JP4573937B2 - 光学系およびそれを有する光学機器、画像投影装置、撮像装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長いバックフォーカスを有し、コンパクトな構成で良好な光学特性を有する光学系、例えば高精細モバイル液晶プロジェクターの投影レンズに好適な光学系に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶プロジェクターはパソコン等の画像を大画面に投影してみることができる装置として会議およびプレゼンテーション等に広く利用されるようになってきている。中でも、コントラストが高く、高精細な画像を得るためには、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色毎に3つの液晶表示装置(LCD)を用い、これら各LCDに表示された画像情報を合成してスクリーンに投影する3板式の液晶プロジェクターが好ましい。このような3板式の液晶プロジェクターの投影レンズに対しては、以下のようなことが望まれている。
1)RGB各色用の液晶表示装置から発する色光を合成するダイクロイックプリズムおよび偏光板等の素子を配置するスペースを液晶表示装置と投影レンズとの間に設けなければならないため、ある一定長のバックフォーカスを確保すること。
2)色合成膜の角度依存の影響を極小にする為、また照明系との良好な瞳整合性を確保するために液晶表示装置(縮小) 側から見た瞳が無限遠方にある、液晶表示装置側にテレセントリックな光学系であること。
3)3色の液晶表示装置の画像情報をスクリーンに合成投影したとき、パソコンの文字等が二重に見えたりして解像感および品位がそこなわれないように各色の液晶表示装置の対応する画素を画面の全域にて良好に重ね合わせなければならない。
そのため、投影レンズにて発生する色ずれ(倍率色収差)を可視光帯域にて良好に補正すること(アポクロマート化)。
4)投影された画像に関して、輪郭部で歪んで見苦しくならないように、歪曲収差が最大でも−2%以下に補正されていること(特に周辺および中間部等での急激な歪曲収差の変化等が残存すると、画像品位が低下して好ましくない)。
等である。
【0003】
上記要件を達成することを意図した従来技術として、たとえば、特開平10−186235号公報や特開平10−268193号公報に見られるような、液晶プロジェクター用の投影レンズがある。これらの公報に開示された投影レンズは、拡大側より順に負正正負正の光学的パワーを有する5つのレンズ群から成り、広角端から望遠端への変倍に際して第1および5レンズ群を固定とし、レンズ系内部の第2〜4レンズ群を全て拡大側へ移動させている。最も拡大側及び最も縮小側に配置された第1、第5レンズ群が固定なので、変倍に際して全長は一定に保たれている。また、この光学系は一定長のバックフォーカスを有しつつ、低歪曲・低色収差を実現したテレセントリックズームレンズでもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在および将来に向かってさらなる小型のモバイル液晶プロジェクターの実現といった市場の強いニーズがある。
【0005】
この「液晶プロジェクターの小型化」といったテーマに対して、まず原画である液晶表示装置が小さくならなければならないが、従来と同程度の解像度を求めようとすると液晶表示装置開口率の低下、および被照明領域と発光光源の大きさとの比(=被照明領域の大きさ/光源の大きさ)が小さくなっていくため、照明効率は一般には低下してしまい、いくら装置の小型化が実現できても明るさの面で商品価値を失ってしまう。
【0006】
上記のような問題に対して、蛍光燈およびデイライト下でも使用に耐えうるスクリーン照度を確保するために、小型プロジェクター用の投影レンズといっても広角端開放F値(以後F値は開放を表す)に関して、2.5程度では商品性を有する十分な明るさを得ることは困難であった。そこで、F値を2.0前後にすることによって、商品性を維持するのに十分な明るさを得る必要がある。
【0007】
しかし、F値を2.0前後、もしくは2.0以下にすると、F値が設計上の制約となり、収差補正の自由度が低下し、収差、特に球面収差の補正が大変困難になり、光学特性が劣化してしまう可能性がある。多数のレンズを用いることで、その球面収差を良好に補正することは可能であるが、結果として光学系を大型化してしまうので、モバイル液晶プロジェクターとしての商品価値が低下してしまう。
【0008】
上記の事情を考慮して、本発明では、大口径比を実現しつつ、良好な光学特性を有する光学系を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題の解決の為に、本発明の光学系は、拡大側から順に、負の光学的パワーの第1光学成分、正の光学的パワーの第2光学成分、正の光学的パワーの第3光学成分、負の光学的パワーの第4光学成分、第5光学成分、正の光学的パワーの第6光学成分より構成された光学系であって、該6つの光学成分のうち4つの光学成分が変倍の際に移動し、広角端での前記光学系全系の焦点距離をfwおよび前記第6光学成分の焦点距離をf6としたとき、
1.2<f6/fw<2.2
なる条件式を満足することを特徴としている。
【0010】
上記課題の解決の為に、本発明の光学系は、拡大側から順に、負の光学的パワーの第1光学成分、正の光学的パワーの第2光学成分、正の光学的パワーの第3光学成分、負の光学的パワーの第4光学成分、第5光学成分、正の光学的パワーの第6光学成分より構成された光学系であって、該6つの光学成分のうち4つの光学成分が変倍の際に移動し、前記第4光学成分の広角端における倍率をβ4wとする時、
1.0<β4w<5.0
なる条件式を満足することを特徴としている。
【0011】
また、非球面を有する光学素子を少なくとも1つ含んだり、アッベ数80以上の材料よりなる光学素子を少なくとも1つ含んだり、または両方を1つ以上ずつ含んだりしていても良い。
【0012】
また、変倍の際に、少なくとも2つの可動な光学成分が、一体的に動いてもよい。
【0014】
また、変倍の際に、最も拡大側と最も縮小側の光学成分が、ともに縮小側共役点に対して固定であると良い。
【0015】
また、非球面を有する光学素子が少なくとも1つ含まれていたり、アッベ数80以上の材料よりなる光学素子を少なくとも1つ含んでいたり、もしくは、両方を少なくとも1つ含んでいたりすることが好ましい。
【0016】
また、少なくとも2つの光学成分が一体的に動いても良い。なお、変倍に際して、第2乃至第5光学成分が移動することが好ましく、また、広角端から望遠端への変倍に際して、第2乃至第5光学成分は全て拡大側へと移動すると良い。
【0017】
第2光学成分および第3光学成分を合成した時の広角端における倍率をβ23wとする時、以下の条件式を満足することが望ましい。
0.5 < −β23w < 1.0
【0018】
また、第4光学成分の広角端における倍率をβ4wとする時、以下の条件式を満足すると良い。
1.0 < β4w < 5.0
【0019】
また、絞りが第2または3光学成分内に配置されていることが好ましい。なお、変倍の際に、前記絞りが前記第3光学成分と一体で動くと良い。
【0020】
また、第1または第5または第6光学成分が、非球面を有する光学素子を含むことが好ましい。なお、第5光学成分は、拡大側から順に少なくとも1枚の両凹レンズ、および少なくとも2枚の正レンズにより構成されるのが良い。
【0021】
また、広角端での全系の焦点距離をfwおよび第6光学成分の焦点距離をf6としたとき、以下の条件式を満足することが好ましい。
1.2 < f6 / fw < 2.2
また、第1光学成分を光軸上で移動させて、フォーカス調整を行うと良い。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に図面を用いて本願発明の光学系の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の光学系を液晶プロジェクターの投影光学系として用いている。ただし、本発明の光学系は液晶プロジェクター等に用いられる投影光学系に限られるものではなく、他にも多種の実施形態がありうる。ここでは、本発明の光学系を投影光学系に適用した場合の実施形態に関して、まずすべての実施例に共通する特徴について説明する。
【0023】
本実施形態では、投影光学系を構成しているレンズ群(光学成分)のうち少なくとも4つのレンズ群を可動とすることにより、投影光学系全体の大きさは従来と同じかほぼ同じ大きさのまま維持しつつ、F値を小さくする際の光学特性の悪化を防ぎ、光学特性、特に球面収差を良好に補正している。
【0024】
また、変倍の際、最も拡大側(液晶プロジェクターではスクリーン側)と最も縮小側(液晶プロジェクターでは原画側)のレンズ群がともに縮小側共役点に対して固定であることから、レンズ群全長は不変となり、そのまま堅牢性を確保し、また径の大きなレンズ群が固定されているため重量バランス等の変化が少なく機構面で有利に作用する。
【0025】
また、コンパクト化実現のための各構成レンズの屈折力増加に伴う諸収差の劣化を補正するために、投影レンズ内部に少なくとも1枚の非球面レンズを採用することも考えられる。硝子モールドタイプかレプリカ非球面等を選ぶことが好ましいが、解像度の目標と、非球面レンズの敏感度(が低い場合)によっては、プラスチック非球面レンズとしてもよい。除去しようとする収差にもよるが、主に軸外収差を良好に補正するため、絞り位置からなるべく遠い位置に採用するのが効果的である。
【0026】
また、小型化に伴い各レンズ群の屈折力が増すことによる色収差の劣化(特に可視光短波長側の倍率青色収差)を良好に補正することができ、通常のレンズで構成した場合よりも高性能化が可能となるように、アッベ数80以上の異常分散ガラスよりなる光学素子を用いても良い。
【0027】
また、2つ以上の可動なレンズ群が一体的に動くようにし、構造的に簡易なものとすることも可能である。
【0028】
また、拡大側より順に、負の光学的パワー(=焦点距離の逆数)の第1レンズ群、正の光学的パワーの第2レンズ群、正の光学的パワーの第3レンズ群、負の光学的パワーの第4レンズ群、第5レンズ群、正の光学的パワーの第6レンズ群を有し、変倍に際して少なくとも4つのレンズ群が移動することにより、コンパクトな投影光学系を実現している。
【0029】
また、第2から第5レンズ群が可動であり、広角端から望遠端への変倍に際して、第2から第5レンズ群すべてが拡大側へと移動することにより、所望の変倍、合焦、収差補正等ができている。なお、本実施形態では、変倍に際して第2及び第3レンズ群が変倍を主に担う変倍(バリエーター)群として作用し、第4レンズ群が変倍に伴う像面位置補正を主に担う像面位置補正(コンペンセーター)群として作用している。
【0030】
また、第2および3合成レンズ群の広角端倍率β23wは
0.5 < −β23w < 1.0 (1)
なる条件式を満足している。条件式(1)は、広角端での変倍群の倍率が等倍以下であることを表している。条件式(1)において、下限を超えるとレンズ全長が長くなる等コンパクト化への妨げとなる。逆に上限を超えるとコンパクト化には有利な構成となるが、変倍時の収差変動が大きくなる傾向を示し望ましくない。条件式(1)に関して、さらに望ましくは、上限値を0.8とすると、コンパクト化により有利な構成となり、変倍時の収差変動がより小さくなる。
【0031】
また、第4レンズ群の広角端倍率β4wは、
1.0 < β4w < 5.0 (2)
なる条件式を満足すると良い。条件式(2)は、像面位置補正(コンペンセーター)群の倍率を規定したものであり下限を超えると、第4レンズ群の屈折力が小さくなりペッツバール和に関連して像面湾曲が大きくなったり所望のバックフォーカスを確保できなくなるばかりでなく、変倍時の像面位置補正のための第4レンズ群の移動量が増加し、変倍時の収差変動が大きくなったり、レンズ群間隔が縮小される等機構面からも問題が生じてくる。逆に上限を超えると、負レンズ群の屈折力が大きくなりすぎ必要以上のバックフォーカススペースが生まれコンパクト化の面で好ましくない。条件式(2)に関して、下限値を2.0とすると、第4レンズ群の移動距離はより短くなり、変倍時の収差変動もより小さく抑えられる。また、上限値を4.5とすると、バックフォーカス長は必要以上に長くならず、所望の長さとすることができ、コンパクト化により有利な構成となる。
【0032】
また、絞りは本来、レンズ群とは独立に移動する絞りを設けると、変倍時の収差変動を効率よく補正することが可能となるが、絞り用のカム溝を追加する必要が生じる。そこで、本実施形態では、生産上要件を併せて考えて、絞りは第3レンズ群内に設け、第3レンズ群と一体的に移動することとし、簡易な構成とした。なお、本実施形態では絞りを第3レンズ群内に設けているが、絞り位置は第2レンズ群内であっても同様の効果が得られるものと考えられる。
【0033】
第5レンズ群は変倍時の収差変動を小さくするために、絞りの動きに沿った方向、つまり広角端から望遠端へ変倍するときには拡大側へと移動し、略等倍近辺かつ第4レンズ群の広角端倍率以下で使用することが好ましい。上記の各レンズ群倍率分担により、第2〜4レンズ可動群は広角端から望遠端への変倍に際して全て拡大側へ移動する。
【0034】
前記絞りから見て縮小側に配置される第5レンズ群には、拡大側から順に両凹レンズ、および少なくとも2枚の正レンズにより構成している。このように、軸上光線高さが最も小さくなる位置に強い負の屈折力を持ったレンズを配置することにより効率良くペッツバール和を小さく抑えることができる。また、正レンズは絞りから縮小側に配置された凹レンズ群で跳ね上げられた光線を緩やかに屈曲させて良好なテレセントリック性能を持たせなければならないので少なくとも2枚以上で構成し、非点収差発生を抑える目的で絞り面に向かってコンセントリックな形状を有しており、硝子材の屈折率はペッツバール和を小さくする意味においてもなるべく高い材質が好ましい。
【0035】
第6レンズ群に関しては広角端での全系の焦点距離をfwおよび第6レンズ群の焦点距離をf6としたとき、
1.2< f6 / fw < 2.2 (3)
なる条件式を満足することを特徴としている。第6レンズ群を像面近傍に付加することにより、第1から第5レンズ群の合成屈折力を弱める作用をし、高画角化および大口径化に有利な作用をするのであるが、条件式(3)の下限をこえると第6レンズ群の屈折力が大きくなりすぎ、歪曲および内向性コマフレア等が大きくなる。また逆に上限をこえると第6レンズ群の屈折力が小さくなりすぎ、第1から5レンズ群の屈折力を弱める効果が少なくなり、高性能化の効果がうすれてくるので好ましくない。条件式(3)に関して、下限を1.4とすると、第6レンズ群の屈折力が強くなりすぎず、歪曲や内向性コマフレア等が小さく抑えられる。また、上限を2.0とすると、第1から5レンズ群の屈折力を適度に弱めることができ、高画角化,大口径化などを実現しやすくなる。また、硝子材に関しては第5レンズ群の正レンズと同様、屈折率がなるべく高い材質が望ましい。
【0036】
かかる構成を前提として、以下に第1から第5まで5つの数値実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0037】
まず、第1から第5の実施例に関して共通して使われている記号について説明する。riはスクリーン側から第i番目に位置する面の曲率半径であり、diは同じく第i番目と第i+1番目の面間の距離、niは第i番目の部材を構成する材料のd線に対する屈折率、νiは同じく第i番目の材料のアッベ数をそれぞれ表す。レンズ群は、第1レンズ群をL1、第2レンズ群をL2、以下L3,L4,L5,L6とする。また、GBは色合成用のダイクロイックプリズム等の硝子ブロック、STは絞り面、LCDは液晶表示装置を表しており、非球面係数に関しては、kは円錐定数、Bは4次、Cは6次、Dは8次、Eは10次の係数をそれぞれ表している。
【0038】
次に、図表の簡単な説明を行う。図1〜5は、数値実施例1〜5に対応した第1〜5の数値実施例の光学系の断面図である。図6〜10には、第1〜5数値実施例の投影レンズにおいて、第1レンズ群により2.8mにフォーカスしたときの広角端および望遠端での収差図(縦収差、球面収差、像面湾曲、歪曲収差および倍率色収差)を示す。また、図11,12には本願発明の光学系を用いた実施例の簡略図を示す。また表1〜5には、第1〜5数値実施例の数値データを、表6には、第1〜5数値実施例それぞれの条件式(1)(2)(3)の値を示す。
【0039】
また、ここで挙げる第1から第5の実施例においては、光学系は6つのレンズ群より成り、広角端から望遠端への変倍に際して、第2〜5レンズ群は拡大側に独立に移動している。また、スクリーン上での照度を確保するために、各レンズ面には反射防止膜として多層コートを採用している。
【0040】
(第1の実施例)
まず、図1に光学系の断面図を、図6に収差図を、そして表1に数値データを示した。第1の実施例について説明する。
【0041】
本実施例において、各レンズ群の屈折力(光学的パワー)は拡大側より順に負正正負正正である。第1レンズ群内の構成に関しては、拡大側より凸凹凹の3枚構成であり最も拡大側に凸レンズを配置することにより、主に歪曲収差を効率良く補正している。また、第1レンズ群の第2負レンズにアッベ数80以上の硝子、例えばFK01等、を採用している。該アッベ数80以上の硝子を使う効果としては、小型化に伴い各群の屈折力が増すことによる色収差の劣化(特に可視光短波長側の倍率青色収差)を良好に補正することができ、通常のレンズで構成した場合よりも高性能化が可能となる。
【0042】
第2レンズ群および第3レンズ群に関しては、主たる変倍群の役割を担っており大きな屈折力が与えられている都合上、凸レンズには屈折率の高い硝子材がペッツバール和および変倍時の球面収差等の収差変動を小さく設計するためにもふさわしい。特にペッツバール和に関して、本願のような大口径レンズで高い空間周波数でのレスポンスが要求されると許容錯乱(ボケ)径が小さくなることによって深度が浅くなるため、中間像高等での像面湾曲および非点収差が大きいと解像感が急激に劣化するためペッツバール和は小さく補正されていることが重要である。
【0043】
色にじみの観点では、可視光広帯域にて倍率色収差を良好に補正するためにも凸レンズには異常分散性を有するランタン系の重フリント材等が適当である。
【0044】
これらの第2、第3レンズ群に関して全変倍領域での倍率は反転縮小倍率で使用している。なお、絞りは第3レンズ群内に存在し、変倍時第3レンズ群とともに移動しており、変倍時の軸外収差変動をおさえている。
【0045】
第4レンズ群に関しては、変倍に伴うピント面の移動を補正する役割を担っている。本実施例では1枚の両凹レンズで構成されており、変倍全域に関して第4レンズ群倍率は等倍以上であり第2および3レンズ群と同じ拡大側へ移動している。
【0046】
第5レンズ群に関しては最も拡大側のレンズに強い負の屈折力を与えている。
この強い負の屈折力により、効率よくペッツバール和を小さくする作用をする。
さらに主平面位置を液晶表示装置側に配置できることから瞳に関して良好なテレセントリック性能およびバックフォーカス確保の面にて有利に作用している。
【0047】
(第2の実施例)
次に、図2に光学系の断面図を、図7に収差図を、そして表2に数値データを示した。第2の実施例について説明する。
【0048】
本実施例において、各レンズ群の屈折力は拡大側より順に負正正負負正である。本実施例では、第5レンズ群の屈折力が負となっている。これは本実施例では投影レンズの全長および径をコンパクトにまとめるため、変倍群の屈折力および倍率等が大きくなり、特に第3レンズ群の凸レンズにて発生する球面収差を第5レンズの拡大側に配置された強い凹レンズにて補正しなければならないため第5レンズ群は負の屈折力を有している。
【0049】
その他の点は実施例1と同様なので詳細説明は省略する。
【0050】
(第3の実施例)
図3に光学系の断面図を、図8に収差図を、そして表3に数値データを示した。第3の実施例について説明する。
【0051】
本実施例において、各レンズ群の屈折力は拡大側より順に負正正負正正である。本実施例は、実施例1と同様にアッベ数80以上の硝子を用いており、また第5レンズ群の凸レンズの一枚(拡大側より11番目のレンズ)に非球面レンズを採用している一つの例である。本実施例では硝子モールドタイプの非球面レンズであるが、必ずしもこれに限らずレプリカおよびプラスチックタイプの非球面であっても構わない。このように絞りから遠い位置に非球面を配置することによって、主に像面湾曲等の収差を良好に補正する作用をしている。
【0052】
また、特に非球面レンズを配置する位置としては第5レンズ群に限らず、第1〜6レンズ群、収差補正の目的に合わせて配置を選択することが望ましい。
【0053】
本例を実施例1と比較してみると全長をさらに縮小できてかつ球面収差等の素性も優れている。
【0054】
その他の点は実施例1と同様なので詳細説明は省略する。
【0055】
(第4の実施例)
まず、図4に光学系の断面図を、図9に収差図を、そして表4に数値データを示した。第4の実施例について説明する。
【0056】
本実施例において、各レンズ群の屈折力は拡大側より順に負正正負正正である。本実施例は、広角端F値1.8程度に大口径化した例の一つである。大口径化に伴い、変倍時の諸収差の変動も大きくなるため、レンズ構成も断面図4に示すように複雑になる。
【0057】
第2レンズ群に関して、最も拡大側に凹レンズを配置することで変倍時の像面倒れ等をおさえ、最も縮小側に凹メニス形状の弱い負レンズを配置することで効果的にコマ収差を除去できている。
【0058】
第3レンズ群では補正用の凹レンズを1枚付加して変倍時の収差変動を抑制している。
【0059】
その他の点は実施例1と同様なので詳細説明は省略する。
【0060】
(第5の実施例)
まず、図5に光学系の断面図を、図10に収差図を、そして表5に数値データを示した。第5の実施例について説明する。
【0061】
本実施例において、各レンズ群の屈折力は拡大側より順に負正正負正正である。本実施例も広角端F値1.8であるが、第4実施例に対して、第2レンズ群の縮小側の凹レンズの代わりに第5レンズ群に一枚凸レンズを付加して第5レンズ群の屈折力を分担させている。
【0062】
その他の点は実施例4と同様なので詳細説明は省略する。
【0063】
以上、ここまでの実施例は、本願の光学系を液晶プロジェクターの投影光学系に用いた場合の例であった。しかし、本願による光学系は、液晶プロジェクターの投影光学系のみではなく、カメラの撮像光学系などに利用することができる。
カメラに用いる場合は、拡大側が物体側、縮小側がフィルム、CCD等の感光体側である。図11は本願の光学系を液晶プロジェクターの投影光学系に利用した場合の実施例の簡略図で、液晶表示装置に表示された画像を本願による投影レンズを通して、スクリーンに投影している。また、図12は、本願の光学系をカメラの撮像光学系に利用した場合の実施例の簡略図で、被写体の像を本発明による撮像光学系(撮像レンズ)を通して、縮小側共役点に置かれたフィルムまたはCCD等の感光体上に結像させている。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば大口径で縮小側にて良好なテレセントリック性能を有し、高解像・低歪曲で、可視光広帯域にて倍率色収差が良好に補正された、コンパクトな構成の光学系を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の投影光学系の断面図。
【図2】本発明の第2実施例の投影光学系の断面図。
【図3】本発明の第3実施例の投影光学系の断面図。
【図4】本発明の第4実施例の投影光学系の断面図。
【図5】本発明の第5実施例の投影光学系の断面図。
【図6】第1実施例の2.8mフォーカス時での収差図。(a)は広角端の焦点距離時、(b)は望遠端の焦点距離時の縦収差を示し、それぞれ、球面収差、像面湾曲、歪曲収差および倍率色収差を示す。
【図7】第2実施例の2.8mフォーカス時での収差図。(a)は広角端の焦点距離時、(b)は望遠端の焦点距離時の縦収差を示し、それぞれ、球面収差、像面湾曲、歪曲収差および倍率色収差を示す。
【図8】第3実施例の2.8mフォーカス時での収差図。(a)は広角端の焦点距離時、(b)は望遠端の焦点距離時の縦収差を示し、それぞれ、球面収差、像面湾曲、歪曲収差および倍率色収差を示す。
【図9】第4実施例の2.8mフォーカス時での収差図。(a)は広角端の焦点距離時、(b)は望遠端の焦点距離時の縦収差を示し、それぞれ、球面収差、像面湾曲、歪曲収差および倍率色収差を示す。
【図10】第5実施例の2.8mフォーカス時での収差図。(a)は広角端の焦点距離時、(b)は望遠端の焦点距離時の縦収差を示し、それぞれ、球面収差、像面湾曲、歪曲収差および倍率色収差を示す。
【図11】本願光学系を液晶プロジェクターの投影レンズとして用いた場合の概略図。
【図12】本願光学系をカメラの撮像レンズとして用いた場合の概略図。
【符号の説明】
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
L4 第4レンズ群
L5 第5レンズ群
L6 第6レンズ群
ASP 非球面
LCD 液晶表示装置
ST 絞り
GB 硝子ブロック(色合成プリズム)
ΔS Sagittal像面の倒れ
ΔM Meridional像面の倒れ
1 液晶プロジェクター
2 プリズム
3 投影レンズ
4 スクリーン
5 液晶表示装置
6 カメラ
7 感光体(フィルム、CCD等)
8 撮像レンズ
9 被写体
Claims (13)
- 拡大側から順に、負の光学的パワーの第1光学成分、正の光学的パワーの第2光学成分、正の光学的パワーの第3光学成分、負の光学的パワーの第4光学成分、第5光学成分、正の光学的パワーの第6光学成分より構成された光学系であって、
該6つの光学成分のうち4つの光学成分が変倍の際に移動し、
広角端での前記光学系全系の焦点距離をfwおよび前記第6光学成分の焦点距離をf6としたとき、
1.2<f6/fw<2.2
なる条件式を満足することを特徴とする光学系。 - 広角端から望遠端への変倍に際して、第2乃至第5光学成分は全て拡大側へと移動することを特徴とする請求項1記載の光学系。
- 前記第2光学成分および第3光学成分を合成した時の広角端における倍率をβ23wとする時、
0.5<−β23w<1.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学系。 - 前記第4光学成分の広角端における倍率をβ4wとする時、
1.0<β4w<5.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学系。 - 絞りが前記第2または3光学成分内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の光学系。
- 変倍の際に、前記絞りが前記第3光学成分と一体で動くことを特徴とする請求項5に記載の光学系。
- 前記第5光学成分は、拡大側から順に少なくとも1枚の両凹レンズ、および少なくとも2枚の正レンズを有することを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の光学系。
- 広角端での全系の焦点距離をfwおよび第6光学成分の焦点距離をf6としたとき、
1.2<f6/fw<2.2
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項に記載の光学系。 - 変倍の際に、少なくとも2つの可動な光学成分が、一体的に動くことを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項に記載の光学系。
- 拡大側から順に、負の光学的パワーの第1光学成分、正の光学的パワーの第2光学成分、正の光学的パワーの第3光学成分、負の光学的パワーの第4光学成分、第5光学成分、正の光学的パワーの第6光学成分より構成された光学系であって、
該6つの光学成分のうち4つの光学成分が変倍の際に移動し、
前記第4光学成分の広角端における倍率をβ4wとする時、
1.0<β4w<5.0
なる条件式を満足することを特徴とする光学系。 - 請求項1乃至10いずれか1項記載の光学系を有することを特徴とする光学機器。
- 請求項1乃至10いずれか1項記載の光学系を有し、該光学系を用いて、縮小側の共役点に配置された原画の像を拡大投影することを特徴とする画像投影装置。
- 請求項1乃至10のいずれか1項記載の光学系を用いて、縮小側の共役点にある感光体に物体の像を投影することを特徴とする撮像装置。
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