JPH05248443A - テーパベアリングのシール構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 テーパベアリングを構成するインナレースと
アウタレースの間のシール性を良好に保った状態で、同
上両レースの相対的な回動が円滑にできるようにする。 【構成】 テーパベアリング４０を構成するインナレー
ス４８とアウタレース４９のうち、一方のレースに嵌着
されたシール５１のシールリップ５６の突出端周縁を他
方のレースの軸方向端面５７に圧接させる。上記シール
リップ５６の突出方向の中途部表面に周方向に延びる溝
５８を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、インナレースとアウ
タレースの間をシールする環状のシールを備えたテーパ
ベアリングのシール構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動二輪車における操向軸は、通常、上
下一対のテーパベアリングを介して車体フレームのヘッ
ドパイプに回動自在に支承されている。そして、上記
上、下テーパベアリングのうち、例えば、下側のもの
は、次のように構成されている。即ち、上記した下側の
テーパベアリングは軸心がほぼ縦向きとされ、このテー
パベアリングを構成するインナレースの下端に環状のシ
ールが嵌着されている。そして、同上テーパベアリング
を構成するアウタレースの下端に向って突出する環状の
シールリップが上記シールに形成され、このシールリッ
プの突出端周縁が上記アウタレースの下端々面に圧接さ
せられている。そして、このシールによって、インナレ
ースとアウタレースの各下端間がシールされている。と
ころで、上記の場合、テーパベアリングは、インナレー
スとアウタレースとを軸方向で互いに嵌合させて、これ
ら両レースの相対位置を適正に定めるようになっている
が、上記各レースや、これら両者間に介設される回転体
には成形誤差があり、この誤差により、シールリップの
突出寸法が不足してそのシール性が低下するおそれがあ
る。そこで、従来、この誤差を吸収する分だけ、シール
リップの突出寸法が大きくされている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようにシールリップの突出寸法を大きくすると、その分
だけ、レースの端面に対する上記シールリップの圧接力
が大きくなり、このため、両レースの相対的な回動が重
くなるという不都合がある。

【０００４】

【発明の目的】この発明は、上記のような事情に注目し
てなされたもので、テーパベアリングを構成するインナ
レースとアウタレースの間のシール性を良好に保った状
態で、同上両レースの相対的な回動が円滑にできるよう
にすることを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
のこの発明の特徴とするところは、テーパベアリングを
構成するインナレースとアウタレースのうち、一方のレ
ースに嵌着されたシールのシールリップの突出端周縁を
他方のレースの軸方向端面に圧接させた場合に、上記シ
ールリップの突出方向の中途部表面に周方向に延びる溝
を形成した点にある。

【０００６】

【作 用】上記構成による作用は次の如くである。下テ
ーパベアリング（テーパベアリング）４０を構成するイ
ンナレース４８とアウタレース４９のうち、一方のレー
スに嵌着されたシール５１のシールリップ５６の突出端
周縁を他方のレースの軸方向端面５７に圧接させた場合
に、上記シールリップ５６の突出方向の中途部表面に周
方向に延びる溝５８を形成してある。このため、上記イ
ンナレース４８とアウタレース４９とを互いに嵌合させ
て、これら両者の相対位置を適正にさせる場合におい
て、これら両レース４８，４９の成形誤差を吸収させよ
うとして、シールリップ５６の突出寸法を大きくして
も、レースの端面５７に圧接するシールリップ５６の突
出端側は、上記溝５８によって容易に曲げ変形し、つま
り、軽い力で弾性変形することとなる。よって、上記シ
ールリップ５６は小さい圧接力でレースの端面５７に圧
接し、これら両者間の摩擦力が小さく抑えられる。

【０００７】

【実施例】以下、この発明の実施例を図面により説明す
る。図２において、符号１は鞍乗型車両である自動二輪
車で、図中矢印Ｆｒはその前方を示している。また、下
記する左右とは上記前方に向っての方向をいうものとす
る。上記自動二輪車１の車体フレーム２は、その前端に
ヘッドパイプ３を有し、このヘッドパイプ３から後下方
に向って１本の主フレーム４が延び、この主フレーム４
の後端から下方に向って左右一対のシートピラーチュー
ブ５が延びている。一方、上記主フレーム４の下方で、
同上ヘッドパイプ３から後下方に向ってダウンチューブ
６が延び、このダウンチューブ６の後端と上記シートピ
ラーチューブ５の下端とが互いに連結されている。ま
た、上記主フレーム４の後端から後上方に向って左右一
対のシートレール８が延び、このシートレール８を上記
シートピラーチューブ５に支持するバックステー９が設
けられている。

【０００８】上記ヘッドパイプ３にはフロントフォーク
１１が操向自在に支承されている。このフロントフォー
ク１１の下端には前輪１２が支承され、同上フロントフ
ォーク１１の上端にはバー式のハンドル１３が取り付け
られている。また、上記前輪１２の外周面を上方から覆
う樹脂製のフロントフェンダ１４が設けられている。

【０００９】一方、上記シートピラーチューブ５には枢
支軸１５によりリヤアーム１６が上下揺動自在に枢支さ
れ、このリヤアーム１６の揺動端に後輪１７が支承され
ている。上記リヤアーム１６は上記主フレーム４の後端
に緩衝器１８とリンク機構１９により支持され、これら
緩衝器１８とリンク機構１９は上記後輪１７が走行面か
ら受ける衝撃を吸収する。また、上記後輪１７の外周面
を上方から覆うリヤフェンダ２０から設けられている。

【００１０】上記主フレーム４の下方において、車体フ
レーム２にエンジン２１が取り付けられ、このエンジン
２１はクランクケース２２と、シリンダ２３を有してい
る。上記エンジン２１の吸気ポートには気化器２４、吸
気管２５、およびエアクリーナ２６が連設されている。
一方、同上エンジン２１の排気ポートから前下方に向っ
て排気管２８が延び、この後、上記排気管２８は後上方
に向って折り返され、この折り返し部が膨張管２９とな
っている。また、この膨張管２９の折り返し端は後方に
延び、その後端にサイレンサ３０が取り付けられてい
る。

【００１１】上記エンジン２１の上方に燃料タンク３２
が設けられている。この燃料タンク３２は主フレーム４
を跨ぐように設けられて、車体フレーム２に支持され、
この燃料タンク３２から上記気化器２４を介しエンジン
２１に燃料が供給される。３３はラジエータで、このラ
ジエータ３３はエンジン２１の冷却用水を走行風によっ
て冷却する。

【００１２】上記クランクケース２２には動力伝達装置
３４が連設されており、上記エンジン２１の動力は上記
動力伝達装置３４とチェーン巻掛機構３５を介して前記
後輪１７に伝えられ、自動二輪車１の走行が可能とな
る。また、前記シートレール８と燃料タンク３２にはシ
ート３６が支持され、このシート３６上にライダーが着
座可能となっている。

【００１３】図２と図３において、前記フロントフォー
ク１１はその上部に操向軸３８を有し、この操向軸３８
は上テーパベアリング３９と下テーパベアリング４０と
によって、前記ヘッドパイプ３に対しその軸心回りに回
動自在に支承されている。

【００１４】上記操向軸３８の上端には上ナット４２と
下ナット４３とがねじ付けられており、これら上ナット
４２と下ナット４３とにアッパブラケット４４が挟み付
けられている。このようにして、上記操向軸３８の上端
にアッパブラケット４４が取り付けられ、このアッパブ
ラケット４４に前記ハンドル１３が取り付けられてい
る。また、上記操向軸３８の下端にはロアブラケット４
５が取り付けられている。そして、上記アッパブラケッ
ト４４とロアブラケット４５に左右一対のフォークパイ
プ４６が支持され、これらフォークパイプ４６の下端間
に前記前輪１２が支承されている。そして、上記ハンド
ル１３を操向操作すれば、上記操向軸３８がその軸心回
りに回動し、これにより回動するフロントフォーク１１
によって、前輪１２が操向される。

【００１５】図１と図３において、上記上テーパベアリ
ング３９と下テーパベアリング４０は、それぞれ上記操
向軸３８に外嵌して固着されるインナレース４８と、前
記ヘッドパイプ３に内嵌して固着されるアウタレース４
９と、これら両レース４８，４９間に介設される回転体
たる複数のテーパローラ５０と、同上両レース４８，４
９間をシールする環状のシール５１とで構成されてい
る。上記の場合、インナレース４８とアウタレース４９
は軸方向で互いに嵌合しているが、これら両者の相対位
置は上記下ナット４３の締め付け力で微調整される。

【００１６】図３において、前記下ナット４３と、上テ
ーパベアリング３９のインナレース４８との間には板金
製で傘状のシール板５３が挟み付けられており、このシ
ール板５３は、車外から上記上テーパベアリング３９を
通って、雨水等がヘッドパイプ３内に入り込もうとする
ことを防止する。

【００１７】図１と図３において、上記下テーパベアリ
ング４０につき詳しく説明する。上記シール５１は、板
金製で環状のシールフレーム５４を有し、このシールフ
レーム５４はインナレース４８の軸方向一端たる下端に
外嵌して固着されている。また、このシールフレーム５
４の外面にはゴム製で弾性のシール本体５５が加硫接着
されている。上記インナレース４８の下端にアウタレー
ス４９の下端が対応しており、このアウタレース４９の
下端に向って突出する環状のシールリップ５６が、上記
シール本体５５に一体成形されている。上記シールリッ
プ５６の突出端周縁が上記アウタレース４９の下端端面
５７に摺動自在に圧接している。そして、ハンドル１３
の操向操作で操向軸３８が回動するときには、シールリ
ップ５６が上記端面５７を摺動しながら、上記両レース
４８，４９間をシールする。

【００１８】上記シールリップ５６の突出方向の中途部
表面たる外周面に、周方向に延びる溝５８が形成されて
いる。この溝５８はシールリップ５６の全周にわたって
形成されているが、断続的に設けてもよい。図１中、仮
想線はシールリップ５６が自由状態にあるときの形状を
示している。なお、前記上テーパベアリング３９は、上
記の下テーパベアリング４０を倒立させたものと同じ構
成であるため、その説明は省略する。

【００１９】しかして、上記構成によれば、上記インナ
レース４８とアウタレース４９とを互いに嵌合させて、
これら両者の相対位置を適正にさせる場合において、こ
れら両レース４８，４９の成形誤差を吸収させようとし
て、シールリップ５６の突出寸法を大きくしても、レー
スの端面５７に圧接するシールリップ５６の突出端側
は、上記溝５８によって容易に曲げ変形し、つまり、軽
い力で弾性変形することとなる。よって、上記シールリ
ップ５６は小さい圧接力でレースの端面５７に確実に圧
接して、これら両者５６，５７間のシールが確実になさ
れ、かつ、これら両者５６，５７間の摩擦力が小さく抑
えられることとなる。

【００２０】この結果、上記インナレース４８とアウタ
レース４９の間のシール性を良好に保った状態で、同上
両レース５８，５９の相対的な回動が円滑にできること
となる。つまり、ヘッドパイプ３に対する操向軸３８の
回動が円滑となって、ハンドル１３の操向操作が軽快に
できるようになっている。また、上記したようにシール
が確実になされるため、上記端面５７に対するシールリ
ップ５６の圧接力を大きくしようとして、前記下ナット
４３を大きな力で締結させる必要はなく、よって、その
分、操向軸３８の回動が円滑となって、この点でも、ハ
ンドル１３の操向操作が軽快となる。なお、以上は図示
の例によるが、溝５８はシールリップ５６の内周面に成
形してもよい。

【００２１】

【発明の効果】この発明によれば、テーパベアリングを
構成するインナレースとアウタレースのうち、一方のレ
ースに嵌着されたシールのシールリップの突出端周縁を
他方のレースの軸方向端面に圧接させた場合に、上記シ
ールリップの突出方向の中途部表面に周方向に延びる溝
を形成したため、上記インナレースとアウタレースとを
互いに嵌合させて、これら両者の相対位置を適正にさせ
る場合において、これら両レースの成形誤差を吸収させ
ようとして、シールリップの突出寸法を大きくしても、
レースの端面に圧接するシールリップの突出端側は、上
記溝によって容易に曲げ変形し、つまり、軽い力で弾性
変形することとなる。よって、上記シールリップは小さ
い圧接力でレースの端面に圧接し、これら両者間の摩擦
力が小さく抑えられることとなる。即ち、上記インナレ
ースとアウタレースの間のシール性を良好に保った状態
で、同上両レースの相対的な回動が円滑にできることと
なる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図３の部分拡大断面図である。

【図２】自動二輪車の全体側面図である。

【図３】ヘッドパイプにフロントフォークを支承させた
部分の正面断面図である。

【符号の説明】

２ 車体フレーム ３ ヘッドパイプ １１ フロントフォーク ３８ 操向軸 ３９ 上テーパベアリング（テーパベアリング） ４０ 下テーパベアリング（テーパベアリング） ４８ インナレース ４９ アウタレース ５０ テーパローラ ５１ シール ５６ シールリップ ５７ 端面 ５８ 溝

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 インナレースとアウタレースのうち一方
   のレースの軸方向一端に環状のシールを嵌着し、上記一
   方のレースの軸方向一端に対応する他方のレースの軸方
   向一端に向って突出する環状のシールリップを上記シー
   ルに形成し、このシールリップの突出端周縁を上記他方
   のレースの軸方向一端々面に圧接させたテーパベアリン
   グのシール構造において、 上記シールリップの突出方向の中途部表面に周方向に延
   びる溝を形成したテーパベアリングのシール構造。