JP4581315B2 - 発色性の良好なポリエステル太細糸およびその製造方法 - Google Patents

発色性の良好なポリエステル太細糸およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は糸長手方向に太細を有する、生糸使用可能で薄地織編物用途に好適で黒発色性に優れたポリエステル太細糸に関するものであり、更に詳しくは、太細のピッチが短く分散しており、太細のコントラストを小さくすることによって、自然な杢調を表現することが可能な黒発色性に優れたポリエステル太細糸であり、繊維表面状態の改質と繊維配向抑制の相乗効果により従来の表面改質のみでは実現し得なかった発色性と高次通過性を満足しうるポリエステル太細糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル未延伸糸を不均一延伸して糸長手方向に太部のある糸とすることは公知の技術である。しかしながら単に不均一延伸して得られた太細糸は通常沸水収縮率が50〜80%と極めて大きくこのままで織編物とした場合には精錬染色仕上げなどの際の収縮が大きすぎて異常に高密度の硬い風合いのものしか得られない。
【0003】
すなわち、適正な織編物とするには、より低収縮化することが必要であり、このために特開昭57−112428号公報、特開昭57−139514号公報および特開昭57−143515号公報などで太細を有するポリエステルマルチフィラメント糸をリラックス熱処理することによる低収縮化技術が提案されている。しかしながらこれらの技術を詳細に検討してみると、糸長手方向に沸水収縮率のバラツキが大きく、そのため織編物としてから精練するときにパッカリング状のシボムラが多発し、織編物品位が不良になることが判明した。
【0004】
また、特開昭51−147616号公報にはポリエステル太細糸を0.95〜1.15の緊張率で緊張熱処理し、仮撚加工糸とした場合に太細効果の明瞭な糸とする技術、特開昭57−191340号公報にはポリエステル太細糸を0.95〜1.05の延伸比で熱処理し、熱劣化の小さい糸とする技術が開示されている。しかしながら単に低倍率延伸して緊張熱処理するだけでは太部と細部の位相がそろってしまうため、人工的な太細糸となり、自然な杢感のある素材は得られない。
【0005】
このように太細糸は糸中に未延伸部を残しているので、加工性にも問題が残っており、高次加工工程で熱処理を行った場合、糸切れしやすく、また、過度に硬くなったりする。これは太い部分を構成しているのがほとんど未延伸部であることに起因しており、この未延伸部の集中が熱処理の際に種々のトラブルを引き起こす主たる原因となっているのである。
【0006】
かかる問題点を改良する方法として太部及び細部を繊維軸方向並びにフィラメント間で高度に分散させる方法が提案されており、例えば、特開昭60−39411号公報による方法がある。該特許はポリエステル未延伸糸を該未延伸糸の結晶化温度以下の温度で且つ延伸後の伸度が70%以上になる自然延伸比以下の倍率で延伸し、ガラス転移温度以上、結晶化温度以下の温度で1.001〜1.040倍の緊張比で熱処理する方法であるが、この方法によれば、マルチフィラメント糸はその繊維軸方向にフィラメント間において、太部の分散が良くなると書かれている。しかし、この方法によって製造される延伸糸を用いて製織および染色した布帛は太部及び細部がおおよそは分散しているものの、未だ太部及び細部の分散ムラに由来する染色ムラが目立つ物であり、かつ分散ムラに由来する太部の集中により布帛の強度も低下してしまうという欠点があった。
【0007】
また、この未延伸部の局部的な集中を防止するために、異繊度フィラメントを用いる方法が特開昭59−76916号公報で提案されているが、この方法では、異繊度のフィラメントを用いる必要があり、コスト的にも高くなる。また、この方法で得られる太細糸は製織した際に染色ムラが目立ち、本発明の目的とする染色ムラが極めて小さいポリエステル太細糸ではなかった。
【0008】
また、ポリエステル繊維は優れた物理的、化学的特性を有する故に最も広く使用されている合成繊維であるが、他のアセテート、レーヨン、羊毛、絹などといった天然繊維と比較して染色布の発色性に劣り、さらに繊維表面のなめらかさのため特有の鏡面光沢があり天然繊維のような色の深みが得られないといった欠点を有する。特に黒色の深みは天然繊維と比較して大幅に劣るため、ブラックフォーマル分野などでは黒の発色性向上が強くのぞまれている。
【0009】
このような問題を解決する手段として、繊維表面を粗面化することにより光の表面反射量を少なくして発色性を向上させる手法が開示されている。
【0010】
例えば特開昭52−99400号公報には、有機合成繊維にグロー放電プラズマ中でプラズマを照射して、プラズマエッチングにより繊維表面に微細な凹凸を付与し、発色性を向上せしめる方法が開示されているが、新規装置導入の必要があり、コスト面での実用性が劣ること、および顕著な発色性の向上が期待できないなどの問題点があった。
【0011】
また、特開昭55−107512号公報には平均一次粒子径が100mμ以下である不活性無機微粒子含有ポリエステル繊維をアルカリ溶液処理することによって、糸表面に0.2〜0.7μmの不規則でランダムな凹凸を発生させ発色性を向上させる方法が開示されている。
【0012】
この方法では繊維に特定の表面形態を付与できるため、ある程度の発色性向上効果は期待できるが、基質がポリエチレンテレフタレートであるため十分な発色性向上効果があるとはいえず、また、十分な発色性を得るためには多量の無機粒子の添加の必要があるため、紡糸糸切れが多発するとともに、高次加工の際にも糸切れや毛羽の発生などがあり、布帛の品位が低下してしまうという問題があった。
【0013】
すなわち、従来の技術では高い発色性と高次加工等の汎用性を両立することができなかった。
【0014】
本発明は上述の従来の欠点を解消するため、更に太部及び細部の分散性を向上させる検討を行った結果、交絡部を有する太細糸が極めて分散性が高く、製織した布帛の染色ムラが極めて小さく、かつ生糸、薄地織編物用にしたときにソフトな風合いと自然な杢調を有する太細糸が得られることがわかった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術では達成できなかった、太細のピッチが分散した自然な杢調と高い黒発色性を有し、さらに衣料用織編物とした際にふくらみ、ソフト感に優れているとともに、従来技術では達成できなかった発色性と製糸性・高次加工での汎用性を両立することができるポリエステル太細糸を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであるコロイダルシリカ微粒子を0.4〜5重量%含有したポリエステル繊維であって、U%が3〜12%、沸水収縮率が4〜25%、交絡が3コ/m以上、太部および細部のピッチが0.1〜10cmであることを特徴とするポリエステル太細糸によって達成できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明におけるポリエステルとは、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成誘導体、主たるグリコール成分がエチレングリコールからなるものであり、ポリエステルに添加するコロイダルシリカ微粒子は、平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであることが必要である。平均一次粒子径が0.1μmより大きくなると、アルカリ減量処理後に形成されるポリエステル繊維表面のボイド径が大きくなりすぎて、繊維表面反射光を十分に抑制することができず、十分な黒発色性が得られないとともに、アルカリ処理後の繊維の切断強度も著しく低下してしまう。さらに、シリカ微粒子により、ガイド類の摩耗が引き起こされ、工業生産上問題がある。逆に、平均一次粒子径が0.02μm未満では、コロイダルシリカ粒子が凝集を起こしてしまうため、安定した製糸を行うのに支障を来す。黒発色性の点から0.04〜0.08μmであることが好ましい。
【0019】
本発明の目的である黒発色性を十分に発現させるためには、コロイダルシリカ微粒子の添加量は、0.4〜5重量%であることが必要である。コロイダルシリカ粒子の添加量が5重量%を超えると、黒発色性は良好であるが、前記したガイド類の摩耗が引き起こされ、製糸性、高次通過性が低下するという問題が発生する。逆に、添加量が0.4重量%未満になると、ガイド類の摩耗は改善されるものの、黒発色性が大幅に劣ってしまう。製糸性および発色性を考慮するとコロイダルシリカ粒子の添加量は1〜4重量%であることが好ましい。
【0020】
本発明におけるコロイダルシリカとは、ケイ素酸化物を主成分とし、単粒子状で存在する微粒子が水または単価のアルコール類またはジオール類またはこれらの混合物を分散媒としてコロイドとして存在するものをいう。
【0021】
コロイダルシリカをポリマー中に添加する方法としては、コロイダルシリカをエチレングリコールによく分散させたスラリーで添加する方法が好ましい。スラリーの添加時期はポリエステルのエステル化あるいはエステル交換反応、重縮合反応のいずれの時期でも良く適宜選択可能である。
【0022】
本発明のポリエステル太細糸は糸長手方向に太細を有し、その太細ムラの程度は後述するU%測定法で測定して3〜12%の範囲にある必要がある。U%が3%未満であると染色織編物において太部に対応する濃染部が点在してしまうため、太細コントラストに対応する杢調効果が十分でなくなってしまう。また、織編物のふくらみを付与するためにもU%は4%以上がより好ましい。一方U%は12%を超えると染色織編物全体が濃色となり、霜降調効果が十分でなくなってしまう。良好な杢調効果を付与するにはU%が10%以下であることがより好ましい。
【0023】
また、本発明になる太細糸の沸水収縮率は4〜25%であることが必要である。沸水収縮率が4%未満になると織編物とした場合でのふくらみ付与効果が出しにくく、25%を超えると織編物とした場合の精練、染色などで熱処理する際に異常に収縮し風合いが硬いものしか得られず、更に収縮が大き過ぎて織編物を規定の幅に仕上げにくくなる欠点がある。沸水収縮率を5〜18%とするとよりふくらみがあり、より柔軟で良好な風合いの織編物が得られる。
【0024】
また、本発明の太細糸は濃淡のコントラストが小さく、また、太部および細部のピッチは、0.1〜10cmの範囲のいろいろのピッチが存在していると、天然素材のような自然な杢調を表現することが可能である。
【0025】
さらに、本発明の太細糸は、糸長手方向の交絡の数を3コ/m以上とする必要がある。糸長手方向に太細がある糸において交絡部が存在することが本発明のポリエステル太細糸の最大の特徴である。交絡数が3コ未満である場合は、太細糸に実質的に交絡部がないのと同じで高次加工工程で糸切れや毛羽の原因となったり、織編物として精練する際にパッカリング状のシボムラが生じ、仕上げ時に伸長してパッカリングを消去しようとすると織編物のふくらみが減少したり、織編物中で大きく収縮した糸がより伸長されてスジムラの原因となってしまう。交絡数は多いほど良好であり、10コ以上とすることが好ましく、20コ以上とすることがより好ましい。なお、交絡数の測定方法は、特開昭48−28708号公報に示された方法で測定する。
【0026】
なお、ポリエステル太細糸を構成するフィラメントの断面形状は特に限定されず、丸断面、三角断面、楕円、多葉、中空などいずれの形状も用いることができる。
【0027】
以上説明したポリエステル未延伸糸を使用して不均一延伸する方法について図面を用いて詳細に説明する。図1において、1はポリエステル高配向未延伸糸で、フィードローラー2と加熱延伸ローラー4の間に交絡ノズル3を介して(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×0.6)倍〜(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×1.2)倍の延伸倍率で不均一延伸し、加熱処理ローラー5で熱セットする。ついで、常温のローラー6に捲回し、巻取機7にて巻き取るものである。
【0028】
まず、ポリエステル高配向未延伸糸はその応力伸長曲線において、定応力伸長領域を示すことが必要である。定応力伸長領域が小さすぎると高配向未延伸糸を使用して得られる太細糸を織編物にした場合には、染色すると濃淡のコントラストが小さくなりすぎて杢調の外観が得にくいので20%以上が必要で、30%以上あることが好ましい。定応力伸長領域が大きすぎると、未延伸糸を使用して得られる太細糸を織編物にした場合には、太細の断面積比が大きくなりすぎ、染色すると濃淡のコントラストが強くなりすぎるので100%以下が必要で、80%以下であることが好ましい。
以上
【0029】
延伸倍率は得られる太細糸のU%を3%以上とするために(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×1.2)倍以下とするもので、U%を4%以上、とするためには(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×1.1)倍以下とすることが良い。また、U%を12%以下とするために、(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×0.6)倍以上とすることが良い。(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×0.6)倍未満であると太部が多く形成され濃染部の割合が多いパターンが得られるが、未延伸部が多いために強度が不足し、高次加工工程で糸切れや毛羽の原因となったり、織編物としたときに布帛の引き裂き強力が低下し、実用に耐えられないものになってしまう。また、アルカリ減量処理を施した場合にはアルカリ減量率が極めて早いため、用途が大幅に限定されてしまう。一方(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×1.2)倍を超えると太部の発生頻度が低下するため、該糸を用いた織編物を染色すると濃染部が点在する織編物となり、本発明の目的とする太細ムラが得られにくくなる。
【0030】
また、本発明ではマルチフィラメント全体に分散したショートピッチの太細を形成させるため、延伸前に張力振動を与える必要がある。張力振動を与える方法であれば特に限定されないが、特に延伸装置における延伸領域の前に交絡ノズルを使用することが好ましい。なお、交絡ノズルを使用する場合、交絡圧空圧は0.05MPa以上とすることが好ましい。交絡ノズルの圧空圧は0.05MPa以上とすると、太細のパターンが分散され、太い部分が短く存在し、得られた太細糸で構成される織編物を染色すると、濃染部が分散し、高品位の織編物を得ることができる。交絡ノズルの圧空圧は高いほど太細のピッチの分散効果を発揮することができるが、1MPaを超えるとノズルから走行糸が外れてしまい、品質バラツキを起こしてしまうので好ましくない。
【0031】
また、交絡を付与することによって結果として繊維長手方向に交絡部が3コ/m以上形成され、高次加工工程での糸切れや毛羽、熱処理時のパッカリング状のシボムラを形成することなく、品位の良好な織編物を得ることができるのである。
【0032】
さらに、太細糸を低収縮化するために不均一延伸後熱処理を行うことが必要であり、加熱処理ローラーを用いることができる。加熱処理にホットプレートを用いると、糸条の中でプレートに接触しない面があるため、熱処理斑が生じ、織編物として精練したときに収縮斑を発生しやすいため好ましくない。なお、加熱処理ローラーの温度は得られる太細糸の沸水収縮率を4〜25%とするためにTg+20℃〜Tg+70℃の範囲とすることが好ましい。なお、沸水収縮率を5〜18%とするにはTg+25℃〜Tg+60℃とすることが良い。
【0033】
なお、紡糸工程に連続して不均一延伸することも可能であるが、紡糸直後の高配向未延伸糸は定応力伸長域が明瞭でなく、不均一延伸してもマルチフィラメント全体に実質的に太細を形成しにくいので、一旦巻き取った後、高配向未延伸糸を不均一延伸することが好ましい。
【0034】
巻き取りに関しては、加熱処理ローラーより直接巻取機にて巻き取ることも可能であるが、巻き取り張力変動が巻き取った太細糸に影響し織編物としたときにヒケムラやスジムラを発生しやすいので、加熱処理ローラーで熱処理後、常温のローラーに給糸、旋回してから巻き取ることが可能である。この場合に加熱処理ローラーと常温のローラーの間の張力は走行安定性の面で、0.03cN/dtex以上、太部減少防止のため、0.45cN/dtex以下とするとよい。
【0035】
本発明のポリエステル太細糸は、特定の伸度領域の高配向未延伸糸を延伸することにより、従来のコロイダルシリカ微粒子のみを含有し、紡糸・不均一延伸したポリエステル繊維と比較して、分散染料に対する黒発色性が格段に向上したポリエステル繊維を得ることができるようになる。これは、ポリエステルの繊維配向がルーズになり、易染性が付与されることと、コロイダルシリカ微粒子の溶出によって形成された表面凹凸による反射光抑制の相乗効果によるものである。
【0036】
そのため、本発明のポリエステル繊維は、特定粒径のコロイダルシリカを特定量添加するとともに、高配向未延伸糸の伸度が130〜160%となるように設定すると良い。高配向未延伸糸の伸度が130%未満である場合は、繊維配向が進みすぎているため、十分な繊維構造のルーズ化ができなくなってしまい、発色性向上効果が小さくなるため好ましくない。一方、高配向未延伸糸の伸度が160%以上の場合は繊維構造がルーズになりすぎるため、十分な強度が得られにくく、高次通過性やアルカリ処理後の布帛の強度が低下して実用化が困難となる。このように特定の範囲の繊維構造に制御させることにより、高発色効果と高次通過性の両方を満足することができる。
【0037】
本発明のポリエステル太細糸は上述したように太細のピッチが短く分散しており、太細のコントラストが小さいため、自然な杢調を表現することが可能であり、また、交絡部を有するため、高次通過性に優れ、織編物製造工程において、精練の際のパッカリング状のシボムラの発生はなく、また、染色、仕上げにより品位、ふくらみ、霜降調外観の良好な織編物とすることができる。
【0038】
しかも、特定範囲の高配向未延伸糸を張力振動下で不均一延伸することにより、多量のシリカ粒子を添加しなくても高い黒発色性のポリエステル繊維を得ることができるようになったうえに、自然な杢感を付与することが可能になった。また、多量のシリカ粒子添加の必要がないため、アルカリ減量処理後にも十分な機械的特性を有するポリエステル繊維を得ることが可能になった。
【0039】
また製造方法においては特殊な装置を使用することなく、簡単な糸道でコンパクトな装置で加工が可能であり、仮撚などの捲縮加工などの特別の糸加工をしなくても織編物とする場合に特に好ましく用いることができる。
【0040】
【実施例】
以下実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
【0041】
A.沸水収縮率
マルチフィラメント糸をかせ取りし、0.09cN/dtexの荷重下で試料長L0を測定した後、無荷重の状態で15分間、沸騰水中で処理を行う。処理後、風乾し、0.09cN/dtexの荷重下で試料長L1を測定する。
【0042】
沸騰水収縮率(SW)(%)=[(L0−L1)/L0]×100
B.U%の測定方法
測定器としては市販のUster Eveness Tester(計測器工業株式会社製)を使用する。糸のトータル繊度により使用する測定用スロットを選択し、糸速を25m/minとし、撚糸機で1500rpmの回転を与え、撚糸しつつノルマルテストにて測定する。U%値は3分間の測定を1回として測定試料の任意の5カ所について測定し、その平均値で表す。
【0043】
C.定応力伸長領域伸度
インストロン型引張り試験機で得た図2に示すチャート上のAの伸度を読みとる。定応力伸長領域伸度については5カ所について測定し、その平均値で表す。
【0044】
D.Tg
ガラス転移点は比熱測定法により求めたものとして、ポリエチレンテレフタレートは69℃〔Kolloidzeilshrift165,40(1959)〕である。
【0045】
E.延伸性
2kg巻きパーンを5本作製する際の延伸糸切れ回数から、延伸性を3段階評価した。
【0046】
○:糸切れ無し
△:糸切れ若干有り(1〜3回)
×:糸切れ多発。
【0047】
F.官能評価
得られた太細糸を下記条件で製織、アルカリ処理、染色し、染色布帛の濃淡差、分解糸の濃淡ピッチ(分散度合い)、黒発色性、布帛の風合い(ふくらみ、ソフト感)について目視および官能試験を実施し、それぞれについて「極めて優れている」は○○、「優れている」は○、「普通」は△、「劣っている」は×で表した。
Figure 0004581315
【0048】
実施例1
テレフタル酸ジメチル100重量部、平均一次粒子径0.04μmのコロイダルシリカを濃度で20重量%含有し、十分に攪拌したエチレングリコールスラリー75重量部(シリカ添加量は生成ポリエステルに対して2.5重量%)、反応触媒として酢酸マグネシウム0.05重量部および酸化アンチモン0.04部をエステル交換缶に仕込み、窒素雰囲気下で150℃から250℃に徐々に加熱し、生成するメタノールを連続的に系外へ留出しつつ、エステル交換反応を行い、反応開始後3時間で反応を終了した。得られた生成物にリン酸トリメチルを0.05重量部を添加した。
【0049】
ついで重合反応系を1時間30分かけて徐々に13.3Paまで減圧し、280℃まで昇温した。13.3Paの減圧下、重合温度280℃でさらに2時間重合し、固有粘度0.68のポリエステルチップを得た。得られたポリエステルチップを160℃で7時間乾燥後、紡糸温度290℃、紡糸速度3700m/minで紡糸し、複屈折率40×10-3、伸度145%の高配向未延伸糸を得た。この高配向未延伸糸の定応力伸長領域伸度は37%であったので、(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×0.75)倍の延伸倍率である1.27倍とし、交絡圧0.25MPa、延伸温度83℃、熱処理温度110℃で行った。得られた太細糸のU%は8.3%、沸水収縮率8.5%、交絡数は25コ/mであった。さらに太細糸を製織してN処理、染色後、黒発色性、布帛の風合い、分解糸の濃淡のピッチ(分散度合い)について官能試験を実施し、4段階評価した。得られた布帛は極めて優れた黒発色性を示した。また、減量処理後の同布帛を構成するポリエステル繊維は十分な強度を有しており、高次通過性も良好であった。さらに染色後の杢パターンは太細のピッチが0.5〜7cmのショートピッチの太細糸が短く分散しており、太細のコントラストがマイルドで適度なふくらみがあり、自然な杢調を表現できる素材として優れたものとなった。
【0050】
実施例2
実施例1のポリマを用いて紡糸速度を上げて伸度130%の高配向未延伸糸を得た。この糸を実施例1と同様にして表1に示す条件で不均一延伸、製織・アルカリ減量処理の後染色したところ、発色性は実施例1に及ばなかったが、コロイダルシリカの量を増やさずに発色性が良好で、ショートピッチの太細が分散した自然な杢調素材となり、しかも製糸性・高次通過性に優れたポリエステルを得ることができた。
【0051】
実施例3
実施例1において紡糸速度を下げて伸度160%の高配向未延伸糸を得た。この糸を実施例1と同様に延伸し評価したところ、染色後の黒発色性は極めて良好で、濃淡のコントラストがあり適度に分散した杢調素材となった。
【0052】
実施例4〜5
実施例1において延伸倍率を表1のように変更して延伸を行い、発色性、製糸性、高次通過性を評価した。その結果、実施例4では(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×1.12)倍としたため、U%が3.5%となり黒発色性は良好で、濃淡差がやや小さめの杢調となった。また製糸性、高次通過性は極めて良好であった。一方、実施例5では(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×0.6)倍としたため、U%は11.0%と高めになった。その結果、黒発色性に優れ、濃染部の多めのパターンのものが得られた。
【0053】
実施例6〜7
実施例1において、延伸時の加熱処理温度を125℃、90℃にそれぞれ変更して発色性、製糸性、高次通過性を評価した。その結果、加熱処理温度を125℃とした実施例6では沸水収縮率が5.0%であり、ソフトな触感を有していた。一方、加熱処理温度を90℃とした実施例7では沸水収縮率が23%と高く、アルカリ処理や染色などで熱処理によりふくらみが得られ、黒発色性、こなれた杢感のある素材となった。
【0054】
実施例8
実施例8は実施例1において延伸時の交絡処理圧を0.05MPaに設定して太細糸を得た。その結果、交絡数は大幅に減少して3コ/mとなり、太細ピッチが長めになったが、黒発色性に優れ、濃淡のコントラストもはっきりした杢調素材が得られた。
【0055】
比較例1〜2
比較例1〜2は添加するコロイダルシリカ粒子の大きさを変更し、添加量としては実施例1と同様になるようにして製糸性、高次通過性、発色性について評価した。その結果、比較例1ではコロイダルシリカ粒子径が0.12μmと大きいため、ガイド摩耗の問題が発生し、製糸性、高次通過性に劣るものであった。また、得られた布帛のアルカリ処理後に形成される繊維表面でのボイドの径が大きくなりすぎて発色性も低下した上、太部に大きなボイドが形成され、布帛強度が大幅に低下した。一方比較例2ではコロイダルシリカの粒子径が0.01μmと小さいためコロイダルシリカ粒子が凝集を起こし、糸切れが多発し、高次評価、発色性評価ができなかった。
【0056】
比較例3〜4
比較例3〜4はコロイダルシリカの一次粒子径0.06μmとし、コロイダルシリカの添加量を変更し、表3に示す条件で延伸を行い同様に評価した。比較例3ではコロイダルシリカの添加量を5.5wt%と多くした結果、黒発色性は良好であったが、ガイド摩耗が激しく、紡糸、延伸時や高次加工時に糸切れや毛羽が多発した。一方比較例4ではコロイダルシリカの添加量が0.3wt%と少ないため、ガイド摩耗などの問題はなく、製糸性、高次通過性は良好で、杢調素材としては良好なものが得られたが、表面の粗面化が十分に行われなかったため、黒発色性は低いものであった。
【0057】
比較例5および6
実施例1において延伸倍率を変更し、比較例5では(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×1.3)倍、また比較例6では(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×0.5)倍にして太細糸を得、同様に評価した。その結果、比較例5ではU%が1.9%と低くなり、濃淡差が明瞭にならず、黒発色性は良好であったものの、太部に対応する濃染部が点在してしまい、太細コントラストに対応する霜降調効果が不十分で単調な外観となってしまった。一方比較例6ではU%が15%と高くなり、染色布帛全体が濃色となり、霜降調効果が十分でなくなってしまった。また、太部の割合が多すぎて、アルカリ処理時に布帛に大きなボイドが形成されたため、布帛の強度も低いものであった。
【0058】
比較例7および8
比較例7では、不均一延伸後の熱処理温度を130℃、比較例8では85℃に設定して実施例1と同様の方法で太細糸を得、評価した。その結果、比較例7では発色性や杢のパターンとしては良好なものが得られたが、沸水収縮率が2.9%まで下がり、布帛としてのふくらみ感が不足するものであった。一方、比較例8においても、発色性や杢のパターンは良好であったが、沸水収縮率が30%となったため、精練、アルカリ処理、染色等で熱処理する際に異常に収縮し、風合いが硬くなってしまった。また収縮が大きすぎるため、布帛の幅仕上げの際も規定の幅に仕上げにくいものであった。
【0059】
比較例9
比較例9では交絡処理を行わなずに実施例1と同様の方法で太細糸を得、評価した。その結果、太細糸には交絡部が全くないため、杢のパターンも長めで単調なものとなり、高次加工工程で糸切れや毛羽が発生し、布帛を精練する際にはパッカリング状のシボムラが生じた他、さらに仕上げ時にはシボムラを伸ばしてパッカリングを消去しようとすると布帛のふくらみが減少してしまった。また布帛の中で大きく収縮した糸がよりのばされ、スジムラまで生じてしまい、扱いが大変困難であった。
【0060】
比較例10
比較例10では、実施例1において延伸時の交絡処理圧を1.5MPaにして延伸しようとしたが、交絡圧が高すぎて走行糸がノズルから外れてしまい、品質バラツキが激しくなった。また、他の錘の走行糸にまで影響して、延伸ができない錘も発生した。
【0061】
【表1】
Figure 0004581315
【0062】
【表2】
Figure 0004581315
【0063】
【表3】
Figure 0004581315
【0064】
【表4】
Figure 0004581315
【0065】
【発明の効果】
本発明のポリエステル繊維とすることによって、生糸使用可能で薄地織編物に好適な太細糸を得ることができる。とくに太細のピッチは細かく分散しており、太細のコントラストが小さいため、従来の杢調素材に比較して自然な杢を表現することが可能である。また、表面粗面化による表面反射率の低下に加えて配向抑制技術による繊維内部構造のルーズ化が可能となり、その結果、繊維の内部反射率の低下も実現し、従来の技術では成しえなかった優れた発色性を有し、かつ多量の粒子添加をしなくて済むために製糸性および繊維物性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル太細糸を製造するための装置の一例の概略図。
【図2】定応力伸長領域伸度を説明するための強伸度曲線の概略図。
【符号の説明】
1:高配向未延伸糸
2:フィードローラー
3:交絡ノズル
4:加熱延伸ローラー
5:加熱処理ローラー
6:ローラー
7:巻取機
A:定応力伸長領域伸度
B:破断伸度

Claims (2)

  1. 平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであるコロイダルシリカ微粒子を0.4〜5重量%含有したポリエステルであって、U%が3〜12%、沸水収縮率が4〜25%、交絡が3コ/m以上、太部および細部のピッチが0.1〜10cmであることを特徴とするポリエステル太細糸。
  2. 平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであるコロイダルシリカ微粒子を0.4〜5
    重量%含有し、かつ伸度が130〜160%、定応力伸長域が20〜100%である高配向未延伸糸を、延伸するに際し、延伸前に張力振動を与えたながら、(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×0.6)〜(1+定応力伸長領域伸度(%)/100×1.2)の倍率で延伸し、加熱処理ローラー上で加熱処理し、巻き取るポリエステル繊維の製造方法。
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