JP4298259B2 - 投射光学系、投射型画像表示装置及び画像投射システム - Google Patents

投射光学系、投射型画像表示装置及び画像投射システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像を有限距離にて拡大投射する投射型画像表示装置に用いられる投射光学系に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記のような投射光学系のうち、負の屈折力のレンズ群が先行するレトロフォーカス型のレンズは比較的広画角化が可能であり、かつ焦点距離に比して長いバックフォーカスを確保することが容易であるといった特長を有している。
【0003】
その反面、レンズ系自体が非対称のため、歪曲収差、非点収差もしくはコマ収差の補正が困難であり、特に歪曲収差と非点収差を共に良好に補正するために、光学系の全長を長くする必要があるなどの問題を有している。
【0004】
このレトロフォーカス型レンズにおいて、レンズ系中の後方レンズ群を移動させてフォーカスを行うリアフォーカス式を採用したものが、フィルムカメラ用では存在する。例えば、特開平7−35974号公報等で提案されているものが相当する。
【0005】
一般にリアフォーカス式はレンズ系全体を繰り出す全体フォーカス方式に比べてフォーカス用レンズ群の繰り出し量が少なく、またフォーカス用レンズ群が比較的小型軽量となり、小さな駆動力でフォーカスを行なうことができるため、特にフィルムカメラ用の自動焦点検出装置を有したカメラ等には好適である。さらに、フォーカスを行っても常にレンズ全長が一定であるため、撮影装置の保持がし易くカメラ振れを起こし難い等の利点がある。
【0006】
一方、液晶方式の投射型画像表示装置の用途を考えると、様々な投射条件に対応したいといったニーズの中から、画面中心から隅まで明るく、短い投影距離にて大きな画面に投射可能な広角系投射レンズの開発が望まれている。
【0007】
また、液晶の配光特性、または複数の色光を合成する時の色合成ダイクロイック膜の角度依存の影響を排除して、かつ照明系との良好なマッチングをはかり、画面の周辺での照度を十分に確保するために、みかけ上の瞳位置が無限遠方にある所謂テレセントリック光学系であることが望ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のリアフォーカス式レンズでは、縮小側共役面から瞳までの距離が短いため、照明系との瞳整合性が悪く、スクリーンの周辺部での光量が低下し、輝度むらが発生することから、投射型画像表示装置の投射光学系として使用するには問題がある。
【0009】
また、一定のバックフォーカスを確保しながらコンパクトな広角レンズ(投射距離の短縮化)を実現しようとすると、第1負レンズ群の屈折力を強くするしかない。この場合、屈折力配置の非対象性が増大してしまい、近距離フォーカス時において外向性コマ収差が増大し、また非点収差も悪化し、光学性能が著しく低下してくる。
【0010】
また、他のフォーカシング方式として、負屈折力の第1レンズ群と、正屈折力の第2レンズ群とを異なるスピードで移動させて焦点合わせを行なういわゆるフローティング方式があり、このものでは、フォーカシングに際する諸収差の変動は小さく抑えられる。但し、鏡筒構造が複雑でレンズ径が大きくなり易く、鏡筒の大型化およびコストアップにつながる傾向にある。
【0011】
そこで、本発明は、リアフォーカス式レトロフォーカス型の利点を維持しつつ、無限遠物体から近距離物体に至る物体距離全般にわたってフォーカスの際の収差変動を良好に補正して高い光学性能を有する投射光学系およびこれを用いた投射型画像表示装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の投射光学系は、画像を拡大して投射する投射光学系であり、拡大側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とを有して構成される投射光学系であって、前記第2レンズ群を光軸方向に移動させて焦点調節を行うとともに、縮小側共役面から瞳までの距離をt1とし、全系の焦点距離をfとしたときに、
0≦|f/t1|<0.2…(1)
の関係を満たすようにしている。
【0013】
このようにマスター部である正の屈折力を有する第2レンズ群からみて拡大側に、負の屈折力を有する第1レンズ群を配置することによって、広角化・大口径化が可能になるとともに、焦点距離に対して長い(例えば焦点距離の1.2倍程度の)バックフォーカスを確保することが可能になる。このため、例えば、投射型画像表示装置において、液晶等の画像表示素子と投射光学系との間に色合成プリズム等を配置する場合に、色合成プリズム等の配置スペースを十分に確保することが可能となる。
【0014】
そして、上記条件式(1)を満足することにより、良好なテレセントリック性能を有し、周辺まで十分な照度を確保できる明るい(例えばF値1.5程度の)、投射光学系を実現することが可能になる。
【0015】
なお、条件式(1)は、縮小側の近軸瞳位置(|f/t1|)の適切な範囲を表す式であり、この範囲をどちらに外れても、軸外主光線と光軸とのなす角度が大きくなり、液晶素子を照明する照明系との整合性不良のため、スクリーン上での輝度むらや周辺照度落ちが生じ、好ましくない。
【0016】
ここで、条件式(1)の数値範囲を
0.05≦|f/t1|<0.15…(1a)
とすると尚好ましい。
【0017】
また、本発明では、第1レンズ群の焦点距離をf1としたときに、
6.96≦−f1/f<30…(2)
の関係をも満たすようにするのがよい。
【0018】
屈折力配置を上記条件式(2)の範囲で適切に配置することによって、収差の距離変動が少ないリアフォーカス方式を実現することが可能となる。このため、フォーカス使用範囲内にて光学系全長を一定に保つことができ、投射型画像表示装置にオートフォーカス機構を採用したとき等に駆動負荷を軽減して高いフォーカス応答性等を備えた投射光学系を提供することが可能となる。
【0019】
なお、条件式(2)は第2レンズ群の倍率等を決定するための式である。本式の下限値を越えると、第2レンズ群による合焦のための繰り出し量は小さくおさえられるため、収差の距離変動には有利に作用する。しかし、負の屈折力を有する第1レンズ群の屈折力が強く、また第2レンズ群の作用倍率も大きくなるため、バックフォーカスが長くなりすぎ不必要に光学長が大きくなったり、屈折力配置の非対称性が大きくなったりして、第1レンズ群で発生し易い歪曲・倍率色収差などを補正することが困難になる。
【0020】
逆に、条件式(2)の上限値を超えると、収差補正上は有利に働くが、バックフォーカスの確保が困難となるか、第2レンズ群の繰り出し量が大きくなって収差の距離変動が大きくなるため好ましくない。
【0021】
ここで、条件式(2)の数値範囲を、
6.96≦−f1/f<20…(2a)
とすると尚好ましい。
【0022】
そして、第2レンズ群としては、拡大側から順に、少なくとも1枚の正レンズ、少なくとも1枚の負レンズおよび少なくとも2枚の正レンズにより構成するのがよい。
【0023】
第2レンズ群は、レトロフォーカス型レンズのマスター部であり、特に本発明の構成ではフォーカス群として作用する。このため、収差の距離変動を小さくするためにはマスター部内で収差が良好に補正されていることが必要である。また強い正の屈折力を有する第2レンズ群に関して、全系のペッツバール和を小さく設計しなければならないことから、本マスター部の屈折力配置として正・負・正の屈折力配置を基本とした構成としている。
【0024】
しかも、そのうち最も縮小側の正の屈折力が、バックフォーカス確保の観点から大きくなる傾向をもつので、少なくとも2枚以上の正レンズで構成して、軸外収差の発生を抑えるようにしている。
【0025】
また、第2レンズ群の屈折力配置に関して、最も大きな空気間隔を境界としてさらに2つの群に分けたときに、拡大および縮小側のレンズ群の屈折力に関して、
1.0<f2f/f2r≦1.96…(3)
の関係を満足するようにするとよい。
【0026】
上記条件式(3)の上限値を超えると必要以上にバックフォーカスが長くなりすぎたり、内向性コマおよび歪曲収差などの補正が困難となったりする。
【0027】
逆に、条件式(3)の下限値を超えると、第2レンズ群によるバックフォーカス確保が困難となるため、第1レンズ群の負の屈折力を強くしてバックフォーカスを確保することになる。このため、前述のように屈折力配置の非対称性が増大してコマ、歪曲収差などの補正が困難になるばかりか、縮小側瞳位置が近くなりすぎるため好ましくない。
【0028】
ここで、条件式(3)の数値範囲を、
1.2<f2f/f2r≦1.96…(3a)
とすると尚好ましい。
【0029】
また、上記投射光学系において、少なくとも1枚の非球面レンズを採用することにより、レトロフォーカス特有の非対象性収差の補正効果をもたせることができる。補正効果を高めるために、非球面レンズは、第1レンズ群ならば拡大側のレンズに、第2レンズ群ならば縮小側寄りのレンズに採用することが好ましい。また、非球面の種類としては、レンズ系の要求解像性能と非球面精度を照らし合わせて選択するが、プラスチック製であれば大きなコストメリットが期待できる。さらに、第2レンズ群に、貼合わせレンズ(例えば、液晶表示素子側に凸レンズが配置される貼合わせレンズ)を少なくとも1枚含ませることにより、特にマスター群で発生する色収差補正効果を持たせることが可能になる。
【0030】
また、本発明の投射型表示装置は、複数の画像形成素子から射出した複数の色の画像光を合成する色合成光学系と、前記色合成光学系により合成された画像光を被投射面に拡大して投射する投射光学系とを有する投射型画像表示装置であって、前記投射光学系は、拡大側から順に、負の屈折力を有する第1レンズユニットと、正の屈折力を有する第2レンズユニットとを有し、前記第2レンズユニットを光軸方向に移動させて焦点調節を行うとともに、縮小側共役面から瞳までの距離をt1とし、全系の焦点距離をfとしたときに、
0≦|f/t1|<0.2
の関係を満たすことを特徴としている。
【0031】
さらに、本発明の画像投射システムは、画像情報供給手段から供給された画像情報に基づいて前記画像表示素子を駆動し、前述の投射型画像表示装置により前記画像表示素子で形成した画像を被投射面に投射表示することを特徴としている。
【0032】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態である投射型画像表示装置の光学的構成を示している。また、表1には、本実施形態の数値実施例を示している。
【0033】
なお、表1中、Riはスクリーン側から第i番目に位置するレンズ面の曲率半径、diは第i番目と第i+1番目のレンズ面間の距離、niは第i番目の面を構成するガラスの屈折率、νiは第i番目のレンズを構成するガラスのアッベ数をそれぞれ表す。
【0034】
表1:数値実施例1のデータ
f: 21.3 FNO: 1.54 ω:29.72
r d n ν
1 45.273 2.20 1.812 25.4
2 26.541 2.93
3 36.330 6.91 1.839 37.2
4 16212.030 0.58
5 41.354 1.55 1.605 60.6
6 14.567 7.79
7 -31.099 1.20 1.489 70.2
8 29.545 3.45
9 63.761 7.86 1.839 37.2
10 -46.435 ( )
11 29.008 6.69 1.699 55.5
12 -41.829 0.10
13 60.779 1.20 1.573 50.8
14 19.043 6.91
15 -15.709 1.05 1.812 25.4
16 33.183 7.62 1.518 64.1
17 -20.758 0.20
18 -279.170 3.52 1.661 50.9
19 -35.717 0.10
20 42.723 6.14 1.705 41.2
21 -77.679 ( )
22 inf. 25.61 1.518 64.1
23 inf. 0.09
24 inf. 0.23 1.763 55.0
25 inf. 0.09
26 inf. 0.50 1.542 65.0
27 inf. 0.09
28 inf. 0.37 1.462 65.0
29 inf.
無限遠方フォーカス時
d10 12.25
d21 3.69
【0035】
本実施形態において、LCDは像面を構成する液晶表示素子であり、パーソナルコンピュータやビデオ、DVD等の不図示の画像供給装置からの画像信号に基づいて駆動される。なお、液晶表示素子は図示はしていないが、白色の照明光を色分解して得られた赤、緑、青の各色光に対して1つずつ設けられている。
【0036】
また、GBは3つの液晶表示素子によって変調された3つの色光を合成して後述する投射レンズ(投射光学系)Pに導く色合成ダイクロイックプリズムである。また、STは開口絞りである。
【0037】
投射レンズPは、拡大側(射出側)から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群(以下、第1負レンズ群)Iと、正の屈折力を有する第2レンズ群(以下、第2正レンズ群という)IIとから構成されている。
【0038】
なお、第1負レンズ群IはG1〜G5の5枚のレンズにより構成され、第2正レンズ群IIはG6〜G11の6枚のレンズにより構成されている。
【0039】
また、本実施形態では、第2レンズ群IIを光軸方向に移動させることにより焦点調節を行う。
【0040】
第1レンズ群Iに関しては、最も拡大側に凹メニスカスレンズを配置することによって、投射比(投射距離:スクリーン横幅)が1.5:1と広角、かつF値1.5といった大口径レンズを実現しながら前玉の径を小さく設計している。
【0041】
また、第1レンズ群Iに凹レンズG1,G3,G4を3枚を用いて、軸外光線を緩やかに屈曲させ、軸外収差の発生を抑えている。また、凸レンズG2,G5にランタン系重フリント材を採用することにより、特に倍率色収差を可視光広帯域において良好に補正する効果をもたせている。
【0042】
第2レンズ群IIは、第1レンズ群Iによる像に縮小倍率を与えて所望の焦点距離を得る作用と、絞りSTの像を縮小側からみて見かけ上遠方に配置する作用とを有する。
【0043】
第1負レンズ群Iの屈折力が小さくなり、さらに第2正レンズ群IIで作用する倍率が小さくなるため、バックフォーカスがとりずらくなる傾向に対しては、第2正レンズ群IIの屈折力配置および主平面位置を適当に選ぶことにより、バックフォーカスを確保することができる。
【0044】
また、第2正レンズ群II内の構成としては拡大側より順に、絞りSTおよび両凸レンズG6を配置して、近軸マージナル光線高さを低くしたところに、強い負の屈折力のレンズG7,G8を配置してペッツバール和を低減している。
【0045】
本実施形態のように負レンズを2枚に分けたのは、上記ペッツバール和補正の観点から不利であるが、本実施形態のような大口径レンズの軸外周辺サジタルフレアーの補正過剰を低減するためには有効である。
【0046】
さらに、第2正レンズ群II内に3枚の凸レンズG9,G10,G11を用いて軸外主光線を緩やかに光軸と平行となるように屈曲させ、特に内向性コマ、非点、歪曲収差の発生を低減させている。
【0047】
なお、本実施形態(数値実施例)における条件式(1)〜(3)の数値を以下に示す。
(1)f/t1=−0.12
(2)−f1/f=6.96
(3)f2f/f2r=1.41
また、図5には、本実施形態(数値実施例)のレトロフォーカス型投射レンズPを第2レンズ群IIにより1.8mにフォーカスしたときの収差図を示す。
【0048】
(第2実施形態)
図2には、本発明の第2実施形態である投射型画像表示装置の光学的構成を示している。また、表2には、本実施形態の数値実施例を示している。
【0049】
表2中、Riはスクリーン側から第i番目に位置するレンズ面の曲率半径、diは第i番目と第i+1番目のレンズ面間の距離、niは第i番目の面を構成するガラスの屈折率、νiは第i番目のレンズを構成するガラスのアッベ数をそれぞれ表す。
【0050】
さらに、非球面データに関しては以下の関数に従う形状となっている。
Z=(y/r)/[1+{1−(1+K)(y/r)}1/2]+Ay+By+Cy+Dy10但し、Z:光軸方向の深さ
y:径方向の高さ
【0051】
表2:数値実施例2のデータ
f: 21.5 FNO: 1.54 ω:29.51
r d n ν
1 46.638 2.20 1.812 25.4
2 26.646 2.92
3 38.834 6.05 1.839 37.2
4 -1115.835 2.47
5 62.993 1.55 1.518 64.1
6 14.301 6.83
7 -32.483 1.20 1.489 70.2
8 28.561 2.21
9 44.422 12.94 1.839 37.2
10 -47.261 ( )
11 28.938 6.03 1.699 55.5
12 -40.300 0.10
13 305.787 1.20 1.624 36.3
14 21.610 7.21
15 -15.350 1.05 1.768 26.5
16 39.210 6.98 1.605 60.6
17 -25.194 0.20
18 -1602.563 3.40 1.527 56.3
19 ( ) 0.10
20 56.824 6.30 1.705 41.2
21 -44.379 ( )
22 inf. 25.61 1.518 64.1
23 inf. 0.09
24 inf. 0.23 1.763 55.0
25 inf. 0.09
26 inf. 0.50 1.542 65.0
27 inf. 0.09
28 inf. 0.37 1.462 65.0
29 inf.
無限遠方フォーカス時
d10 9.30
d21 3.84
非球面データ
c(1/r) k A B C D
E
19 -2.850e-02 -1.249e+00 4.418e-06 2.447e-08 -7.001e-11 2.413e-13 0.000e+00
【0052】
本実施形態において、投射レンズPは、拡大側(射出側)から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群(以下、第1負レンズ群)Iと、正の屈折力を有する第2レンズ群(以下、第2正レンズ群という)IIとから構成されており、第1負レンズ群IはG1〜G5の5枚のレンズにより構成され、第2正レンズ群IIはG6〜G11の6枚のレンズにより構成されている。
【0053】
なお、第1実施形態と共通する他の構成要素には第1実施形態と同符号を付して説明に代える。
【0054】
本実施形態では、第2正レンズ群II内のレンズG10に関して、縮小側(入射側)の面に非球面ASPを採用している。非球面レンズにより、レトロフォーカス型レンズ特有の非対称性収差である歪曲収差をはじめ、像面湾曲等を良好に補正する効果を得ることができる。
【0055】
なお、本実施形態(数値実施例)における条件式(1)〜(3)の数値を以下に示す。
(1)f/t1=−0.11
(2)−f1/f=14.45
(3)f2f/f2r=1.96
また、図6には、本実施形態(数値実施例)のレトロフォーカス型投射レンズPを第2レンズ群IIにより1.8mにフォーカスしたときの収差図を示す。
【0056】
(参考例1)
図3には、参考例1の投射型画像表示装置の光学的構成を示している。また、表3には、本参考例1の数値実施例を示している。
【0057】
なお、第1実施形態と共通する他の構成要素には第1実施形態と同符号を付して説明に代える。
【0058】
また、表3中、Riはスクリーン側から第i番目に位置するレンズ面の曲率半径、diは第i番目と第i+1番目のレンズ面間の距離、niは第i番目の面を構成するガラスの屈折率、νiは第i番目のレンズを構成するガラスのアッベ数をそれぞれ表す。
【0059】
また、非球面データに関しては以下の関数に従う形状となっている。
Z=(y/r)/[1+{1−(1+K)(y/r)}1/2]+Ay+By+Cy+Dy10但し、Z:光軸方向の深さ
y:径方向の高さ
【0060】
表3:参考例1のデータ
f: 26.9 FNO: 1.54 ω:24.29
r d+ n ν
1 35.000 7.98 1.699 55.5
2 146.613 0.15
3 28.222 1.55 1.489 70.2
4 16.137 7.26
5 -83.696 1.20 1.610 56.8
6 19.750 4.39
7 350.088 15.38 1.839 37.2
8 -60.896 ( )
9 25.276 6.15 1.699 55.5
10 -56.321 1.76
11 185.058 1.20 1.677 32.1
12 21.683 7.11
13 -16.112 1.05 1.694 31.1
14 54.741 6.81 1.615 58.7
15 -27.483 0.10
16 -73.091 3.93 1.527 56.3
17 ( ) 0.10
18 41.462 6.30 1.661 50.9
19 -72.280 ( )
20 inf. 25.61 1.518 64.1
21 inf. 0.09
22 inf. 0.23 1.763 55.0
23 inf. 0.09
24 inf. 0.50 1.542 65.0
25 inf. 0.09
26 inf. 0.37 1.462 65.0
27 inf.
無限遠方フォーカス時
d 8 7.91
d19 2.89
非球面データ
c(1/r) k A B C D
E
17 -3.985e-02 -4.592e-01 3.775e-06 2.799e-08 -9.221e-11 4.848e-13 0.000e+00
【0061】
参考例1において、投射レンズPは、拡大側(射出側)から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群(以下、第1負レンズ群)Iと、正の屈折力を有する第2レンズ群(以下、第2正レンズ群という)IIとから構成されており、第1負レンズ群IはG1〜G4の4枚のレンズにより構成され、第2正レンズ群IIはG5〜G10の5枚のレンズにより構成されている。また、第2レンズ群IIを光軸方向に移動させることにより焦点調節を行う。
【0062】
参考例1では、第1負レンズ群Iに関して、最も拡大側に凸レンズG1を配置することによって、投射比1.5:1の広角レンズを実現しながら歪曲収差を低減する効果を得ている。
【0063】
また、第1負レンズ群に2枚の凹レンズG2,G3を用いて、軸外光線を緩やかに屈曲させ、軸外収差の発生を抑え、凸レンズG4に厚めのランタン系重フリント材を採用することにより、特に倍率色収差を可視光広帯域において良好に補正する効果をもたせている。
【0064】
さらに、本参考例1では、第2正レンズ群II内のレンズG9に関して縮小側の面に非球面を採用している。この非球面レンズによりレトロフォーカス型レンズ特有の非対称性収差である歪曲収差をはじめ、像面湾曲等を良好に補正する効果を得ている。
【0065】
なお、本参考例1における条件式(1)〜(3)の数値を以下に示す。
(1)f/t1=−0.12
(2)−f1/f=4.27
(3)f2f/f2r=1.92
また、図7には、本参考例1(数値実施例)のレトロフォーカス型投射レンズPを第2レンズ群IIにより1.8mにフォーカスしたときの収差図を示す。
【0066】
参考例2
図4には、本発明の参考例2の投射型画像表示装置の光学的構成を示している。また、表4には、本参考例2の数値実施例を示している。
【0067】
なお、表4中、Riはスクリーン側から第i番目に位置するレンズ面の曲率半径、diは第i番目と第i+1番目のレンズ面間の距離、niは第i番目の面を構成するガラスの屈折率、νiは第i番目のレンズを構成するガラスのアッベ数をそれぞれ表す。
【0068】
表4:参考例2のデータ
f: 21.9 FNO: 1.54 ω:29.03
r d n ν
1 85.920 5.37 1.699 55.5
2 -424.787 0.30
3 74.310 1.70 1.489 70.2
4 17.132 9.55
5 -33.976 1.25 1.574 53.0
6 33.018 4.86
7 152.349 6.08 1.839 37.2
8 -48.861 ( )
9 80.815 3.22 1.839 37.2
10 -127.457 13.24
11 30.306 4.65 1.699 55.5
12 -52.536 0.15
13 54.818 0.85 1.768 26.5
14 18.170 7.64
15 -14.986 1.10 1.854 23.9
16 39.555 7.65 1.591 61.1
17 -22.056 0.26
18 199.557 5.19 1.696 53.2
19 -38.866 0.10
20 59.738 4.99 1.854 23.9
21 -117.392 ( )
22 inf. 26.32 1.518 64.1
23 inf. 4.76
無限遠方フォーカス時
d 8 4.33
d21 3.14
【0069】
参考例2において、投射レンズPは、拡大側(射出側)から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群(以下、第1負レンズ群)Iと、正の屈折力を有する第2レンズ群(以下、第2正レンズ群という)IIとから構成されており、第1負レンズ群IはG1〜G4の4枚のレンズにより構成され、第2正レンズ群IIはG5〜G11の7枚のレンズにより構成されている。
【0070】
なお、第1実施形態と共通する他の構成要素には第1実施形態と同符号を付して説明に代える。
【0071】
参考例2では、第1負レンズ群Iに関して、最も拡大側に凸レンズを配置することによって、投射比1.5:1と広角レンズを実現しながら歪曲収差が小さくなるように設計している。
【0072】
また、第1負レンズ群Iに2枚の凹レンズG2,G3を用いて、軸外光線を緩やかに屈曲させ、軸外収差の発生を抑えている。さらに、凸レンズG4にランタン系重フリント材を採用して、特に倍率色収差を可視光広帯域において良好に補正する効果をもたせている。
【0073】
参考例2では、他の実施形態と比較して、第1負レンズ群Iの屈折力が大きく、また第2正レンズ群IIで作用する倍率が大きくなる傾向を利用して、バックフォーカスを確保するのに有利な屈折率配置となっている。
【0074】
また、第2正レンズ群II内の構成としては、拡大側より順に、両凸レンズG5、絞りSTおよび両凸レンズG6を配置して近軸マージナル光線高さhを低くしたところに、強い負の屈折力のレンズG7,G8を配置してペッツバール和を低減している。
【0075】
参考例2のように負レンズG6,G7を2枚にわけたのは、ペッツバール和補正の観点から不利であるが、本実施形態のような大口径レンズの軸外周辺サジタルフレアーの補正過剰を低減するためには有効である。
【0076】
さらに、3枚の凸レンズG9,G10,G11を用いて軸外主光線を緩やかに光軸と平行となるように屈曲させて、特に内向性コマ、非点、歪曲収差の発生を低減している。
【0077】
なお、本参考例2における条件式(1)〜(3)の数値を以下に示す。
(1)f/t1=−0.11
(2)−f1/f=2.92
(3)f2f/f2r=1.90
また、図8には、本参考例2のレトロフォーカス型投射レンズPを第2レンズ群IIにより1.8mにフォーカスしたときの収差図を示す。
【0078】
また、本実施形態の投射型画像表示装置は、不図示の画像情報供給装置(パーソナルコンピュータやテレビ、ビデオ、DVDプレイヤー、衛星放送用或いはケーブルTV用等の各種チューナ、カメラ、ビデオカメラ等)から供給された画像情報に応じて画像表示素子を駆動し、画像を表示、或いは投射表示する画像投射システムにも適用可能である。
【0079】
また、本実施形態の投射型画像表示装置が、画像情報を記憶したDVD、CD、ビデオ等の記憶媒体から画像情報を読み取る手段を備えるようにしたり、アンテナ等により衛星放送、地上波のTV放送等を受信するようにしたり、ケーブルTV、インターネットTV等を受信したり、もしくはインターネットを介して画像情報を受信したり、と言ったように投射型画像投射装置自体が画像情報供給装置を介さずに画像情報を受信するようにしてもよい。
【0080】
具体的には、投射型画像表示装置がアンテナや、ケーブルTV用のケーブル差込口や、インターネットのケーブル用のケーブル差込口等を備えていて、これらから受信する画像情報を投射するようにしても構わない。
【0081】
このように本発明の投射型表示装置が様々な画像供給手段から画像情報を受信し、被投射面に画像を投射表示するシステムを構築することが可能である。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、マスター部である正の屈折力を有する第2レンズ群からみて拡大側に、負の屈折力を有する第1レンズ群を配置しているので、広角化・大口径化を図ることができるとともに、焦点距離に対して長いバックフォーカスを確保することができる。このため、例えば、投射型画像表示装置において、液晶等の画像表示素子と投射光学系との間に色合成プリズム等を配置する場合に、色合成プリズム等の配置スペースを十分に確保することができる。
【0083】
そして、上記条件式(1)を満足することにより、良好なテレセントリック性能を有し、周辺まで十分な照度を確保できる明るい投射光学系を実現することができる。
【0084】
また、屈折力配置を上記条件式(2)の範囲で適切に配置することによって、収差の距離変動が少ないリアフォーカス方式を実現することができる。このため、フォーカス使用範囲内にて光学系全長を一定に保つことができ、投射型画像表示装置にオートフォーカス機構を採用したとき等に駆動負荷を軽減して高いフォーカス応答性等を備えた投射光学系を提供することができる。また、第2レンズ群として、拡大側から順に、少なくとも1枚の正レンズ、少なくとも1枚の負レンズおよび少なくとも2枚の正レンズにより構成すれば、レトロフォーカス型レンズのマスター部であり、フォーカス群である第2レンズ群内で収差を良好に補正することができ、収差の距離変動を小さくすることができる。また、強い正の屈折力を有する第2レンズ群に関して、正・負・正の屈折力配置を採るようにすれば、全系のベッツバール和を小さくすることができる。
【0085】
しかも、そのうち最も縮小側の正の屈折力がバックフォーカス確保の観点から大きくなる傾向をもつので、少なくとも2枚以上の正レンズで構成することにより、軸外収差の発生を抑えることができる。
【0086】
また、第2レンズ群の屈折力配置に関して、最も大きな空気間隔を境界としてさらに2つの群に分けたときに、拡大および縮小側のレンズ群の屈折力に関して、上記条件式(3)を満足するようにすれば、必要以上にバックフォーカスが長くなりすぎたり、内向性コマおよび歪曲収差などの補正が困難となったりすることを防止できるとともに、バックフォーカス確保のために第1レンズ群の負の屈折力を強くしなければならなくなり、屈折力配置の非対称性が増大してコマ、歪曲収差などの補正が困難になったり、縮小側瞳位置が近くなりすぎたりすることを防止することができる。
【0087】
また、上記投射光学系において、少なくとも1枚の非球面レンズを採用すれば、レトロフォーカス特有の非対象性収差の補正効果をもたせることができる。さらに、非球面レンズを、第1レンズ群ならば拡大側のレンズに、第2レンズ群ならば縮小側寄りのレンズに採用することにより、補正効果を高めることができる。
【0088】
また、第2レンズ群に、貼合わせレンズを少なくとも1枚含ませることにより、特にマスター群で発生する色収差補正効果を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である投射レンズを備えた投射型画像表示装置の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態である投射レンズを備えた投射型画像表示装置の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態である投射レンズを備えた投射型画像表示装置の断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態である投射レンズを備えた投射型画像表示装置の断面図である。
【図5】上記第1実施形態において、1.8mフォーカス時での球面収差、非点収差および歪曲収差図である。
【図6】上記第2実施形態において、1.8mフォーカス時での球面収差、非点収差および歪曲収差図である。
【図7】上記第3実施形態において、1.8mフォーカス時での球面収差、非点収差および歪曲収差図である。
【図8】上記第4実施形態において、1.8mフォーカス時での球面収差、非点収差および歪曲収差図である。
【符号の説明】
P 投射レンズ
I 第1レンズ群
II 第2レンズ群
ASP 非球面
LCD 液晶表示装置(像面)
GB ダイクロイックプリズム
ST 絞り
S サジタル像面の倒れ
T タンジェンシャル像面の倒れ

Claims (3)

  1. 画像を拡大して投射する投射光学系であり、拡大側から順に、負の屈折力を有する第1レンズユニットと、正の屈折力を有する第2レンズユニットとにより構成される投射光学系であって、
    前記第2レンズユニットを光軸方向に移動させて焦点調節を行うとともに、
    縮小側共役面から瞳までの距離をt1とし、全系の焦点距離をfとし、前記第1レンズユニットの焦点距離をf1とし、前記第2レンズユニット内において最も大きな空気間隔を境界として2つの群に分けたときに、拡大側のレンズユニットの焦点距離をf2fとし、縮小側のレンズユニットの焦点距離をf2rとしたときに、
    0≦|f/t1|<0.2
    6.96≦−f1/f<30
    1.0<f2f/f2r≦1.96
    の関係を満たすことを特徴とする投射光学系。
  2. 複数の画像形成素子から射出した複数の色の画像光を合成する色合成光学系と、前記色合成光学系により合成された画像光を被投射面に拡大して投射する投射光学系とを有する投射型画像表示装置であって、
    前記投射光学系は、拡大側から順に、負の屈折力を有する第1レンズユニットと、正の屈折力を有する第2レンズユニットとにより構成されており、前記第2レンズユニットを光軸方向に移動させて焦点調節を行うとともに、縮小側共役面から瞳までの距離をt1とし、全系の焦点距離をfとし、前記第1レンズユニットの焦点距離をf1とし、前記第2レンズユニット内において最も大きな空気間隔を境界として2つの群に分けたときに、拡大側のレンズユニットの焦点距離をf2fとし、縮小側のレンズユニットの焦点距離をf2rとしたときに、
    0≦|f/t1|<0.2
    6.96≦−f1/f<30
    1.0<f2f/f2r≦1.96
    の関係を満たすことを特徴とする投射型画像表示装置。
  3. 画像情報供給手段から供給された画像情報に基づいて前記画像表示素子を駆動し、請求項2に記載の投射型画像表示装置により前記画像表示素子で形成した画像を前記被投射面に投射表示することを特徴とする画像投射システム。
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