JP4564114B2 - リップ型シール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種回転機器を軸封するリップ型シールにおいて、合成樹脂からなるシール部材の安定化により密封性を向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、圧縮機等に使用される軸封装置として、図3に示すようなリップ型シール100がある。この種のリップ型シール100は、筒状部101a及びその大気B側となる端部から内周側へ延びるフランジ部101bからなる金属環101と、ハウジング1の内周面に密接される外周の基部102bが前記金属環101の筒状部101aに一体的に加硫接着され、その内周から径方向部102cを介して密封空間A側へ延びるシールリップ102aの内径端部が回転軸2の外周面と密封的に摺接されるエラストマ製の第一のシール部材102と、外周の被挟持部103bが前記フランジ部101bと前記第一のシール部材102の径方向部102cとの間に挟持された状態で前記フランジ部101bに接着され、その内周から屈曲部103cを介して密封空間A側へ延びるシールリップ103aが、第一のシール部材102におけるシールリップ102aのヘッドより大気側で前記回転軸2の外周面と密封的に摺接されるPTFE等の合成樹脂からなる第二のシール部材103とを備えるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記リップ型シール100は、図3に示されるような装着状態で、第一及び第二のシール部材102,103のシールリップ102a,103aが回転軸2の外周面に摺接することによって、密封空間Aの密封対象流体を密封するものである。
【0004】
しかしながら従来構造によれば、回転軸2の外周への装着時に、第二のシール部材103のシールリップ103aが拡径されることによって、背面側に引張力を生じるため、この第二のシール部材103の被挟持部103bと金属環101におけるフランジ部101bとの接着のばらつきがあると、図4に示されるように両者間に隙間G1が発生し、その結果、第二のシール部材103自体の反力によって、前記シールリップ103aは、回転軸2との摺接位置が設定位置(図3に示された位置)よりも密封空間A側へ移動することがある。そしてこの場合は、第一のシール部材102aにおけるシールリップ102aのヘッドが、その背面側から第二のシール部材103aに押されて拡径し、回転軸2の外周面との密接荷重が低下したり、あるいは隙間G2を発生することによって、密封性能が低下する問題が指摘される。
【0005】
また、これを防止する方法としては、第二のシール部材103のシールリップ103aを短くすることが考えられるが、この場合は、このシールリップ103aの摺動シール面積の減少を来すばかりでなく、図3に示される正常な装着状態での第一のシール部材102のシールリップ102aに対する距離Lが大きくなり、高圧時に、このシールリップ102aが回転軸2の外周面にベタ当たりしやすくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたもので、その主な技術的課題とするところは、回転軸外周への装着状態における第二のシール部材の安定化を図ることにより、第一のシール部材のシールリップを回転軸に対する良好な接触状態にすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係るリップ型シールは、軸方向一端に内周側へ延びるフランジ部を有する金属環に、エラストマからなり密封空間側へ延びる内径側のシールリップが回転軸の外周面と密封的に摺接される第一のシール部材と、合成樹脂材からなり前記フランジ部と前記第一のシール部材のシールリップ外周部との間に挟持された被挟持部及びその内周から屈曲部を介して密封空間側へ延び前記第一のシール部材のシールリップより反密封空間側で前記回転軸の外周面と密封的に摺接されるシールリップを有する第二のシール部材とが保持され、前記金属環におけるフランジ部に、前記第二のシール部材側へ突出した突起部が円周方向へ連続して形成され、前記第二のシール部材における被挟持部と屈曲部との境界部分は前記突起部の食い込みにより薄肉になっており、この境界部分を起点にして前記第二のシール部材におけるシールリップの拡径に伴う屈曲変形が容易に行われることを特徴とするものである。したがって第二のシール部材は、回転軸外周への装着時に前記突起部の食い込み部分を起点にして容易に屈曲・拡径されるので、この第二のシール部材のシールリップを密封空間側へ変位させるような応力の発生が抑制される。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係るリップ型シールの一実施形態を、軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の半断面図、図2は同じく装着状態の半断面図である。このリップ型シール10は、金属環11と、第一のシール部材12及び第二のシール部材13とを備える。
【0009】
金属環11は、筒状部111及びその大気B側となる端部から内周側へ延びるフランジ部112からなり、前記筒状部111は、前記フランジ部112側が相対的に大径となるように円周方向に連続した段差部111aを有する。
【0010】
第一のシール部材12は、金属環11の筒状部111を埋設一体化してなる基部121と、その軸方向中間位置から内周側へ延びる径方向部122と、この径方向部122から金属環11のフランジ部112と反対側(密封空間A側)へ延びるシールリップ123からなり、エラストマ材料で加硫成形されている。
【0011】
第一のシール部材12の基部121は、金属環11の筒状部111における段差部111aの小径側の外周に成形された厚肉部分が、ハウジング1の内周面に密嵌されるガスケット部として機能するもので、そのシール性を高めるための円周方向に連続した所要数のシール突条121aが形成されている。また、第一のシール部材12のシールリップ123は、その先端のヘッド123aが、前記ハウジング1に挿通された回転軸2の外周面と密封的に摺接されるものである。
【0012】
第二のシール部材13は、金属環11のフランジ部112と第一のシール部材12の径方向部122との間に挟持された状態で前記フランジ部112に接着された被挟持部131と、その内周から屈曲部132を介して第一のシール部材12の内周側を金属環11のフランジ部112と反対側(密封空間A側)へ延びるシールリップ133からなるもので、PTFE等の合成樹脂材で成形されている。また、この第二のシール部材13は、第一のシール部材12を加硫成形する際に、その成形用金型内に金属環11と共に配置されることによって、図1に示される状態に一体化されたものである。
【0013】
金属環11におけるフランジ部112には、第二のシール部材13側へ突出した突起部113が、円周方向へ連続して打ち出し形成されている。この突起部113は、前記第二のシール部材13における被挟持部131と屈曲部132との境界の背面に形成された凹部134と嵌合している。そしてこのような構造は、第一のシール部材12を加硫成形する際に、加熱軟化した前記第二のシール部材13における前記境界位置の背面部に、成形圧力によって前記突起部113が食い込むことにより形成されたものである。
【0014】
以上のように構成されたリップ型シール10は、図2に示されるように、金属環11のフランジ部112がハウジング1に形成されたシール装着段部1aと当接するように、このハウジング1に装着される。そしてこの装着状態においては、エラストマからなる第一のシール部材12における基部121の外周面に形成されたシール突条121aが、金属環11の筒状部111で内周側からバックアップされて、ハウジング1の内周面に適当な密接荷重で圧接することにより、非回転状態に保持されている。
【0015】
一方、第一のシール部材12におけるシールリップ123のヘッド123aが回転軸2の外周面と全周摺接されると共に、第二のシール部材13におけるシールリップ133が、前記第一のシール部材12におけるシールリップ123のヘッド123aよりも大気B側で、前記回転軸2の外周面に全周が摺接される。そして、図2に示される装着状態では、第二のシール部材13におけるシールリップ133が第一のシール部材12におけるシールリップ123の内周に位置しているので、密封空間Aが高圧となった時に、第一のシール部材12のシールリップ123を第二のシール部材13のシールリップ133を内周側から支承し、前記ヘッド123aが回転軸2の外周面に対してベタ当たりになるのを防止する機能も奏する。
【0016】
このリップ型シール10は、回転軸2の外周への装着時に、第二のシール部材13のシールリップ133が原形よりも拡径されるのに伴って、図1に示された状態から図2に示された状態に変形される。このとき、第二のシール部材13における被挟持部131と屈曲部132との境界部分は、金属環11におけるフランジ部112に形成された突起部113の食い込みによって薄肉になっているので、この部分を起点にして前記拡径に伴う屈曲変形が容易に行われ、第二のシール部材13に大きな応力が発生しない。このため、第二のシール部材13は、そのシールリップ133が前記変形に対する反力によって密封空間A側へ移動することが有効に防止され、その結果、第一のシール部材12におけるシールリップ123のヘッド123aが、その背面側から第二のシール部材13に押されて拡径するようなことがなく、良好な密封性能が確保される。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のリップ型シールによると、合成樹脂材からなる大気側の第二のシール部材が、エラストマからなる第一のシール部材のシールリップのヘッドを密封空間側へ押し出して回転軸との密接状態に悪影響を与えるようなことがないので、優れた密封性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るリップ型シールの一実施形態を、軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の半断面図である。
【図2】上記実施形態を軸心を通る平面で切断して示す装着状態の半断面図である。
【図3】従来技術に係るリップ型シールを、軸心を通る平面で切断して示す装着状態の半断面図である。
【図4】上記従来技術において、不具合の発生した状態を軸心を通る平面で切断して示す半断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 回転軸
10 リップ型シール
11 金属環
112 フランジ部
113 突起部
12 第一のシール部材
123,133 シールリップ
13 第二のシール部材
131 被挟持部
132 屈曲部
A 密封空間
B 大気
Claims (1)
- 軸方向一端に内周側へ延びるフランジ部を有する金属環に、
エラストマからなり密封空間側へ延びる内径側のシールリップが回転軸の外周面と密封的に摺接される第一のシール部材と、
合成樹脂材からなり前記フランジ部と前記第一のシール部材のシールリップ外周部との間に挟持された被挟持部及びその内周から屈曲部を介して密封空間側へ延び前記第一のシール部材のシールリップより反密封空間側で前記回転軸の外周面と密封的に摺接されるシールリップを有する第二のシール部材とが保持され、
前記金属環におけるフランジ部に、前記第二のシール部材側へ突出した突起部が円周方向へ連続して形成され、
前記第二のシール部材における被挟持部と屈曲部との境界部分は前記突起部の食い込みにより薄肉になっており、この境界部分を起点にして前記第二のシール部材におけるシールリップの拡径に伴う屈曲変形が容易に行われることを特徴とするリップ型シール。
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