JP4559858B2 - 無段伝動装置においてスリップ閉ループ制御を実施する方法および装置 - Google Patents

Description

本発明は、無段伝動装置、殊に巻掛け伝動装置においてスリップ閉ループ制御を実施する方法および装置に関する。このような伝動装置では駆動側ディスク対と被駆動側ディスク対は、トルクを伝達するために巻掛け手段を介して相互に連結されている。

自動車技術から無段伝動装置（例えば巻掛け式伝動装置）が公知である。無段伝動装置は通常、駆動側ディスク対と被駆動側ディスク対を有している。これらのディスク対は、トルクを伝達するために巻掛け手段を用いて相互に連結されている。これらのディスク対で押圧力が自由に制御される場合、安全性ないし安全性ファクタに依存した力比の正確な特性が既知であるのは、巻掛け伝動装置における変速比の閉ループ制御にとって有利である。特定の走行状況、例えばホイール側に衝撃等がある場合には安全性ファクタが増大される必要がある。これは公知の巻掛け伝動装置での変速比閉ループ制御時には考慮されていない。従って、変化する力比がバリエータの変速比に与える作用を最小化する、ないしは除去することができない。これによって車両内の快適性は悪影響を受けてしまう。

本発明の課題は、無段伝動装置での変速比閉ループ制御をさらに最適化する方法および装置を提供することである。

上述の課題は方法に関しては、次の方法によって解決される。すなわち無段伝動装置、殊に駆動側ディスク対および被駆動側ディスク対が、トルクを伝達するために巻掛け手段を介して相互に連結されている巻掛け伝動装置においてスリップ閉ループ制御を実施する方法において、バリエータの駆動側ディスク対と被駆動側ディスク対の間の力比（ゼータ）を安全性に依存して学習し、前記安全値として、実際の押圧力と巻掛け手段の滑りが生じる力との間の実際の動作点での前記力比を用いる形式の方法において、当該方法を伝動装置の、一定走行時のオーバードライブ領域（ＯＤ）における動作状態で実行し、前記力比（ゼータ）は断続的に適応されることによって解決される。このようにしてバリエータの駆動側ディスク対と被駆動側ディスク対との間の力比が車両での安全基準（安全性）に依存して適応される。これによって、殊に無段伝動装置での変速比閉ループ制御が格段に改善される。

ここで実際の押圧力と巻掛け手段の滑りが生じる力の間の目下の動作点での力比が安全性と称される。例えば安全性が値１. ０をとると、巻掛け手段の滑り点である。

はじめに滑り点を定めることができる。これは例えば押圧圧力での変動と、ディスク対の回転数間の交差相関等の重畳によって行われる。滑り点が既知である場合には本発明の方法では、非常に高い押圧安全性のもとで安全性が低減され始める。これは滑り点に達するまで、または滑り点の直前の時点まで行われる。有利にはこのような方法は例えば被駆動側ディスク対での押圧力を低減することによって実現される。この場合には変速比閉ループ制御は例えばアクティブに維持され、力比ないしはゼータ値の変化は、ディスク対の圧力を相応に駆動制御することによって補償調整される。

駆動側ディスク対と被駆動側ディスク対の間のゼータ値ないし力比は、回転数および変速比およびディスク対圧力ないしはディスク対に対する駆動制御量を知ることによって突き止められるないしは計算される。相応するゼータ値は有利には安全性の関数として記憶される。これによって力比は有利には事前制御され、十分な安全性のもとでの最適な押圧力が常に得られる。

本発明の発展形態の枠内では、この方法は有利には一定の安全性を伴う準静的動作状態および／または安全性が意図的に緩慢に低減される場合に実行される。このような動作状態は通常は有利には、一定走行でのオーバードライブ領域（ＯＤ）にある。押圧要求は入力トルクひいてはエンジントルクに依存するので、エンジントルクは、できるだけ大きい安全領域を走破するほど高くなくてよい。有利には５０〜１００Ｎｍの間の領域が使用される。しかし他の領域および動作状態も可能である。

別の構成では、本発明による適応は必ずしも連続的に実行される必要はなく、例えば部分的に作動させることも可能である。従って、例えば種々異なる安全性を伴って伝動装置内での変速比点に時間的に順次到達する。各動作点に対して求められた力比（ゼータ）の値は、相応するメモリテーブル等に記憶されるおよび／またはパラメータモデルにおいて使用される。このような適応によって、変速比閉ループ制御が各伝動装置に整合される。

提案した方法では、適応のためにゼータ値は安全性および変速比に依存して格納されるないし記憶される。このようにして、特性曲線の代わりに特性マップが適応される。

有利な発展形態では、ディスク対での圧力も適切に見積もられる。ゼータ値を計算するために、全ての力成分が既知である必要がある。バネ力の他に、静的な圧力および動的な圧力から計算される力も考慮される。これらの圧力が既知であるのは殊に有利である。しかし本発明による方法では、このような静的な圧力が必ずしも既知である必要はない。なぜなら、ハイドロリックバルブの平均特性曲線を介した各想定で十分であるからである。ハイドロリックバルブの駆動制御電流は既知であるので、この値から理論的な圧力値が計算される。近似的なバルブ特性曲線と実際のバルブ特性曲線の間の差は、有利にはディスク対の駆動制御時にこの近似的なバルブ特性曲線が使用されることで補償される。従って偏差は容易に補償される。

本発明の別の実施形態の枠内では、本発明による方法では有利には連続的な車両作動においてゼータ最大値が計算される。ここで、被駆動側ディスク対での固定的な押圧力のために、伝動装置の巻掛け手段の滑りが生じるように入力トルクが高められる。

入力トルクを一定に維持し、その際に押圧力を下げることも可能である。この場合に力比（ゼータ）はまず上昇し、巻掛け手段の滑り（滑り点）前に再び下降する。ゼータ最大値から滑り点までの間隔は、約１０％〜３０％で変速比に依存する。この間隔は通常は押圧力には依存しない。

伝動装置に対して、ゼータ最大値から左の領域に位置する動作が殊に有利であることが判明している。この動作において、例えば力比の経過を押圧力低減時に記録するないし記憶することが可能である。所定の押圧力に対してゼータ最大値がずれていることが確認されると、実際の押圧要求が変化する。

既知のゼータ最大値によって動作パラメータが相応に修正され、所望の動作領域（ゼータ最大値の左側）における整合が実現されることが保証される。

有利には本発明の方法では、最大ゼータ値の動作パラメータは例えば安全性および／または変速比を介して記憶される。

閉ループ制御パラメータを提案したように補正することによって、殊に無段伝動装置を伴う車両での走行性ないしは走行快適性が格段に改善される。さらにゼータ値を介したノイズ影響が決定的に低減される。さらに本発明による方法では実際の押圧力要求が監視される。

さらに本発明の課題は、無段伝動装置、殊に巻掛け伝動装置においてスリップ閉ループ制御を実施する装置であって、駆動側ディスク対および被駆動側ディスク対が、トルクを伝達するために巻掛け手段を介して相互に連結されており、殊に提案された方法を実施する形式の装置において、バリエータの駆動側ディスク対と被駆動側ディスク対の間の力比（ゼータ）を安全値に依存して学習する装置が設けられている、無段伝動装置においてスリップ閉ループ制御を実施する装置によって解決される。

さらなる利点および有利な構成を、従属請求項および以下で説明する図面に示す。

図１には、本発明の可能な構成のフローチャートが示されており、
図２にはゼータ最大値測定を示すダイヤグラムが示されている。

ディスク対における圧力の適切な見積りが図１のフローチャートに基づいて示されている。ゼータ値を計算するためには全ての力成分が既知である必要がある。バネ力の他に静的および動的な圧力から計算された力も考慮される。

提案された見積りでは、ハイドロリックバルブの平均特性曲線を介した想定が使用される。ハイドロリックバルブの駆動制御電流は既知であるので、この値から理論的な圧力値が計算される。近似的なバルブ特性曲線と実際のバルブ特性曲線の間の差は、ディスク対の駆動制御時にこの近似的なバルブ特性曲線が使用されることによって補償される。

図２には、ゼータ（Ａ）、被駆動側ディスク対での押圧力（Ｂ）、入力エンジントルク（Ｃ）および安全性（Ｄ）が示されている。ゼータ最大値を本発明によって求める場合には、被駆動側ディスク対での実質的に一定の押圧力に対して、入力トルクが次のように高められる。すなわち伝動装置の巻掛け手段の滑りが生じるように高められる。ゼータ最大値の後で、ゼータ値の低減に基づいて滑り点が明らかになる。全体的として、ゼータ最大値より前に位置する値が使用されると、無段式伝動装置に対して動作が殊に有利であることがわかる。

本発明の可能な構成のフローチャートである。 ゼータ最大値測定を示すダイヤグラである。

Claims (13)

1. 巻掛け伝動装置においてスリップ閉ループ制御を実施する方法であって、
   駆動側ディスク対および被駆動側ディスク対が、トルクを伝達するために巻掛け手段を介して相互に連結されており、
   バリエータの駆動側ディスク対と被駆動側ディスク対との間の力比（ゼータ）を安全値に依存して学習し、
   前記安全値として、実際の押圧力と巻掛け手段の滑りが生じる力との間の実際の動作点での前記力比を用いる形式の方法において、
   当該方法を伝動装置の、一定走行時のオーバードライブ領域（ＯＤ）における動作状態で実行し、
   前記力比（ゼータ）は断続的に適応される、
   ことを特徴とする、巻掛け伝動装置においてスリップ閉ループ制御を実施する方法。
2. 被駆動側ディスク対で滑り点が既知である場合には、前記押圧力を、巻掛け手段で滑り点に達する直前まで低減させる、請求項１記載の方法。
3. 前記押圧力の低減時には前記バリエータでの変速比閉ループ制御をアクティブに維持し、前記押圧力の変化を、少なくとも１つのディスク対での圧力を相応に駆動制御することによって補償調整する、請求項２記載の方法。
4. 前記力比を安全性の関数として記憶する、請求項１から３までのいずれか１項記載の方法。
5. 前記力比の種々異なる値を伴ってバリエータの変速比に時間的に順次達する、請求項１から４までのいずれか１項記載の方法。
6. 各動作状態に対して求められた前記力比（ゼータ）の値を記憶するおよび／またはパラメータモデルにおいて使用する、請求項５記載の方法。
7. 前記力比（ゼータ）を安全性およびバリエータの変速比に依存して格納する、請求項１から６までのいずれか１項記載の方法。
8. ディスク対のハイドロリックバルブの既知の駆動制御電流から理論的な圧力値を計算することによって、２つのディスク対での圧力を見積もる、請求項１から７までのいずれか１項記載の方法。
9. 連続的な車両動作において前記力比（ゼータ）の最大値を計算する、請求項１から８までのいずれか１項記載の方法。
10. 被駆動側ディスク対での所定の押圧力のもとで、伝動装置の巻掛け手段の滑りが生じるように入力エンジントルクを上昇させる、請求項９記載の方法。
11. 前記入力エンジントルクを一定に維持し、その際に押圧力を低減させる、請求項９記載の方法。
12. 学習されたゼータ最大値によって伝動装置の動作パラメータを補正し、最適な押圧を保証する、請求項９から１１までのいずれか１項記載の方法。
13. 巻掛け伝動装置においてスリップ閉ループ制御を実施する装置であって、
    駆動側ディスク対および被駆動側ディスク対が、トルクを伝達するために巻掛け手段を介して相互に連結されており、
    請求項１から１２までのいずれか１項に記載された方法を実施する形式の装置において、
    バリエータの駆動側ディスク対と被駆動側ディスク対の間の力比（ゼータ）を安全値に依存して学習する装置が設けられており、
    前記安全値として、実際の押圧力と巻掛け手段の滑りが生じる力との間の実際の動作点での力比を用い、
    当該方法を伝動装置の、一定走行時のオーバードライブ領域（ＯＤ）における動作状態で実行し、
    前記力比（ゼータ）は断続的に適応される、
    ことを特徴とする、無段伝動装置においてスリップ閉ループ制御を実施する装置。

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