JP4177633B2 - 広角レンズとそれを用いた映像拡大投写システム、ビデオプロジェクター、リアプロジェクター、及びマルチビジョンシステム - Google Patents

広角レンズとそれを用いた映像拡大投写システム、ビデオプロジェクター、リアプロジェクター、及びマルチビジョンシステム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は広角レンズに関し、特に空間光変調素子の映像をスクリ−ン上に拡大投写するプロジェクター等に用いる広角レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
赤、緑、青の3原色の反射型の空間変調素子を用いるプロジェクターは、照明光を導くプリズムと色合成のプリズムとが投写レンズと空間変調素子の間に配置される。このため投写レンズは、長いバックフォーカスが必要となる。
【0003】
また、色合成のプリズムは、分光特性に入射角依存性があるために、共役距離の短い側の瞳位置を空間変調素子から十分遠方にする光学系、すなわちテレセントリック性が必要である。テレセントリック広角レンズとして、下記の特許文献1に提案されている広角レンズがある。
【0004】
さらにスクリーンからプロジェクターまでの投写距離を短くして小さなスペースで使用したい要望もあり、投写レンズには短い投写距離で使用できる広角のレンズも要望されている。
【0005】
また、広角レンズとした場合、歪曲をどのように補正するかが重要である。非球面は歪曲の補正能力が高く、レンズの外径を小さくしレンズの構成枚数を少なくできる可能性を持っている。非球面を使ったテレセントリック広角レンズとして、例えば下記の特許文献2に提案されている広角レンズがある。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−109227号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2002−131636号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1に提案されている広角レンズの場合、反射型の空間変調素子用のプロジェクターの投写レンズとして使用するには、バックフォーカスが不足している。
【0009】
また、前記特許文献2に提案されている非球面を使った広角レンズの場合、軸上色収差と色のコマ(基準波長に対してはコマ収差はないが、赤色620nmでは下向きのコマ収差があり、青色460nmでは上向きのコマ収差がある状態)の補正が十分ではない。これは、非球面は色に対しての補正能力がないことに原因している。
【0010】
ここで、プロジェクター用の広角レンズはリア形態で使われることが多く、背面ミラーと組み合わされ、一体型として使われることもある。この場合は、178cm程度の対角寸法を持ったスクリーンに投写され、レンズとしては近距離での性能が要求される。
【0011】
しかし、広角レンズは投写距離による性能変化が大きい。特に前記のように、プロジェクター用の広角レンズは、長いバックフォーカスが必要であり、共役距離の長い側から凹凸の順序のレンズ配置となり、いわゆる逆望遠型(レトロフォーカス型)となる。この構成では、絞りに対してレンズ配置の非対称性が大きくなり、投写距離の変化に対する性能変化は大きくなる。一方、絞りに対して対称型の広角レンズの場合は、レンズを通る光線の高さが変化した場合でも、絞りの前後で収差が相殺し合うように作用するので性能変化が少ない。
【0012】
すなわち、前記のような逆望遠型レンズは、絞りに対してレンズ配置の非対称性が大きいため、投写距離を変化させてレンズを通る光線の高さが変化した場合、収差が打ち消し合うことがなく性能も変化する。
【0013】
したがって、プロジェクター用の広角レンズにおいては、例えば782〜178cm程度のスクリーンサイズに投写した場合の投写距離の変化に対する性能確保が大きな問題となる。
【0014】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、明るく高精細なプロジェクターを実現するために、長いバックフォーカスを有しながら、歪曲が小さく、色収差の小さい、投写距離の変化に対して性能の変化の少ない広角レンズ及びそれを用いた映像拡大投写システム、ビデオプロジェクター、リアプロジェクター、及びマルチビジョンシステム提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の第1の広角レンズは、共役距離の長い側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とからなり、前記第2レンズ群は、前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群と比べて弱い屈折力であり、近距離から遠距離のフォーカシングに際して、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の空気間隔は減少し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の空気間隔は増加するように、前記第1レンズ群と第3レンズ群とが共役距離の短い側へ移動し、絞りは、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間に位置し、前記広角レンズの無限遠時の空気換算のバックフォーカスをbf、広角レンズの焦点距離をfとすると、
4<bf/f<6
の関係を満足することを特徴とする。
【0022】
記本発明の第1の広角レンズによれば、長いバックフォーカスを実現しながら投写距離の変化による性能変化の少ない広角レンズが実現できる。前記本発明の第2の広角レンズによれば、倍率色収差を小さくすることができる。前記本発明の第3の広角レンズによれば、歪曲収差と倍率色収差を小さく抑えることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る広角レンズの構成図を示している。本図に示した広角レンズ10は、共役距離の長い側から見て、負の屈折力の第1レンズ群11(レンズ11a〜11f)、第2レンズ群12(レンズ12a〜12c)、正の屈折力の第3レンズ群13(レンズ13a〜13g)が配置された3群構成となっている。第2レンズ群12の屈折力は、第1レンズ群11及び第3レンズ群13の屈折力に比べ弱くしている。より具体的には、第2レンズ群12の屈折力は、第1レンズ群11及び第3レンズ群13の屈折力に比べ、1/5程度以下が好ましく、1/10以下でもよい。このことは、以下の図3、5に示す構成においても同様である。
【0034】
14は、プリズム等のガラスブロックである。15は像面を表し、撮像系の場合はフィルムやCCD、投写装置の場合は空間変調素子であるLCD等となる。また、絞り16は第2レンズ群12と第3レンズ群13との間に配置されている。なお、本図の例では、共役距離の長い側とは像面15と反対側である(図3、5も同じ)。
【0035】
広角レンズ10は、近距離から遠距離のフォーカシングに際して、第1レンズ群11と第3レンズ群13は共役距離の短い側に移動し、第2レンズ群12は第1レンズ群11との間隔d12を減少するように移動する。
【0036】
第1レンズ群11の構成は、共役距離の長い側から順に、負レンズ11a、負レンズ11b、正レンズ11c、負レンズ11d、負レンズ11e、正レンズ11fの6枚構成である。第2レンズ群12の構成は,共役距離の長い側から順に、負レンズ12a、正レンズ12b、正レンズ12cの3枚構成である。投写距離が変化したときは、第2レンズ群12は、第1レンズ群11及び第3レンズ群13との間隔を変化させて、収差を補正する。
【0037】
第3レンズ群13は、正の屈折力を持っている。第3レンズ群13は、歪曲及び倍率の色収差に大きく影響するので、これら収差を効果的に抑える構成となっている。
【0038】
このように、広角レンズ10は、共役距離の長い側から見て、負の屈折力を持った第1レンズ群11、弱い屈折力を持った第2レンズ群12、正の屈折力を持った第3レンズ群13の3群で構成することにより、バックフォーカスの長い広角レンズを実現している。
【0039】
以下、広角レンズ10について、より具体的に説明する。広角レンズ10は、負、正の屈折力のレンズ群で構成される逆望遠型(レトロフォーカス型)を基本としている。逆望遠型は、長いバックフォーカスが得られ易い特徴を持っているが、投写距離の変化に対して光学性能が変化し易い。このため本実施形態では、投写距離の変化に対して、フォーカシングの方法を工夫している。
【0040】
具体的には、近距離から遠距離のフォーカシングに際して、第1レンズ11群から第3レンズ群13までの全体を光軸方向に移動させるとともに、第2レンズ群12を、第1レンズ群11と第3レンズ群13とは別の移動、すなわち、第1レンズ群11と第2レンズ群12との間の空気間隔を減少させ、かつ第2レンズ群12と第3レンズ群13との間の空気間隔を増加させるようにしている。このことにより、詳細は後に説明する通り、投写距離の変化に対して光学性能が変化しないようにしている。
【0041】
第2レンズ群12は、前記のように第1レンズ群11及び第3レンズ群13の屈折力に比べ弱い屈折力を持っている。第2レンズ群12は、凹レンズであるレンズ12aと、凸レンズであるレンズ12b、12cとで構成されるが、凹レンズには屈折率の低いガラス硝材を用い、凸レンズには屈折率の高いガラス硝材を用いている。第2レンズ群12は屈折力が弱いので、凸レンズと凹レンズとのパワーは同じであるが、屈折率の低い凹レンズの方が大きな収差を発生させることになり、この結果第2レンズ群12はプラスの球面収差を発生させる。
【0042】
第1レンズ群11は、負の屈折力を持っているが、軸上光線が低いことと、第1レンズ群11を構成するレンズを多くしているので、球面収差を十分小さく補正している。第3レンズ群13は軸上光線が高いところを通ることと、ペッツバール和を小さく抑えるために、凸レンズには屈折率が低いガラス硝材を用いているので、マイナスの球面収差を発生させている。このように球面収差は、第1レンズ群11で±ゼロ、第2レンズ群12でプラス、第3レンズ群13でマイナスであり、第1レンズ群11から第3レンズ群13までの全体で球面収差をバランスさせている。
【0043】
広角レンズ10全体の収差を小さく抑えるには、各レンズ群の発生させる収差と各レンズ群の間隔とが重要になる。共役距離の長い側から考えると、第1レンズ群11が球面収差を小さく抑えているので、第2レンズ群12との間隔が変化しても、広角レンズ10全体の球面収差は変化しない。
【0044】
一方、第2レンズ群12はプラスの球面収差を持っているので、第3レンズ群13との間隔が大きくなれば、第2レンズ群12のプラスの球面収差の影響が大きくなって、広角レンズ10全体ではプラスの球面収差となる。
【0045】
しかしながら、第2レンズ群12は主光線高が高く、球面収差よりも非点収差に対する影響が大きく、第2レンズ群12の移動による収差の変動は球面収差よりも非点収差に顕著に現れる。このため、このような第2レンズ群12の移動による非点収差の変動を利用すれば、投写距離の変動による収差の変動を第2レンズ群12の移動によって補正できることになる。仮に、第2レンズ群12が第1レンズ群11と第3レンズ群13とに固定されているとすると、近距離から遠距離のフォーカシングに際して、非点収差が発生することになるが、これを補正することができなくなる。
【0046】
すなわち、近距離から遠距離のフォーカシングに際して、第1レンズ群11から第3レンズ群13を共役距離の短い側に移動させる場合において、あわせて第2レンズ群12を第1レンズ群11との空気間隔が減少するように光軸上を移動させることにより、投写距離の変動に対応しつつ、非点収差を補正できることになる。
【0047】
この構成に加えて、広角レンズ10の無限遠時の空気換算のバックフォーカスをbf、広角レンズ10の焦点距離をfとした場合、以下の式(1)を満足することにより、長いバックフォーカスを実現しながら、投写距離の変化による性能変化の少ない広角レンズが実現できる。
(1) 4<bf/f<6
式(1)は、レンズ系全体の焦点距離に対するバックフォーカスの比率を規定しており、プロジェクターに使用する投写レンズに必要なバックフォーカスを規定している。
【0048】
特に、空間変調素子に反射型素子を使用する場合は、色合成プリズムの他に、照明光導入用のプリズムブロックが投写レンズと空間変調素子との間に配置される。このためプロジェクター用投写レンズには、長いバックフォーカスが必要である。
【0049】
具体的には、式(1)の下限を越えると、投写レンズと空間変調素子の間に必要な空間を得ることができなくなり、プロジェクターを構成できなくなる。また、上限を越えるとレンズの全長と外径が大きくなり、コンパクト化ができなくなる。
【0050】
本実施の形態は、近距離から遠距離のフォーカシングに際して、前記のように、第1レンズ11群から第3レンズ群13までの全体を光軸方向に移動させるとともに、第2レンズ群12を、第1レンズ群11と第3レンズ群13とは別の移動をさせる構成である。この構成において、近距離から遠距離のフォーカシングに際して、第1レンズ群11と第3レンズ群13とが光軸上を同一の移動をすることが好ましい。このことにより、フォーカシング時に第1レンズ群11と第3レンズ群13とが固定されて移動するので鏡筒構造を簡略化できる。
【0051】
以下、本実施の形態において、光学性能上好ましい構成について説明する。第1レンズ群11の焦点距離をf1g、第2レンズ群12の焦点距離をf2g、第3レンズ群13の焦点距離をf3g、広角レンズ10の焦点距離をfとすると、下記の式(2)〜(4)を満足することが好ましい。
(2)−0.4<f/f1g<−0.15
(3)−0.2<f/f2g<0.05
(4)0.15<f/f3g<0.25
式(2)〜(4)を満足することにより、コンパクトで、かつ歪曲収差と色収差が良く補正された広角レンズを実現できる。式(2)は、第1レンズ群11の焦点距離を全体の焦点距離の比で規定したものであり、下限を越えるとペッツバール和が補正できなくなり、像面湾曲と非点収差が大きくなる。上限を越えるとバックフォーカスが確保できなくなり、バックフォーカスを確保しようとするとズームレンズ全体の光学全長が大きくなり、第1レンズ群11の外径が大きくなる。
【0052】
式(3)は、第2レンズ群12の焦点距離を全体の焦点距離の比で規定したものであり、下限を越えると投写距離の変化によって起こる非点収差を第2レンズ群12の移動によって補正できなくなる、上限を越えるとバックフォーカスが確保できなくなる。
【0053】
式(4)は、第3レンズ群13の焦点距離を全体の焦点距離の比で規定したもので、下限を越えるとレンズ全長が大きくなる、上限を越えるとバックフォーカスが確保できなくなるとともに歪曲収差や倍率色収差が補正できなくなる。
【0054】
次に、共役距離の長い側から見て先頭の負レンズ(第1レンズ群11のレンズ11a)の焦点距離をf1、アッベ数をabe1、d線の屈折率をnd11とし、第3レンズ群13の焦点距離をf3gとすると、下記の式(5)〜(6)を満足することが好ましい。
(5)-0.025<(1/f1/abe1)/(1/f3g)<-0.008
(6)1.7<nd11<1.79
第3レンズ群13は色収差を補正すると、青色の倍率色収差は補正過剰となる。この青色の倍率色収差の補正過剰を打ち消すのが、共役距離の長い側から見て先頭の負レンズ11aである。負レンズ11aで発生する青色の倍率色収差の発生量で、第3レンズ群で発生する青色の倍率色収差の補正過剰を相殺し、倍率色収差を小さく抑えることができる。
【0055】
式(5)は、負レンズ11aの青色の倍率色収差発生量(f1/abe1)と、第3レンズ群13の青色の倍率色収差の補正過剰量(f3g)との関係を表している。下限を越えると青色の倍率色収差の補正不足と赤色の倍率色収差の補正不足となる。上限を越えると青色の倍率色収差が補正過剰で大きくなる。
【0056】
負レンズ11aは、屈折率が高く、アッベ数が小さい方が好ましい。ただし前記のようなガラス硝材は、内部透過率が悪くなる特性がある。式(6)は負レンズ11aの屈折率の規定であり、下限を越えると青色の倍率色収差の補正過剰を小さくできず、上限を越えると内部透過率が低くなって、色のバランスが悪くなる。
【0057】
次に、共役距離の短い側から4枚のレンズ(第3レンズ群のレンズ13d〜13g)が、共役距離の長い側から、共役距離の長い側に凸面を向けた負メニスカスレンズ(レンズ13d)、正レンズ(レンズ13e)、共役距離の短い側に凸面を向けた負メニスカスレンズ(レンズ13f)、正レンズ(レンズ13g)の順に配置されており、共役距離の長い側の負メニスカスレンズ13dのd線の屈折率をnd4、アッベ数をνd4、共役距離の短い側から4枚のレンズ(レンズ13d〜13g)の焦点距離をf4r、プリズムやカバーガラスを含まない空気換算のバックフォーカスをbfとすると、下記の式(7)〜(9)を満足することが好ましい。
(7)nd4>1.75
(8)νd4>35
(9)1<f4r/bf<1.5
この構成によれば、歪曲収差と倍率色収差を小さく抑えることができる。共役距離の短い側のレンズは、歪曲収差と倍率色収差が大きく発生し、そのパワーと形状はその補正に重要である。
f4r/bfは共役距離の短い側から、4枚のレンズの焦点距離と、プリズムやカバーガラスを含まない空気換算のバックフォーカスの比を表したもので、歪曲収差と倍率色収差の補正とレンズ全長と共役距離の長い側のレンズの外径に関係する。2つの負メニスカスレンズの凸面を互いに違う方向に向けたことにより、倍率の色収差及び歪曲収差の低減に有利になる。すなわち、歪曲収差の補正は、共役距離の長い側に凸面を向けた負メニスカスレンズが有効に作用し、倍率の色収差は共役距離の短い側に凸面を向けた負メニスカスレンズが有効に作用する。
【0058】
式(7)、(8)は共役距離の長い側の負メニスカスレンズの屈折率とアッベ数で、青色の倍率色収差の補正過剰を抑える条件を規定したものである。式(7)は、共役距離の長い側の負メニスカスレンズのd線の屈折率を表しており、下限を越えると像面湾曲が大きくなる。式(8)は共役距離の長い側の負メニスカスレンズのアッベ数を表し、下限を越えると倍率の色収差が大きくなる。また、式(8)において、νd4>40を満足すればより好ましい。
【0059】
式(9)は共役距離の短い側から、4枚のレンズ13d〜13gの焦点距離が、プリズムやカバーガラスを含まない空気換算のバックフォーカスより大きいことを表していおり、Fナンバー光線が、共役距離の短い側から4枚のレンズに入射するときに、共役距離の短い側に向かって収束状態で使用することを示している。下限を越えると共役距離の長い側のレンズの外径が大きくなり、歪曲収差、倍率の色収差が大きくなる。上限を越えると、レンズ全長が大きくなり、バックフォーカスが確保できなくなる。
【0060】
また、第3レンズ群13を構成する正の屈折力を持ったレンズが全てd線の屈折率1.65以下で構成されることが好ましく、この構成により、ペッツバール和を小さく抑えられ、像面湾曲と非点収差を小さく抑えることができる。
【0061】
なお、前記式(5)〜(6)を満足する構成、式(7)〜(9)を満足する構成は、それぞれ前記式(1)を満足する構成に適用することを前提に説明したが、前記式(1)を満足する構成でない構成に適用しても、前記のようなこれらの各式を満足することによる効果は得られる。
【0062】
(実施例1)
以下、本実施の形態に係る実施例1を、具体的な数値を用いて示す。実施例1に係る広角レンズの構成は図1に示した構成であり、実施例1では、FNO=2.5、焦点距離f=14.85、半画角=38.7°である。以下に、前記式(1)〜(9)の各値を示す。
式(1)bf/f=5.13
式(2)f/f1g=−0.25
式(3)f/f2g=−0.014
式(4)f/f3g=0.217
式(5)(1/f1/abe1)/(1/f3g)=−0.012
式(6)nd11=1.7847
式(7)nd4=1.835
式(8)νd4=42.98
式(9)f4r/bf=1.32
以下の表1に具体的な数値を示し、ズームデータを表2に示す。表1中、ri(mm)はレンズ各面の曲率半径、di(mm)はレンズ厚又はレンズ間間隔、niは各レンズのd線での屈折率、νiは各レンズのd線でのアッベ数である。このことは、以下の表3、5についても同様である。表1の例では、r1〜r12が第1レンズ群、r13〜r18が第2レンズ群、r20〜r33が第3レンズ群であり、r19は絞りである。
【0063】
【表1】
Figure 0004177633
【0064】
【表2】
Figure 0004177633
【0065】
図2の各図はそれぞれ、実施例1の球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示しており、このことは以下の図2、4、6についても同様である。図2から分るように、実施例1に係る広角レンズは良好な収差性能を示している。
【0066】
(実施例2)
図3は本発明の実施例2に係る広角レンズの構成図である。図3に示した広角レンズ20は、共役距離の長い側から見て、負の屈折力の第1レンズ群21(レンズ21a〜21f)、弱い屈折力の第2レンズ群22(レンズ22a〜21c)、正の屈折力の第3レンズ群23(レンズ23a〜23g)が配置された3群構成であり、基本構成は、図1に示した広角レンズ10と同様である。
【0067】
実施例2では、FNO=2.5、焦点距離f=15.33、半画角=36.7°である。以下に、前記式(1)〜(9)の各値を示す。
式(1)bf/f=4.89
式(2)f/f1g=−0.22
式(3)f/f2g=−0.16
式(4)f/f3g=0.192
式(5)(1/f1/abe1)/(1/f3g)=−0.0128
式(6)nd11=1.7847
式(7)nd4=1.835
式(8)νd4=37.2
式(9)f4r/bf=1.28
次に具体的な数値を表3に示し、ズームデータを表4に示す。表3中、r1〜r12が第1レンズ群、r13〜r18が第2レンズ群、r20〜r33が第3レンズ群であり、r19は絞りである。
【0068】
【表3】
Figure 0004177633
【0069】
【表4】
Figure 0004177633
【0070】
図4に実施例2の各収差性能を示しており、実施例2に係る広角レンズは良好な収差性能を示していることが分かる。
【0071】
(実施例3)
図5は本発明の実施例3に係る広角レンズの構成図である。図5に示した広角レンズ30は、共役距離の長い側から見て、負の屈折力の第1レンズ群31(レンズ31a〜31f)、弱い屈折力の第2レンズ群32(レンズ32a〜32c)、正の屈折力の第3レンズ群33(レンズ33a〜33g)が配置された3群構成であり、基本構成は、図1に示した広角レンズ10と同様である。
【0072】
実施例2では、FNO=2.5、焦点距離f=14.87、半画角=38.7°である。以下に、前記式(1)〜(9)の各値を示す。
式(1)bf/f=5.13
式(2)f/f1g=−0.336
式(3)f/f2g=0.0304
式(4)f/f3g=0.208
式(5)(1/f1/abe1)/(1/f3g)=−0.0208
式(6)nd11=1.7847
式(7)nd4=1.835
式(8)νd4=42.98
式(9)f4r/bf=1.32
次に具体的な数値を表5に示し、ズームデータを表6に示す。表5中、r1〜r12が第1レンズ群、r13〜r18が第2レンズ群、r20〜r33が第3レンズ群であり、r19は絞りである。
【0073】
【表5】
Figure 0004177633
【0074】
【表6】
Figure 0004177633
【0075】
また非球面形状は、Xをレンズの光軸からの開口の半径距離hの位置におけるレンズ頂点からの変位量とするとき、以下の数1で表される回転対称非球面である。
【0076】
【数1】
Figure 0004177633
【0077】
各面の非球面係数を以下に示す。
5面の非球面係数
A4=9.45575×10-007 A6=-1.53739×-010 A8=1.08192×-013
図6に実施例3の各収差性能を示しており、実施例3に係る広角レンズは良好な収差性能を示していることが分かる。
【0078】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る映像拡大投写システム40の構成図である。映像拡大投写システム40は、実施の形態1の広角レンズで構成された投写レンズ41、光学像を形成する空間光変調素子42、光源43を備えている。44は、投写された映像のフォーカス面である。光源43により照明される空間光変調素子42に形成された光学像は、投写レンズ41によってフォーカス面44に拡大投写される。本実施の形態に係る映像拡大投写システム40は、投写レンズ41に前記実施の形態1のズームレンズを用いているので、歪みや色のにじみのすくない画面を得ることができる。
【0079】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3に係るビデオプロジェクター50の構成図である。ビデオプロジェクター50は、実施の形態1の広角レンズで構成された投写レンズ51、光学像を形成する空間光変調素子52、回転手段53、光源54を備えている。
【0080】
空間光変調素子52には、各々青、緑、赤の3種の光学像が時間的に分割されて形成される。回転手段53は、青、緑、赤に対応したフィルターを回転させることで光学像を青、緑、赤の3色に時間的に制限する。
【0081】
光源54からの光は、回転手段53によって青、緑、赤の3色に時間的に分解され、空間光変調素子52を照明する。空間光変調素子52には青、緑、赤の3種の光学像が時間的に分割されて形成され、投写レンズ51によって拡大投写される。本実施の形態によれば、投写レンズ51に前記実施の形態1の広角レンズを用いているので、短い投写距離で使用できるビデオプロジェクターが実現できる。
【0082】
(実施の形態4)
図9は本発明の実施の形態4に係るリアプロジェクター60の構成図である。リアプロジェクター60は、実施の形態3のビデオプロジェクター61、光を折り曲げるミラー62、透過型スクリーン63、筐体64を備えている。
【0083】
ビデオプロジェクター61から投写される映像はミラー62によって反射され、透過型スクリーン63に結像される。本実施の形態によれば、ビデオプロジェクター61に前記実施の形態3のビデオプロジェクターを用いているので、リアプロジェクターがコンパクトに実現できる。
【0084】
(実施の形態5)
図10は本発明の実施の形態5に係るマルチビジョンシステム70の構成図である。本図に示したマルチビジョンシステム70は、前記実施の形態3のビデオプロジェクター71、透過型スクリーン72、筐体73、映像を分割する映像分割回路74を備えている。
【0085】
映像信号は映像分割回路74によって加工分割されて複数台のビデオプロジェクター71に送られる。ビデオプロジェクター71から投写される映像は透過型スクリーン72に結像される。本実施の形態によれば、ビデオプロジェクター71に、前記実施の形態3のビデオプロジェクターを用いているので、マルチビジョンシステムがコンパクトに実現できる。
【0086】
なお、実施の形態4〜6では、実施の形態1の広角レンズを映像拡大投写システム等に用いた例で説明したが、画像情報をフィルム、CCD等の撮像手段面上に形成するビデオカメラ、フィルムカメラ、デジタルカメラ等の光学機器に用いてもよい。
【0087】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、長いバックフォーカスを実現しながら投写距離の変化による性能変化の少ない広角レンズが実現できる。また、本発明に係る広角レンズを用いることにより、明るく高精細な映像拡大投写システム、ビデオプロジェクター、リアプロジェクター、及びマルチビジョンシステムをコンパクトに実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係るズームレンズの広角端の構成図
【図2】本発明の実施例1に係る収差図
【図3】本発明の実施例2に係るズームレンズの構成図
【図4】本発明の実施例2に係る収差図
【図5】本発明の実施例3に係るズームレンズの構成図
【図6】本発明の実施例3係る収差図
【図7】本発明の実施の形態2に係る映像拡大投写システムの構成図
【図8】本発明の実施の形態3に係るビデオプロジェクターの構成図
【図9】本発明の実施の形態4に係るリアプロジェクターの構成図
【図10】本発明の実施の形態5に係るマルチビジョンシステムの構成図
【符号の説明】
10、20、30 ズームレンズ
11、21、31 第1レンズ群
12、22、32 第2レンズ群
13、23、33 第3レンズ群
14 ガラスブロック
15 像面
16 絞り
41、51 投写レンズ
42、52 空間光変調素子
43、54 光源
44 投写された映像のフォーカス面
53 回転手段
61 ビデオプロジェクター
62 ミラー
63 透過型スクリーン
64、73 筐体
74 映像分割回路

Claims (9)

  1. 共役距離の長い側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とからなり、前記第2レンズ群は、前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群と比べて弱い屈折力であり、近距離から遠距離のフォーカシングに際して、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群と前記第3レンズ群とが光軸に沿って移動する広角レンズにおいて、
    近距離から遠距離のフォーカシングに際して、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の空気間隔は減少し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の空気間隔は増加するように、前記第1レンズ群と第3レンズ群とが共役距離の短い側へ移動し、
    絞りは、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間に位置し、
    前記広角レンズの無限遠時の空気換算のバックフォーカスをbf、広角レンズの焦点距離をfとすると、
    4<bf/f<6
    の関係を満足することを特徴とする広角レンズ。
  2. 近距離から遠距離のフォーカシングに際して、第1レンズ群と第3レンズ群とが光軸上を同一の移動をする請求項1に記載の広角レンズ。
  3. 前記第1レンズ群の焦点距離をf1g、前記第2レンズ群の焦点距離をf2g、前記第3レンズ群の焦点距離をf3g、前記広角レンズの焦点距離をfとすると、
    −0.4<f/f1g<−0.15
    −0.2<f/f2g<0.05
    0.15<f/f3g<0.25
    の関係を満足する請求項1又は2に記載の広角レンズ。
  4. 最も共役距離が長い側のレンズが負レンズであり、前記負レンズの焦点距離をf1、アッベ数をabe1、d線の屈折率をnd11、第3レンズ群の焦点距離をf3gとすると、
    −0.025<(1/f1/abe1)/(1/f3g)<−0.008
    1.7<nd11<1.79
    の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の広角レンズ。
  5. 共役距離の短い側から見て、4枚のレンズの構成が、共役距離の長い側から順に、共役距離の長い側に凸面を向けた負メニスカスレンズ、正レンズ、共役距離の短い側に凸面を向けた負メニスカスレンズ、正レンズであり、
    共役距離の長い側の負メニスカスレンズのd線の屈折率をnd4、アッベ数をνd4、前記4枚のレンズの焦点距離をf4r、プリズムやカバーガラスを含まない空気換算のバックフォーカスをbfとすると、
    nd4>1.75
    νd4>35
    1<f4r/bf<1.5
    の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の広角レンズ。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の広角レンズを用いた投写レンズを備え、さらに光源と、前記光源から放射される光により照明されるとともに光学像を形成する空間光変調素子とを備え、前記投写レンズで前記空間光変調素子上の光学像を投写することを特徴とする映像拡大投写システム。
  7. 請求項1から5のいずれかに記載の広角レンズを用いた投写レンズを備え、さらに光源と、前記光源からの光を青、緑、赤の3色に時間的に制限する手段と、前記光源から放射される光により照明されるとともに時間的に変化する青、緑、赤の3色に対応する光学像を形成する空間光変調素子とを備え、前記投写レンズで前記空間光変調素子上の光学像を投写することを特徴とするビデオプロジェクター。
  8. 請求項7に記載のビデオプロジェクーと、投写レンズから投写された光を折り曲げるミラーと、投写された光を映像に映し出す透過型スクリーンとを備えたことを特徴とするリアプロジェクター。
  9. 請求項7に記載のビデオプロジェクーと、投写された光を映像に映し出す透過型スクリーンと、筐体とを備えたシステムを複数台有し、さらに映像を分割する映像分割回路を備えたことを特徴とするマルチビジョンシステム。
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