JP2005221020A - 密封装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】螺子ポンプ作用によるシールリップの所要の密封性能を、長期間にわたって維持することの可能な密封装置を提供する。
【解決手段】シールリップ14を回転体3に摺動可能に密接させる密封装置1において、シールリップ14が、軸方向に密接状態に重合した複数の平ワッシャ状のシート141からなる。このため、シールリップ14が弾性に乏しい材質であっても、各シート141の肉厚を薄くすることによって、回転体3の偏心運動(軸振れ)に対する良好な追随性を得ることができる。各シート141の内周縁141a,141a,・・・間には、漏れ圧力の減衰に有効な環状溝14a,14a,・・・が形成され、この環状溝14a,14a,・・・は、シート141の内周縁141aの摩耗によって消滅することがない。
【選択図】図1
【解決手段】シールリップ14を回転体3に摺動可能に密接させる密封装置1において、シールリップ14が、軸方向に密接状態に重合した複数の平ワッシャ状のシート141からなる。このため、シールリップ14が弾性に乏しい材質であっても、各シート141の肉厚を薄くすることによって、回転体3の偏心運動(軸振れ)に対する良好な追随性を得ることができる。各シート141の内周縁141a,141a,・・・間には、漏れ圧力の減衰に有効な環状溝14a,14a,・・・が形成され、この環状溝14a,14a,・・・は、シート141の内周縁141aの摩耗によって消滅することがない。
【選択図】図1
Description
本発明は、シールリップによって回転部分の密封を行う密封装置に関する。
シールリップによって回転軸周などの密封を行う密封装置においては、例えば高速回転や、高温・高圧等の条件で使用されるものは、シールリップとして、ゴム状弾性材料に比較して耐熱性、耐摩耗性に優れ、かつ摩擦係数の低いPTFE(PolyTetraFluoroEthylene:四フッ化エチレン樹脂)等の低摩擦合成樹脂材料で成形されたものが使用されている。ところが、PTFEのような合成樹脂材料は、ゴム状弾性材料に比べて弾性に乏しく、回転軸の偏心運動(軸振れ)に対する追随性も低いため、ゴム状弾性材料からなるシールリップに比較して、漏れを発生しやすいといった問題がある。
そこで、合成樹脂製シールリップの偏心追随性を補償すると共に、螺子ポンプ作用による密封性の向上を図る目的で、例えば下記の特許文献に記載されているように、この種の合成樹脂製シールリップには、螺旋状の溝加工を施すことが知られている。
特開平7−332501号公報
特開2000−18393
図8は、特許文献1に記載されたものと同種の、従来技術による密封装置を、その軸心を通る平面で切断した半断面図であり、図9は、特許文献2に記載されたものと同種の、他の従来技術による密封装置を、その軸心を通る平面で切断した半断面図である。これらの密封装置は、外環101の外周のゴム状弾性材料からなる固定部102においてハウジングの内周に圧入され、前記外環101の内周に、回転軸の外周面と摺動可能に密接される合成樹脂製シールリップ103が保持された構成を有する。
そしてこのうち、図8(特許文献1)に示される密封装置は、シールリップ103の内周面(回転軸との摺動面)から、湾曲した腰部の背面にかけて、斜めに切り込みを入れた螺旋状スリット103aが形成されている。また、図9(特許文献2)に示される密封装置は、シールリップ103の先端部から、湾曲した腰部にかけて、プレス成形による螺旋溝103bを設けることによって、蛇腹状に形成したものである。そして、このような螺旋状スリット103aあるいは螺旋溝103bによって、合成樹脂製シールリップ103の剛性が低下して軸偏心追随性が確保されると共に、回転軸との摺動面を通過しようとする流体を密封空間側へ押し戻す螺子ポンプ作用によって、所要の密封性能を得ている。
しかしながら、図8(特許文献1)のような螺旋状スリット103aあるいは図9(特許文献2)のような螺旋溝103bは、回転軸との摺動に伴うシールリップ103の内周面の経時的な摩耗や、高圧条件でのつぶれ等によって小さくなり、螺子ポンプ作用による所要の密封性能を得られなくなって、漏れの発生に至っていた。
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、シールリップの所要の密封性能を、長期間にわたって維持することの可能な密封装置を提供することにある。
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る密封装置は、シールリップが、軸方向に密接状態に重合した複数の平ワッシャ状のシートからなり、各シートの先端縁を回転体に摺動可能に密接させるものである。
また、請求項2の発明に係る密封装置は、シールリップが、軸方向に密接状態に重合した螺旋状のシートからなり、各シートの螺旋状の端縁を回転体に摺動可能に密接させるものである。
また、請求項3の発明に係る密封装置は、請求項1又は2に記載の構成において、シートがその内周縁において回転体の外周面に摺動可能に密接するものであり、前記シートの内径を、密封空間側ほど小径にしたものである。
請求項1の発明に係る密封装置によれば、シールリップを構成する各シートの肉厚を薄くすることによって、回転体の相対的な偏心運動に対する追随性を向上することができる。また、シールリップの摺動部には、各シートの重合部の端部に相当する環状溝が形成され、この環状溝が漏れ圧力を減衰させるので、優れた密封機能を奏し、しかもこの環状溝は回転体との摺動に伴うシートの摩耗によって消滅することがないので、優れた密封性能を長期にわたって維持することができる。
請求項2の発明に係る密封装置によれば、螺旋状シートの肉厚を薄くすることによって、回転体の相対的な偏心運動に対するシールリップの追随性を向上することができる。また、シールリップの摺動部には、螺旋状シートの重合部の端部に相当する螺旋溝が形成され、この螺旋溝が回転による螺子ポンプ作用を発揮するので、優れた密封機能を奏し、しかもこの螺旋溝は回転体との摺動に伴うシートの摩耗によって消滅することがないので、優れた密封性能を長期にわたって維持することができる。
請求項3の発明に係る密封装置によれば、内周縁が回転体の外周面に密接するシートの内周縁を、密封空間側ほど小径にすることによって、回転体の外周面に対するシートの良好な密接状態が確保されるので、優れた密封機能を奏することができる。
以下、本発明に係る密封装置の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、第一の形態による密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す装着状態の半断面図、図2は、図1の密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の断面図、図3は、図1の密封装置における合成樹脂シートを示す斜視図である。
図1に示される密封装置1は、機器のハウジング2と、このハウジング2の軸孔21に挿通された回転軸3との間の軸周空間を密封し、密封空間S内の流体が大気側Aへ漏れるのを防止するものである。回転軸3は、請求項1に記載された回転体に相当する。
すなわち、この密封装置1は、ハウジング2の軸孔21に拡張形成されたシール装着部22の内周に圧入固定される外周シール部11と、内周縁12aが回転軸3の外周面に微小隙間をもって対向されるダストリップ12と、外周シール部11及びダストリップ12に跨って埋設一体化された補強環13と、内周縁141aが回転軸3の外周面に摺動可能に密接されるシールリップ14と、このシールリップ14を補強環13の内周に固定するためのリテーナ15からなる。
補強環13は、金属板の打ち抜きプレス成形によって製作されたものであって、外筒部13aと、その一端から内周側へ延びる内向き鍔部13bとからなり、すなわち軸心を通る平面で切断した断面形状(図1及び図2の断面形状)が略L字形をなしている。リテーナ15も補強環13と同様、金属板の打ち抜きプレス成形によって製作されたものであって、補強環13の外筒部13aの内周に圧入嵌着される内筒部15aと、その一端から内周側へ延びる内向き鍔部15bとからなる。
外周シール部11及びダストリップ12はゴム状弾性材料からなる。外周シール部11は、補強環13の外筒部13aの外周に一体的に加硫接着されており、ストリップ12は、厚肉の外周基部12bが補強環13の内向き鍔部13bを埋設した状態でこの内向き鍔部13bに一体的に加硫接着されている。すなわち、外周シール部11及びダストリップ12は、予め加硫接着剤を塗布した補強環13を所定の金型(不図示)内にセットし、型締め状態において金型内面と補強環13との間に画成された環状のキャビティ内に、未加硫ゴム材料を充填して加熱・加圧することによって、成形と同時に補強環13に一体的に加硫接着されたものである。
シールリップ14は、平ワッシャ状の複数(図示の例では4枚)の合成樹脂シート141を、軸方向に互いに密接重合させた状態で補強環13の外筒部13aの内周に挿入し、外周部141bを、ダストリップ12の外周基部12bと、前記外筒部13aに圧入嵌着したリテーナ15の内向き鍔部15bとの間に挟持したものである。図3に示されるように、各合成樹脂シート141(1411〜141n)は、PTFE(PolyTetraFluoroEthylene:四フッ化エチレン樹脂)からなるものであって、請求項1に記載されたシートに相当し、その内周縁141aは、請求項1に記載された先端縁に相当する。
図2に示される未装着状態では、合成樹脂シート141(1411〜141n)の内径は、回転軸3の外径dよりも小径であり、かつリテーナ15側に位置するものほど、言い換えれば図1において密封空間S側に位置するものほど、内径が小径となっている。したがって、回転軸3を、図2に二点鎖線で示されるように、ダストリップ12側から挿入することによって、図1の装着状態では、各合成樹脂シート141の内周部が押し広げられると共に密封空間S側を向くように湾曲変形され、各合成樹脂シート141の内周縁141aのみが、回転軸3の外周面と密接する。
以上のように構成された第一の形態の密封装置1によれば、シールリップ14が、軸方向に互いに密接状態に重合した複数の平ワッシャ状の合成樹脂シート141からなるため、PTFEのように弾性に乏しい材質であっても、各合成樹脂シート141を薄肉にすることによって柔軟性を確保することができる。また、各合成樹脂シート141を、例えば先に説明した図8あるいは図9のように、内周部を円筒状に屈曲した状態で回転軸に摺接させた場合は、偏心に対する追随性が損なわれるが、本発明では、図1のように、合成樹脂シート141の内周縁141aのみを回転軸3の外周面と密接させて湾曲量を抑えることによって、回転軸3の偏心運動(軸振れ)に対する良好な追随性を得ることができる。
そして、図1に示される装着状態では、合成樹脂シート141の湾曲した内周部の曲率半径が、密封空間S側に位置するものほど小さくなるが、合成樹脂シート141は、密封空間S側に位置するものほど、内径が未装着状態において小径になっているので、各内周縁141aを確実に回転軸3の外周面と密接させることができる。
図1に示される装着状態では、回転軸3の外周面に対するシールリップ14の摺動部、すなわち各合成樹脂シート141の内周縁141a,141a,・・・間には、回転軸3の外周面に沿って円周方向へ連続した複数の環状溝14a,14a,・・・が形成される。そして、密封空間Sの密封対象流体がシールリップ14と回転軸3の間から大気側Aへ漏れるには、合成樹脂シート141の内周縁141aと回転軸3の摺動部と、環状溝14aとを交互に通過しなければならず、このため漏れ圧力が減衰され、優れた密封機能を奏することができる。
また、合成樹脂シート141の内周縁141aは、回転軸3との摺動によって経時的に摩耗することは避けられないが、このような摩耗を生じても、各合成樹脂シート141の摺動部間には、合成樹脂シート141,141,・・・の重合部の内周端に相当する環状溝14a,14a,・・・が常に形成されていて、消滅することがない。このため、上述した漏れ圧力減衰作用による優れた密封性能を、長期にわたって維持することができる。
次に、図4は、本発明の第二の形態による密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す装着状態の半断面図、図5は、図4の密封装置を、軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の断面図、図6は、図5の密封装置における合成樹脂シートを示す斜視図、図7は、図5の密封装置における合成樹脂シートの加工方法を示す斜視図である。
この形態において、先に説明した第一の形態と異なるところは、シールリップ14が、軸方向に密接状態に重合した螺旋状の合成樹脂シート142からなる点にあり、その他の部分、すなわち図4及び図5における外周シール部11、ダストリップ12、補強環13、リテーナ15等は、図1及び図2と同様に構成されている。
シールリップ14は、図6に示されるように、軸方向に薄肉の帯状であって複数回周回した螺旋形状の合成樹脂シート142を、軸方向に互いに密接重合させた状態で、図5に示されるように補強環13の外筒部13aの内周に挿入し、外周部142bを、ダストリップ12の外周基部12bと、前記外筒部13aに圧入嵌着したリテーナ15の内向き鍔部15bとの間に挟持したものである。
合成樹脂シート142は、PTFE(PolyTetraFluoroEthylene:四フッ化エチレン樹脂)からなるものであって、請求項2に記載されたシートに相当し、その内周縁142aは、請求項2に記載された螺旋状の端縁に相当する。図5に示される未装着状態では、合成樹脂シート142の螺旋状の内周縁142aは、回転軸3の外径dよりも小径であり、かつリテーナ15側へ向けて漸次小径に形成されている。したがって、回転軸3を、図5に二点鎖線で示されるように、ダストリップ12側から挿入することによって、図4のように、合成樹脂シート142の内周部が押し広げられると共に密封空間S側を向くように湾曲変形され、内周縁142aのみが、回転軸3の外周面と密接する。
螺旋状の合成樹脂シート142は、図7に示されるように、例えばPTFEからなる環状体を、螺旋状に切り出すことによって製作することができる。このため図5や図6にも示されるように、合成樹脂シート142の両端の一周部142c,142dが徐々に薄肉になるように形成される。そしてこのため、リテーナ15の内向き鍔部15b及びダストリップ12の外周基部12bとの接触部に段差が形成されるのを防止して、全周密接させることができる。
以上のように構成された第二の形態の密封装置1によれば、シールリップ14が、軸方向に互いに密接状態に重合した螺旋状の合成樹脂シート142からなるため、PTFEのように弾性に乏しい材質であっても、合成樹脂シート142の肉厚を薄くすること、及び内周縁142aのみを回転軸3の外周面と密接させることによって、第一の形態と同様、回転軸3の偏心運動(軸振れ)に対する良好な追随性を得ることができる。
そして、図4に示される装着状態では、合成樹脂シート142の湾曲した内周部の曲率半径が、密封空間S側ほど小さくなるが、合成樹脂シート142は、未装着状態での内周縁142aが、密封空間S側ほど小径になっているので、この内周縁142aを確実に回転軸3の外周面と密接させることができる。
図4に示される装着状態では、合成樹脂シート142の内周部が密封空間S側を向くように湾曲変形されることによって、回転軸3の外周面に対するシールリップ14の摺動部には、これを構成する合成樹脂シート141が螺旋状であるため、その内周縁142aの重合部に沿って、螺旋状溝14bが形成される。この螺旋状溝14bは、回転軸3の回転によって、流体を密封空間S側へ向けて送り出すポンプ圧力(螺子ポンプ作用)を生じ、密封空間Sからシールリップ14と回転軸3の間を通過して大気側Aへ漏れようとする密封対象流体を密封空間Sへ押し戻すので、優れた密封機能を奏することができる。
なお、このような螺子ポンプ作用を生じるためには、回転軸3の回転方向に応じて、合成樹脂シート142の螺旋の方向を決定するものであることは言うまでもない。
また、合成樹脂シート142の内周縁142aは、回転軸3との摺動によって経時的に摩耗することは避けられないが、このような摩耗を生じても、合成樹脂シート142の重合部の内周端に相当する螺旋状溝14bが常に形成されていて、消滅することがない。このため、上述した漏れ圧力減衰作用による優れた密封性能を、長期にわたって維持することができる。
なお、上述の各形態においては、合成樹脂シート141,142の外周部をリテーナ15によって固定しているが、接着剤によって固定し、リテーナ15を不要とすることもできる。
1 密封装置
11 外周シール部
12 ダストリップ
13 補強環
14 シールリップ
14a 環状溝
14b 螺旋状溝
141,142 合成樹脂シート(シート)
141a,142a 内周縁
15 リテーナ
2 ハウジング
21 軸孔
22 シール装着部
3 回転軸(回転体)
A 大気側
S 密封空間
11 外周シール部
12 ダストリップ
13 補強環
14 シールリップ
14a 環状溝
14b 螺旋状溝
141,142 合成樹脂シート(シート)
141a,142a 内周縁
15 リテーナ
2 ハウジング
21 軸孔
22 シール装着部
3 回転軸(回転体)
A 大気側
S 密封空間
Claims (3)
- シールリップ(14)が、軸方向に密接状態に重合した複数の平ワッシャ状のシート(141)からなり、各シート(141)の先端縁(141a)を回転体(3)に摺動可能に密接させることを特徴とする密封装置。
- シールリップ(14)が、軸方向に密接状態に重合した螺旋状のシート(142)からなり、各シート(142)の螺旋状の端縁(142a)を回転体(3)に摺動可能に密接させることを特徴とする密封装置。
- シート(141,142)がその内周縁(141a,142a)において回転体(3)の外周面に摺動可能に密接するものであり、前記シート(141,142)の内径が、密封空間(S)側ほど小径であることを特徴とする請求項1又は2に記載の密封装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004030444A JP2005221020A (ja) | 2004-02-06 | 2004-02-06 | 密封装置 |
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JP2004030444A JP2005221020A (ja) | 2004-02-06 | 2004-02-06 | 密封装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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-
2004
- 2004-02-06 JP JP2004030444A patent/JP2005221020A/ja active Pending
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