子の発熱部
207 保護層
208 耐キャビテーション膜
141 電気熱変換素子
152 回路基板
153 吐出口
154 配線電極
155 流路
156 溝付き部材
157 共通液室
158 枠体
159 コンタクトパッド
160 フレキシブルプリント配線基板
5002 紙押え板
5004 ら線溝
5005 リードスクリュー
9011 駆動モータ
5005 リードスクリュー
5006 レバー
5007、5008 フォトカプラ
5011、5009 駆動力伝達ギア
5012 レバー
5013 吸引手段
5017 クリーニングブレード
5018 本体支持板
5019 部材
5020 カム
5023 キャップ内開口
9011 駆動モータ
IJRA インクジェット記録装置
HC キャリッジ

Claims (4)

  1. 基板の絶縁性表面上に設けられた抵抗層と、該抵抗層上に間隔をおいて形成された一対の電極を有する素子の複数と、を有する回路基板の製造方法において、
    (a)前記基板の絶縁性表面上に、前記抵抗層を形成するための抵抗材料層と、前記電極を形成するための電極材料層とをこの順に積層する工程と、
    (b)前記電極材料層上に、前記素子ごとに分離するためのパターンを有するレジスト層(I)を形成する工程と、
    (c)該レジスト層(I)のパターンに基づいて前記抵抗材料層及び前記電極材料層をドライエッチングによりパターニングして、前記抵抗層上に前記電極材料層が積層された積層構造を形成する工程と、
    (d)該積層構造上のレジスト層(I)を除去する工程と、
    (e)前記間隔を形成するためのパターンを有するレジスト層(II)を形成する工程と、
    (f)該レジスト層(II)のパターンに基づいてウェットエッチングにより前記電極材料層をパターニングして、前記間隔を形成して前記素子を形成する工程と、
    (g)少なくとも該工程(e)の前に、前記電極材料層の表面部分を、そのエッチング速度が前記電極材料層を形成する材料よりも速くなるように表面処理する工程と、
    を有し、
    前記工程(g)が、前記電極材料層のレジスト層(II)側の表面部分に、前記電極材料層を形成する材料のフッ化物を形成する処理であり、
    前記工程(d)においてフルオロカーボン系のガスによるアッシングを行うことにより、前記工程(d)と工程(g)を同時に行うことを特徴とする回路基板の製造方法。
  2. 更に、前記工程(f)の後に、少なくとも前記素子を覆うように、保護層を形成する工程を含む請求項に記載の回路基板の製造方法。
  3. 前記保護層の厚さは前記電極材料層の厚さ以下である請求項記載の回路基板の製造方法。
  4. 前記保護層と前記電極との厚さの比が、1≦電極/保護層≦2である請求項記載の回路基板の製造方法。
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