JP4571347B2 - タイヤ加硫システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、タイヤ加硫システムの改良に関するものであり、とくには、複数の加硫ステーションの平面配置をより小さな占有スペースの下にて行うとともに、設備コストの低減をもたらし、併せて、タイヤの移動距離を極力短くして生産性を向上させるものである。
【0002】
【従来の技術】
タイヤの加硫設備としては、図4に略線正面図で例示するような加硫装置111が従来から広く使用されている。
この装置111は、二組みの加硫金型112を具えるものであり、これらの両加硫金型112は、実際上は相互に同期作動されるが、ここでは便宜上、図の左半部は、これから加硫金型112内に未加硫タイヤ113を入れ込む状態で示し、右半部は加硫金型112から加硫済みのタイヤ114を取り出している状態で示している。
【0003】
この装置111では、加硫金型112のそれぞれはともに、タイヤ113,114の中心軸線が垂直となる姿勢で平面的に配置されており、一度に二本のタイヤを同時に加硫することができる。
また、この装置111は、上下の金型112A,112Bからなる加硫金型112のみならず、下部プラテン115に対し、上部プラテン116および上金型112Aを昇降変位させて、金型112を開閉する型開閉手段117や、未加硫タイヤ113を装置内に供給したり、加硫済みタイヤ114をそこから取り出したりする、図示しない搬入出手段を有しており、種々の生産状況に対応できるよう構成されている。
【0004】
ところで、このような装置111によれば、タイヤの生産能力は装置111の設置台数によって定まることになるところ、近年は、生産量の増加傾向に加え、多品種小ロット化し、タイヤサイズの大型化、タイヤの高性能化等に伴って加硫時間もまた長くなる傾向にあるため、これらの両者を満足させるためには、装置111のより一層の増設が余儀なくされることとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに現実には、装置の設置スペース上および設備コスト上の制約の下で、上述したような装置111の多数を単純に平面配置する場合に比してより少ない設置スペースおよび設備コストをもって上記両傾向を満足させることのできるタイヤ加硫システムの開発が強く望まれている。
【0006】
そこで、この発明は、設置スペースが小さく、設備コストを有効に抑制してなお、各種の加硫条件等に十分対応して生産性を大きく高めることができるタイヤ加硫システムを提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るタイヤ加硫システムは、加硫金型および金型開閉機構を具える複数の加硫ステーションを、円弧上に、好ましくは等間隔に平面配置するとともに、その円弧の中心部分に、旋回アームによって、それぞれの加硫金型に対する未加硫タイヤの装入および加硫済みタイヤの取り出しを行う、一の共通のタイヤ移載装置を設けたものである。
なお、ここでいう「円弧」は、正確な円弧だけに限定されるものではなく、それに近似する曲線をも含むものであり、これによってなお、所期した目的を十分に達成することができる。
【0008】
これによれば、一のタイヤ移載装置を、複数の加硫ステーションに共用することで、従来技術のごとくに、各加硫ステーションに専用のタイヤ搬入出手段を設ける場合に比して設備コストを有利に低減させることができる。
【0009】
またここでは、円弧上に配設した複数の加硫ステーションの中心部分に旋回アーム型のタイヤ移載装置を配置して、それを、全ての加硫ステーションに対してほぼ等しい距離に位置させることで、それらの加硫ステーションを直線上に配置する場合に比して、加硫システムの占有スペースを有効に低減させることができ、併せて、タイヤ移載装置の、それぞれの加硫ステーションへの走行および位置決め停止等に伴う、移載装置の作用不能時間を低減させるとともに、タイヤ移載装置を長い距離にわたって移動させることに伴う、各種の作動精度の向上をも不要とすることができ、しかも、それぞれの加硫ステーションに対する、生タイヤおよび加硫済みタイヤの搬入出距離を、極力短いほぼ等距離として生産能率を大きく向上させることができる。
【0010】
しかも、このシステムでは、加硫ステーションを繋ぐ円弧の内側部分でタイヤの搬入出作業を行う一方、その円弧の外側部分で加硫金型の交換その他の段取り作業を行うことで、それぞれの作業スペースを相互に機能分離させて、それぞれの作業を、相互の干渉なしに独立させて行うことができるので、これによってもまた、生産能率が有利に向上されることになる。
【0011】
なおこの加硫システムでは、加硫金型から取り出された加硫済みタイヤに後加硫処理、たとえばポストキュアインフレーション(以下「PCI」という)を施す後加硫処理ステーションを、タイヤ移載装置の稼動域内に設けることもでき、これによれば、加硫済みタイヤを、一のタイヤ移載装置をもって、その後加硫処理ステーションに対して搬入出させることもできるので、設備コストおよび設置スペースのそれぞれの一層の低減を実現することができる。
【0012】
ここで好ましくは、タイヤ移載装置を関節型ロボット、なかでも多関節ロボットにより構成する。これによれば、既存のロボットをタイヤ移載装置として利用して、そのロボットの不使用時には、関節の作用下で、その全体を十分コンパクトなものとすることができる一方で、それの使用時には、ロボットハンド等を十分遠くに到達させることができるので、タイヤ移載装置の周りのそれぞれの加硫ステーションを、その移載装置との干渉のおそれなしに、それにより近づけて配設することが可能となって、占有スペースに加えて、タイヤの移動距離の一層の低減を実現することができる。
【0013】
またここにおいて、未加硫タイヤを、タイヤ移載装置へのそれの引き渡しに先だって一時保管する未加硫タイヤ置台および、加硫済みタイヤを、タイヤ移載装置から受け取る加硫済みタイヤ置台を有する入出庫ステーションを設けた場合には、タイヤを、加硫システムの内外の手段に、タイミングを損なうことなく、円滑に引き渡すことができる。
【0014】
さらに、それぞれの加硫ステーションにブラダ着脱機構を配設することもでき、これによれば、たとえば、加硫金型に装入した未加硫タイヤに、自動的にブラダを装着することができ、また、加硫済みタイヤを加硫金型から取り出すに当って、そのブラダを、タイヤから自動的に取り外すことができて、加硫金型外に存在するタイヤへのブラダの内装が不要となるので、ブラダそれ自体の絶対数を最少のものとすることができる。
【0015】
これに対し、たとえば、入出庫ステーションに到達前の未加硫タイヤに予め装着されたブラダを、加硫後のタイヤの、入出庫ステーションからの搬出後に取り外すこともでき、このことは、製品タイヤの内面形状と対応する外面形状を有する分解可能な剛性コア上で成型した未加硫タイヤを、その剛性コアとともに加硫金型内に装入する場合にもまた同様である。
これによれば、未加硫タイヤを加硫ステーションに搬入してから、加硫済みタイヤをそこから搬出するまでの間のサイクルタイムを有利に短縮することができる。
【0016】
なお、加硫金型内での、未加硫タイヤのシェーピングにブラダを用いる場合には、上述したところに代えて、ブラダ着脱装置の作用下で、その未加硫タイヤの、加硫金型への装入直前にそれにブラダを装着し、加硫終了後の、加硫金型からの取り出しの後、またはPCI終了後の、入出庫ステーションからの搬出前に、そのブラダをタイヤから取り外すこともできる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態を、同様の二つのタイヤ加硫システムを相互に隣接させ配設した場合について示す略線平面図である。
【0018】
ここにおける各タイヤ加硫システム1は、円弧上に平面配置されて、円周方向にほぼ等しい間隔をおいて位置する四つの加硫ステーション2を設けるとともに、その円弧3の中心部分に、それらの加硫ステーション2に共通の、旋回アーム型のタイヤ移載装置4を設けて、タイヤ移載装置4を、全ての加硫ステーション2に対してほぼ等間隔に位置させたものであり、より好ましくは、加硫済みタイヤに、後加硫処理としてのPCIを施す後加硫処理ステーション5および、未加硫タイヤおよび加硫済みタイヤのそれぞれの一時的な置台を有する入出庫ステーション6の少なくとも一方を、タイヤ移載装置4の稼動域内に配設したものである。
【0019】
ここで、各加硫ステーション2は、図2に略線側面図で示すように、加硫金型7と、この加硫金型7の開閉手段8とを具えてなり、場合によっては、加硫金型7内での未加硫タイヤのシェーピング手段としてのブラダの、タイヤに対する着脱機構を設けることもできる。
【0020】
また、旋回アーム9を有するタイヤ移載装置4は、好ましくは、多関節ロボットにより構成してなり、このタイヤ移載装置4は、たとえば、予めブラダを取り付けられて入出庫ステーション6の未加硫タイヤ置台に移送された未加硫タイヤを、そのハンドに把持して、型開き姿勢にある加硫金型7内へ装入するとともに、その金型7によって加硫された加硫済みタイヤをブラダを内装したままそこから取り出して、入出庫ステーション6の加硫済みタイヤ置台上へ直接的に、または、後加硫処理ステーション5でのPCIを施した後に位置決め載置するべく機能する。
このようにして入出庫ステーション6に移載された加硫済みタイヤはその後、所定のタイミングで次工程へ搬送される。
【0021】
なお、円弧3に対して、タイヤ移載装置4とは反対側には、図に仮想線で示すような、加硫金型の取り替えスペースを設けることができる。
【0022】
ところで、図示の加硫ステーション2では、図3に拡大側面図で示すように、下プラテン11上に、コンテナ12付きの加硫金型7を位置決め配置するとともに、門形フレーム13に、シリンダ14をもって昇降変位可能に取り付けた上プラテン15を、コンテナ12の上面板16に、連結手段17により連結およびそれの解除を自在に連結しており、加硫金型7内への未加硫タイヤの装入および、そこからの加硫済みタイヤの取り出しに際しては、上プラテン15の、上面板16への連結状態で、シリンダ14を作動させて、上プラテン15および上面板16とともに、加硫金型7の上型部分を上昇変位させることで、加硫金型7を型開きさせることができる。
一方、未加硫タイヤの装入後の、それに対する加硫は、シリンダ14によって上型部分を上プラテン15とともに下降変位させて加硫金型7の型閉めおよび圧下をもたらし、併せて、加硫金型7を所定の温度に加熱することにより行うことができる。
【0023】
なおこのような加硫工程での、未加硫タイヤに予め取り付けられているブラダへの加圧加熱ガス等の供給は、たとえば、下プラテン11側で、図示しないジョイントシリンダその他をもって、ガス供給源等をそのブラダに連結することにより行うことができ、この場合、加硫の終了に当たって、ガス供給源等とブラダとの連結を解除してなお、ブラダ内に供給内圧を維持することが好ましい。
【0024】
この一方で、加硫金型7の交換等に際する、それの、上プラテン15からの分離は、連結手段17の作用下で、その上プラテン15とコンテナ上面板16との連結を解除することによって行うことができ、ここでは、上プラテン15を、加硫金型7の上方へ高く変位させることにより、加硫金型7の、下プラテン11への固定の解除下で、その加硫金型7の入れ換え等を円滑かつ容易ならしめることができる。
【0025】
また、多関節ロボットとすることが好ましいタイヤ移載装置4は、それに十分近接させて配設した加硫ステーション2と、その他のステーション5,6との間にあって、それの不使用時には、それらのいずれのステーション2,5,6とも干渉しないコンパクトな姿勢を維持する一方、それの使用時の、タイヤの移載受け渡しに際しては、それぞれの関節の作用下で、他の構成部材との干渉を避けつつロボットハンド等を遠くにまで到達させることができる。
【0026】
以上のように構成してなるタイヤの加硫システムにおいて、たとえば、上下二段構造とした入出庫ステーション6の、下段側に位置する未加硫タイヤ置台18に一時的に保管されている、ブラダ付の未加硫タイヤGTを、特定の加硫ステーション2の加硫金型7内へ装入する場合は、未加硫タイヤGTを、タイヤ移載装置4のハンド等で把持した状態で、その旋回アーム9を、他の構成部材との干渉を避けつつ旋回させて、未加硫タイヤGTを、目的とする加硫ステーション2の近傍位置にもたらし、そこで、所要の関節の作用下で、予め型開き姿勢とした加硫金型7の下型部分上にその未加硫タイヤGTを位置決め配置するとともに解放し、次いで、タイヤ移載装置4の、加硫金型7からの退避変位下で、上プラテン15を下降変位させてコンテナ上面板16、ひいては、加硫金型7の上型部分を所要の力で圧下する。
【0027】
この一方で、いずれかの加硫ステーション2から取り出した加硫済みのタイヤTを、入出庫ステーション6の上段側に位置する加硫済みタイヤ置台19に載置する場合は、上プラテン15の上昇変位下で型開き状態とした加硫金型7内へ、タイヤ移載装置4のハンド等を差し込んで、内圧充填姿勢のブラダを内包した加硫済みタイヤTをそこから取り出すとともに、その移載装置4の旋回アーム9を他の構成部材に干渉させることなく、加硫済みタイヤ置台19上へ直接的に旋回させて、または、その加硫済みタイヤTを後加硫処理ステーション5に一旦預けて、そこで、たとえばタイヤ軸線を水準とした姿勢でPCIを施した後、それをタイヤ移載装置4に再び受け取ってから、その旋回アーム9を加硫済みタイヤ置台19上へ旋回させ、所定の関節の作用をもって加硫済みタイヤTをそこに位置決め載置するとともに、そこに解放する。
【0028】
このようにして加硫済みタイヤ置台19上に移載された加硫済みタイヤTは、図示しない搬送手段により、所要のタイミングで次工程に搬送され、そこで、装着ブラダの取り外し等が行われる。
【0029】
なおここで、特定の加硫ステーション2で使用済みとなった加硫金型7の、次に使用されるそれとの交換は、連結手段17によるコンテナ上面板16に対する拘束、ひいては、使用済み加硫金型7の全体に対する拘束等を解除した後、上プラテン15を、シリンダ14をもって高く上昇変位させ、加硫金型7のコンテナ12の上方に大きなスペースを確保した状態で、タイヤ移載装置等の存在しない円弧3の外側部分にて簡易迅速に行うことができる。
【0030】
かくして、このタイヤ加硫システムによれば、複数の加硫ステーション2を円弧3上に配設するとともに、その円弧3の中心部分に、全ての加硫ステーション2に共用の、旋回アーム形の一のタイヤ移載装置4を配設することで、加硫システムの占有スペースおよび設備コストをともに有利に低減させることができ、しかも、タイヤ移載装置4を、それぞれの加硫ステーション2に対し、それらに十分近接させるとともに、ほぼ等距離に配設することによって、それぞれの作動機構部に高い精度を必要とすることなしに生産能率を大きく向上させることができる。
【0031】
【発明の効果】
以上に述べたところから明らかなように、この発明によれば、タイヤ加硫システムの設置スペースおよび設備コストをともに有効に低減させることができ、また、作動機構部の高い精度を必要とすることなく、各種加硫条件に十分対応して生産性を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態を示す略線平面図である。
【図2】 加硫ステーションの略線側面図である。
【図3】 加硫ステーションの拡大側面図である。
【図4】 従来設備を示す略線正面図である。
【符号の説明】
1 タイヤ加硫システム
2 加硫ステーション
3 円弧
4 タイヤ移載装置
5 後加硫ステーション
6 入出庫ステーション
7 加硫金型
8 開閉手段
9 旋回アーム
11 下プラテン
12 コンテナ
13 門形フレーム
14 シリンダ
15 上プラテン
16 上面板
17 連結手段
GT 未加硫タイヤ
T 加硫済みタイヤ

Claims (4)

  1. 加硫金型および金型開閉機構を具える複数の加硫ステーションを円弧上に平面配置するとともに、その円弧の中心部分に、旋回アームをもって、それぞれの加硫金型に未加硫タイヤを装入し、それらの加硫金型から加硫済みタイヤを取り出す一の共通のタイヤ移載装置を設けてなるタイヤ加硫システム。
  2. 加硫金型から取り出された加硫済みタイヤに後加硫処理を施す後加硫処理ステーションを、タイヤ移載装置の稼動域内に設けてなる請求項1に記載のタイヤ加硫システム。
  3. タイヤ移載装置を関節型ロボットにより構成してなる請求項1もしくは2に記載のタイヤ加硫システム。
  4. 未加硫タイヤを、タイヤ移載装置へのそれの引き渡しに先だって一時保管する未加硫タイヤ置台および、加硫済みタイヤを、タイヤ移載装置から受け取る加硫済みタイヤ置台を有する入出庫ステーションを設けてなる請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ加硫システム。
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